(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042572
(43)【公開日】2025-03-27
(54)【発明の名称】光学積層体および表示システム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20250319BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022095
(22)【出願日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2023149549
(32)【優先日】2023-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 大輔
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB01
2H149BA02
2H149BA03
2H149DA02
2H149DA04
2H149DA05
2H149DA18
2H149DA27
2H149EA02
2H149EA05
2H149EA19
2H149EA22
2H149FA03W
2H149FA05X
2H149FA05Y
2H149FA12Z
2H149FA13Y
2H149FA24Y
2H149FA26Y
2H149FA66
2H149FC02
2H149FC03
2H149FC07
2H149FC10
2H149FD05
(57)【要約】
【課題】VRゴーグルの表示特性向上に寄与し得る光学積層体の提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による表示システムは、偏光部材を介して画像を表す光を前方に出射する表示面を有する表示素子と、表示素子の前方に配置され、反射型偏光部材を含み、表示素子から出射された光を反射する反射部と、表示素子と反射部との間の光路上に配置される第一レンズ部と、表示素子と前記第一レンズ部との間に配置され、表示素子から出射された光を透過させ、反射部で反射された光を反射部に向けて反射させるハーフミラーと、表示素子とハーフミラーとの間の光路上に配置される第一位相差部材と、ハーフミラーと反射部との間の光路上に配置される第二位相差部材と、を備え、偏光部材と第一位相差部材とが光学積層体を構成し、光学積層体が、偏光部材と、λ/2板として機能する層と、λ/4板として機能する層とをこの順に備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに対して画像を表示する表示システムであって、
偏光部材を介して画像を表す光を前方に出射する表示面を有する表示素子と、
前記表示素子の前方に配置され、反射型偏光部材を含み、前記表示素子から出射された光を反射する反射部と、
前記表示素子と前記反射部との間の光路上に配置される第一レンズ部と、
前記表示素子と前記第一レンズ部との間に配置され、前記表示素子から出射された光を透過させ、前記反射部で反射された光を前記反射部に向けて反射させるハーフミラーと、
前記表示素子と前記ハーフミラーとの間の光路上に配置される第一位相差部材と、
前記ハーフミラーと前記反射部との間の光路上に配置される第二位相差部材と、を備え、
前記偏光部材と前記第一位相差部材とが光学積層体を構成し、
前記光学積層体が、偏光部材と、λ/2板として機能する層と、λ/4板として機能する層とをこの順に備える、
表示システム。
【請求項2】
偏光部材と、λ/2板として機能する層と、λ/4板として機能する層とをこの順に備える、請求項1に記載の表示システムに用いられる、光学積層体。
【請求項3】
前記λ/2板として機能する層の面内位相差Re(550)が、230nm~330nmである、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記λ/4板として機能する層の面内位相差Re(550)が、100nm~200nmである、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記λ/2板として機能する層の遅相軸と前記偏光部材の吸収軸とのなす角度が、5°~35°である、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記λ/4板として機能する層の遅相軸と前記偏光部材の吸収軸とのなす角度が、55°~85°である、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記λ/2板として機能する層が、逆分散波長特性を示す、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記λ/4板として機能する層が、逆分散波長特性を示す、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項9】
屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す部材をさらに備え、
前記屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す部材が、前記λ/4板として機能する層の前記λ/2板として機能する層とは反対側に配置されている、
請求項2に記載の光学積層体。
【請求項10】
反射防止保護部材をさらに備え、
前記反射防止保護部材が、前記偏光部材とは反対側の最外側に配置されている、
請求項2に記載の光学積層体。
【請求項11】
極角0°で測定される波長550nmの透過光の偏光解消指数(DI)を1から差し引いた値(1-DI)が、99.5%以上である、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項12】
極角30°、方位角0°~360°で測定される波長550nmの透過光の偏光解消指数(DI)を1から差し引いた値(1-DI)が、99.4%以上である、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項13】
偏光部材を介して出射された画像を表す光を、第一位相差部材を通過させるステップと、
前記第一位相差部材を通過した光を、ハーフミラーおよび第一レンズ部を通過させるステップと、
前記ハーフミラーおよび前記第一レンズ部を通過した光を、前記第二位相差部材を通過させるステップと、
前記第二位相差部材を通過した光を、反射型偏光部材で前記ハーフミラーに向けて反射させるステップと、
前記反射型偏光部材および前記ハーフミラーで反射させた光を、前記第二位相差部材により前記反射型偏光部材を透過可能にするステップと、
を有する、表示方法に前記第一位相差部材として用いられる、
請求項2に記載の光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体および表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、画像表示を実現し、画像表示の性能を高めるために、一般的に、偏光部材、位相差部材等の光学部材が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、画像表示装置の新たな用途が開発されている。例えば、Virtual Reality(VR)を実現するためのディスプレイ付きゴーグル(VRゴーグル)が製品化され始めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑み、本発明はVRゴーグルの表示特性向上に寄与し得る光学積層体の提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.本発明の実施形態による表示システムは、ユーザに対して画像を表示する表示システムであって、偏光部材を介して画像を表す光を前方に出射する表示面を有する表示素子と、前記表示素子の前方に配置され、反射型偏光部材を含み、前記表示素子から出射された光を反射する反射部と、前記表示素子と前記反射部との間の光路上に配置される第一レンズ部と、前記表示素子と前記第一レンズ部との間に配置され、前記表示素子から出射された光を透過させ、前記反射部で反射された光を前記反射部に向けて反射させるハーフミラーと、前記表示素子と前記ハーフミラーとの間の光路上に配置される第一位相差部材と、前記ハーフミラーと前記反射部との間の光路上に配置される第二位相差部材と、を備え、前記偏光部材と前記第一位相差部材とが光学積層体を構成し、前記光学積層体が、偏光部材と、λ/2板として機能する層と、λ/4板として機能する層とをこの順に備える。
2.本発明の実施形態による光学積層体は、偏光部材と、λ/2板として機能する層と、λ/4板として機能する層とをこの順に備え、上記1に記載の表示システムに用いられる。
3.上記2に記載の光学積層体は、上記λ/2板として機能する層の面内位相差Re(550)が、230nm~330nmであってもよい。
4.上記2または3に記載の光学積層体は、上記λ/4板として機能する層の面内位相差Re(550)が、100nm~200nmであってもよい。
5.上記2から4のいずれかに記載の光学積層体は、上記λ/2板として機能する層の遅相軸と前記偏光部材の吸収軸とのなす角度が、5°~35°であってもよい。
6.上記2から5のいずれかに記載の光学積層体は、上記λ/4板として機能する層の遅相軸と前記偏光部材の吸収軸とのなす角度が、55°~85°であってもよい。
7.上記2から6のいずれかに記載の光学積層体は、上記λ/2板として機能する層が、逆分散波長特性を示してもよい。
8.上記2から7のいずれかに記載の光学積層体は、上記λ/4板として機能する層が、逆分散波長特性を示してもよい。
9.上記2から8のいずれかに記載の光学積層体は、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す部材をさらに備え、前記屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す部材が、前記λ/4板として機能する層の前記λ/2板として機能する層とは反対側に配置されていてもよい。
