(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042382
(43)【公開日】2025-03-27
(54)【発明の名称】体調アラート送信システム
(51)【国際特許分類】
G16H 80/00 20180101AFI20250319BHJP
G16H 10/20 20180101ALI20250319BHJP
【FI】
G16H80/00
G16H10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149355
(22)【出願日】2023-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩行
(72)【発明者】
【氏名】西窪 祐一
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】患者の治療を支援する。
【解決手段】本開示の一態様に係る情報処理装置2は、患者の身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する心身情報を取得する取得部100と、心身情報に基づいて、患者の治療を支援する支援者に対して通知を出力する出力部102であって、通知は、支援者が患者に関して行うことが推奨される行動に関する推奨行動情報を含む、出力部102と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する心身情報を取得する取得部と、
前記心身情報に基づいて、前記患者の治療を支援する支援者に対して通知を出力する出力部であって、前記通知は、前記支援者が前記患者に関して行うことが推奨される行動に関する推奨行動情報を含む、出力部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記患者は、がん、白血病、肉腫、骨髄腫、脳卒中、心筋梗塞、高血圧性疾患、糖尿病、肝硬変、慢性腎不全及びうつ病、統合失調症及び認知症の少なくともいずれかを含む慢性疾患を罹患している者である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記患者は、がん患者である、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記心身情報が、身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する一以上の条件の少なくとも一部を満たしているか否かを判定する判定部、をさらに備え、
前記出力部は、前記判定部において前記心身情報が前記一以上の条件の少なくとも一部を満たしていると判定された場合に前記通知を出力し、前記判定部において前記心身情報が前記一以上の条件のいずれも満たしていないと判定された場合には前記通知の出力が制限される、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記心身情報が、身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する一以上の条件のいずれを満たしているかに基づいて、複数の候補から前記支援者を選択する選択部、をさらに備える、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記一以上の条件は、身体及び精神の少なくとも一方の重篤度に関する条件を含む、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記通知は、前記心身情報を要約した情報をさらに含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記取得部は、前記患者の疾患に関する疾患背景情報と、前記患者の治療に関する治療背景情報との少なくとも一方をさらに取得し、
前記出力部は、前記疾患背景情報及び前記治療背景情報の少なくとも一方にさらに基づいて前記通知を出力する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記取得部は、前記患者と、前記支援者との関係性に関する患者関係性情報をさらに取得し、
前記出力部は、前記患者関係性情報にさらに基づいて前記通知を出力する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記支援者は、前記患者の家族を含む親近者、及び、前記患者の治療を行う医療従事者の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
コンピュータを、
患者の身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する心身情報を取得する取得手段と、
前記心身情報に基づいて、前記患者の治療を支援する支援者に対して通知を出力する出力手段であって、前記通知は、前記支援者が前記患者に関して行うことが推奨される行動に関する推奨行動情報を含む、出力手段と、
として機能させる、プログラム。
【請求項12】
コンピュータに、
患者の身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する心身情報を取得するステップと、
前記心身情報に基づいて、前記患者の治療を支援する支援者に対して通知を出力するステップであって、前記通知は、前記支援者が前記患者に関して行うことが推奨される行動に関する推奨行動情報を含む、ステップと、
を実行させる、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体調アラート送信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者の状態をモニタリングする技術が知られている。例えば、特許文献1には、患者履歴収集モジュールと接続された患者情報収集モジュールと、遠隔通信モジュールを介してバックグラウンド管理モジュールと接続された情報収集モジュールを備えた遠隔患者監視のための医療システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第115116598号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1によっては、患者の治療を十分に支援することができない。例えば、患者を支援するための情報を提供することに関して、検討の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、患者の治療を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る情報処理装置は、患者の身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する心身情報を取得する取得部と、心身情報に基づいて、患者の治療を支援する支援者の端末装置に対して通知を出力する出力部であって、通知は、支援者が患者に関して行うことが推奨される行動に関する推奨行動情報を含む、出力部と、を備える。
【0007】
