(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042132
(43)【公開日】2025-03-27
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20250319BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20250319BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20250319BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M50/103
H01M50/184 A
H01M10/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148965
(22)【出願日】2023-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】上薗 知之
(72)【発明者】
【氏名】杉原 敦史
(72)【発明者】
【氏名】中村 知広
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA17
5H011BB03
5H011CC02
5H011DD13
5H011FF04
5H011GG01
5H011HH02
5H028AA07
5H028BB01
5H028BB05
5H028CC01
5H028CC19
5H028EE06
5H029AJ15
5H029AK03
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM04
5H029BJ06
5H029BJ12
5H029BJ17
5H029CJ05
5H029DJ03
5H029EJ12
(57)【要約】
【課題】液漏れの発生を抑制することができる二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】集電体、集電体の一方の面に積層される第1活物質層、及び、集電体の他方の面に積層される第2活物質層を具備するバイポーラ電極が複数積層されてなる二次電池を製造する方法であって、シール部材とスペーサ部材とを溶着により一体化したスペーサ一体型シール部材を作製する工程と、集電体の外周端部において、一方の面には作製したスペーサ一体型シール部材のシール部材を配置し、他方の面には他のシール部材を配置し、さらにシール部材と他のシール部材とを溶着する工程と、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体、前記集電体の一方の面に積層される第1活物質層、及び、前記集電体の他方の面に積層される第2活物質層を具備するバイポーラ電極が複数積層されてなる二次電池を製造する方法であって、
シール部材とスペーサ部材とを溶着により一体化したスペーサ一体型シール部材を作製する工程と、
前記集電体の外周端部において、前記一方の面には前記作製したスペーサ一体型シール部材の前記シール部材を配置し、前記他方の面には他のシール部材を配置し、さらに前記シール部材と前記他のシール部材とを溶着する工程と、を含む、
二次電池の製造方法。
【請求項2】
さらに前記第2活物質層と前記他のシール部材とを渡すようにセパレータが溶着される工程を含む、請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、集電体のシール部材が低剛性領域を備えるバイポーラ電池が開示されている。特許文献2には、集電体の周縁部を保持する枠体を構成する樹脂部材が、樹脂部材よりも熱膨張係数の小さい芯材部を備える旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-045564号公報
【特許文献2】特開2018-106962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、外周の封止部分でスペーサとシール材との間で液漏れが発生することがあった。
【0005】
そこで、本開示では液漏れの発生を抑制することができる二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は鋭意検討の結果、このような液漏れの発生は、二次電池の外周に配置する封止において、集電体に対するシール材の溶着工程と、シール材に対するスペーサ材の溶着工程の2回の工程にわたって、集電体、シール材/スペーサ材に熱がかかり、これらの線膨張係数の差によって集電体に力が働き、しわが生じるためであるとの知見を得た。そして発明者はこの知見に基づいて解決手段を具体化し、本開示にかかる発明を完成させた。
【0007】
