(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042185
(43)【公開日】2025-03-27
(54)【発明の名称】基板分割工具
(51)【国際特許分類】
H05K 3/00 20060101AFI20250319BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20250319BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
H05K3/00 L
H05K1/02 R
H05K1/02 G
B26F3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149043
(22)【出願日】2023-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 仁智
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 久志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】北井 敦
(72)【発明者】
【氏名】沖野 正裕
【テーマコード(参考)】
3C060
5E338
【Fターム(参考)】
3C060AA11
3C060CB05
3C060CB12
3C060CB14
5E338BB46
5E338DD11
5E338EE60
(57)【要約】
【課題】 持ち運びが容易で、基板の配線領域を圧迫や歪みを抑制できる基板分割工具を提供する。
【解決手段】 基板分割工具は、スリットと該スリットに沿った分割部を備える基板の分割部を破砕する突起を有する破砕部と、破砕部の突起の先端に対向する保持面を有し保持面により基板を押さえる押さえ部と、破砕部および押さえ部が分割部を挟持して破砕部が分割部を破砕する方向に破砕部および押さえ部の少なくとも一方を駆動させる駆動部と、破砕部および押さえ部を相対的に移動可能に支持する支軸部と支軸部から伸長し駆動部を操作する一対の把手部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットと該スリットに沿った分割部を備える基板の前記分割部を破砕する突起を有する破砕部と、
前記破砕部の前記突起の先端に対向する保持面を有し前記保持面により前記基板を押さえる押さえ部と、
前記破砕部および前記押さえ部が前記分割部を挟持して前記破砕部が前記分割部を破砕する方向に前記破砕部および前記押さえ部の少なくとも一方を駆動させる駆動部と、
前記破砕部および前記押さえ部を相対的に移動可能に支持する支軸部と前記支軸部から伸長し前記駆動部を操作する一対の把手部と、を有することを特徴とする基板分割工具。
【請求項2】
前記押さえ部は、筒状の保持部と、前記保持部の中空部に配置され且つ前記保持面を備える可動部と、を有し、
前記駆動部により、前記可動部が前記破砕部に対して突出するように前記保持部と相対的に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の基板分割工具。
【請求項3】
前記駆動部は、前記把手部の操作により、前記保持部の前記保持面と前記破砕部とで前記分割部が挟持された状態から前記可動部が前記保持部から相対的に突出する状態へ移行させることを特徴とする請求項2に記載の基板分割工具。
【請求項4】
前記押さえ部は、前記保持面により前記基板を押さえる際に前記基板に形成されたマーキングに対向するように、前記保持部の側面に形成された対応マーキングを有することを特徴とする請求項2に記載の基板分割工具。
【請求項5】
前記押さえ部は、前記保持面により前記基板を押さえる際に前記スリットに刺入されるように、前記可動部の前記保持面に形成された刺入部を有することを特徴とする請求項2に記載の基板分割工具。
【請求項6】
前記刺入部は、前記保持面により前記基板を押さえる際に前記分割部を挟む一対のピンであることを特徴とする請求項5に記載の基板分割工具。
【請求項7】
前記破砕部の前記突起は、前記分割部の延在する方向に沿って前記一対のピンの間にて突出する切刃部を有することを特徴とする請求項6に記載の基板分割工具。
【請求項8】
前記破砕部の前記突起は、前記分割部の延在する方向に沿って前記一対のピンの間にて突出する錐状突起部を有することを特徴とする請求項6に記載の基板分割工具。
【請求項9】
