(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042531
(43)【公開日】2025-03-27
(54)【発明の名称】塗装ブース用空調システム
(51)【国際特許分類】
B05B 16/60 20180101AFI20250319BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20250319BHJP
F24F 11/875 20180101ALI20250319BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20250319BHJP
F24F 3/14 20060101ALI20250319BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20250319BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20250319BHJP
B05C 15/00 20060101ALI20250319BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20250319BHJP
F24F 110/22 20180101ALN20250319BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20250319BHJP
【FI】
B05B16/60
F24F11/64
F24F11/875
F24F7/06 R
F24F3/14
F24F11/70
B05C11/10
B05C15/00
B05C11/00
F24F110:22
F24F110:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149609
(22)【出願日】2023-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】平島 利男
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】児島 吉宏
(72)【発明者】
【氏名】井守 正隆
(72)【発明者】
【氏名】谷野 正幸
(72)【発明者】
【氏名】川上 理亮
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 美志
(72)【発明者】
【氏名】大山 政孝
【テーマコード(参考)】
3L053
3L058
3L260
4D073
4F042
【Fターム(参考)】
3L053BB01
3L053BC03
3L058BE02
3L260AA05
3L260BA41
3L260CA32
3L260CA33
3L260CB52
3L260CB71
3L260CB81
3L260EA07
3L260FA07
3L260FC02
4D073AA01
4D073BB03
4D073DD12
4D073DD15
4D073DD19
4D073DD20
4D073DD22
4F042AA09
4F042BA13
4F042BA19
4F042BA20
4F042DE01
4F042DE07
4F042DE09
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】夏期の空調に要するエネルギーを低減することができる塗装ブース用空調システムを提供する。
【解決手段】塗装ブース用空調システム11は、塗装ブース用空調機21、除湿空気生成装置31、制御装置15を備える。塗装ブース用空調機21は、外気の温湿度を調整するワッシャ23を含み、空調空気を塗装ブース1へ送気する。除湿空気生成装置31は、外気を取り込んで除湿する蓄熱式除湿槽32A、32Bを有し、除湿空気を塗装ブース用空調機21の外気導入口21aに供給する。制御装置15は、塗装ブース用空調機21及び除湿空気生成装置31の動作を制御する。制御装置15は、所定の条件下、外気に除湿空気を混合して外気導入口21aから導入し、導入された外気をワッシャ23による冷却加湿を行って目標温湿度に近づける制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気導入口から導入した外気の温湿度を調整するワッシャを少なくとも含み、空調空気を塗装ブースへ送気する塗装ブース用空調機と、
外気を取り込んで除湿する蓄熱式除湿槽を有し、除湿空気を前記塗装ブース用空調機の前記外気導入口に供給する除湿空気生成装置と、
前記塗装ブース用空調機及び前記除湿空気生成装置の動作を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、所定の条件下において、外気に前記除湿空気を混合して前記外気導入口から導入するとともに、導入された外気を前記ワッシャによる冷却加湿を行って目標温湿度に近づける制御を行う
ことを特徴とする塗装ブース用空調システム。
【請求項2】
前記除湿空気生成装置は、前記蓄熱式除湿槽から排出される前記除湿空気を、外気を利用して除熱してから前記外気導入口に供給する熱交換手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の塗装ブース用空調システム。
【請求項3】
前記蓄熱式除湿槽は、槽内に収容された除湿ユニットを交換可能とする機構を有し、
前記制御装置は、
前記除湿空気を前記外気導入口に供給する直前の位置に設けた温湿度センサの計測値、または前記蓄熱式除湿槽の稼働時間の計測値に基づいて、前記蓄熱式除湿槽の除湿能力を判定し、
前記除湿能力が所定値以下になったと判定したときには、前記除湿ユニットの交換を指示する
ことを特徴とする請求項2に記載の塗装ブース用空調システム。
【請求項4】
前記除湿空気生成装置は、複数の前記蓄熱式除湿槽と、複数の前記蓄熱式除湿槽からの前記除湿空気を前記外気導入口に供給する複数の供給経路と、前記複数の供給経路を切り換える経路切換機構と、を有し、
前記制御装置は、
前記除湿空気を前記外気導入口に供給する直前の位置に設けた温湿度センサの計測値に基づいて、使用中の前記蓄熱式除湿槽の除湿能力を判定し、
使用中の前記蓄熱式除湿槽の前記除湿能力が所定値以下になったと判定したときには、前記経路切換機構を作動させて前記供給経路を切り換えることにより、他の前記蓄熱式除湿槽から前記除湿空気を前記塗装ブース用空調機の前記外気導入口に供給させる
ことを特徴とする請求項2に記載の塗装ブース用空調システム。
【請求項5】
前記除湿空気生成装置の前記熱交換手段は、外気と前記除湿空気との間で熱交換を行うことで前記除湿空気を除熱する気気熱交換器と、前記気気熱交換器に外気を送る除熱ファンとを含み、
前記制御装置は、
前記除湿空気を前記外気導入口に供給する直前の位置に設けた第1の温湿度センサの計測値と、前記塗装ブース用空調機の前記外気導入口に設けた第2の温湿度センサの計測値とに基づいて、前記塗装ブース用空調機が取り込む外気に混合する前記除湿空気の温度を調整するべく、前記除熱ファンの風量を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の塗装ブース用空調システム。
【請求項6】
前記塗装ブース用空調機は、外気を冷却するクーリングコイルと、外気を加熱するレヒータとを含み、
前記除湿空気生成装置は、前記蓄熱式除湿槽に外気を取り込むとともに、前記蓄熱式除湿槽にて生成した前記除湿空気を前記塗装ブース用空調機の前記外気導入口に圧送する除湿送気ファンを有し、
前記制御装置は、
前記除湿空気を前記外気導入口に供給する直前の位置に設けた第1の温湿度センサ及び風量センサの計測値に基づいて、前記クーリングコイル及び前記レヒータを作動させないエンタルピーになるように前記除湿空気の混合量を計算し、その混合量となるように前記除湿送気ファンの風量を制御する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の塗装ブース用空調システム。
【請求項7】
工場廃熱を含む流体と外気との間で熱交換を行うことで加温外気を得る熱交換器を含み、
前記制御装置は、
前記蓄熱式除湿槽の前記除湿能力が所定値以下になったと判定したときに、前記工場廃熱を利用して得た前記加温外気を前記蓄熱式除湿槽に供給して、前記除湿能力を回復させる制御を行う
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の塗装ブース用空調システム。
【請求項8】
工場廃熱を含む流体と外気との間で熱交換を行うことで加温外気を得る熱交換器を含み、
前記制御装置は、
所定の条件下において、前記工場廃熱を利用して得た前記加温外気を外気に混合して、前記外気導入口から導入する制御を行う
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の塗装ブース用空調システム。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記目標温湿度に対して外気のエンタルピーが高い場合には、
前記蓄熱式除湿槽からの前記除湿空気を用いて除湿加熱を行うように、前記除湿空気生成装置を制御するとともに、
目標湿度になるまで前記ワッシャのみによる冷却加湿を行うように、前記ワッシャを制御する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の塗装ブース用空調システム。
【請求項10】
前記制御装置は、
前記目標温湿度に対して外気のエンタルピーが低くかつ絶対湿度が相対的に高い場合には、
前記蓄熱式除湿槽からの前記除湿空気が、空気線図上で送気の設定絶対湿度になるように、前記蓄熱式除湿槽から前記除湿空気を圧送する前記除湿送気ファンの風量を制御するとともに、
前記除熱空気の除熱温度が目標温度になるところまで、前記除熱ファンの風量を制御する
