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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042474
(43)【公開日】2025-03-27
(54)【発明の名称】半導体装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H10D 8/60 20250101AFI20250319BHJP
   C30B 29/16 20060101ALI20250319BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20250319BHJP
   H10D 8/50 20250101ALI20250319BHJP
   H10D 30/66 20250101ALI20250319BHJP
   H10D 12/00 20250101ALI20250319BHJP
   H10D 62/80 20250101ALI20250319BHJP
   H10D 64/64 20250101ALI20250319BHJP
   H10D 30/47 20250101ALI20250319BHJP
   H01L 21/368 20060101ALN20250319BHJP
   H01L 21/365 20060101ALN20250319BHJP
【FI】
H01L29/86 301D
C30B29/16
C23C16/40
H01L29/86 301F
H01L29/86 301E
H01L29/91 F
H01L29/91 K
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 655A
H01L29/24
H01L29/48 D
H01L29/80 H
H01L21/368 Z
H01L21/365
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149519
(22)【出願日】2023-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】723001900
【氏名又は名称】Patentix株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(72)【発明者】
【氏名】金子 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】高根 倫史
(72)【発明者】
【氏名】田中 勝久
(72)【発明者】
【氏名】大島 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】衣斐 豊祐
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
4M104
5F045
5F053
5F102
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077AB01
4G077AB06
4G077AB10
4G077BB10
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4M104DD43
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4M104GG12
4M104GG18
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5F102GL01
5F102GM01
5F102GQ01
5F102HC01
(57)【要約】
【課題】電気的特性に優れたGeO系半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体層と、前記半導体層とショットキー接合しているショットキー電極とを少なくとも含む半導体装置であって、前記半導体層が、ルチル構造を有する酸化物半導体を主成分とする結晶からなり、前記酸化物半導体がゲルマニウムを含んでおり、移動度が10cm/Vs以上である半導体装置は、例えば、パワーデバイス等の半導体装置などに好適に用いられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、前記半導体層とショットキー接合しているショットキー電極とを少なくとも含む半導体装置であって、前記半導体層が、ルチル構造を有する酸化物半導体を主成分とする結晶からなり、前記酸化物半導体がゲルマニウムを含んでおり、移動度が10cm/Vs以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記酸化物半導体のキャリア密度が、1×1018/cm以上である請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記酸化物半導体が、スズ及び/又はケイ素をさらに含んでいる請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記酸化物半導体が、前記スズ及び/又はケイ素に対して前記ゲルマニウムを1以上の原子比で含んでいる請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記移動度が、20cm/Vs以上である請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体層が、膜状又は板状である請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体層が、100μm以上の面積を有する請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ショットキー電極が、周期律表第10族及び/又は第11族の金属を含む請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
さらに、オーミック電極を備えており、前記オーミック電極が、周期律表第4族及び/又は第11族の金属を含む請求項1記載の半導体装置。
【請求項10】
パワーデバイスである請求項1記載の半導体装置。
【請求項11】
請求項1記載の半導体装置を含む半導体システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーデバイス等として有用な半導体装置及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Gaは、将来のパワーエレクトロニクス・デバイスに有望な超ワイドバンドギャップ(UWBG)半導体として注目されている。
【0003】
しかしながら、Gaは、P型半導体が作製困難であるという課題があり、また、安価にすることが容易ではなく、普及するにはまだまだ課題が数多くあった。
近年においては、新規なUWBG半導体(バンドギャップが4.44-4.68eV)としてルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO)が研究されており、ルチル型二酸化ゲルマニウムは、n型及びp型半導体が実現可能であり、安価に作製することも実現可能であるため、Gaに代わるUWBG半導体として期待されており、例えば、r-TiO(001)基板上にr-GeO結晶膜を積層した積層構造体が検討されている(非特許文献1、特許文献1)。しかしながら、非特許文献1は、非特許文献1の査読後に非特許文献2がErratumとして提出されており(非特許文献2)、非特許文献1及び特許文献1に記載の結晶粒(異常粒)が、ルチル型二酸化ゲルマニウム結晶であることが判明し、他の部分はアモルファス相であった。すなわち、アモルファス相が大部分に形成されるだけで、また結晶相ができても、結晶粒が一部に形成されるにすぎなかった。そのため、例えば、SBDを試作しても移動度などの電気特性が悪くなるという問題もあり、半導体用途にかなう結晶を製造することができるような方策が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Takane, K. Kaneko, “Establishment of a growth route of crystallized rutile GeO2 thin film (≧ 1 mm/h) and its structural properties” Applied Physics Letters Vol.119, pp.062104(1-6) (2021).