前記刺入部は、前記保持面により前記基板を押さえる際に前記分割部に隣接する前記スリットに沿って伸び前記スリットに嵌る板状のピンを有することを特徴とする請求項5に記載の基板分割工具。
【請求項10】
前記把手部の一方は、前記支軸部から前記保持部の一方の側面に沿って延在して該一方の側面を支持し且つ前記保持部を介して前記破砕部を支持するフレームと、前記フレームの反対側の前記保持部の該一方の側面に対向する前記保持部の対向側面から対向方向に延在する把持部とを有し、
前記把手部の他方は、前記把持部に対向し沿って並行して配置され、かつ前記支軸部から離れた第1距離の位置にて前記可動部を前記保持部に対し移動可能に支持する可動ポストを回動可能に支持する第2の支軸部を有し、前記第2の支軸部を超えて前記第1距離より長い第2距離の位置まで伸長するレバー部を有することを特徴とする請求項2に記載の基板分割工具。
【請求項11】
前記把手部の一方は、前記支軸部から前記保持部の一方の側面に沿って延在して該一方の側面を支持し且つ前記保持部を介して前記破砕部を支持するフレームと、前記保持部の前記一方の側面側にて前記フレームに交差し前記保持部から離れる方向に前記支軸部から延在する把持部と、を有し、
前記把手部の他方は、前記把持部に対向し沿って並行して配置され、かつ前記支軸部から前記フレームを跨いで離れた第1距離の位置にて前記可動部を前記保持部に対し移動可能に支持する可動ポストを回動可能に支持する第2の支軸部を有し、前記第2の支軸部の反対側に前記支軸部を超えて前記第1距離より長い第2距離の位置まで伸長するレバー部を有することを特徴とする請求項2に記載の基板分割工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板分割工具に関し、特にプリント基板(以下、基板と呼ぶ)のうち製品基板(以下、基板本体と呼ぶ)と捨て基板とも呼ばれるダミー基板とからなる複合基板を分割するための基板分割工具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板には、電子部品が取り付けられていない状態のプリント配線板(PWB:printed wiring board)と、電子部品が実装されて電子回路として動作するようになった状態のプリント回路板(PCB:printed circuit board)が知られている。製造工程において、製品基板(基板本体)は複合基板からダミー基板を分割して得られる。複合基板の基板本体とダミー基板との間は、分割部で繋がっており、分割部以外の部分は分割用のスリットによって切り離されている。また、分割部には、複合基板から個別の基板本体に分割する際に切断される部分(切断部)として、V字断面形状のV溝が刻まれている。このような形状の複合基板は、1枚の平面板の基板基材に用いて、これにスリットを切り込む加工とV溝を刻む加工を施すことによって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複合基板は、複数の回路基板同士やダミー基板がV溝やミシン目等の分割部で接続されており、部品実装後に分割部を分割装置(ルーターやカッター)や基板分割工具(文鎮形状金具やT字金具)等を使って、個々の製品基板に切り離しが可能である。しかし、その際製品基板の分割部近傍に歪みが生じ、その歪みが分割部の周囲にある小型チップ部品に加わることで、部品破損が発生することがある。
【0005】
一般的に、分割装置を用いた場合、基板分割時の歪みが小さい傾向があるが、導入コストが高く、持ち運ぶことが難しいため、多数の量産工程で使用しにくいというデメリットがある。
【0006】
一方、基板分割工具は導入コストが低く、持ち運びが容易であるが、製品基板またはダミー部を曲げて折り欠く方法のため、分割部近傍の歪みが分割装置よりも大きく、また作業者により、基板の保持部や基板分割工具の固定部が異なり、歪みのばらつきが大きくなるというデメリットがある。
【0007】
特許文献1には、部品破損を避けるために、複合基板から回路基板を分割する際に回路基板上の電子部品に生じる破損を抑制することが可能な複合基板として分割部と部品の間に貫通スルーホール(貫通穴)を設け、歪みを貫通穴に吸収させるという手法が記載されている。
【0008】
しかし、歪みを吸収させるためには、貫通穴を製品基板内に設ける必要があるが、小さな穴では部品への応力を吸収できない可能性があるため、チップ部品サイズと同等以上の穴を設ける必要があり、貫通穴の周囲には配線できなくなり、高密度化への悪影響が懸念される。また、回転刃を有する分割装置を前提とした方法では導入コストが高い。
