(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042350
(43)【公開日】2025-03-27
(54)【発明の名称】画像形成方法及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/01 20060101AFI20250319BHJP
G03G 9/09 20060101ALI20250319BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20250319BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20250319BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20250319BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
G03G15/01 K
G03G9/09
G03G9/087 331
G03G15/20 555
G03G15/01 J
G03G21/00 370
G03G9/08 391
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149305
(22)【出願日】2023-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本橋 亜美
(72)【発明者】
【氏名】上田 隼也
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
2H300
2H500
【Fターム(参考)】
2H033AA49
2H033CA04
2H033CA30
2H270KA72
2H270LA25
2H270MA35
2H300EJ09
2H300EJ10
2H300EJ49
2H300EJ50
2H300EK05
2H300GG11
2H300MM07
2H300MM13
2H300MM30
2H500AA01
2H500AA06
2H500AA13
2H500AA14
2H500CA06
2H500CB05
2H500EA17A
2H500EA47A
2H500EA57A
2H500FA13
(57)【要約】
【課題】低温定着性に優れ、且つ画像の表面荒れが少ない画像を形成できる画像形成方法を提供する。
【解決手段】画像形成方法は、記録媒体上に、白色トナー画像と、当該白色トナー画像上に配置された有色トナー画像とを含むトナー画像を形成する工程と、前記トナー画像を、前記記録媒体上に定着させる工程とを含む。定着させる工程では、内周の少なくとも一部が加熱部材で支持された環状ベルトと、前記加熱部材と前記環状ベルトを介して対向する対向部材との間で、前記トナー画像が形成された記録媒体をニップして、前記トナー画像を前記記録媒体上に定着させる。白色トナーと前記有色トナーが、下記式の関係を満たす。
0.3≦lоgμ(W110)-lоgμ(C100)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成方法であって、
記録媒体上に、白色トナー画像と、当該白色トナー画像上に配置された有色トナー画像とを含むトナー画像を形成する工程と、
前記トナー画像を、前記記録媒体上に定着させる工程と
を有し、
前記定着させる工程では、
内周の少なくとも一部が加熱部材で支持された環状ベルトと、前記加熱部材と前記環状ベルトを介して対向する対向部材との間で、前記トナー画像が形成された記録媒体をニップして、前記トナー画像を加熱下で前記記録媒体上に定着させると共に、
前記白色トナー画像を構成する白色トナーと、前記有色トナー画像を構成する有色トナーが、下記式の関係を満たす、
画像形成方法。
0.3≦lоgμ(W110)-lоgμ(C100)
(lоgμ(W110)は、前記白色トナーの110℃における粘度の対数値であり、
lоgμ(C100)は、前記有色トナーの100℃における粘度の対数値である)
【請求項2】
前記定着させる工程では、前記トナー画像を130℃以上170℃以下で加熱する、
請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
lоgμ(W110)は、3.9以上5.5以下である、
請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記白色トナーと前記有色トナーが、下記式の関係を満たす、
請求項1に記載の画像形成方法。
0.5≦lоgμ(W110)-lоgμ(C100)≦1.5
【請求項5】
前記白色トナーは、白色トナー母体粒子を含み、
前記白色トナー母体粒子の平均円形度は、0.920以上0.955以下である、
請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記有色トナーは、有色トナー母体粒子を含み、
前記有色トナー母体粒子の平均円形度は、0.920以上0.955以下である、
請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記白色トナー及び前記有色トナーの水分量が、それぞれ0.1%以上0.6%以下である、
請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項8】
画像形成装置であって、
記録媒体上に、白色トナー画像と、当該白色トナー画像上に配置された有色トナー画像を含むトナー画像を定着させる定着部を有し、
前記定着部は、
環状ベルトと、
前記環状ベルトの内周面側に配置された加熱部材と、
前記環状ベルトの外周面側に、前記加熱部材に対して前記環状ベルトを介して対向して配置された対向部材と、
を有し、
前記定着部は、前記加熱部材で支持された前記環状ベルトと前記対向部材との間で、前記トナー画像が形成された記録媒体をニップして、前記トナー画像を前記記録媒体に定着させ、
前記白色トナーと前記有色トナーは、下記式の関係を満たす、
画像形成装置。
0.3≦lоgμ(W110)-lоgμ(C100)
(lоgμ(W110)は、前記白色トナーの110℃における粘度の対数値であり、
lоgμ(C100)は、前記有色トナーの100℃における粘度の対数値である)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色を用いたフルカラーの画像形成が行われている。ここで、フルカラー画像を白色の記録媒体上に形成する場合は、良好な発色の画像が得られやすい一方、色紙、黒紙又は透明フィルム等の記録媒体上に形成する場合は、良好な発色の画像が得られにくい。そこで、5色目のトナーとして、白色トナーを下地用のトナーに用い、白色背景画像を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、記録媒体上に転写したトナー画像を、低温で定着できること(低温定着性)も求められている。これに対し、環状ベルトと、環状ベルトの内周面側に配置された加熱部材と、環状ベルトの外周面側に加熱部材と対向して配置された対向部材とを有する定着装置を用いて、トナー画像を前記記録媒体に定着させる方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-48310号公報
【特許文献2】特開2021-162839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような定着装置では、内周面の一部がヒータ62(加熱部材)で支持された定着ベルト61(環状ベルト)と、ヒータ62と定着ベルト61を介して対向する加圧ローラ63(対向部材)との間で、トナー層T(トナー画像)が形成された記録媒体Sをニップした状態で加熱する(後述の
図1A参照)。そのため、トナー層Tには、ヒータ62の熱が直に伝わりやすく、比較的低温でも記録媒体に定着しやすい。
【0006】
しかしながら、記録媒体上に、白色トナーと有色トナーとを重ねて形成したトナー層を、上記定着装置を用いて定着させようとすると、定着ベルトがトナー層と擦れる際に大きな摩擦力を受けやすく、定着ベルトが摩耗し、画像の表面荒れが生じることがあった。また、定着ベルトの摩耗により定着ベルトにかかるテンションバランスが崩れ、定着ベルトの破断に繋がることがあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低温定着性に優れ、且つ画像の表面荒れが少ない画像を形成できる画像形成方法及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 画像形成方法であって、記録媒体上に、白色トナー画像と、当該白色トナー画像上に配置された有色トナー画像とを含むトナー画像を形成する工程と、前記トナー画像を、前記記録媒体上に定着させる工程とを有し、前記定着させる工程では、内周の少なくとも一部が加熱部材で支持された環状ベルトと、前記加熱部材と前記環状ベルトを介して対向する対向部材との間で、前記トナー画像が形成された記録媒体をニップして、前記トナー画像を加熱下で前記記録媒体上に定着させると共に、前記白色トナー画像を構成する白色トナーと、前記有色トナー画像を構成する有色トナーが、下記式の関係を満たす、画像形成方法。
0.3≦lоgμ(W110)-lоgμ(C100)
(lоgμ(W110)は、前記白色トナーの110℃における粘度の対数値であり、
lоgμ(C100)は、前記有色トナーの100℃における粘度の対数値である)
[2] 前記定着させる工程では、前記トナー画像を130℃以上170℃以下で加熱する、[1]に記載の画像形成方法。
[3] lоgμ(W110)は、3.9以上5.5以下である、[1]又は[2]に記載の画像形成方法。
[4] 前記白色トナーと前記有色トナーが、下記式の関係を満たす、[1]~[3]のいずれかに記載の画像形成方法。
0.5≦lоgμ(W110)-lоgμ(C100)≦1.5
[5] 前記白色トナーは、白色トナー母体粒子を含み、前記白色トナー母体粒子の平均円形度は、0.920以上0.955以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の画像形成方法。
[6] 前記有色トナーは、有色トナー母体粒子を含み、前記有色トナー母体粒子の平均円形度は、0.920以上0.955以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の画像形成方法。
[7] 前記白色トナー及び前記有色トナーの水分量が、それぞれ0.1%以上0.6%以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の画像形成方法。
[8] 画像形成装置であって、記録媒体上に、白色トナー画像と、当該白色トナー画像上に配置された有色トナー画像を含むトナー画像を定着させる定着部を有し、前記定着部は、環状ベルトと、前記環状ベルトの内周面側に配置された加熱部材と、前記環状ベルトの外周面側に、前記加熱部材に対して前記環状ベルトを介して対向して配置された対向部材と、を有し、前記定着部は、前記加熱部材で支持された前記環状ベルトと前記対向部材との間で、前記トナー画像が形成された記録媒体をニップして、前記トナー画像を前記記録媒体に定着させ、前記白色トナーと前記有色トナーは、下記式の関係を満たす、画像形成装置。
0.3≦lоgμ(W110)-lоgμ(C100)
(lоgμ(W110)は、前記白色トナーの110℃における粘度の対数値であり、
lоgμ(C100)は、前記有色トナーの100℃における粘度の対数値である)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低温定着性に優れ、且つ画像の表面荒れが少ない画像を形成できる画像形成方法及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、従来の条件で記録媒体上のトナー画像を定着させる様子を示す模式図であり、
図1Bは、本発明の一実施の形態の条件で記録媒体上のトナー画像を定着させる様子を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施の形態における画像形成装置の構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の定着部の要部を示す模式的な拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の通り、白色トナーと有色トナーとを重ね合わせたトナー層を、上記定着装置を用いて記録媒体に定着させる際に、定着ベルトの摩耗や破断が生じやすい。そのメカニズムは、以下のように推測される。
【0012】
図1Aは、従来の条件で、トナー画像を定着させる様子を示す模式図であり、
図1Bは、本発明の一実施の形態の条件で、トナー画像を定着させる様子を示す模式図である。
【0013】
白色トナーWTと有色トナーCTとを重ね合わせて画像形成する場合、記録媒体S上へのトナーの付着量は多くなる。従来のように、付着量が多いトナー層T全体を溶融させると、トナー層Tは全体的によく溶けて、記録媒体と強固に融着しやすい(
