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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042497
(43)【公開日】2025-03-27
(54)【発明の名称】多層管
(51)【国際特許分類】
   B32B 1/08 20060101AFI20250319BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20250319BHJP
   F16L 11/12 20060101ALI20250319BHJP
   F16L 59/147 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
B32B1/08 B
B32B5/18
F16L11/12 Z
F16L59/147
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149555
(22)【出願日】2023-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 裕次郎
【テーマコード(参考)】
3H036
3H111
4F100
【Fターム(参考)】
3H036AA02
3H036AB18
3H036AB25
3H036AC06
3H036AD09
3H036AE01
3H111AA01
3H111BA15
3H111CB04
3H111DA11
3H111DA15
3H111EA04
4F100AA04A
4F100AA04B
4F100AA04C
4F100AA08A
4F100AA08C
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK15A
4F100AK15B
4F100AK15C
4F100AK25A
4F100AK25C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA01B
4F100CA05A
4F100CA05C
4F100CA19A
4F100CA19B
4F100CA19C
4F100DJ01B
4F100EH20
4F100EJ02
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100JJ02
4F100JJ07
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】耐火性を高め、かつ、断熱性を高めることができる多層管を提供する。
【解決手段】本発明に係る多層管は、内層と、前記内層の外側に配置された発泡層と、前記発泡層の外側に配置された外層とを備え、前記内層、前記発泡層、及び前記外層のうちの少なくとも1層が、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含む層である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と、前記内層の外側に配置された発泡層と、前記発泡層の外側に配置された外層とを備え、
前記内層、前記発泡層、及び前記外層のうちの少なくとも1層が、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含む層である、多層管。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、塩化ビニル系樹脂又は塩素化塩化ビニル系樹脂を含む、請求項1に記載の多層管。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂と、前記リン酸金属塩又は前記亜リン酸金属塩とを含む前記層において、前記熱可塑性樹脂の含有量100重量部に対して、前記リン酸金属塩及び前記亜リン酸金属塩の合計の含有量が、0.1重量部以上10重量部以下である、請求項1又は2に記載の多層管。
【請求項4】
前記内層が、前記熱可塑性樹脂と、前記リン酸金属塩又は前記亜リン酸金属塩とを含む、請求項1又は2に記載の多層管。
【請求項5】
前記外層が、前記熱可塑性樹脂と、前記リン酸金属塩又は前記亜リン酸金属塩とを含む、請求項1又は2に記載の多層管。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂と、前記リン酸金属塩又は前記亜リン酸金属塩とを含む前記層が、前記熱可塑性樹脂と、亜リン酸アルミニウムとを含む層である、請求項1又は2に記載の多層管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡層を備える多層管に関する。
【背景技術】
【0002】
空調ドレン用管として、樹脂製の多層管が用いられている。空調ドレン用管は、高い断熱性を有することが要求される。断熱性を高めるために、発泡層を備える多層管が用いられることがある。
【0003】
下記の特許文献1には、内面スキン層と、外面スキン層と、上記内面スキン層及び上記外面スキン層の間に発泡層とを備える塩化ビニル系樹脂発泡管が開示されている。該塩化ビニル系樹脂発泡管は、押出成形により得られる。上記内面スキン層は、0.05mm~0.6mmの厚さを有し、かつ実質的に非発泡構造を有する。上記外面スキン層は、0.2mm~1.5mmの厚さを有し、かつ実質的に非発泡構造を有する。上記塩化ビニル系樹脂発泡管では、発泡層の気泡は、押出方向に平行な方向に実質的に連通していない。特許文献1には、押出方向に垂直な方向の断面における気泡の平均セル径が30μm~150μmであり、発泡層の発泡倍率が2倍~5倍であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-283733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような多層管では、断熱性をある程度高めることができる。
【0006】
しかしながら、従来の多層管では、ISO(International Organization for Standardization)により規定される耐火性を満たすために、上記多層管を設置する際に特別な処理を施す必要があり、コスト面や作業面での負担が大きいという課題がある。
【0007】
多層管の耐火性を高めるために、多層管に耐火性を有する層を設けて、燃焼時には多層管が膨張して多層管の内側を閉塞させることにより、多層管の内部を通じた延焼を防ぐ方法が検討されている。しかしながら、多層管に耐火性を有する層を設けた場合には、断熱層(発泡層)の厚みを薄くせざるを得ず、結果として、耐火性を高めることができても、充分な断熱性が得られなくなることがある。
【0008】
また、多層管の耐火性を高めるために、多層管(特に、発泡層)に膨張黒鉛が配合されることがある。しかしながら、膨張黒鉛自体の熱伝導率が高いことから、膨張黒鉛が配合された場合には、多層管全体の断熱性が低下するという課題がある。
【0009】
従来の多層管では、耐火性を高め、かつ、断熱性を高めることは、困難である。
【0010】
本発明の目的は、耐火性を高め、かつ、断熱性を高めることができる多層管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書において、以下の多層管を開示する。
【0012】
項1.内層と、前記内層の外側に配置された発泡層と、前記発泡層の外側に配置された外層とを備え、前記内層、前記発泡層、及び前記外層のうちの少なくとも1層が、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含む層である、多層管。
【0013】
項2.前記熱可塑性樹脂が、塩化ビニル系樹脂又は塩素化塩化ビニル系樹脂を含む、項1に記載の多層管。
【0014】
項3.前記熱可塑性樹脂と、前記リン酸金属塩又は前記亜リン酸金属塩とを含む前記層において、前記熱可塑性樹脂の含有量100重量部に対して、前記リン酸金属塩及び前記亜リン酸金属塩の合計の含有量が、0.1重量部以上10重量部以下である、項1又は2に記載の多層管。
【0015】
項4.前記内層が、前記熱可塑性樹脂と、前記リン酸金属塩又は前記亜リン酸金属塩とを含む、項1~3のいずれか1項に記載の多層管。
【0016】
項5.前記外層が、前記熱可塑性樹脂と、前記リン酸金属塩又は前記亜リン酸金属塩とを含む、項1~4のいずれか1項に記載の多層管。
【0017】
項6.前記熱可塑性樹脂と、前記リン酸金属塩又は前記亜リン酸金属塩とを含む前記層が、前記熱可塑性樹脂と、亜リン酸アルミニウムとを含む層である、項1~5のいずれか1項に記載の多層管。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る多層管は、内層と、上記内層の外側に配置された発泡層と、上記発泡層の外側に配置された外層とを備え、上記内層、上記発泡層、及び上記外層のうちの少なくとも1層が、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含む層である。本発明に係る多層管では、上記の構成が備えられているので、耐火性を高め、かつ、断熱性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る多層管を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る多層管を製造するために用いられる製造装置を模式的に示す平面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る多層管を製造するために用いられる製造装置を模式的に示す正面図である。