ことを特徴とする請求項6に記載の塗装ブース用空調システム。
【請求項11】
前記制御装置は、
前記目標温湿度に対して外気のエンタルピーが低くかつ絶対湿度が相対的に低い場合には、
前記塗装ブース用空調機の前記レヒータの使用を最小限に抑えて前記目標温湿度になるように、前記工場廃熱を利用して得た前記加温外気を外気に混合して、前記外気導入口から導入する制御を行う
ことを特徴とする請求項8に記載の塗装ブース用空調システム。
【請求項12】
前記除湿空気生成装置は、工場廃熱を含む流体と外気との間で熱交換を行うことで加温外気を得る熱交換器を含み、
前記制御装置は、
前記塗装ブース用空調機の動作開始時刻の情報に基づいて、複数ある前記蓄熱式除湿槽の少なくとも1つに対して前記動作開始時刻よりも前から前記加温外気を供給し、あらかじめ前記除湿能力を回復させておく制御を行う
ことを特徴とする請求項4に記載の塗装ブース用空調システム。
【請求項13】
前記除湿空気生成装置は、工場廃熱を含む流体と外気との間で熱交換を行うことで加温外気を得る熱交換器を含み、
前記制御装置は、
複数ある前記蓄熱式除湿槽の1つを使用して前記除湿空気を前記塗装ブース用空調機の前記外気導入口に供給している際、使用していない他の前記蓄熱式除湿槽に対して前記加温外気を供給し、他の前記蓄熱式除湿槽の前記除湿能力を回復させる制御を行う
ことを特徴とする請求項4に記載の塗装ブース用空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ブース用空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に塗装設備は、自動車ボディ等の被塗物に塗料を塗布する塗装ブースや、塗装ブースを通過した被塗物上の塗料を乾燥させる乾燥炉などの装置を備えている。このような塗装設備では、塗装ブース用空調機によって温湿度を調整した空気を塗装ブース内に送気し、塗装を行っている。また、塗装ブース用空調機は、プレヒータ、ワッシャ、クーリングコイル、レヒータ、送風ファンなどの機器で構成されており、これらの機器を組み合わせて動作させることで、空調空気が目標とする温湿度となるように制御を行っている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の塗装ブースの空調において、夏期のように外気が設定温湿度よりも高温・高絶対湿度であるときには、ワッシャで冷却及び加湿し、クーリングコイルで除湿及び冷却し、レヒータ等で加熱する温湿度制御を通常行っている(
図2の空気線図におけるr1~r4を参照)。
【0005】
しかしながら、このような温湿度制御では、クーリングコイル及びレヒータを動作させる必要があるため、これらの機器の負荷が大きく、とりわけクーリングコイルの負荷が大きいという問題があった。そのため、空調に要する冷却エネルギーや加熱エネルギーを低減することができず、空調に要するコストを抑えることが難しかった。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、夏期の空調に要するエネルギーを低減することができる塗装ブース用空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、外気導入口から導入した外気の温湿度を調整するワッシャを少なくとも含み、空調空気を塗装ブースへ送気する塗装ブース用空調機と、外気を取り込んで除湿する蓄熱式除湿槽を有し、除湿空気を前記塗装ブース用空調機の前記外気導入口に供給する除湿空気生成装置と、前記塗装ブース用空調機及び前記除湿空気生成装置の動作を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、所定の条件下において、外気に前記除湿空気を混合して前記外気導入口から導入するとともに、導入された外気を前記ワッシャによる冷却加湿を行って目標温湿度に近づける制御を行うことを特徴とする塗装ブース用空調システムをその要旨とする。
【0008】
従って、手段1に記載の発明によれば、除湿空気生成装置の蓄熱式除湿槽が生成した除湿空気を、外気と混合して塗装ブース用空調機の外気導入口に導入することにより、高温・高絶対湿度の外気が一旦除湿及び加熱される。そして、除湿及び加熱された外気は、さらにワッシャで冷却及び加湿される。よって、クーリングコイルによる除湿及び冷却やレヒータ等による加熱に依存することなく、主としてワッシャで目標温湿度に近づけることが可能となる。このため、クーリングコイルやレヒータ等の負担を減らすことができ、夏期の空調に要するエネルギーを低減することができる。
【0009】
手段2に記載の発明は、手段1において、前記除湿空気生成装置は、前記蓄熱式除湿槽から排出される前記除湿空気を、外気を利用して除熱してから前記外気導入口に供給する熱交換手段を含むことをその要旨とする。従って、手段2に記載の発明によれば、除熱された除湿空気を外気と混合して導入することにより、高温・高絶対湿度の外気が除湿及び加熱される。その結果、除湿及び加熱過程での外気の温度上昇量が小さくなり、冷却及び加湿を行うワッシャの負荷を減らすことができる。
【0010】
手段3に記載の発明は、手段2において、前記蓄熱式除湿槽は、槽内に収容された除湿ユニットを交換可能とする機構を有し、前記制御装置は、前記除湿空気を前記外気導入口に供給する直前の位置に設けた温湿度センサの計測値、または前記蓄熱式除湿槽の稼働時間の計測値に基づいて、前記蓄熱式除湿槽の除湿能力を判定し、前記除湿能力が所定値以下になったと判定したときには、前記除湿ユニットの交換を指示することをその要旨とする。従って、手段3に記載の発明によれば、除湿ユニットの交換時期を速やかに知ることができるため、蓄熱式除湿槽の除湿能力を維持しやすくなる。
【0011】
手段4に記載の発明は、手段2において、前記除湿空気生成装置は、複数の前記蓄熱式除湿槽と、複数の前記蓄熱式除湿槽からの前記除湿空気を前記外気導入口に供給する複数の供給経路と、前記複数の供給経路を切り換える経路切換機構と、を有し、前記制御装置は、前記除湿空気を前記外気導入口に供給する直前の位置に設けた温湿度センサの計測値に基づいて、使用中の前記蓄熱式除湿槽の除湿能力を判定し、使用中の前記蓄熱式除湿槽の前記除湿能力が所定値以下になったと判定したときには、前記経路切換機構を作動させて前記供給経路を切り換えることにより、他の前記蓄熱式除湿槽から前記除湿空気を前記塗装ブース用空調機の前記外気導入口に供給させることをその要旨とする。従って、手段4に記載の発明によれば、使用中の蓄熱式除湿槽の除湿能力が低下したときには、供給経路が切り換えられることにより、速やかに他の蓄熱式除湿槽から除湿空気が供給される。このため、除湿空気生成装置により除湿空気を継続して生成することができ、その除湿空気を外気導入口に連続的に供給することができる。
【0012】
手段5に記載の発明は、手段2において、前記除湿空気生成装置の前記熱交換手段は、外気と前記除湿空気との間で熱交換を行うことで前記除湿空気を除熱する気気熱交換器と、前記気気熱交換器に外気を送る除熱ファンとを含み、前記制御装置は、前記除湿空気を前記外気導入口に供給する直前の位置に設けた第1の温湿度センサの計測値と、前記塗装ブース用空調機の前記外気導入口に設けた第2の温湿度センサの計測値とに基づいて、前記塗装ブース用空調機が取り込む外気に混合する前記除湿空気の温度を調整するべく、前記除熱ファンの風量を制御することをその要旨とする。従って、手段5に記載の発明によれば、除熱ファンの風量制御によって、除熱された除湿空気が適量に調整されるため、高温・高絶対湿度の外気の除湿及び加熱を精度よく安定的に行うことができる。
【0013】
手段6に記載の発明は、手段1乃至5のいずれか1項において、前記塗装ブース用空調機は、外気を冷却するクーリングコイルと、外気を加熱するレヒータとを含み、前記除湿空気生成装置は、前記蓄熱式除湿槽に外気を取り込むとともに、前記蓄熱式除湿槽にて生成した前記除湿空気を前記塗装ブース用空調機の前記外気導入口に圧送する除湿送気ファンを有し、前記制御装置は、前記除湿空気を前記外気導入口に供給する直前の位置に設けた第1の温湿度センサ及び風量センサの計測値に基づいて、前記クーリングコイル及び前記レヒータを作動させないエンタルピーになるように前記除湿空気の混合量を計算し、その混合量となるように前記除湿送気ファンの風量を制御することをその要旨とする。従って、手段6に記載の発明によれば、除湿送気ファンによって取り込まれた外気が蓄熱式除湿槽を経て除湿空気となり、その除湿空気が適切な風量で外気導入口に圧送される。このとき、除湿空気と外気とを適切な混合量で混合してなる混合気体が得られるため、クーリングコイル及びレヒータを殆ど作動させずに、目標温湿度に近づけることが可能となる。
【0014】
手段7に記載の発明は、手段1乃至5のいずれか1項において、工場廃熱を含む流体と外気との間で熱交換を行うことで加温外気を得る熱交換器を含み、前記制御装置は、前記蓄熱式除湿槽の前記除湿能力が所定値以下になったと判定したときに、前記工場廃熱を利用して得た前記加温外気を前記蓄熱式除湿槽に供給して、前記除湿能力を回復させる制御を行うことをその要旨とする。従って、手段7に記載の発明によれば、工場廃熱に含まれる熱エネルギーを有効利用して、蓄熱式除湿槽の除湿能力を回復させることができる。このため、蓄熱式除湿槽の除湿能力の回復に余分なエネルギーを投入する必要がなく、空調に要するエネルギーをよりいっそう低減することができる。
【0015】