図1A参照)。そのため、摺動する定着ベルト61は、記録媒体と強固に融着したトナー層Tから離れる際に、大きな摩擦力を受けやすく、定着ベルト61の摩耗や破断を生じやすい。
【0014】
特に、定着ベルト61は、ヒータ62により直に熱を受けやすいため、損傷しやすい。また、ヒータ62はパッド形状を有し、比較的大きな面積を有するため、定着ベルト61が摩擦力を受ける面積も大きい。そのため、定着ベルト61の摩耗や破断がより生じやすい。
【0015】
これに対して本発明者らは、トナー層T全体を溶融させるのではなく、トナー層Tの一部を溶融させないことにより、定着ベルト61が、トナー層Tの表面から受ける摩擦力を低減できることを見出した(
図1B参照)。
【0016】
即ち、本発明の一実施形態に係る画像形成方法では、定着温度近傍における、下層の白色トナーWTの粘度を、上層の有色トナーCTの粘度よりも所定以上高くする。具体的には、定着温度近傍(100~110℃)における、白色トナーの粘度の対数値lоg(W110)を、有色トナーの粘度の対数値lоgC(100)よりも0.3以上高くする。なお、定着温度とは、トナー層Tと接する定着ベルトの設定温度(ヒーターの温度)をいい、後述する
図3の定着部60においては、ヒータ62の温度を意味する。
【0017】
それにより、上層の有色トナーCTは溶融する一方、下層の白色トナーWTは溶融しきらずに粒子状のまま残りやすい(
図1B参照)。つまり、トナー層Tの表面は溶融して低粘度化する一方、トナー層Tの内部は溶融しきらずに、ある程度粒子間に空隙を保った状態となる。それにより、ニップ部で生じる摩擦力が、トナー母体粒子同士の接触部分に分散されやすくなる。その結果、トナー層Tの表面と定着ベルト61の表面との間で生じる摩擦力が低減され、画像表面荒れや定着ベルト61の破断を抑制できると考えられる。
【0018】
また、これらのトナーに含まれるトナー母体粒子の平均円形度は、適度に低いことが好ましい。トナー母体粒子の平均円形度が適度に低いと、トナー母体粒子間に適度な隙間が形成されやすく、摺動する定着ベルトがトナー層Tから受ける摩擦力をより分散させやすくし、より低減することができるからである。
【0019】
以下、本発明の一実施の形態に係る画像形成方法について、詳細に説明する。まず、トナーについて説明した後、画像形成方法について説明する。
【0020】
1.トナー
本実施の形態に係る画像形成方法に用いられるトナーは、感光体等の像担持体に形成された静電荷像(静電潜像)を現像するための現像剤である。本実施の形態では、白色トナーと、有色トナーとを用いる。
【0021】
そして、白色トナーと有色トナーの粘度の関係が、下記式(1)を満たすように調整する。
式(1):0.3≦lоgμ(W110)-lоgμ(C100)
(lоgμ(W110)は、白色トナーの110℃における粘度の対数値であり、
lоgμ(C100)は、有色トナーの100℃における粘度の対数値である)
【0022】
lоgμ(W110)-lоgμ(C100)が0.3以上であると、定着温度近傍において、下層の白色トナーの粘度が、上層の有色トナーの粘度よりも適度に高くなる。即ち、トナー画像の表面が低粘度化して溶融する一方、トナー画像の内部は溶融しきらず、ある程度粒子間に空隙を保った状態になる。それにより、ニップ部で定着ベルトが受ける摩擦力を低減できる。同様の観点から、lоgμ(W110)-lоgμ(C100)は、0.5以上であることが好ましい。lоgμ(W110)-lоgμ(C100)の上限値は、特に限定されないが、低温定着性をより損なわないようにする観点では2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
【0023】
トナーの粘度は、フローテスター(例えば島津製作所社製CFT-500)を用いて、下記条件及び手順で測定することができる。
1)まず、トナー1.1gを粉体状態のまま50℃に保温しておいたシリンダー内に投入し、保温時間300秒で予熱する。
2)次いで、6℃/minの速度で加熱しながら、トナーをプランジャーにより加圧(2kg荷重を付加)し、溶融したトナーをシリンダー下部に設けた筒状のダイ穴(穴内径:1.0mm、ダイ長さ:1.0mm)から流出させる。
3)溶出が完全に終わるまでのデータを測定する。そして、白色トナーの場合は110℃に到達した際の粘度値を、有色トナーの場合は100℃に到達した際の粘度値をそれぞれ読み取り、対数変換して、lоgμ(W110)、lоgμ(C100)を算出する。
【0024】
上記粘度の関係は、白色トナーと有色トナーの樹脂組成によって調整することができる。例えば、白色トナーに含まれる結着樹脂の融点を、有色トナーに含まれる結着樹脂の融点よりも高くすると、上記対数値の差は大きくなりやすい。
【0025】
白色トナーの粘度は、上記式(1)を満たすような範囲であればよいが、定着ベルトが受ける摩擦力をより低減する観点では、適度に高いことが好ましい。具体的には、白色トナーのlоgμ(W110)は、3.9以上5.5以下であることが好ましい。上記lоgμ(W110)が3.9以上であると、定着時に加熱されても、溶融せずに残る白色トナー粒子の割合が適度に多くすることができる。それにより、記録媒体上のトナー全体がより融着しすぎず、定着ベルトが受ける摩擦力をより分散させることができる。一方、上記lоgμ(W110)が5.5以下であると、溶融しない白色トナー粒子の割合が多くなりすぎないため、溶融状態の有色トナー層と粉体状態の白色トナー層とに分断されにくくすることができる。それにより、上層の有色トナー層が定着ベルトに引きはがされたり、定着後の画像が色ずれを起したりするのをより抑制できる。また、記録媒体への定着性もより損なわれにくい。同様の観点から、上記lоgμ(W110)は、4.1以上5.2以下であることがより好ましい。
【0026】
有色トナーの粘度は、上記式(1)を満たすような範囲であればよいが、低温定着性をより維持する観点では、適度に低いことが好ましい。例えば、有色トナーのlоgμ(C100)は、3.5以上4.5以下であることが好ましい。上記lоgμ(C100)が3.5以上であると、定着時の加熱によりトナー層の表層が溶融しすぎないため、定着ベルトが受ける摩擦力をより低減することができる。一方、上記lоgμ(C100)が4.5以下であると、定着時の加熱により、有色トナーをより溶融させることができるため、記録媒体に対するトナー層の定着性をより高めることができる。同様の観点から、上記lоgμ(C100)は、3.9以上4.3以下であることがより好ましい。
【0027】
各トナーの粘度は、主にトナーに含まれる結着樹脂の量や組成によって調整することができる。例えば、トナーに含まれる結着樹脂の量を多くしたり、非晶性樹脂に対する結晶性樹脂の含有比率を少なくしたりすると、白色トナーの粘度は高くなりやすい。
【0028】
以下、各トナーについて、詳細に説明する。
【0029】
1-1.白色トナー
白色トナーは、白色トナー粒子を含む。白色トナー粒子は、白色トナー母体粒子を含み、必要に応じて外添剤をさらに含んでもよい。
【0030】
1-1-1.白色トナー母体粒子
白色トナー母体粒子は、結着樹脂と、白色の着色剤とを含む。
【0031】
(結着樹脂)
結着樹脂は、トナーを記録媒体に結着させる。結着樹脂は、非晶性樹脂を含んでもよいし、結晶性樹脂を含んでもよいし、結晶性樹脂と非晶性樹脂の両方を含んでもよい。結着樹脂は、1種類のみであってもよいし、2種類以上を含んでもよい。
【0032】
本実施の形態では、画像強度と低温定着性との両立の観点等から、結着樹脂は、非晶性樹脂と、結晶性樹脂とを含むことが好ましい。
【0033】
なお、本明細書において、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:DSC)による測定において、融点が観測される樹脂を意味する。また、非晶性樹脂とは、DSCによる測定において、融点が観測されない樹脂を意味する。また、本明細書において、樹脂に融点が観測されるとは、DSCにおいて、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することをいい、具体的には、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークが観測されることを意味する。
【0034】
また、本明細書において、「結着樹脂が非晶性樹脂を含む」とは、結着樹脂が、非晶性樹脂そのものを含んでもよいし、ハイブリッド樹脂における非晶性樹脂セグメントのように、他の樹脂中に含まれるセグメントとして含有されていてもよい。
同様に、「結着樹脂が結晶性樹脂を含有する」とは、結着樹脂が結晶性樹脂そのものを含む態様であってもよいし、ハイブリッド樹脂における結晶性ポリエステル重合セグメントのように、他の樹脂中に含まれるセグメントとして含有されていてもよい。
【0035】
(非晶性樹脂)
非晶性樹脂としては、例えばスチレン樹脂、ビニル樹脂(アクリル樹脂及びスチレン-アクリル樹脂等)、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、ポリアミド樹脂等が含まれる。これらは、1種類のみが含まれてもよいし、2種類以上が含まれてもよい。中でも、結着樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。後述する結晶性ポリエステル樹脂との相溶性が良好であるためである。
【0036】
非晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合ユニットを含む。
【0037】
多価カルボン酸の例には、コハク酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸;それらの酸無水物;及びそれらの炭素数1~3のアルキルエステルが含まれる。これらは、1種単独で用いても良く2種以上併用してもよい。中でも、白色トナーの粘度を高くする観点では、白色トナー母体粒子における非晶性ポリエステル樹脂の多価カルボン酸は、芳香族ジカルボン酸を含むことが好ましく、テレフタル酸を含むことがより好ましい。
【0038】
多価アルコールの例には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール等の脂肪族ジオール;及びグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール等の3価以上のアルコールが含まれる。多価アルコールは、脂肪族ジオールであることが好ましい。
【0039】
多価カルボン酸及び多価アルコールとしては、上述した材料のほか、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等も使用できる。これらは、1種単独で用いても良く2種以上併用してもよい。中でも、多価アルコールは、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物を含むことが好ましい。
【0040】
非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、例えば2000以上10000以下であることが好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法によりポリスチレン換算にて測定することができる。
【0041】
非晶性樹脂の含有量は、例えばトナー母体粒子を構成する樹脂(結着樹脂)に対して好ましくは50質量%以上99質量%以下、より好ましくは55質量%以上83質量%以下、60質量%以上80質量%以下である。
【0042】
[結晶性樹脂]
結晶性樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリアセタール樹脂、結晶性ポリフェニレンサルファイド樹脂、結晶性ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が挙げられる。これらは、1種類のみが含まれてもよいし、2種類以上が含まれてもよい。中でも、結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂は、熱定着時に融解して非晶性樹脂の可塑化剤として働きやすく、低温定着性をより向上させやすいからである。
【0043】
結晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合ユニットを含む。結晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸及び多価アルコールは、上述した非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸及び多価アルコールと同様のものを用いることができる。
【0044】
中でも、上記式(1)の関係を満たしつつ、低温定着性をより高める観点では、白色トナー母体粒子に含まれる結晶性ポリエステル樹脂の多価カルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸を含むことが好ましく、直鎖状の脂肪族ジカルボン酸を含むことがより好ましい。
【0045】
