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特開2025-4258振動搬送装置及びそれを備える多列振動搬送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004258
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】振動搬送装置及びそれを備える多列振動搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 27/32 20060101AFI20250106BHJP
【FI】
B65G27/32
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024182097
(22)【出願日】2024-10-17
(62)【分割の表示】P 2022511842の分割
【原出願日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2020059851
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020067316
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】川内 悠生
(72)【発明者】
【氏名】入江 進
(72)【発明者】
【氏名】田邉 喜文
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リニア搬送面を有するトラフに横から力が作用した場合に、トラフが横方向に揺動するのを抑制する。
【解決手段】振動によってリニア搬送面上の搬送対象物を搬送する振動搬送装置1であり、リニア搬送面を有する第1質量体と、第1質量体と逆位相で振動する第2質量体と、第1質量体と第2質量体を接続する駆動弾性体10と、第1質量体、第2質量体及び駆動弾性体10を含む振動体に対して搬送方向上流側及び搬送方向下流側において、振動体の高さ方向中央部より上方に配置される支持面2cを有する基台2と、支持面2cに対して振動体を接続する防振弾性体50とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動によってリニア搬送面上の搬送対象物を搬送する振動搬送装置であり、
前記リニア搬送面を有する第1質量体と、
前記第1質量体と逆位相で振動する第2質量体と、
前記第1質量体と前記第2質量体を接続する駆動弾性体と、
前記第1質量体、前記第2質量体及び前記駆動弾性体を含む振動体に対して搬送方向上流側及び搬送方向下流側において、前記振動体の高さ方向中央部または前記振動体の重心位置より上方に配置される支持面を有する基台と、
前記支持面に対して前記振動体を接続する防振弾性体とを備えることを特徴とする振動搬送装置。
【請求項2】
前記防振弾性体は、
前記支持面に取り付けられ垂直成分の振動を減衰させる第1アーム部と、
前記第1アーム部に垂直に配置され且つ前記振動体に取り付けられる第2アーム部とを有することを特徴とする請求項1に記載の振動搬送装置。
【請求項3】
前記防振弾性体は、
前記支持面に取り付けられ垂直成分の振動を減衰させる第1アーム部と、
前記第1アーム部に垂直に配置され且つ前記振動体に取り付けられる第2アーム部と、
前記第1アーム部と前記第2アーム部とを接続し且つ凸状に湾曲する湾曲部とを有することを特徴とする請求項1に記載の振動搬送装置。
【請求項4】
前記振動体と前記防振弾性体との第1固定部は、前記支持面と前記防振弾性体との第2固定部より下方に配置されることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の振動搬送装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の振動搬送装置を複数備え、
前記複数のリニア搬送面が略平行に配置されることを特徴とする多列振動搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物を所定方向に搬送可能な振動搬送装置及びそれを備える多列振動搬送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワーク等の搬送対象物を振動により搬送面に沿って所定の搬送先へ搬送可能な振動搬送装置が知られている。振動搬送装置として、横方向にして配設する加振体の上面に固定された慣性質量体と、加振体の下面に固定された加振体取付け部材と、傾斜立設する第1連結部材を介して加振体取付け部材と連結される搬送体とを有するものがある(例えば特許文献1参照)。この振動搬送装置では、加振体で惹起された変位振動により第1連結部材に撓み振動を惹起させ、この撓み振動が搬送体に伝達されることで、ワークが搬送面に沿って所定方向に搬送される。ここで、上記撓み振動は、水平方向及び垂直方向各々の振動成分を含むものである。また、この振動搬送装置では、第1連結部材の長手方向中間部に連結部材支持片を固定し、連結部材支持片と基台とを第2連結部材を介して連結される。このように、連結部材支持片を第1連結部材の長手方向中間部(振動振幅の節)となる部所に固定することで、基台から設置面へ伝達される振動が大幅に減少する。
【0003】
また、特許文献1に記載のように、基台から設置面へ伝達される振動をさらに減少させるには、第2連結部材として、AlとZnをベースとするAl系合金,NiとCoをベースとするNi系合金,FeとCrをベースとするFe系合金等の吸振材を用いることが考えられる。こうした特許文献1の構成では、基台から設置面に伝達される水平方向の振動を大幅に減少させる防振効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-91928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、こうした振動搬送装置における振動は、水平方向及び垂直方向各々の振動成分を有するため、防振効果をさらに高めるには水平成分の減少に加え、垂直成分も減少させることが望まれる。例えば、特許文献1においては、連結部材支持片を弾性体で構成しつつ、この連結部材支持片の厚みを薄くすることで、垂直成分を減少させることが考えられる。
【0006】
しかし、連結部材支持片の厚みを薄くすることで、基台と第2連結部材の接続点を中心とする回転方向において剛性が弱まる。通常、搬送対象物を搬送する搬送体は装置上端部において作業者が接触可能な状態にあるため、上記のように、連結部材支持片の厚さを薄くした状態で、例えば作業者が作業を行っている際に搬送体の側面部分を横から押してしまうと、搬送体は、基台と第2連結部材との接続点を回転軸として横方向に揺動する問題がある。