本願は、集電体、集電体の一方の面に積層される第1活物質層、及び、集電体の他方の面に積層される第2活物質層を具備するバイポーラ電極が複数積層されてなる二次電池を製造する方法であって、シール部材とスペーサ部材とを溶着により一体化したスペーサ一体型シール部材を作製する工程と、集電体の外周端部において、一方の面には作製したスペーサ一体型シール部材のシール部材を配置し、他方の面には他のシール部材を配置し、さらにシール部材と他のシール部材とを溶着する工程と、を含む、二次電池の製造方法を開示する。
【0008】
さらに第2活物質層と他のシール部材とを渡すようにセパレータが溶着される工程を含んでもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の二次電池の製造方法によれば、シール部材とスペーサ部材とを一体に形成してから集電体に溶着することで、二次電池の製造の際にシール部材とスペーサ部材に熱がかかる回数を低減して熱による膨張収縮を低減し、集電体にしわが生じることを抑制し、液漏れ発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は二次電池10の外観を模式的に表す図である。
【
図2】
図2は蓄電モジュール20を模式的に表す断面図である。
【
図3】
図3は第1シール部材31の1つの形態例を説明する断面図である。
【
図4】
図4はスペーサ一体型第2シール部材32の形態例を説明する断面図である。
【
図5】
図5は従来における製造例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しつつ本開示の形態を説明する。見易さのため、繰り返しとなる符号の一部を省略することがある。また、図面には、3次元直交座標系(x軸、y軸、z軸)の対応する向きを表す表示をした。
【0012】
1.二次電池の構造
初めに本開示の1つの例にかかるに二次電池の構造について説明する。
図1は当該例にかかる二次電池を模式的に示す側面図である。なお、
図1は側面図ではあるが、部材の区別のし易さのためにハッチングを付している。
二次電池10は、例えばハイブリッド自動車、電気自動車等の車両に搭載されるバッテリとして用いることができる。
二次電池10は、モジュール積層体11、接続部材12、13、一対のエンドプレート14、及び、締結部材15を備えている。
【0013】
1.1.モジュール積層体11
モジュール積層体11は、複数の蓄電モジュール20と、複数の導電板19とがz軸方向に交互に積層されてなる。当該積層の繰り返し回数は必要な電池容量や二次電池の配置スペース等により適宜設定される。なおモジュール積層体11の積層方向両端はいずれも導電板19とされる。
【0014】
1.1.1.導電板
導電板19は、蓄電モジュール20を構成する電極に電気的に接続されており、導電板19を挟んで配置される2つの蓄電モジュール20同士を電気的接続している。ここでは、 隣り合う蓄電モジュール20が、導電板19によって直列接続されている。
【0015】
導電板19の内部には、空気等の冷却用媒体を流通させる不図示の流路が設けられてもよい。導電板19内の流路に冷却用媒体を流通させることで、導電板19は、さらに蓄電モジュール20で発生した熱を外部に排出する熱交換器としても機能する。
【0016】
1.1.2.蓄電モジュール
蓄電モジュール20は、x軸方向、y軸方向に比べてz軸方向が薄く形成された、平板状の単電池である。
図2(a)に、蓄電モジュール20の層構成を模式的な断面図で示した。本形態の蓄電モジュール20は、バイポーラ型のリチウムイオン二次電池である。
蓄電モジュール20は、複数のバイポーラ電極22が積層されてなる電極積層体21及び、各バイポーラ電極22に具備された複数の封止体30を備えている。電極積層体21で、複数のバイポーラ電極22がz軸方向に沿って積層されており、それぞれのバイポーラ電極22に封止体30が配置されている。
図2(b)には
図2(a)から1つのバイポーラ電極22及びここに具備される封止体30を抜き出して表した。
【0017】
1.1.2a.電極積層体
[バイポーラ電極]
以下、各部材の説明において「上面」、「下面」と記載することがあるが、
図1、
図2に示した座標系としたとき、「上面」はz軸方向で大きい側のx-y面、「下面」はz軸方向で小さい側のx-y面を意味する。便宜のためこのように記載するが、「上面」を「第1面」、「下面」を「第2面」と言い換えることができる。
バイポーラ電極22は、集電体23、集電体23の下面に設けられた正極活物質層24(第1活物質層)、集電体23の上面に設けられた負極活物質層25(第2活物質層)、及びセパレータ26を備えている。
【0018】
本形態で集電体23は、平面視において(x-y平面で)矩形状をなすシート状の導電部材であり、集電体23は、例えば金属箔又は合金箔によって構成されている。金属箔としては、例えば銅箔、アルミニウム箔、チタン箔、ニッケル箔等が挙げられる。合金箔としては、例えばステンレス鋼箔(例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301等)、メッキ処理が施された鋼板(例えばJIS G 3141:2005にて規定される冷間圧延鋼板(SPCC等))、メッキ処理が施されたステンレス鋼板などが挙げられる。合金箔は、上記金属箔の材料として例示した金属の合金箔であってもよい。集電体23は、複数の金属箔が一体化又は積層されて形成されていてもよく、金属箔の表面に別の金属をメッキすることで形成されていてもよい。