結晶性ポリエステル樹脂を構成するモノマーは、直鎖脂肪族モノマーを50質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することが好ましい。直鎖脂肪族モノマーが50質量%以上とすることで、トナー中において結晶性をより維持しやすくし、80質量%以上にすることで、より十分な結晶性を維持することができる。
【0046】
結晶性ポリエステルの融点は、例えば50℃以上85℃以下であることが好ましく、60℃以上80℃以下であることがより好ましい。結晶性ポリエステルの融点が上記範囲内であると、トナー母体粒子をより軟化させやすく、トナーの低温定着性をより高めうる。
【0047】
結晶性ポリエステルの数平均分子量(Mn)は、2000以上10000以下であることが好ましい。結晶性ポリエステルの数平均分子量(Mn)が上記範囲内であると、低温定着性がより良好になる。
【0048】
結晶性樹脂の含有量としては、結着樹脂に対して1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、17質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。結晶性樹脂の含有量が1質量%以上であると、トナーの低温定着性をより高めることができる。結晶性樹脂の含有量が50質量%以下であると、トナーの耐熱性や強度がより損なわれにくい。
【0049】
特に、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の含有比率は、83/17~55/45(質量比)であることが好ましく、80/20~60/40(質量比)であることがより好ましい。非晶性ポリエステル樹脂の含有割合が多くなると、結着樹脂の融点が高くなりやすいため、白色トナーの粘度は高くなりやすい。非晶性ポリエステル樹脂の含有割合が少ないと、結晶性ポリエステル樹脂の含有割合が多くなるため、白色トナーの粘度は低くなりやすい。
【0050】
非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の合計量は、結着樹脂に対して10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
上述のように、結晶性樹脂と非晶性樹脂は、結晶性樹脂セグメントと非晶性樹脂セグメントを含むハイブリッド樹脂として含まれてもよい。そのようなハイブリッド樹脂を含むトナー母体粒子は、コア・シェル構造を有しうる。コア・シェル構造におけるコアは、結晶性樹脂を含み、シェルは、非晶性樹脂を含むことが好ましい。
【0052】
白色トナー母体粒子における結着樹脂の含有量は、白色トナー母体粒子に対して20質量%以上99質量%以下であることが好ましく、30質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上90質量%以下であることがさらに好ましい。結着樹脂の上記含有量が20質量%以上であると、形成される画像の強度をより高めることができる。
【0053】
(白色の着色剤)
白色の着色剤の例には、無機顔料(例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、チタンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネートカオリン、アルミノ珪酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクサイト等)、有機顔料(例えば、ポリスチレン樹脂粒子、尿素ホリマリン樹脂粒子等)が含まれる。白色の着色剤は、帯電性及び隠蔽性の観点からは、酸化チタンであることが好ましい。酸化チタンは、アナターゼ型、ルチル型、ブルカイト型等いずれの結晶構造も使用できる。
【0054】
白色の着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して30質量部以上75質量部以下であることが好ましく、40質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。
【0055】
(他の成分)
白色トナー母体粒子は、必要に応じて離型剤、荷電制御剤等の他の成分をさらに含有してもよい。
【0056】
離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトン等のジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等のエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等のアミド系ワックスが挙げられる。また、これらの離型剤は、1種単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
【0057】
離型剤の含有量は、特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対して4質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
【0058】
荷電制御剤は、トナー母体粒子の帯電性を調整することができる。荷電制御剤の例には、ニグロシン染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第四級アンモニウム塩化合物、アゾ金属錯体、サリチル酸金属塩又はその金属錯体が含まれる。
【0059】
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0060】
1-1-2.外添剤
白色トナー粒子は、白色トナーの流動性や帯電性を高めるために、外添剤をさらに含んでいてもよい。外添剤は、白色トナー母体粒子の表面に、後処理剤として付着している。
【0061】
外添剤は、流動性や帯電性を制御する目的で、従来公知の金属酸化物粒子を使用することができ、例えば、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子、および酸化ホウ素粒子等が挙げられる。これらは、単独でもまたは2種以上を併用してもよい。
【0062】
また、外添剤は、スチレン、メタクリル酸メチル等の単独重合体やこれらの共重合体等の有機微粒子を含んでもよい。
【0063】
また、外添剤は、クリーニング性や転写性をさらに向上させるために、滑剤を含んでもよい。滑剤の例には、例えば、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩等の高級脂肪酸の金属塩が含まれる。
【0064】
外添剤の形状も限定されず、球状、扁平状、平板状、針状のいずれであってもよい。
【0065】
外添剤の含有量は、トナー母体粒子100質量部に対して1質量部以上7質量部以下であることが好ましく、2質量部以上4質量部以下であることがより好ましい。
【0066】
1-1-3.白色トナーの物性
(体積基準のメジアン径(D50))
白色トナー母体粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、例えば3.0μm以上10.0μm以下であることが好ましく、5.0μm以上8.0μm以下であることが好ましい。白色トナー母体粒子のD50を3.0μm以上とすることで、粒子間の隙間も適度に大きいため、定着ベルトが受ける摩擦力をより低減することができる。即ち、粒径を一定以上とすることで、粒子間の隙間を一定以上確保しやすくなるため、定着時に受けるベルトの摩擦力を分散する機会をより確保しやすく、ベルト破断をより抑制することができる。白色トナー母体粒子の粒径が10.0μm以下であると、より微小なドット画像を忠実に再現できるだけでなく、溶融に要する熱エネルギーがより少なくてすむため、定着性がより良好となる。
【0067】
白色トナー母体粒子のD50は、有色トナー母体粒子のD50と同じであってもよいし、異なってもよい。中でも、記録媒体への定着性をより維持しやすくする観点では、上層にあるトナーの方が溶融し、下層の白トナーを覆うようにより溶け広がらせやすくするために、白色トナー母体粒子のD50は、有色トナー母体粒子のD50よりも大きいことが好ましい。
【0068】
体積基準のメジアン径(D50)は、例えば「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」に、データ処理用のコンピューターシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。
測定手順としては、トナー粒子 0.02gを、界面活性剤溶液 20ml(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー粒子分散液を作製する。このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内のISOTON II(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定濃度5~10%になるまでピペットにて注入し、測定機カウントを25000個に設定して測定する。なお、マルチサイザー3のアパーチャー径は100μmのものを使用する。測定範囲1~30μmの範囲を256分割しての頻度数を算出し、体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準のメジアン径(D50)とする。
【0069】
白色トナー母体粒子のD50は、粉砕法によりトナーを得る場合、主に、粉砕条件(粉砕機の回転数、粉砕時間)、分級条件で制御することができる。
【0070】
(平均円形度)
白色トナー母体粒子の平均円形度は、特に限定されないが、例えば0.920以上0.955以下であることが好ましい。白色トナー母体粒子の上記平均円形度が0.920以上であると、帯電の立ち上がりや流動性をより高めやすい。白色トナー母体粒子の上記平均円形度が0.955以下であると、粒子間に適度な空隙を形成することができるため、定着ベルトがトナー層との摺動時に受ける摩擦力をより低減できる。同様の観点から、白色トナー母体粒子の平均円形度は、0.940以上0.953以下であることがより好ましい。
【0071】
白色トナー母体粒子の平均円形度は、以下の方法で測定することができる。
トナー粒子を界面活性剤溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行い、分散した後、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(Sysmex社製)を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000~10000個の適正濃度で測定を行う。この範囲であれば、再現性のある測定値が得られる。円形度は下記式で算出される。
円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で割った算術平均値である。
【0072】
白色トナー母体粒子の平均円形度は、有色トナー母体粒子の平均円形度と同じであってもよいし、異なってもよい。中でも、定着ベルトとトナー画像との摩擦を少なくする観点では、白色トナー母体粒子の平均円形度は、有色トナー母体粒子の平均円形度よりも低いことが好ましい。
【0073】
白色トナー母体粒子の平均円形度は、後述するトナーの製造方法やトナー母体粒子の加熱処理条件等によって調整できる。例えば、粉砕法で製造されたトナー母体粒子は、平均円形度は低くなりやすい。
【0074】
(水分量)
白色トナーの水分量は、例えば0.1%以上0.6%以下であることが好ましく、0.2%以上0.5%以下であることがより好ましい。水分量が0.6%以下であると、定着時の加熱により、トナーが含有する水分の蒸発量をより少なくすることができる。そのため、定着ベルトのコーティング樹脂(PI)の加水分解をより低減でき、ベルト摩耗をより抑制できる。水分量が0.1%以上であると、トナーをより帯電しにくくすることができるため、トナーと定着ベルト表面が擦れることによる帯電をより抑制し、トナーの飛散をより抑制できる。
【0075】
白色トナーの水分量は、有色トナーの水分量と同等であってもよいし、異なってもよい。中でも、定着ベルトとの摩擦を少なくする観点では、水分量の差がないほうが好ましい。そのため、定着時に含有水分の蒸発がしづらい下層にある白色トナーの水分量は、有色トナーの水分量と同じか、それよりも少ないことが好ましい。
【0076】
白色トナーの水分量は、トナーの製造方法や乾燥条件によって調整することができる。例えば、粉砕法で製造するほうが、乳化凝集法や懸濁重合法で製造するよりも、トナーの水分量は少なくなりやすい。また、乾燥時間を長くしたり、乾燥温度を高くしたりすると、トナーの水分量は少なくなりやすい。
【0077】
1-2.有色トナー
有色トナーは、トナーが画像に所定の色調を付与するトナーである。有色トナーは、有色トナー粒子を含む。有色トナー粒子は、有色トナー母体粒子を含み、必要に応じてその表面に付着した外添剤をさらに含んでもよい。
【0078】
1-2-1.有色トナー母体粒子
有色トナー母体粒子は、結着樹脂と、着色剤とを含む。
【0079】
(結着樹脂)