図4図4は、製造装置における金型部分及び管外面成形用チューブ部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明に係る多層管は、内層と、上記内層の外側に配置された発泡層と、上記発泡層の外側に配置された外層とを備える。本発明に係る多層管では、上記内層、上記発泡層、及び上記外層のうちの少なくとも1層が、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含む層(以下、層(X)と記載することがある)である。
【0022】
本発明に係る多層管では、上記の構成が備えられているので、耐火性を高め、かつ、断熱性を高めることができる。
【0023】
上記多層管は、中心から外側に向かって、内層と発泡層と外層とをこの順で備える。上記多層管では、上記発泡層は中間層である。上記内層は、上記発泡層の内側に位置する層である。上記外層は、上記発泡層の外側に位置する層である。上記内層は、単層であってもよく、多層であってもよい。上記内層は、1層であってもよく、2層であってもよく、2層以上であってもよく、3層以上であってもよく、10層以下であってもよい。上記発泡層は、単層であってもよく、多層であってもよい。上記発泡層は、1層であってもよく、2層であってもよく、2層以上であってもよく、3層以上であってもよく、10層以下であってもよい。上記外層は、単層であってもよく、多層であってもよい。上記外層は、1層であってもよく、2層であってもよく、2層以上であってもよく、3層以上であってもよく、10層以下であってもよい。
【0024】
上記内層は、発泡層でなくてもよい。上記内層は、内層を得るための組成物(発泡層の材料以外の組成物)により形成されていることが好ましい。上記外層は、発泡層でなくてもよい。上記外層は、外層を得るための組成物(発泡層の材料以外の組成物)により形成されていることが好ましい。
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。なお、以下の図面において、大きさ、厚み及び形状等は、図示の便宜上、実際の大きさ、厚み及び形状等と異なる場合がある。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る多層管を模式的に示す断面図である。図1には、多層管の径方向に沿う断面図が示されている。
【0027】
図1に示す多層管10は、内層1と、発泡層2と、外層3とを備える。多層管10は、3層構造を有する。内層1の外側に発泡層2が配置されている。発泡層2の外側に外層3が配置されている。発泡層2は、内層1の外表面上に配置されており、積層されている。外層3は、発泡層2の外表面上に配置されており、積層されている。内層1は、単層である。内層1は、最内層であり、表面層である。発泡層2は、単層である。発泡層2は、中間層である。外層3は、単層である。外層3は、最外層であり、表面層である。内層1と、発泡層2と、外層3とはそれぞれ管状である。
【0028】
上記多層管の厚みは、好ましくは3.0mm以上、より好ましくは4.0mm以上、さらに好ましくは5.0mm以上であり、好ましくは30.0mm以下、より好ましくは25.0mm以下、さらに好ましくは20.0mm以下である。上記多層管の厚みが上記下限以上であると、断熱性をより一層高めることができる。上記多層管の厚みが上記上限以下であると、耐火性をより一層高めることができる。
【0029】
上記内層の厚みは、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.2mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上であり、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.5mm以下、さらに好ましくは4.0mm以下である。上記内層の厚みが上記下限以上であると、多層管に十分な量の流体を流すことができる。上記内層の厚みが上記上限以下であると、断熱性をより一層高めることができる。
【0030】
上記発泡層の厚みは、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは3.0mm以上、さらに好ましくは4.0mm以上であり、好ましくは20.0mm以下、より好ましくは18.0mm以下、さらに好ましくは16.0mm以下である。上記発泡層の厚みが上記下限以上であると、断熱性をより一層高めることができる。上記発泡層の厚みが上記上限以下であると、多層管の製造時に内径を均一に成形することができる。
【0031】
上記外層の厚みは、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.3mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上であり、好ましくは7.0mm以下、より好ましくは6.5mm以下、さらに好ましくは6.0mm以下である。上記外層の厚みが上記下限以上であると、断熱性をより一層高めることができる。上記外層の厚みが上記上限以下であると、耐火性をより一層高めることができる。
【0032】
上記発泡層の厚みの、上記外層の厚みに対する比(発泡層の厚み/外層の厚み)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.5以上であり、好ましくは9.0以下、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.5以下、特に好ましくは7.0以下、最も好ましくは5.0以下である。上記比(発泡層の厚み/外層の厚み)が上記下限以上であると、断熱性をより一層高めることができる。上記比(発泡層の厚み/外層の厚み)が上記上限以下であると、耐火性をより一層高めることができる。
【0033】
上記発泡層の厚みの、上記内層の厚みと上記外層の厚みとの合計に対する比(発泡層の厚み/内層の厚みと外層の厚みとの合計)は、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上であり、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.5以下、さらに好ましくは5.0以下である。上記比(発泡層の厚み/内層の厚みと外層の厚みとの合計)が上記下限以上であると、断熱性をより一層高めることができる。上記比(発泡層の厚み/内層の厚みと外層の厚みとの合計)が上記上限以下であると、多層管の製造時に内径を均一に成形することができる。
【0034】
上記多層管の内径は、好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上、さらに好ましくは20mm以上であり、好ましくは100mm以下、より好ましくは90mm以下、さらに好ましくは80mm以下である。上記多層管の内径が上記下限以上であると、多層管に十分な量の流体を流すことができる。上記多層管の内径が上記上限以下であると、断熱性をより一層高めることができる。
【0035】
上記多層管の外径は、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上、さらに好ましくは40mm以上であり、好ましくは120mm以下、より好ましくは110mm以下、さらに好ましくは100mm以下である。上記多層管の外径が上記下限以上であると、多層管の強度を高めることができる。上記多層管の外径が上記上限以下であると、施工性を高めることができる。
【0036】
上記多層管の厚みの、上記外層の厚みに対する比(多層管の厚み/外層の厚み)は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.5以上であり、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.0以下、さらに好ましくは7.0以下である。上記比(多層管の厚み/外層の厚み)が上記下限以上であると、多層管の強度を高めることができる。上記比(多層管の厚み/外層の厚み)が上記上限以下であると、耐火性をより一層高めることができる。
【0037】
上記多層管の厚みの、上記発泡層の厚みに対する比(多層管の厚み/発泡層の厚み)は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.5以上であり、好ましくは10.0以下、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.0以下である。上記比(多層管の厚み/発泡層の厚み)が上記下限以上であると、耐火性をより一層高めることができる。上記比(多層管の厚み/発泡層の厚み)が上記上限以下であると、断熱性をより一層高めることができる。
【0038】
以下、上記内層、上記発泡層及び上記外層に用いられる各材料を説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」との一方又は双方を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」と「メタクリレート」との一方又は双方を意味する。
【0039】