【非特許文献2】Takane, K. Kaneko, Erratum: “Establishment of a growth route of crystallized rutile GeO2 thin film (≧1 μm/h) and its structural properties” Applied Physics Letters Vol.120, 099903(1-3) (2022).
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2023/008454号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電気的特性に優れたGeO系半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ガイド隔壁を用いたミストCVD装置を新たに開発し、前記ガイド隔壁を用いたミストCVD装置を使用して、GeOを主成分として含む結晶膜を製膜すると10mm角基板全面に良質な結晶膜を形成することができ、また、得られた結晶膜を用いた半導体装置が電気的特性に優れていること等を知見し、このような半導体装置が、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 半導体層と、前記半導体層とショットキー接合しているショットキー電極とを少なくとも含む半導体装置であって、前記半導体層が、ルチル構造を有する酸化物半導体を主成分とする結晶からなり、前記酸化物半導体がゲルマニウムを含んでおり、移動度が10cm/Vs以上であることを特徴とする半導体装置。
[2] 前記酸化物半導体のキャリア密度が、1×1018/cm以上である前記[1]記載の半導体装置。
[3] 前記酸化物半導体が、スズ及び/又はケイ素をさらに含んでいる前記[1]記載の半導体装置。
[4] 前記酸化物半導体が、前記スズ及び/又はケイ素に対して前記ゲルマニウムを1以上の原子比で含んでいる前記[3]記載の半導体装置。
[5] 前記移動度が、20cm/Vs以上である前記[1]記載の半導体装置。
[6] 前記半導体層が、膜状又は板状である前記[1]記載の半導体装置。
[7] 前記半導体層が、100μm以上の面積を有する前記[6]記載の半導体装置。
[8] 前記ショットキー電極が、周期律表第10族及び/又は第11族の金属を含む前記[1]記載の半導体装置。
[9] さらに、オーミック電極を備えており、前記オーミック電極が、周期律表第4族及び/又は第11族の金属を含む前記[1]記載の半導体装置。
[10] パワーデバイスである前記[1]記載の半導体装置。
[11] 前記[1]記載の半導体装置を含む半導体システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の半導体装置は、GeO系半導体装置であり、電気的特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明において好適に用いられる製膜装置の概略構成図の一例である。
図2】本発明におけて好適に用いられる霧化装置を模式的に示す図である。
図3】実施例1におけるXRD回析結果を示す図である。
図4】実施例1におけるEDS像を示す図である。
図5】実施例1におけるSEM像を示す図である。
図6】実施例1におけるIV測定の結果を示す図である。
図7】実施例2におけるIV測定の結果を示す図である。
図8】本発明のショットキーバリアダイオード(SBD)の好適な一例を模式的に示す図である。
図9】本発明の高電子移動度トランジスタ(HEMT)の好適な一例を模式的に示す図である。
図10】本発明の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の好適な一例を模式的に示す図である。
図11】本発明の接合電界効果トランジスタ(JFET)の好適な一例を模式的に示す図である。
図12】本発明の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)の好適な一例を模式的に示す図である。
図13】本発明の発光素子(LED)の好適な一例を模式的に示す図である。
図14】本発明のジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の好適な一例を模式的に示す図である。
図15】本発明のショットキーバリアダイオード(SBD)の好適な他の一例を模式的に示す図である。