10.上記2から9のいずれかに記載の光学積層体は、反射防止保護部材をさらに備え、前記反射防止保護部材が、前記偏光部材とは反対側の最外側に配置されている。
11.上記2から10のいずれかに記載の光学積層体は、極角0°で測定される波長550nmの透過光の偏光解消指数(DI)を1から差し引いた値(1-DI)が、99.5%以上であってもよい。
12.上記2から11のいずれかに記載の光学積層体は、極角30°、方位角0°~360°で測定される波長550nmの透過光の偏光解消指数(DI)を1から差し引いた値(1-DI)が、99.4%以上であってもよい。
13.上記2から12のいずれかに記載の光学積層体は、偏光部材を介して出射された画像を表す光を、第一位相差部材を通過させるステップと、前記第一位相差部材を通過した光を、ハーフミラーおよび第一レンズ部を通過させるステップと、前記ハーフミラーおよび前記第一レンズ部を通過した光を、第二位相差部材を通過させるステップと、前記第二位相差部材を通過した光を、反射型偏光部材で前記ハーフミラーに向けて反射させるステップと、前記反射型偏光部材および前記ハーフミラーで反射させた光を、前記第二位相差部材により前記反射型偏光部材を透過可能にするステップと、を有する、表示方法に上記第一位相差部材として用いられてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、VRゴーグルの表示特性向上に寄与し得る光学積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る表示システムの概略の構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態に係る光学積層体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、図面については、同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0010】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、特段の言及がない限り、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。また、本明細書において、「略平行」は、0°±10°の範囲を包含し、好ましくは0°±5°の範囲内であり、より好ましくは0°±3°の範囲内であり、さらに好ましくは0°±1°の範囲内である。「略直交」は、90°±10°の範囲を包含し、好ましくは90°±5°の範囲内であり、より好ましくは90°±3°の範囲内であり、さらに好ましくは90°±1°の範囲内である。
【0011】
A.表示システム
図1は本発明の1つの実施形態に係る表示システムの概略の構成を示す模式図である。
図1では、表示システム2の各構成要素の配置および形状等を模式的に図示している。表示システム2は、表示素子12と、反射型偏光部材を含む反射部14と、第一レンズ部16と、ハーフミラー18と、第一位相差部材20と、第二位相差部材22と、第二レンズ部24とを備えている。反射部14は、表示素子12の表示面12a側である前方に配置され、表示素子12から出射された光を反射し得る。第一レンズ部16は表示素子12と反射部14との間の光路上に配置され、ハーフミラー18は表示素子12と第一レンズ部16との間に配置されている。第一位相差部材20は表示素子12とハーフミラー18との間の光路上に配置され、第二位相差部材22はハーフミラー18と反射部14との間の光路上に配置されている。ハーフミラーから前方に配置される構成要素(図示例では、ハーフミラー18、第一レンズ部16、第二位相差部材22、反射部14および第二レンズ部24)をまとめてレンズ部(レンズ部4)と称する場合がある。
【0012】
表示素子12は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイであり、画像を表示するための表示面12aを有している。表示面12aから出射される光は、例えば、表示素子12に含まれ得る偏光部材(代表的には、偏光フィルム)を通過して出射され、第1の直線偏光とされている。
【0013】
第一位相差部材20は、第一位相差部材20に入射した第1の直線偏光を第1の円偏光に変換し得る。第一位相差部材20は、
図1に示すように、表示素子12に一体に設けられ得る。具体的には、表示素子12に含まれ得る偏光部材と第一位相差部材20とが一体に設けられて、後述の光学積層体200を構成し得る。換言すると、後述の光学積層体200におけるλ/2板として機能する層20aと、λ/4板として機能する層20bとを含む積層体が、表示システム2における第一位相差部材20であり得る。
【0014】
ハーフミラー18は、表示素子12から出射された光を透過させ、反射部14で反射された光を反射部14に向けて反射させる。ハーフミラー18は、第一レンズ部16に一体に設けられている。
【0015】
第二位相差部材22は、反射部14およびハーフミラー18で反射させた光を、反射型偏光部材を含む反射部14を透過させ得るλ/4部材である(以下、第二位相差部材を第2のλ/4部材と称する場合がある)。なお、第二位相差部材22は、第一レンズ部16に一体に設けられてもよい。
【0016】
位相差部材(第一位相差部材)20から出射された第1の円偏光は、ハーフミラー18および第一レンズ部16を通過し、第2のλ/4部材22により第2の直線偏光に変換される。第2のλ/4部材22から出射された第2の直線偏光は、反射部14に含まれる反射型偏光部材を透過せずにハーフミラー18に向けて反射される。このとき、反射部14に含まれる反射型偏光部材に入射した第2の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材の反射軸と同方向である。そのため、反射部14に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光部材で反射される。
【0017】
反射部14で反射された第2の直線偏光は第2のλ/4部材22により第2の円偏光に変換され、第2のλ/4部材22から出射された第2の円偏光は第一レンズ部16を通過してハーフミラー18で反射される。ハーフミラー18で反射された円偏光は、第一レンズ部16を通過し、第2のλ/4部材22により第3の直線偏光に変換される。第3の直線偏光は、反射部14に含まれる反射型偏光部材を透過する。このとき、反射部14に含まれる反射型偏光部材に入射した第3の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材の透過軸と同方向である。そのため、反射部14に入射した第3の直線偏光は、反射型偏光部材を透過する。
【0018】
反射部14を透過した光は、第二レンズ部24を通過して、ユーザの目26に入射する。
【0019】
例えば、表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と反射部14に含まれる反射型偏光部材の反射軸とは、互いに略平行に配置されてもよいし、略直交に配置されてもよい。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と第一位相差部材20の遅相軸とのなす角度および第一位相差部材20の面内位相差は、第一の直線偏光を第1の円偏光に変換し得るように設定される。上記角度および面内位相差についてはB項で詳述する。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と第二位相差部材22の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。
【0020】
第二位相差部材22の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。
【0021】
第二位相差部材22は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第二位相差部材22のRe(450)/Re(550)は、例えば1未満であり、0.95以下であってよく、さらには0.90未満、さらには0.85以下であってもよい。第二位相差部材22のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上である。
【0022】
1つの実施形態において、第二位相差部材22は、Re(400)/Re(550)<0.85、Re(650)/Re(550)>1.03、およびRe(750)/Re(550)>1.05を全て満たす。第二位相差部材22は、0.65<Re(400)/Re(550)<0.80(好ましくは、0.7<Re(400)/Re(550)<0.75)、1.0<Re(650)/Re(550)<1.25(好ましくは、1.05<Re(650)/Re(550)<1.20)、および1.05<Re(750)/Re(550)<1.40(好ましくは、1.08<Re(750)/Re(550)<1.36)から選択される少なくとも1つを満たすことが好ましく、より好ましくは少なくとも2つを満たし、さらに好ましくは全てを満たす。
【0023】
第二位相差部材22は、好ましくは屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。第二位相差部材22のNz係数は、好ましくは0.9~3、より好ましくは0.9~2.5、さらに好ましくは0.9~1.5、特に好ましくは0.9~1.3である。
【0024】
第二位相差部材22の表面平滑性は、例えば0.50arcmin以下であり、好ましくは0.40arcmin以下であり、より好ましくは0.30arcmin以下であり、さらに好ましくは0.20arcmin以下である。第二位相差部材22がこのような表面平滑性を満足することにより、視認性に優れた表示システムを実現することができる。例えば、このような表面平滑性を満足することにより、面内位相差の均一性を向上させることができ、結果として、後述する反射部での光漏れ等を抑制することができる。表面平滑性の測定方法は後述する。