手段8に記載の発明は、手段1乃至5のいずれか1項において、工場廃熱を含む流体と外気との間で熱交換を行うことで加温外気を得る熱交換器を含み、前記制御装置は、所定の条件下において、前記工場廃熱を利用して得た前記加温外気を外気に混合して、前記外気導入口から導入する制御を行うことをその要旨とする。従って、手段8に記載の発明によれば、工場廃熱に含まれる熱エネルギーを有効利用して得た加温外気を外気導入口から導入することで、加温外気と外気との混合気体を得ることができる。このため、加温外気の生成に余分なエネルギーを投入する必要がなく、例えば中間期や冬期においても空調に要するエネルギーを低減することができる。
【0016】
手段9に記載の発明は、手段1乃至5のいずれか1項において、前記制御装置は、前記目標温湿度に対して外気のエンタルピーが高い場合には、前記蓄熱式除湿槽からの前記除湿空気を用いて除湿加熱を行うように、前記除湿空気生成装置を制御するとともに、目標湿度になるまで前記ワッシャのみによる冷却加湿を行うように、前記ワッシャを制御することをその要旨とする。従って、手段9に記載の発明によれば、蓄熱式除湿槽からの除湿空気を外気と混合することで除湿加熱された後、ワッシャのみによる冷却加湿を行うことで目標湿度に到達させることができる。従って、クーリングコイル及びレヒータを作動させずに目標湿度に近づけることができ、さらに若干の加熱を行うことで目標温湿度に到達させることができる。
【0017】
手段10に記載の発明は、手段6において、前記制御装置は、前記目標温湿度に対して外気のエンタルピーが低くかつ絶対湿度が相対的に高い場合には、前記蓄熱式除湿槽からの前記除湿空気が、空気線図上で送気の設定絶対湿度になるように、前記蓄熱式除湿槽から前記除湿空気を圧送する前記圧送ファンの風量を制御するとともに、前記除熱空気の除熱量が目標温度になるところまで、前記除熱ファンの風量を制御することをその要旨とする。従って、手段10に記載の発明によれば、目標温湿度に対して外気のエンタルピーが低くかつ絶対湿度が相対的に高い場合であっても、クーリングコイル及びレヒータを作動させずに目標温湿度に到達させることができる。
【0018】
手段11に記載の発明は、手段8において、前記制御装置は、前記目標温湿度に対して外気のエンタルピーが低くかつ絶対湿度が相対的に低い場合には、前記塗装ブース用空調機の前記レヒータの使用を最小限に抑えて前記目標温湿度になるように、前記工場廃熱を利用して得た前記加温外気を外気に混合して、前記外気導入口から導入する制御を行うことをその要旨とする。従って、手段11に記載の発明によれば、工場廃熱に含まれる熱エネルギーを有効利用して得た加温外気を外気導入口から導入することで、加温外気と外気との混合気体を得ている。よって、レヒータによる加熱に対する依存率が小さくなり、レヒータの負担を減らすことができるため、中間期や冬期においても空調に要するエネルギーを低減することができる。
【0019】
手段12に記載の発明は、手段4において、前記除湿空気生成装置は、工場廃熱を含む流体と外気との間で熱交換を行うことで加温外気を得る熱交換器を含み、前記制御装置は、前記塗装ブース用空調機の動作開始時刻の情報に基づいて、複数ある前記蓄熱式除湿槽の少なくとも1つに対して前記動作開始時刻よりも前から前記加温外気を供給し、あらかじめ前記除湿能力を回復させておく制御を行うことをその要旨とする。従って、手段12に記載の発明によれば、工場廃熱に含まれる熱エネルギーを有効利用することで、塗装ブース用空調機の動作開始時に少なくとも1つの蓄熱式除湿槽を使用可能な状態にしておくことができる。よって、空調に要するエネルギーの低減を図りつつ、塗装ブースに対して直ちに所定の空調空気を供給することができる。
【0020】
手段13に記載の発明は、手段4において、前記除湿空気生成装置は、工場廃熱を含む流体と外気との間で熱交換を行うことで加温外気を得る熱交換器を含み、前記制御装置は、複数ある前記蓄熱式除湿槽の1つを使用して前記除湿空気を前記塗装ブース用空調機の前記外気導入口に供給している際、使用していない他の前記蓄熱式除湿槽に対して前記加温外気を供給し、他の前記蓄熱式除湿槽の前記除湿能力を回復させる制御を行うことをその要旨とする。従って、手段13に記載の発明によれば、特定の蓄熱式除湿槽を使用中に、工場廃熱に含まれる熱エネルギーを有効利用することで、使用していない他の蓄熱式除湿槽が使用可能な状態に再生される。よって、使用していた特定の蓄熱式除湿槽の除湿能力が低下した場合であっても、使用可能な状態にある他の蓄熱式除湿槽に直ちに切り換えることができる。ゆえに、空調に要するエネルギーの低減を図りつつ、継続して加温外気を供給することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上詳述したように、請求項1~13に記載の発明によると、夏期の空調に要するエネルギーを低減することができる塗装ブース用空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明を具体化した第1実施形態の塗装ブース用空調システムのブロック図。
【
図2】上記システムの夏期の動作を説明するための空気線図。
【
図3】上記システムの夏期の動作を説明するためのフローチャート。
【
図4】上記システムの夏期の動作を説明するためのブロック図。
【
図5】上記システムの夏期の動作を説明するためのブロック図。
【
図6】上記システムの夏期の動作を説明するためのブロック図。
【
図7】上記システムの夏期の動作を説明するためのブロック図。
【
図8】上記システムの夏期の動作を説明するためのブロック図。
【
図9】上記システムの夏期の動作を説明するためのブロック図。
【
図10】上記システムの夏期の動作を説明するための空気線図の部分拡大図。
【
図11】上記システムの中間期の動作を説明するための空気線図。
【
図12】上記システムの冬期の動作を説明するための空気線図。
【
図13】上記システムの中間期・冬期の動作を説明するためのブロック図。
【
図14】第2実施形態の塗装ブース用空調システムのブロック図。
【
図15】別の実施形態の塗装ブース用空調システムのブロック図。
【
図16】別の実施形態の塗装ブース用空調システムのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
以下、本発明を具体化した第1実施形態の塗装ブース用空調システム11を
図1~
図13に基づき詳細に説明する。
【0024】
図1に示される本実施形態の塗装ブース用空調システム11は、塗装ブース用空調機21と、除湿空気生成装置31と、制御装置15とを備えている。
【0025】
図1に示されるように、塗装ブース用空調システム11によって生成される空調空気の供給対象である塗装ブース1は、一般的に、被塗物搬送ラインにおいて被塗物に塗料を塗布するためエリアに設置されている。塗装ブース1は、塗装室と、塗装室の上側に設けられ塗装室にダウンフロー(上方から下方に向かう一定方向)の空気を供給するための給気室と、塗装室の下側に設けられその塗装室内の空気を排気するための排気室とを備えている。本実施形態の塗装ブース1では、塗装ブース用空調機21から排出される空調空気が給気室からダウンフローで塗装室内に供給される。なお、塗装ブース1の給気室には、塗装ブース1内の温湿度を計測するためのブース温湿度センサS3が設置されている。
【0026】
塗装ブース1の塗装室では、図示しない塗装機から塗料ミストを噴射することで被塗物の塗装が行われる。このとき、塗装機からオーバースプレーされて飛散した塗料ミストは、塗装室内に作用するダウンフローの空調空気によって塗装室から排気室に排出される。排気室では、湿式の場合はブース循環水を使用し、乾式の場合はフィルタを使用することにより、空気中に含まれる塗料ミストが捕捉され塗料が回収される。また、排気室から排出される空気は、排気ファン2によって大気に放出される。
【0027】
図1に示されるように、本実施形態における塗装ブース用空調機21は、複数種の空調用機器を含んで構成されている。この塗装ブース用空調機21は、外気導入口21aから導入した装置外部の空気(外気)を所定温度(例えば23℃前後)及び所定湿度(例えば70%RH前後)に調節して塗装ブース1へ送気するための装置である。本実施形態の塗装ブース用空調機21は、塗装ブース1から排気される空気を再循環して温湿度制御するものではなく、装置周囲の外気を取り込んで温湿度制御するものであるため、フレッシュ空調機と呼ばれることもある。具体的に説明すると、この塗装ブース用空調機21は、予熱装置であるプレヒータ22、加湿装置であるワッシャ23、冷却装置であるクーリングコイル24、加湿装置であるダイレクトスチーム25、再熱装置であるレヒータ26、給気ファン27を備えている。
【0028】
プレヒータ22は、取り込んだ空気の温度を調整する調温手段の一種であって、空気を加熱してあらかじめ温度を上げるための装置である。ワッシャ23は、取り込んだ空気の湿度を調整する調湿手段の一種であって、プレヒータ22を経た空気に対する水の噴射により空気の湿度を上げかつ温度を下げるための装置である。ワッシャ23は、水を循環させるための図示しないワッシャポンプを有している。クーリングコイル24は、取り込んだ空気の温度と絶対湿度とを調整する調節手段の一種であって、ワッシャ23を経た空気を冷却して温度を下げるための冷却装置である。ダイレクトスチーム25は、取り込んだ空気の湿度を調整する調湿手段の一種であって、クーリングコイル24を経た空気に対する水蒸気の噴射により空気の湿度を上げるための装置である。レヒータ26は、取り込んだ空気の温度を調整する調温手段の一種であって、ダイレクトスチーム25を経た空気を再び加熱して温度を上げる再熱装置である。給気ファン27は、調温及び調湿された空気(即ち空調空気)を塗装ブース1に圧送するための空気圧送装置である。つまり、本実施形態の塗装ブース用空調機21では、外部から取り込んだ空気の温湿度をプレヒータ22、ワッシャ23、クーリングコイル24、ダイレクトスチーム25及びレヒータ26で調節し、空調空気を給気ファン27で塗装ブース1へ給気する。なお、塗装ブース用空調機21の外気導入口21aには、装置外部から導入される空気の温湿度を測定するための外気温湿度センサS2が設置されている。
