(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004253
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】植物性ミルク含有飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 11/65 20250101AFI20250106BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20250106BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20250106BHJP
A23C 11/10 20250101ALI20250106BHJP
A23L 27/20 20160101ALN20250106BHJP
【FI】
A23L11/65
A23L2/38 D
A23L2/56
A23C11/10
A23L27/20 H
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024181890
(22)【出願日】2024-10-17
(62)【分割の表示】P 2020082371の分割
【原出願日】2020-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】武邑 哲彦
(57)【要約】
【課題】植物性ミルクを含有する飲料、特に、豆乳を含有する飲料における、青臭さを低減し、後味を良くすることである。
【解決手段】本発明は、植物性ミルクと10~800ppbのベンゾチアゾールとを含有する、飲料に関する。本発明の飲料において、前記植物性ミルクが、豆乳を含むことが好ましく、さらに、コーヒー抽出物を含有することがより好ましい。また、前記植物性ミルクは、豆乳、アーモンドミルク、カシューミルク、ココナッツミルク、ライスミルク等から選択されるが、例えば、豆乳、調製豆乳、又は、豆乳飲料を含むことが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性ミルクと10~800ppbのベンゾチアゾールとを含有する、飲料。
【請求項2】
前記植物性ミルクが、豆乳を含む、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
さらに、コーヒー抽出物を含有する、請求項1又は2に記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性ミルク含有飲料に関し、具体的には、青臭さが抑制され、後味が良い植物性ミルク含有飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、多種多様なターゲットに合わせた様々な乳性飲料が開発されている。一方で、乳アレルギーの問題や近年の健康志向や嗜好性の多様化などを背景に、乳性飲料に代わる、新しい植物性ミルク含有飲料の開発も進められている。これまで、豆乳やアーモンドミルク、ココナッツミルクなどの植物性ミルクは、栄養価が高く、特に豆乳などは常温で保存可能な製品も多数販売されている。しかしながら、植物性ミルクを含有する飲料、例えば豆乳などは、保存中に青臭い豆乳臭などが目立ってきて、好ましくない風味が生じるため、青臭さに起因して美味しさが損なわれてしまい、結果として飲みにくくなることが知られていた。このような課題に対し、例えば、香料などを添加することでフルーツの味わいを付与して飲みやすくする工夫がなされているが、植物性ミルク由来の特有のコク味などの味わいも同時に損なわれてしまう可能性がある。
【0003】
そこで、様々な手段で好ましくない上述の青臭さなどをマスキングすることが試みられている。例えば、特許文献1には、柑橘類(代表的には、レモン)のセスキテルペンを含む抽出物を含有する組成物によって豆乳臭がマスキングされることを利用した、豆乳臭のマスキング用組成物に関する技術が記載されている。また、特許文献2には、香料等の副原料を使用せずに豆乳固有の不快臭、特に青臭みがマスキングされた豆乳に関する技術が記載されており、具体的には、メチルピラジン類を1L当たり40~7000μg含む、豆乳が開示されている。
【0004】
一方で、食品業界において、ベンゾチアゾールは、飲料やキャンディー、焼き菓子、肉製品、スープ、乳製品などに0.5ppm程度使用され、また、ビールやココアなどに含まれることが知られている。また、一般に、ベンゾチアゾールは、アプリコット、調理したアスパラガス、モッツァレラチーズ、スキムミルク、ローストビーフ、ビール、ウイスキー、ココナッツ、マンゴー、調理したブロッコリー、昆布などに天然に含まれることも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-105011号公報