集電体23は、例えば、上面がアルミニウム層となり、下面が銅層となるように、アルミニウム箔と銅箔とが積層された箔であってもよい。
【0019】
正極活物質層24は、バイポーラ電極22の正極を構成し、本形態では集電体23の下面にアセチレンブラック等の接着層を介して配置されている。
正極活物質層24は、正極活物質、導電助剤、及び結着剤を含むことができる。
正極活物質は、例えば複合酸化物、金属リチウム、及び硫黄等が挙げられる。複合酸化物の組成には、例えば鉄、マンガン、チタン、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。複合酸化物としては、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、LiCoO2、LiNiMnCoO2等が挙げられる。
結着剤は、活物質又は導電助剤を集電体23の表面に繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たすものである。結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、アクリル酸やメタクリル酸などのモノマー単位を含むアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体等が挙げられる。これらの結着剤は、単独又は複数で用いることができる。
導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
【0020】
負極活物質層25は、バイポーラ電極22の負極を構成し、本形態では集電体23の上面に配置されている。
負極活物質層25は、負極活物質、導電助剤、及び、結着剤を含むことができる。導電助剤及び結着剤は正極活物質層24と同様に考えることができる。
負極活物質は、例えば黒鉛、人造黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素若しくは当該元素の化合物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。
【0021】
セパレータ26は、例えば、電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布であり、本形態では負極活物質層25の上面に配置される。
セパレータ26を構成する材料は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステルなどが挙げられる。セパレータ26は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
セパレータ26に吸収保持される電解質は、例えば、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む液体電解質(電解液)、又はポリマーマトリックス中に保持された電解質を含む高分子ゲル電解質などが挙げられる。セパレータ26 に電解質が含浸される場合、その電解質塩として、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2等の公知のリチウム塩を使用できる。また、非水溶媒として、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の溶媒を使用できる。
【0022】
集電体23、正極活物質層24、負極活物質層25、及び、セパレータ26は、平面視で大きさが異なるように構成されている。より具体的には集電体23が最も大きく、次にセパレータ26が大きく、その次が負極活物質層25であり、正極活物質層24が最も小さい。
図2からわかるように、集電体23、正極活物質層24、負極活物質層25、及び、セパレータ26は平面視で中央が揃って配置され、大きさの違いは縁の突出(張り出し)の程度に表れる。従って集電体23の縁が最も突出し、その内側となるようにセパレータ26、負極活物質層25、正極活物質層24の順に縁が突出している。
【0023】
正極活物質層24及び負極活物質層25を集電体23に形成するには、例えばロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法等の従来から公知の方法が用いられる。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を混合してスラリー状の活物質層形成用組成物を製造し、当該活物質層形成用組成物を集電体23の上面、下面に塗布後、乾燥する。溶剤は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水である。
【0024】
[電極積層体の積層構造]
