(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042475
(43)【公開日】2025-03-27
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/18 20120101AFI20250319BHJP
【FI】
G06Q50/18 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149520
(22)【出願日】2023-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100120167
【弁理士】
【氏名又は名称】木田 博
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100144244
【弁理士】
【氏名又は名称】成毛 敏明
(72)【発明者】
【氏名】萩原 明子
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC32
5L050CC32
(57)【要約】
【課題】被相続人の資産を一元管理するとともに、相続人を適切に把握可能な情報処理システムを提供する。
【解決手段】相続を支援するサーバ装置を備える情報処理システムは、サーバ装置は、被相続人及び推定相続人に係る個人認証情報を登録する第1登録部と、登録された被相続人及び推定相続人に係る個人認証情報及び個人認証情報に紐付けられた戸籍情報に基づいて、推定相続人の範囲として、配偶者、相続の順位が第1順位から第3順位までの続柄の者、代襲相続の対象となる者を含む、相続関係図を作成する第1作成部と、被相続人又は推定相続人に相続に影響する変化が生じた場合、その変化に係る所定情報を個人認証情報に紐付けることにより、相続関係図を更新する第1更新部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相続を支援するサーバ装置を備える情報処理システムであって、
前記サーバ装置は、
被相続人及び推定相続人に係る個人認証情報を登録する第1登録部と、
登録された前記被相続人及び前記推定相続人に係る前記個人認証情報及び前記個人認証情報に紐付けられた戸籍情報に基づいて、前記推定相続人の範囲として、配偶者、相続の順位が第1順位から第3順位までの続柄の者、代襲相続の対象となる者を含む、相続関係図を作成する第1作成部と、
前記被相続人又は前記推定相続人に相続に影響する変化が生じた場合、その変化に係る所定情報を前記個人認証情報に紐付けることにより、前記相続関係図を更新する第1更新部と、を備える、情報処理システム。
【請求項2】
前記所定情報は、出生届、婚姻届、離婚届及び死亡届を含む、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記推定相続人は、相続欠格、相続廃除、相続放棄の対象となる場合、その旨が記録される、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記被相続人の相続財産を前記被相続人に係る前記個人認証情報に紐付けて登録する第2登録部と、
前記相続財産に基づいて相続財産一覧図を作成し、前記相続財産に変化が生じた場合に前記相続財産一覧図を更新する第2作成更新部と、を更に備える、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
相続が開始される前に、任意の時点で前記相続関係図に掲載されている前記推定相続人のうち相続適格な法定相続人の端末装置に対して、想定した前記被相続人の相続財産一覧を開示し、及び/又は、前記所定情報として前記被相続人の死亡届が提出されたことにより相続が開始された場合、その時点で前記相続関係図に掲載されている前記推定相続人のうち相続適格な法定相続人の端末装置に対して、相続が開始された事実を通知するとともに、確定した前記被相続人の相続財産一覧を開示する通知部を更に備える、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記通知部は、前記被相続人の相続財産一覧を、配偶者のほかは、存在する相続の順位に応じて前記法定相続人に対して開示する、請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
相続を支援するサーバ装置の情報処理方法であって、
被相続人及び推定相続人に係る個人認証情報を登録する第1登録ステップと、
登録された前記被相続人及び前記推定相続人に係る前記個人認証情報及び前記個人認証情報に紐付けられた戸籍情報に基づいて、前記推定相続人の範囲として、配偶者、相続の順位が第1順位から第3順位までの続柄の者、代襲相続の対象となる者を含む、相続関係図を作成する第1作成ステップと、
前記被相続人又は前記推定相続人に相続に影響する変化が生じた場合、その変化に係る所定情報を前記個人認証情報に紐付けることにより、前記相続関係図を更新する第1更新ステップと、を備える、情報処理方法。
【請求項8】
相続を支援する情報処理プログラムであって、
サーバ装置に、
被相続人及び推定相続人に係る個人認証情報を登録する第1登録処理と、
登録された前記被相続人及び前記推定相続人に係る前記個人認証情報及び前記個人認証情報に紐付けられた戸籍情報に基づいて、前記推定相続人の範囲として、配偶者、相続の順位が第1順位から第3順位までの続柄の者、代襲相続の対象となる者を含む、相続関係図を作成する第1作成処理と、
前記被相続人又は前記推定相続人に相続に影響する変化が生じた場合、その変化に係る所定情報を前記個人認証情報に紐付けることにより、前記相続関係図を更新する第1更新処理と、を実行させる、情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理システム、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、個人(被相続人)の相続について、資産の移転を対象とした技術として、例えば、相続を含む近親者等への資産の移転に係る各種の処理を支援する資産管理システム(特許文献1)が開示されている。
【0003】