上記多層管では、上記内層、上記発泡層、及び上記外層のうちの少なくとも1層が、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含む層(X)である。上記多層管では、上記内層、上記発泡層、及び上記外層のうちの2層以上が、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含んでいてもよい。上記多層管では、上記内層、上記発泡層、又は上記外層が、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含む。上記多層管では、上記内層が、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含んでいてもよく、上記発泡層が、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含んでいてもよく、上記外層が、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含んでいてもよい。上記多層管では、上記内層及び上記発泡層が、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含んでいてもよく、上記内層及び上記外層が、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含んでいてもよく、上記外層及び上記発泡層が、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含んでいてもよい。上記多層管では、上記内層、上記外層及び上記発泡層が、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含んでいてもよい。
【0040】
耐火性をより一層高める観点からは、上記内層が、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含むことが好ましい。耐火性をより一層高める観点からは、上記外層が、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含むことが好ましい。耐火性をさらに高める観点からは、上記内層及び上記外層がそれぞれ、熱可塑性樹脂と、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩とを含むことが好ましい。耐火性をさらに高める観点からは、上記内層が、熱可塑性樹脂と、亜リン酸金属塩とを含むことが好ましく、上記外層が、熱可塑性樹脂と、亜リン酸金属塩とを含むことが好ましく、上記内層及び上記外層がそれぞれ、熱可塑性樹脂と、亜リン酸金属塩とを含むことが好ましい。
【0041】
<熱可塑性樹脂>
上記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、塩素化塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ハロゲン化ポリオレフィン樹脂、及びエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
耐火性をより一層高める観点からは、上記熱可塑性樹脂は、塩化ビニル系樹脂、又は塩素化塩化ビニル系樹脂を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂は、塩化ビニル系樹脂を含んでいてもよく、塩素化塩化ビニル系樹脂を含んでいてもよく、塩化ビニル系樹脂及び塩素化塩化ビニル系樹脂の双方を含んでいてもよい。
【0043】
耐火性をより一層高める観点からは、上記内層が上記熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。耐火性をより一層高める観点からは、上記発泡層が上記熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。耐火性をより一層高める観点からは、上記外層が上記熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。耐火性をさらに高める観点からは、上記内層、上記発泡層、及び上記外層がそれぞれ、上記熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0044】
上記熱可塑性樹脂を含む層100重量%中、上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0045】
上記熱可塑性樹脂を含む層100重量%中、上記塩化ビニル系樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の合計の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。上記塩化ビニル系樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。なお、上記熱可塑性樹脂を含む層が、上記塩化ビニル系樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の双方を含む場合には、「上記塩化ビニル系樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の合計の含有量」は、上記塩化ビニル系樹脂の含有量と上記塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量との合計を示す。上記熱可塑性樹脂を含む層が、上記塩化ビニル系樹脂を含み、かつ上記塩素化塩化ビニル系樹脂を含まない場合には、「上記塩化ビニル系樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の合計の含有量」は、上記塩化ビニル系樹脂の含有量を示す。上記熱可塑性樹脂を含む層が、上記塩化ビニル系樹脂を含まず、かつ上記塩素化塩化ビニル系樹脂を含む場合には、「上記塩化ビニル系樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の合計の含有量」は、上記塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量を示す。
【0046】
(塩化ビニル系樹脂)
上記塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと塩化ビニル以外の単量体との共重合体、及び塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニル又は塩化ビニル系樹脂がグラフトされたグラフト共重合体等が挙げられる。上記塩化ビニル系樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0047】
上記塩化ビニル以外の単量体としては、炭素数2以上16以下のα-オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、及びブチレン);炭素数2以上16以下の脂肪族カルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニル);炭素数2以上16以下のアルキルビニルエーテル(例えば、ブチルビニルエーテル、及びセチルビニルエーテル);炭素数1以上16以下のアルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、及びブチルアクリレート);アリール(メタ)アクリレート(例えば、フェニルメタクリレート);芳香族ビニル(例えば、スチレン、及びα-置換スチレン(例えば、α-メチルスチレン));ハロゲン化ビニル(例えば、塩化ビニリデン、及びフッ化ビニリデン);及びN-置換マレイミド(N-フェニルマレイミド、及びN-シクロヘキシルマレイミド)等が挙げられる。
【0048】
上記塩化ビニル系樹脂以外の重合体としては、α-オレフィンとビニルエステルとの共重合体(例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体);α-オレフィンとビニルエステルと一酸化炭素との共重合体(例えば、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体);α-オレフィンとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体(例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、及びエチレン-エチルアクリレート共重合体);α-オレフィンとアルキル(メタ)アクリレートと一酸化炭素との共重合体(例えば、エチレン-ブチルアクリレート-一酸化炭素共重合体);異なる2種以上のα-オレフィンの共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体);不飽和ニトリルとジエンとの共重合体(例えば、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体);ポリウレタン;及び塩素化ポリオレフィン(例えば、塩素化ポリエチレン及び塩素化ポリプロピレン)等が挙げられる。
【0049】
上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、好ましくは400以上、より好ましくは600以上であり、好ましくは1600以下、より好ましくは1400以下である。上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度が上記下限以上であると、多層管の耐衝撃性を高めることができる。上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度が上記上限以下であると、多層管を得る際の溶融粘度の上昇を防ぎ、多層管の成形性を高めることができる。
【0050】
上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、以下のようにして測定することができる。塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、ろ過により不要成分を除去した後、ろ液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して、塩化ビニル系樹脂の平均重合度を測定する。