有色トナー母体粒子に含まれる結着樹脂は、白色トナー母体粒子と同様に、非晶性樹脂、結晶性樹脂、ハイブリッド樹脂のいずれであってもよい。中でも、有色トナー母体粒子に含まれる結着樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを含むことが好ましい。
【0080】
有色トナー母体粒子に含まれる非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸及び多価アルコールは、白色トナー母体粒子に含まれる非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸及び多価アルコールと同様のものを用いることができる。同様に、有色トナー母体粒子に含まれる結晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸及び多価アルコールは、白色トナー母体粒子に含まれる結晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸及び多価アルコールと同様のものを用いることができる。
【0081】
中でも、上記式(1)の関係を満たしやすくする観点では、有色トナー母体粒子に含まれる非晶性ポリエステル樹脂の多価カルボン酸は、脂肪族カルボン酸を含むことが好ましく、トナー画像の耐擦過性の観点では、樹脂の硬さを発揮させると考えられる不飽和脂肪族カルボン酸を含むことがより好ましい。定着温度近傍における有色トナーの粘度を適度に低くしうるからである。
【0082】
有色トナー母体粒子における、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の含有比率の範囲も、白色トナー母体粒子における、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の含有比率の範囲と同様とすることができる。
【0083】
有色トナー母体粒子における、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の合計量は、結着樹脂に対して10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0084】
有色トナー母体粒子における結着樹脂の含有量は、有色トナー母体粒子に対して70質量%以上90質量%以下であることが好ましく、75質量%以上87質量%以下であることがより好ましい。
【0085】
(着色剤)
着色剤としては、顔料を用いることができる。有色トナー母体粒子は、当該有色トナーによって呈されるべき色調に応じた、イエロー、マゼンタ、シアン又はブラック等の着色剤を含有すればよい。着色剤は、有色トナー母体粒子に、一種のみが含まれても、複数種が組み合わせて含まれていてもよい。
【0086】
イエロートナーに含有される着色剤としては、例えばC.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185等が挙げられる。
【0087】
マゼンタトナーに含有される着色剤としては、例えばC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222等が挙げられる。
【0088】
シアントナーに含有される着色剤としては、例えばC.I.ピグメントブルー15:3等が挙げられる。
【0089】
ブラックトナーに含有される着色剤としては、例えばカーボンブラック、磁性体、チタンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えばチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が挙げられる。磁性体としては、例えば鉄、ニッケル、コバルト等の強磁性金属、これら強磁性金属を含む合金、フェライト、マグネタイト等の強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金等が挙げられる。熱処理することにより強磁性を示す合金としては、例えばマンガン-銅-アルミニウム、マンガン-銅-スズ等のホイスラー合金、二酸化クロム等が挙げられる。
【0090】
着色剤の含有量は、特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、10質量部以上17質量部以下であることがより好ましい。
【0091】
1-2-2.外添剤
有色トナー粒子は、外添剤をさらに含んでいてもよい。外添剤は、有色トナー母体粒子の表面に、後処理剤として付着している。外添剤としては、上述した白色トナー粒子における外添剤と同様のものを用いることができる。
【0092】
1-2-2.有色トナーの物性
有色トナー母体粒子の体積基準のメジアン径(D50)、平均円形度、及び有色トナーの水分量は、それぞれ上記と同様の範囲とすることができる。
しい。
【0093】
中でも、有色トナー母体粒子のD50は、白色トナー上に有色トナーを重ねたトナー層の記録媒体への定着性をより維持しやすくする観点では、上層にあるトナーの方が溶融し下層の白トナーを覆うように溶け広がらせるために、白色トナー母体粒子のD50よりも小さいことが好ましい。また、有色トナー母体粒子の平均円形度は、定着ベルトとトナー画像との摩擦を少なくする観点では、白色トナー母体粒子の平均円形度も高いことが好ましい。
【0094】
1-3.共通事項
白色トナーと有色トナーは、それぞれ一成分系の現像剤であってもよいし、トナー粒子とキャリア粒子とを含む二成分系の現像剤であってもよい。本実施の形態では、白色トナーと有色トナーは、いずれも一成分現像剤であることが好ましい。
【0095】
1-4.白色トナー及び有色トナーの製造方法
白色トナー及び有色トナーは、粉砕法、乳化分散法、懸濁重合法、分散重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法等の方法により製造することができる。中でも、粉砕法、乳化重合凝集法が好ましく、粉砕法がより好ましい。粉砕法により作製されるトナー母体粒子は、不定形の粒子であるため、粒子間に適度な隙間を形成しやすい。それにより、定着時において、トナー画像から受ける定着ベルトの摩擦力をより低減しやすい。
【0096】
粉砕法では、結着樹脂と着色剤とを溶融混錬した後、冷却して得られる樹脂組成物を粉砕する工程を経て、トナー母体粒子を得ることができる。さらに、粉砕処理の後、必要に応じて分級処理や乾燥処理を行ってもよい。
【0097】
(混合・溶融混練)
まず、トナー母体粒子を構成する材料(結着樹脂、着色剤等)を混合する。混合は、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド等の混合装置により行うことができる。
【0098】
次に、混合した材料を溶融混練する。溶融混練は、加圧ニーダー及びバンバリーミキサーのようなバッチ式練り機や、連続式の練り機を使用することができる。連続生産するときは、1軸押出機又は2軸押出機を使用することが好ましい。2軸押出機の例には、KTK型2軸押出機(株式会社神戸製鋼所製)、TEM型2軸押出機(東芝機械株式会社製)、PCM混練機(株式会社池貝製)、2軸押出機(株式会社ケイ・シー・ケイ製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)等が含まれる。溶融混練の温度は、100~200℃程度とすることが好ましい。溶融混練により得られた樹脂組成物は、2本ロール等で圧延し、水等によって急冷して固形物とする。
【0099】
(粉砕)
得られた樹脂組成物を、所望の粒径にまで粉砕する。粉砕は、例えばクラッシャー、ハンマーミル及びフェザーミル等の粉砕機で粗粉砕した後に、クリプトロンシステム(川崎重工業株式会社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング株式会社製)、ターボ・ミル(フロイント・ターボ株式会社製)等の微粉砕機、又はエアージェット方式による微粉砕機等で微粉砕すればよい。
【0100】
(分級)
その後、必要に応じて粉砕された樹脂組成物を分級する。分級は、慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業株式会社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン株式会社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン株式会社製)、及びファカルティ(ホソカワミクロンホソカワミクロン製)等の分級機や篩分機を使用して行うことができる。
【0101】
(乾燥)
さらに、必要に応じて分級後の樹脂組成物を乾燥させてもよい。乾燥方法は、特に制限されないが、オーブン、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機等による方法が挙げられる。
このようにして、粉砕法によりトナー母体粒子を作製することができる。
【0102】
(外添剤の添加)
得られたトナー母体粒子は、そのまま使用してもよいが、必要に応じて、外添剤により外添処理されてもよい。外添処理は、トナー母体粒子と外添剤とを所定量配合して、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)、及びノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)等の混合装置により撹拌・混合して行うことができる。
【0103】
次に、上述した白色トナー及び有色トナーを用いた画像形成方法について説明する。
【0104】
2.画像形成方法
[画像形成装置の構成]
以下、本実施の形態に使用することができる画像形成装置について説明する。
【0105】
図2は、本実施形態に関する画像形成装置1の一例を示す概略構成図である。
図3は、
図2の定着部60の要部の拡大模式図である。
【0106】
図2に示す画像形成装置1は、画像処理部30、画像形成部40、搬送部50、定着部60及び画像読取部70を有する。
【0107】
画像形成部40は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)、W(白)の各色トナーによる画像を形成する画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K及び41Wを有する。これらは、収容されるトナー以外はいずれも同じ構成を有するので、以後、色を表す記号を省略することがある。画像形成部40は、さらに、中間転写ユニット42及び二次転写ユニット43を有する。これらは、転写装置に相当する。
【0108】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、電子写真感光体(像担持体)413、帯電装置414、及びドラムクリーニング装置415を有する。帯電装置414は、例えばコロナ帯電器である。帯電装置414は、帯電ローラーや帯電ブラシ、帯電ブレード等の接触帯電部材を電子写真感光体413に接触させて帯電させる接触帯電装置であってもよい。露光装置411は、例えば、光源としての半導体レーザーと、形成すべき画像に応じたレーザー光を電子写真感光体413に向けて照射する光偏向装置(ポリゴンモータ)とを含む。電子写真感光体413は、光導電性を有する負帯電型の有機感光体である。電子写真感光体413は、帯電装置414により帯電される。
【0109】
現像装置412は、二成分現像方式の現像装置である。現像装置412は、例えば、二成分現像剤を収容する現像容器と、現像容器の開口部に回転自在に配置されている現像ローラー(磁性ローラー)と、二成分現像剤が連通可能に現像容器内を仕切る隔壁と、現像容器における開口部側の二成分現像剤を現像ローラーに向けて搬送するための搬送ローラーと、現像容器内の二成分現像剤を撹拌するための撹拌ローラーと、を有する。現像容器には、例えば、二成分現像剤が収容されている。
【0110】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト(中間転写体)421、中間転写ベルト421を電子写真感光体413に圧接させる一次転写ローラー422、バックアップローラー423Aを含む複数の支持ローラー423、及びベルトクリーニング装置426を有する。中間転写ベルト421は、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つの駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0111】
ベルトクリーニング装置426は、弾性部材426aを有する。弾性部材426aは、二次転写した後の中間転写ベルト421に当接して、中間転写ベルト421の表面上の付着物を除去する。弾性部材426aは、弾性体で構成されており、クリーニングブレード、ブラシ等が含まれる。
【0112】
二次転写ユニット43は、無端状の二次転写ベルト432、及び二次転写ローラー431Aを含む複数の支持ローラー431を有する。二次転写ベルト432は、二次転写ローラー431A及び支持ローラー431によってループ状に張架される。
【0113】
定着部60は、定着ベルト61(環状ベルト)と、ヒータ62(加熱部材)と、加圧ローラ63(対向部材)とを有する。
【0114】
