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<図1>
  • -法面構造及び廃棄物処分場 図1
  • -法面構造及び廃棄物処分場 図2
  • -法面構造及び廃棄物処分場 図3
  • -法面構造及び廃棄物処分場 図4
  • -法面構造及び廃棄物処分場 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042274
(43)【公開日】2025-03-27
(54)【発明の名称】法面構造及び廃棄物処分場
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/18 20060101AFI20250319BHJP
   E02B 3/12 20060101ALI20250319BHJP
   B09B 1/00 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
E02D17/18 Z
E02B3/12
B09B1/00 F ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149183
(22)【出願日】2023-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大輔
【テーマコード(参考)】
2D044
2D118
4D004
【Fターム(参考)】
2D044CA00
2D118AA20
2D118BA07
2D118BA15
2D118CA08
2D118DA01
2D118GA12
4D004AA46
4D004BB05
(57)【要約】
【課題】勾配の自由度が高い法面構造を提供する。
【解決手段】法面構造10Aは、発泡層14を積み重ねて形成された軽量盛土12と、ポリウレタンフォームなどの発泡体からなる発泡層14の側面に沿って配置された遮水シート16とを備えている。また、法面構造10Aにおいて、遮水シート16は、その一部が、2つの発泡層14,14に挟まれて保持されている。そして、法面構造10Aは、廃棄物を埋め立て処分するための廃棄物処分場50の側壁を構成している。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡層を積み重ねて形成された軽量盛土と、
前記発泡層の側面に沿って配置された遮水シートと、を備え、
前記遮水シートの一部が2つの前記発泡層に挟まれている、法面構造。
【請求項2】
廃棄物処分場の側壁である請求項1に記載の法面構造。
【請求項3】
側壁が発泡層である、廃棄物処分場。
【請求項4】
前記発泡層がポリウレタン製である請求項3に記載の廃棄物処分場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、法面構造及び廃棄物処分場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物等の廃棄物を貯蔵する処分場やため池などにおいて、盛土によって形成された法面に遮水シートを敷設することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-59909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
土砂による盛土によって法面を形成すると、法面の勾配を急にすることができない。このため、盛土の幅が大きくなってしまい、例えば廃棄物処分場とした際に廃棄物を受け入れるためのスペースが小さくなってしまう。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記課題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、勾配の自由度が高い法面構造及び廃棄物処分場を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る法面構造の第1態様は、
発泡層を積み重ねて形成された軽量盛土と、
前記発泡層の側面に沿って配置された遮水シートと、を備え、
前記遮水シートの一部が2つの前記発泡層に挟まれていることを要旨とする。
【0007】
本発明に係る法面構造の第2態様は、前記法面構造の第1態様において、
廃棄物処分場の側壁であってもよい。
【0008】
本発明に係る廃棄物処分場の第1態様は、
側壁が発泡層であることを要旨とする。
【0009】
本発明に係る廃棄物処分場の第2態様は、前記廃棄物処分場の第1態様において、
前記発泡層がポリウレタン製であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る法面構造によれば、発泡層で構成された軽量盛土であることから、勾配の自由度が高い法面を形成できる。