【0051】
上記内層が上記塩化ビニル系樹脂を含む場合には、上記内層100重量%中、上記塩化ビニル系樹脂の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上であり、好ましくは100重量%以下、より好ましくは99重量%以下である。上記塩化ビニル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0052】
上記発泡層が上記塩化ビニル系樹脂を含む場合には、上記発泡層100重量%中、上記塩化ビニル系樹脂の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上であり、好ましくは100重量%以下、より好ましくは99重量%以下である。上記塩化ビニル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0053】
上記外層が上記塩化ビニル系樹脂を含む場合には、上記外層100重量%中、上記塩化ビニル系樹脂の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上であり、好ましくは100重量%以下、より好ましくは99重量%以下である。上記塩化ビニル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0054】
(塩素化塩化ビニル系樹脂)
上記塩素化塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂が塩素化された樹脂である。具体的には、上記塩素化塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体が塩素化された樹脂、及び、塩化ビニル80重量%以上と、塩化ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体が塩素化された樹脂等が挙げられる。上記塩化ビニルと共重合可能な他の単量体としては、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。上記塩素化塩化ビニル系樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記塩化ビニルと共重合可能な他の単量体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0055】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂における塩素含有率は、好ましくは60重量%以上、より好ましくは62重量%以上、さらに好ましくは64重量%以上であり、好ましくは75重量%以下、より好ましくは72重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下である。上記塩素含有率が上記下限以上であると、多層管の耐衝撃性及び耐熱性を高めることができる。上記塩素含有率が上記上限以下であると、多層管の耐衝撃性を高めることができる。
【0056】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、好ましくは400以上、より好ましくは500以上であり、好ましくは1500以下、より好ましくは1000以下、さらに好ましくは800以下である。上記塩素化塩化ビニル系樹脂の平均重合度が上記下限以上であると、多層管の耐衝撃性を高めることができる。上記塩素化塩化ビニル系樹脂の平均重合度が上記上限以下であると、多層管を得る際の溶融粘度の上昇を防ぎ、多層管の成形性を高めることができる。
【0057】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、以下のようにして測定することができる。塩素化塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、ろ過により不要成分を除去した後、ろ液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して、塩素化塩化ビニル系樹脂の平均重合度を測定する。
【0058】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂として、市販品を用いてもよい。上記塩素化塩化ビニル系樹脂の市販品としては、H829、H716S、H727、H527、H516A、H547、H536、及びH305(以上、カネカ社製);HA-15E、HA-05E、HA-15F、HA-24F、HA-22H、HA-36F、HA-05K、HA-24K、HA-24L、HA-31K、HA-54K及びHA-58K(以上、徳山積水工業社製)等が挙げられる。
【0059】
上記内層が上記塩素化塩化ビニル系樹脂を含む場合には、上記内層100重量%中、上記塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上であり、好ましくは100重量%以下、より好ましくは99重量%以下である。上記塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0060】
上記発泡層が上記塩素化塩化ビニル系樹脂を含む場合には、上記発泡層100重量%中、上記塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、より一層好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、最も好ましくは55重量%以上である。上記発泡層が上記塩素化塩化ビニル系樹脂を含む場合には、上記発泡層100重量%中、上記塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量は、好ましくは100重量%以下、より好ましくは99重量%以下である。上記塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0061】
上記外層が上記塩素化塩化ビニル系樹脂を含む場合には、上記外層100重量%中、上記塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上であり、好ましくは100重量%以下、より好ましくは99重量%以下である。上記塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0062】
<アクリル系樹脂>
上記内層、上記発泡層、又は上記外層は、アクリル系樹脂を含んでいてもよい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記内層は、アクリル系樹脂をさらに含むことが好ましい。得られる発泡層の独立気泡率を高め、本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記発泡層は、アクリル系樹脂をさらに含むことが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記外層は、アクリル系樹脂をさらに含むことが好ましい。
【0063】
上記アクリル系樹脂は、特に限定されない。上記アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸アルキルの重合体等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アルキルの重合体は、共重合体であってもよい。上記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸メチルの重合体であってもよい。上記(メタ)アクリル酸メチルの重合体は、重合性性分として(メタ)アクリル酸メチルが少なくとも用いられた重合体である。上記(メタ)アクリル酸メチルの重合体は、(メタ)アクリル酸メチルと、該(メタ)アクリル酸メチルと共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。上記アクリル系樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
上記(メタ)アクリル酸メチルと共重合可能な単量体としては、アルキル基の炭素数が2~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ブチレン、置換スチレン、及び(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸メチルと共重合可能な単量体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
上記アクリル系樹脂として、市販品を用いてもよい。上記アクリル系樹脂の市販品としては、メタブレンP-530A(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
【0066】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記アクリル系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは250万以上、より好ましくは300万以上であり、好ましくは800万以下、より好ましくは600万以下である。
【0067】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記アクリル系樹脂の重量平均分子量は、上記塩化ビニル系樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量よりも大きいことが好ましい。