【0025】
第二位相差部材22の厚みのばらつきは、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは0.8μm以下であり、さらに好ましくは0.6μm以下であり、さらにより好ましくは0.4μm以下である。このような厚みのばらつきによれば、例えば、上記表面平滑性を良好に達成し得る。
【0026】
第二位相差部材22は、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で形成される。第二位相差部材22は、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層で構成される第二位相差部材22については、B項に記載の第一位相差部材20を構成するλ/4板として機能する層と同様の説明を適用することができる。λ/4板として機能する層と第二位相差部材22とは、同じ構成(形成材料、厚み、光学特性等)の部材であってもよく、異なる構成の部材であってもよい。
【0027】
第二位相差部材22の厚みは、好ましくは100μm以下である。具体的には、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成される第二位相差部材22の厚みは、例えば10μm~100μmであり、好ましくは10μm~70μm、より好ましくは10μm~60μm、さらに好ましくは20μm~50μmである。また、液晶配向固化層で構成される第二位相差部材22の厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは1μm~8μm、より好ましくは1μm~6μm、さらに好ましくは1μm~4μmである。
【0028】
反射部14は、反射型偏光部材に加え、吸収型偏光部材を含んでいてもよい。吸収型偏光部材は、反射型偏光部材の前方に配置され得る。反射型偏光部材の反射軸と吸収型偏光部材の吸収軸とは互いに略平行に配置され得、反射型偏光部材の透過軸と吸収型偏光部材の透過軸とは互いに略平行に配置され得る。反射部14が吸収型偏光部材を含む場合、反射部14は反射型偏光部材と吸収型偏光部材とを有する積層体を含んでいてもよい。
【0029】
上記反射型偏光部材は、その透過軸に平行な偏光(代表的には、直線偏光)をその偏光状態を維持したまま透過させ、それ以外の偏光状態の光(代表的には、その透過軸に直交な偏光状態の光)を反射し得る。反射型偏光部材の直交透過率(Tc)は、例えば0.01%~3%であり得る。反射型偏光部材の単体透過率(Ts)は、例えば43%~49%、好ましくは45%~47%であり得る。反射型偏光部材の偏光度(P)は、例えば92%~99.99%であり得る。反射型偏光部材としては、代表的には、多層構造を有するフィルム(反射型偏光フィルムと称する場合がある)で構成される。反射型偏光フィルムの市販品として、例えば、3M社製の商品名「DBEF」、「APF」、日東電工社製の商品名「APCF」が挙げられる。
【0030】
上記吸収型偏光部材は、代表的には、二色性物質を含む樹脂フィルム(すなわち、吸収型偏光膜)を含み得る。吸収型偏光膜としては、B項に記載の吸収型偏光膜が用いられ得る。吸収型偏光膜の厚みは、例えば1μm以上20μm以下であり、2μm以上15μm以下であってもよく、12μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0031】
B.光学積層体
図2は、本発明の1つの実施形態に係る光学積層体の概略断面図である。光学積層体200は、偏光部材10と、λ/2板として機能する層20aと、λ/4板として機能する層20bとをこの順に備える。光学積層体200は、λ/4板として機能する層20bが視認側となるように用いられることが好ましい。1つの実施形態において、上記光学積層体は、VRゴーグル等の表示システムにおいて、表示素子側(例えば、表示素子とレンズ部との間)に配置して使用され得る。上記のとおり、上記表示システムにおいて、表示素子に含まれる偏光部材と第一位相差部材とが、光学積層体を構成し得る。換言すると、λ/2板として機能する層20aとλ/4板として機能する層20bとを含む積層体が、第一位相差部材20を構成する。
【0032】
上記構成の光学積層体を用いることにより、表示特性に優れる表示システムを得ることができる。例えば、レンズ部を含む表示システムにおいて、レンズ部に到達する前の光路に上記光学積層体を配置すれば、円偏光性が高い光を当該表示システムのレンズ部に導入することができ、その結果、表示画像が重なって視認される、いわゆるゴースト現象を低減することができる。また、光漏れを抑制し、高精細化に寄与し得る。これらの効果は、A項に記載の表示システムに上記光学積層体を組み込むことにより、顕著となる。
【0033】
上記光学積層体においては、極角30°、方位角0°~360°で測定される波長550nmの透過光の楕円率は、好ましくは0.77以上であり、より好ましくは0.78以上であり、さらに好ましくは0.80以上であり、さらに好ましくは0.82以上であり、特に好ましくは0.84以上である。このような楕円率を示す光学積層体を用いれば、上記効果が顕著となる。全方位にわたって、透過光の楕円率を緻密に制御することにより、表示特性向上を実現し得ることは、上記光学積層体の成果のひとつである。光学積層体において、極角30°、方位角0°~360°で測定される波長550nmの透過光の楕円率は、高いほど好ましいが、その上限は、例えば、0.90(好ましくは0.93、より好ましくは0.95、さらに好ましくは0.99)である。楕円率は、円偏光の短軸/長軸の比であり、例えば、完全に円偏光のときの楕円率は1であり、完全に直線偏光のときの楕円率は0である。また、本明細書において、「楕円率」は楕円率の絶対値の意味である。
【0034】
本明細書において、極角30°、方位角0°~360°で測定される透過光の楕円率とは、極角30°で所定波長の光を偏光部材側から入射させ、極角30°の出射光について、方位角0°~360°の範囲で方位角11.25°ごとに測定した楕円率である。したがって、方位角0°~360°で測定される「楕円率がX以上である」とは、得られた測定値32個の最小値がXであることを意味する。
【0035】
1つの実施形態において、上記光学積層体は、極角30°、方位角0°~360°で測定される波長450nmの透過光の楕円率が、好ましくは0.77以上であり、より好ましくは0.80以上であり、さらに好ましくは0.82以上であり、特に好ましくは0.84以上である。このような範囲であれば、ゴースト現象の低減効果、光漏れ抑制効果、高精細化効果が顕著な光学積層体を得ることができる。上記光学積層体において、極角30°、方位角0°~360°で測定される波長450nmの透過光の楕円率は高いほど好ましいが、その上限は、例えば、0.90(好ましくは0.93、より好ましくは0.95、さらに好ましくは0.99)である。
【0036】
1つの実施形態において、上記光学積層体は、極角30°、方位角0°~360°で測定される波長650nmの透過光の楕円率が、好ましくは0.77以上であり、より好ましくは0.80以上であり、さらに好ましくは0.82以上である。このような範囲であれば、ゴースト現象の低減効果、光漏れ抑制効果、高精細化効果が顕著な光学積層体を得ることができる。上記光学積層体において、極角30°、方位角0°~360°で測定される波長650nmの透過光の楕円率は高いほど好ましいが、その上限は、例えば、0.90(好ましくは0.93、より好ましくは0.95、さらに好ましくは0.99)である。
【0037】
1つの実施形態において、上記光学積層体は、極角30°において、方位角0°~360°の範囲で方位角11.25°ごとに波長550nmの透過光の楕円率を測定したとき、該楕円率の平均値が0.83以上であり、好ましくは0.84以上であり、さらに好ましくは0.86以上である。このような範囲であれば、ゴースト現象の低減効果、光漏れ抑制効果、高精細化効果が顕著な光学積層体を得ることができる。極角30°において、方位角0°~360°の範囲で方位角11.25°ごとに波長550nmの透過光の楕円率を測定したとき、該楕円率の平均値は高いほど好ましいが、その上限は、例えば、0.90(好ましくは0.95)である。なお、本明細書において、楕円率の平均値とは、上記のようにして楕円率を測定して得られた測定値32個の平均値を意味する。
【0038】
1つの実施形態において、上記光学積層体は、極角30°において、方位角0°~360°の範囲で方位角11.25°ごとに波長450nmの透過光の楕円率を測定したとき、該楕円率の平均値が0.80以上であり、好ましくは0.84以上であり、さらに好ましくは0.86以上である。このような範囲であれば、ゴースト現象の低減効果、光漏れ抑制効果、高精細化効果が顕著な光学積層体を得ることができる。上記光学積層体において、極角30°において、方位角0°~360°の範囲で方位角11.25°ごとに波長450nmの透過光の楕円率を測定したとき、該楕円率の平均値は高いほど好ましいが、その上限は、例えば、0.90(好ましくは0.95)である。
【0039】
1つの実施形態において、上記光学積層体は、極角30°において、方位角0°~360°の範囲で方位角11.25°ごとに波長650nmの透過光の楕円率を測定したとき、該楕円率の平均値が0.80以上であり、好ましくは0.84以上であり、さらに好ましくは0.86以上である。このような範囲であれば、ゴースト現象の低減効果、光漏れ抑制効果、高精細化効果が顕著な光学積層体を得ることができる。上記光学積層体において、極角30°において、方位角0°~360°の範囲で方位角11.25°ごとに波長650nmの透過光の楕円率を測定したとき、該楕円率の平均値は高いほど好ましいが、その上限は、例えば、0.90(好ましくは0.95)である。
【0040】