本開示の他の一実施形態に係るプログラムは、患者の身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する心身情報を取得する取得手段と、心身情報に基づいて、患者の治療を支援する支援者の端末装置に対して通知を出力する出力手段であって、通知は、支援者が患者に関して行うことが推奨される行動に関する推奨行動情報を含む、出力手段と、として機能させる。
【0008】
本開示の他の一実施形態に係る情報処理方法は、コンピュータに、患者の身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する心身情報を取得するステップと、心身情報に基づいて、患者の治療を支援する支援者の端末装置に対して通知を出力するステップであって、通知は、支援者が患者に関して行うことが推奨される行動に関する推奨行動情報を含む、ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、患者の治療を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】システム1の動作を説明するためのシーケンス図である。
【
図3】患者用端末装置3の表示画面例について説明するための図である。
【
図4】通知条件の一例について説明するための図である。
【
図5】家族用端末装置4aの表示画面例について説明するための図である。
【
図6】患者用端末装置3の表示画面例について説明するための図である。
【
図7】家族用端末装置4aの表示画面例について説明するための図である。
【
図8】医師用端末装置4bの表示画面例について説明するための図である。
【
図9】情報処理装置2のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本開示の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0012】
本開示において、「部」や「手段」、「装置」、「システム」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」や「手段」、「装置」、「システム」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」や「手段」、「装置」、「システム」が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置、ソフトウェアにより実現されても、2つ以上の「部」や「手段」、「装置」、「システム」の機能が1つの物理的手段や装置、ソフトウェアにより実現されてもよい。
【0013】
<1.システム1の概要>
本開示に係るシステム1(以下、単に「システム1」と称する)の概要について説明する。
【0014】
患者は、疾患によって身体面・精神面の双方が疲弊する状態が定常的に続く場合があり、突発的な要因によってトラブル(例えば、症状の悪化、急性的なうつ状態の発生等)が生じる可能性がある。また、患者の心身の状態が急激に悪化した場合には、患者はそのことを自身で家族や医師に報告できない可能性がある。患者の疾患が、がん等の慢性疾患である場合には、これらの傾向が特に顕著である。
【0015】
システム1によれば、患者の心身の状態に関する情報に基づいて、患者の治療を支援する支援者(例えば、患者の親近者及び医療従事者等)に対して、患者に関して行うことが推奨される行動に関する情報を含む通知を出力することができる。これにより、患者の状態を支援者に自動的に連携することができる。その結果、患者にトラブルが発生することを抑制するとともに、支援者の負担を軽減することができる。
【0016】
本開示において、患者は、例えば、がん(肺がん、乳がん、胃がん、大腸がん、子宮がん及び卵巣がん等を含む)、白血病、肉腫、骨髄腫、脳卒中、心筋梗塞、高血圧性疾患、糖尿病、肝硬変、慢性腎不全及び精神疾患(うつ病、統合失調症及び認知症を含む)等の慢性疾患を罹患している者であるとする。以下の実施形態では、患者は、乳がんを罹患している者(以下、「がん患者」と称する)であるとして説明するが、本開示の適用範囲はこれに限定されない。
【0017】
また、本開示において、医療従事者は、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、臨床検査技師及びカウンセラー等を含む。以下の実施形態では、医療従事者は、医師であるとして説明するが、本開示の適用範囲はこれに限られない。
【0018】
また、本開示において、がん患者の親近者は、がん患者と近い関係にある者を含む。がん患者の親近者は、例えば、がん患者の、家族(夫婦、両親、子ども及びその他の親族等)、友人、同僚及びパートナー等を含む。以下の実施形態では、親近者は、家族であるとして説明するが、本開示の適用範囲はこれに限られない。
【0019】
本開示に係るシステム1に含まれる情報処理装置2の動作の一例について、簡易的に説明する。情報処理装置2は、まず、患者の身体及び精神の状態に関する情報を取得する。次に、この情報に基づいて、患者の家族や医師等の端末装置4に対して通知を送信する。この通知は、家族や医師が患者に関して行うことが推奨される行動に関する情報を含む。
【0020】
<2.システム1の機能構成>
図1を参照して、システム1の構成の一例について説明する。システム1は、情報処理装置2、患者用端末装置3、家族用端末装置4a、医師用端末装置4b及び通信ネットワーク6を含む。以下、家族用端末装置4a及び医師用端末装置4bを特に区別しないときは、これらをまとめて「支援者用端末装置4」と称する。また、患者用端末装置3及び支援者用端末装置4を特に区別しないときは、これらをまとめて「端末装置5」と称する。と情報処理装置2及び端末装置5は、通信ネットワーク6を介して互いに通信可能に構成されている。以下では、各装置の詳細について説明する。
【0021】
[情報処理装置2]
情報処理装置2は、例えば、端末装置5をクライアント装置とするサーバ装置である。一実施形態において、情報処理装置2は、webサーバ装置である。
【0022】
情報処理装置2は、制御部10、記憶部14、ネットワークインタフェース部16及びバス18を含む。制御部10、記憶部14及びネットワークインタフェース部16は、バス18を介して互いに電気的に接続されている。
【0023】
―記憶部14―
記憶部14は、情報処理装置2が動作するために必要となる各種情報を記憶する。また、記憶部14は、後述する制御部10が実行する各種プログラムを記憶する。また、記憶部14は、少なくとも、心身情報、疾患背景情報、治療背景情報、患者関係性情報、推奨行動情報及び通知条件情報を記憶する。以下、心身情報、疾患背景情報、治療背景情報及び患者関係性情報をまとめて「患者背景情報」と称する。
【0024】
(心身情報)
心身情報は、患者の身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する情報である。一実施形態において、身体の状態及び精神の状態に関する情報は、がん患者の主観に基づく情報である。
【0025】