【特許文献2】特開2017-169481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、植物性ミルクを含有する飲料(植物性ミルク含有飲料とも呼ぶ)、特に、豆乳を含有する飲料における、青臭さを低減し、後味を良くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、植物性ミルク含有飲料の風味低下を抑制できるフレーバー等や風味低下抑制するための新しい手段等について鋭意検討するなかで、予想外にも、植物性ミルク、特に豆乳には通常含まれないベンゾチアゾール(推定値として6ppb以下である。)を、一定の量で植物性ミルクに含有させることで、植物性ミルク含有飲料の青臭さを抑制し、風味をより良くできることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の態様を含むものである。
〔1〕植物性ミルクと10~800ppbのベンゾチアゾールとを含有する、飲料。
〔2〕前記植物性ミルクが、豆乳を含む、前記〔1〕に記載の飲料。
〔3〕さらに、コーヒー抽出物を含有する、前記〔1〕又は〔2〕に記載の飲料。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、青臭さが抑制され、後味が良い植物性ミルク含有飲料、及びこのような植物性ミルク含有飲料を提供するための手段を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、植物性ミルクと10~800ppbのベンゾチアゾールとを含有する、植物性ミルク含有飲料に関する。本発明に係る植物性ミルク含有飲料は、10~800ppbのベンゾチアゾールを含有することで、青臭さが抑制され、風味、特に後味が良くなる。なお、本発明における「植物性ミルク含有飲料の風味が良くなる」との意味には、具体的に、後味以外に、コク味が増し、全体的に嗜好性が上がることなども含む。このベンゾチアゾールによる効果の理由の一つには、ベンゾチアゾールが単独で、植物性ミルク含有飲料において青臭さに寄与するヘキサナールなどの風味をマスキングできることが考えられる。そして、本発明に係る植物性ミルク含有飲料において、ベンゾチアゾール濃度が10ppb未満である場合には、青臭さの抑制効果が得られない恐れがあり、800ppbより多い場合には、香味のバランスを崩し嗜好性が低下する恐れがある。
【0010】
また、本発明の飲料においては、50~500ppbのベンゾチアゾールを含有することがより好ましく、100~300ppbのベンゾチアゾールを含有することが特に好ましい。10ppb以上のベンゾチアゾールを植物性ミルク含有飲料に含有させるためには、ベンゾチアゾールを適宜添加することで、ベンゾチアゾール濃度を調整し、本発明に係る植物性ミルク含有飲料を得ることができる。
【0011】
本発明の植物性ミルク含有飲料に、市販品のベンゾチアゾール(香料等)や、ベンゾチアゾールを含む香料組成物等を植物性ミルク含有飲料に配合して、そのベンゾチアゾール濃度を調整してもよいし、既知濃度のベンゾチアゾールを含有する飲食品、例えばコーヒーやココア、茶等を配合して、そのベンゾチアゾール濃度を調整してもよい。なお、植物性ミルク含有飲料におけるベンゾチアゾールの濃度が未知である場合においては、例えば、本実施例に記載の方法によって、ゲステル社製MPSを用いるMVM(Multi Volatile Method)法により、GC/MS測定に供し、本実施例に記載した条件で測定することができる。
【0012】
また、本発明の植物性ミルク含有飲料において、植物性ミルク由来の固形分濃度は、良好な風味とする理由から、0.3質量%~5.5質量%であることが好ましく、0.5質量%~4.0質量%であることがより好ましく、0.5質量%~2.5質量%であることがさらに好ましい。なお、飲料中の植物性ミルク由来の固形分濃度は、当該植物性ミルク含有飲料の製造に用いられる原材料に基づいて算出に従い決定することができる。
【0013】