1つの実施形態において、上記光学積層体は、極角30°において、方位角0°~360°の範囲で方位角11.25°ごとに波長550nmの透過光の楕円率を測定したとき、該楕円率が0.85以上となるデータが10個以上であり、好ましくは15個以上であり、より好ましくは20個以上であり、さらに好ましくは25個以上であり、特に好ましくは30個以上であり、最も好ましくは32個である。このような範囲であれば、ゴースト現象の低減効果、光漏れ抑制効果、高精細化効果が顕著な光学積層体を得ることができる。
【0041】
1つの実施形態において、上記光学積層体は、極角30°において、方位角0°~360°の範囲で方位角11.25°ごとに波長450nmの透過光の楕円率を測定したとき、該楕円率が0.85以上となるデータが10個以上であり、好ましくは15個以上であり、より好ましくは20個以上であり、さらに好ましくは25個以上であり、特に好ましくは30個以上であり、最も好ましくは32個である。このような範囲であれば、ゴースト現象の低減効果、光漏れ抑制効果、高精細化効果が顕著な光学積層体を得ることができる。
【0042】
1つの実施形態において、上記光学積層体は、極角30°において、方位角0°~360°の範囲で方位角11.25°ごとに波長650nmの透過光の楕円率を測定したとき、該楕円率が0.85以上となるデータが10個以上であり、好ましくは15個以上であり、より好ましくは20個以上であり、さらに好ましくは25個以上であり、特に好ましくは30個以上であり、最も好ましくは32個である。このような範囲であれば、ゴースト現象の低減効果、光漏れ抑制効果、高精細化効果が顕著な光学積層体を得ることができる。
【0043】
1つの実施形態において、上記光学積層体は、極角0°(正面方向)で測定される波長550nmの透過光の楕円率は、好ましくは0.94以上であり、より好ましくは0.95以上であり、さらに好ましくは0.96以上である。このような範囲であれば、ゴースト現象の低減効果、光漏れ抑制効果、高精細化効果が顕著な光学積層体を得ることができる。光学積層体は、極角0°(正面方向)で測定される波長550nmの透過光の楕円率は高いほど好ましいが、その上限は、例えば、0.99(好ましくは1)である。
【0044】
1つの実施形態において、上記光学積層体は、極角0°(正面方向)で測定される波長450nmの透過光の楕円率は、好ましくは0.94以上であり、より好ましくは0.95以上であり、さらに好ましくは0.96以上である。このような範囲であれば、ゴースト現象の低減効果、光漏れ抑制効果、高精細化効果が顕著な光学積層体を得ることができる。光学積層体は、極角0°(正面方向)で測定される波長450nmの透過光の楕円率は高いほど好ましいが、その上限は、例えば、0.99(好ましくは1)である。
【0045】
1つの実施形態において、上記光学積層体は、極角0°(正面方向)で測定される波長650nmの透過光の楕円率は、好ましくは0.94以上であり、より好ましくは0.95以上であり、さらに好ましくは0.96以上である。このような範囲であれば、ゴースト現象の低減効果、光漏れ抑制効果、高精細化効果が顕著な光学積層体を得ることができる。光学積層体は、極角0°(正面方向)で測定される波長650nmの透過光の楕円率は高いほど好ましいが、その上限は、例えば、0.99(好ましくは1)である。
【0046】
上記光学積層体において、「極角0°(正面方向)で測定される波長550nmの透過光の楕円率」(楕円率A)に対する、「極角30°において、方位角0°~360°の範囲で方位角11.25°ごとに波長550nmの透過光の楕円率を測定したとき、該楕円率の平均値」(楕円率B)の比(楕円率B/楕円率A)は、好ましくは0.85以上であり、より好ましくは0.88以上であり、より好ましくは0.9以上である。このような範囲であれば、ゴースト現象の低減効果、光漏れ抑制効果、高精細化効果が顕著な光学積層体を得ることができる。楕円率B/楕円率Aの上限は例えば、0.98(好ましくは0.99、より好ましくは1)である。
【0047】
1つの実施形態においては、上記光学積層体の偏光解消指数(DI;Depolarization Index)を1から差し引いた値(1-DI)は、60%以上である。偏光解消指数は、偏光作用を表すミューラー行列(下記(1))を測定し、下記式(2)から求めることができる。偏光作用を表すミューラー行列は、例えば、ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrics社製、製品名「Axoscan」)を用いて、23℃において、所定波長(例えば、550nm)の光を光学積層体の偏光部材側から入射させることにより測定される。
【数1】
【0048】
上記光学積層体は、極角30°、方位角0°~360°で測定される波長550nmの透過光の偏光解消指数(DI)を1から差し引いた値(1-DI)が、好ましくは99.4%以上であり、より好ましくは99.5%以上であり、さらに好ましくは99.6%以上であり、特に好ましくは99.68%以上である。このような範囲であれば、本発明の効果が顕著となる。本明細書において、極角30°、方位角0°~360°で測定される所定波長の偏光解消指数(DI)は、極角30°で所定波長の光を光学積層体の偏光部材側から入射させ、極角30°の出射光について、方位角0°~360°の範囲で方位角11.25°ごとに測定した偏光解消指数の平均値である。
【0049】
上記光学積層体は、極角30°、方位角0°~360°で測定される波長450nmの透過光の偏光解消指数(DI)を1から差し引いた値(1-DI)が、好ましくは99.4%以上であり、より好ましくは99.5%以上であり、さらに好ましくは99.6%以上である。このような範囲であれば、本発明の効果が顕著となる。
【0050】
上記光学積層体は、極角30°、方位角0°~360°で測定される波長650nmの透過光の偏光解消指数(DI)を1から差し引いた値(1-DI)が、好ましくは99.4%以上であり、より好ましくは99.5%であり、さらに好ましくは99.6%以上である。このような範囲であれば、本発明の効果が顕著となる。
【0051】
上記光学積層体は、極角0°(正面方向)で測定される波長550nmの透過光の偏光解消指数(DI)を1から差し引いた値(1-DI)が、好ましくは99.5%以上であり、より好ましくは99.6%以上であり、さらに好ましくは99.7%以上であり、特に好ましくは99.75%以上である。このような範囲であれば、本発明の効果が顕著となる。
【0052】
上記光学積層体は、極角0°(正面方向)で測定される波長450nmの透過光の偏光解消指数(DI)を1から差し引いた値(1-DI)が、好ましくは99.5%以上であり、より好ましくは99.6%以上であり、さらに好ましくは99.7%以上である。このような範囲であれば、本発明の効果が顕著となる。
【0053】
上記光学積層体は、極角0°(正面方向)で測定される波長650nmの透過光の偏光解消指数(DI)を1から差し引いた値(1-DI)が、好ましくは99.4%以上であり、より好ましくは99.5%以上であり、さらに好ましくは99.6%以上である。このような範囲であれば、本発明の効果が顕著となる。
【0054】
(位相差部材)
上記のとおり、光学積層体は、位相差部材として、偏光部材側から順に、λ/2板として機能する層と、λ/4板として機能する層とを備える。
【0055】
λ/2板として機能する層の遅相軸と偏光部材の吸収軸とのなす角度は、好ましくは5°~35°であり、より好ましくは10°~20°であり、さらに好ましくは12°~18°であり、特に好ましくは約15°である。λ/4板として機能する層の遅相軸と偏光部材の吸収軸とのなす角度は、好ましくは55°~85°であり、より好ましくは70°~80°であり、さらに好ましくは72°~78°であり、特に好ましくは約75°である。
【0056】
λ/4板として機能する層の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~200nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。
【0057】
λ/2板として機能する層の面内位相差Re(550)は、例えば200nm~330nmであり、230nm~330nmであってもよく、230nm~290nmであってもよく、250nm~280nmであってもよい。
【0058】
λ/4板として機能する層は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。上記位相差部材を構成する層のRe(450)/Re(550)は、例えば1未満であり、0.95以下であってよく、さらには0.90未満、さらには0.85以下であってもよい。上記位相差部材を構成する層のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上である。λ/2板として機能する層は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。上記位相差部材を構成する層のRe(450)/Re(550)は、例えば1未満であり、0.95以下であってよく、さらには0.90未満、さらには0.85以下であってもよい。上記位相差部材を構成する層のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上である。以下、λ/4板として機能する層およびλ/2板として機能する層とを、位相差部材を構成する層と総称することがある。
【0059】
1つの実施形態において、上記位相差部材を構成する層は、Re(400)/Re(550)<0.85、Re(650)/Re(550)>1.03、およびRe(750)/Re(550)>1.05を全て満たす。上記位相差部材を構成する層は、0.65<Re(400)/Re(550)<0.80(好ましくは、0.7<Re(400)/Re(550)<0.75)、1.0<Re(650)/Re(550)<1.25(好ましくは、1.05<Re(650)/Re(550)<1.20)、および1.05<Re(750)/Re(550)<1.40(好ましくは、1.08<Re(750)/Re(550)<1.36)から選択される少なくとも1つを満たすことが好ましく、より好ましくは少なくとも2つを満たし、さらに好ましくは全てを満たす。