【0009】
上記の通り、基板の分割装置は分割時の歪みが小さいが、装置の導入コストが高く、持ち運びが難しい。一方の基板分割工具は導入コストが低く、持ち運びも容易だが、歪みを抑制することが難しい。特許文献1のように、基板側に新たに穴を設ける場合、配線領域を圧迫し、高密度配線に悪影響がある。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、コストが安価で持ち運びが容易な分割工具であり、基板の配線領域を圧迫することなく、歪みを抑制する基板分割工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による基板分割工具は、スリットと該スリットに沿った分割部を備える基板の前記分割部を破砕する突起を有する破砕部と、前記破砕部の前記突起の先端に対向する保持面を有し前記保持面により前記基板を押さえる押さえ部と、前記破砕部および前記押さえ部が前記分割部を挟持して前記破砕部が前記分割部を破砕する方向に前記破砕部および前記押さえ部の少なくとも一方を駆動させる駆動部と、前記破砕部および前記押さえ部を相対的に移動可能に支持する支軸部と前記支軸部から伸長し前記駆動部を操作する一対の把手部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板分割に際して、分割部近傍の実装部品に対するストレスを軽減する効果が得られ、コストが安価で持ち運びが容易な基板分割工具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による第1の実施例の基板分割工具の外観を示す概略斜視図である。
【
図2】第1の実施例の基板分割工具により分割処理される分割対象の複合基板の一例を示す拡大部分平面図である。
【
図3】第1の実施例の基板分割工具の押さえ部と分割支持部との関係を示す、下側から押さえ部の保持面を眺めた拡大部分平面図である。
【
図4】第1の実施例の基板分割工具の押さえ部と分割支持部とこれらの間に複合基板の分割部が位置する場合の関係を示す、下側から押さえ部の保持面を眺めた拡大部分平面図である。
【
図5】第1の実施例の基板分割工具の押さえ部と分割支持部との関係を示す要部の手前斜め上側から押さえ部とこれに接触する複合基板を眺めた拡大部分斜視図である。
【
図6】第1の実施例の基板分割工具の外観を示す概略斜視図である。
【
図7】第1の実施例の基板分割工具の外観を示す概略斜視図である。
【
図8】第1の実施例の基板分割工具の外観を示す概略斜視図である。
【
図9】第1の実施例の基板分割工具の外観を示す概略斜視図である。
【
図10】第1の実施例の基板分割工具の外観を示す概略斜視図である。
【
図11】本発明による第2の実施例の基板分割工具の外観を示す概略斜視図である。
【
図12】第2の実施例の基板分割工具により分割処理される分割対象の複合基板の一例を示す拡大部分平面図である。
【
図13】第2の実施例の基板分割工具の押さえ部と分割支持部との関係を示す、下側から押さえ部の保持面を眺めた拡大部分平面図である。
【
図14】第2の実施例の基板分割工具の押さえ部と分割支持部とこれらの間に複合基板の分割部が位置する場合の関係を示す、下側から押さえ部の保持面を眺めた拡大部分平面図である。
【
図15】本発明による第3の実施例の基板分割工具の外観を示す概略斜視図である。
【
図16】第3の実施例の変形例の基板分割工具の外観を示す概略斜視図である。
【
図17】本発明による第4の実施例の基板分割工具の押さえ部と分割支持部との関係を示す、下側から押さえ部の保持面を眺めた拡大部分平面図である。
【
図18】第4の実施例の基板分割工具の押さえ部と分割支持部とこれらの間に複合基板の分割部が位置する場合の関係を示す、下側から押さえ部の保持面を眺めた拡大部分平面図である。
【
図19】本発明による第5の実施例の基板分割工具の外観を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明による実施例の基板分割工具について詳細に説明する。なお、実施例において、実質的に同一の機能および構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
(第1の実施例)
図1は、本実施例の基板分割工具を示す概略斜視図である。なお、説明の便宜上、図に示すように直交XYZ座標軸の各軸の方向をXYZ方向として、基板出し入れ側から基板分割工具の先端に向かう方向をZ方向(すなわち、手前と先)とし、基板分割工具を使用者が握る場合の使用者から見て左右(X方向)、上下(Y方向)として説明する。