図16】実施例1における霧化装置の拡大断面図の好適な一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、半導体層と、前記半導体層とショットキー接合しているショットキー電極とを少なくとも含む半導体装置であって、前記半導体層が、ルチル構造を有する酸化物半導体を主成分とする結晶からなり、前記酸化物半導体がゲルマニウムを含んでおり、移動度が10cm/Vs以上であることを特長とする。また、本発明においては、前記酸化物半導体の移動度が、20cm/Vs以上であるのが好ましく、また、キャリア密度が、1×1018/cm以上であるのも好ましい。このような好ましい範囲によれば、半導体特性をより容易に向上させることができる。また、本発明においては、前記酸化物半導体が、スズ及び/又はケイ素をさらに含んでいるのが好ましく、前記酸化物半導体が、前記スズ及び/又はケイ素に対して前記ゲルマニウムを1以上の原子比で含んでいるのがより好ましい。このような好ましい範囲によれば、電極との界面をより容易により良好なものとすることができ、例えば、ショットキー接合をより容易に行うことができる。また、本発明においては、前記結晶が膜状又は板状であるのが好ましく、100μm以上の面積を有するのがより好ましい。このような好ましい範囲によれば、半導体装置をより産業的有利に製造することができる。また、本発明においては、前記ショットキー電極が、周期律表第10族及び/又は第11族の金属を含むのが電気的特性をより向上させることができるので好ましい。また、本発明においては、さらに、オーミック電極を備えており、前記オーミック電極が、周期律表第4族及び/又は第11族の金属を含むのが好ましい。このような好ましい範囲によれば、電気的特性をより向上させることができる。
【0012】
上記した好ましい前記半導体装置は、例えば、前記半導体層を図1に記載の製膜装置を用いることにより形成することで、より容易に製造することができる。
【0013】
本明細書においては、「膜」を「層」と読み替えることができる。「積層構造体」とは、一層以上の結晶層を含む構造体であり、結晶層以外の層(例:アモルファス層)を含んでいてもよい。また、結晶層は、単結晶層であることが好ましいが、多結晶層であってもよい。本明細書においては、便宜上、配向状態を、X線回折により確認することができる。より具体的には、例えば、前記結晶が(001)面に配向している場合、(001)面に由来するピークとその他の結晶面に由来するピークとの積分強度比が、ランダムに配向した同一結晶の(001)面に由来するピークとその他の結晶面に由来するピークとの積分強度比と比較して、大きい場合に、(001)面に配向していると判断することができる。
【0014】
本発明における「主成分」とは、前記結晶中におけるルチル構造を有する酸化物半導体の含有量が、前記結晶中の組成比で50%以上であることをいう。本発明の実施態様においては、前記結晶中のルチル構造を有する酸化物半導体の含有量が、前記結晶中の組成比で70%以上であるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましい。また、前記酸化物半導体は、ルチル構造を有しており、さらにゲルマニウムを含んでいれば特に限定されない。
本発明においては、前記酸化物半導体が、ルチル構造を有している二酸化ゲルマニウムの結晶を含むのが好ましい。また、前記酸化物半導体は、ゲルマニウム以外の他の金属を含んでいてもよい。前記他の金属としては、例えば、ゲルマニウム以外の周期律表第14族金属(スズまたはケイ素等)などが挙げられ、なかでも、スズ及び/又はケイ素が好ましい。また、前記結晶中の金属元素中のゲルマニウムの原子比は、0.5以上であるのが好ましい。ゲルマニウムの原子比をこのような好ましい範囲とすることにより、より良好な電気特性を有する結晶を実現することができる。
【0015】
本発明においては、前記結晶の面積が100μm以上の面積を有しているのが好ましく、100mm以上の面積を有しているのがより好ましい。本発明において、前記結晶が単結晶であるのが好ましく、膜状又は板状であるのが好ましく、膜状(以下「結晶膜」ともいう)であるのがより好ましい。前記結晶膜の膜厚は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、本発明においては、0.5μm以上であるのが好ましく、1μm以上であるのがより好ましい。これら好ましい範囲によれば、半導体膜として、耐圧をより良好なものとすることができる。
【0016】
前記結晶膜は、例えば、図1に示す製膜装置を用いることにより、GeO結晶膜及びその混晶膜を製膜することで、より容易に得ることができる。また、前記製膜装置を用いてドーピングを適宜行うことも可能である。ドーピングされた前記結晶は、半導体膜又は半導体層として好適に用いることができ、n型ドーパント又はp型ドーパントを酸化半導体における従来のドーピング手段に適用することができる。前記n型ドーパントとしては、例えば、アンチモン(Sb)、ヒ素(As)、ビスマス(Bi)、又はフッ素(F)などが挙げられる。前記P型ドーパントとしては、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)又はインジウム(In)などが挙げられる。
【0017】
また、前記製膜装置を用いて結晶基板上に前記結晶を形成する場合、前記結晶基板は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基板であってよい。絶縁体基板であってもよいし、導電性基板であってもよいし、半導体基板であってもよいが、本発明においては、半導体基板であるのが好ましい。単結晶基板であってもよいし、多結晶基板であってもよい。前記結晶基板が、表面に金属膜を有する基板であってもよい。なお、前記結晶基板が導電性基板である場合には、基板を除去することなく縦型デバイスを作製することができる。前記結晶基板の結晶構造も、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されないが、ルチル構造を有するのが好ましい。前記ルチル構造を有する基板としては、例えば、GeO基板、SrTiO基板、TiO基板又はMgF基板等が挙げられる。なお、前記結晶基板はオフ角を有していてもよい。