本開示において、身体の状態は、例えば、がん患者の身体に関する主訴、がんによる身体的な影響の強度、及び、がんによる身体的な症状が出ている期間の長さ等に関する情報を含む。なお、がんによる身体的な影響の強度は、例えば、スケール評価及び点数等により表現される。
【0026】
本開示において、精神の状態は、例えば、がん患者の精神に関する主訴、精神的な落ち込み具合の強度、及び、精神的に落ち込んでいる期間の長さ等に関する情報を含む。なお、精神的な落ち込み具合の強度は、例えば、スケール評価及び点数等により表現される。
【0027】
また、精神の状態は、例えば、治療の先行きの不透明感による不安感、自身の生命が危機にさらされることによる抑うつ感、治療の副作用や経済的な問題によるストレス、一般社会から一時的に隔離されることによる孤独感、及び、治療の過程で失われた身体の機能や特徴の喪失による喪失感等により表現される。
【0028】
(疾患背景情報)
疾患背景情報は、がん患者の疾患の状態に関する情報である。疾患背景情報の一例は、がん患者の、診断から現在に至るまでの疾患の記録に関する情報である。疾患背景情報は、がん患者の、がんのタイプ、がんのステージ、診断時の状況及びがんの症状の少なくともいずれかに関する情報を含む。
【0029】
本開示において、がんのタイプは、がんに関連するたんぱく質の種類、がんの腫瘍の形状及び成長パターン、及び、遺伝による影響の有無等に基づいて特定される。例えば、がんが乳がんである場合には、がんに関連するたんぱく質の種類に基づいて特定されるがんのタイプとして、ホルモン受容体陽性乳がん、HER2(human epidermal growth factor receptor 2)陽性乳がん及び三重陰性乳がん(いわゆるトリプルネガティブ)等がある。また、がんの腫瘍の形状及び成長パターンに基づいて特定されるがんのタイプとして、浸潤性乳管癌(IDC:invasive ductal carcinoma)、非浸潤性乳管癌(DCIS:ductal carcinoma in situ)、浸潤性小葉癌(ILC:invasive lobular carcinoma)、非浸潤性小葉癌(LCIS:lobular carcinoma in situ)及び乳頭癌等がある。がんのタイプは、がんの治療方針を決定するにあたって重要となる。
【0030】
本開示において、がんのステージは、がんが体内でどの程度広がっているか、及び、各部位においてどの程度進行しているかを評価するため指標を示す。一実施形態において、がんのステージは、「ステージ0」―「ステージ4」(又は、「ステージ1」―「ステージ4」)により表現される。この場合、「ステージ0」(又は、「ステージ1」)は他のステージと比較して最も軽度な状態を示し、「ステージ4」は他のステージと比較して最も重篤な状態を示す。また、一実施形態において、がんのステージは、TNM分類に基づいて決定される。この場合、がんのステージは、腫瘍の大きさ(T:Tumor)、リンパ節の転移(N:Node)及び他の臓器への転移(M:Metastasis)により決定される。
【0031】
本開示において、診断時の状況は、診断時において、がん患者が初発であるか再発であるかを示す。がん患者の初発であるか再発であるかによって、身体的又は精神的に必要となる支援は異なり得るため、がんの治療方針を決定するにあたって重要となる。
【0032】
本開示において、がんの症状は、がんが、がん患者の心身に与えている影響を示す。がんの症状には、例えば、体重減少、疲労、眠気、皮膚や眼の色の変化、痛み、食欲不振、吐き気、発熱、しこり、及び咳や息切れ等がある。
【0033】
(治療背景情報)
治療背景情報は、がん患者の治療の状態に関する情報である。治療背景情報の一例は、がん患者の、診断から現在に至るまでの治療の記録に関する情報である。治療背景情報は、がん患者の、治療スケジュール、治療歴、補助治療歴治療に関する価値観(以下、単に「価値観」と称する)及び治療上の関心又は悩み等に関する情報を含む。
【0034】
治療スケジュールは、がん患者の治療の予定である。一実施形態において、治療スケジュールは、治療の内容と、その治療が行われる時点との組み合わせである。また、本開示において、治療は、がん患者の身体の状態又は精神の状態を改善し得る行為を含むものとする。治療は、例えば、手術(腫瘍の切除及び乳房再建等を含む)、入院、退院、通院、投薬、リハビリ、運動、療養、食事及びカウンセリング等である。
【0035】
本開示において、治療歴は、がん患者が過去に行った、がんの腫瘍を除去するため又は縮小させるための治療の履歴であるとする。このような治療の一例は、腫瘍の切除手術、化学療法、ホルモン療法、放射線治療、免疫療法、凍結療法及び焼灼療法等である。
【0036】
本開示において、補助治療歴は、がん患者の身体の状態又は精神の状態を改善し得る治療(ただし、がんの腫瘍を除去等する治療を除く)の履歴であるとする。このような治療は、例えば、乳房再建、運動療法、食事療法及びカウンセリング等を含む。
【0037】
本開示において、価値観は、がん患者がどのようにがんを治療したいかという意志に関する。価値観は、例えば、各治療方法(例えば、手術、投薬及び放射線等)のメリット及びデメリットに対する考え方、治療と日常生活とのバランスに対する考え方、許容可能な副作用や痛みに対する考え方、及び、治療にかけられる時間的又は金銭的なコストに対する考え方等である。がんが乳がんである場合には、価値観は、リスクを受容して乳房を可能な限り残すか、又は、乳房を比較的大きく切除してリスクを可能な限り排除するかという意向を含む。がんは、他の疾患と比較して治療に長期間を要し、がん患者に様々な負担を強いる。そのため、がんの治療方針を決定するにあたって、がん患者の価値観は重要である。
【0038】
(患者関係性情報)
患者関係性情報は、がん患者と、がん患者の家族との関係性に関する情報である。一実施形態において、患者関係性情報は、がん患者と、がん患者の家族に含まれる複数のメンバーのそれぞれとの関係性の良好さを、段階、点数及びテキスト等で表現した情報を含む。患者関係性情報は、例えば、「がん患者は、家族との関係性が悪い」や「がん患者は、夫との関係性が非常に良く、母との関係性が普通である」というような情報である。
【0039】
(推奨行動情報)
推奨行動情報は、支援者ががん患者に関して行うことが推奨される行動(以下、「推奨行動」と称する)に関する情報である。推奨行動は、例えば、がん患者に対して声をかけること、がん患者の診察を行うこと、がん患者に代わって医師に連絡をとること、がん患者に対して電話をかけること、がん患者の通院を補助すること等を含む。
【0040】
(通知条件情報)
通知条件情報は、後述する出力部102が通知を出力する条件(以下、「通知条件」と称する)に関する情報を含む。一実施形態において、通知条件は、患者背景情報に関する条件である。通知条件は、例えば、精神の状態に対応する点数(心身情報の一例)が所定の期間にわたって所定の閾値を下回ること、家族との関係(患者関係性情報の一例)が悪化すること、がん患者が「ステージ2」のがんであり(疾患背景情報の一例)、かつ、身体の状態に対応する点数(心身情報の一例)が所定の閾値を下回ること等である。
【0041】