【0016】
基板分割工具は、例えば金属製の分割支持部CSH(破砕部)、押さえ部PMT、駆動部DRP、および一対の把手部HDを有する。
【0017】
基板分割工具では、分割対象の複合基板11のダミー基板14から分割支持部CSHと押さえ部PMTとの間に挿入され、分割部12を中心に基板本体13とダミー基板14の近傍部分が分割支持部CSHと押さえ部PMTとの間に配置される。
【0018】
図2は、基板分割工具により分割処理される分割対象の複合基板11の一例を示す拡大部分平面図である。複合基板11は分割部12を介して接続された基板本体13およびダミー基板14からなる。
図1および
図2では、分割部12を1つしか示さないが、複数の分割部12が複合基板11に設けられ、隣接する分割部12間は貫通長孔のスリットRHが複合基板11に設けられる。基板本体13の基板本体13には複数の実装部品が搭載されるが、図示されていない。
【0019】
分割部12は、基板本体13からダミー基板14を分割するためのV溝やミシン目(短いスリット)が付けられた周囲よりも脆弱な線状の部位である。
図2に示す分割部12は、隣接するスリットRHの間に8個の孔が整列して穿孔されて構成されている。
【0020】
また、スリットRHは、複合基板11の位置決めおよび固定を行うために、押さえ部PMTの対応する位置の位置合わせ用に利用される。ピンなどを差し込むなどのスリットRHの利用により、位置決めおよび保持を速やかに実行できる。
【0021】
図1に示す上側の押さえ部PMTは、分割支持部CSHの突起の先端に対向する保持面6aを有し保持面6aにより複合基板11の分割部12を押さえる。
【0022】
図1に示す分割支持部CSHは、複合基板11の分割部12を破砕するために押さえ部PMTの保持面6aに対向する突起を有する。
【0023】
図3は、押さえ部PMTと分割支持部CSHとの関係を示す、下側から押さえ部PMTの保持面6aを眺めた拡大部分平面図である。
【0024】
図4は、押さえ部PMTと分割支持部CSHとこれらの間に複合基板11の分割部12が位置する場合の関係を示す、下側から押さえ部PMTの保持面6aを眺めた拡大部分平面図である。
【0025】
押さえ部PMTは、筒状の保持部5と、保持部5の中空部に摺動可能に配置され且つ保持面6aを下側に備える可動部6とを有する。保持部5の下側端面も一時的に保持面として機能する。
【0026】
可動部6は、保持面6aにより複合基板11を押さえる際に分割部12を挟む一対のピン8を有する。一対のピン8は、複合基板11の分割部12を挟むスリットRHへの刺入部として機能する。換言すれば、押さえ部PMTは、保持面6aにより複合基板11を押さえる際にスリットRHに刺入されるように、可動部6の保持面6aに形成された刺入部を有する。
【0027】
図3および
図4に示すように、二点鎖線で示す分割支持部CSHは、押さえ部PMTの可動部6の保持面6aに対向する突起を有する。分割支持部CSHの突起は、分割部12の延在する方向に沿って一対のピン8の間にて突出する切刃部BLDを有する。可動部6の保持面6aは一対のピン8がある環状部分は平坦であり、環状部分の中央部分は平坦でも浅い凹面でもよい。
【0028】
切刃部BLDによる粉砕工程おいて、保持面6aと切刃部BLDに挟持される分割部12は、大きな圧縮力がかかることから、分割部12内部に圧縮応力が生じ、その圧縮応力が基板本体13の内側に向けて伝わるので、本実施例のように、保持面6aの環状部分の中央部分に浅い凹面を設けておけば、分割部12の局所的な収縮および伸張の逃げ部として機能し、平坦な環状部分が圧縮応力を吸収する。このため、分割部12から保持面6aの周りの基板本体13に伝わる圧縮応力を緩和することができ、分割時に実装部品(図示せず)への影響を抑制できる。よって、保持面6aの環状部分の中央部分を浅い凹面とすることが好ましい。
【0029】
図5は、押さえ部PMTと複合基板11との関係を示す要部の手前斜め上側から押さえ部PMTとこれに接触する複合基板11を眺めた拡大部分斜視図である。
【0030】
押さえ部PMTは、保持面6aにより複合基板11を押さえる際に複合基板11に形成されたマーキングMKに対向するように、保持部5の側面に形成された対応マーキングMK2を有する。
【0031】
翻って、
図1を参照して駆動部DRPおよび把手部HDを説明する。把手部HDの操作と駆動部DRPにより、押さえ部PMTにおいて、可動部6が分割支持部CSHに対して突出するように保持部5と相対的に上下方向に移動可能となる。