【0068】
上記アクリル系樹脂の重量平均分子量の、上記塩化ビニル系樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量に対する比を、比(上記アクリル系樹脂の重量平均分子量/上記塩化ビニル系樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量)とする。得られる発泡層の独立気泡率を高め、本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記比(上記アクリル系樹脂の重量平均分子量/上記塩化ビニル系樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量)は、好ましくは1.0を超え、より好ましくは1.1以上である。上記比(上記アクリル系樹脂の重量平均分子量/上記塩化ビニル系樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量)は、5000以下であってもよく、3000以下であってもよい。
【0069】
上記アクリル系樹脂、上記塩化ビニル系樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0070】
上記内層が上記アクリル系樹脂を含む場合には、上記内層100重量%中、上記アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下である。上記アクリル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0071】
上記発泡層が上記アクリル系樹脂を含む場合には、上記発泡層100重量%中、上記アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下である。上記アクリル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、気泡保持力が高くなり、発泡倍率を効果的に高めることができる。
【0072】
上記外層が上記アクリル系樹脂を含む場合には、上記外層100重量%中、上記アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下である。上記アクリル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0073】
上記内層において、上記塩化ビニル系樹脂と上記塩素化塩化ビニル系樹脂との合計100重量部に対して、上記アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは8重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上である。上記内層において、上記塩化ビニル系樹脂と上記塩素化塩化ビニル系樹脂との合計100重量部に対して、上記アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下、さらに好ましくは30重量部以下、特に好ましくは25重量部以下である。上記アクリル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0074】
上記発泡層において、上記塩化ビニル系樹脂と上記塩素化塩化ビニル系樹脂との合計100重量部に対して、上記アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは8重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上である。上記発泡層において、上記塩化ビニル系樹脂と上記塩素化塩化ビニル系樹脂との合計100重量部に対して、上記アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下、さらに好ましくは30重量部以下、特に好ましくは25重量部以下である。上記アクリル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、気泡保持力が高くなり、発泡倍率を効果的に高めることができる。
【0075】
上記外層において、上記塩化ビニル系樹脂と上記塩素化塩化ビニル系樹脂との合計100重量部に対して、上記アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは8重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上である。上記外層において、上記塩化ビニル系樹脂と上記塩素化塩化ビニル系樹脂との合計100重量部に対して、上記アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下、さらに好ましくは30重量部以下、特に好ましくは25重量部以下である。上記アクリル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0076】
<リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩>
上記層(X)は、リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩を含む。上記層(X)は、リン酸金属塩を含んでいてもよく、亜リン酸金属塩を含んでいてもよく、リン酸金属塩及び亜リン酸金属塩の双方を含んでいてもよい。
【0077】
上記リン酸金属塩又は上記亜リン酸金属塩としては、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のアンモニウム塩;リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸一ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム塩;リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、亜リン酸一カリウム、亜リン酸二カリウム、次亜リン酸カリウム等のカリウム塩;リン酸一リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、亜リン酸一リチウム、亜リン酸二リチウム、次亜リン酸リチウム等のリチウム塩;リン酸二水素バリウム、リン酸水素バリウム、リン酸三バリウム、次亜リン酸バリウム等のバリウム塩;リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩;リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、次亜リン酸カルシウム等のカルシウム塩;リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸亜鉛等の亜鉛塩;第一リン酸アルミニウム、第二リン酸アルミニウム、第三リン酸アルミニウム、亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸アルミニウム等のアルミニウム塩等が挙げられる。上記リン酸金属塩又は上記亜リン酸金属塩は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0078】
耐火性をより一層高める観点からは、上記層(X)は、上記熱可塑性樹脂と、亜リン酸金属塩とを含む層であることが好ましく、上記熱可塑性樹脂と、亜リン酸アルミニウムとを含む層であることがより好ましい。耐火性をより一層高める観点からは、上記内層、上記発泡層、及び上記外層のうちの少なくとも1層が、上記熱可塑性樹脂と、亜リン酸金属塩とを含むことが好ましく、上記熱可塑性樹脂と、亜リン酸アルミニウムとを含むことがより好ましい。
【0079】
上記熱可塑性樹脂と、上記リン酸金属塩又は上記亜リン酸金属塩とを含む上記層(X)において、上記熱可塑性樹脂の含有量100重量部に対して、上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の合計の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、さらに好ましくは2重量部以上、特に好ましくは3重量部以上である。上記層(X)において、上記熱可塑性樹脂の含有量100重量部に対して、上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の合計の含有量は、好ましくは10重量部以下、より好ましくは9重量部以下、さらに好ましくは8重量部以下である。上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、耐火性をより一層高めることができる。なお、上記層(X)が、上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の双方を含む場合には、「上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の合計の含有量」は、上記リン酸金属塩の含有量と上記亜リン酸金属塩の含有量との合計を示す。上記層(X)が、上記リン酸金属塩を含み、かつ上記亜リン酸金属塩を含まない場合には、「上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の合計の含有量」は、上記リン酸金属塩の含有量を示す。上記層(X)が、上記リン酸金属塩を含まず、かつ上記亜リン酸金属塩を含む場合には、「上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の合計の含有量」は、上記亜リン酸金属塩の含有量を示す(以下、同様)。