【0029】
図1に示されるように、除湿空気生成装置31は、除湿空気を塗装ブース用空調機21の外気導入口21aに供給するための装置である。本実施形態の除湿空気生成装置31は、2つの蓄熱式除湿槽32A、32B、熱交換手段36、熱交換器39、複数の供給経路41~48、経路切換機構である第1~第11ダンパMD1~MD11などを備えている。経路切換機構である第1~第11ダンパMD1~MD11は、複数の供給経路41~48を切り換えるための機構であって、本実施形態では従来周知のモータダンパを用いている。
【0030】
この除湿空気生成装置31は、第1供給経路41、第2供給経路42、第3供給経路43、第4供給経路44、第5供給経路45、第6供給経路46、第7供給経路47、第8供給経路48を有している。第1供給経路41は、一端側から取り込んだ外気を他端側に接続された2つの蓄熱式除湿槽32A、32Bに供給するための経路である。より具体的には、第1供給経路41の他端側は2つの分岐経路41a、41bに分岐しており、各々の分岐経路41a、41bは2つの蓄熱式除湿槽32A、32Bの蓄熱入口側にそれぞれ接続されている。第1供給経路41における最も上流側の位置には、第1供給経路41に取り込まれる外気の温湿度を計測するための外気温湿度センサである第4の温湿度センサS4が設けられている。第4の温湿度センサS4の下流側には、第1供給経路41を開閉するための第1ダンパMD1が設けられている。また、分岐経路41a上には、第1の蓄熱式除湿槽32Aの蓄熱入口側ダンパである第3ダンパMD3が設けられている。分岐経路41b上には、第2の蓄熱式除湿槽32Bの蓄熱入口側ダンパである第4ダンパMD4が設けられている。分岐経路41aにおいて第1の蓄熱式除湿槽32Aの直前の位置には、第5の温湿度センサS5が設けられている。第5の温湿度センサS5は、分岐経路41aを介して送出される気体の温湿度を計測するセンサ(放熱出口温湿度センサ)である。分岐経路41bにおいて第2の蓄熱式除湿槽32Bの直前の位置には、第6の温湿度センサS6が設けられている。第6の温湿度センサS6は、分岐経路41bを介して送出される気体の温湿度を計測するセンサ(放熱出口温湿度センサ)である。
【0031】
第2供給経路42は、2つの蓄熱式除湿槽32A、32Bと、塗装ブース用空調機21の外気導入口21aとの間を繋ぐ経路であって、主として除湿気体を外気導入口21aに供給するための経路である。第2供給経路42の一端側は2つの分岐経路42a、42bに分岐しており、各々の分岐経路42a、42bは2つの蓄熱式除湿槽32A、32Bに接続された2つの分岐経路41a、41bとそれぞれ合流している。分岐経路42a上には、第1の蓄熱式除湿槽32Aからの乾燥外気の送気量を調整するための放熱出口比例ダンパである第5ダンパMD5が設けられている。分岐経路42b上には、第2の蓄熱式除湿槽32Bからの乾燥外気の送気量を調整するための放熱出口比例ダンパである第6ダンパMD6が設けられている。また、第2供給経路42の最も下流側の位置、つまり除湿空気を外気導入口21aに供給する直前の位置には、送気温湿度センサである第1の温湿度センサS1が設けられている。
【0032】
第5供給経路45は、一端側から取り込んだ外気を他端側に接続された2つの蓄熱式除湿槽32A、32Bに対して、第1供給経路41とは別のルートで供給するための経路である。より具体的には、第5供給経路45の他端側は2つの分岐経路45a、45bに分岐しており、各々の分岐経路45a、45bは2つの蓄熱式除湿槽32A、32Bの放熱入口側にそれぞれ接続されている。分岐経路45aにおいて第1の蓄熱式除湿槽32Aの直前の位置には、第7の温度センサS7が設けられている。第7の温度センサS7は、分岐経路45aを流れる気体の温度を計測するための蓄熱出口側温度センサである。分岐経路45bにおいて第2の蓄熱式除湿槽32Bの直前の位置には、第8の温度センサS8が設けられている。第8の温度センサS8は、分岐経路45bを流れる気体の温度を計測するための蓄熱出口側温度センサである。分岐経路45aは、第1の蓄熱式除湿槽32Aへ外気を取り込むための経路であって、その途上には当該流路を開閉するための放熱入口ダンパである第7ダンパMD7が設けられている。分岐経路45bは、第2の蓄熱式除湿槽32Bへ外気の取り込むための経路であって、その途上には当該流路を開閉するための放熱入口側ダンパである第8ダンパMD8が設けられている。また、第5供給経路45上には、除湿送気ファンF2が設けられている。この除湿送気ファンF2は、2つの蓄熱式除湿槽32A、32Bに外気を取り込むとともに、蓄熱式除湿槽32A、32Bにて生成した除湿空気を塗装ブース用空調機21の外気導入口21aに圧送するためのものである。
【0033】
第3供給経路43は、蓄熱式除湿槽32Aの蓄熱出口側と接続すべく分岐経路45aに合流する経路であって、蓄熱式除湿槽32A内の気体を排出するための経路である。第3供給経路43上には、当該経路を開閉するための蓄熱排気ダンパである第9ダンパMD9が設けられている。第4供給経路44は、蓄熱式除湿槽32Bの蓄熱出口側と接続すべく分岐経路45bに合流する経路であって、蓄熱式除湿槽32B内の気体を排出するための経路である。第4供給経路44上には、当該経路を開閉するための蓄熱排気ダンパである第10ダンパMD10が設けられている。
【0034】
2つの蓄熱式除湿槽32A、32Bは、外気を取り込んで除湿するための機器であって、各槽内には除湿ユニット33が収容されている。除湿ユニット33は、例えばパンチングメタル等のような通気性のある容器内に、空気中の水分を吸着する吸着材を収容した構造物であるが、特にこれに限定されない。吸着材も従来周知の各種のものが使用可能であるが、本実施形態では、例えば、塩化リチウム、シリカゲル、ゼオライト等からなる乾燥剤(デシカント剤)が用いられている。この種の乾燥剤は、吸湿した後に加熱することによって再び吸湿前の状態に復帰(即ち放湿)させることができる。
【0035】
第1供給経路41上には、工場廃熱を含む流体と外気との間で熱交換を行うことで加温外気を得るための熱交換器39が設けられている。本実施形態では、工場廃熱を含む液体(温水)と外気との間で熱交換を行う熱交換器39として気液熱交換器を用いているが、勿論これに限定されるわけではない。工場廃熱を含む温水を取り込むための経路上には、温水往温度センサである第11の温度センサS11が設けられている。工場廃熱を含む温水を戻すための経路上には、温水還温度センサである第10の温度センサS10と温水温調弁47とが設けられている。
【0036】
第1供給経路41において熱交換器39の下流側には、蓄熱ファンF1が設けられている。蓄熱ファンF1は、熱交換器39によって得た加温外気を2つの蓄熱式除湿槽32A、32Bに送り出すことで、これら蓄熱式除湿槽32A、32B内に熱を蓄えるためのファンである。蓄熱ファンF1の上流側かつ熱交換器39の下流側には、熱交換器39をバイパスして外気を取り込むための第7供給経路47が接続されている。第7供給経路47上には、当該経路を開閉するための第2ダンパMD2が設けられている。蓄熱ファンF1の下流側には、熱交換器39にて蓄熱した外気の温度を測定するための蓄熱温度センサである第9の温度センサS9が設けられている。
【0037】
第8供給経路48は、2つの蓄熱式除湿槽32A、32Bをバイパスして第1供給経路41と第2供給経路42とを繋ぐための経路である。第8供給経路48は、一端側が第1供給経路41における第9の温度センサS9の下流側の位置に接続され、他端側が第2供給経路42における分岐経路42a、42bの分岐点に接続されている。第8供給経路48上には、加熱送気ダンパである第11ダンパMD11が設けられている。
【0038】
第2供給経路42上には、蓄熱式除湿槽32A、32Bから排出される除湿空気を、外気を利用して除熱してから外気導入口21aに供給する熱交換手段36が設けられている。この熱交換手段36は、外気と除湿空気との間で熱交換を行うことで除湿空気を除熱する気気熱交換器37と、気気熱交換器37に外気を送る除熱ファンF3とを含んで構成されている。気気熱交換器37と除熱ファンF3とは第6供給経路46を介して接続されており、除熱ファンF3によって気気熱交換器37に外気が圧送される。
【0039】
第2供給経路42上における熱交換手段36の下流側には、蓄熱式除湿槽32A、32Bにて生成した除湿空気を塗装ブース用空調機21の外気導入口21aに圧送するときの風量を測定するための風量センサ38が設けられている。
【0040】
本実施形態における制御装置15は、塗装ブース用空調機21における空調用機器の動作、除湿空気生成装置31における各種機器(各ダンパMD1~MD11や各ファンF1~F3など)の動作を制御して、空調空気を設定温湿度に近づける制御を行うための装置である。制御装置15は、CPUや記憶手段(ROM、RAM)等からなる周知のシーケンサまたはコンピュータ1台あるいは複数台により構成されている。この制御装置15は、送気目標入力部、送気設定演算部、機器制御部などを備えている。機器制御部は、PID制御によって空調用機器の操作量や除湿空気生成装置31における上記機器の操作量を制御するPIDコントローラを含んでいる。なお、制御装置15における記憶手段内には、温湿度制御のための空調用機器作動プログラムや除湿空気生成プログラムが格納されており、制御装置15内のCPUは当該プログラムを記憶手段から読み出して順次実行するようになっている。記憶手段内には、このプログラムのほかに、空気の状態値を座標に表した空気線図に関するデータ(空気線図テーブル)が格納されている。ちなみに、エンタルピーは空気線図の右上に行くほど高くなり、逆に左下にいくほど低くなる。
【0041】