電極積層体21で、z軸方向(積層方向)に隣り合うバイポーラ電極22は、一方のバイポーラ電極22の正極活物質層24と他方のバイポーラ電極22のセパレータ26とが重なるように積層されている。
【0025】
その他、電極積層体21は、バイポーラ電極22による積層体の積層方向端部には、その上端(z軸方向で大きい側)に正極終端電極27、下端(z軸方向で小さい側)に負極終端電極28を有している。
正極終端電極27は、集電体23及び集電体23の下面に設けられた正極活物質層24を有しており、正極活物質層24が隣接するバイポーラ電極22に積層され、その上面に集電体23が積層されている。
負極終端電極28は、集電体23及び集電体23の上面に設けられた負極活物質層25、その上面に積層されたセパレータ26を有しており、セパレータ26が隣接するバイポーラ電極22に積層され、その下面に負極活物質層25、さらにその下面に集電体23が積層されている。
正極終端電極27、負極終端電極28はそれぞれ集電体23が隣接する導電板19(
図1参照)に積層される。
【0026】
1.1.2b.封止体
封止体30は、バイポーラ電極22の外周端部に配置されることにより、バイポーラ電極22を封止する部材である。これにより合わせて、積層方向に隣り合うバイポーラ電極22の間の封止もする。本形態で、封止体30は、第1シール部材31、及び、スペーサ一体型第2シール部材32を有している。
【0027】
[第1シール部材]
第1シール部材31は枠状の部材であり、これがバイポーラ電極22の外周端部(外縁)に沿って配置される。具体的には、
図2(a)、
図2(b)からわかるように、第1シール部材31は、バイポーラ電極22の外周端部において、集電体23の上面とセパレータ26の下面との間に配置及び接合されることで負極活物質層25をその枠内に配置する。
本形態で第1シール部材31の内縁と負極活物質層25との間には所定の間隔が設けられ空間S1が形成されている。一方、第1シール部材31の外縁は第1シール部材31が集電体23より外側に突出するように構成されている。
【0028】
第1シール部材31は電気絶縁性を有しており、公知の材料である例えば、酸変性ポリエチレン(酸変性PE)、酸変性ポリプロピレン(酸変性PP)、ポリエチレン、又は、ポリプロピレン等の耐電解質性を有する樹脂材料により構成できる。
【0029】
第1シール部材31は上記のように公知の材料により構成することもできるが、本形態では第1シール部材31は次のように構成されている。
図3に説明のための図を示した。
図3は
図2(b)のうち第1シール部材31の部分に注目して表した断面図である。
図3からわかるように本形態で第1シール部材31は樹脂部材31a及び低線膨張率部材31bを有して構成されている。
【0030】
樹脂部材31aは第1シール部材31の外形を形成し、その内部に低線膨張率部材31bが設けられていること以外は公知の第1シール部材と同様である。従って、その材料としては上記の通り酸変性ポリエチレン(酸変性PE)、酸変性ポリプロピレン(酸変性PP)、ポリエチレン、又は、ポリプロピレン等の耐電解質性を有する樹脂材料で構成できる。
【0031】
低線膨張率部材31bは、樹脂部材31aに内包された低線膨張率材料である。低線膨張率部材31bも第1シール部材31の枠状に沿って延びる枠状の部材であり、x軸方向及びy軸方向に比べてz軸方向が小さい形態である。
低線膨張率部材31bを構成する材料は、樹脂部材31aを構成する材料よりも線膨張率が低い材料である。例えば樹脂部材31aとして酸変性ポリエチレン(ポリオレフィンの一種)を用いた場合にはこれより線膨張率が低ければよい。具体的な材料としては、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、鉄等の金属材料、グラスウール、シリカクロス、ロックウール、アルカリアースシリケートウール、アルミナファイバー等のセラミックス材料、及び、セルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド等のような樹脂のうち線膨張率がポリオレフィン樹脂よりも低い材料を挙げることができる。
【0032】
このような樹脂部材31a及び低線膨張率部材31bを具備する第1シール部材31では、
図3にTjで示した厚さ方向において低線膨張率部材31bの上面及び下面側の樹脂部材の厚さ(z軸方向大きさ、最も薄い部分)は5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上である。樹脂部材の厚さが5μmより小さくなると封止のための接合(熱シール)をした際に接着強度が不足する虞がある。
また、
図3にTtで示した低線膨張率部材31bの厚さ(z軸方向大きさ、最も薄い部分)は、第1シール部材31の厚さ(z軸方向大きさ、最も薄い部分)Tzに対して5%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。5%以上とすることで、より確実に低線膨張率部材31bによる第1シール部材31全体の線膨張率の低下を図ることができる。