【0032】
駆動部DRPは、把手部HDの把持部GRPおよびレバー部LVPと協働するフレームFL、保持部5(分割支持部CSH)、支軸部PV、第2の支軸部PV2および可動ポストMVPを含む。作業者に把持される把持部GRPおよびレバー部LVPの間には圧縮バネCSGが装備される。
【0033】
一対の把手部HDの把持部GRPおよびレバー部LVPは、分割支持部CSHおよび押さえ部PMTを相対的に移動可能に支持する支軸部PVと支軸部PVから伸長し駆動部DRPを操作するものである。把持部GRPおよびレバー部LVPは一方に対して他方を相対的に駆動するので、駆動部DRPは、分割支持部CSHおよび押さえ部PMTが分割部12を挟持して分割支持部CSHが分割部12を破砕する方向に分割支持部CSHおよび押さえ部PMTの少なくとも一方を駆動させる。
【0034】
把手部HDの一方は、一体となったフレームFLと保持部5と把持部GRPとを含む。
【0035】
フレームFLは、支軸部PVから保持部5の一方の側面S1に沿って延在して該一方の側面S1を支持し且つ保持部5を介して分割支持部CSHを支持する。
【0036】
把持部GRPは、フレームFLの反対側の保持部5の該一方の側面S1に対向する保持部5の対向側面S2から対向方向に延在する。
【0037】
把手部HDの他方は、レバー部LVPを有する。レバー部LVPは、支軸部PVから把持部GRPに対向し沿って並行して配置されている。レバー部LVPは、第2の支軸部PV2とこれに回動可能に上側一端が支持される可動ポストMVPとを有する。可動ポストMVPは、下側他端にて可動部6の上端に接続され、可動部6を保持部5に対し移動可能(摺動可能)に支持する。レバー部LVPは、支軸部PVから離れた第1距離D1の位置に第2の支軸部PV2を有し、第2の支軸部PV2を超えて第1距離D1より長い第2距離D2の位置まで伸長する。なお、把持部GRPもレバー部LVPと同程度、フレームFLから伸長している。
【0038】
駆動部DRPは、把手部HDの把持部GRPとレバー部LVPの手による操作により、保持部5の保持面6aと分割支持部CSHとで分割部12が挟持された状態(接触する抵抗感が手に伝わるまで握った時)から可動部6が保持部5からさらに突出する状態(破砕される抵抗感が手に伝わるまで握った時)へ移行させるように構成されている。
【0039】
本実施例では、押さえ部PMTの可動部6の保持面6aにより、複合基板11を、その分割部12(V溝、ミシン目等)周囲を押さえながら分割する構成としている。分割部12周囲を押さえることで、分割部12を押し割って分割する際に生じる歪みが、周囲の部品に広がるのを抑制することができる。
【0040】
(動作の説明)
図6から、基板分割工具を用いて複合基板11からダミー基板14を分離する動作について順に説明する。
【0041】
まず、
図6と
図7に示すように、分離工程の破砕作業開始の状態では、保持面6aのピン8の保護のため、基板分割工具における押さえ部PMTの可動部6が保持部5の中空部にセットバックされている。可動部6のピン8が出ていないので、複合基板11は、ダミー基板14側から押さえ部PMTと分割支持部CSHの間へ、ピン8および複合基板11を傷つけることなく、挿入できる。
【0042】
次に、
図8に示すように、挿入後、基板本体13上と保持部5に設けた位置合わせ用マーキングMK、MK2(
図5、参照)で位置を合わせて、保持部5および可動部6が面一となるように可動部6を下げて、可動部6から出ている位置合わせ用ピン8の下側から複合基板11を上げて、分割部12の両隣りのスリットRHに一対のピン8をそれぞれ挿入する。ここで、複合基板11は、分割支持部CSHが分割したい分割部12のミシン目中央に当たるように、位置決めされ保持される(
図4、参照)。
【0043】
次に、
図9に示すように、基板分割工具の把持部GRPを握り、力を加えると、基板分割工具の可動部6が可動し下に下がり、複合基板11(分割部12)が分割支持部CSHと可動部6(保持面6a)の間に挟まれ保持される。
【0044】
次に、
図10に示すように、把持部GRPにさらに力を加えると、可動部6が保持部5からさらに突出し、分割支持部CSH(切刃部BLD)とともにミシン目部(分割部12)を押し切り、複合基板11が分割される。
【0045】
分割部12が複数ある場合、以上の動作を繰り返してすべての分割部12を破砕することにより、分割部12で離れたダミー基板14から基板本体13を離し分割処理は完了する。