特許文献1の資産管理システムは、資産に係る情報を資産状況記録部に記録し、資産の移転に係る処理の内容を移転履歴記録部に記録する資産管理部と、資産につき、ユーザの生前もしくは死亡後における移転に係る処理を行う相続管理部とを備えており、相続管理部は、第1のユーザから受け付けた移転条件を含む生前贈与の内容を相続財産記録部に記録し、移転条件が成就した場合に、第1のユーザに、移転条件が成就したことを通知し、資産管理部は、その生前贈与の内容に基づいて、第1のユーザから他のユーザへの生前贈与における資産の移転に係る処理を行うとされており、相続開始前の生前贈与等(死因贈与、遺贈等)を反映する点が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来技術では、預金通帳のWeb化など、紙現物ではない資産が増えている近況において、被相続人本人が死亡した際の(借入を含む)総資産の把握をし、電子データ化されたそれぞれの資産に設定されているであろうパスワードを解明することも難しく、また、相続人の把握が必ずしも十分でないという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、被相続人及び相続人に係る個人認証情報を登録することにより、被相続人の資産を一元管理するとともに、相続人を適切に把握可能な情報処理システム、情報処理方法及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの観点では、本発明は、相続を支援するサーバ装置を備える情報処理システムであって、前記サーバ装置は、被相続人及び推定相続人に係る個人認証情報を登録する第1登録部と、登録された前記被相続人及び前記推定相続人に係る前記個人認証情報及び前記個人認証情報に紐付けられた戸籍情報に基づいて、前記推定相続人の範囲として、配偶者、相続の順位が第1順位から第3順位までの続柄の者、代襲相続の対象となる者を含む、相続関係図を作成する第1作成部と、前記被相続人又は前記推定相続人に相続に影響する変化が生じた場合、その変化に係る所定情報を前記個人認証情報に紐付けることにより、前記相続関係図を更新する第1更新部と、を備える、情報処理システムを開示する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被相続人及び相続人に係る個人認証情報を登録することにより、被相続人の資産を一元管理するとともに、相続人を適切に把握可能な情報処理システム、情報処理方法及び情報処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による情報処理システムの全体構成の概略図である。
【
図2】情報処理システムによる相続支援の概念図(その1)であり、個人認証情報としてマイナンバーカードを用いた場合の家族構成の紐付けを説明する図である。
【
図3】情報処理システムによる相続支援の概念図(その2)であり、ある被相続人からみてすべての相続人を相続順位を付して示した場合の相続関係図である。
【
図4】情報処理システムによる相続支援の概念図(その3)であり、相続財産を説明する図である。
【
図5】情報処理システムによる相続支援の概念図(その4)であり、ある被相続人の死亡届が提出された時の情報処理システムの機能を説明する図である。
【
図6】情報処理システムによる相続支援の概念図(その5)であり、ある被相続人からみて相続順位別に相続人を抽出した場合の相続関係図の表示を説明する図である。
【
図7】情報処理システムによる相続支援の概念図(その6)であり、ある被相続人の相続財産一覧図の表示を説明する図である。
【
図8】情報処理システムによる相続支援の概念図(その7)であり、情報処理システムの効果をまとめて説明する図である。
【
図9】情報処理システムの動作例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る情報処理システム1の全体構成の概略図である。
【0012】
情報処理システム1は、以下で説明する相続支援を実現するシステムである。相続支援は、情報処理システム1を構成するサーバ装置10をユーザ端末20からネットワーク30を介して機能させることによって達成される。
【0013】
本実施形態が適用されうる相続支援に係るサービス提供機関は、例えば、各種の銀行や保険会社などの金融機関のほか、郵便局、公的又は行政サービスの提供機関、非営利団体(NPO)などを含んでよい。相続支援の一例は、後ほど
図2以降を参照して、サービス提供機関として銀行を取り上げて説明するが、それぞれのサービス提供機関における特性に応じて、合理的な範囲で変形可能である。
【0014】
情報処理システム1は、
図1に示すように、サーバ装置10と、ユーザ端末20とを備えている。
図1において、サーバ装置10を1つ、ユーザ端末20を2つ、それぞれ図示しているが、情報処理システム1は、その具体的な用途において、必要に応じ、サーバ装置10を複数のサーバ装置によって、また、ユーザ端末20を1つ又は3つ以上の端末装置によって構成してもよい。
【0015】
サーバ装置10とユーザ端末20は、互いに、ネットワーク30を介して通信可能に接続されている。サーバ装置10は、相続支援に係るサービス提供機関によって運営管理され、ユーザ端末20は、相続支援を受ける家族の構成員が所持する。
【0016】
ネットワーク30は、例えば、携帯電話の無線通信網、インターネット、VPN(Virtual Private Network)、WAN(Wide Area Network)、有線ネットワーク、又はこれらの任意の組み合わせ等を含んでもよい。
【0017】
ユーザ端末20は、例えばスマートフォンやタブレットであるが、ウェアラブル端末(例えばスマートウォッチ、リング等)、リモコン等であってもよい。また、ユーザ端末20は、携帯型端末である必要はなく、デスクトップタイプやノートタイプのパーソナルコンピュータ等のような固定型端末であってもよい。
【0018】
ユーザ端末20は、通信部21と、処理部22と、入力部23と、表示部24とを備える。通信部21は、ネットワーク30を介して各種通信を行う。処理部22は、ユーザ端末20で実現可能な各種機能を実現するものであり、後述する「相続支援アプリ」(愛称として「相続お手伝いアプリ」など)に係るプログラムを実行することで、以下で説明する各種機能(ユーザ端末20側の機能)を実現する。入力部23は、相続支援の遂行に必要なユーザによる入力を受け付ける。表示部24は、処理された各種の情報が出力されるものである。入力部23と表示部24は、液晶ディスプレイや、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等であってよく、共用のものとして構成してもよい。
【0019】
ユーザ端末20は、本実施形態に係るアプリケーション(以下、「相続支援アプリ」と称する)をインストールしている。以下で説明するユーザ端末20は、相続支援アプリが実行されることで実現される。相続支援アプリは、相続支援用のアプリであり、利用条件として、ユーザ情報(ユーザID)等の登録を必要とされてもよい。以下では、ユーザに対応付けられたユーザ端末20とは、同ユーザに係るユーザIDでログインされた相続支援アプリが動作するユーザ端末20を意味する。
【0020】