【0033】
樹脂部材31aに低線膨張率部材31bを内包した第1シール部材31の作製は、いわゆる押出ラミネートにより行うことができる。すなわち、帯状の基材を送りつつ、この基材上に樹脂部材31aの厚さ方向一方側半分を構成する溶融した材料を供給し、当該材料の上に帯状の低線膨張率部材31bとなる材料を順次重ねる。さらに低線膨張率部材31bとなる材料の上から樹脂部材31aの厚さ方向他方側半分を構成する溶融した材料を供給して冷却する。
【0034】
[スペーサ一体型第2シール部材]
スペーサ一体型第2シール部材32は枠状の部材であり、これがバイポーラ電極22の外周端部に沿って配置される。具体的には、
図2(a)、
図2(b)からわかるように、スペーサ一体型第2シール部材32は、バイポーラ電極22の外周端部において、集電体23と下方に隣接するバイポーラ電極22のセパレータ26の上面との間に配置及び接合されることで正極活物質層24をその枠内に配置する。
本形態でスペーサ一体型第2シール部材32の外縁はスペーサ一体型第2シール部材32が集電体23より外側に突出するように構成されている。
このようなスペーサ一体型第2シール部材32は、第2シール部材33とスペーサ部材34とがz軸方向に一体に形成されている。
【0035】
第2シール部材33は枠状の部材であり、これがバイポーラ電極22の外周端部に沿って配置される。具体的には、
図2(a)、
図2(b)からわかるように、第2シール部材33は、スペーサ部材34と組み合わされることで、バイポーラ電極22の外周端部において、集電体23の下面とスペーサ部材34の上面との間に配置及び接合され、正極活物質層24をその枠内に配置する。
本形態で第2シール部材33の内縁と正極活物質層24との間には所定の間隔が設けられ空間S2が形成されている。一方、第2シール部材33の外縁は第2シール部材33が集電体23より外側に突出するように構成されている。第2シール部材33の内縁及び外縁は、x-y方向において第1シール部材31の内縁及び外縁と同程度の位置となる。
【0036】
スペーサ部材34は枠状の部材であり、これがバイポーラ電極22の外周端部に沿って配置される。具体的には、
図2(a)、
図2(b)からわかるように、スペーサ部材34は、第2シール部材33と組み合わされることで、バイポーラ電極22の外周端部において、第2シール部材33の下面と、隣接するバイポーラ電極22のセパレータ26の上面との間に配置及び接合され、正極活物質層24をその枠内に配置する。
本形態でスペーサ部材34の内縁は正極活物質層24に接触するように延び、x-y方向において第2シール部材33の内縁よりも正極活物質層24側に突出している。一方、スペーサ部材34の外縁はスペーサ部材34が集電体23より外側に突出し、x-y方向において第2シール部材33の外縁と同程度の位置となる。
【0037】
第2シール部材33、スペーサ部材34(すなわちスペーサ一体型第2シール部材32)は電気絶縁性を有しており、公知の材料である例えば、酸変性ポリエチレン(酸変性PE)、酸変性ポリプロピレン(酸変性PP)、ポリエチレン、又は、ポリプロピレン等の耐電解質性を有する樹脂材料により構成できる。
【0038】
スペーサ一体型第2シール部材32は上記のように公知の材料により構成することもできるが、本形態では第1シール部材31で説明したように樹脂部材及び低線膨張率部材を有して構成してもよい。
図4に説明のための図を示した。
図4は
図2(b)のうちスペーサ一体型第2シール部材32の部分に注目して表した断面図である。
図4(a)は第2シール部材33及びスペーサ部材34の両方が樹脂部材33a、34a、低線膨張率部材33b、34bにより構成された例である。
図4(b)はスペーサ部材34が樹脂部材34a、低線膨張率部材34bにより構成された例である。
図4(c)は第2シール部材33が樹脂部材33a、低線膨張率部材33bにより構成された例である。
【0039】
樹脂部材33a、34a、低膨張率部材33b、34bの材料、形態、及び作製は上記した樹脂部材31a、31bと同様に考えることができる。ただし、スペーサ一体型第2シール部材32は、全体として集電体23の線膨張率に対して5倍以下の線膨張率であることが好ましい。より好ましくは3倍以下である。これにより後述する集電体23のしわの発生の抑制をより確実なものとすることができる。
なお、第2シール部材33とスペーサ部材34とは、例えば熱ラミネート(熱ロール)により接合して一体化することができる。
【0040】
[封止体の構成]
第1シール部材31は、その上面でセパレータ26に接触する部分でセパレータ26に接合され、下面で集電体23に接触する部分で集電体23に接合される。また第1シール部材31の下面のうち集電体23よりも外側に突出した部位はスペーサ一体型第2シール部材32の第2シール部材33の上面のうち集電体23より外側に突出した部位に接合されている。