ヒータ62は、定着ベルト61の内周面側に配置されており、定着ベルト61を内周側から加熱する。ヒータ62は、略直方体状のパッド部材であり、環状ベルト61を直方体の一面で押圧して、面状の定着ニップを形成する。
加圧ローラ63(対向部材)は、定着ベルト61の外周面側に配置されており、定着ベルト61を介してヒータ62と対向している。
定着ベルト61の外周面と加圧ローラ63との間に、ニップ部が形成される。それにより、定着部60は、対向している位置で、搬送される記録媒体S上のトナー画像を定着させる。具体的には、定着部60は、記録媒体Sがニップ部を通過する際に、トナー画像に熱及び圧力を加えて、記録媒体Sに定着させる。このように構成される定着部60は、サーフ定着方式ともいう。
【0115】
ヒータ62と定着ベルト61の間には、不図示の潤滑シートを介在させて、定着ベルト61を円滑に回転可能としてもよい。潤滑シートは、例えば、厚さ100μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をコーティングしたポリイミドシートとすることができる。
【0116】
画像形成装置1は、さらに、画像読取部70、画像処理部30及び搬送部50を有する。画像読取部70は、給紙装置71及びスキャナー72を有する。搬送部50は、給紙部51、排紙部52、及び搬送経路部53を有する。給紙部51を構成する三つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズに基づいて識別された記録媒体Sが予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー対を有する。
【0117】
上記のように構成された画像形成装置1は、不図示の制御部による制御下において、後述する各工程を行う。
【0118】
記録媒体Sの種類は、特に限定されず、用紙であってもよいし、フィルムラベル又はフィルムであってもよい。フィルムラベルは剥離紙が粘着されているものを指し、フィルムは剥離紙も粘着剤も付着していないものを指す。
【0119】
フィルム及びフィルムラベルのフィルム部分としては、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリ乳酸フィルムなどが例示され、これらの中でも、汎用性等の観点から、ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0120】
ポリプロピレンフィルム及びポリエチレンテレフタレートフィルムは、各種ラベルや、パッケージ等に使用されている。これらのフィルムは、印刷適性を向上させることを目的として、適宜、表面加工が施されていてもよい。また、これらのフィルムは、透明フィルムであってもよく、フィルム中に顔料等が含有され、白色等の任意の色彩を有するものであってもよく、また、表面にトナー受容層が形成されていてもよい。
【0121】
[画像形成方法]
次に、画像形成装置を用いてフルカラーの画像形成を行う方法について、具体的に説明する。
【0122】
スキャナー72は、コンタクトガラス上の原稿Dを光学的に走査して読み取る。原稿Dからの反射光がCCDセンサー72aにより読み取られ、入力画像データとなる。入力画像データは、画像処理部30において所定の画像処理が施され、露光装置411に送られる。
【0123】
電子写真感光体413は、一定の周速度で回転する。帯電装置414は、電子写真感光体413の表面を一様に負極性に帯電させる(帯電工程)。露光装置411では、ポリゴンモータのポリゴンミラーが高速で回転し、各色成分の入力画像データに対応するレーザー光が、電子写真感光体413の軸方向に沿って展開し、当該軸方向に沿って電子写真感光体413の外周面に照射される。こうして電子写真感光体413の表面には、静電潜像が形成される(露光工程)。
【0124】
現像装置412では、現像容器内の二成分現像剤の撹拌、搬送によってトナー母体粒子が帯電し、二成分現像剤は現像ローラーに搬送され、現像ローラーの表面で磁性ブラシを形成する。帯電したトナー母体粒子は、磁性ブラシから電子写真感光体413における静電潜像の部分に静電的に付着する。こうして、電子写真感光体413の表面の静電潜像が可視化され、電子写真感光体413の表面に、静電潜像に応じたトナー画像が形成される(現像工程)。なお、「トナー画像」とは、トナーが画像状に集合した状態を言う。
【0125】
電子写真感光体413の表面のトナー画像は、中間転写ユニット42によって中間転写ベルト421に転写される。転写後に電子写真感光体413の表面に残存する転写残トナーは、電子写真感光体413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレードを有するドラムクリーニング装置415によって除去される。
【0126】
一次転写ローラー422によって中間転写ベルト421が電子写真感光体413に圧接することにより、電子写真感光体413と中間転写ベルト421とによって、一次転写ニップが電子写真感光体ごとに形成される。当該一次転写ニップにおいて、各色のトナー画像が中間転写ベルト421に順次重なって転写される(1次転写工程)。本実施形態では、中間転写ベルト421が矢印A方向に搬送される場合、Y、M、C、K、Wの順に各色のトナー画像が転写される(
図2参照)。
【0127】
一方、二次転写ローラー431Aは、中間転写ベルト421及び二次転写ベルト432を介して、バックアップローラー423Aに圧接される。それにより、中間転写ベルト421と二次転写ベルト432とによって、二次転写ニップが形成される。当該二次転写ニップを記録媒体Sが通過する。記録媒体Sは、搬送部50によって二次転写ニップへ搬送される。記録媒体Sの傾きの補正及び搬送のタイミングの調整は、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により行われる。
【0128】
二次転写ニップに記録媒体Sが搬送されると、二次転写ローラー431Aへ転写バイアスが印加される。この転写バイアスの印加によって、中間転写ベルト421に担持されているトナー画像が記録媒体Sに転写される(トナー画像を記録媒体上に形成する工程)。本実施形態では、W、K、C、M、Yの順に各色のトナー画像が記録媒体S上に転写される(
図2参照)。
【0129】
このように、記録媒体S上に、白色トナー画像と、有色トナー画像とがこの順に重ねて転写される。それにより、記録媒体S上に、白色トナー画像と、有色トナー画像とがこの順に重ねて配置されたトナー画像(トナー層T)が形成される(
図1B参照)。
【0130】
白色トナー画像の付着量Mwは、例えば5g/m2以上10g/m2以下であることが好ましい。有色トナー画像の付着量Mcは、例えば4g/m2以上10g/m2以下とすることができる。
【0131】
白色トナー画像と有色トナー画像の付着量の合計量は、例えば9g/m2以上20g/m2以下であることが好ましく、12g/m2以上18g/m2以下であることがより好ましい。上記合計量が下限値以上であると、より高い濃度の画像を形成することができ、上記合計量が上限値以下であると、記録媒体に対する定着性がより維持しやすい。
【0132】
白色トナー画像の付着量Mwと、有色トナー画像の付着量Mcとの比率は、求められる発色性等にもよるが、Mw/Mc=0.5以上2.2以下とすることが好ましい。Mw/Mcが0.5以上であると、画像の発色性をより高めやすい。Mw/Mcが2.2以下であると、溶融しやすい有色トナーの付着量がより多いため、低温定着性をより高めやすく、溶融していない粒子の凹凸による画像ブリスタもより低減しやすい。
【0133】
トナー画像が転写された記録媒体Sは、二次転写ベルト432によって、定着部60に向けて搬送される。
【0134】
次いで、記録媒体を定着部60に送り、フルカラーのトナー像を記録媒体上に定着させる(トナー画像を記録媒体に定着させる工程)。
【0135】
本実施の形態では、定着部60により、定着ベルト61と、ヒータ62と定着ベルト61を介して対向する加圧ローラ63との間で、トナー画像が形成された記録媒体Sをニップする。具体的には、回転する定着ベルト61を挟み込んで、定着ニップを形成し、搬送されてきた記録媒体Sを、定着ニップ部で加熱及び加圧する。それにより、トナー画像を、記録媒体S上に定着させる。
【0136】
トナー画像の加熱温度は、130℃以上170℃以下であることが好ましく、130℃以上150℃以下であることがより好ましい。加熱温度が上記範囲内であると、トナー画像の定着性を損なわない程度に、低温で定着させることができる。加熱温度は、ヒータ62の設定温度として確認することができる。
【0137】
トナー像が定着された記録媒体Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0138】
二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナー等の付着物は、中間転写ベルト421の表面に摺接されるクリーニングブレードを有するベルトクリーニング装置426によって除去される。このとき、中間転写ベルトとして前述の中間転写体を使用するため、経時的に動摩擦力を低減させることができる。
【0139】
以上説明した通り、上記実施の形態では、1)記録媒体上に、白色トナー画像と、その上に配置された有色トナー画像とを含むトナー画像を形成する工程と、2)当該形成したトナー画像を、記録媒体上に定着させる工程とを含む方法により、画像を形成する。
そして、上記2)のトナー画像を定着させる工程では、定着ベルト61と、ヒータ62と環状ベルト61を介して対向する加圧ローラ63との間で、トナー画像が形成された記録媒体Sをニップして、トナー画像を記録媒体S上に定着させる。そして、白色トナーと有色トナーが、上述の式(1)の関係を満たしている。
【0140】
それにより、トナー層表面は低粘度化して溶融する一方、トナー層内部は溶融しきらず、ある程度粒子間に空隙を保った状態になる。それにより、ニップ部で生じる摩擦力がトナー母体粒子同士の接触部分に分散されやすくなり、低減される。その結果、画像表面荒れを防ぎ、且つ定着ベルトの破断を抑制することができる。
【0141】
なお、上記画像形成装置及び画像形成方法は、本発明を実施するための例示的な形態であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0142】
例えば、上記実施の形態における画像形成装置は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック及び白の5種類の現像装置と、それぞれの色ごとに設けられた5つの電子写真感光体と、により構成されるタンデム方式の画像形成装置の例を示したが、これに限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、白の5種類の現像装置と、1つの電子写真感光体と、により構成される5サイクル方式の画像形成装置であってもよい。
【0143】
また、上記実施の形態では、現像装置412として二成分現像方式の現像装置を用いているが、これに限らず、一成分現像方式の現像装置を用いてもよい。
【実施例0144】
以下において、実施例を参照して本発明を説明する。実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
【0145】
1.トナーの材料
1-1.非晶性ポリエステル樹脂(白色トナー用)
(非晶性ポリエステル樹脂SA1の製造例)
・テレフタル酸:40.2部
・ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物(BPA-PO):29.0部
・ジプロパノール:30.8部
・2-エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒):0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。
反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
次に、反応槽内の圧力を8.0kPaに下げ、撹拌しながら温度200℃まで昇温し、4時間反応させた。
その後、再び反応槽内を5kPa以下へ減圧して200℃で3時間反応させることにより、非晶性ポリエステル樹脂SA1を得た。
【0146】
(非晶性ポリエステル樹脂SA2の製造例)
・テレフタル酸:40.2部
・ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物(BPA-PO):29.0部
・ジプロパノール:30.8部
・2-エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒):0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。
反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
次に、反応槽内の圧力を8.0kPaに下げ、撹拌しながら温度200℃まで昇温し、6時間反応させた。
その後、再び反応槽内を5kPa以下へ減圧して200℃で5時間反応させることにより、非晶性ポリエステル樹脂SA2を得た。