【0080】
上記内層が、上記熱可塑性樹脂と、上記リン酸金属塩又は上記亜リン酸金属塩とを含む場合に、上記内層における上記熱可塑性樹脂の含有量100重量部に対して、上記内層における上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の合計の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上である。この場合に、上記内層における上記熱可塑性樹脂の含有量100重量部に対して、上記内層における上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の合計の含有量は、さらに好ましくは2重量部以上、特に好ましくは3重量部以上である。上記内層が、上記熱可塑性樹脂と、上記リン酸金属塩又は上記亜リン酸金属塩とを含む場合に、上記内層における上記熱可塑性樹脂の含有量100重量部に対して、上記内層における上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の合計の含有量は、好ましくは10重量部以下、より好ましくは9重量部以下、さらに好ましくは8重量部以下である。上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、耐火性をより一層高めることができる。
【0081】
上記発泡層が、上記熱可塑性樹脂と、上記リン酸金属塩又は上記亜リン酸金属塩とを含む場合に、上記発泡層における上記熱可塑性樹脂の含有量100重量部に対して、上記発泡層における上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の合計の含有量は、好ましくは1重量部以上、より好ましくは2重量部以上、さらに好ましくは4重量部以上である。上記発泡層が、上記熱可塑性樹脂と、上記リン酸金属塩又は上記亜リン酸金属塩とを含む場合に、上記発泡層における上記熱可塑性樹脂の含有量100重量部に対して、上記発泡層における上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の合計の含有量は、好ましくは10重量部以下、より好ましくは9重量部以下、さらに好ましくは7重量部以下である。上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、多層管の作製時に発泡層を一定の厚みで成形することができる。
【0082】
上記外層が、上記熱可塑性樹脂と、上記リン酸金属塩又は上記亜リン酸金属塩とを含む場合に、上記外層における上記熱可塑性樹脂の含有量100重量部に対して、上記外層における上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の合計の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上である。この場合に、上記外層における上記熱可塑性樹脂の含有量100重量部に対して、上記外層における上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の合計の含有量は、さらに好ましくは2重量部以上、特に好ましくは3重量部以上である。上記外層が、上記熱可塑性樹脂と、上記リン酸金属塩又は上記亜リン酸金属塩とを含む場合に、上記外層における上記熱可塑性樹脂の含有量100重量部に対して、上記外層における上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の合計の含有量は、好ましくは10重量部以下、より好ましくは9重量部以下、さらに好ましくは8重量部以下である。上記リン酸金属塩及び上記亜リン酸金属塩の合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、耐衝撃性をより一層高めることができる。
【0083】
<化学発泡剤>
上記発泡層の材料は、化学発泡剤を含むことが好ましい。上記発泡層は、化学発泡剤により発泡された発泡体を含むことが好ましい。
【0084】
上記化学発泡剤としては、無機系発泡剤及び有機系発泡剤が挙げられる。上記化学発泡剤は、無機系発泡剤であってもよく、有機系発泡剤であってもよい。上記化学発泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0085】
上記無機系発泡剤としては、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、及びホウ水素化ナトリウム等が挙げられる。上記無機系発泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
上記有機系発泡剤としては、アゾ系発泡剤及びアミン系発泡剤等が挙げられる。上記有機系発泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0087】
上記アゾ系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド及びアゾジカルボン酸バリウム等が挙げられる。
【0088】
上記アミン系発泡剤としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等が挙げられる。
【0089】
本発明の効果を効果的に発揮する観点からは、上記化学発泡剤は、無機系発泡剤であることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記化学発泡剤は、炭酸系発泡剤であることが好ましい。特に、上記化学発泡剤が炭酸系発泡剤であると、高い独立気泡率を有し、成形性に優れ、かつ外観が良好である発泡体を得ることができる。
【0090】
上記炭酸系発泡剤としては、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、及び重炭酸アンモニウム等が挙げられる。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記炭酸系発泡剤は、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、又は重炭酸アンモニウムを含むことが好ましく、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)を含むことがより好ましい。上記炭酸系発泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0091】
上記化学発泡剤として、化学発泡剤が内包成分として熱可塑性樹脂内に内包された熱膨張性カプセルを用いてもよい。
【0092】
上記化学発泡剤は、熱分解型発泡剤であることが好ましい。上記熱分解型発泡剤は、加熱により自己分解してガスを発生させる発泡剤である。上記化学発泡剤は、塩化ビニル系樹脂の軟化点より高い分解温度を有する熱分解型発泡剤であることが好ましい。上記化学発泡剤は、塩素化塩化ビニル系樹脂の軟化点より高い分解温度を有する熱分解型発泡剤であることが好ましい。上記化学発泡剤は、アクリル系樹脂の軟化点より高い分解温度を有する熱分解型発泡剤であることが好ましい。
【0093】
上記化学発泡剤の分解温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。上記化学発泡剤の分解温度が上記下限以上及び上記上限以下であると、発泡層の独立気泡率を高め、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0094】
上記化学発泡剤の分解温度は、例えば、以下のようにして測定することができる。化学発泡剤について、融点測定装置(例えば、ビュッヒ社製「B540」)を用いて、大気中で100℃から5℃/分の昇温条件で加熱し、目視において化学発泡剤の色調の変化が確認された温度を該化学発泡剤の分解温度とする。
【0095】
上記化学発泡剤が発泡したときのガス発生量は、好ましくは130ml/g以上、より好ましくは140ml/g以上、さらに好ましくは150ml/g以上であり、好ましくは220ml/g以下、より好ましくは200ml/g以下、さらに好ましくは180ml/g以下である。上記化学発泡剤が発泡したときのガス発生量が上記下限以上及び上記上限以下であると、独立気泡率を高め、発泡倍率を高めることができるので、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0096】
上記化学発泡剤が発泡したときのガス発生量は、例えば、以下のようにして測定することができる。化学発泡剤1.0gを試験管にとり、該試験管に熱媒体(流動パラフィン)10mLを添加した後、上記試験管とガスビュレットとをゴム管でつなぐ。上記試験管を、100℃のオイルバスに浸し、昇温速度5℃/分の条件で200℃まで加熱する。加熱中に発生したガスをガスビュレットで全て捕集し、化学発泡剤1.0gあたりのガス発生量(mL)を測定する。各温度における総ガス発生量をグラフ化し、ガス発生量が一定になった温度での総ガス発生量を、化学発泡剤が発泡したときのガス発生量とする。
【0097】
上記発泡層(発泡体)の材料100重量%中、上記化学発泡剤の含有量は、好ましくは2.0重量%以上、より好ましくは3.0重量%以上、さらに好ましくは4.0重量%以上であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは13重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。上記化学発泡剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、独立気泡率を高め、発泡倍率を高めることができるので、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0098】