サーバ装置10は、本実施形態に係る相続支援の適用が可能なサービスを提供するサービス提供機関に設置される。サーバ装置10は、サービス提供機関の組織のすべてをカバーするように構成してもよいし、組織の構成に応じて、一定のエリア別や、本店/支店の店舗別、建物別に設けるようにしてもよい。サーバ装置10は、例えばサーバコンピュータにより形成される。サーバ装置10は、複数のサーバコンピュータにより実現されてもよい。例えば、サーバ装置10は、互いに異なる場所に配置された複数のサーバコンピュータが協動することで実現されてもよい。
【0021】
相続支援の適用が可能なサービスの種類は、任意であるが、相続が開始される前のサービスと、相続が開始された後のサービスに、大別される。以下では、相続が開始される前のサービスとしては、相続支援を受ける家族の構成及び当該家族の財産の登録、更新、表示などが含まれ、相続が開始された後のサービスとしては、家族の構成員の誰かについて死亡届が提出されることによって被相続人が生じた際の相続人への通知、相続の承認/放棄の確認などが含まれる。
【0022】
本実施形態では、前述のとおり、サービス提供機関は、各種の銀行や保険会社などの金融機関のほか、郵便局、公的又は行政サービスの提供機関、非営利団体(NPO)などを含みうるが、以下では、一例として、銀行(例えば、普通銀行の一種である都市銀行)を想定して説明する。
【0023】
なお、サーバ装置10は、相続支援に関連した各種のサービスを行うサーバであるが、相続支援以外のサービス(用途)で利用されるサーバと兼用であってもよい。
【0024】
ここで、本実施形態におけるサーバ装置10及びユーザ端末20を使用した相続支援について、
図2から
図8を参照して説明する。
図2から
図8は、それぞれ、相続支援の概略図である。
【0025】
図2は、本実施形態に係る情報処理システム1による相続支援の概念図(その1)であり、個人認証情報としてマイナンバーカードを用いた場合の家族構成の紐付けを説明する図である。個人認証情報は、マイナンバーカードに基づくことに限る必要はなく、これ以外にも、身分を証明することができる氏名、住所等が記載され、身分証明として社会的に使用される公的な書類に基づいていればよく、例えば、運転免許証、健康保険被保険者証、及びパスポートのうち少なくともいずれか1つを含む公的な書類から取得することが可能であるが、以下では、これらの一例として、マイナンバーカードを用いた場合について、説明する。
【0026】
ここで、マイナンバー、マイナンバーカードについて、付言する。マイナンバーは、個人番号通知書により市区町村から本人へ通知されるとともに、マイナンバーカードは、本人からの交付申請に基づき市区町村から交付される。以下の説明では、「マイナンバーカードを登録する」と言うことがあるが、これは、特に断らない限り、「マイナンバーカードに記録されている情報を登録する」という趣旨で用いている。「マイナンバーカードに記録されている情報」は、現状では、表面に記載されている表面情報として4情報(住所・氏名・生年月日・性別)と顔写真、裏面に記載されている裏面情報として個人番号(マイナンバー)である。
【0027】
なお、マイナンバーカードには有効期限が設定されるため、情報の登録は有効期限内のマイナンバーカードによるものとし、有効期限が更新された場合には再交付後の新たなマイナンバーカードをもって情報を更新する。また、住所変更などにより記録されている情報に変更があった場合も同様に、再交付後の新たなマイナンバーカードをもって情報を更新する。
【0028】
相続支援は、前述したように、相続が開始される前の段階と、相続が開始された後の段階の2つの段階に分けられる。本実施形態では、まず、相続が開始される前の段階において、相続支援の対象となる家族について、その構成員を、マイナンバーカードを用いて家族関係を紐付けてサーバ装置10に登録する。
【0029】
図2では、3世代にわたる家族構成(計11名)を例として挙げている。ここでは、相続が開始される前の段階として、被相続人を特定することなく図示しており、上位の世代から下位の世代に向かって、以下の構成が描出されている。
・1組の祖父母2名
・当該祖父母の子である2組の父母4名(兄弟姉妹2名とそれぞれの配偶者2名)
・当該2組の父母のそれぞれの子である2組の兄弟姉妹3名と2名
この家族を構成する計11名のマイナンバーカードをサーバ装置10に登録することにより、図に例示するような家族構成の関係図が作成される。
【0030】
関係図は、種々の態様で作成されてよく、図示のように、ある時期に撮影した写真(有効期限内のマイナンバーカードに貼着されている顔写真など)が用いられてもよいし、氏名、住所などのテキストが用いられてもよい。もちろん、写真とテキストの併用であってもよい。この関係図は、構成員が自身のユーザ端末20で閲覧できるようにしてもよい。
【0031】
図2では、家族構成に変更が生じた場合の処理として、戸籍の届出を例に、出生届、婚姻届、離婚届、死亡届が提出された場合を示している。これらの届出がなされると、届出に記載されている事実関係が各構成員のマイナンバーカードで紐付けてサーバ装置10に登録され、関係図が更新される。
【0032】
出生届の場合、新生児のマイナンバーが通知されるため、そのマイナンバーカードを父と母のマイナンバーに紐付けて、出生の事実をサーバ装置10に登録する。これにより、当該新生児が構成員として追加され、家族構成の関係図が更新される。婚姻届、離婚届の場合、該当者のマイナンバーカードを配偶者のマイナンバーに紐付けて、婚姻又は離婚の事実をサーバ装置10に登録する。これにより、当該配偶者が構成員として追加され、又は、構成員から削除され、家族構成の関係図が更新される。死亡届の場合、該当者のマイナンバーカードを配偶者(配偶者がいない場合には、父、母、子など)のマイナンバーに紐付けて、死亡の事実をサーバ装置10に登録する。これにより、該当者が生存している構成員としては削除され、家族構成の関係図が更新される。なお、家族構成と相続支援との具体的な関係については、
図3以降を参照して、更に詳しく説明する。
【0033】
次に、
図3は、本実施形態に係る情報処理システム1による相続支援の概念図(その2)であり、ある被相続人からみてすべての相続人を相続順位を付して示した場合の相続関係図である。
図3は、
図2で説明した基本的な家族構成の関係図をより複雑な家族構成とした上で、相続順位を説明するものである。相続順位は、民法の規定によって定められているものであるが、サーバ装置10では、マイナンバーカードを登録する際に、マイナンバーに紐付けて家族の構成員ごとに続柄が登録される。続柄については、戸籍情報から取得される。登録されている構成員が死亡し、死亡届に基づいて被相続人が生じて相続が開始されると、被相続人からみて、相続範囲(相続順位が第1順位から第3順位に該当する範囲。代襲相続を含む。)の相続関係図が作成される。
【0034】