本発明に係る廃棄物処分場によれば、発泡層によって勾配の自由度が高い側壁を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る法面構造を側壁として備える廃棄物処分場の要部を示す概略断面図である。
図2】第1実施形態の法面構造の製造過程を示す説明図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る法面構造を側壁として備える廃棄物処分場の要部を示す概略断面図である。
図4】第2実施形態の法面構造の製造過程を示す説明図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る法面構造を側壁として備える廃棄物処分場の要部を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る法面構造及び廃棄物処分場につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一例を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【実施例0013】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係る法面構造10Aは、発泡層14を積み重ねて形成された軽量盛土12と、発泡層14の側面に沿って配置された遮水シート16とを備えている。第1実施形態の法面構造10は、一般廃棄物や産業廃棄物やその他の廃棄物を埋め立て処分するための廃棄物処分場50において底面から立ち上がる側壁を構成している。すなわち、廃棄物処分場50の側壁が、発泡層14で構成されているともいえる。
【0014】
軽量盛土12は、地山60の斜面を覆うように配置されている。軽量盛土12は、地山60に沿って上下方向に重ねて形成された複数段の発泡層14で構成されている。各発泡層14の側面は、遮水シート16を敷設することに適した勾配で凸凹が少ない平滑な面になっている。通常の土砂による盛土であると土砂の条件がよくても、勾配を1.8~2.0(傾斜角度60°~63°程度)にすることが求められるが、発泡層14による軽量盛土12によれば、硬化性の樹脂で構成されていることから、勾配を2.0よりも大きくすることができ、例えば垂直又は垂直に近い勾配に設定することができる。
【0015】
発泡層14は、ポリウレタンフォームなどの発泡体で構成されている。発泡体の中でも、施工現場において発泡硬化させる現場発泡ポリウレタンフォームは、軽量性、施工性、地山60に対する接着性等の観点から好ましい。発泡層14の圧縮強度(JIS A9511)は、特に限定するものではないが、例えば120kN/m~400kN/m程度であると好ましい。また、発泡層14の密度(JIS A9511)は、特に限定するものではないが、例えば30kg/m~50kg/m程度であると好ましい。
【0016】
図1に示すように、遮水シート16は、その一部が2つの発泡層14に挟まれている。より具体的には、遮水シート16の上端部が上下に重なる2つの発泡層14に挟まれて保持されている。また、遮水シート16は、上下に重なる2つの発泡層14に挟まれた上端部より下側の部分が、発泡層14の側面に沿って配置され、発泡層14の側面を被覆している。遮水シート16の下端は、廃棄物処分場50の底面又は下側に配置された遮水シート16に突き当てて配置したり、廃棄物処分場50の底面又は下側に配置された遮水シート16に重ね合わせて配置したりすればよい。
【0017】
遮水シート16としては、例えば、合成ゴム系材料、合成樹脂系材料、ゴムアスファルト系材料及び繊維系材料などを単体又は組み合わせて構成されたシートが挙げられる。合成ゴム系材料としては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどを単体又は複数組み合わせたものが挙げられる。合成樹脂系材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル(EVA)などのオレフィン系樹脂や塩素化ポリエチレンなどを単体又は複数組み合わせたものが挙げられる。ゴムアスファルト系材料としては、例えば、織布や不織布からなる芯材を、ストレートアスファルト、ブローンアスファルトなどの一般アスファルトや改質アスファルトで被覆したものが挙げられる。繊維系材料としては、ポリエステル、ビニロン、ナイロン、ポリプロピレン、アクリル、ポリアミドなどの合成繊維からなる不織布、織布あるいはマットなどが挙げられる。
【0018】