PID制御(Proportional-Integral-Differential Controll)とは、フィードバック制御の一種であって、入力値の制御を出力値と目標値との偏差、その積分及び微分の3要素によって行う制御のことを指す。本実施形態のPIDコントローラは、例えば制御対象の数と同数のPIDループを有している。PIDコントローラと、上記各ダンパMD1~MD11のモータ部分と、各ファンF1~F3と、温水温調弁47とは、図示しないドライバ回路を介してそれぞれ電気的に接続されている。また、PIDコントローラと上記各センサS1~S11、38とは、電気的に接続されている。従って、PIDコントローラから各制御対象に対して駆動制御信号が出力され、これによって各空調用機器の操作量がPID制御される。その結果、外気温湿度が目標温湿度に到達するように調整されるようになっている。またその際には、上記各センサS1~S11からの温湿度の計測結果や、風量センサ38からの風量の計測結果が入力される。そのため、PIDコントローラは、その測定結果に基づいてフィードバック制御を行うことができるようになっている。
【0042】
送気目標入力部は、送気設定演算部を介して機器制御部に電気的に接続されている。送気目標入力部は、塗装ブースに送気するための空調空気の温湿度の目標値を入力するためのものであって、キーボードやタッチパネル等のような手段を含んで構成されている。送気目標入力部の出力信号は、送気設定演算部に入力される。
【0043】
本実施形態の除湿空気生成装置31における各種機器は、除湿空気生成プログラムに基づいて以下のように制御される。
【0044】
例えば夏期において、制御装置15は、目標温湿度に対して外気のエンタルピーが高い場合には、蓄熱式除湿槽32A、32Bからの除湿空気を用いて除湿加熱を行うように、除湿空気生成装置31を制御する。それとともに、制御装置15は、目標湿度になるまでワッシャ23のみによる冷却加湿を行うように、ワッシャ23を制御する。
【0045】
この場合、制御装置15は、除湿空気を外気導入口21aに供給する直前の位置に設けた第1の温湿度センサS1の計測値に基づいて、使用中の蓄熱式除湿槽32A、32Bの除湿能力を判定する。そして、制御装置15は、使用中の蓄熱式除湿槽32A、32Bの除湿能力が所定値以下になったと判定したときには、経路切換機構を作動させて供給経路を切り換える。この制御により、他の蓄熱式除湿槽32A、32Bから除湿空気を塗装ブース用空調機21の外気導入口21aに供給させる。また、制御装置15は、第1の温湿度センサS1及び風量センサ38の計測値に基づいて、クーリングコイル24及びレヒータ26を作動させないエンタルピーになるように除湿空気の混合量を計算し、その混合量となるように除湿送気ファンF2の風量を制御する。また、制御装置15は、第1の温湿度センサS1の計測値と、外気導入口21aに設けた第2の温湿度センサS2の計測値とに基づいて、塗装ブース用空調機21が取り込む外気に混合する除湿空気の温度を調整するべく、除熱ファンF3の風量を制御する。また、制御装置15は、蓄熱式除湿槽32A、32Bの除湿能力が所定値以下になったと判定したときに、工場廃熱を利用して得た加温外気を蓄熱式除湿槽32A、32Bに供給して、除湿能力を回復させる制御を行う。また、制御装置15は、2つの蓄熱式除湿槽32A、32Bの1つを使用して除湿空気を外気導入口21aに供給している際、使用していない他の蓄熱式除湿槽32A、32Bに対して加温外気を供給し、他の蓄熱式除湿槽32A、32Bの除湿能力を回復させる制御を行う。また、目標温湿度に対して外気のエンタルピーが低くかつ絶対湿度が相対的に高い場合には、制御装置15は、蓄熱式除湿槽32A、32Bからの除湿空気が、空気線図上で送気の設定絶対湿度になるように、蓄熱式除湿槽32A、32Bから除湿空気を圧送する除湿送気ファンF2の風量を制御する。それとともに、制御装置15は、除熱空気の除熱量が目標温度になるところまで、除熱ファンF3の風量を制御する。
【0046】
さらに、所定の条件下(具体的には冬期や中間期である場合)において、制御装置15は、工場廃熱を利用して得た加温外気を外気に混合して、外気導入口21aから導入する制御を行う。例えば冬期のように、目標温湿度に対して外気のエンタルピーが低くかつ絶対湿度が相対的に低い場合には、制御装置15は、塗装ブース用空調機21のレヒータ26の使用を最小限に抑えて目標温湿度になるように、工場廃熱を利用して得た加温外気を外気に混合して、外気導入口21aから導入する制御を行う。
【0047】
次に、本実施形態のシステム11の動作について説明する。
【0048】
図2の空気線図は、夏期運転モードで運転するときの様子を示すものである。
図2では、設定温湿度に対応した位置に設定温湿度点P2がプロットされ(図中の△を参照)、そのときの外気の温湿度に対応した位置に外気温湿度点P1がプロットされている(図中の〇を参照)。
図2では、外気のエンタルピーが設定エンタルピーよりも高いときの例を示している。設定温湿度の空気のエンタルピーを示す等エンタルピー線には符号E1を付し、外気温湿度点P1が属する等エンタルピー線には符号E2を付している。
【0049】
図2における細線の矢印r1~r4は、通常よく行われている温湿度制御による状態点の移動経路を示している。これによると、まずワッシャ23で一部冷却及び加湿をし(矢印r1を参照)、次いでクーリングコイル24で除湿及び冷却をすることにより、状態点を設定温湿度の露点P3(再熱開始点)付近まで移動させる(矢印r2を参照)。その後、レヒータ26で一部加熱し(矢印r3を参照)、残りを給気ファン27で加熱することにより、設定温湿度点P2に到達させる(矢印r4を参照)。なお、給気ファン27による加熱開始点の空気のエンタルピーを示す等エンタルピー線には符号E3を付している。
【0050】
これに対し、本実施形態では、除湿空気生成装置31で生成した除湿外気を外気に混合して外気導入口21aから導入することで、まず除湿及び加熱をする(矢印R1を参照)。状態点が等エンタルピー線E3に到達したら、次いで導入された外気をワッシャ23で冷却及び加湿し、給気ファン27による加熱開始点に移動させる(矢印R2を参照)。その後、給気ファン27で加熱することにより、状態点を設定温湿度点P2に到達させる(矢印r4を参照)。
【0051】
図3は、夏期運転モードのときの一連の動作を説明するためのフローチャートであり、
図4~
図9は、そのときの一連の動作を説明するためのブロック図である。
【0052】
まず、制御装置15は、第1の蓄熱式除湿槽32Aに蓄熱させ、第2の蓄熱式除湿槽32Bを停止させる(ステップS110)。なお、
図3のフローチャートでは第1の蓄熱式除湿槽32Aを「第1槽」と、第2の蓄熱式除湿槽32Bを「第2槽」と簡略的に表記している。
図4を用いて具体的に説明すると、制御装置15は、ダンパMD1、MD3、MD9を開け、それら以外のものを閉じておく制御を行う。その結果、第1供給経路41、分岐経路41a、分岐経路45aの一部及び第3供給経路43が開通する(
図4の太線矢印を参照)。このとき制御装置15は、蓄熱ファンF1を駆動させることで、熱交換器39によって得た加温外気を第1の蓄熱式除湿槽32Aに送り出す。加温外気が第1の蓄熱式除湿槽32Aを通過する際、第1の蓄熱式除湿槽32Aに熱が蓄えられるとともに、その熱により除湿ユニット33内の吸着材が乾燥される。湿気を含んだ加温外気は、第3供給経路43を経て装置外部に放湿される。
【0053】
次に、制御装置15はステップS120に移行し、第2の蓄熱式除湿槽32Bを停止させたままで、第1の蓄熱式除湿槽32Aの捨て放熱を行わせる。即ち、第1の蓄熱式除湿槽32Aに蓄えられた余剰の熱を捨てるようにする。
図5を用いて具体的に説明すると、制御装置15は、ダンパMD2、MD3、MD9を開け、それら以外のものを閉じておく制御を行う。その結果、第7供給経路47、第1供給経路41の一部、分岐経路41a、分岐経路45aの一部及び第3供給経路43が開通する(
図5の太線矢印を参照)。このとき制御装置15は、蓄熱ファンF1を駆動させることで、熱交換器39を通過していない外気(即ち常温の外気)を第1の蓄熱式除湿槽32Aに送り出す。この外気が第1の蓄熱式除湿槽32Aを通過して第3供給経路43から装置外部に放出されることにより、第1の蓄熱式除湿槽32Aの余剰の熱が捨てられ、第1の蓄熱式除湿槽32Aの温度が外気温程度まで低くなる。
【0054】
次に、制御装置15はステップS130に移行し、第1の蓄熱式除湿槽32Aを放熱させるとともに、第2の蓄熱式除湿槽32Bに蓄熱させる。具体的には、制御装置15は、ダンパMD1、MD4、MD10を開けるとともに、ダンパMD7、MD5を開け、それら以外のものを閉じておく制御を行う。
【0055】
すると、ダンパMD1、MD4、MD10が開状態になることにより、第1供給経路41、分岐経路41b、分岐経路45bの一部及び第4供給経路44が開通する(
図6の太線矢印を参照)。このとき制御装置15は、蓄熱ファンF1を駆動させることで、熱交換器39によって得た加温外気を第2の蓄熱式除湿槽32Bに送り出す。加温外気が第2の蓄熱式除湿槽32Bを通過する際、第2の蓄熱式除湿槽32Bに熱が蓄えられるとともに、その熱により除湿ユニット33内の吸着材が乾燥される。湿気を含んだ加温外気は、第4供給経路44を経て装置外部に放湿される。つまり、第1の蓄熱式除湿槽32Aを使用している間、第2の蓄熱式除湿槽32Bは、使用可能な状態となるように準備される。
【0056】
また、ダンパMD7、MD5が開状態になることにより、第5供給経路45、分岐経路45a、分岐経路41aの一部、分岐経路42a及び第2供給経路42が開通する(