図3では、5世代にわたる家族構成(計20名)を例として挙げている。ここでは、被相続人が特定されている場合を図示しており、被相続人(男性を想定)からみた続柄をもって、以下の構成が描出されている。
・被相続人1名
・配偶者1名
・当該配偶者の子2名
・当該配偶者の子2名のそれぞれの配偶者2名
・当該配偶者の子2名のそれぞれの子である孫2名
・前妻1名
・当該前妻の子1名
・父母2名
・2組の祖父母4名
・兄弟姉妹1名
・当該兄弟姉妹の配偶者1名
・当該兄弟姉妹の子である甥姪2名
【0035】
被相続人に係る死亡届が提出されると、遺言や遺産分割協議などによって別異の相続がなされる場合を除き、法定相続分は、次のとおりとなる。まず、配偶者は、常に相続人となり、第1順位から第3順位の相続人がいるときには、その者と同順位となる。そして、配偶者の相続分は、第1順位の相続人がいるときには二分の一、第2順位の相続人がいるときには三分の二、第3順位の相続人がいるときには四分の三となる。一方、離婚が成立している前妻は、相続人の地位を有さない。なお、被相続人と前妻の間では、離婚時に、財産分与が行われる。
【0036】
図3において、相続順位が第1順位である者は、被相続人の直系卑属である、配偶者の子2名と、前妻の子1名となる。前妻の子については、親権が被相続人及び前妻のいずれにあるかとは関係なく、第1順位となる。前述のとおり、配偶者の法定相続分は第1順位の相続人がいるときには二分の一となるので、
図3の例では、被相続人の子計3名それぞれの法定相続分は、配偶者相続分の残り二分の一を等分(本例では三分の一)とすることになるため、遺産全体からみると、1/2×1/3=1/6となる。
【0037】
ここで、被相続人の相続が開始される前に配偶者の子が死亡等によりいないときには、配偶者の子の子、すなわち、被相続人からみて孫が、相続順位を第1順位として、代襲相続することとなる。
図3の例において、配偶者の子2名が死亡等によりいないときには、第1順位の相続人は、孫2名、前妻の子1名の計3名となり、計3名それぞれの法定相続分は、同様に、配偶者相続分の残り二分の一を等分(本例では三分の一)とすることになるため、遺産全体からみると、1/2×1/3=1/6となる。
【0038】
次に、相続順位が第1順位である者がいないとき、すなわち、相続人として代襲相続を含む直系卑属の者がいないときには、被相続人の直系尊属が相続順位を第2順位として遺産を相続する。
図3の例では、被相続人の父母2名が存命であるときには、2名それぞれの法定相続分は、配偶者相続分の残り三分の一を等分(本例では二分の一)とすることになるため、遺産全体からみると、1/3×1/2=1/6となる。
【0039】
ここで、直系尊属については、直系卑属のような代襲相続の考え方は採用されていない。被相続人の父母2名が存命のときには、上述のとおり、父母2名が相続順位を第2順位として遺産を相続するが、仮に、父母の一方がすでに死亡している場合には、残る存命の他方が第2順位として、配偶者相続分の残り三分の一の全部を相続することとなり、すでに死亡している一方の相続分がその父母すなわち被相続人の祖父母に遡って相続されることはない。そして、仮に、父母の双方がすでに死亡している場合には、存命の祖父母が第2順位として相続することとなる。換言すると、直系尊属の場合、直系尊属全体として相続順位が第2順位という考え方であり、相続開始の時に存命の直系尊属のうち、被相続人に最も近しい者のみが相続することとなる。
【0040】
次に、相続順位が第1順位である者及び第2順位である者がいないとき、すなわち、相続人として代襲相続を含む直系卑属の者及び直系尊属の者がいないときには、被相続人の兄弟姉妹が相続順位を第3順位として遺産を相続する。
図3の例では、被相続人の兄弟姉妹が1名であるため、その法定相続分は、配偶者相続分の残り四分の一の全部を相続することとなる。仮に、兄弟姉妹が複数いる場合には、配偶者相続分の残り四分の一を等分とすることになる。
【0041】
ここで、被相続人の相続が開始される前に兄弟姉妹が死亡等によりいないときには、兄弟姉妹の子、すなわち、被相続人からみて甥姪が、相続順位を第3順位として、代襲相続することとなる。
図3の例において、兄弟姉妹1名が死亡等によりいないときには、第3順位の相続人は、甥姪2名となり、2名それぞれの法定相続分は、配偶者相続分の残り四分の一を等分(本例では二分の一)とすることになるため、遺産全体からみると、1/4×1/2=1/8となる。
【0042】
次に、本実施形態では、相続が開始される前の段階において、相続支援の対象となる相続財産(相続の開始によって遺産となる)について、その内容を、マイナンバーカードに紐付けてサーバ装置10登録する。
【0043】
図4は、本実施形態に係る情報処理システム1による相続支援の概念図(その3)であり、相続財産を説明する図である。相続財産は、不動産、動産などから構成されるが、サーバ装置10では、マイナンバーカードに紐付けて家族の構成員ごとに相続財産が登録される。相続財産は、被相続人が死亡した時点で遺産となるが、遺産は、死亡の時点で被相続人が所有していた財産に関わる一切の権利義務である。
【0044】
相続財産には、プラスの財産とマイナスの財産が存在するが、プラスの財産としては、
図4に例示するような、預貯金、土地、車、家屋(建物)、有価証券(株券など)、生命保険のほか、借地権、借家権、現金、貸付金、売掛金、家財、貴金属、美術品、ゴルフ会員権、著作権、特許権、損害賠償請求権などが挙げられる。マイナスの財産としては、負債として、住宅ローンの残高債務、未払金、保証債務などがある。要するに、相続財産は、被相続人が所有している財産、権利、義務など、金銭に見積もることができる一切のプラス及びマイナスの財産である。
【0045】
相続財産は、本実施形態に係る情報処理システム1では、相続が開始される前であっても、被相続人となるべき者の意思、又は、家族の構成員の了解に基づいて、登録されている家族の構成員に開示されるように構成されてもよいし、相続が開始された後になって初めて、相続順位に応じて、それぞれの相続人に開示されるように構成されてもよい。以下では、相続が開始された後に相続人に開示される態様について、説明する。
【0046】
図5は、本実施形態に係る情報処理システム1による相続支援の概念図(その4)であり、ある被相続人の死亡届が提出された時の情報処理システム1の機能を説明する図である。死亡届に基づいて被相続人が生じて相続が開始されると、
図4で説明した相続財産について、情報処理システム1は、次のような手順で、相続人に、遺産となった相続財産に係る情報を開示する。
【0047】
遺産の情報開示にあたっては、相続順位が第1順位の相続人(配偶者を含む)がいるときには、その相続人に対し、遺産の一覧を開示する。第1順位の相続人がいないときには、第2順位の相続人(配偶者を含む)に対し、遺産の一覧を開示する。そして、第1順位及び第2順位の相続人がいないときには、第3順位の相続人(配偶者を含む)に対し、遺産の一覧を開示する。