次に第1実施形態に係る法面構造10Aの製造方法について説明する。なお、発泡層14を現場発泡ポリウレタンフォームで構成する場合である。まず、現場でA液(ポリオール)とB液(イソシアネート)とを混合した発泡材料を、地山60に吹き付けて発泡させることで、ポリウレタンフォームからなる発泡層14を地山60に沿って所要の高さ及び幅で形成する(図2(a)参照)。このとき、発泡層14において遮水シート16で被覆することになる側面の勾配は、発泡材料の吹き付け量により調整したり、型枠で形成したりするなどによって任意の角度で形成可能である。次に、遮水シート16の上端部を発泡層14の上面にピンなどで固定し、遮水シート16の残部を発泡層14の側面に沿って垂れ下げることで、遮水シート16を発泡層14の側面に沿って配置する(図2(b)参照)。
【0019】
先に形成した発泡層14の上において発泡材料を地山60に吹き付けて発泡させることで、ポリウレタンフォームからなる発泡層14を先の発泡層14に積み重ねて地山60に沿って所要の高さ及び幅で形成する(図2(c)参照)。このとき、先の発泡層14の上面に配置された遮水シート16の上端部の上に、後に形成される発泡層14を形成することで、遮水シート16の上端部が上下2つの発泡層14に挟まれて固定される。次に、遮水シート16の上端部を、後に形成した発泡層14の上面にピンなどで固定し、遮水シート16の残部を後に形成した発泡層14の側面に沿って垂れ下げることで、遮水シート16を後に形成した発泡層14の側面に沿って配置する(図2(d)参照)。このように、発泡層14の形成と遮水シート16の配置とを交互に繰り返すことで、地山60に沿って積み重ねて形成された複数の発泡層14で構成された軽量盛土12と、発泡層14の側面に沿って配置された遮水シート16とを備える法面構造10Aが得られる。
【0020】
前述した法面構造10Aの製造方法は、発泡材料を発泡させて形成された発泡層14の上面に、遮水シート16の一部を配置すると共に、遮水シート16の残部を発泡層14の側面に沿わせて配置する工程と、遮水シート16の一部に重ねて発泡材料を発泡させることで、先に形成した発泡層14に積み重ねて新たな発泡層14を形成する工程と、を有している。この製造方法によれば、積み重なった発泡層14で構成された軽量盛土12の側面を、遮水シート16で覆った法面構造10Aを簡単に形成することができる。
【0021】
前述した法面構造10Aは、発泡層14によって遮水シート16の取り付け面を形成することで、硬化性の樹脂からなる発泡層14が自立することから、取り付け面の勾配の自由度が高い。例えば、取り付け面の勾配を急にすることで、発泡層14で構成された軽量盛土12は、土砂からなる盛土と比べて地山60からの水平方向の幅が小さくなるから、法面構造10Aを廃棄物処分場50の側壁として用いると廃棄物処分場50の容量を大きくとることができる。また、法面構造10Aは、遮水シート16の一部を2つの発泡層14に挟む構成であるから、遮水シート16を2つの発泡層14で挟んで保持することができる。これにより、軽量盛土12の側面に遮水シート16を配置する配置作業や、遮水シート16同士を接続する接続作業の手間を大幅に軽減することができ、遮水シート16によって軽量盛土12を被覆する作業を簡単にすることができる。
【0022】
発泡層14からなる軽量盛土12は、土砂と比べて軽量であることから、支持地盤に加わる荷重を最小限に抑えることができる。また、発泡層14は、発泡体(ポリウレタンフォーム)特有の自己接着性により遮水シート16や地山60などの周囲のものと接着することから、周囲と一体化して安定した軽量盛土12が得られる。
【0023】
特に、現場でA液(ポリオール)とB液(イソシアネート)とを混合した発泡材料を発泡硬化させる現場発泡ポリウレタンフォームで発泡層14を形成することで、以下のメリットがある。現場発泡ポリウレタンフォームは、吹き付けから24時間程度で強度が出ることから、コンクリートと比べて強度が出るまでの時間が短い。また、現場発泡ポリウレタンフォームは、硬化性の樹脂であることから、土砂等による埋め戻しの場合のような転圧を必要としない。更に、現場発泡ポリウレタンフォームは、液体から固体になることから、地山60などの周囲の形状に合わせて簡単に充填することができる。このように、発泡層14の施工効率が高くなることから、法面構造10Aの施工期間を大幅に短縮できる。また、発泡材料が軽量であることから発泡層14の形成に大型重機を必要とせずに人力で行うことができ、法面構造10Aの施工エリアの自由度が高く、車両が入れない場所であっても法面構造10Aを形成できる。
【0024】
(第2実施形態)
図3に示すように、第2実施形態に係る法面構造10Bは、発泡層14を積み重ねて形成された軽量盛土12と、発泡層14の側面に沿って配置された遮水シート16とを備えている。第2実施形態の法面構造10Bは、廃棄物処分場50の側壁を構成している。すなわち、廃棄物処分場50の側壁が、発泡層14で構成されているともいえる。ここで、第2実施形態では、上段の発泡層14の下面が下段の発泡層14の上面よりも張り出すように形成されている。第2実施形態の法面構造10Bは、発泡層14の構成が第1実施形態と相違するが、その他の構成は第1実施形態と同様なので、同じ機能を有する構成に第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。そして、第2実施形態の法面構造10Bであっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0025】