スペーサ一体型第2シール部材32は、その第2シール部材33の上面で集電体23に接触する部分で集電体23に接合される。また、第2シール部材33の上面のうち集電体23よりも外側に突出した部位は第1シール部材31の下面のうち集電体23より外側に突出した部位に接合されている。
【0041】
複数のバイポーラ電極22及び封止体30が重ねられる構成においては、封止体30に具備されたスペーサ一体型第2シール部材32のスペーサ部材34の下面のうちセパレータ26より外側に突出した部位が、隣接する封止体30に具備される第1シール部材31の下面のうちセパレータ26より外側に突出した部位に重なり接合されている。
【0042】
また、第1シール部材31、第2シール部材33、及びスペーサ部材34の少なくとも1つが樹脂部材及び低線膨張率部材により形成されていることが好ましい。その中でも少なくともスペーサ部材34が樹脂部材34a及び低線膨張率部材34bにより構成されていることがより好ましい。スペーサ部材34が樹脂部材34a及び低線膨張率部材34bにより構成されていれば第1シール部材31及び第2シール部材33が樹脂部材及び低線膨張率部材により構成されていなくても(樹脂のみによる構成であっても)、より確実に効果を奏するものとなる。
【0043】
1.2.接続部材
図1に戻って接続部材12、13について説明する。
接続部材12、13は、二次電池10の正極端子及び負極端子として機能する導電部材である。接続部材12、13は、正極側となる導電板19に電気的に接続され、接続部材13は負極側となる導電板19に電気的に接続されている。接続部材12、13は、例えば金属材料又は合金材料によって形成されている。金属材料としては、例えば銅、アルミニウム、チタン、ニッケル等が挙げられる。合金材料としては、例えばステンレス鋼や、上記金属材料の合金が挙げられる。
【0044】
1.3.エンドプレート、締結部材
一対のエンドプレート14及び締結部材15は、モジュール積層体11に対して積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材である。
一対のエンドプレート14、14は、モジュール積層体11を積層方向の両方から挟むように設けられている板状の部材であり、例えば金属板によって形成されている。エンドプレート14を構成する金属材料としては、例えば銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼等の合金などが挙げられる。
エンドプレート14は
図1からわかるように、モジュール積層体11に対してxーy方向に大きく、その外周端部がモジュール積層体11より張り出している。
また、エンドプレート14とモジュール積層体11との間には電気絶縁シート11aが配置されている。
【0045】
締結部材15は、例えばボルト15a及びナット15bによって構成されている。ボルト15aは、一対のエンドプレート14のそれぞれの外周端部の張り出し部分に設けられた挿通孔(不図示)に通され、ナット15bの螺合によって一対のエンドプレート14、14を締結している。これにより、モジュール積層体11には、一対のエンドプレート14、14を介して積層方向に拘束荷重が付加されている。
【0046】
2.効果等
以上説明した二次電池10によれば、封止部30において、後で製造方法でも説明するように、第2シール部材33とスペーサ部材34とが、二次電池に配置される前にすでに
スペーサ一体型第2シール部材32として一体化されているため、二次電池10の製造の際にはシール部材及びスペーサ部材に熱がかかる回数を低減して(例えば2回から1回にして)の熱による膨張収縮を低減し、集電体にしわが生じることを抑制して液漏れ発生を抑制することができる。
【0047】
また、封止体30を構成する部材の少なくとも一部において低線膨張率部材を配置することにより集電体23と封止体30全体との線膨張率差を低減することができ、さらに集電体23のしわの発生を抑制することができる。
【0048】
3.二次電池の製造方法
以下、二次電池の製造方法について説明する。ここでは二次電池の製造方法のうち封止体30の接合に関する工程に注目して説明する。二次電池の製造方法のうちその他の工程については公知の通りである。
【0049】
3.1.従来例
本開示の製造方法の説明をする前に従来の方法について説明する。
図5に説明のための図を示した。
図5は
図2(b)と同様の視点による図で右半分に相当する。
従来では封止体の接合は典型的には
図5(a)~
図5(c)の順に行われていた。すなわち、初めに
図5(a)に示したように集電体の端部の上面に第1シール部材、下面に第2シール部材を配置して、これらシール部材で集電体の端部を挟んで溶着する。
次に、
図5(b)に示したように負極活物質層の上面及び第1シール部材の上面を渡すようにセパレータを溶着する。そして、その後、
図5(c)に示したように、セパレータの上面と第1シール部材の上面に跨ってスペーサ部材を溶着する。
その後に複数のバイポーラ電極及び封止体が重ねられることで蓄電モジュールとなる。
このように、従来では集電体を含んだ状態で複数回の溶着が行われていた。
【0050】
3.2.本開示による例