【0048】
ここで、配偶者は、前述したとおり、常に相続人となり、第1順位から第3順位の相続人がいるときには、その者と同順位となり、また、婚姻期間中に夫婦の協力によって得られた財産は、離婚時の財産分与が二分の一ずつとされることが一般的であるように、配偶者同士すなわち夫婦は、人生の苦楽を共にする特別な関係にある。このような観点から、遺産となるべき相続財産の情報は、配偶者に対しては、被相続人の生前から、すべて開示されるようにしてもよい。さらには、第1順位の子については、被相続人との密接な関係を考慮して、被相続人の生前であっても限定的に相続財産の情報が開示されるようにしてもよいし、死亡届提出後にすべての情報が開示されるようにしてもよい。
【0049】
このような遺産の情報開示は、例えば、次のようにして実現される。被相続人の死亡届がサーバ装置10に登録されると、家族の構成員が有するユーザ端末20に、相続順位に応じて、その旨の通知がなされる。ユーザ端末20には、例えば「相続お手伝いアプリ」と称するアプリケーションがインストールされており、サーバ装置10からの通知を受信すると、ユーザ端末20に表示されている「相続お手伝いアプリ」のアイコンに、例えば、「通知の通数を表す数字(
図5では、通数1を表す「丸1」)が表示されることによって、該当する相続人に注意喚起を行う。
【0050】
通知を受信した相続人がアイコンをクリックすると、ユーザ端末20に、例えば、「~お知らせ~」として、「○○○○様(被相続人)の死亡届が提出されました。相続第○順位の方に対して、ご連絡を差し上げています。」というような相続が開始されたことを告げる通知が表示される。なお、相続人にとって相続の開始は重大な関心事であり、また、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から原則として3か月以内に、相続について、「承認(単純承認/限定承認)」又は「放棄」をしなければならないが、被相続人の死亡による相続人の心情、葬儀のタイミング等を考慮し、当該通知のタイミングや文面は、調整できるようにしてもよい。
【0051】
この通知には、「~お知らせ~」に加えて、サーバ装置10に登録されている相続関係図及び相続財産(遺産)一覧図を添付する。相続関係図は、後記する
図6に示したように相続順位を反映したもの、相続財産(遺産)一覧図は、後記する
図7に示したようなものであり、該当するボタンをクリックすることによって、それぞれの情報が相続人に開示される。
【0052】
また、この通知には、遺言書の有無を確認するためのボタンを備えるようにしてもよい。この際、遺言書の方式(自筆証言遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言など)の別を表示するようにしてもよい。また、情報処理システム1では、遺言書を電子データで作成、保存することが法律的に認められること(デジタル遺言制度)を前提として、「有」の場合には、サーバ装置10に保存された遺言書をユーザ端末20に開示されるように構成してもよい。本実施形態に係る情報処理システム1は、マイナンバーカードに紐付けて相続支援を行うものであり、遺言書を電子データで作成、保存、表示した場合、本人確認、電子署名の真正性、遺言者の真意性などについて、有利性を備えるものである。
【0053】
さらにまた、この通知には、「~お知らせ~」に対する「回答」として、「相続(承認)する/相続放棄する」を選択するためのボタンを備えるようにしてもよい。前述したとおり、遺産には、プラスの財産のみならず、マイナスの財産も含まれ、また、相続した遺産に応じて、相続税も発生する。相続関係図や相続財産(遺産)一覧図、場合により遺言書をみて、相続人は、当該相続について、「承認」するか、「放棄」するか、を選択できる。ここで、相続の「承認」については、無限に被相続人の権利義務を承継する「単純承認」と、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保する「限定承認」とがあるため、その区別を選択できるようにしてもよい。
【0054】
このように、相続人は、相続について、単純承認、限定承認、相続放棄の3つから選択することとなるが、前一者が相続人の意思をもって法的効果が得られるのに対し、後二者は、家庭裁判所への申述を経て法的効果が発生する。限定承認については、相続財産(遺産)の全体についての評価となるため、共同相続人全員による家庭裁判所への申述が必要となる一方、相続放棄については、単独で家庭裁判所への申述ができる。このようなことから、情報処理システム1における選択は、法的な効果を直ちに生じさせるものではなく、相続人間の意思確認という性格を帯びるものである。
【0055】
相続を「承認」した相続人は、単純承認、限定承認の意思確認に基づいて、相続人間で必要な協議を行って、その後の手続きを進行することとなる。限定承認は、共同相続人全員で行う必要があり、1人でも単純承認する相続人がいると成立しないためである。共同相続人全員が単純承認で合意したときには、遺産分割協議などの手続きに進行し、共同相続人全員が限定承認で合意したときには、家庭裁判所への申述などの手続きに進行する。
【0056】
相続を「放棄」した相続人は、個々に単独で家庭裁判所への申述などの手続きに進行する。相続を「放棄」した相続人は、その法的効果として、初めから相続人とならなかったものとみなされることになる。
【0057】
なお、相続人の地位を喪失するケースとしては、相続人の意思によって相続人の地位を喪失する「相続放棄」のほか、被相続人の意思によって相続人の地位を喪失する「相続廃除」、民法の定める欠格事由に相当して相続人の地位を喪失する「相続欠格」がある。情報処理システム1では、該当者については、「相続廃除」、「相続欠格」に係る情報も記録される。
【0058】
図6は、本実施形態に係る情報処理システム1による相続支援の概念図(その5)であり、情報処理システム1の機能として、ある被相続人からみて相続順位別に相続人を抽出した場合の相続関係図の表示を説明する図である。情報処理システム1では、
図3に示したような家族構成の関係図をベースとして、相続が開始されると、相続順位別に相続関係図を作成し、前述の相続順位に応じた通知に添付して、該当する相続人のユーザ端末20に送信する。
【0059】
図6では、第1順位の相続人がいる場合を例示しており、
図3のうち、第1順位の相続人及びそれと同順位であって常に相続人となる配偶者を抽出して表示している。第1順位の相続人がおらず第2順位の相続人がいる場合には、
図3のうち、第2順位の相続人及びそれと同順位であって常に相続人となる配偶者を抽出して表示する。さらに、第1順位及び第2順位の相続人がおらず第3順位の相続人がいる場合には、