一実施形態において、通知条件は、身体及び精神の少なくとも一方の重篤度に関する条件を含む。一実施形態において、重篤度は、がん患者を支援する必要性の高さを示す指標である。重篤度は、がん患者自身による主観的なものであってもよく、医師が判断した客観的なものであってもよい。
【0042】
一実施形態において、通知条件は、通知先及び通知の内容が関連付けて記憶される。すなわち、通知条件情報は、「どの通知条件が満たされたら、誰に、どのような内容の通知を出力するか」を示す情報を含む。
【0043】
(がん患者に関するその他の情報)
記憶部14は、がん患者に関するその他の情報をさらに記憶する。がん患者に関するその他の情報は、例えば、がん患者の、年齢、家族構成、世帯所得、医療費、生活上の関心又は悩み、目標、性別等である。
【0044】
これらの情報も、治療を支援するために有用である場合がある。一般的に、がん患者の年齢が若いほどがんの進行が早いため、年齢に応じて手術の時期を決定することができる。また、家族構成によって、がん患者が選択し得る治療の方針に制限がある場合があると考えられる。また、がん患者の世帯所得によっては、高額な費用がかかる治療(例えば、公的医療保険の対象外となる先進医療等)を行うこと関して制限がある場合があると考えられる。
【0045】
―制御部10―
制御部10は、記憶部14に記憶された各種プログラムを実行することにより、取得部100及び出力部102として機能する。
【0046】
(取得部100)
取得部100は、各種情報(患者背景情報、推奨行動情報及び通知条件情報等を含む)を取得する。一実施形態において、取得部100は、各種情報を端末装置5及び電子カルテシステムに含まれる装置等から取得する。取得された情報は、記憶部14に記憶される。
【0047】
なお、本開示において、情報を取得することは、当該情報を制御部10において処理可能な状態にすることを含む。情報を取得することは、他の装置から通信ネットワーク6を介して当該情報を受信すること、及び、記憶部14から当該情報を読み出すことの少なくとも一方を含む。
(出力部102)
出力部102は、心身情報を含む患者背景情報に基づいて、支援者に対して通知を出力する。一実施形態において、通知が出力されるためには、(1)通知の要否を判定すること、(2)通知先を選択すること、及び、(3)通知の内容を決定することの少なくとも一つが必要となる。すなわち、出力部102は、(1)通知の要否を判定する判定部104と、(2)通知先となる支援者を選択する選択部106と、(3)通知の内容を決定する決定部108の少なくとも一つを含むということもできる。
【0048】
(判定部104)
判定部104は、患者背景情報が通知条件を満たしているか否かを判定する。一実施形態において、判定部104は、心身情報が、身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する通知条件の少なくとも一部を満たしているか否かを判定する。
【0049】
一実施形態において、出力部102は、判定部104の判定結果に基づいて通知を出力する。具体的には、出力部102は、判定部104において患者背景情報が通知条件を満たしていると判定された場合に通知を出力し、判定部104において患者背景情報が通知条件を満たしていないと判定された場合には通知の出力が制限されてよい。出力部102の通知の出力が制限されることは、例えば、通知の一部の内容を出力すること、及び、通知を出力しないことを含む。
【0050】
(選択部106)
選択部106は、一以上の通知条件のうち、患者背景情報が満たしている通知条件に基づいて、複数の候補から通知先となる支援者を選択する。また、一実施形態において、選択部106は、心身情報が、身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する一以上の通知条件のいずれを満たしているかに基づいて、複数の候補から通知先となる支援者を選択する。
【0051】
一実施形態において、出力部108は、選択部106により選択された支援者に対して通知を出力する。
【0052】
(決定部108)
決定部108は、心身情報を含む患者背景情報に基づいて通知の内容を決定する。一実施形態において、決定部108は、一以上の通知条件のうち、患者背景情報が満たしている通知条件に基づいて、通知の内容を決定する。
【0053】
一実施形態において、通知の内容は、患者背景情報を要約した情報をさらに含む。患者背景情報を要約した情報は、例えば、身体の及び精神の状態の推移に関する情報、特に支援を要する項目に関する情報、及び、満たされた通知条件に関する情報(すなわち、通知が送信されるに至った原因に関する情報)等である。
【0054】
一実施形態において、通知の内容は、推奨行動情報を含む。すなわち、通知を受信した支援者は、推奨行動情報を把握することができる。一実施形態において、推奨行動は、心身情報を含む患者背景情報に基づいて決定される。例えば、心身情報が、がん患者の身体の状態が悪化している旨の情報を含む場合には、推奨行動としては、がん患者の身体の状態を改善するための行動(例えば、通院の補助、日用品や薬の買い出しの補助、及び、リハビリの補助等)が決定される。また、例えば、心身情報が、がん患者の精神の状態が悪化している旨の情報を含む場合には、推奨行動としては、がん患者の精神の状態を改善するための行動(例えば、声かけ、治療方針についての相談、及び、不安事項のヒアリング等)が決定される。
【0055】
一実施形態において、出力部102は、決定部108により決定された内容を含む通知を支援者に対して出力する。
【0056】
なお、本開示において、支援者に対して通知を出力することは、通知を支援者が認識可能な状態にすることを含む。支援者に対して通知を出力することは、例えば、支援者用端末装置4に対して通知を送信すること、支援者が閲覧できるように情報処理装置2において通知を表示すること、及び、支援者用端末装置4において通知が表示されるように制御すること等である。
【0057】
―ネットワークインタフェース部16―
ネットワークインタフェース部16は、通信ネットワーク6を介した他の装置との通信
を実現する。通信は、例えば、TCP/IPプロトコルにより実現されるものであってよ
い。
【0058】
[端末装置5]
端末装置5は、ユーザが使用する装置である。ユーザは、例えば、がん患者、がん患者の家族及びがん患者を治療する医師等である。端末装置5は、例えば、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット端末及びパーソナルコンピュータ等の電子機器である。端末装置5は、webブラウザ又はアプリケーションソフトウェア等を機能させることができる。
【0059】
ユーザは、端末装置5が備える入力インタフェースにより、各種情報(例えば、患者背景情報)を入力することができる。各種情報の入力は、チャットボット形式で入力してもよいし、テキストボックスへの自由記述形式で入力してもよいし、チェックボックスの選択形式で入力してもよい。テキストボックスへの自由記述形式による入力である場合は、キーワードを抽出し、入力として受け付けるようにしてもよい。チェックボックスの選択形式による入力である場合は、所定の情報の各項目について、トピックス及び当該トピックスに紐づいてより詳細化したサブトピックスのチェックボックスを設けておき、ユーザによりチェックボックスにチェックが入ることにより各種情報の入力として受け付けるようにしてもよい。