【0147】
(非晶性ポリエステル樹脂SA3(分散液)の製造例)
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸25.3部、アジピン酸5.6部、ビスフェノールAのエチレンオキシド2.2モル付加物30.9部、ビスフェノールAのプロピレンオキシド2.2モル付加物34.3部、及びジブチルスズオキシド0.2部を投入した。常圧下、230℃で3時間反応させた。その後、トリメリット酸4部を投入し、更に2時間反応させた。その後、10~15mmHgの減圧下、5時間反応させて、非晶性ポリエステル樹脂を得た。
この非晶性ポリエステル樹脂100部を、アセトン90部に溶解し、アセトン溶解液を得た。得られたアセトン溶解液180部及び水720部を混ぜ、TK式ホモミキサーを用いて、8,000rpmで1分間混合した。その後、分散液を減圧し、アセトンを揮発、除去し、非晶性ポリエステル樹脂分散液SA3を得た。
【0148】
(非晶性ポリエステル樹脂SA4(分散液)の製造例)
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸25.3部、アジピン酸5.6部、ビスフェノールAのエチレンオキシド2.2モル付加物32.2部、ビスフェノールAのプロピレンオキシド2.2モル付加物35.7部、及びジブチルスズオキシド0.2部を投入した。常圧下、230℃で3時間反応させた。次いで、トリメリット酸4部を投入し、更に2時間反応させた。その後、10~15mmHgの減圧下、5時間反応させた。それにより、非晶性ポリエステル樹脂SL1を得た。
次に、冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸25.3部、アジピン酸5.6部、ビスフェノールAのエチレンオキシド2.2モル付加物30.9部、ビスフェノールAのプロピレンオキシド2.2モル付加物34.3部、及びジブチルスズオキシド0.2部を投入した。常圧下、230℃で3時間反応させた。次いで、トリメリット酸4部を投入し、更に2時間反応させた。その後、10~15mmHgの減圧下、5時間反応させた。それにより、非晶性ポリエステル樹脂SH1を得た。
非晶性ポリエステル樹脂L1 95部、非晶性ポリエステル樹脂H1 5部を、アセトン90部に溶解し、アセトン溶解液を得た。得られたアセトン溶解液180部及び水720部を混ぜ、TK式ホモミキサー(プライミクス株式会社製)を用いて、8,000rpmで1分間混合した。その後、分散液を減圧し、アセトンを揮発、除去し、非晶性ポリエステル樹脂分散液SA4を得た。
【0149】
1-2.結晶性ポリエステル樹脂(白色トナー用)
(結晶性ポリエステルSB1の製造例)
・アジピン酸:55.3部
・ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物(BPA-PO:44.7部
・2-エチルヘキサン酸錫:0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。次に、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、撹拌しながら温度200℃まで昇温し、1時間反応させた。それにより、結晶性ポリエステルSB1を得た。
【0150】
(結晶性ポリエステルSB2の製造例)
・アジピン酸:55.3部
・ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物(BPA-PO:44.7部
・2-エチルヘキサン酸錫:0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、150℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。次に、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、撹拌しながら温度200℃まで昇温し、3時間反応させることで結晶性ポリエステルSB2を得た。
【0151】
(結晶性ポリエステルSB3の製造例)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部、及びジブチルスズオキサイド2部を仕込み、常圧下で、230℃にて8時間反応させた。次いで、10~15mmHgの減圧下で、5時間反応させて、中間体ポリエステルを合成した。得られた中間体ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、重量平均分子量(Mw)が9,600、ガラス転移温度(Tg)が55℃、酸価が0.5mgKOH/g、水酸基価が49mgKOH/gであった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、前記中間体ポリエステル411部、イソホロンジイソシアネート89部、及び酢酸エチル500部を仕込み、100℃にて5時間反応させて、プレポリマー1を合成した。得られたプレポリマー1の遊離イソシアネート含有量は、1.60%であり、プレポリマー1の固形分濃度(150℃、
45分間放置後)は50%であった。
【0152】
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、セバシン酸63.1部、及び1,6-ヘキサンジオール36.9部を仕込んだ。次に、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に、180℃で10時間反応させた後、200℃に昇温して3時間反応させ、更に8.3kPaの圧力にて2時間反応
させて結晶性ポリエステル樹脂C1を得た。
撹拌棒及び温度計を備えた容器中に、結晶性ポリエステル樹脂SB3 25部、及び酢酸エチル75部を入れた後、撹拌下、80℃まで昇温し、結晶性ポリエステル樹脂SB3を溶解した。その後、30℃まで冷却した後、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度を1kg/h、ディスクの周速度を6m/s、直径が0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填して、3パスの条件で分散させ、結晶性ポリエステル樹脂分散液SB3を得た。
【0153】
1-3.非晶性ポリエステル樹脂(有色トナー用)
(非晶性ポリエステル樹脂A1の製造例)
・フマル酸:48.2部
・ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物(BPA-PO):21.0部
・ジプロパノール:30.8部
・2-エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒): 0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。
反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
次に、反応槽内の圧力を8.0kPaに下げ、撹拌しながら温度200℃まで昇温し、4時間反応させた。
その後、再び反応槽内を5kPa以下へ減圧して200℃で3時間反応させることにより、非晶性ポリエステル樹脂A1を得た。
【0154】
(非晶性ポリエステル樹脂A2の製造例)
・フマル酸:48.2部
・ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物(BPA-PO):21.0部
・ジプロパノール:30.8部
・2-エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒): 0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。
反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、150℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
次に、反応槽内の圧力を8.0kPaに下げ、撹拌しながら温度200℃まで昇温し、4時間反応させた。
その後、再び反応槽内を5kPa以下へ減圧して200℃で5時間反応させることにより、非晶性ポリエステル樹脂A2を得た。
【0155】
(非晶性ポリエステル樹脂A3の製造例)
-非晶性(低分子量)ポリエステル樹脂L1の合成-
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸25.3部、アジピン酸5.6部、ビスフェノールAのエチレンオキシド2.2モル付加物32.2部、ビスフェノールAのプロピレンオキシド2.2モル付加物35.7部、及びジブチルスズオキシド0.2部を投入した。常圧下、230℃で4時間反応させた。その後、10mmHg~15mmHgの減圧下、5時間反応させた。これにより、非晶性ポリエステル樹脂L1を得た。
-非晶性(低分子量)ポリエステル樹脂H1の合成-
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸25.3部、アジピン酸5.6部、ビスフェノールAのエチレンオキシド2.2モル付加物30.9部、ビスフェノールAのプロピレンオキシド2.2モル付加物34.3部、及びジブチルスズオキシド0.2部を投入した。常圧下、230℃で3時間反応させた。その後、トリメリット酸4部を投入し、更に2時間反応させた。その後、10mmHg~15mmHgの減圧下、5時間反応させた。これにより、非晶性ポリエステル樹脂H1を得た。
-非晶性ポリエステル樹脂分散液の調製-
非晶性ポリエステル樹脂L1 95部、及び非晶性ポリエステル樹脂H1 5部を、アセトン90部に溶解し、アセトン溶解液を得た。得られたアセトン溶解液180部及び水720部を混ぜ、TK式ホモミキサー(プライミクス株式会社製)を用いて、8,000rpmで1分間混合した。その後、分散液を減圧し、アセトンを揮発、除去し、非晶性ポ
リエステル樹脂分散液A3を得た。
【0156】
1-4.結晶性ポリエステル樹脂(有色トナー用)
(結晶性ポリエステルB1の製造例)
・フマル酸:48.3部
・ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物(BPA-PO: 51.7部
・2-エチルヘキサン酸錫:0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。次に、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、撹拌しながら温度200℃まで昇温し、1時間反応させることで結晶性ポリエステルB1を得た。
【0157】
(結晶性ポリエステルB2の製造例)
・フマル酸:48.3部
・ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物(BPA-PO:51.7部
・2-エチルヘキサン酸錫:0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、150℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。次に、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、撹拌しながら温度200℃まで昇温し、3時間反応させることで結晶性ポリエステルB2を得た。
【0158】
(結晶性ポリエステルB3の分散液の製造例)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部、及びジブチルスズオキサイド2部を仕込み、常圧下で、230℃にて8時間反応させた。次いで、10mmHg~15m
mHgの減圧下で、5時間反応させて、中間体ポリエステルを合成した。得られた中間体ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、重量平均分子量(Mw)が9,600、ガラス転移温度(Tg)が55℃、酸価が0.5mgKOH/g、水酸基価が49mgKOH/gであった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、前記中間体ポリエステル411部、イソホロンジイソシアネート89部、及び酢酸エチル500部を仕込み、100℃にて5時間反応させて、プレポリマー1を合成した。得られたプレポリマー1の遊離イソシアネート含有量は、1.60%であり、プレポリマー1の固形分濃度(150℃、
45分間放置後)は50%であった。
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、セバシン酸63.1部、及び1,6-ヘキサンジオール36.9部を仕込んだ。次に、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に、180℃で10時間反応させた後、200℃に昇温して3時間反応させ、更に8.3kPaの圧力にて2時間反応
させて結晶性ポリエステル樹脂B3を得た。
【0159】