図6に本開示の製造方法を説明するための図を示した。
図6も
図5と同様の視点による図である。なお、この製造方法では前提として上記したように第2シール部材33とスペーサ部材34とを接合して一体化されたスペーサ一体型第2シール部材32を作製する工程がある。
本開示の製造方法では、初めに、
図6(a)に示したように集電体23の端部の上面に第1シール部材31、下面にスペーサ一体型第2シール部材32の第2シール部材33を配置し、これらシール部材(封止体30)で集電体23の端部を挟んで溶着する。
次に、
図6(b)に示したように負極活物質層25の上面及び第1シール部材31の上面を渡すようにセパレータ26を溶着する。
その後に複数のバイポーラ電極22及び封止体30が重ねられることで
図2(a)のように蓄電モジュール20となる。なお、
図6(b)の時点でスペーサ部材34はx軸方向(y軸方向)に真っすぐであるが、複数のモジュール積層体11が重ねられる時点で、
図2(a)に示したようにスペーサ部材34の内縁側が隣接するバイポーラ電極22のセパレータ26に押されてz軸方向に移動し、曲がった形態となる。
【0051】
以上のように、本開示では集電体23を含んだ状態での溶着の回数を減らすことができ、集電体23のシワの発生を抑制することができる。
また、封止部材を取り付けて複数のバイポーラ電極及び封止体を組み上げる工程を短縮することも可能である。
さらに、事前にスペーサ一体型第2シール部材32を作製しておくことで、第2シール部材33とスペーサ部材34との溶着が均一性が高く強固であるため、第2シール部材33とスペーサ部材34との間からの液漏れ(シールの不具合)を抑制することができる。
【0052】
4.試験例
試験例1として、
図5を示して説明した従来例による封止体の接合、試験例2、3として
図6を示して説明した例による封止体の接合について試験をした。
【0053】
4.1.試験例1の封止体
試験例1では第1シール部材、第2シール部材、及び、スペーサ部材を個別に準備して
図5の例にならって接合した。第1シール部材、第2シール部材、及び、スペーサ部材のいずれも酸変性ポリエチレンで形成され、厚さ(z軸方向の大きさ)を120μmとした。
【0054】
4.2.試験例2の封止体
試験例2では第1シール部材は試験例1と同じとし、スペーサ一体型第2シール部材を
図4(a)の例に倣って用いた。すなわち、試験例2ではスペーサ一体型第2シール部材において、第2シール部材及びスペーサ部材のいずれもが、樹脂部材及び低線膨張率部材を有している。
第2シール部材及びスペーサ部材のいずれも、樹脂部材は酸変性ポリエチレンで形成し、低線膨張率部材はアルミニウム箔を用いた。第2シール部材及びスペーサ部材はいずれも、接合前において、厚さ方向(z軸方向)に変性ポリエチレンによる層35μm/アルミニウムによる層50μm/変性ポリエチレンによる層35μmとし、合計の厚さが120μmとなるようにした。
【0055】
4.3.試験例3の封止体
試験例3では第1シール部材は試験例1と同じとし、スペーサ一体型第2シール部材を
図4(b)の例に倣って用いた。すなわち、試験例3ではスペーサ一体型第2シール部材において、スペーサ部材が樹脂部材及び低線膨張率部材を有している。本試験例でスペーサ一体型第2シール部材の第2シール部材は第1シール部材と同様とし、スペーサ部材は試験例2と同様とした。
【0056】
4.4.試験方法
厚さ40μmの集電体(30μm厚さのアルミニウム箔と10μm厚さの銅箔を接着剤で積層)を準備した。
試験例1は
図5の例に倣って集電体の上下面に第1シール部材及び第2シール部材をインパルスシーラーで溶着した後にセパレータを第1シール部材にさらに溶着した。
試験例2、3は、
図6の例に倣って集電体の上面に第1シール部材、下面にスペーサ一体型第2シール部材をインパルスシーラ―で溶着した。
【0057】
4.5.評価方法及び結果
4.5.1.溶着時目視評価
各試験例に対して溶着が終了した時点で集電体にしわが発生しているかを目視で評価した。その結果、試験例1では集電体にしわが発生し、試験例2、3では集電体にしわが発生しなかった。
【0058】
4.5.2.熱衝撃試験後の目視評価
各試験例にかかる試験体に対して熱衝撃試験をおこなって、その後に集電体にしわが発生しているかを目視で評価した。熱衝撃試験は、65℃で1時間保持、2時間かけて-40℃まで冷却、-40℃で1時間保持、及び、2時間かけて65℃まで昇温を1つのサイクルとし、これを100サイクルおこなった。
その結果、試験例1では集電体には溶着時目視評価のときよりも大きいしわが発生したが、試験例2、3では集電体にしわが発生しなかった。
【符号の説明】
【0059】
10…二次電池、11…モジュール積層体、20…蓄電モジュール、21…電極積層体、22…バイポーラ電極、23…集電体、24…正極活物質層(第1活物質層)、25…負極活物質層(第2活物質層)、26…セパレータ、30…封止体、31…第1シール部材、32…スペーサ一体型第2シール部材、33…第2シール部材、34…スペーサ部材