【0060】
本開示では、患者用端末装置3及び家族用端末装置4aはスマートフォンであるとして説明する。がん患者は、患者用端末装置3が備えるタッチパネルディスプレイに触れることによって、患者用端末装置3を操作することができる。同様に、がん患者の家族は、家族用端末装置4aが備えるタッチパネルディスプレイに触れることによって、家族用端末装置4aを操作することができる。
【0061】
また、本開示では、医師用端末装置4bはパーソナルコンピュータであるとして説明する。医師は、医師用端末装置4bに接続されたマウス及びキーボードを使用することによって、医師用端末装置4bを操作することができる。
【0062】
<3.システム1の動作>
図2―
図8を参照して、システム1の動作の一例について説明する。
図2は、システム1の動作の一例を説明するためのシーケンス図である。なお、この例では、支援者に対して通知を出力することは、支援者用端末装置4に対して通知を送信することであるとして説明する。
【0063】
まず、患者用端末装置3は、がん患者から心身情報の入力を受け付ける(S100)。
【0064】
図3は、S100における患者用端末装置3の表示画面例を示す図である。
図3の表示画面例には、タイトルd1、メッセージd100、身体状態入力領域d102、精神状態入力領域d108、追加情報入力ボタンd114及び完了ボタンd116が表示されている。
【0065】
タイトルd1は、表示画面の概要を示す。
図3の表示画面例では、「体調入力」と表示されている。
【0066】
メッセージd100は、がん患者に対する指示を示す。
図3の表示画面例では、「心身の状態を教えてください」と表示されている。
【0067】
身体状態入力領域d102には、目盛りd104及び選択値d106が表示されている。目盛りd104は、がん患者が自身の身体の状態として選択可能な「0」から「10」までの11個の段階を示す。この例では、「10」の段階は身体の状態が最も良い状態に対応し、「0」の段階は身体の状態が最も悪い状態に対応するものとする。
【0068】
選択値d106は、この11個の段階からがん患者が選択した段階を示す。がん患者は、例えば、選択値d106の吹き出しを押下した状態で目盛りd104に沿って上下させることで、段階を選択することができる。この例では、選択値d106として「5」の段階が選択されている。この例でがん患者が選択した「5」の段階は、身体の状態が普通であることに対応する。
【0069】
精神状態入力領域d108には、目盛りd110及び選択値d112が表示されている。目盛りd110は、がん患者が自身の精神の状態として選択可能な「0」から「10」までの11個の段階を示す。この例では、「10」の段階は精神の状態が最も良い状態に対応し、「0」の段階は精神の状態が最も悪い状態に対応するものとする。
【0070】
選択値d112は、この11個の段階からがん患者が選択した段階を示す。がん患者は、例えば、選択値d112の吹き出しを押下した状態で目盛りd110に沿って上下させることで、段階を選択することができる。この例では、選択値d112として「4」の段階が選択されている。この例でがん患者が選択した「4」の段階は、精神の状態が普通よりもわずかに悪いことに対応する。
【0071】
追加情報入力ボタンd114は、がん患者が押下することにより、患者用端末装置3の表示画面を追加情報(例えば、心身の状態に関する詳細な情報、疾患背景情報、治療背景情報及び患者関係性情報等)を入力するための画面に遷移させることができるボタンである。
【0072】
完了ボタンd116は、がん患者が押下することにより、入力された情報を情報処理装置2に対して送信することができるボタンである。
【0073】
図2に戻り、次に、患者用端末装置3は、S100で入力を受け付けた心身情報を情報処理装置2に対して送信する(S101)。これに対して、情報処理装置2は、心身情報を取得する。
【0074】
次に、家族用端末装置4aは、患者関係性情報を情報処理装置2に対して送信する(S102)。これに対して、情報処理装置2は、患者関係性情報を取得する。この例では、患者関係性情報には、がん患者は家族との関係が「良好」であることを示す情報が含まれているとする。
【0075】
次に、医師用端末装置4bは、疾患背景情報を情報処理装置2に対して送信する(S104)。これに対して、情報処理装置2は、疾患背景情報を取得する。この例では、疾患背景情報には、がん患者のがんのステージが「ステージ2」であることを示す情報が含まれているとする。
【0076】
次に、情報処理装置2は、患者背景情報(すなわち、S101において受信した心身情報、S102において受信した患者関係性情報、及び、S104において受信した疾患背景情報)が通知条件の少なくとも一部を満たしているか否かを判定する(S106)。
【0077】
図4は、通知条件の一例について説明するための図である。この例では、情報処理装置2は、患者背景情報が、通知条件C1(「『精神の状態』の段階が『5』未満」)、通知条件C2(『精神の状態』の段階が2週間継続して『3』以下、かつ、『家族との関係』が『良い』以上)、通知条件C3(『精神の状態』の段階が2週間継続して『3』以下、かつ、『家族との関係』が『良い』未満)、通知条件C4(『身体の状態』の状態が『3』以下、かつ、『がんのステージ』が『ステージ2』未満)及び通知条件C5(『身体の状態』の状態が『3』以下、かつ、『がんのステージ』が『ステージ2』以上)の少なくとも一部を満たすか否かを判定する。
【0078】
図3の表示画面例において示したように、この例では、がん患者の身体の状態は「5」の段階であり、精神の状態は「4」の段階である。したがって、情報処理装置2は、患者背景情報は通知条件C1を満たすと判定する。
【0079】
図2に戻り、次に、情報処理装置2は、複数の候補から通知先となる支援者を選択する(S108)。
図4を参照すると、通知条件C1には、通知先として「家族」が関連付けられている。したがって、情報処理装置2は、複数の候補(すなわち、「家族」及び「医師」)から、通知先となる支援者として「家族」を選択する。
【0080】
図2に戻り、次に、情報処理装置2は、通知の内容を決定する(S110)。この例では、通知の内容は、推奨行動情報を含むとする。
図4を参照すると、通知条件C1には、推奨行動として「声かけ」が関連付けられている。したがって、情報処理装置2は、通知によりがん患者に対する「声かけ」を推奨することを決定する。
【0081】
図2に戻り、次に、情報処理装置2は、通知を送信する(S112)。具体的には、情報処理装置2は、S108において選択された通知先の支援者である「家族」に対して、S110において決定された通知の内容である「声かけ」を推奨行動とする通知を送信する。
【0082】
図5は、S112の後で家族用端末装置4aに表示される通知の表示画面例を示す図である。
図5の表示画面例には、タイトルd2、推奨行動情報d200、通知理由d202、リマインドボタンd204、連絡ボタンd206及び完了ボタンd208が表示されている。