図3のうち、第3順位の相続人及びそれと同順位であって常に相続人となる配偶者を抽出して表示する。
【0060】
図6について補足すると、前妻の子については、離婚後の親権の所属に関係なく、第1順位の相続人としての地位があるため、相続関係図に含まれる。また、
図6には記載していないが、配偶者の子、前妻の子が死亡している場合であって、それらの子、すなわち、被相続人の孫がいる場合には、代襲相続人として、相続関係図に含まれることとなる。相続関係図については、表示されている相続人をクリックすると、氏名、現住所、性別、生年月日、続柄などの個人情報が表示されるようにしてもよい。
【0061】
なお、それぞれの相続順位に応じた相続関係図を表示する際に、例えば、被相続人の生前の希望があったような場合には、相続順位別ではなく、他の相続順位の相続人を書き加えたものにしてもよい。例えば、第1順位の相続関係図に、第2順位及び/又は第3順位を書き加えたものとしてもよい。その場合には、該当する相続順位と、追加的に記載された相続順位の相違が明確となるように、後者はグレーアウトとするなどとしてもよい。これは、第1順位の相続人がいるにもかかわらず、第2順位や第3順位の相続人が自身にも相続分があるというような誤解を抱くようなことを避けるためでる。
【0062】
図7は、本実施形態に係る情報処理システム1による相続支援の概念図(その6)であり、ある被相続人の相続財産(遺産)一覧図の表示を説明する図である。プラスの財産としては、前述のとおり、預貯金、土地、車、家屋・マンション(建物)、有価証券(株券など)、保険(生命保険など)などが、マイナスの財産としては、各種の負債などが挙げられるが、情報処理システム1では、
図4に示したような相続財産を説明する図をベースとして、相続が開始されると、その時点における相続財産(遺産)一覧図を作成して、前述の相続順位に応じた通知に添付してユーザ端末20に送信する。
【0063】
それぞれの相続財産(遺産)には、財産を特定する情報が付与されている。例えば、預貯金には金融機関別に支店名、種別、口座番号等、土地には地目別(宅地・山林等)に登記簿情報等、車には用途別(自家用・事業用)に車台番号(車体番号)等、家屋・マンション(建物)には種類別(居宅<自宅・別荘等>・店舗等)に登記簿情報、有価証券には種類別(株券・債券等)に証券会社名、証券口座番号、保険には種類別(生命保険・医療保険等)に証券番号等が付与され、負債には種類別(住宅ローン・クレジットカード未決済分等)に返済用口座番号等が付与される。
【0064】
図7では、財産ごとの評価額を記載していない例を示しているが、相続開始時(又は相続会議時)における金銭に換算した場合の評価額が判明しており、サーバ装置10に情報が登録されている場合には、評価額を記載してもよい。また、被相続人の死亡届を提出してまだ間もない場合には、第1報として
図7のような一覧のみを相続人に通知し、その後、財産ごとの評価額が判明した時点で、第2報として評価額記載の一覧を相続人に通知してもよい。
【0065】
図8は、本実施形態に係る情報処理システム1による相続支援の概念図(その7)であり、情報処理システム1の効果をまとめて説明する図である。一部繰り返しになるが、情報処理システム1は、相続順位別に、マイナスの財産も含めて相続財産(遺産)一覧図を該当する相続人に開示することにより、相続人に対し、相続を「承認/放棄」する旨の意思決定に資する情報をタイムリーに提供する。これを受け、「承認」した相続人は相続に向けた手続きを、「放棄」した相続人は相続の放棄に向けた手続きを、それぞれ、タイムリーに開始することが可能となる。
【0066】
次に、
図1を再度参照して、
図2から
図8で説明した内容を補足しつつ、情報処理システム1を更に説明する。
【0067】
本実施形態では、
図1に示すように、サーバ装置10は、処理部12として、第1登録部121、第1作成部122、第1更新部123、第2登録部124、第2作成更新部125,通知部126を、記憶部13として、個人認証情報記憶部131、家族構成情報記憶部132、相続財産情報記憶部133を含む。なお、処理部12の各部は、サーバコンピュータのCPUがプログラムを実行することで、実現できる。また、記憶部13は、サーバコンピュータの記憶装置により実現できる。
【0068】
まず、記憶部13について説明する。
【0069】
個人認証情報記憶部131は、相続支援を受ける家族ごとに、情報処理システム1に登録された家族構成員の個人認証情報についてのデータベースである。個人認証情報は、マイナンバーカード、運転免許証、健康保険被保険者証、及びパスポートのうち少なくともいずれか1つを含む公的な書類から取得される情報である。マイナンバーカードを用いた場合については、現状では、「マイナンバーカードに記録されている情報」として、表面に記載されている表面情報として4情報(住所・氏名・生年月日・性別)と顔写真、裏面に記載されている裏面情報として個人番号(マイナンバー)が個人認証情報記憶部131に記憶される。マイナンバーカードの利用範囲が拡張され、同カードに記載されている情報に新たなものが付加された場合には、それに応じて更新される。
【0070】
家族構成情報記憶部132は、個人認証情報に戸籍情報から取得される続柄を紐付けた形で、相続支援を受ける家族の構成員を整理したデータベースである。家族の範囲については、構成員の誰かが死亡して相続が開始された際に法定相続人となりうる構成員に漏れが生じないように、配慮する必要がある。家族の範囲を考える場合、同居か別居か、生計を一にするか否かなどに加え、日常的に音信不通か否か、実子か養子か、過去の婚姻関係に基づく子がいるかいないかなど、心情的な面も含めて複雑な人間関係が浮かび上がることもありうるが、相続支援に係るサービス提供機関は、公正な相続が実現されるように、相続順位、代襲相続等を考慮して家族構成情報を構築する。
【0071】
相続財産情報記憶部133は、個人認証情報に財産形成過程から取得される財産の内容を紐付けた形で、相続財産すなわち遺産を整理したデータベースである。相続財産の対象は前述したとおり多岐にわたるが、例えば土地や建物の不動産であれば、該当する登記簿情報(登記事項証明書)が個人認証情報に紐付けられる。
【0072】
次に、処理部12について説明する。
【0073】
第1登録部121は、家族からの依頼を受けて、情報処理システム1に相続支援を受け付け、必要な情報として、マインナンバーカード、運転免許証、健康保険被保険者証、及びパスポートのうち少なくともいずれか1つを含む公的な書類から取得して、被相続人及び推定相続人に係る個人認証情報を登録する。受付に際しては、依頼時における家族の構成員を、その個人認証情報(マイナンバーカードに記録されている情報)とともに初期登録する。相続支援の受付は、サービス提供機関がサーバ装置10に直接入力してもよいし、サービス提供機関が使用するユーザ端末20から入力して、サーバ装置10へ送信してもよい。