また、本発明に係る植物性ミルク含有飲料において、含有する植物性ミルクは、豆乳、アーモンドミルク、カシューミルク、ココナッツミルク、ライスミルク等から選択されるが、例えば、平成30年3月29日農林水産省告示第683号に記載される豆乳、調製豆乳、又は豆乳飲料を含むことが好ましい。また、植物性ミルクは、液状体のほか、粉末体のものを用いてもよい。より具体的には、本発明に係る植物性ミルク含有飲料は原料として、例えば豆乳粉末を混合したものであってもよい。また、本発明に係る植物性ミルク含有飲料においては、植物性ミルク由来の固形分は、大豆固形分であることが好ましい。当該大豆固形分は、植物性ミルクとして豆乳を含む飲料の製造に用いられる原材料に基づいて算出に従い決定することができる。また、本発明に係る植物性ミルク含有飲料において、大豆固形分濃度(質量%):ベンゾチアゾール濃度(ppb)の比率が、0.5~50:4.0~500であることが好ましく、0.5~50:2.5~300であることがより好ましい。
【0014】
また、本発明に係る植物性ミルク含有飲料は、pHがほぼ中性であることが好ましく、例えば4.6~8.0であることが好ましく、6.0~7.5であることが特に好ましい。これは植物性ミルクに含まれるタンパク質等の安定性と、良好な風味の理由からである。
【0015】
本発明に係る植物性ミルク含有飲料の糖度は、ブリックス(Brix又はBxとも表記する)値と同義とする。すなわち、本発明において糖度は、20℃における糖用屈折計の示度とし、例えば、商品名「デジタル屈折計Rx‐5000」(アタゴ社製)を使用して20℃で測定した固形分量とすることができる。当該糖度は、特に限定されないが、3~12°Bxであることが好ましく、5~10°Bxであることがより好ましい。
本発明に係る植物性ミルク含有飲料の糖度は、公知の甘味料を使用することで上記の値に調整することができる。たとえば、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、果糖、乳糖、及び麦芽糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖等の糖類;キシリトール、D-ソルビトール等の低甘味度甘味料;タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、及びサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料を単独で、又は適宜2種類以上を組み合わせて調整することが好ましく、ショ糖や果糖ぶどう糖液糖、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテームで調整することが植物性ミルク含有飲料に求められる自然な甘みや爽やかな酸味といった嗜好性の観点から特に好ましい。
【0016】
また、本発明に係る植物性ミルク含有飲料は、植物性ミルクの乳化状態を良好に保持する点において、乳化剤を含有することが好ましい。乳化剤としては、食品や飲料に用いられうるものであれば、特に制限無く使用できるが、例えば、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム、レシチン等が挙げられる。乳化剤は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用しても良い。
当該植物性ミルク含有飲料への乳化剤の配合割合は、その種類等に応じて本発明の効果を損なわない範囲で適宜決定できる。該配合割合は、特に制限されないが、例えば、飲料の全質量を基準として、その下限は通常0.0001質量%であり、その上限は通常0.1質量%とすることができる。
【0017】
また、必要に応じて、当該植物性ミルク含有飲料に、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウムなどのミネラルを含有させることによって、当該飲料の味を調整してもよい。
本発明に用いる水は特に限定されず、例えば、イオン交換水を用いることができる。
【0018】
ここで、本発明における飲料は、さらに、コーヒー抽出物を含有することが好ましい。本発明におけるコーヒー抽出物とは、コーヒー豆由来の成分を含有する液体、例えば、粉砕した焙煎豆を水や温水を用いて抽出した溶液(以下、抽出液ともいう)、又は、該溶液を濃縮したコーヒーエキスや該溶液を乾燥させたインスタントコーヒーを含む。
【0019】
本発明において使用されるコーヒー抽出物の原料であるコーヒー豆は、アラビカ種でもロブスタ種でもよく、特に限定されない。例えば、当該生豆としては、メキシコ、グアテマラ、ブルーマウンテン、クリスタルマウンテン、コスタリカ、コロンビア、ベネズエラ、ブラジル・サントス、ハワイ・コナ、モカ、ケニア、キリマンジャロ、マンデリン、及びロブスタから選択される豆、又はこれらの混合豆が挙げられる。
【0020】