【0060】
光学積層体中の位相差部材を構成する層は、好ましくは屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。光学積層体中の位相差部材を構成する層のNz係数は、好ましくは0.9~3、より好ましくは0.9~2.5、さらに好ましくは0.9~1.5、特に好ましくは0.9~1.3である。
【0061】
光学積層体中の位相差部材を構成する層の表面平滑性は、例えば0.50arcmin以下であり、好ましくは0.40arcmin以下であり、より好ましくは0.30arcmin以下であり、さらに好ましくは0.20arcmin以下である。このような範囲であれば、視認性に優れた表示システムを実現することができる。例えば、このような表面平滑性を満足することにより、面内位相差の均一性を向上させることができ、結果として、優れた表示特性を有する表示システムが得られ得る。
【0062】
光学積層体中の位相差部材を構成する層の厚みのばらつきは、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは0.8μm以下であり、さらに好ましくは0.6μm以下であり、さらにより好ましくは0.4μm以下である。このような厚みのばらつきによれば、例えば、上記表面平滑性を良好に達成し得る。ここで、厚みのばらつきは、測定面内に位置する第一部位の厚みと、第一部位から任意の方向(例えば、上方向、下方向、左方向および右方向)に、所定の間隔(例えば、5mm~15mm)をあけた位置の厚みを測定することにより求めることができる。
【0063】
光学積層体中の位相差部材を構成する層は、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で形成される。当該位相差部材は、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。なお、樹脂フィルムの延伸フィルムを位相差フィルムと称する場合がある。
【0064】
上記樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて(例えば、ブレンド、共重合)用いてもよい。光学積層体中の位相差部材を構成する層が逆分散波長特性を示す場合、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)を含む樹脂フィルムが好適に用いられ得る。
【0065】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、第一位相差部材を構成する層に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂および第一位相差部材を構成する層の形成方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0066】
延伸フィルムにより、λ/4板として機能する層を形成する場合、その厚みは、例えば10μm~100μmであり、好ましくは10μm~70μm、より好ましくは10μm~60μm、さらに好ましくは20μm~50μmである。延伸フィルムにより、λ/2板として機能する層を形成する場合、その厚みは、例えば20μm~200μmであり、好ましくは20μm~140μm、より好ましくは20μm~120μm、さらに好ましくは40μm~100μmである。
【0067】
上記液晶化合物の配向固化層は、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層である。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。代表的には、棒状の液晶化合物が光学積層体中の位相差部材を構成する層(例えば、λ/4板として機能する層、λ/2板として機能する層等)の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。棒状の液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーおよび液晶モノマーが挙げられる。液晶化合物は、好ましくは、重合可能である。液晶化合物が重合可能であると、液晶化合物を配向させた後に重合させることで、液晶化合物の配向状態を固定できる。
【0068】
上記液晶化合物の配向固化層(液晶配向固化層)は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0069】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0070】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性または架橋性である場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0071】
上記液晶化合物としては、任意の適切な液晶ポリマーおよび/または液晶モノマーが用いられる。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。液晶化合物の具体例および液晶配向固化層の作製方法は、例えば、特開2006-163343号公報、特開2006-178389号公報、国際公開第2018/123551号公報に記載されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0072】
液晶化合物の配向固化層より、λ/4板として機能する層を形成する場合、その厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは1μm~8μm、より好ましくは1μm~6μm、さらに好ましくは1μm~4μmである。液晶化合物の配向固化層より、λ/2板として機能する層を形成する場合、その厚みは、例えば2μm~20μmであり、好ましくは2μm~16μm、より好ましくは2μm~12μm、さらに好ましくは2μm~8μmである。
【0073】
(偏光部材)
上記偏光部材は、代表的には、二色性物質を含む樹脂フィルム(吸収型偏光膜と称する場合がある)を含み得る。吸収型偏光膜の厚みは、例えば1μm以上20μm以下であり、2μm以上15μm以下であってもよく、12μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0074】
上記偏光部材は、単層の樹脂フィルムから作製してもよく、二層以上の積層体を用いて作製してもよい。
【0075】
単層の樹脂フィルムから作製する場合、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理等を施すことにより偏光部材を得ることができる。中でも、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られる偏光部材が好ましい。
【0076】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。
【0077】
上記二層以上の積層体を用いて作製する場合の積層体としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる吸収型偏光膜は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を吸収型偏光膜とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる吸収型偏光膜の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を吸収型偏光膜の保護層としてもよく)、樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような吸収型偏光膜の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0078】
吸収型偏光膜の直交透過率(Tc)は、0.5%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.05%以下である。吸収型偏光膜の単体透過率(Ts)は、例えば41.0%~45.0%であり、好ましくは42.0%以上である。吸収型偏光膜の偏光度(P)は、例えば99.0%~99.997%であり、好ましくは99.9%以上である。
【0079】
(その他の部材)
上記光学積層体を構成する各部材は、任意の適切な接着層を介して積層され得る。接着層を介して部材を積層することにより、平滑性に優れる光学積層体を得ることができる。平滑性に優れる光学積層体を用いて、例えば、A項に記載の表示システムを構成すれば、レンズ部により画像が拡大されてもなお、表示特性に優れた画像表示を実現することができる。
【0080】
1つの実施形態においては、光学積層体中の位相差部材は、任意の適切な接着層を備え、光学積層体中の位相差部材を構成する層は、接着層を介して積層され得る。また、位相差部材と偏光部材とは、接着層を介して積層され得る。接着層により、位相差部材と偏光部材とを一体化することにより、ゴースト現象の防止に寄与し得る光学積層体を得ることができる。
【0081】
接着層は、接着剤で形成されてもよいし、粘着剤で形成されてもよい。具体的には、接着層は、接着剤層であってもよいし、粘着剤層であってもよい。接着層の厚みは、例えば0.05μm~30μmである。
【0082】