【0018】
本発明においては、前記基板上にそのまま製膜してもよいが、前記基板上に、前記酸化物半導体とは異なる層(例えば、n型半導体層、n+型半導体層、n-型半導体層等)や絶縁体層(半絶縁体層も含む)、バッファ層等の他の層を積層したのち、前記基板上に前記他の層を介して製膜してもよい。
【0019】
前記結晶は、そのままで又は基板の剥離等の公知の加工処理手段が施された後に、公知の手段を用いて、例えば、半導体装置に用いられる。前記半導体装置としては、例えば、ショットキーバリアダイオード(SBD)、ジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、接合電界効果トランジスタ(JFET)、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)または発光ダイオード(LED)などが挙げられる。また、これら半導体装置が搭載されたモジュール、及びこれら半導体装置を備えた電子機器及びその部品のいずれであってもよく、様々な製品に有用である。本発明においては、前記半導体装置が、パワーデバイスであるのが好ましい。前記半導体装置は、電極が半導体層の片面側に形成された横型の素子(横型デバイス)と、半導体層の表裏両面側にそれぞれ電極を有する縦型の素子(縦型デバイス)に分類することができ、本発明においては、前記半導体装置を横型デバイスにも縦型デバイスにも好適に用いることができる。
【0020】
以下、本発明において好適に用いられる半導体装置の例を図面を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれら例示に限定されるものではない。なお、前記結晶膜又は前記積層構造体におけるGeOを主成分として含む結晶層を半導体層として用いた場合の好適な例を以下に示す。
【0021】
図8は、n-型半導体層101a、n+型半導体層101b、p型半導体層102、金属層103、絶縁体層104、ショットキー電極105aおよびオーミック電極105bを備えているショットキーバリアダイオード(SBD)の好適な一例を示す。なお、金属層103は、例えばAl等の金属からなり、ショットキー電極105aを覆っている。
【0022】
図9は、バンドギャップの広いn型半導体層121a、バンドギャップの狭いn型半導体層121b、n+型半導体層121c、p型半導体層123、ゲート電極125a、ソース電極125b、ドレイン電極125cおよび基板129を備えている高電子移動度トランジスタ(HEMT)の好適な一例を示す。
【0023】
図10は、n-型半導体層131a、第1のn+型半導体層131b、第2のn+型半導体層131c、p型半導体層132、p+型半導体層132a、ゲート絶縁膜134、ゲート電極135a、ソース電極135bおよびドレイン電極135cを備えている金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の好適な一例を示す。なお、p+型半導体層132aは、p型半導体層であってもよく、p型半導体層132と同じであってもよい。
【0024】
図11は、n-型半導体層141a、第1のn+型半導体層141b、第2のn+型半導体層141c、p型半導体層142、ゲート電極145a、ソース電極145bおよびドレイン電極145cを備えている接合電界効果トランジスタ(JFET)の好適な一例を示す。
【0025】
図12は、n型半導体層151、n-型半導体層151a、n+型半導体層151b、p型半導体層152、ゲート絶縁膜154、ゲート電極155a、エミッタ電極155bおよびコレクタ電極155cを備えている絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)の好適な一例を示す。
【0026】
(LED)
本発明の半導体装置が発光ダイオード(LED)である場合の一例を図12に示す。図12の半導体発光素子は、第2の電極165b上にn型半導体層161を備えており、n型半導体層161上には、発光層163が積層されている。そして、発光層163上には、p型半導体層162が積層されている。p型半導体層162上には、発光層163が発生する光を透過する透光性電極167を備えており、透光性電極167上には、第1の電極165aが積層されている。なお、図12の半導体発光素子は、電極部分を除いて保護層で覆われていてもよい。
【0027】
透光性電極の材料としては、インジウム(In)またはチタン(Ti)を含む酸化物の導電性材料などが挙げられる。より具体的には、例えば、In、ZnO、SnO、Ga、TiO、CeOまたはこれらの2以上の混晶またはこれらにドーピングされたものなどが挙げられる。これらの材料を、スパッタリング等の公知の手段で設けることによって、透光性電極を形成できる。また、透光性電極を形成した後に、透光性電極の透明化を目的とした熱アニールを施してもよい。
【0028】