図6の太破線矢印を参照)。即ち、第1の蓄熱式除湿槽32Aから外気導入口21aに到る空気圧送経路が形成される。このとき制御装置15は、除湿送気された除湿空気を外気導入口21aに向けて送り出す。より具体的にいうと、制御装置15は、第1~第3の温湿度センサS1~S3及び風量センサ38の計測値に基づいて、クーリングコイル24及びレヒータ26を作動させないエンタルピーになるように除湿空気の混合量を計算し、その混合量となるように除湿送気ファンF2の風量をPID制御する。なお、制御装置15は、第1の温湿度センサS1の計測値と、第2の温湿度センサS2の計測値とに基づいて、塗装ブース用空調機21が取り込む外気に混合する除湿空気の温度を調整するべく、除熱ファンF3の風量を制御する。なお、同時に制御装置15は、熱交換手段36の除熱ファンF3を駆動させて、第1の蓄熱式除湿槽32Aから排出される除湿空気を、外気を利用して除熱する。そのため、外気導入口21aに供給される除湿空気は、除熱により温度が低くなった除湿空気(常温除湿空気)となる。
【0057】
つまり、ステップS130では、第1の蓄熱式除湿槽32Aからの除湿空気を用いて外気の除湿加熱を行うように除湿空気生成装置31が制御され、その結果として状態点が
図2の矢印R1に沿って移動する。即ち、状態点が等エンタルピー線E1を越えて等エンタルピー線E3に到達するように、除湿加熱を行う。制御装置15は、目標湿度になるまでワッシャ23のみによる冷却加湿を行うようにワッシャ23を制御しており、その結果として状態点が
図2の矢印R2に沿って(即ち等エンタルピー線E3に沿って)移動する。状態点が給気ファン27による加熱開始点に到達した後には、給気ファン27の加熱により状態点を設定温湿度点P2に到達させる(矢印r4を参照)。
【0058】
次に、制御装置15はステップS135に移行し、除湿空気を外気導入口21aに供給する直前の位置に設けた温湿度センサS1の計測値、または第1の蓄熱式除湿槽32Aの稼働時間の計測値に基づいて、使用中である第1の蓄熱式除湿槽32Aの除湿能力を判定する。除湿能力がまだ所定値以下になっていないと判定したときには(ステップS135:NO)、制御装置15はステップS130に戻り、引き続き第1の蓄熱式除湿槽32Aを放熱させ、第2の蓄熱式除湿槽32Bに畜熱を行わせる。除湿能力が所定値以下になったと判定したときには(ステップS135:YES)、制御装置15はステップS140に移行する。
【0059】
ステップS140では、第1の蓄熱式除湿槽32Aを放熱させるとともに、第2の蓄熱式除湿槽32Bに捨て放熱を行わせる。具体的には、制御装置15は、ダンパMD1を閉じる代わりにダンパMD2を開ける制御を行う。すると、第2供給経路42、第1供給経路41の一部、分岐経路41b、分岐経路45bの一部及び第4供給経路44が開通する(
図7の太線矢印を参照)。このとき制御装置15は、蓄熱ファンF1を駆動させることで、常温外気を第2の蓄熱式除湿槽32Bに送り出す。常温外気が第2の蓄熱式除湿槽32Bを通過する際、第2の蓄熱式除湿槽32Bの熱が奪われて装置外部に逃がされることで、捨て放熱が行われる。
【0060】
次に制御装置15はステップS150に移行し、除湿ユニット33の交換(ここでは、使用中の第1の蓄熱式除湿槽32Aから、未使用の第2の蓄熱式除湿槽32Bへの切換)を指示する。つまり、制御装置15は第1の蓄熱式除湿槽32Aに蓄熱させるとともに、第2の蓄熱式除湿槽32Bを放熱させるべく、経路切換機構を作動させて供給経路を切り換える。具体的にいうと、制御装置15は、ダンパMD1、MD3、MD9を開けるとともに、ダンパMD8、MD6を開け、それら以外のものを閉じておく制御を行う。
【0061】
すると、ダンパMD1、MD3、MD9が開状態になることにより、第1供給経路41、分岐経路41a、分岐経路45aの一部及び第3供給経路43が開通する(
図8の太線矢印を参照)。このとき制御装置15は、蓄熱ファンF1を駆動させることで、熱交換器39によって得た加温外気を第1の蓄熱式除湿槽32Aに送り出す。加温外気が第1の蓄熱式除湿槽32Aを通過する際、第1の蓄熱式除湿槽32Aに熱が蓄えられるとともに、その熱により除湿ユニット33内の吸着材が乾燥される。湿気を含んだ加温外気は、第3供給経路43を経て装置外部に放湿される。つまり、制御装置15は、工場廃熱を利用して得た加温外気を第1の蓄熱式除湿槽32Aに供給することにより、除湿能力が所定値以下になった第1の蓄熱式除湿槽32Aの除湿能力を回復させる。
【0062】
また、ダンパMD8、MD6が開状態になることにより、第5供給経路45、分岐経路45b、分岐経路41bの一部、分岐経路42b及び第2供給経路42が開通する(
図8の太破線矢印を参照)。即ち、第2の蓄熱式除湿槽32Bから外気導入口21aに到る空気圧送経路が形成される。このとき制御装置15は、除熱送気ファンF2を駆動させることで、第2の蓄熱式除湿槽32Bにより除湿された除湿空気を外気導入口21aに向けて送り出す。より具体的にいうと、制御装置15は、第1~第3の温湿度センサS1~S3及び風量センサ38の計測値に基づいて、クーリングコイル24及びレヒータ26を作動させないエンタルピーになるように除湿空気の混合量を計算し、その混合量となるように除熱送気ファンF2の風量をPID制御する。なお、制御装置15は、第1の温湿度センサS1の計測値と、第2の温湿度センサS2の計測値とに基づいて、塗装ブース用空調機21が取り込む外気に混合する除湿空気の温度を調整するべく、除熱ファンF3の風量を制御する。
【0063】
次に、制御装置15はステップS155に移行し、除湿空気を外気導入口21aに供給する直前の位置に設けた温湿度センサS1の計測値、または第2の蓄熱式除湿槽32Bの稼働時間の計測値に基づいて、使用中である第2の蓄熱式除湿槽32Bの除湿能力を判定する。除湿能力がまだ所定値以下になっていない判定したときには(ステップS155:NO)、制御装置15はステップS150に戻り、引き続き第2の蓄熱式除湿槽32Bを放熱させ、第1の蓄熱式除湿槽32Aに畜熱を行わせる。除湿能力が所定値以下になったと判定したときには(ステップS155:YES)、制御装置15はステップS160に移行する。
【0064】
ステップS160では、第2の蓄熱式除湿槽32Bを放熱させるとともに、第1の蓄熱式除湿槽32Aに捨て放熱を行わせる。具体的には、制御装置15は、ダンパMD1を閉じる代わりにダンパMD2を開ける制御を行う。すると、第2供給経路42、第1供給経路41の一部、分岐経路41b、分岐経路の一部45a、及び第3供給経路43が開通する(
図8の太線矢印を参照)。このとき制御装置15は、蓄熱ファンF1を駆動させることで、常温外気を第1の蓄熱式除湿槽32Aに送り出す。常温外気が第1の蓄熱式除湿槽32Aを通過する際、第1の蓄熱式除湿槽32Aの熱が奪われて装置外部に逃がされることで、捨て放熱が行われる。次に制御装置15は、除湿ユニット33の交換(ここでは、使用中の第2の蓄熱式除湿槽32Bから、再生済みの第1の蓄熱式除湿槽32Aへの切換)を指示する。つまり、制御装置15は、工場廃熱を利用して得た加温外気を第2の蓄熱式除湿槽32Bに供給することにより、除湿能力が所定値以下になった第2の蓄熱式除湿槽32Bの除湿能力を回復させる。このようにしてステップS130に戻った後、制御装置15はステップS135~S160の動作を繰り返す。
【0065】
ちなみに
図10は、上記システム11の夏期の動作を説明するための空気線図の部分拡大図であり、この図では外気の温度が設定温度よりも若干低く、かつ外気の絶対湿度が設定湿度よりも若干高いときの例を示している。なお、この例では、目標温湿度の空気のエンタルピーに対して、外気のエンタルピーのほうが僅かに低くなっている。
図10における細線の矢印r1~r4は、通常よく行われている温湿度制御による状態点の移動経路を示している。これに対し、本実施形態では、除湿空気生成装置31で生成した除湿外気を外気に混合して外気導入口21aから導入することで、まず除湿及び加熱をする(矢印R1を参照)。状態点が所定のエンタルピー値に到達したら、次いで導入された外気をワッシャ23で冷却及び加湿する(矢印R2を参照)。次に、レヒータ26で加熱して状態点を給気ファン27による加熱開始点に移動させる(矢印R2´を参照)。その後、給気ファン27で加熱することにより、状態点を設定温湿度点P2に到達させる(矢印r4を参照)。この場合であっても、基本的には
図3のフローチャートで示したような手順で制御を行えばよい。なお、制御装置15は、蓄熱式除湿槽32A、32Bからの除湿空気が、空気線図上で送気の設定絶対湿度になるように、蓄熱式除湿槽32A、32Bから除湿空気を圧送する給気ファン27の風量を制御する。それとともに制御装置15は、除熱空気の除熱量が目標温度になるところまで、除熱ファンF3の風量を制御する。
【0066】
次に、中間期運転モードのときの動作について説明する。
図11は、上記システム11の中間期(即ち春期及び秋期)の動作を説明するための空気線図であり、この図では外気の温度が設定温度よりも高く、かつ外気の絶対湿度が設定湿度よりも低いときの例を示している。なお、この例では、目標温湿度の空気のエンタルピーに対して、外気のエンタルピーのほうがいくぶん低くなっている。
【0067】
図11における細線の矢印r5~r8は、通常よく行われている温湿度制御による状態点の移動経路を示している。これによると、まずワッシャ23で一部冷却及び加湿をし(矢印r5を参照)、次いでダイレクトスチーム25で加湿することにより、状態点を設定湿度まで移動させる(矢印r6を参照)。その後、レヒータ26で一部加熱し(矢印r7を参照)、残りを給気ファン27で加熱することにより、設定温湿度点P2に到達させる(矢印r8を参照)。
【0068】
これに対し、本実施形態では、除湿空気生成装置31により得た加温外気を外気に混合して外気導入口21aから導入することで、まず加熱をする(矢印R3を参照)。状態点が等エンタルピー線E3に到達したら、次いで導入された外気をワッシャ23で冷却及び加湿し、給気ファン27による加熱開始点に移動させる(矢印R2を参照)。その後、給気ファン27で加熱することにより、状態点を設定温湿度点P2に到達させる(矢印r8を参照)。