また、本発明で用いられるコーヒー抽出物は、抽出液である場合には、コーヒー豆1~100g、より好ましくは5~50gに対して1Lの水で抽出されるのが好ましく、抽出時の水は、60~95℃であることが好ましい。また、当該コーヒー抽出液の抽出時間は30~120分間であることが好ましい。本発明のコーヒー抽出液の抽出方法は特に限定されず、例えば一般的なドリップ法や浸漬法、エスプレッソ法などで抽出されうる。
ここで、本発明の植物性ミルク含有飲料においては、コーヒー抽出物由来の可溶性固形分濃度が、0.03~3.3質量%。より好ましくは、0.15~1.7質量%であることが好ましい。例えば、コーヒー抽出液の可溶性固形分濃度は、コーヒー抽出液のBrix(ブリックス)値と同義とすることもできる。また、コーヒー抽出物として、インスタントコーヒーを用いる場合には、当該可溶性固形分は、インスタントコーヒーの含有量に対応する。
【0021】
本発明に係る植物性ミルク含有飲料として好ましい一態様は、限定はされないが、例えば、ベンゾチアゾールを50~500ppb含有し、pHが4.6~8.0であり、大豆固形分濃度が0.5質量%以上4.0質量%未満であり、コーヒー抽出物を0.03~3.3質量%の可溶性固形分濃度で含有する、豆乳含有飲料が挙げられる。
【0022】
また、本発明に係る植物性ミルク含有飲料は、動物性乳成分をさらに含んでいてもよい。当該動物性乳成分は、例えば、獣乳及び植物乳いずれかの原料乳の由来のものであってもよい。獣乳としては、例えば、牛乳、山羊乳、羊乳及び馬乳等が挙げられる。乳成分の形態としては、例えば、全脂乳、脱脂乳、乳清、乳たんぱく濃縮物、バターミルク粉、無糖練乳、脱脂加糖練乳、全脂加糖練乳、生クリーム、及び発酵乳が挙げられる。また、粉乳や濃縮乳から還元した乳も使用できる。なかでも、脱脂乳が好ましく、ハンドリングのよさから脱脂粉乳を用いることが特に好ましい。また、乳成分は、単一種類の原料由来であっても、数の種類の原料由来であってもよい。
また、本発明の植物性ミルク含有飲料に対して、風味等を損なわない範囲で、必要に応じて任意の酸性成分として、果汁、例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等の柑橘系の果汁や、ブドウ、モモ、リンゴ、バナナ等の果汁を添加してもよい。
【0023】
また、本発明に係る植物性ミルク含有飲料は、原料(豆乳など)を乳酸菌や酵母等を用いて発酵して得られる、液状又は糊状の発酵豆乳飲食品等を含むものであってもよい。
また、本発明に係る植物性ミルク含有飲料は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、一般的に使用されうる、上述していない甘味料や香料、各種栄養成分、各種植物抽出物、着色料、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を含有させてもよい。
本発明の植物性ミルク含有飲料は、植物性ミルク入りの飲料であれば特に限定されないが、例えば、無調整豆乳、調製豆乳、豆乳飲料、清涼飲料水、コーヒー飲料、紅茶飲料、茶系飲料、果実飲料、スポーツ飲料、健康飲料又はアルコール飲料等が挙げられる。
【0024】
本発明に係る植物性ミルク含有飲料は、豆乳や上述したベンゾチアゾール、甘味料や香料、各種栄養成分、各種植物抽出物、着色料、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を適宜混合することで得られる。本発明の植物性ミルク含有飲料においては、その製造工程において、適宜必要に応じて、均質化処理や殺菌処理を加えて行なうことができる。
均質化処理は、通常、ホモゲナイザーを用いて行うことができる。均質化条件は特に限定されず、常法に従うことができる。
殺菌処理の方法は特に制限されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等の方法を採用することができる。
殺菌処理後の本発明の植物性ミルク含有飲料を容器に充填する方法としては、例えば、飲料を容器にホットパック充填し、充填した容器を冷却する方法、又は容器充填に適した温度まで飲料を冷却して、予め洗浄殺菌した容器に無菌充填する方法により行うことができる。
【0025】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものでなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更させてもよい。
【実施例0026】