【0083】
タイトルd2は、表示画面の概要を示す。
図5の表示画面例では、「新着通知」と表示されている。
【0084】
推奨行動情報d200は、がん患者の家族の推奨行動を示す。
図5の表示画面例では、「ご家族にお声がけをお願いします」と表示されている。なお、ここでいう「ご家族」はがん患者を指す。推奨行動情報d200として表示される内容は、S110において決定された通知の内容に対応する。
【0085】
通知理由d202は、通知が送信された理由を示す。
図5の表示画面例では、「『精神』の段階が『5』未満です」と表示されている。通知理由d202として表示される内容は、S106において満たされていると判定された通知条件C1の内容に対応する。
【0086】
リマインドボタンd204は、家族が押下することにより、通知のリマインドを設定することができるボタンである。
【0087】
連絡ボタンd206は、家族が押下することにより、医師に対して連絡をとることができるボタンである。家族が連絡ボタンd206を押下した場合、家族用端末装置4aは、例えば、医師用端末装置4bとの音声通話又はビデオ通話等を開始する。
【0088】
完了ボタンd208は、家族が押下することにより、推奨行動が完了したことを示す情報を情報処理装置2及び医師用端末装置4b等に対して送信することができるボタンである。
【0089】
図2に戻り、次に、患者用端末装置3は、がん患者から心身情報の入力を受け付ける(S200)。
【0090】
図6は、S200における患者用端末装置3の表示画面例を示す図である。
図6の表示画面例には、タイトルd3、メッセージd300、身体状態入力領域d302(目盛りd304及び選択値d306を含む)、精神状態入力領域d308(目盛りd310及び選択値d312を含む)、追加情報入力ボタンd314及び完了ボタンd316が表示されている。
【0091】
図3の表示画面例と比較すると、身体の状態として選択された段階が「5」から「2」に変化している。また、精神の状態として選択された段階が「4」から「5」に変化している。
【0092】
図2に戻り、次に、情報処理装置2は、患者背景情報(すなわち、S200において受信した心身情報、S102において受信した患者関係性情報、及び、S104において受信した疾患背景情報)が通知条件の少なくとも一部を満たしているか否かを判定する(S206)。
【0093】
図6の表示画面例において示したように、この例では、がん患者の身体の状態は「2」の段階であり、精神の状態は「5」の段階である。また、S104において受信した疾患背景情報によると、がん患者のがんのステージは「ステージ2」である。したがって、情報処理装置2は、患者背景情報は通知条件C5を満たすと判定する(
図4参照)。
【0094】
図2に戻り、次に、情報処理装置2は、複数の候補から通知先となる支援者を選択する(S208)。
図4を参照すると、通知条件C5には、通知先として「家族」及び「医師」が関連付けられている。したがって、情報処理装置2は、複数の候補(すなわち、「家族」及び「医師」)から、通知先となる支援者として「家族」及び「医師」の両方を選択する。
【0095】
図2に戻り、次に、情報処理装置2は、通知の内容を決定する(S210)。
図4を参照すると、通知条件C5には、家族の推奨行動として「通院の補助」が関連付けられている。また、医師の推奨行動として、「電話及び診察」が関連付けられている。したがって、情報処理装置2は、家族に対する通知では、がん患者の「通院の補助」を推奨し、医師に対する通知ではがん患者に対する「電話及び診察」を推奨することを決定する。
【0096】
図2に戻り、次に、情報処理装置2は、家族用端末装置4a及び医師用端末装置4bに対して通知を送信する(S212及びS214)。
【0097】
図7は、S212の後で家族用端末装置4aに表示される通知の表示画面例を示す図である。
図7の表示画面例には、タイトルd4、推奨行動情報d400、通知理由d402、連絡ボタンd406及び完了ボタンd408が表示されている。このうち、タイトルd4、連絡ボタンd406及び完了ボタンd408については、それぞれ
図5を参照して説明したタイトルd2、連絡ボタンd206及び完了ボタンd208と同様であるため、以下では説明を省略する。
【0098】
推奨行動情報d400は、がん患者の家族の推奨行動を示す。
図7の表示画面例では、「ご家族の通院の補助をお願いします」と表示されている。なお、ここでいう「ご家族」はがん患者を指す。推奨行動情報d400として表示される内容は、S210において決定された通知の内容に対応する。
【0099】
通知理由d402は、通知が送信された理由を示す。
図7の表示画面例では、「『身体』の状態が『3』以下、かつ、『がんのステージ』が『ステージ2』以上です」と表示されている。通知理由d402として表示される内容は、S206において満たされていると判定された通知条件C5の内容に対応する。
【0100】
なお、
図7の表示画面例では、
図5の表示画面例と異なり、リマインドボタンd204に相当する要素が表示されていない。これは、緊急性が高い通知に関しては、推奨行動が先送りにされることは望ましくないからである。すなわち、満たされた通知条件に応じて、通知先の支援者によるリマインドの設定の可否が制御されてもよい。
【0101】
図8は、S214の後で医師用端末装置4bに表示される通知の表示画面例を示す図である。
図8の表示画面例には、タイトルd5、推奨行動情報d500、通知理由d502、要約表示領域d504及び要約表示テーブルd510が表示されている。このうち、タイトルd5、通知理由d502については、それぞれ、
図7を参照して説明したタイトルd4及び通知理由d402と同様であるため、以下では説明を省略する。
【0102】
推奨行動情報d500は、医師の推奨行動を示す。
図8の表示画面例では、「患者様に電話して、診察の予約を設定してください」と表示されている。推奨行動情報d500として表示される内容は、S210において決定された通知の内容に対応する。
【0103】
要約表示領域d504には、凡例d506及びグラフd508が表示されている。凡例d506は、グラフd508の凡例を示す。グラフd508は、前回の心身情報(すなわち、S100において取得した心身情報)から今回の心身情報(すなわち、S200において取得した心身情報)への推移を示す。グラフd508は、通知に含まれ得る患者背景情報の要約の一例である。
【0104】
要約表示テーブルd510には、がん患者の患者背景情報の一部の項目(この例では、「がんのステージ」(疾患背景情報の一例)、「治療の状況」(治療背景情報の一例)及び「家族との関係」(患者関係性情報の一例))と、それに対応する値が表示されている。要約表示テーブルd510は、通知に含まれ得る患者背景情報の要約の一例である。
【0105】
<4.情報処理装置2による効果>
【0106】
以上をまとめると、本開示の一態様に係る情報処理装置2は、患者の身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する心身情報を取得する取得部100と、心身情報に基づいて、患者の治療を支援する支援者に対して通知を出力する出力部102であって、通知は、支援者が患者に関して行うことが推奨される行動に関する推奨行動情報を含む、出力部102と、を備える。