【0046】
(効果の説明)
以上のように、本実施例によれば、基板分割工具の持ち運びが容易であり、さらに、把持のツーアクション(
図9図10、参照)で、可動部6が複合基板11の分割部12周辺を押さえながら、分割部12を押し切ることで、基板分割時の歪みが周囲へ波及することを抑制する。よって、電子部品実装後の複合基板11に対して、基板本体13の配線領域を圧迫することなく、歪みを抑制しながら複合基板11を分割することができる。また、複合基板11に複数の分割部12の分割箇所がある場合は、上記のツーアクションを分割部12ごとに実施する必要はあるが、従来の分割治具でも同様であるため、従来から分割に要する工数が増えることなく、作業可能であるという効果が得られる。
【0047】
(第2の実施例)
図11は、本実施例の基板分割工具を示す概略斜視図である。本実施例は、第1の実施例の1つの切刃部BLDを有する分割支持部CSHに代えて、それぞれが先細りのテーパ状を有する2つの錐状突起部CONを備えた分割支持部CSH2を採用した以外、第1の実施例と同一である。本実施例における2つの錐状突起部CONを有する分割支持部CSH2は、
図12に示す基板本体13のみにミシン目孔を有する分割部12aを備えた複合基板11の当該ミシン目孔のうちの2つに対応して突出するものである。
【0048】
図12は、本実施例の基板分割工具により分割処理される分割対象の複合基板11を示す拡大部分平面図である。この複合基板11は、
図12に示すようにスリットRHを基準にミシン目孔の5つを基板本体13側のみに設けた分割部12aを有する。当該5つのミシン目孔うちの2つのミシン目孔12b、12cに対応して基板分割工具の分割支持部CSHの2つの錐状突起部CONが突出している(
図13、
図14、参照)。
【0049】
図13は、押さえ部PMTと分割支持部CSH2との関係を示す、下側から押さえ部PMTの保持面6aを眺めた拡大部分平面図である。
図14は、押さえ部PMTと分割支持部CSH2とこれらの間に複合基板11の分割部12aが位置する場合の関係を示す、下側から押さえ部PMTの保持面6aを眺めた拡大部分平面図である。
【0050】
第1の実施例では、分割対象の複合基板11の分割部12として基板本体13とダミー基板14の両側にミシン目孔(
図2、参照)を設け、その間の箇所を分割支持部CSH(切刃部BLD)で押し割ることで複合基板11を分割している。一方、第2の実施例では、
図12のように分割部12aとしてミシン目孔を基板本体13(あるいはダミー基板14でも良い)のみに設ける場合、分割支持部CSH2は、
図13、
図14のように、2つの先細りのテーパ状の錐状突起部CONが、対応させてしている2つのミシン目孔12b、12cに差し込む構造を備えている。
【0051】
(動作の説明)
第2の実施例においても、動作の手順は第1の実施例(
図6~
図10、参照)と同様であるが、分割支持部CSHが押し割るのではなく、所定のミシン目孔に分割支持部CSH2の錐状突起部CONを差し込むことで、ミシン目孔間を圧壊させ、複合基板11を分割する。ただし、各錐状突起部CONの最大直径は各所定のミシン目孔の直径より大きいものとする。
【0052】
(効果の説明)
第2の実施例においても、第1の実施例と同様に、基板分割時の歪みが周囲へ波及することを抑制する。
【0053】
(第3の実施例)
図15は、本実施例の基板分割工具を示す概略斜視図である。本実施例は、第1の実施例の支軸部PVから保持部5の一方の側面S1に沿って延在して分割支持部CSHを支持するフレームFLに代えて、保持部5と一体となっている保持部5の一方の側面S1の第1フレームFL1と保持部5の対向側面S2(把持部GRP側)の第2フレームFL2とを採用した以外、第1の実施例と同一である。
【0054】
第1フレームFL1は支軸部PVから保持部5の一方の側面S1に沿って延在して保持部5に固定され、第2フレームFL2は、上側が保持部5に固定され、下側が分割支持部CSHを支持する。
【0055】
本実施例によれば、第1の実施例と同様の効果が得られるとともに、分割作業時の基板分割工具の把持部GRPが複合基板11の上側に位置しないので、第1の実施例と異なり、複合基板11の基板本体13内に背の高い部品があったとしても、分割時に基板分割工具の把持部GRPがそれら部品に干渉することを防止できる。
【0056】
(変形例)
図16は、本変形例の基板分割工具を示す概略斜視図である。本変形例は、第3の実施例の把持部GRP側の第2フレームFL2に代えて、第3フレームFL3を採用した以外、第3の実施例と同一である。