粘着剤の具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、およびポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤のベース樹脂を形成するモノマーの種類、数、組み合わせおよび配合比、ならびに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間等を調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤を調製することができる。粘着剤のベース樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ベース樹脂としては、アクリル系樹脂が好ましく用いられる。
【0083】
接着剤は、接着剤層を形成する過程で、その状態が液体から固体へ不可逆的に変化するものであり、塗布時には流動性を有し、硬化処理(例えば、活性エネルギー線照射、加熱)により硬化する性質を有する。接着剤としては、好ましくは、硬化型接着剤が用いられる。具体的には、接着剤層は、樹脂の硬化層であることが好ましい。硬化型接着剤としては、好ましくは、紫外線硬化型接着剤が用いられる。
【0084】
上記紫外線硬化型接着剤は、硬化性モノマーとして、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物等の硬化性モノマーを含む。好ましくは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が用いられる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基をいう。
【0085】
上記位相差部材に含まれる接着剤層の厚みは、例えば0.5μm以上3μm以下であり、好ましくは2μm以下であり、より好ましくは1.3μm以下であり、さらに好ましくは1.1μm以下であり、特に好ましくは0.9μm以下である。このような厚みによれば、極めて平滑性に優れた光学積層体を得ることができる。
【0086】
上記光学積層体は、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示し得る部材(いわゆる、ポジティブCプレート)をさらに有していてもよい。ポジティブCプレートは、例えば、位相差部材の偏光部材とは反対側(すなわち、λ/4板として機能する層のλ/2板として機能する層とは反対側)に配置され得る。ポジティブCプレートを配置することにより、出射光の楕円率がより高い、光学積層体を得ることができる。
【0087】
ポジティブCプレートの厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-20nm~-200nmであり、より好ましくは-30nm~-180nmであり、さらに好ましくは-40nm~-160nmであり、特に好ましくは-50nm~-140nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。ポジティブCプレートの面内位相差Re(550)は、例えば10nm未満である。
【0088】
ポジティブCプレートは、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で形成される。ポジティブCプレートは、例えば、樹脂フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。
【0089】
ポジティブCプレートを構成する樹脂フィルムの材料としては、代表的には負の複屈折を有する樹脂材料が挙げられる。負の複屈折を有する樹脂は、一軸延伸した場合に延伸方向と直角方向の屈折率が最大となる性質を示す樹脂である。負の複屈折を有する樹脂としては、例えば、芳香環やカルボニル基などの分極異方性の大きい化学結合や官能基が、側鎖に導入された樹脂が挙げられる。負の複屈折を有する樹脂の具体例としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、フマル酸エステル系樹脂等が挙げられ、その具体例としては、特開2021-076759号公報、特表2008-544304号公報、特表2008-544317号公報等に記載の負の複屈折を有する樹脂を参照することができる。上記樹脂材料は、単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
ポジティブCプレートを構成する樹脂フィルムは、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。添加剤の具体例としては、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、増粘剤等が挙げられる。添加剤の種類および含有量は、目的に応じて適宜設定され得る。樹脂フィルムにおける添加剤の含有量は、例えば3重量%~10重量%程度である。
【0091】
1つの実施形態においては、上記樹脂材料をフィルム状に製膜後、そのままポジティブCプレートとして用いることができる。具体的には、製膜された膜を延伸することなく、そのままポジティブCプレートとして用いることができる。例えば、支持体に、上記樹脂材料を含む樹脂溶液を塗布して(溶液製膜法により)製膜すると、支持体上で樹脂溶液が乾燥される際の体積収縮により応力が生じ、ポリマーの分子鎖が面内方向に配向する傾向がある。複屈折発現性が高く、かつ、負の固有複屈折を有する樹脂材料を用いると、乾燥時の収縮作用により、大きな厚み方向複屈折を有する塗膜を支持体上に形成させることができる。そして、形成された塗膜を、そのままポジティブCプレートとして用いることができる。
【0092】
樹脂フィルムで構成されるポジティブCプレートの厚みは、例えば1μm~40μmであり、好ましくは3μm~35μmであり、より好ましくは5μm~30μmである。
【0093】
ポジティブCプレートを構成する液晶化合物の配向固化層としては、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料の配向固化層が好ましく例示できる。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであってもよいし、液晶ポリマーであってもよい。このような液晶化合物およびポジティブCプレートの形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。
【0094】
液晶化合物の配向固化層で構成されるポジティブCプレートの厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは0.5μm~8μmであり、さらに好ましくは0.5μm~5μmである。
【0095】
上記光学積層体は、保護部材を備えていてもよい。保護部材は、偏光部材とは反対側の最外側に配置され得る。1つの実施形態において、当該保護部材は、反射防止保護部材である。
【0096】
保護部材は、好ましくは、基材と基材上に形成される表面処理層とを有する積層フィルムで構成される。積層フィルムの厚みは、好ましくは10μm~80μmであり、より好ましくは15μm~60μmであり、さらに好ましくは20μm~45μmである。表面処理層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは1μm~7μmであり、さらに好ましくは2μm~5μmである。
【0097】
表面処理層は、代表的には、ハードコート層を含む。ハードコート層は、代表的には、基材にハードコート層形成材料を塗布し、塗布層を硬化させることにより形成される。ハードコート層形成材料は、代表的には、層形成成分としての硬化性化合物を含む。硬化性化合物の硬化メカニズムとしては、例えば、熱硬化型、光硬化型が挙げられる。硬化性化合物としては、例えば、モノマー、オリゴマー、プレポリマーが挙げられる。好ましくは、硬化性化合物として多官能モノマーまたはオリゴマーが用いられる。多官能モノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーまたはオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートまたはウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマー、エポキシ系モノマーまたはオリゴマー、シリコーン系モノマーまたはオリゴマーが挙げられる。
【0098】
ハードコート層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは1μm~7μmであり、さらに好ましくは2μm~5μmである。
【0099】
表面処理層は、機能層を含むことが好ましい。機能層は、好ましくは、反射防止層として機能する。反射防止層を備える保護部材は、上記反射防止保護部材であり得る。好ましい実施形態においては、表面処理層は、上記基材側から、上記ハードコート層と反射防止層とをこの順に含む。機能層の厚みは、好ましくは0.05μm~10μmであり、より好ましくは0.1μm~5μmであり、さらに好ましくは0.1μm~2μmである。
【0100】
表面処理層を有する保護部材は、表面処理層が前方側に位置するように配置され得る。具体的には、表面処理層が光学積層体の最表面に位置し得る。1つの実施形態においては、保護部材の表面処理層側表面は、波長420nmから680nmの範囲における5°正反射率スペクトルの最大値が2.0%以下であることが好ましく、より好ましくは1.2%以下であり、さらに好ましくは1.0%以下であり、特に好ましくは0.8%以下である。ここで、5°正反射率は、例えば、粘着剤を用いて測定対象を黒アクリル板に貼り付けて測定サンプルを作製し、測定装置としては、分光光度計(日立ハイテクノロジー社製、商品名「U-4100」)を用い、測定サンプルに対する光の入射角は5°として測定することができる。
【実施例0101】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。なお、「部」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量部」を意味し、「%」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量%」を意味する。