次に第2実施形態に係る法面構造10Bの製造方法について説明する。なお、発泡層14を現場発泡ポリウレタンフォームで構成する場合である。まず、現場でA液(ポリオール)とB液(イソシアネート)とを混合した発泡材料を、地山60に吹き付けて発泡させることで、ポリウレタンフォームからなる発泡層14を地山60に沿って所要の高さ及び幅で形成する(図4(a)参照)。次に、遮水シート16の上端部を発泡層14の上面にピンなどで固定し、遮水シート16の残部を発泡層14の側面に沿って垂れ下げることで、遮水シート16を発泡層14の側面に沿って配置する(図4(b)参照)。そして、廃棄物52によって1段目の発泡層14の高さまで埋め戻す(図4(c)参照)。
【0026】
先に形成した発泡層14及び廃棄物52の上において発泡材料を、地山60に吹き付けて発泡させることで、ポリウレタンフォームからなる発泡層14を先の発泡層14に積み重ねて地山60に沿って所要の高さ及び幅で形成する(図4(d)参照)。このとき、発泡層14を先に形成した発泡層14の上だけでなく廃棄物52の上にかけて形成することで、後に形成した発泡層14の下面が先に形成した発泡層14の上面から張り出す。また、先の発泡層14の上面に配置された遮水シート16の上端部の上に、後に形成される発泡層14を形成することで、遮水シート16の上端部が上下2つの発泡層14に挟まれて固定される。次に、遮水シート16の上端部を、後に形成した発泡層14の上面にピンなどで固定し、遮水シート16の残部を後に形成した発泡層14の側面に沿って垂れ下げることで、遮水シート16を後に形成した発泡層14の側面に沿って配置する(図4(e)参照)。そして、廃棄物52によって2段目の発泡層14の高さまで埋め戻す(図4(f)参照)。このように、発泡層14の形成と廃棄物52の埋め戻しと遮水シート16の配置とを繰り返すことで、地山60に沿って積み重ねて形成された複数の発泡層14で構成された軽量盛土12と、各発泡層14の側面に沿って配置された遮水シート16とを備える法面構造10Bが得られる。第2実施形態の製造方法によれば、第1実施形態の作用効果に加えて、廃棄物52を発泡層14の形成基盤として各ウレタン層14の幅を小さくすることができるので、法面構造10Bを廃棄物処分場50の側壁として用いると廃棄物処分場50の容量をより大きくとることができる。また、発泡層14を形成するために用いる発泡材料の量が低減されるので、コストを抑えることができる。
【0027】
(第3実施形態)
図5に示すように、第3実施形態に係る法面構造10Cは、発泡層14を積み重ねて形成された軽量盛土12と、発泡層14の側面に沿って配置された遮水シート16とを備えている。第3実施形態の法面構造10Cは、廃棄物処分場50の側壁を構成している。すなわち、廃棄物処分場50の側壁が、発泡層14で構成されているともいえる。ここで、第3実施形態では、上下左右に配置された法枠62によって法面を保護する法枠工が施された地山60に沿って法面構造10Cを形成している点が、第1実施形態及び第2実施形態と異なっている。第3実施形態の法面構造10Cは、地山60の構成が第1実施形態と相違するが、その他の構成及び製造方法は第1実施形態と同様なので、同じ機能を有する構成に第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。そして、第3実施形態の法面構造10Cであっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0028】
(変更例)
前述した事項に限らず、例えば以下のようにしてもよい。なお、本発明は、実施形態及び以下の変更例の具体的な記載のみに限定されるものではない。
(1)実施形態では、遮水シートの上端部を2つの発泡層で挟む構成であるが、これに限らず、遮水シートの上端部に代えて又は加えて、遮水シートの側端部や下端部や、上下又は左右の中間部などの他の一部を2つの発泡層で挟むようにしてもよい。
(2)実施形態では、法面構造を廃棄物処分場に適用したが、これに限らず、本開示の法面構造を河川や池などの遮水工として適用してもよい。
(3)実施形態では、複数段の発泡層を備える法面構造を側壁として適用した廃棄物処分場を例示したが、これに限らず、廃棄物処分場の側壁を、1つの発泡層で形成してもよい。
【符号の説明】
【0029】
10A,10B,10C 法面構造、12 軽量盛土、14 発泡層、16 遮水シート、
50 廃棄物処分場、52 廃棄物、60 地山
図1
図2
図3
図4
図5