<他の成分>
上記内層、上記発泡層、及び上記外層の材料は、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤としては、充填材、熱安定剤、安定化助剤、滑剤、難燃剤、造核剤、及び顔料等が挙げられる。上記添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0099】
上記充填材としては、無機充填材、及び有機充填材等が挙げられる。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記充填材は、無機充填材であることが好ましい。上記無機充填材としては、タルク、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、クレイ、マイカ、ウォラストナイト、ゼオライト、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、カーボンブラック、グラファイト、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、及び金属繊維等が挙げられる。上記有機充填材としては、ポリアミド等が挙げられる。上記充填材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0100】
上記熱安定剤としては、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート及びジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛及び三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤;カルシウム-亜鉛系安定剤;バリウム-亜鉛系安定剤;バリウム-カドミウム系安定剤等が挙げられる。上記熱安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0101】
上記安定化助剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、及びゼオライト等が挙げられる。上記安定化助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0102】
上記滑剤としては、内部滑剤及び外部滑剤が挙げられる。上記滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0103】
上記内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、及びビスアミド等が挙げられる。上記内部滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0104】
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。上記外部滑剤としては、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、及びモンタン酸ワックス等が挙げられる。上記外部滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0105】
上記難燃剤としては、臭素系難燃剤;リン系難燃剤;ポリリン酸アンモニウム及びメラミンシアヌレート等のイントメッセント系難燃剤;水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム等の水酸化化合物;酸化アンチモン;酸化亜鉛等が挙げられる。上記難燃剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0106】
上記造核剤としては、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、ゼオライト、及びタルク等の無機化合物が挙げられる。
【0107】
<発泡層>
上記発泡層は、化学発泡剤により発泡された発泡体を含むことが好ましく、化学発泡剤により発泡された発泡体であることが好ましい。
【0108】
上記発泡層(発泡体)の比重は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.08以上、さらに好ましくは0.10以上であり、好ましくは0.20以下、より好ましくは0.18以下、さらに好ましくは0.15以下である。上記発泡層の比重が、上記下限以上であると、耐衝撃性をより一層高めることができる。上記発泡層の比重が、上記上限以下であると、断熱性をより一層高めることができる。
【0109】
上記発泡層(発泡体)の比重は、以下のようにして測定することができる。多層管を任意の長さに切断する。切断された多層管から内層及び外層を切削して除去し、発泡層のみにより構成された試験片を得る。得られた試験片の比重を電子比重計で測定し、発泡層の比重とする。
【0110】
上記発泡層の独立気泡率は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。上記発泡層の独立気泡率が上記下限以上であると、多層管の端部から毛細管現象等により発泡層内に水が浸入した場合に、気泡を通じて水が発泡層全体に染み渡るリスクを低くすることができる。そのため、断熱性の低下を抑えることができる。上記発泡層の独立気泡率の上限は、特に限定されない。上記発泡層の独立気泡率は、90%以下であってもよく、80%以下であってもよく、70%以下であってもよい。
【0111】
上記発泡層の独立気泡率は、以下のようにして測定することができる。多層管を任意の長さに切断する。切断された多層管から内層及び外層を切削して除去し、発泡層のみにより構成された試験片を得る。試験片の厚みを測定し、試験片の見掛け体積V1を算出する。さらに、試験片の重量W1を測定する。次に、試験片における気泡の占める体積V2を下記式に基づいて算出する。なお、試験片の密度をρとする。
【0112】
V2=V1-W1/ρ
V1:試験片の見掛け体積(cm
V2:試験片における気泡の占める体積(cm
W1:試験片の重量(g)
ρ:試験片の密度(g/cm
【0113】
次に、試験片を23℃の水中に水面から100mmの深さに沈めて、試験片に所定の圧力を所定時間加える。その後、試験片を水中から取り出し、試験片の表面に付着した水分を除去して、試験片の重量W2を測定する。
【0114】
下記式により、試験片の独立気泡率F1を算出する。
【0115】
F1=100-100×(W2-W1)/V2
F1:試験片の独立気泡率(%)
W1:水に沈める前の試験片の重量(g)
W2:水に沈めた後の試験片の重量(g)
V2:試験片における気泡の占める体積(cm
【0116】
上記独立気泡率の測定に用いる試験片のサイズは、縦50mm×横50mm×厚み5mmであってもよい。
【0117】
上記発泡層の発泡倍率は、好ましくは4倍以上、より好ましくは6倍以上であり、好ましくは30倍以下、より好ましくは25倍以下、さらに好ましくは20倍以下である。上記発泡倍率が上記下限以上であると、断熱性をより一層高めることができる。上記発泡倍率が上記上限以下であると、気泡径を均一にすることができ、また、独立気泡率を高めることができる。独立気泡率が高い場合には、例えば、多層管の端部から毛細管現象等により発泡層内に水が浸入した場合に、気泡を通じて水が発泡層全体に染み渡るリスクを低くすることができる。そのため、断熱性の低下を抑えることができる。
【0118】
上記発泡層の発泡倍率は、以下のようにして測定することができる。多層管を軸方向の長さが50mmになるように切断する。切断された多層管を、周方向に均等に4分割となるように軸方向に沿って切断した後、内層及び外層を切削して除去し、発泡層のみにより構成された長さ50mmの板状体の試験片を4個作製する。水置換式比重測定機を用いて、JIS K7112:1999に準拠して、4個の試験片それぞれの23℃±2℃での見かけ密度を小数点以下3桁まで求める。下記式(1)により、1個の試験片に対する発泡倍率を算出し、4個の試験片の発泡倍率の平均値を発泡層の発泡倍率とする。
【0119】
m=γo/γ ・・・(1)
m:発泡倍率
γ:試験片の見かけ密度(g/cm
γo:発泡層の材料の密度(g/cm
【0120】
発泡層の材料の密度(γo)は、発泡層を形成する前の発泡層の材料の密度であり、未発泡時の密度である。
【0121】
発泡層の材料の密度(γo)は、発泡層の材料が、発泡層中の樹脂以外の他の成分(添加剤)を含む場合に、発泡層中の樹脂の密度から0.1g/cm程度変動することがある。発泡層の材料の密度(γo)として、例えば、化学便覧(応用化学編II 材料編)に記載されている樹脂の密度を用いてもよい。
【0122】
(内層及び外層)
上記内層及び上記外層は、発泡層(発泡体)ではないことが好ましい。上記内層及び上記外層は、非発泡層であることが好ましい。
【0123】
内層及び外層と発泡層との接着性を良好にする観点からは、上記内層及び上記外層は、上記塩化ビニル系樹脂又は上記塩素化塩化ビニル系樹脂を含むことが好ましい。
【0124】
上記内層及び上記外層の材料(内層及び外層を得るための組成物)は、発泡剤を含まないことが好ましい。
【0125】
上記内層及び上記外層の材料(内層及び外層を得るための組成物)は、上述した添加剤を含んでいてもよい。
【0126】
(多層管の製造方法)
図2は、本発明の一実施形態に係る多層管を製造するために用いられる製造装置を模式的に示す平面図である。図3は、本発明の一実施形態に係る多層管を製造するために用いられる製造装置を模式的に示す正面図である。図2,3は、多層管10を製造するための製造装置を模式的に示す図である。