【0102】
(1)厚み
10μm以下の厚みは、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、製品名「JSM-7100F」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
(2)面内位相差Re(λ)
位相差フィルムの幅方向中央部および両端部を、一辺が当該フィルムの幅方向と平行となるようにして幅50mm、長さ50mmの正方形状に切り出して試料を作製した。この試料を、ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrics社製、製品名「Axoscan」)を用いて、23℃における各波長での面内位相差を測定した。
(3)偏光フィルムの単体透過率および偏光度
分光光度計(大塚電子社製、「LPF-200」)を用いて、偏光フィルムの単体透過率Ts、平行透過率Tp、直交透過率Tcを測定した。これらのTs、TpおよびTcは、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。得られたTpおよびTcから、下記式を用いて偏光フィルムの偏光度を求めた。
偏光度(%)={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
(4)表面平滑性
位相シフト式レーザー干渉計(Zygo社製、製品名「DynaFiz」)を用いて位相差フィルムの平滑性を測定した。具体的には、異物や気泡、変形のスジが入り込まないように、マイクロスライドガラス(松浪硝子工業社製、製品名「S200200」)に位相差フィルムをラミネートした。次いで、微小な気泡の影響を除去するため、加圧脱泡装置(オートクレーブ)による脱泡を行った。脱泡条件は、50℃、0.5MPa、30分とした。脱泡後、室温で30分以上放冷し、測定試料を得た。
防振台つき測定台に測定試料を載せ、単一波長(波長633nm)のレーザーを用いて、平坦度が保証された基準器と干渉させ、所定の領域(30mmφの円)内の相対変位を測定した。解析については、0.1/mm~1/mmの周波数の値を抜粋して得られる角度の指標「Slope magnitude RMS」を2倍した値(2σに相当)を、位相差フィルムの平滑性(単位:arcmin)と定義した。
【0103】
[製造例1-1:位相差フィルム1の作製]
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置に、ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60重量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21重量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28重量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77重量部(0.298mol)、および、触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2重量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂を水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み130μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、幅方向に、延伸温度140℃、延伸倍率2.7倍で延伸した。
こうして、厚みが47μmで、Re(590)が140nmであり、Nz係数が1.2である位相差フィルム1(λ/4板)を得た。得られた位相差フィルム1は、Re(450)/Re(550)が0.856であり、逆分散波長特性を示した。
また、当該フィルムの表面平滑性は、0.25arcminであった。
【0104】
[製造例1-2:位相差フィルム2の作製]
製造例1-1と同様にして、ポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を得た。
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み260μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、幅方向に、延伸温度140℃、延伸倍率2.7倍で延伸した。
こうして、厚みが91μmで、Re(590)が270nmであり、Nz係数が1.2である位相差フィルム2(λ/2板)を得た。得られた位相差フィルム2は、Re(450)/Re(550)が0.859であり、逆分散波長特性を示した。
また、当該フィルムの表面平滑性は、0.35arcminであった。
【0105】
[製造例1-3:位相差層(液晶化合物の配向固化層)3の作製]
式(I)で示される化合物55重量部と、式(II)で示される化合物25重量部と、式(III)で示される化合物20重量部とを、シクロペンタノン(CPN)400重量部に加えた後、60℃に加温、撹拌して溶解させた。その後、上記した化合物の溶液を室温に戻し、上記した化合物の溶液に、イルガキュア907(BASFジャパン社製)3重量部と、メガファックF-554(DIC社製)0.2重量部と、p-メトキシフェノール(MEHQ)0.1重量部とを加えて、さらに撹拌した。撹拌後の溶液は、透明で均一であった。得られた溶液を0.20μmのメンブランフィルターでろ過し、重合性組成物を得た。
また、配向膜用ポリイミド溶液を厚さ0.7mmのガラス基材にスピンコート法を用いて塗布し、100℃で10分乾燥した後、200℃で60分焼成することにより塗膜を得た。得られた塗膜を、市販のラビング装置によってラビング処理し、配向膜を形成した。
次いで、基材(実質的には、配向膜)に、上記で得られた重合性組成物をスピンコート法で塗布し、100℃で2分乾燥した。得られた塗布膜を室温まで冷却した後、高圧水銀ランプを用いて、30mW/cm2の強度で30秒間紫外線を照射して、液晶化合物の配向固化層である位相差層(厚み:3μm)を得た。位相差層の面内位相差Re(590)は140nmであった。また、位相差層のRe(450)/Re(550)は0.851であり、逆分散波長特性を示した。この位相差層は、λ/4板として機能し得る。
また、当該位相差層の表面平滑性は、0.16arcminであった。
【0106】
【0107】
[製造例1-4:位相差層(液晶化合物の配向固化層)4の作製]
位相差層の厚みを6μmとしたこと以外は、製造例1-3と同様にして、位相差層を得た。この位相差層の面内位相差Re(590)は270nmであった。また、この位相差層のRe(450)/Re(550)は0.851であり、逆分散波長特性を示した。この位相差層は、λ/2板として機能し得る。
また、当該位相差層の表面平滑性は、0.22arcminであった。
【0108】
[製造例1-5:位相差フィルム5の作製]
長尺のノルボルネン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、商品名Zeonor、厚み40μm)を、面内位相差Re(590)が140nmとなるように延伸倍率および延伸温度を調製し、自由端縦延伸することによって、厚み33μmの位相差フィルム5(λ/4板)を作製した。このようにして得られた位相差フィルム5は、nx>ny=nzの屈折率を有していた。また、位相差層のRe(450)/Re(550)は1.004であり、おおよそフラット分散波長特性を示した。
また、当該フィルムの表面平滑性は、0.32arcminであった。
【0109】
[製造例1-6:位相差フィルム6の作製]
長尺のノルボルネン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、商品名Zeonor、厚み50μm)を、面内位相差Re(590)が270nmとなるように延伸倍率および延伸温度を調製し、自由端縦延伸することによって、厚み33μmの位相差フィルム6(λ/2板)を作製した。このようにして得られた位相差フィルム6は、nx>ny=nzの屈折率を有していた。また、位相差層のRe(450)/Re(550)は1.004であり、おおよそフラット分散波長特性を示した。
また、当該フィルムの表面平滑性は、0.42arcminであった。
【0110】
[製造例1-7:位相差層(液晶化合物の配向固化層)7の作製]
ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名「PaliocolorLC242」)10gと、当該重合性液晶化合物に対する光重合開始剤(BASF社製:商品名「イルガキュア907」)3gとを、トルエン40gに溶解して、液晶組成物(塗工液)を調製した。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)表面を、ラビング布を用いてラビングし、配向処理を施した。
この配向処理表面に、上記液晶塗工液をバーコーターにより塗工し、90℃で2分間加熱乾燥することによって液晶化合物を配向させた。
このようにして形成された液晶層に、メタルハライドランプを用いて1mJ/cm2の光を照射し、当該液晶層を硬化させることによって、PETフィルム上に液晶配向固化層である位相差層を形成した。
位相差層の厚みは1.5μm、面内位相差Re(590)は140nmであった。
さらに、位相差層は、nx>ny=nzの屈折率特性を示した。また、位相差層のRe(450)/Re(550)は1.089であり、正分散波長特性を示した。この位相差層は、λ/4板として機能し得る。
また、当該フィルムの表面平滑性は、0.18arcminであった。
【0111】
[製造例1-8:位相差層(液晶化合物の配向固化層)8の作製]
位相差層の厚みを2.5μmとしたこと以外は製造例1-7と同様にして、面内位相差Re(590)が270nmの位相差層を得た。位相差層は、nx>ny=nzの屈折率特性を示した。また、位相差層のRe(450)/Re(550)は1.089であり、正分散波長特性を示した。この位相差層は、λ/2板として機能し得る。