【0107】
上述したとおり、患者は、疾患によって身体面・精神面の双方が疲弊する状態が定常的に続く場合があり、突発的な要因によってトラブル(例えば、症状の悪化、急性的なうつ状態の発生等)が生じる可能性がある。情報処理装置2によれば、患者の心身の状態の悪化を検知し、患者の支援者に対して推奨行動情報を含む通知を出力することができる。その結果として、上述のようなトラブルの発生を抑制するとともに、患者の治療を支援することができる。
【0108】
一実施形態において、患者は、がん、白血病、肉腫、骨髄腫、脳卒中、心筋梗塞、高血圧性疾患、糖尿病、肝硬変、慢性腎不全及びうつ病、統合失調症及び認知症の少なくともいずれかを含む慢性疾患を罹患している者である。また、一実施形態において、患者は、がん患者である。
【0109】
患者ががん等の慢性疾患を罹患している者である場合、上述のようなトラブルが発生する可能性が特に高い。そのため、このような前提では、情報処理装置2は、より有用である。
【0110】
また、一実施形態において、情報処理装置2は、心身情報が、身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する一以上の条件の少なくとも一部を満たしているか否かを判定する判定部104、をさらに備えてよく、出力部102は、判定部104において心身情報が一以上の条件の少なくとも一部を満たしていると判定された場合に通知を出力し、判定部104において心身情報が一以上の条件のいずれも満たしていないと判定された場合には通知の出力が制限されてよい。
【0111】
通知が心身の状態に関する通知条件によらず出力される(例えば、心身の状態によらず、一定の周期で送信される)としたら、患者の心身の状態の変化を適切に捉えることができなくなる可能性がある。すなわち、この構成によれば、患者の心身の状態の変化を適切に捉え、患者の治療をより効率的に支援することができるようになる。
【0112】
また、一実施形態において、情報処理装置2は、心身情報が、身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する一以上の条件のいずれを満たしているかに基づいて、複数の候補から支援者を選択する選択部106、をさらに備えてよい。一実施形態において、一以上の条件は、身体及び精神の少なくとも一方の重篤度に関する条件を含む。
【0113】
一般的には、患者を最も身近で支援することができるのは患者の家族である。一方で、患者の心身の状態が悪化した場合には、医師による支援が必要になる。この構成によれば、患者の心身の状態に応じて適切な通知先が選択される。その結果として、患者は、必要十分な支援を受けることができるようになる。
【0114】
一実施形態において、通知は、心身情報を要約した情報をさらに含む。
【0115】
支援者が患者を適切に支援するためには、推奨行動情報だけではなく、患者の心身の状態に関する情報が支援者に対して提示されることが望ましい。この構成によれば、心身情報の要約が支援者に対して通知されるため、より効率的に患者の治療を支援することができるようになる。また、心身情報は要約されるため、支援者が患者の心身の状態を理解するために要する負担を軽減することが可能になる。
【0116】
一実施形態において、取得部100は、患者の疾患に関する疾患背景情報と、患者の治療に関する治療背景情報との少なくとも一方をさらに取得し、出力部102は、疾患背景情報及び治療背景情報の少なくとも一方にさらに基づいて通知を出力する。
【0117】
推奨行動及び通知先とすべき支援者は、患者の疾患や治療に応じて異なる場合がある。例えば、同じような身体の状態であったとしても、がんのステージによってはその緊急度が異なると考えられるため、推奨行動及び通知先もそれに応じて異ならせることが望ましい場合がある(
図4 通知条件C4及び通知条件C5参照)。この構成によれば、支援者に対してより適切に通知を出力することができる。その結果として、患者の治療をより効率的に支援することが可能になる。
【0118】
一実施形態において、取得部100は、患者と、支援者との関係性に関する患者関係性情報をさらに取得し、出力部102は、患者関係性情報にさらに基づいて通知を出力する。
【0119】
推奨行動及び通知先とすべき支援者は、患者と、支援者との関係性によって異なる場合がある。例えば、同じような精神の状態であったとしても、家族との関係によっては、家族が支援すべきか、医師が支援すべきかが異なる場合がある(
図4 通知条件C2及び通知条件C4参照)。この構成によれば、支援者に対してより適切に通知を出力することができる。その結果として、患者の治療をより効率的に支援することが可能になる。
【0120】
以上のとおり説明した情報処理装置2の効果は一例にすぎず、本開示の適用範囲を限定するものではない。
【0121】
<5.ハードウェア構成>
図9を参照して、上述してきた情報処理装置2及び端末装置5をコンピュータ70により実現する場合のハードウェア構成の一例を説明する。なお、それぞれの装置の機能は、複数台の装置に分けて実現することもできる。
【0122】
図9に示すように、コンピュータ70は、プロセッサ700と、記憶装置702と、入力I/F704と、データI/F706と、通信I/F708、及び表示装置710を含む。
【0123】
プロセッサ700は、記憶装置702に記憶されているプログラムを実行することによりコンピュータ70における様々な処理を制御する。例えば、情報処理装置2及び端末装置5の制御部が備える各機能部等は、記憶装置702に記憶されたプログラムを、プロセッサ700が実行することにより実現可能である。
【0124】
記憶装置702は、例えばRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。RAMは、プロセッサ700によって実行されるプログラムのプログラムコードや、プログラムの実行時に必要となるデータを一時的に記憶する。
【0125】
記憶装置702は、他にも、例えばハードディスクドライブ(HDD)やフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶媒体である。記憶装置702は、オペレーティングシステムや、上記各構成を実現するための各種プログラムを記憶する。当該各種プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。この他、記憶装置702は、各種情報を登録するテーブルと、当該テーブルを管理するDBを記憶することも可能である。このようなプログラムやデータは、必要に応じて記憶装置702にロードされることにより、プロセッサ700から参照される。
【0126】
入力I/F704は、ユーザからの入力を受け付けるためのデバイスである。入力I/F704の具体例としては、カメラ、ボタン、マイク、キーボード、マウス、タッチパネル、各種センサ、ウェアラブル・デバイスなどが挙げられる。入力I/F704は、例えばUSB(Universal Serial Bus)などのインタフェースを介してコンピュータ70に接続されてもよい。