【0074】
第1作成部122は、他の各部と協働しつつ、登録された被相続人及び推定相続人に係る個人認証情報及び個人認証情報に紐付けられた戸籍情報に基づいて、推定相続人の範囲として、配偶者、相続の順位が第1順位から第3順位までの続柄の者、代襲相続の対象となる者を含む、相続関係図を作成する部門である。個人認証情報を紐付ける場合、例えばマイナンバーカードを用いる場合、構成員ごとにマイナンバーカードのパスワードが異なるため、情報処理システム1では、それぞれのパスワードは入力しなくても機能させるようにしてもよいし、また、情報処理システム1に登録したマイナンバーカードについては、サービス提供機関が当該家族に共通のパスワードを別途設定して機能させるようにしてもよい。
【0075】
第1作成部122は、相続関係図に先駆けて、家族構成の関係図、例えば、
図2に示したようなものを作成してもよい。被相続人が特定されていない段階、すなわち、相続が開始される前の段階として、構成員の全体を把握するためのものである。同居/別居の区別、生計を一にするか否かなどとは関係なく、作成される。まだ、被相続人が特定されていない段階であるため、相続順位は表示されない。
【0076】
第1作成部122は、登録された家族の構成員について、紐付けられた個人認証情報を用いて、相続関係図を作成する。相続関係図は、例えば、
図3又は
図6に示したようなものであり、被相続人が特定されている段階、すなわち、相続が開始された後の段階として、家族の構成員のうち相続人の地位にある者に、相続順位を付して表示したものである。相続関係図は、
図3のように、第1順位から第3順位、代襲相続を含めて作成してもよいし、
図6のように、相続順位別に作成してもよい。
【0077】
第1更新部123は、被相続人又は推定相続人に相続に影響する変化が生じた場合、その変化に係る所定情報を個人認証情報に紐付けることにより、相続関係図を更新する部門である。初期登録の後、出生届、婚姻届、離婚届、死亡届などによって家族の構成員に変動があったときには、その都度、該当する事実を入力して、家族構成を更新する。なお、離婚届や死亡届など、該当者が当該家族から離脱することになる事実についても、相続人の特定に影響を与えることになるため、該当者の情報をサーバ装置10から削除することはない。すなわち、第1登録部121で受け付けた家族構成の変化履歴は、初期登録の状態からすべて、記憶部13の関連部に記憶される。
【0078】
第2登録部124は、被相続人の相続財産を被相続人に係る個人認証情報に紐付けて登録する部門である。相続支援の受付に際して、依頼時における家族の構成員の財産を、その個人認証情報(マイナンバーカードに記録されている情報)とともに初期登録する部門である。初期登録の後、売買、財産分与、生前贈与、相続などによって変動が生じた場合も同様である。
【0079】
第2作成更新部125は、相続財産に基づいて相続財産一覧図を作成し、相続財産に変化が生じた場合に相続財産一覧図を更新する部門である。登録された家族の構成員のうち、死亡届が提出されたことによって被相続人となった構成員について、紐付けられた個人認証情報を用いて、相続財産(遺産)一覧図を作成する。相続財産(遺産)一覧図は、例えば、
図7に示したようなものである。前述したように、
図7には各財産の評価額が記載されていない例を示しているが、評価額を記載したものであってもよいし、評価額が定まった段階で第2報として評価額を記載したものを順次作成してもよい。
【0080】
通知部126は、上記した家族構成関係図、相続関係図、相続財産(遺産)一覧図を、家族の構成員が所持するユーザ端末20に通知する。これらの図は、原則的には、家族の構成員の誰かが死亡し、相続が開始されたことを受けて、相続人のユーザ端末20へ「相続支援アプリ」を用いて「~お知らせ~」通知に添付して送信される。相続人は、これらの図を見た上で、相続の「承認(単純承認/限定承認)」、「放棄」を選択する機会を得ることができる。
【0081】
なお、サーバ装置10の処理部12には、以上のほかに、相続人による相続の「承認(単純承認/限定承認)」又は「放棄」を受けて、その後の手続きを処理する機能を付加してもよい。例えば、「単純承認」であれば、遺産分割協議書案の作成を、「限定承認」であれば、相続人全員による家庭裁判所への申述書案の作成を、「放棄」であれば、該当する相続人による家庭裁判所への申述書案の作成を、それぞれ、行えるようにしてもよい。
【0082】
次に、
図9を参照して、情報処理システム1の動作例について説明する。
【0083】
図9は、情報処理システム1の動作例を示すタイミングチャートである。この動作例は、以下で説明する各ステップによって、サービス提供機関の相続支援を処理する情報処理方法、及び、各ステップをコンピュータに実行させる情報処理プログラムとして、実現される。
【0084】
図9には、一のユーザ端末20と、一のサーバ装置10との間の主要な情報のやり取りの一例が概略的に示されている。なお、ここでは、代表として、以下で説明する一の相続人に係る一のユーザ端末20及び一のサーバ装置10が示されているが、ユーザ端末20及びサーバ装置10の組み合わせは、相続人が複数のときは各ユーザ端末20と、サーバ装置10が機能別に分散して設定されているときには各サーバ装置10との間で、合理的に設定される。
【0085】
まず、ステップS100では、一のユーザ(以下、単に「ユーザ」と称する)は、サービス提供機関が提供する相続支援を受けるため、ユーザ端末20上で相続支援アプリを起動する。
【0086】
ついで、ステップS102では、ユーザは、自身の個人認証情報及び必要な戸籍情報、並びに財産情報を初期登録としてサーバ装置10に送信する。この初期登録は、ユーザがユーザ端末20に入力することに代えて、サービス提供機関がサーバ装置10へ直接入力してもよい。なお、初期登録済の場合は、ステップS102は省略されてよい。
【0087】
ステップS104では、サーバ装置10は、ユーザ端末20から、又は、直接入力された個人認証情報に基づいて、ユーザ(家族構成員)の初期登録を行う。このユーザ登録には、サーバ装置10において発行したユーザID(ユーザアカウント)に対応付けて個人認証情報を個人認証情報記憶部131に記憶すること、個人認証情報に紐付けた戸籍情報と家族構成情報を家族構成情報記憶部132に記憶すること、個人認証情報に紐付けた財産情報を相続財産情報記憶部133に記憶することが含まれる。
【0088】
ステップS106では、ユーザは、家族構成員の変動につながる戸籍の届出として、例えば、出生届、婚姻届、離婚届、死亡届が提出された場合、それらの情報を個人認証情報に紐付けて入力する。これらの戸籍の届出は、ユーザがユーザ端末20に入力することに代えて、サービス提供機関がサーバ装置10へ直接入力してもよい。なお、死亡届の場合、該当者を被相続人とする相続が開始されることとなるが、説明の便宜上、ここでは、相続順位や代襲相続への影響という意味合いで、相続人についての死亡届と捉えているので留意願いたい。被相続人の死亡届による相続開始は、ステップS114として後述する。