【0112】
[製造例1-9:位相差フィルム(ポジティブCプレート)9の作製]
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えたオートクレーブに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名:メトローズ60SH-50)48重量部、蒸留水15601重量部、フマル酸ジイソプロピル8161重量部、アクリル酸3-エチル-3-オキセタニルメチル240重量部および重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート45重量部を入れ、窒素バブリングを1時間行った後、攪拌しながら49℃で24時間保持することにより、ラジカル懸濁重合を行なった。
次いで、室温まで冷却し、生成したポリマー粒子を含む懸濁液を遠心分離した。得られたポリマーを蒸留水で2回及びメタノールで2回洗浄した後、減圧乾燥した。得られたフマル酸エステル系樹脂を、トルエン・メチルエチルケトン混合溶液(トルエン/メチルエチルケトン50重量%/50重量%)に溶解して20%溶液とした。
さらに、フマル酸エステル系樹脂100重量部に対し、可塑剤としてトリブチルトリメリテート5重量部を添加して、ドープを調製した。
支持体フィルムとして、ポリエステル(ポリエチレン-テレフタレート/イソフタレート共重合体)の二軸延伸フィルム(厚み75μm)を用いた。支持体フィルムに調製したドープを、乾燥後の膜厚が20μmになるように塗布して、140℃で乾燥させた。
乾燥後の塗膜(ポジティブCプレート)は、Re(590)≒0nm、Rth(590)=-83nmであった。また、位相差層のRth(450)/Rth(550)は1.012であり、正分散波長特性を示した。
【0113】
[製造例2:偏光フィルムの作製]
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(三菱ケミカル社製、商品名「ゴーセネックスZ410」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に2.4倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる吸収型偏光膜の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。乾燥収縮処理による積層体の幅方向の収縮率は5.2%であった。
このようにして、樹脂基材上に厚み約5μmの吸収型偏光膜を形成した。
得られた吸収型偏光膜の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、保護層としてのシクロオレフィン系樹脂フィルム(厚み:25μm)を、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合せた。具体的には、硬化型接着剤の総厚みが約1μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線をシクロオレフィン系樹脂フィルム側から照射して接着剤を硬化させた。次いで、樹脂基材を剥離した。
これによって、シクロオレフィン系樹脂フィルム/吸収型偏光膜の構成を有する偏光フィルムを得た。偏光フィルムの単体透過率(Ts)は43.4%であり、偏光度は99.993%であった。
【0114】
[実施例1]
製造例2で得た偏光フィルムと、位相差フィルム2(λ/2板)と、位相差フィルム1(λ/4板)とをこの順に積層して光学積層体を得た。
隣り合うフィルムは、アクリル系粘着剤層(日東電工社製、厚み5μm)を介して重ね合わせた。重ね合せにおいて、各位相差フィルムの遅相軸と偏光フィルムの吸収軸との関係は、位相差フィルム1(λ/4板)から見たときの偏光フィルムの吸収軸方向を基準(0°)とした場合、位相差フィルム2(λ/2板)の遅相軸方向の角度は15°とし、位相差フィルム1(λ/4板)の遅相軸方向の角度は75°とした。
【0115】
[実施例2]
製造例2で得た偏光フィルムと、位相差層4(λ/2板)と、位相差層3(λ/4板)とを積層して光学積層体を得た。
隣り合う要素は、アクリル系粘着剤層(日東電工社製、厚み5μm)を介して重ね合わせた。重ね合せにおいて、各位相差フィルムの遅相軸と偏光フィルムの吸収軸との関係は、位相差層3(λ/4板)から見たときの偏光フィルムの吸収軸方向を基準(0°)とした場合、位相差層4(λ/2板)の遅相軸方向の角度は15°とし、位相差層3(λ/4板)の遅相軸方向の角度は75°とした。
【0116】
[実施例3]
製造例2で得た偏光フィルムと、位相差フィルム2(λ/2板)と、位相差フィルム1(λ/4板)と、位相差フィルム9とを積層して光学積層体を得た。
隣り合う要素は、アクリル系粘着剤層(日東電工社製、厚み5μm)を介して重ね合わせた。重ね合せにおいて、各位相差フィルムの遅相軸と偏光フィルムの吸収軸との関係は、位相差フィルム1(λ/4板)から見たときの偏光フィルムの吸収軸方向を基準(0°)とした場合、位相差フィルム2(λ/2板)の遅相軸方向の角度は15°とし、位相差フィルム1(λ/4板)の遅相軸方向の角度は75°とした。
【0117】
[実施例4]
製造例2で得た偏光フィルムと、位相差層4(λ/2板)と、位相差層3(λ/4板)と、位相差フィルム9とを積層して光学積層体を得た。
隣り合う要素は、アクリル系粘着剤層(日東電工社製、厚み5μm)を介して重ね合わせた。重ね合せにおいて、各位相差層の遅相軸と偏光フィルムの吸収軸との関係は、位相差層3(λ/4板)から見たときの偏光フィルムの吸収軸方向を基準(0°)とした場合、位相層4(λ/2板)の遅相軸方向の角度は15°とし、位相差層3(λ/4板)の遅相軸方向の角度は75°とした。
【0118】
[実験例1]
製造例2で得た偏光フィルムと、位相差フィルム6(λ/2板)と、位相差フィルム5(λ/4板)とを積層して光学積層体を得た。
隣り合うフィルムは、アクリル系粘着剤層(日東電工社製、厚み5μm)を介して重ね合わせた。重ね合せにおいて、各位相差フィルムの遅相軸と偏光フィルムの吸収軸との関係は、位相差フィルム5(λ/4板)から見たときの偏光フィルムの吸収軸方向を基準(0°)とした場合、位相差フィルム6(λ/2板)の遅相軸方向の角度は15°とし、位相差フィルム5(λ/4板)の遅相軸方向の角度は75°とした。
【0119】
[実験例2]
製造例2で得た偏光フィルムと、位相差フィルム6(λ/2板)と、位相差フィルム5(λ/4板)と、位相差フィルム9とを積層して光学積層体を得た。
隣り合うフィルムは、アクリル系粘着剤層(日東電工社製、厚み5μm)を介して重ね合わせた。重ね合せにおいて、各位相差フィルムの遅相軸と偏光フィルムの吸収軸との関係は、位相差フィルム5(λ/4板)から見たときの偏光フィルムの吸収軸方向を基準(0°)とした場合、位相差フィルム6(λ/2板)の遅相軸方向の角度は15°とし、位相差フィルム5(λ/4板)の遅相軸方向の角度は75°とした。
【0120】
[実験例3]
製造例2で得た偏光フィルムと、位相差層8(λ/2板)と、位相差層7(λ/4板)とを積層して光学積層体を得た。
隣り合う要素は、アクリル系粘着剤層(日東電工社製、厚み5μm)を介して重ね合わせた。重ね合せにおいて、各位相差フィルムの遅相軸と偏光フィルムの吸収軸との関係は、位相差層7(λ/4板)から見たときの偏光フィルムの吸収軸方向を基準(0°)とした場合、位相差層8(λ/2板)の遅相軸方向の角度は15°とし、位相差層7(λ/4板)の遅相軸方向の角度は75°とした。
【0121】
[実験例4]
製造例2で得た偏光フィルムと、位相差層8(λ/2板)と、位相差層7(λ/4板)と、位相差フィルム9とを積層して光学積層体を得た。
隣り合う要素は、アクリル系粘着剤層(日東電工社製、厚み5μm)を介して重ね合わせた。重ね合せにおいて、各位相差フィルムの遅相軸と偏光フィルムの吸収軸との関係は、位相差層7(λ/4板)から見たときの偏光フィルムの吸収軸方向を基準(0°)とした場合、位相差層8(λ/2板)の遅相軸方向の角度は15°とし、位相差層7(λ/4板)の遅相軸方向の角度は75°とした。
【0122】
<評価>
各実施例について、下記の評価を行った。
1.楕円率
ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrics社製、製品名「Axoscan」)を用いて、23℃において、所定波長(450nm、550nm、650nm)の光を光学積層体の偏光部材側から入射させ、位相差部材から出射した光の楕円率を測定した。
入射角および出射角を極角30°とし、方位角0°~360°の範囲で方位角11.25°ごとに楕円率を測定した。
32個の測定値の最小値および平均値、ならびに、0.85以上となるデータの個数を表1に示す。
また、入射角および出射角を極角0として、楕円率を測定した。測定値を表1に示す。
【0123】
【0124】
2.偏光解消性
ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrics社製、製品名「Axoscan」)を用いて、23℃において、所定波長(450nm、550nm、650nm)の光を光学積層体の偏光部材側から入射させることにより得られたミューラー行列から、下記式により偏光解消指数(DI)を求め、偏光解消指数(DI)を1から差し引いた値(1-DI)により偏光解消性を評価した。
【数2】
偏光解消指数(DI)は、極角30°、方位角0°~360°で測定される所定波長の透過光の偏光解消指数(DI)と、極角0°(正面方向)で測定される所定波長の透過光の偏光解消指数(DI)を求めた。極角30°、方位角0°~360°で測定される所定波長の透過光の偏光解消指数(DI)は、極角30°の出射光について、方位角0°~360°の範囲で方位角11.25°ごとに測定した偏光解消指数の平均値とした。
結果を表2に示す。
【0125】