【0069】
次に、冬期運転モードのときの動作について説明する。
図12は、上記システム11の冬期の動作を説明するための空気線図であり、この図では外気の温度が設定温度よりも低く、かつ外気の絶対湿度が設定湿度よりも低いときの例を示している。なお、この例では、目標温湿度の空気のエンタルピーに対して、外気のエンタルピーのほうがかなり低くなっている。
【0070】
図12における細線の矢印r9、R7~R10は、通常よく行われている温湿度制御による状態点の移動経路を示している。これによると、まずプレヒータ22で加温した後(矢印r9を参照)、次いでワッシャ23で一部冷却及び加湿をして等エンタルピー線E4に沿って移動させ(矢印R7を参照)、さらにダイレクトスチーム25で加湿することにより、状態点を設定湿度まで移動させる(矢印R8を参照)。その後、レヒータ26で一部加熱し(矢印R9を参照)、残りを給気ファン27で加熱することにより、設定温湿度点P2に到達させる(矢印R10を参照)。
【0071】
これに対し、本実施形態では、除湿空気生成装置31により得た加温外気を外気に混合して外気導入口21aから導入することで、まず加熱をする(矢印R5を参照)。加熱の不足分についてはプレヒータ22で加熱する(矢印R6を参照)。その後は通常の手順に従い、ワッシャ23、ダイレクトスチーム25、レヒータ26、給気ファン27を用いて、設定温湿度点P2に到達させる(矢印R7~R10を参照)。
【0072】
図13は、中間期運転モード及び冬期運転モードのときの動作を説明するためのブロック図である。このとき制御装置15は、第1の蓄熱式除湿槽32A及び第2の蓄熱式除湿槽32Bを停止させるとともに、工場廃熱を利用して得た加温外気を外気に混合して外気導入口21aから導入する制御を行う。この場合において制御装置15は、塗装ブース用空調機21のレヒータ26の使用を最小限に抑えて目標温湿度になるように制御を行う。
図13を用いて具体的に説明すると、制御装置15は、ダンパMD1、MD11を開け、それら以外のものを閉じておく制御を行う。その結果、第1供給経路41の一部、第8供給経路48、第2供給経路42が開通する(
図13の太線矢印を参照)。つまり、第1供給経路41と第2供給経路42とが、バイパス経路である第8供給経路48を介して繋がれた状態となる。このとき制御装置15は、蓄熱ファンF1を駆動させることで、熱交換器39によって得た加温外気を外気導入口21aに送り出す。
【0073】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0074】
(1)本実施形態の塗装ブース用空調システム11は、塗装ブース用空調機21と、除湿空気生成装置31と、制御装置15とを備える。塗装ブース用空調機21は、外気導入口21aから導入した外気の温湿度を調整するワッシャ23を少なくとも含み、空調空気を塗装ブース1に送気する。除湿空気生成装置31は、外気を取り込んで除湿する蓄熱式除湿槽32A、32Bを有し、除湿空気を塗装ブース用空調機21の外気導入口21aに供給する。制御装置15は、塗装ブース用空調機21及び除湿空気生成装置31の動作を制御する。そして制御装置15は、夏期のような所定の条件下において、外気に除湿空気を混合して外気導入口21aから導入するとともに、導入された外気をワッシャ23による冷却加湿を行って目標温湿度に近づける制御を行う。
【0075】
この構成によると、除湿空気生成装置32A、32Bの蓄熱式除湿槽33が生成した除湿空気を、外気と混合して外気導入口21aに導入することにより、高温・高絶対湿度の外気が一旦除湿及び加熱される。そして、除湿及び加熱された外気は、さらにワッシャ23で冷却及び加湿される。よって、クーリングコイル24による除湿及び冷却やレヒータ26等による加熱に依存することなく、主としてワッシャ23で目標温湿度に近づけることが可能となる。このため、クーリングコイル24やレヒータ26等の負担を減らすことができ、夏期の空調に要するエネルギーを低減することができる。
【0076】
さらに制御装置15は、目標温湿度に対して外気のエンタルピーが高い場合には、蓄熱式除湿槽32A、32Bからの除湿空気を用いて除湿加熱を行うように、除湿空気生成装置31を制御する。それとともに制御装置15は、目標湿度になるまでワッシャ23のみによる冷却加湿を行うように、ワッシャ23を制御する。従って、クーリングコイル24及びレヒータ26を作動させずに目標湿度に近づけることができ、さらに若干の加熱(具体的には給気ファン27による加熱)により、目標温湿度に到達させることができる。
【0077】
(2)このシステム11における除湿空気生成装置31は、蓄熱式除湿槽32A、32Bから排出される除湿空気を、外気を利用して除熱してから外気導入口21aに供給する熱交換手段36を含んで構成されている。この構成によると、除熱された除湿空気を外気と混合して導入することにより、高温・高絶対湿度の外気が除湿及び加熱される。その結果、除湿及び加熱過程での外気の温度上昇量が小さくなり、冷却及び加湿を行うワッシャ23の負荷を減らすことができる。
【0078】
(3)このシステム11における蓄熱式除湿槽32A、32Bは、2つの蓄熱式除湿槽32A、32Bと、それらからの除湿空気を外気導入口21aに供給する第1~第8供給経路41~48と、それら供給経路41~48を切り換える経路切換機構である第1~第11ダンパMD1~MD11とを有している。そして制御装置15は、第1の温湿度センサS1の計測値に基づいて、使用中の蓄熱式除湿槽32A、32Bの除湿能力を判定する。使用中の蓄熱式除湿槽32A、32Bの除湿能力が所定値以下になったと判定したときには、経路切換機構を作動させて供給経路41~48を切り換える。この切り換えにより、使用していない他の蓄熱式除湿槽32A、32Bから除湿空気を外気導入口21aに供給させる。この構成によると、使用中の蓄熱式除湿槽32A、32Bの除湿能力が低下したときには、速やかに他の蓄熱式除湿槽32A、32Bから除湿空気が供給される。その結果、除湿空気生成装置31により除湿空気を継続して生成することができ、その除湿空気を外気導入口21aに連続的に供給することができる。
【0079】
(4)このシステム11における熱交換手段36は、外気と除湿空気との間で熱交換を行うことで除湿空気を除熱する気気熱交換器37と、気気熱交換器37に外気を送る除熱ファンF3とを含んで構成されている。そして制御装置15は、第1の温湿度センサS1及び第2の温湿度センサS2の計測値に基づいて、塗装ブース用空調機21が取り込む外気に混合する除湿空気の温度を調整するべく、除熱ファンF3の風量を制御する。この構成によると、除熱された除湿空気が適温に調整されるため、高温・高絶対湿度の外気の除湿及び加熱を精度よく安定的に行うことができる。
【0080】
(5)このシステム11における除湿空気生成装置31は、蓄熱式除湿槽32A、32Bに外気を取り込むとともに、それらで生成した除湿空気を外気導入口21aに圧送する除湿送気ファンF2を有している。そして制御装置15は、第1の温湿度センサS1及び風量センサ38の計測値に基づいて、クーリングコイル24及びレヒータ26を作動させないエンタルピーになるように、除湿空気の混合量を計算する。制御装置15は、その混合量となるように除湿送気ファンF2の風量を制御する。この構成によると、外気導入口21aへの除湿空気の圧送時に、除湿空気と外気とを適切な混合量で混合してなる混合気体が得られる。そのため、クーリングコイル24及びレヒータ26を殆ど作動させずに、目標温湿度に近づけることが可能となる。
【0081】
(6)このシステム11における除湿空気生成装置31は、工場廃熱を含む流体と外気との間で熱交換を行うことで加温外気を得る熱交換器39を含んで構成されている。そして制御装置15は、蓄熱式除湿槽32A、32Bの除湿能力が所定値以下になったと判定したときに、工場廃熱を利用して得た加温外気を蓄熱式除湿槽32A、32Bに供給して、除湿能力を回復させる制御を行う。この構成によると、工場廃熱に含まれる熱エネルギーを有効利用して、蓄熱式除湿槽32A、32Bの除湿能力を回復させることができる。このため、蓄熱式除湿槽の除湿能力の回復に余分なエネルギーを投入する必要がなく、空調に要するエネルギーをよりいっそう低減することができる。
【0082】
しかも、制御装置15は、2つある蓄熱式除湿槽32A、32Bの1つを使用して除湿空気を外気導入口21aに供給している際、使用していない他の蓄熱式除湿槽32A、32Bに対して加温外気を供給し、他の蓄熱式除湿槽32A、32Bの除湿能力を回復させる制御を行う。この構成によれば、使用していた特定の蓄熱式除湿槽32A、32Bの除湿能力が低下した場合であっても、使用可能な状態にある他の蓄熱式除湿槽32A、32Bに直ちに切り換えることができる。ゆえに、空調に要するエネルギーの低減を図りつつ、継続して加温外気を供給することができる。
【0083】
(7)このシステム11において制御装置15は、所定の条件下、具体的には目標温湿度に対して外気のエンタルピーが低くかつ絶対湿度が相対的に低いような条件下において、工場廃熱を利用して得た加温外気を外気に混合して、外気導入口21aから導入する制御を行う。この構成によると、工場廃熱に含まれる熱エネルギーを有効利用して、加温外気と外気との混合気体を得ることができる。このため、加温外気の生成に余分なエネルギーを投入する必要がなく、中間期や冬期についても空調に要するエネルギーを低減することができる。この場合において制御装置15は、プレヒータ22及びレヒータ26の使用を最小限に抑えて目標温湿度になるように、加温外気を外気に混合する制御を行う。従って、プレヒータ22及びレヒータ26による加熱に対する依存率が小さくなり、プレヒータ22及びレヒータ26の負担を減らすことができる。ゆえに、このことによっても中間期や冬期の空調に要するエネルギーを低減することができる。つまり、上記構成によれば、年間を通じて空調に要するエネルギーを低減することができ、従来に比較して空調に要するコストを確実に抑えることができる。