【0127】
データI/F706は、コンピュータ70の外部からデータを入力するためのデバイスである。データI/F706の具体例としては、各種記憶媒体に記憶されているデータを読み取るためのドライブ装置などがある。データI/F706は、コンピュータ70の外部に設けられることも考えられる。その場合、データI/F706は、例えばUSBなどのインタフェースを介してコンピュータ70へと接続される。
【0128】
通信I/F708は、コンピュータ70の外部の装置と有線または無線により、通信ネットワーク6を介したデータ通信を行うためのデバイスである。通信I/F708は、コンピュータ70の外部に設けられることも考えられる。その場合、通信I/F708は、例えばUSBなどのインタフェースを介してコンピュータ70に接続される。
【0129】
表示装置710は、各種情報を表示するためのデバイスである。表示装置710の具体例としては、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、ウェアラブル・デバイスのディスプレイなどが挙げられる。表示装置710は、コンピュータ70の外部に設けられてもよい。その場合、表示装置710は、例えばディスプレイケーブルなどを介してコンピュータ70に接続される。また、入力I/F704としてタッチパネルが採用される場合には、表示装置710は、入力I/F704と一体化して構成することが可能である。
【0130】
また、上記実施形態で記載された情報処理装置2及び端末装置6が備える構成要素は、記憶装置702に格納されたプログラムがプロセッサ700によって実行されることで、定められた処理が他のハードウェアと協働して実現されるものとする。また、言い換えれば、これらの構成要素は、ソフトウェアまたはファームウェアとしても、それと対応するハードウェアとしても想定され、その双方の概念において、「機能」、「手段」、「部」、「処理回路」、「ユニット」、または「モジュール」などとも記載され、またそれぞれに読み替えることができる。
【0131】
<6.変形例>
支援者は、出力された通知のタイミング及び内容の少なくとも一方を評価し、情報処理装置2に対してフィードバックとして送信することができる。情報処理装置2は、このフィードバックに基づいて、通知条件情報を更新してよい。
【0132】
上記実施形態では、出力部102は、典型的には自動的に通知を支援者に対して出力するものとして説明したが、これに限られない。具体的には、出力部102は、支援者の要求に応じて通知を出力してもよい。すなわち、出力部102は、プッシュ型の通知を出力してよく、プル型の通知を出力してもよい。通知の出力の契機となる支援者の要求は、例えば、医師用端末装置4bから情報処理装置2に対して送信されるHTTPリクエスト等であってよい。
【0133】
<7.その他の実施形態>
以下のような態様も、本開示の範囲に含まれる。
【0134】
[付記1]
本開示の一態様に係る情報処理装置2は、患者の身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する心身情報を取得する取得部100と、心身情報に基づいて、患者の治療を支援する支援者に対して通知を出力する出力部102であって、通知は、支援者が患者に関して行うことが推奨される行動に関する推奨行動情報を含む、出力部102と、を備える。
【0135】
[付記2]
付記1に記載の情報処理装置2において、患者は、がん、白血病、肉腫、骨髄腫、脳卒中、心筋梗塞、高血圧性疾患、糖尿病、肝硬変、慢性腎不全及びうつ病、統合失調症及び認知症の少なくともいずれかを含む慢性疾患を罹患している者であってよい。
【0136】
[付記3]
付記1又は付記2に記載の情報処理装置2において、患者は、がん患者であってよい。
【0137】
[付記4]
付記1から付記3のいずれか一つに記載の情報処理装置2は、心身情報が、身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する一以上の条件の少なくとも一部を満たしているか否かを判定する判定部104、をさらに備えてよく、出力部102は、判定部104において心身情報が一以上の条件の少なくとも一部を満たしていると判定された場合に通知を出力し、判定部104において心身情報が一以上の条件のいずれも満たしていないと判定された場合には通知の出力が制限されてよい。
【0138】
[付記5]
付記1から付記4のいずれか一つに記載の情報処理装置2は、心身情報が、身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する一以上の条件のいずれを満たしているかに基づいて、複数の候補から支援者を選択する選択部106、をさらに備えてよい。
【0139】
[付記6]
付記5に記載の情報処理装置2において、一以上の条件は、身体及び精神の少なくとも一方の重篤度に関する条件を含んでよい。
【0140】
[付記7]
付記1から付記6のいずれか一つに記載の情報処理装置2において、通知は、心身情報を要約した情報をさらに含んでよい。
【0141】
[付記8]
付記1から付記7のいずれか一つに記載の情報処理装置2は、取得部100は、患者の疾患に関する疾患背景情報と、患者の治療に関する治療背景情報との少なくとも一方をさらに取得してよく、出力部102は、疾患背景情報及び治療背景情報の少なくとも一方にさらに基づいて通知を出力してよい。
【0142】
[付記9]
付記1から付記8のいずれか一つに記載の情報処理装置2において、取得部100は、患者と、支援者との関係性に関する患者関係性情報をさらに取得してよく、出力部102は、患者関係性情報にさらに基づいて通知を出力してよい。
【0143】
[付記10]
付記1から付記9のいずれか一つに記載の情報処理装置2において、支援者は、患者の家族を含む親近者、及び、患者の治療を行う医療従事者の少なくとも一方を含んでよい。
【0144】
[付記11]
本開示の他の一態様に係るプログラムは、コンピュータ70を、患者の身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する心身情報を取得する取得手段と、心身情報に基づいて、患者の治療を支援する支援者に対して通知を出力する出力手段であって、通知は、支援者が患者に関して行うことが推奨される行動に関する推奨行動情報を含む、出力手段と、として機能させる。
【0145】
[付記12]
本開示の他の一態様に係る情報処理方法は、コンピュータ70に、患者の身体及び精神の少なくとも一方の状態に関する心身情報を取得するステップと、心身情報に基づいて、患者の治療を支援する支援者に対して通知を出力するステップであって、通知は、支援者が患者に関して行うことが推奨される行動に関する推奨行動情報を含む、ステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0146】
1…システム、2…情報処理装置、3…患者用端末装置、4…支援者用端末装置、10…制御部、14…記憶部、70…コンピュータ、100…取得部、102…出力部、104…判定部、106…選択部、108…決定部、108…出力部