撹拌棒及び温度計を備えた容器中に、結晶性ポリエステル樹脂B3 25部、及び酢酸エチル75部を入れた後、撹拌下、80℃まで昇温し、結晶性ポリエステル樹脂B3を溶解した。その後30℃まで冷却した後、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度を1kg/h、ディスクの周速度を7m/s、直径が0.5m
mのジルコニアビーズを80体積%充填して、3パスの条件で、分散させ、結晶性ポリエステル樹脂B3の分散液を得た。
【0160】
2.トナーの調製
2-1.白色トナーの調製
(白色トナーS1の調製)
・非晶性ポリエステル樹脂SA1:55部
・結晶性ポリエステルSB1:45部
・ジエステルワックス:5部(融点:95℃)
・酸化チタン(白色の着色剤):45部
上記材料をヘンシェルミキサで40m・s-1の速さで回転時間5minで混合した。
その後、温度130℃に設定した二軸混練機にて混練した。得た混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機にて微粉砕した。その後、微粉分級機(ファカルティ/ホソカワミクロン製)を分級ローター回転数を130s-1、分散ローター回転数を120s-1の条件下で用いて20分間微粉砕後の前駆体を分級することにより、体積基準のメジアン径7.3μmの粒子を得た。
分級を経た粒子に対して、気流乾燥装置によって乾燥処理を行った。運転条件は、熱風温度=130℃、乾燥時間30分とすることで白色トナー母体粒子を得た。
【0161】
その後、白色トナー母体粒子100部に対し、疎水性シリカ粒子A(個数平均一次粒径:16nm、疎水化度:68)1.0質量部および大径シリカ粒子B(個数平均一時粒径:50nm)1.5質量部を添加し、ヘンシェルミキサを用いて、周速を35m/sとして1分間混合した後、休止し、さらに5分間混合を行った。目開きが43μmのメッシュを用いて篩い、白色トナー粒子S1を得た。
【0162】
(白色トナーS2、S3、S8の調製)
白色トナーS1の調製において、表1に示すように非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の含有量を変更した以外は、白色トナーS1と同様にして白色トナーS2及びS3を製造した。
【0163】
(白色トナーS4及びS6の調製)
白色トナーS1の調製において、表1に示すように乾燥条件を変更した以外は、白色トナーS1と同様にして白色トナーS4及びS6を調製した。
【0164】
(白色トナーS5の調製)
白色トナーS1の調製において、表1に示すように非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂の種類を変更した以外は、白色トナーS1と同様にして白色トナーS5を調製した。
【0165】
(白色トナーS7の製造)
非晶性ポリエステル樹脂分散液SA3 100部、結晶性ポリエステル樹脂分散液SB3 120部、ワックス分散液125部、有機変性層状無機化合物のマスターバッチ12部、酸化チタン60部、及び酢酸エチル63部を混ぜ、ホモミキサーを用いて、6,000rpmで、120分間、混合して油相01(固形分50%)を得た。
撹拌機及び温度計を備えた容器中に、水相180部を入れた後、水浴上20℃で保持した。次に、20℃に保持されている111部の油相01に変性プレポリマー1を5部加えたものを水相に投入した。20℃に保持しながら、TK式ホモミキサーを用いて、6,000rpmで2分間混合し、乳化スラリーを得た。撹拌機及び温度計を備えた容器中に、乳化スラリーを入れた後、40℃で減圧下脱溶剤して、油滴中の固形分換算で80%のスラリーを得た。
得られたスラリーを40℃に保持しながら、TK式ホモミキサーを用いて、6,000rpmで5分間混合し、スラリーにせん断応力をかけたさらに40℃で減圧下脱溶剤して、有機溶剤揮発分が0%のスラリーを得た。
次に、得られたスラリーを室温まで冷却後、減圧濾過した。濾過ケーキにイオン交換水200部を加え、スリーワンモーター(新東科学株式会社製)を用いて、800rpmで5分間混合しリスラリー後、濾過した。さらに、濾過ケーキに1質量%水酸化ナトリウム水溶液10部とイオン交換水190部を加え、同様にリスラリーした後、濾過した。次に、濾過ケーキに1質量%塩酸10部とイオン交換水190部を加え、同様にリスラリーした後、濾過した。さらに、濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、リスラリーした後、濾過する操作を2回繰り返した。
循風乾燥機を用いて、濾過ケーキを目開き2mmメッシュに通した後に45℃で96時間乾燥させ、目開きが75μmのメッシュを用いて篩い、コアが結晶性ポリエステル樹脂SB3、シェルが非晶性ポリエステル樹脂SA3のコアシェル型のトナー母体粒子を得た。
【0166】
(白色トナーS9の調製)
非晶性ポリエステル樹脂分散液SA3 100部、結晶性ポリエステル樹脂分散液SB3 120部、ワックス分散液125部、有機変性層状無機化合物のマスターバッチ12部、酸化チタン60部、及び酢酸エチル63部を混ぜ、ホモミキサーを用いて、6,000rpmで、120分間、混合して油相01(固形分50%)を得た。
撹拌機及び温度計を備えた容器中に、水相180部を入れた後、水浴上20℃で保持した。次に、20℃に保持されている111部の油相01に変性プレポリマー1を5部加えたものを水相に投入した。20℃に保持しながら、TK式ホモミキサーを用いて、8,000rpmで2分間混合し、乳化スラリーを得た。撹拌機及び温度計を備えた容器中に、乳化スラリーを入れた後、40℃で減圧下脱溶剤して、油滴中の固形分換算で80%のスラリーを得た。
得られたスラリーを40℃に保持しながら、TK式ホモミキサーを用いて、8,000rpmで5分間混合し、スラリーにせん断応力をかけたさらに40℃で減圧下脱溶剤して、有機溶剤揮発分が0%のスラリーを得た。
次に、得られたスラリーを室温まで冷却後、減圧濾過した。濾過ケーキにイオン交換水200部を加え、スリーワンモーター(新東科学株式会社製)を用いて、800rpmで5分間混合しリスラリー後、濾過した。さらに、濾過ケーキに1質量%水酸化ナトリウム水溶液10部とイオン交換水190部を加え、同様にリスラリーした後、濾過した。次に、濾過ケーキに1質量%塩酸10部とイオン交換水190部を加え、同様にリスラリーした後、濾過した。さらに、濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、リスラリーした後、濾過する操作を2回繰り返した。
循風乾燥機を用いて、45℃で48時間濾過ケーキをそのまま崩さずに乾燥させた後、目開きが75μmのメッシュを用いて篩い、コアが結晶性ポリエステル樹脂SB3、シェルが非晶性ポリエステル樹脂SA3のコアシェル型のトナー母体粒子を得た。
【0167】
(白色トナーS10の調製)
白色トナーS1の製造において、最終的な平均円形度が0.910になるように、微粉分級機(ファカルティ/ホソカワミクロン製)の分級時間を10分に変更した以外は白色トナーS1と同様にして白色トナーS10を製造した。
【0168】
(白色トナーS11の調製)
非晶性ポリエステル樹脂分散液SA4 100部、結晶性ポリエステル樹脂分散液SB3 20部、ワックス分散液25部、有機変性層状無機化合物のマスターバッチ12部、酸化チタン60部、及び酢酸エチル63部を混ぜ、ホモミキサーを用いて、6,000rpmで、120分間、混合して油相(固形分50%)を得た。
撹拌機及び温度計を備えた容器中に、水相174部を入れた後、水浴上20℃で保持した。次に、20℃に保持されている111部の油相に変性プレポリマー1を5部加えたものを水相に投入した。20℃に保持しながら、TK式ホモミキサーを用いて、8,000rpmで2分間混合し、乳化スラリーを得た。撹拌機及び温度計を備えた容器中に、乳化スラリーを入れた後、40℃で減圧下脱溶剤して、油滴中の固形分換算で80%のスラリーを得た。
得られたスラリーを40℃に保持しながら、TK式ホモミキサーを用いて、8,000rpmで5分間混合し、スラリーにせん断応力をかけたさらに40℃で減圧下脱溶剤して、有機溶剤揮発分が0%のスラリーを得た。
次に、得られたスラリーを室温まで冷却後、減圧濾過した。濾過ケーキにイオン交換水200部を加え、スリーワンモーター(新東科学株式会社製)を用いて、800rpmで5分間混合しリスラリー後、濾過した。さらに、濾過ケーキに1質量%水酸化ナトリウム水溶液10部とイオン交換水190部を加え、同様にリスラリーした後、濾過した。次に、濾過ケーキに1質量%塩酸10部とイオン交換水190部を加え、同様にリスラリーした後、濾過した。さらに、濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、リスラリーした後、濾過する操作を2回繰り返した。
循風乾燥機を用いて、45℃で48時間濾過ケーキをそのまま崩さずに乾燥させた後、目開きが75μmのメッシュを用いて篩い、コアが結晶性ポリエステル、シェルが非晶性ポリエステルのコアシェル型のトナー母体粒子を得た。
【0169】
2-2.物性の測定
(粘度)
フローテスター(装置名:CFT-500、株式会社島津製作所製)を用いて、下記条件及び手順で、白色トナーの粘度を測定した。
まず、白色トナー1.1gを粉体状態のまま50℃に保温しておいたシリンダー内に投入し、保温時間300秒で予熱した。
次いで、6℃/minの速度で加熱しながら、白色トナーをプランジャーにより加圧(2kg荷重を付加)し、溶融した白色トナーをシリンダー下部に設けた筒状のダイ穴(穴内径:1.0mm、ダイ長さ:1.0mm)から流出させた。
溶出が完全に終わるまでのデータを測定し、110℃に到達した際の粘度値を読み取り、対数変換して、logμ(W110)を算出した。
【0170】
(トナー粒子の平均円形度)
白色トナーのトナー粒子を、界面活性剤溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行い、分散させた。これを、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(Sysmex社製)を用いて、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000~10000個の適正濃度で、各粒子の投映像の周囲長を測定した。そして、各粒子の円形度を、下記式に基づいて算出した。
円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
そして、各粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で割った算術平均値を平均円形度とした。
【0171】
(体積基準のメジアン径(D50))
体積基準のメジアン径(D50)は、例えば「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」に、データ処理用のコンピューターシステムを接続した装置を用いて測定、算出した。
まず、トナー粒子 0.02gを、界面活性剤溶液 20ml(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー粒子分散液を作製した。
このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内のISOTON II(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定濃度5~10%になるまでピペットにて注入し、測定機カウントを25000個に設定して測定した。なお、マルチサイザー3のアパーチャー径は100μmのものを使用した。測定範囲1~30μmの範囲を256分割しての頻度数を算出し、体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準のメジアン径(D50)とした。
【0172】
白色トナーS1~S11の樹脂組成、製造条件、物性について、表1に示す。
【0173】
【0174】
2-3.有色トナーの調製
(カラートナーY1/M1/C1/B1の製造)
・非晶性ポリエステル樹脂A1:60部
・結晶性ポリエステルB1:40部
・ジエステルワックス:5部(融点:95℃)
・着色剤:12部
なお、着色剤としては、イエロー用トナーの調製には、イエローの顔料(ピグメントイエロー74)を用い、マゼンタ用トナーを調製にはマゼンタの顔料(キナクリドン)を用い、シアン用トナーの調製には、シアンの顔料(フタロシアニンブルー(C.I.Pigment Blue 15:3))を用い、ブラック用トナーの調製にはブラックの顔料(カーボンブラック)を用いた。
上記材料をヘンシェルミキサーで40m・s-1の速さで、回転時間5minで混合した。その後、温度130℃に設定した二軸混練機にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機にて微粉砕した。その後、風力分級機を用いて微粉砕後の前駆体を分級することにより、体積基準のメジアン径6.4μmの粒子を得た。
分級を経た粒子に対して、気流乾燥装置によって乾燥処理を行った。運転条件は、熱風温度=130℃、乾燥時間30分とすることでカラートナー母体粒子を得た。
【0175】