図13の半導体発光素子によれば、第1の電極165aを正極、第2の電極165bを負極とし、両者を介してp型半導体層162、発光層163およびn型半導体層161に電流を流すことで、発光層163が発光するようになっている。
【0029】
第1の電極165a及び第2の電極165bの材料としては、例えば、Al、Mo、Co、Zr、Sn、Nb、Fe、Cr、Ta、Ti、Au、Pt、V、Mn、Ni、Cu、Hf、W、Ir、Zn、In、Pd、NdもしくはAg等の金属またはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物導電膜、ポリアニリン、ポリチオフェン又はポリピロ-ルなどの有機導電性化合物、またはこれらの混合物などが挙げられる。電極の成膜法は特に限定されることはなく、印刷方式、スプレー法、コ-ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ-ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。
【0030】
図14は、本発明の好適な実施態様の一つであるジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の主要部を示す。図14のJBSは、オーミック電極1020、n-型半導体層1010a、n+型半導体層1010b、ショットキー電極1030、電界緩和領域1060を備えている。また、ショットキー電極1030は、金属層1030a、金属層1030bおよび金属層1030cから構成されている。図14の半導体装置は、第2の電極層としての金属層1030aおよび/または金属層1030bの外端部が、第1の電極層としての金属層1030cの外端部よりも外側に位置している。また、図14の半導体装置においては、電界緩和領域1060の領域が、前記第2の電極層のうち前記第1の電極層の外端部よりも外側に位置する部分の少なくとも一部、および第2の電極の外端部と、平面らに、少なくとも2以上の電界緩和領域1060を備えている。また、図14の半導体装置において、前記電界緩和領域1060は、p型半導体で構成されており、n-型半導体層1010aとの間でPN接合を形成している。
【0031】
図15の各層の形成手段は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知の手段であってよい。例えば、真空蒸着法やCVD法、スパッタ法、各種コーティング技術により成膜した後、フォトリソグラフィー法によりパターニングする手段、または印刷技術などを用いて直接パターニングを行う手段などが挙げられる。
【0032】
図15は、オーミック電極1110a、オーミック電極1110b、ショットキー電極1120、n型半導体層1130及び基板1140を備えているショットキーバリアダイオード(SBD)の好適な一例を示す。
【実施例0033】
(実施例1)
1.n型半導体層の形成
1-1.製膜装置
本実施例で好適に用いられる製膜装置の一例を、図1を用いて説明する。図1の製膜用装置19は、被製膜試料20を設置する試料台21、キャリアガスを供給するキャリアガス源22a、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス源22b、キャリアガス源22aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23a、キャリアガス源22bから送り出されるキャリアガス(希釈)の流量を調節するための流量調節弁23b、製膜室27内に設けられたヒーター28及び霧化装置30を備えている。霧化装置30は、霧化用原料液24aが収容される原料隔壁24、原料隔壁24の底部に設けられる超音波透過基材24b、台24c、原料隔壁24の底面に設けられた超音波振動子26、超音波透過基材24bに接しているガイド隔壁31、超音波伝達液36を収容する超音波伝達液槽35、超音波振動子26から超音波透過基材24bに発せられる超音波を伝達する超音波伝達液36から構成されている。ガイド隔壁31は、超音波振動子により発せられる超音波を、超音波伝達液36を介して超音波透過基材24bに局所的に超音波を伝達することができるため、霧化効率をより向上させ、霧化量をより多くすることができる。
図2は本実施例において好適に用いられる霧化装置の一例を示す。図2の霧化装置30は、流量調節弁23a、流量調節弁23b、霧化用原料液24a、超音波透過基材24b、台24c、ガイド隔壁31、希釈ガス供給管33、キャリアガス供給管34、超音波伝達液槽35,超音波伝達液36及び治具40から構成されている。ガイド隔壁31を用いることで、超音波振動子より発生した超音波を超音波透過基材24bを通じて霧化用原料液24aを霧化することができる。そのため、霧化効率を向上させ、霧化量をより多くすることができる。また、希釈ガス供給管33及びキャリアガス供給管34を用いることで超音波にて発生したミストを製膜室へと送ることができる。
図16は、霧化装置30の断面図を模式的に示す。霧化装置30は、原料隔壁24、超音波透過基材24b、台24c、超音波振動子26、ガイド隔壁31及び超音波伝達液槽35からなっている。ガイド隔壁31は超音波振動子26上に設けられており、超音波透過基材24bと接している。このように構成することで、超音波の伝達効率をより向上させることができる。