【0057】
第3フレームFL3は、上側が保持部5と把持部GRPに固定され、下側が分割支持部CSHを支持し、上側と下側に亘る中間部分を把持部GRPに沿って延在させて複合基板11を挿入できる空間を画定する。さらに、第3フレームFL3は、上側の保持部5と把持部GRPとの間に作業者の手を挿入できる空間をも画定する。
【0058】
本変形例によれば、第3の実施例と同様の効果が得られるとともに、分割作業がなされる複合基板11の分割部12が複合基板において様々異なる位置にある場合でも、1つの変形例の基板分割工具で作業できるようになる。
【0059】
(第4の実施例)
図17は、本実施例の基板分割工具における押さえ部PMTと分割支持部CSHとの関係を示す、下側から押さえ部PMTの保持面6aを眺めた拡大部分平面図である。
図18は、本実施例の基板分割工具における押さえ部PMTと分割支持部CSHとこれらの間に複合基板11の分割部12が位置する場合の関係を示す、下側から押さえ部PMTの保持面6aを眺めた拡大部分平面図である。本実施例は、第1の実施例の押さえ部PMTの可動部6の保持面6aに設けられた刺入部であるピン8に代えて、刺入部として板状のピン8aを採用した以外、第1の実施例と同一である。
【0060】
図18に示すように、板状のピン8aは、保持面6aにより複合基板11を押さえる際に分割部12に隣接するスリットRHに沿って伸びスリットRHに嵌る。
【0061】
本実施例によれば、第1の実施例と同様の効果が得られるとともに、板状のピン8aの断面が矩形形状を有しているので、分割部12に隣接するスリットRHに嵌る際に複合基板11の法線の回りの回転を抑制できる。よって、
図18に示すように一対の板状のピン8aでなくとも、どちらか一方の板状のピン8aを可動部6の保持面6aに設けることでも、複合基板11の位置決めや基板保持を達成できる。
【0062】
(第5の実施例)
図19は、本実施例の基板分割工具を示す概略斜視図である。本実施例は、第1の実施例の分割支持部CSHおよび押さえ部PMTを中心に駆動部DRPおよび一対の把手部HDを複合基板11側に配置している構成に代えて、分割支持部CSHおよび押さえ部PMTを中心に駆動部DRPおよび一対の把手部HDを複合基板11が存在しない側に配置している構成とした以外、第1の実施例と同一である。
【0063】
本実施例の基板分割工具では、把手部HDの一方は、支軸部PVから保持部5の一方の側面S1に沿って延在して該一方の側面S1を支持し且つ保持部5を介して分割支持部CSHを支持するフレームFLと、保持部5の一方の側面S1側にてフレームFLに交差し保持部5から離れる方向に支軸部PVから延在する把持部GRPと、を有している。
【0064】
本実施例の基板分割工具では、把手部HDの他方は、把持部GRPに対向し沿って並行して配置され、かつ支軸部PVからフレームFLを跨いで離れた第1距離D1の位置にて可動部6を保持部5に対し移動可能に支持する可動ポストMVPを回動可能に支持する第2の支軸部PV2を有し、第2の支軸部PV2の反対側に支軸部PVを超えて第1距離D1より長い第2距離D2の位置まで伸長するレバー部LVPを有している。
【0065】
本実施例によれば、第1の実施例と同様の効果が得られるとともに、分割作業時の基板分割工具の把持部GRPが複合基板11の上側に位置しないので、第1の実施例と異なり、複合基板11の基板本体13内に背の高い部品があったとしても、分割時に基板分割工具の把持部GRPがそれら部品に干渉することを防止できる。
【0066】
上記実施例では電子部品が実装された複合基板(プリント回路板(PCB:printed circuit board)を分割する場合を説明したが、複合基板は電子部品が実施されていないプリント配線板(PWB:printed wiring board)でもよく、また複合基板以外でも板状のものであれば適用可能である。
【0067】
さらに、本発明は上記の実施例と変形例のいずれの組み合わせをも含む。
【符号の説明】
【0068】
5 保持部
6 可動部
6a 保持面
8 位置合わせ用ピン
11 複合基板
12 分割部
13 基板本体
14 ダミー基板
LVP レバー部
FL フレーム
PMT 押さえ部
PV 支軸部
PV2 第2の支軸部
BLD 切刃部
RH 分割用スリット
CSH 分割支持部(破砕部)
CON 錐状突起部
HD 把手部
GRP 把持部
DRP 駆動部
MK マーキング
MVP 可動ポスト
8a 板状のピン