その後、カラートナー母体粒子100部に対し、疎水性シリカ粒子A(個数平均一次粒径:16nm、疎水化度:68)1.0質量部および大径シリカ粒子B(個数平均一時粒径:50nm)1.5質量部を添加し、ヘンシェルミキサを用いて、周速を35m/sとして1分間混合した後、休止し、さらに5分間混合を行った。目開きが43μmのメッシュを用いて篩い、カラートナー粒子Y1/M1/C1/B1を得た。
【0176】
(カラートナーY2/M2/C2/B2~Y5/M5/C5/B5の製造)
カラートナーY1/M1/C1/B1の調製において、表2に示すように、非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂の含有量を変更した以外はカラートナーY1/M1/C1/B1と同様にしてカラートナーY2/M2/C2/B2~Y5/M5/C5/B5を調製した。
【0177】
(カラートナーY6/M6/C6/B6、Y8/M8/C8/B8、Y10/M10/C10/B10の調製)
カラートナーY1/M1/C1/B1の調製において、表2に示すように乾燥条件を変更した以外は、カラートナーY1/M1/C1/B1と同様にしてカラートナーY6/M6/C6/B6を製造した。
【0178】
(カラートナーY7/M7/C7/B7の調製)
カラートナーY1/M1/C1/B1の調製において、表2に示すように非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂の種類を変更した以外は、カラートナーY1/M1/C1/B1と同様にしてカラートナーY7/M7/C7/B7を調製した。
【0179】
(カラートナーY9/M9/C9/B9の調製)
-イエロー顔料のマスターバッチの調製-
水200部、C.I.Pigment Yellow 185(Paliotol Yellow D1155、BASF社製)500部、及び非晶性ポリエステル樹脂L1の500部を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で混合した。
混合物を、2本ロールを用いて120℃で30分間混練後、圧延冷却し、パルペライザーで粉砕し、[イエロー顔料のマスターバッチ1]を得た。尚、他の色に関しても手順は同様であり、色材は先述の通りである。
【0180】
-ワックス分散剤1の合成-
撹拌棒及び温度計を備えた反応槽中に、キシレン480部、及びパラフィンワックスHNP-9(日本精鑞株式会社製)100部を入れて溶解するまで加熱した後、窒素置換し、170℃まで昇温した。次に、スチレン740部、アクリロニトリル100部、アクリル酸ブチル60部、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート36部、及び
キシレン100部の混合液を3時間で滴下した後、170℃で30分間保持した。さらに、脱溶剤し、ワックス分散剤1を得た。
【0181】
-有機変性層状無機化合物のマスターバッチ1の調製-
水200部、有機変性層状無機化合物(CLAYTONE APA、ビックケミー・ジャパン株式会社製)500部、及び非晶性ポリエステル樹脂L1の500部を加え、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で混合した。混合物を、2本ロールを用いて120℃で30分間混練後、圧延冷却し、パルペライザーで粉砕し、[有機変性層状無機化合物のマスターバッチ1]を得た。以上を踏まえてカラートナーを製造する。
【0182】
非晶性ポリエステル樹脂分散液A3 100部、結晶性ポリエステル樹脂分散液B3 20部、ワックス分散液W1 25部、有機変性層状無機化合物のマスターバッチ1 2部、イエロー顔料のマスターバッチ 12部、及び酢酸エチル69部を混ぜ、TK式ホモミキサー(プライミクス株式会社製)を用いて、6,000rpmで、120分間、混合して油相Y1(固形分50%)を得た。
【0183】
撹拌機及び温度計を備えた容器中に、水相160.5部を入れた後、水浴上20℃で保持した。次に、20℃に保持されている102部の油相Y1に変性プレポリマー1を5部加えたものを水相に投入した。20℃に保持しながら、TK式ホモミキサー(プライミクス株式会社製)を用いて、8,000rpmで2分間混合し、乳化スラリーを得た。40
℃で減圧下脱溶剤して、有機溶剤揮発分が0%のスラリーを得た。
次に、得られたスラリーを室温まで冷却後、減圧濾過した。濾過ケーキにイオン交換水200部を加え、スリーワンモーター(新東科学株式会社製)を用いて、800rpmで5分間混合しリスラリー後、濾過した。さらに、濾過ケーキに1質量%水酸化ナトリウム水溶液10部とイオン交換水190部を加え、同様にリスラリーした後、濾過した。次に、濾過ケーキに1質量%塩酸10部とイオン交換水190部を加え、同様にリスラリーした後、濾過した。さらに、濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、リスラリーした後、濾過する操作を2回繰り返した。
【0184】
循風乾燥機を用いて、濾過ケーキを目開き2mmメッシュに通した後に45℃で96時間乾燥させ、目開きが75μmのメッシュを用いて篩い、コアが結晶性ポリエステル樹脂、シェルが非晶性ポリエステル樹脂のコアシェル型のトナー母体粒子を得た。
【0185】
(カラートナーY11/M11/C11/B11の調製)
非晶性ポリエステル樹脂分散液A3 100部、結晶性ポリエステル樹脂分散液B3 20部、ワックス分散液W1 25部、有機変性層状無機化合物のマスターバッチ1 2部、イエロー顔料のマスターバッチ1 12部、及び酢酸エチル69部を混ぜ、TK式ホモミキサー(プライミクス株式会社製)を用いて、6,000rpmで、120分間、混合して油相Y1(固形分50%)を得た。
【0186】
撹拌機及び温度計を備えた容器中に、水相160.5部を入れた後、水浴上20℃で保持した。次に、20℃に保持されている102部の油相Y1に変性プレポリマー1を5部加えたものを水相に投入した。20℃に保持しながら、TK式ホモミキサー(プライミクス株式会社製)を用いて、8,000rpmで2分間混合し、乳化スラリーを得た。40℃で減圧下脱溶剤して、有機溶剤揮発分が0%のスラリーを得た。
次に得られたスラリーを室温まで冷却後、減圧濾過した。濾過ケーキにイオン交換水200部を加え、スリーワンモーター(新東科学株式会社製)を用いて、800rpmで5分間混合しリスラリー後、濾過した。さらに、濾過ケーキに1質量%水酸化ナトリウム水溶液10部とイオン交換水190部を加え、同様にリスラリーした後、濾過した。次に、濾過ケーキに1質量%塩酸10部とイオン交換水190部を加え、同様にリスラリーした後、濾過した。さらに、濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、リスラリーした後、濾過する操作を2回繰り返した。
循風乾燥機を用いて、45℃で48時間濾過ケーキをそのまま崩さずに乾燥させた後、目開きが75μmのメッシュを用いて篩い、コアが結晶性ポリエステル樹脂、シェルが非晶性ポリエステル樹脂のコアシェル型のトナー母体粒子を得た。
【0187】
2-4.物性の測定
(粘度)
上記した粘度の測定方法において、溶出が完全に終わるまでのデータを測定し、100℃に到達した際の粘度値を読み取った以外は同様にして、lоgμ(C100)を算出した。
【0188】
(平均円形度、メジアン径)
上記した平均円形度、メジアン径の測定方法と同様に測定した。
【0189】
有色トナー1~13の樹脂組成、製造条件、物性について、表2に示す。
【0190】
【0191】
3.試験及び評価
<試験1~19>
画像形成装置として、電子写真方式を採用した市販のプリンター「magicolor(登録商標) 2300DL」(コニカミノルタ株式会社製)において、定着部を
図3に示すサーフ定着部に改造したものを使用した。
そして、表3に示す白色トナー及びカラートナーを用いて、同表の条件で以下の各試験を行った。各試験において、定着温度とは、定着ベルトの設定温度(ヒータの温度)をいい、定着ベルトと対向する加圧ローラ63の表面温度は、常に定着ベルトより50℃低い温度に設定した。
なお、試験18では、定着部がローラー定着器である未改造品を用いた。
【0192】
使用した記録媒体は、以下の通りである。
PETフィルム:PET50A(リンテック株式会社、A4 80g・m2)
PPフィルム:PP top clear BO(Avery Dennison株式会社、ロール紙、112・m2)
紙:npi上質紙(日本製紙株式会社、ロール紙、127.9g・m2)
【0193】
3-1.画像表面荒れ
まず、記録媒体上に、白色トナーと、カラートナーとをこの順に積層して、印字率20%相当のベタチャートを形成した。トナー付着量は、白色トナー8g/m2、カラートナー4g/m2とした。
次いで、ベタチャートを、白+カラーの重ね合わせ設定とし、定着温度150℃にて1万枚出力した。ロール紙を用いる場合は、1万枚相当の長さで画像を出力した。給紙機構にロールのセッティングができない場合は、ロール紙をA4サイズにカットし、一万枚の画像出力試験を行った。
そして、9000~1万枚目に出力した画像について、トナー画像の表面を光学顕微鏡で目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:問題なし
○:やや凹凸・傷が確認できる
△:凹凸・傷が確認できる
×:明らかにスジが存在している
【0194】
3-2.ベルト破断性
印字率20%相当のベタチャートを、上記3-1と同様に形成し、定着温度150℃にて1万枚出力した。ロール紙を用いる場合は、1万枚相当の長さで画像を出力した。給紙機構にロールのセッティングができない場合は、ロール紙をA4サイズにカットし、一万枚の画像出力試験を行った。この試験の間に、定着ベルトが破断、亀裂、折れ等が発生した場合は試験を中断し、問題ない場合は最後まで出力させた。そして、ベルト破断性について、以下の基準で評価した。
◎:破断することなく1万枚の通紙が完了する
〇:ベルト表面を観察し、目に見えて細かい傷がややみられるが破断はしない
△:ベルト表面を観察し、目に見えて細かい傷があるが破断はしない
×:評価中にベルトが破断する
【0195】
3-3.低温定着性
記録媒体上に、白色トナーと、カラートナーとをこの順に積層して、ベタチャートを形成した。トナー付着量は、白色トナー8g/m2、カラートナー4g/m2とした。
次いで、定着温度175℃にて定着速度250mm/secで出力する試験を、定着温度を5℃刻みで減少させるよう変更しながら、コールドオフセット(定着部を通過する際に与えられた熱によるトナーのベタ画像の溶融が不十分であるために、トナー画像が紙から剥がれ、紙面が見えている部分が存在する状態の画像欠陥)が発生するまで繰り返し行った。コールドオフセットが発生しなかった定着温度設定値を記録し、これを定着下限温度として低温定着性を評価した。
◎:定着下限温度が130℃以下
○:定着下限温度が130℃超150℃以下
△:定着下限温度が150℃超170℃以下
×:定着下限温度が170℃超
定着下限温度が低いほど、低温定着性に優れることを示す。
【0196】
3-4.画像ブリスタ
記録媒体上に、印字率20%相当のベタチャートを、白+カラーの重ね合わせ設定とし、定着温度150℃にて30枚出力した。ロール紙を用いる場合は、30枚相当の長さで画像を出力した。給紙機構にロールのセッティングができない場合は、ロール紙をA4サイズにカットし、一万枚の画像出力試験を行った。そして、全ての出力画像について、トナー画像の表面を光学顕微鏡により目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:問題なし
○:所定範囲でブリスタが1箇所以上2箇所以内で発生
△:所定範囲でブリスタが3箇所以上4箇所以内で発生するが、実用上問題無い
×:所定範囲でブリスタが4箇所以上発生/画像出力ができず評価不可
なお、画像ブリスタとは、トナーが定着で溶融する際、下地の白色トナー層に存在する空気層中に含まれる水分が気化し、トナー層表面が気泡で荒れた状態になることを指す。
【0197】
試験1~19の評価結果を表3に示す。
【0198】
【0199】
表3に示すように、白色トナーとカラートナーの粘度の対数値差Δ(lоgμW(110)-lоgμC(100))が0.3未満である試験17、19では、画像の表面荒れやベルト破断が生じることがわかる。また、ローラー定着を採用した試験18では低温定着性が低いことがわかる。
【0200】
これに対して、白色トナーとカラートナーの粘度の対数値差Δが0.3以上である試験1~16では、サーフ定着により低温で定着させることができ、且つ画像の表面荒れやベルト破断も低減できることがわかる。
【0201】
これらのことから、白色トナーとカラートナーの粘度の対数値差Δを0.3以上とし、且つサーフ定着で定着させることにより、低温定着性を得つつ、画像表面荒れやベルト破断も低減できることがわかる。
【0202】
特に、上記対数値差Δを0.5以上とすることで、画像表面荒れをより低減できることがわかる(試験4、5の対比)。
【0203】
また、白色トナーの粘度の対数値を適度に低くすることで、画像ブリスタをより抑制できることがわかる(試験1、6、7の対比)。
【0204】
また、平均円形度をより低くすることで、画像表面荒れやベルト破断をより低減できることがわかる(試験1と16の対比)。