【0034】
1-2.霧化用原料溶液の作製
霧化用原料溶液を調節する際に、前記霧化用原料溶液中の濃度を0.05Mのビスカルボキシゲルマニウムセスキオキシドと0.025Mの塩化スズ二水和物となるように調節した。調節する際、塩化水素酸を体積比で10%を含有させ、これを霧化用原料溶液とした。
【0035】
1-3.製膜準備
上記1-2.で得られた霧化用原料液24aを原料隔壁24に収容した。次に被製膜試料20としてr-TiO(001)を試料台21に設置し、ヒーター28を作動させて製膜室27内の温度を725℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁23a、23bを開いて、キャリアガス源であるキャリアガス源22a、22bからキャリアガスを製膜室27内に供給し、製膜室27の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を3.0L/分に、キャリアガス(希釈)の流量を0.5L/分にそれぞれ調節した。なお、キャリアガスとして窒素を用いた。
【0036】
1-4.酸化物半導体結晶膜の形成
次に、超音波振動子26を振動させ、その振動を、超音波伝達液を通じて霧化用原料溶液24aに伝播させることによって、霧化用原料溶液24aを霧化させてミストを生成させた。このミストが、キャリアガスによって、供給管(図示せず)内を通って、製膜室27内に導入され、大気圧下、725℃にて、成膜室27内でミストが熱反応して、被製膜試料20上に薄膜が形成された。
【0037】
1-4.にて得られた薄膜をX線回折装置を用いて、薄膜を測定した。図3にXRD回析結果を示す。得られた薄膜はルチル構造を有する(001)面配向のr-(Ge52,Sn48)O結晶膜であった。なお、膜厚は73nmであった。また、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いて得られた薄膜を評価したところ、図4に示すように、表面全面に薄膜が形成されていることがわかった。
【0038】
また、走査電子顕微鏡(SEM)にて膜表面を観察した結果、図5に示すように表面平滑性に優れ、良好な結晶性を有する結晶膜が形成されていることがわかった。
膜表面を評価
【0039】
2.電極の形成
下記条件によりr-(Ge52,Sn48)O結晶膜上に電極を形成した。

(オーミック電極の形成条件)
Cleaning: O3 5min
Photoresist coating: HMDS 3000rpm 20s nonbake, LOR5A 3000rpm 60s 180oC5min, AZ-MiR703 3000rpm 60s 110oC1min
Laser lithography: dwl66+ 10mmHead, power 70mW, filter 100%, intensity 70%
Bake: 60s 110oC1min
Development: TMAH 2.3wt% 90s, Water 30s
Descum: O3 1min
EB deposition: Ti 75 nm 0.2nm/s, Au 75 nm 0.2nm/s
Liftoff: NMP 80oC 30 min, IPA×2, Water
RTA: N2 0.2ccm, 500oC, 30s

Bake: 60s 110oC1min
Development: TMAH 2.3wt% 90s, Water 30s
Etching: BHF 1:10 30s
Cleaning: Acetone, IPA, Water

(ショットキー電極の形成条件)
Cleaning: O3 1min
Photoresist coating: HMDS 3000rpm 20s nonbake, LOR5A 3000rpm 60s 180oC5min, AZ-MiR703 3000rpm 60s 110oC1min
Laser lithography: dwl66+ 10mmHead, power 70mW, filter 100%, intensity 70%
Bake: 60s 110oC1min
Development: TMAH 2.3wt% 90s, Water 30s
Descum: O3 1min
EB deposition: Ni 75 nm 0.15nm/s, Au 75 nm 0.2nm/s
Liftoff: NMP 80oC 30 min, IPA×2, Water
【0040】
4.ホール効果測定
以上にして得られた半導体装置につき、van der pauw法により、ホール効果測定を実施したところ、移動度が29cm/Vsであった。また、キャリア密度が9.7×1018/cmであった。
【0041】
5.IV測定
以上のようにして得られた半導体装置につき、IV測定を実施した。結果を図6に示す。これらの結果から、実施例1の半導体装置が半導体特性およびショットキー特性に優れていることがわかる。
【0042】
(実施例2)
酸化物半導体結晶膜の膜厚を110nmとしたことと、下記条件によりr-(Ge52,Sn48)O結晶膜上に電極を形成したこと以外実施例1と同様の条件で行った。