【0084】
[第2実施形態]
以下、本発明を具体化した第2実施形態の塗装ブース用空調システム11Aを
図14に基づき詳細に説明する。ここでは、第1実施形態と異なる構成について説明する一方、第1実施形態と共通の構成については同じ部材番号を付し、説明を省略する。
【0085】
実施形態の塗装ブース用空調システム11Aでは、除湿空気生成装置31Aの構成が、第1実施形態の除湿空気生成装置31の構成と異なっている。本実施形態の除湿空気生成装置31Aは、工場廃熱を利用して蓄熱式除湿槽32A、32Bの除湿能力を回復させることを行わないので、第1供給経路41及びそれに付帯する設備を備えていない。具体的にいうと、この除湿空気生成装置31Aでは、第1供給経路41、分岐経路41a、41b、第7供給経路47、第8供給経路48、ダンパMD1~MD4、MD11、除熱ファンF1、センサS4、S9~S11、熱交換器39が省略されている。
【0086】
その代わりに、この除湿空気生成装置31Aの蓄熱式除湿槽32A、32Bは、槽内に収容された除湿ユニット33を交換可能とする機構を有している。このような除湿ユニット交換機構としては、特に限定されず任意の機構が採用されうるが、例えば、蓄熱式除湿槽32A、32Bに開閉可能な扉を設け、その扉を介して除湿ユニット33が取り出し可能に構成されていてもよい。また、蓄熱式除湿槽32A、32Bにアクチュエータを設置し、制御装置15によりアクチュエータを駆動制御することにより、上記の開閉動作や取出動作を自動的に行うように構成されていてもよい。なお、蓄熱式除湿槽32A、32Bから取り出された除湿ユニット33は、当該システム11とは別に設置された再生設備において除湿能力を回復する処理を施すことにより、再生される。この場合、工場廃熱に含まれる熱エネルギーを有効利用して当該処理を行ってもよい。
【0087】
本実施形態において制御装置15は、第1の温湿度センサS1の計測値、または蓄熱式除湿槽32A、32Bの稼働時間の計測値に基づいて、蓄熱式除湿槽32A、32Bの除湿能力を判定する。そして、制御装置15は、除湿能力が所定値以下になったと判定したときに、除湿ユニット33の交換を指示する。
【0088】
例えば、第1の蓄熱式除湿槽32Aの使用中にその除湿能力が所定値以下になったときには、第1の蓄熱式除湿槽32Aの除湿ユニット33の交換が指示される。この場合には、第1の蓄熱式除湿槽32Aを停止させて第2の蓄熱式除湿槽32Bを使用するように、流路切換が行われる。そして、第2の蓄熱式除湿槽32Bの使用中に、第1の蓄熱式除湿槽32Aから除湿ユニット33が取り出され、除湿能力回復処理済みの除湿ユニット33と交換される。取り出された除湿ユニット33については、再生設備において除湿能力回復処理が施される。
【0089】
次に、第2の蓄熱式除湿槽32Bの除湿能力が所定値以下になったときには、第2の蓄熱式除湿槽32Bの除湿ユニット33の交換が指示される。この場合には、第2の蓄熱式除湿槽32Bを停止させて第1の蓄熱式除湿槽32Aを使用するように、流路切換が行われる。そして、第1の蓄熱式除湿槽32Aの使用中に、第2の蓄熱式除湿槽32Bから除湿ユニット33が取り出され、除湿能力回復処理済みの除湿ユニット33と交換される。取り出された除湿ユニット33については、再生設備において除湿能力回復処理が施される。
【0090】
除湿ユニット33の交換を指示する方法は特に限定されないが、例えば、制御装置15を構成するコンピュータの表示画面上に交換指示を示す文字等を表示してもよい。あるいは、蓄熱式除湿槽32A、32Bごとに告知手段(例えば警告灯や警告ブザーなど)を設けておき、その告知手段を作動させて交換を指示してもよい。
【0091】
以上説明した本実施形態のシステム11Aの構成であっても、除湿空気生成装置31Aの蓄熱式除湿槽32A、32Bが生成したに除湿空気を、外気と混合して外気導入口21aに導入することにより、高温・高絶対湿度の外気が一旦除湿及び加熱される。そして、除湿及び加熱された外気は、さらにワッシャ23で冷却及び加湿される。よって、クーリングコイル24による除湿及び冷却やレヒータ26等による加熱に依存することなく、主としてワッシャ23で目標温湿度に近づけることが可能となる。このため、クーリングコイル24やレヒータ26等の負担を減らすことができ、夏期の空調に要するエネルギーを低減することができる。
【0092】
また、本実施形態の構成によれば、除湿ユニット33の交換時期を速やかに知ることができるため、蓄熱式除湿槽32A、32Bの除湿能力を維持しやすくなる。さらに、本実施形態の除湿空気生成装置31Aは、除湿ユニット交換式であることから、蓄熱式除湿槽32A、32Bの蓄熱(即ち除湿能力回復)のための第1供給経路41及びその付帯設備が不要となっている。従って、第1実施形態の除湿空気生成装置31に比べて構成が簡略化されており、小型かつ安価なシステム11Aとすることができる。
【0093】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0094】
・上記第1実施形態では、塗装ブース用空調機21がプレヒータ22、ワッシャ23、クーリングコイル24、ダイレクトスチーム25、レヒータ26及び給気ファン27を備えるものであったが、これに限定されない。別の実施形態では、例えば、塗装ブース用空調機21が、少なくともワッシャ23及び給気ファン27を備える一方、プレヒータ22、クーリングコイル24、ダイレクトスチーム25、レヒータ26のうちの少なくとも1つを備えないものとしてもよい。
【0095】
ここで、プレヒータ22、クーリングコイル24、ダイレクトスチーム25及びレヒータ26を全部省略し、ワッシャ23及び給気ファン27のみを備えた塗装ブース用空調機21であっても、夏期、中間期及び冬期に外気を目標温湿度に近づける制御を行うことができる。
【0096】
例えば、夏期において外気の温度が設定温度よりも高く、かつ外気の絶対湿度が設定湿度よりも高い場合には、除湿空気生成装置31による除湿及び加熱、ワッシャ23による冷却及び加湿、給気ファン27による加熱を経て、設定温湿度に到達させる制御を行う。夏期において外気の温度が設定温度よりも若干低く、かつ外気の絶対湿度が設定湿度よりも若干高い場合も同様に、除湿空気生成装置31による除湿及び加熱、ワッシャ23による冷却及び加湿、給気ファン27による加熱を経て、設定温湿度に到達させる制御を行う。中間期において外気の温度が設定温度よりも高く、かつ外気の絶対湿度が設定湿度よりも低い場合には、除湿空気生成装置31による加熱、ワッシャ23による冷却及び加湿、給気ファン27による加熱を経て、設定温湿度に到達させる制御を行う。冬期において外気の温度が設定温度よりも低く、かつ外気の絶対湿度が設定湿度よりも低い場合も同様に、除湿空気生成装置31による加熱、ワッシャ23による冷却及び加湿、給気ファン27による加熱を経て、設定温湿度に到達させる制御を行う。
【0097】
・別の実施形態では、例えば、制御装置15は、塗装ブース用空調機21の動作開始時刻の情報に基づいて、2つの蓄熱式除湿槽32A、32Bの一方に対して動作開始時刻よりも前から加温外気を供給し、あらかじめ除湿能力を回復させておく制御を行うように構成してもよい。なお、加温外気は、工場廃熱を含む流体と外気との熱交換により得ることが好ましい。この構成によれば、工場廃熱に含まれる熱エネルギーを有効利用することで、塗装ブース用空調機21の動作開始時に一方の蓄熱式除湿槽32A、32Bを使用可能な状態にしておくことができる。よって、空調に要するエネルギーの低減を図りつつ、塗装ブース1に対して直ちに所定の空調空気を供給することができる。
【0098】
・上記第1実施形態では、2つの蓄熱式除湿槽32A、32Bを備えた構成とし、流路切換によりこれら2つを交互に使用するようにしたが、これに限定されない。例えば、別の実施形態では、3つ以上の蓄熱式除湿槽を備えた構成とし、流路切換によりこれら3つ以上の蓄熱式除湿槽を順番に使用するようにしても勿論よい。
【0099】
・上記第2実施形態の塗装ブース用空調システム11Aでは、除湿空気生成装置31Aが2つの蓄熱式除湿槽32A、32Bを有しており、槽内に収容された除湿ユニット33を交互に交換して使用していたが、これに限定されない。例えば
図15に示される別の実施形態のシステムのように、除湿空気生成装置31Aが1つの蓄熱式除湿槽32Aのみを有するものであってもよい。
【0100】
・また、上記第1実施形態の塗装ブース用空調システム11では、除湿空気生成装置31が2つの蓄熱式除湿槽32A、32Bを備えており、槽内に収容された除湿ユニット33を交互に除湿能力回復処理を行って使用していたが、これに限定されない。例えば
図16に示される別の実施形態のシステムのように、除湿空気生成装置31が1つの蓄熱式除湿槽32Aのみを有するものであってもよい。
【0101】
1: 塗装ブース
11、11A: 塗装ブース用空調システム
15: 制御装置
21: 塗装ブース用空調機
21a: 外気導入口
22: プレヒータ
23: ワッシャ
24: クーリングコイル
26: レヒータ
27: 給気ファン
31、31A: 除湿空気生成装置
32A、32B: 蓄熱式除湿槽
33: 除湿ユニット
36: 熱交換手段
37: 気気熱交換器
38: 風量センサ
39: 熱交換器
41~48: (第1~第8)供給経路
F1: 蓄熱ファン
F2: 除湿送気ファン
F3: 除熱ファン
MD1~MD11: 経路切換機構としての第1~第11ダンパ
S1: 第1の温湿度センサ
S2: 第2の温湿度センサ