各成分の含有値の分析値又は計算値を得るための方法、及び官能評価方法については、以下の通りとした。
≪1 大豆固形分(質量%)≫
大豆固形分は、各サンプル製造に用いられる原材料の表示値と各サンプルの糖度(Bx(°))測定値とに基づいて算出した値とした。
【0027】
≪2 香気成分(ベンゾチアゾール(ppb)≫
本実施例においては、ベンゾチアゾールの含有量は、各飲料サンプル製造に用いられる原材料に基づいて算出した。なお、ベンゾチアゾール濃度が未知である飲料においては、飲料中のベンゾチアゾールの濃度(ppb)について、ゲステル社製MPSを用いるMVM(Multi Volatile Method)法により、GC/MS測定に供し、以下に示す条件で測定できる。
装置:GC:Agilent Technologies社製 7890B
MS:Agilent Technologies社製 5977B MSD
HS:Gerstel社製MPS,
TUBE:Tenax TA、CarbopackB/X
カラム:DB-WAX UI 0.25mm×30m×0.25μm
定量イオン:ベンゾチアゾール m/z=135
温度条件:40℃(2分)~8℃/分→240℃(10分)
キャリアガス流量:He 1ml/分
注入法:スプリットレス
イオン源温度:230℃
【0028】
≪3 糖度(Bx°)≫
糖度測定は20℃のサンプルに対して、商品名「デジタル屈折計Rx‐5000」(アタゴ社製)を用いて、測定を行った。
≪4 pH≫
pHは、pHメーター計を用いて、測定を行った。
【0029】
≪5 官能評価方法≫
官能評価は、専門パネリストによって、4℃のサンプルに対し、各実験系の「対照」を基準点である「4」とした分量評定法を用いて行われた。評価項目は、青臭さ(強弱)、後味の良さ、及びおいしさ(総合評価)とし、それぞれ7段階で評価し、その評点を平均化した。なお、各パネリストの評点にばらつきはあまりなかった。官能評価基準は、下記表1に示したものに従った。また、青臭さが4点未満で、後味の良さが4点を超えたものを効果ありとして判断した。なお、下記表2の官能評価の結果は、8名の専門パネリストの評点の平均値であり、下記表3の官能評価の結果は、6名の専門パネリストの評点の平均値である。
【0030】
【0031】
[実施例1~4及び比較例1]
無調整豆乳(大豆固形分8質量%)、グラニュー糖、インスタントコーヒー、及び、脱イオン水を混合して、120.0g/Lの無調整豆乳と、50.0g/Lのグラニュー糖と、3.00g/Lのインスタントコーヒー(1Lあたりコーヒー生豆換算で9gのコーヒー豆から抽出したコーヒー分に相当する)を含む対照サンプルを作製した。
対照サンプルに、ベンゾチアゾール標準液(1000ppm)を所定量添加することで、ベンゾチアゾール濃度がそれぞれ10ppb、100ppb、500ppb、及び、800ppbである実施例1~4の飲料サンプルを作製した。
当該対照サンプルを比較例1(対照)とし、比較例1のサンプルを基準点4に設定して評価した。
各サンプルにおける各成分の含有量(濃度)、及び分析値、並びに官能評価結果を表2に示す。なお、比較例1(無調整豆乳)には、ベンゾチアゾールが含まれていないことは、予め確認している。
【0032】
【0033】
表2の結果から、ベンゾチアゾール10~800ppbの範囲において「青臭さの低減」及び「後味の良さの向上」が認められ、総合的な「おいしさ」も良好な結果が得られることが確認できた。
【0034】
[実施例5及び比較例2]
調製豆乳粉末(大豆固形分85質量%)、豆乳クリーム(大豆固形分18質量%)、グラニュー糖、インスタントコーヒー、及び、脱イオン水を混合して、10.0g/Lの調製豆乳粉末と、5.00g/Lの豆乳クリームと、50.0g/Lのグラニュー糖と、3.00g/Lのインスタントコーヒー(1Lあたりコーヒー生豆換算で9gのコーヒー豆から抽出したコーヒー分に相当する)を含む対照サンプルを作製した。
この対照サンプルに、ベンゾチアゾール標準液(1000ppm)を所定量添加することで、ベンゾチアゾール濃度が100ppbである実施例5の飲料サンプルを作製した。
当該対照サンプルを比較例2(対照)とし、比較例2のサンプルを基準点4に設定して評価した。
各サンプルにおける各成分の含有量(濃度)、及び分析値、並びに官能評価結果を表3に示す。なお、比較例2の処方中にベンゾチアゾールが含まれていないことは、予め確認している。
【0035】
【0036】
表3の結果に示されるように、植物性ミルクの原料を無調整豆乳から豆乳粉末及び豆乳クリームへ変更した場合にも、同様に、「青臭さの低減」及び「後味の良さの向上」が認められ、総合的な「おいしさ」も良好な結果が得られた。