2-1.電極の形成
(オーミック電極の形成条件)
Cleaning: O3 15min
Photoresist coating: HMDS 3000rpm 20s nonbake, LOR5A 3000rpm 60s 180oC5min, AZ-MiR703 3000rpm 60s 110oC1min
Laser lithography: dwl66+ 10mmHead, power 70mW, filter 100%, intensity 70%
Bake: 60s 110oC1min
Development: TMAH 2.3wt% 90s, Water 30s
Descum: O3 1min
EB deposition: Ti 75 nm 0.2nm/s, Au 75 nm 0.2nm/s
Liftoff: NMP 80oC 30 min, IPA×2, Water
RTA: N2 0.2ccm, 450oC, 30s

(ショットキー電極の形成条件)
Cleaning: O3 1min
Photoresist coating: HMDS 3000rpm 20s nonbake, LOR5A 3000rpm 60s 180oC5min, AZ-MiR703 3000rpm 60s 110oC1min
Laser lithography: dwl66+ 10mmHead, power 70mW, filter 100%, intensity 70%
Bake: 60s 110oC1min
Development: TMAH 2.3wt% 90s, Water 30s
Descum: O3 1min
EB deposition: Pt 100 nm 0.05 nm/s
Liftoff: NMP 80oC 10 min, IPA×2, Water
【0043】
4.ホール効果測定
以上にして得られた半導体装置につき、van der pauw法により、ホール効果測定を実施したところ、移動度が24cm/Vsであった。また、キャリア密度が7.8×1018/cmであった。
【0044】
5.IV測定
以上のようにして得られた半導体装置につき、IV測定を実施した。結果を図7に示す。これらの結果から、実施例1の半導体装置が半導体特性およびショットキー特性に優れていることがわかる。
【0045】
(試験例1)
従来のミストCVD装置で実施例1と同様の条件で製膜を行ったところ、結晶膜は形成することができず、結晶粒が一部基板上に形成されるにすぎなかった。そのため、電気特性を測定することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の半導体は、例えば、パワーデバイス等の半導体装置などに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0047】
19 製膜装置
20 被製膜試料
21 試料台
22a キャリアガス源
22b 希釈ガス源
23a 流量調節弁
23b 流量調節弁
24 原料隔壁
24a 霧化用原料液
24b 超音波透過基材
24c 台
26 超音波振動子
27 製膜室
28 ヒータ
30 霧化装置
31 ガイド隔壁
33 希釈ガス供給管
34 キャリアガス供給管
35 超音波伝達液槽
36 超音波伝達液
37 製膜室
101a n-型半導体層
101b n+型半導体層
102 p型半導体層
103 金属層
104 絶縁体層
105a ショットキー電極
105b オーミック電極
111a n-型半導体層
111b n+型半導体層
114 半絶縁体層
115a ゲート電極
115b ソース電極
115c ドレイン電極
118 緩衝層
121a バンドギャップの広いn型半導体層
121b バンドギャップの狭いn型半導体層
121c n+型半導体層
123 p型半導体層
124 半絶縁体層
125a ゲート電極
125b ソース電極
125c ドレイン電極
128 緩衝層
129 基板
131a n-型半導体層
131b 第1のn+型半導体層
131c 第2のn+型半導体層
132 p型半導体層
134 ゲート絶縁膜
135a ゲート電極
135b ソース電極
135c ドレイン電極
138 緩衝層
139 半絶縁体層
141a n-型半導体層
141b 第1のn+型半導体層
141c 第2のn+型半導体層
142 p型半導体層
145a ゲート電極
145b ソース電極
145c ドレイン電極
151 n型半導体層
151a n-型半導体層
151b n+型半導体層
152 p型半導体層
154 ゲート絶縁膜
155a ゲート電極
155b エミッタ電極
155c コレクタ電極
161 n型半導体層
162 p型半導体層
163 発光層
165a 第1の電極
165b 第2の電極
167 透光性電極
169 基板
1010a n-型半導体
1010b n+型半導体
1020 オーミック電極
1030 ショットキー電極
1030a 金属層
1030b 金属層
1030c 金属層
1060 電解緩和領域
1110a オーミック電極
1110b オーミック電極
1120 ショットキー電極
1130 n型半導体層
1140 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16