【0089】
ステップS108では、サーバ装置10は、戸籍の届出を踏まえ、初期登録されている個人認証情報及び戸籍情報を更新する。
【0090】
ステップS110では、ユーザは、財産について、売買、財産分与、生前贈与、相続等により変動があった場合、それらの情報を個人認証情報に紐付けて入力する。これらの財産の変動は、ユーザがユーザ端末20に入力することに代えて、サービス提供機関がサーバ装置10へ直接入力してもよい。
【0091】
ステップS112では、サーバ装置10は、財産の変動を踏まえ、初期登録されている財産情報を更新する。
【0092】
被相続人の死亡の事実が発生すると「(※)相続開始」となり、死亡届の入力によりステップS114が動作する。死亡届は、ユーザがユーザ端末20に入力することに代えて、サービス提供機関がサーバ装置10へ直接入力してもよい。
【0093】
ステップS114では、「相続開始」を契機として、サーバ装置10は、ユーザ端末20にその旨を通知する。その際、相続開始時点での相続関係図、相続財産(遺産)一覧図を添付する。また、デジタル遺言制度などの進展に応じ、可能であれば、遺言書も併せて添付する。この通知には、相続人が相続を「承認(単純承認/限定承認)」するか「放棄」するかを選択できるボタンを設ける。
【0094】
ステップS116では、ユーザは、相続を「承認(単純承認/限定承認)」するか「放棄」するかを選択する。
【0095】
ステップS118では、相続の「承認(単純承認/限定承認)」、「放棄」に応じて、必要な手続きのサポートを提供する。
【0096】
以上、実施形態について詳述したが、情報処理システム1による相続支援の効果としては、上記したような構成を備えることから、例えば、家族構成や財産状況について、簡単なインターフェースで入力メモを作成し、マイナンバーカード等の個人認証情報と紐付け、また、個人認証情報同士も紐付けることにより、家続構成の関係図を正確かつ容易に作成することが可能となる。そして、配偶者同士が離婚するような家族構成からの離脱がある場合についても、相続に支障を来さないよう記録が残る。また、相続人への情報開示は、その時々の状況に応じて、段階的に行うことも可能となる。
【0097】
また、情報処理システム1は、サービス提供機関として、例えば銀行等が運営できるが、必要に応じて、相続財産清算人、弁護士、司法書士、税理士など、相続に伴う必要な手続きをサポートする者に対して、保存されている情報の提供などに有用に活用することができる。
【0098】
また、情報処理システム1は、家族構成として、同居や、生計を一にする家族など、日常的な家族として認識されている範囲はもちろんのこと、遠方に居住し、日頃の行き来がない、いわゆる遠い親戚についても登録されることから、家族の構成員一人一人に、法定相続人の地位を有する家族がいることを明確に認識してもらうという効用も期待できる。
【0099】
ところで、情報処理システム1は、上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施形態の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。以下に、情報処理システム1の変形例について、説明する。
【0100】
サービス提供機関が公的又は行政サービスの提供機関であるような場合、例えば、サーバ装置10は、公的又は行政サービスを提供している区市町村の役所や、公的又は行政サービスを代行して受け付けている場所に設置され、サービス提供機関の受付け機能を実現してもよい。
【0101】
処理部12及び記憶部13を1つのサーバ装置10に設けているが、サービス提供機関の現実の体制に会うように、処理部12及び記憶部13を分散して、また、処理部12の各部及び記憶部13の各部を分散して配置してもよい。
【0102】
情報処理システム1の活用方法として、例えば、被相続人に係るサブスクリプションがある場合には、その引き落としを停止する機能を付与してもよい。
【0103】
マイナンバーカードに家族構成情報や相続財産情報のすべてを紐付けた場合、それらの情報が家族の外部のみならず内部において漏えいした際のリスクを考慮する必要がある。例えば、いわゆる遠い親戚の構成員が担保設定付の不動産を所有していて借金を放棄してほしい旨の連絡が裁判所から届くなど、遠い親戚の資産や負債が垣間見える場合がある。そこで、マイナンバーカード等の個人認証情報への紐付けは、いつでも紐付けができるように設定しておき、死亡届が提出されて相続が開始されたタイミングで紐付けるようにしてもよい。
【0104】
サービス提供機関が銀行の場合、家族構成員と他の銀行との間の取引状況(預貯金など)を把握することが困難となることも想定されるが、相続支援という共通の役割を担うという観点から、マイナンバーカード等の個人認証情報により、複数の銀行間で、それぞれの取引状況を紐付けることも有用と考えられる。例えば、各銀行にマイナンバーカードの情報を登録しておき、家族がそれを用いて、被相続人の財産を把握できるサービスを提供するというようなものである。
【0105】
情報処理システム1に保存されている情報は、例えば、家族内で定めた代表者や、当該システムの相続支援を依頼した本人は、いつでも登録情報(一元された情報)をチェックできるにようにする一方、他の家族の構成員には、死亡届が提出され相続が開始されたときのみ、情報が開示されるようにしてもよい。また、死亡届受理時に発行される番号と被相続人のマイナンバーなどから生成されるハッシュ値を知っている人のみ、その情報にアクセスできるようにしてもよい。
【0106】
情報処理システム1は、家族構成や相続財産などに関する情報を誰が参照したかを記録する機能を備えてもよい。
【0107】
最後に、情報処理システム1は、直接的に言及していない点も含め、民法の相続編や関連法規に準拠して構成されるものであること、例えば「デジタル遺言制度」などの新たな法制度に応じて必要な変形が可能であること、マイナンバーカードなどの個人認証情報の取り扱いに変更があればその変更を反映することが可能であることなどに留意されたい。
【符号の説明】
【0108】
1 情報処理システム
10 サーバ装置
12 処理部
121 第1登録部
122 第1作成部
123 第1更新部
124 第2登録部
125 第2作成更新部
126 通知部
13 記憶部
131 個人認証情報記憶部
132 家族構成情報記憶部
133 相続財産情報記憶部
20 ユーザ端末
21 通信部
22 処理部
23 入力部
24 表示部
30 ネットワーク