【0127】
製造装置20は、内外層押出機11と、発泡層押出機12と、金型13と、冷却水槽15と、引取機16と、切断機17とを備える。内外層押出機11及び発泡層押出機12に、金型13が接続されている。金型13に冷却水槽15が接続されている。冷却水槽15に引取機16が接続されている。引取機16に切断機17が接続されている。発泡層押出機12にガスボンベ18及び定量ポンプ19が接続されている。
【0128】
内層の材料及び外層の材料をホッパーから入れ、内外層押出機11内で内層の材料及び外層の材料(内層及び外層を得るための組成物)を溶融混練し、金型13に押し出す。
【0129】
発泡層の材料をホッパーから入れ、発泡層押出機12内で発泡層の材料(発泡層を得るための組成物)を溶融混練し、金型13に押し出す。
【0130】
金型13の出口から、3層構造を有する未硬化の多層管が押し出される。
【0131】
冷却水槽15には、未硬化の多層管を所定寸法に成形するための管外面成形用チューブ14が取り付けられており、未硬化の多層管の外面を、管外面成形用チューブ14と接触した状態で冷却する。引取機16は、冷却水槽15で冷却された多層管10を受け取る。切断機17は、引取機16から送られてきた多層管10を所定の長さに切断する。
【0132】
図4は、製造装置における金型部分及び管外面成形用チューブ部分を拡大して示す断面図である。
【0133】
図4に示すように、内外層押出機により溶融混練された内層の材料21及び外層の材料23と、発泡層押出機により溶融混練された発泡層の材料22とを、金型13に注入し、未硬化の多層管10Xを成形する。未硬化の多層管10Xは、未硬化の内層31及び未硬化の外層33と、未硬化の発泡層32とを備える。
【0134】
未硬化の多層管10Xを管外面成形用チューブ14内に挿入し、未硬化の多層管10Xは所定寸法に型成形されながら冷却水槽内で冷却される。
【0135】
次いで、図2,3に示すように、引取機16を用いて、冷却水槽15で冷却された多層管10を引き取り、また、切断機17を用いて、引取機16から送られてきた多層管10を所定の長さに切断する。このようにして、所定の長さを有する多層管10を得る。
【0136】
金型13での加熱温度は、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下である。金型13での加熱時間は、好ましくは10分以上であり、好ましくは30分以下、より好ましくは20分以下である。
【0137】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0138】
以下の材料を用意した。
【0139】
(内層及び外層の材料)
熱可塑性樹脂:
塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業社製「TS-1000R」)
塩素化塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業社製「HA-05K」、塩素含有率67.5重量%、平均重合度500)
リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩:
亜リン酸アルミニウム(亜リン酸金属塩、太平化学産業社製「APA100」)
リン酸一ナトリウム(リン酸金属塩、太平化学産業社製「リン酸一ナトリウム(無水)」)
その他の材料:
トリキシレニルホスフェート(大八化学工業社製「TXP」)
アクリル系樹脂(カネカ社製「カネエースPA-20」)
メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS樹脂)(カネカ社製「B-564」)
有機錫系安定剤(日東化成社製「TVS-8832」)
滑剤(三井化学社製「ハイワックス220MP」)
滑剤(エメリーオレオケミカルズジャパン社製「ロキシオール259」)
炭酸カルシウム(白石工業社製「CCR」)
着色剤(レジノカラー社製)
【0140】
(発泡層の材料)
熱可塑性樹脂:
塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業社製「TS-1000R」)
塩素化塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業社製「HA-05K」、塩素含有率67.5重量%、平均重合度500)
リン酸金属塩又は亜リン酸金属塩:
亜リン酸アルミニウム(太平化学産業社製「APA100」)
リン酸一ナトリウム(リン酸金属塩、太平化学産業社製「リン酸一ナトリウム(無水)」)
その他の材料:
トリキシレニルホスフェート(大八化学工業社製「TXP」)
アクリル系樹脂(カネカ社製「カネエースPA-20」)
発泡剤(炭酸水素ナトリウム、永和化成工業社製「セルボンSC-855」)
有機錫系安定剤(日東化成社製「TVS-8832」)
滑剤(エメリーオレオケミカルズジャパン社製「ロキシオール259」)
着色剤(ヘキサケミカル社製「D-13486」)
【0141】
(実施例1)
内層及び外層の材料の調製:
内容積200リットルのヘンシェルミキサー(カワタ社製)を用いて、以下の成分を撹拌混合して、内層及び外層の材料(内層及び外層を得るための組成物)を得た。塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業社製「TS-1000R」)100重量部。亜リン酸アルミニウム(太平化学産業社製「APA100」)0.1重量部。アクリル系樹脂(カネカ社製「カネエースPA-20」)1重量部。MBS樹脂(カネカ社製「B-564」)1重量部。有機錫系安定剤(日東化成社製「TVS-8832」)1重量部。滑剤(三井化学社製「ハイワックス220MP」)1重量部。滑剤(エメリーオレオケミカルズジャパン社製「ロキシオール259」)1重量部。炭酸カルシウム(白石工業社製「CCR」)1重量部。着色剤(レジノカラー社製)1重量部。
【0142】
発泡層の材料の調製:
内容積200リットルのヘンシェルミキサー(カワタ社製)を用いて、以下の成分を撹拌混合して、発泡層の材料(発泡層を得るための組成物)を得た。塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業社製「TS-1000R」)100重量部。アクリル系樹脂(カネカ社製「カネエースPA-20」)1重量部。発泡剤(永和化成工業社製「セルボンSC-855」)3重量部。有機錫系安定剤(日東化成社製「TVS-8832」)1重量部。滑剤(エメリーオレオケミカルズジャパン社製「ロキシオール259」)1重量部。着色剤(ヘキサケミカル社製「D-13486」)1重量部。
【0143】
多層管の作製:
得られた発泡層、内層及び外層の材料について、上述した方法で、押出速度、押出量、及び押出温度等を調整して、表1に示す各層厚みになるように押出して、多層管を作製した。
【0144】
(実施例2~11及び比較例1~4)
塩化ビニル系樹脂、塩素化塩化ビニル系樹脂、亜リン酸アルミニウム、リン酸一ナトリウム、及びトリキシレニルホスフェートの配合量を表1~4のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、内層、発泡層、及び外層の材料を得た。得られた内層、発泡層、及び外層の材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、多層管を作製した。
【0145】
(評価)
(1)断熱性
得られた多層管4mを、20℃及び80%RHの恒温恒湿環境下に、勾配1/50で設置した。多層管の内部に、7℃の水道水を6L/hの流量で1時間流した後、多層管の下部を手で触り、結露の有無を確認した。断熱性を、以下の基準で判定した。
【0146】
[断熱性の判定基準]
○:結露が生じていない
×:結露が生じている
【0147】
(2)耐火性
(2-1)重量変化率
得られた多層管から、長さ50mmの輪切り状の試験片を切り出した。上記試験片を耐熱性のガラス容器に入れ、電気炉で950℃及び5分間の条件で加熱した後、電気炉から取り出して常温で放冷した。加熱前後の試験片の重量を測定し、下記式で表される重量変化率を算出した。耐火性(重量変化率)を、以下の基準で判定した。
【0148】
重量変化率(%)=(加熱前の試験体の重量-加熱後の試験体の重量)×100/加熱前の試験体の重量
【0149】
[耐火性(重量変化率)の判定基準]
○:重量変化率が87.0%未満
×:重量変化率が87.0%以上
【0150】
(2-2)残渣強度
多層管の外表面から、長さ30mm±1mm、幅30mm±1mm、厚さ3mm±0.1mmの試験片を5つ切り出した。5つの試験片について、各端部に直径1mm程度の貫通孔を空け、針金を通して金属架台に吊るして、電気炉で500℃及び3分間の条件で加熱した後、燃焼残渣を取り出した。加熱後に金属架台から落下していた試験片の個数を数えた。耐火性(残渣強度)を、以下の基準で判定した。
【0151】
[耐火性(残渣強度)の判定基準]
○:落下した試験片が、0個又は1個
×:落下した試験片が、2個以上
【0152】
多層管の構成及び結果を表1~4に示す。
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
【表4】
【符号の説明】
【0157】
1…内層
2…発泡層
3…外層
10…多層管
10X…未硬化の多層管
11…内外層押出機
12…発泡層押出機
13…金型
14…管外面成形用チューブ
15…冷却水槽
16…引取機
17…切断機
18…ガスボンベ
19…定量ポンプ
20…製造装置
21…内層の材料
22…発泡層の材料
23…外層の材料
31…未硬化の内層
32…未硬化の発泡層
33…未硬化の外層
図1
図2
図3
図4