【0007】
このような問題は、特に、上述の振動搬送装置を幅方向に複数並列し、複数のリニア搬送面が略平行に配置される多列振動搬送システムにおいて顕著に生じる。ここで、特許文献1の慣性質量体と加振体取付け部材と搬送体と第1連結部材とで構成される振動体を複数並列する場合(多列振動搬送システム)を例に挙げる。この多列振動搬送システムでは、同時にすべての振動体を駆動する場合に限らず、一部の振動体のみを駆動するケースが存在する。一般的に、振動搬送装置で用いられる振動体は、大きな振幅を得るために、共振周波数またはその付近で振動させる。こうした振動搬送装置における振動は、上述のように、水平成分及び垂直成分を有しており、これらを共に減衰させないと、基台から設置面に伝達される防振効果は十分発揮できない。特に多列振動搬送システムにおいては、互いの共振周波数が一致することで、振動する振動体の振動成分が、停止中または停止が必要な他の振動体に伝わり、共振で増幅され、予期せぬ搬送を開始してしまう問題がある。
【0008】
本発明の目的は、垂直成分の防振効果を発揮し、かつ搬送対象物を搬送する搬送部材に横から力が作用した場合でも搬送部材が横方向に揺動するのを抑制可能な振動搬送装置及びそれを備える多列振動搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る振動搬送装置は、振動によってリニア搬送面上の搬送対象物を搬送する振動搬送装置であり、前記リニア搬送面を有する第1質量体と、前記第1質量体と逆位相で振動する第2質量体と、前記第1質量体と前記第2質量体を接続する駆動弾性体と、前記第1質量体、前記第2質量体及び前記駆動弾性体を含む振動体に対して搬送方向上流側及び搬送方向下流側において、前記振動体の高さ方向中央部または前記振動体の重心位置より上方に配置される支持面を有する基台と、前記支持面に対して前記振動体を接続する防振弾性体とを備えることを特徴とする。
【0010】
これにより、本発明に係る振動搬送装置では、振動体を支持する支持面が振動体の高さ方向中央部または振動体の重心位置より上方に配置されるため、垂直成分の防振弾性体を柔らかくし減衰率を最大限に大きくした状態であっても、搬送対象物を搬送する搬送部材の側面部分に横から力が作用したとしても、力の作用点と、振動体と基台との固定点(回転軸)との距離が比較的小さくなる。これにより、搬送部材に横から作用するトルクが小さくなり、搬送部材が横方向に揺動するのが抑制される。そのため、複数の振動搬送装置を有する多列振動搬送システムにおいて、搬送部材が周辺部品と衝突するのを低減可能であるとともに、搬送部材を並列配置する場合に、搬送部材間の隙間寸法を低減可能である。
【0011】
本発明に係る振動搬送装置において、前記防振弾性体は、前記支持面に取り付けられ垂直成分の振動を減衰させる第1アーム部と、前記第1アーム部に垂直に配置され且つ前記振動体に取り付けられる第2アーム部とを有することを特徴とする。
【0012】
これにより、本発明に係る振動搬送装置では、基台から設置面へ伝達される振動をさらに減少させるための、防振弾性体において、平行となる方向の弾性係数や、垂直となる方向の弾性係数とを独立して調整することができる。
【0013】
本発明に係る振動搬送装置において、前記防振弾性体は、前記支持面に取り付けられ垂直成分の振動を減衰させる第1アーム部と、前記第1アーム部に垂直に配置され且つ前記振動体に取り付けられる第2アーム部と、前記第1アーム部と前記第2アーム部とを接続し且つ凸状に湾曲する湾曲部とを有することを特徴とする。
【0014】
これにより、本発明に係る振動搬送装置では、基台から設置面へ伝達される振動をさらに減少させるための、防振弾性体において、平行となる方向の弾性係数や、垂直となる方向の弾性係数とを独立して調整することができる。また、搬送部材の側面部分に横から力が作用した際に、搬送部材が横方向に揺動するのが効果的に抑制される。
【0015】
本発明に係る振動搬送装置において、前記振動体と前記防振弾性体との第1固定部は、前記支持面と前記防振弾性体との第2固定部より下方に配置されることを特徴とする。
【0016】
これにより、本発明に係る振動搬送装置では、振動体が基台に対して吊り下げられるように支持されるため、振動体が大型化した場合でも振動体の振動が安定する。
【0017】
本発明に係る多列振動搬送システムにおいて、上述した何れかの発明に記載の振動搬送装置を複数備え、前記複数のリニア搬送面が略平行に配置されることを特徴とする。
【0018】
これにより、本発明に係る多列振動搬送システムでは、振動搬送装置の搬送部材に横から力が作用した場合でも、搬送部材が横方向に揺動するのが抑制される。そのため、隣の搬送部材に衝突して部品が破損するのを防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、搬送面を有する搬送部材に横から力が作用した場合でも、搬送部材が横方向に揺動するのを抑制可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る振動搬送装置を有する多列振動搬送システムの平面図である。
図2図1の振動搬送装置の側面図である。
図3図2において紙面手前側の連結板を外した図である。
図4図2の振動搬送装置のトラフとトラフ支持台との取り付け部を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る振動搬送装置の側面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る振動搬送装置の側面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る振動搬送装置の変形例を示す側面図である。
図8】本発明の参考例に係る振動搬送装置の構成を示す斜視図である。
図9】振動搬送装置の側面図である。
図10】振動搬送装置の分解図である。
図11】カバー部材を取り外した状態の振動搬送装置の斜視図である。
図12】カバー部材を取り外した状態の振動搬送装置の側面図である。
図13】立体的に折り曲げられる前のフレキシブル基板を示す図である。
図14】立体的に折り曲げられたフレキシブル基板を示す図である。
図15】第1亘り部分を示す図である。
図16】第2亘り部分を示す図である。
図17】第3亘り部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
(第1実施形態)
本実施形態に係る多列振動搬送システムは、図1に示すように、複数の振動搬送装置1を有している。複数の振動搬送装置1は、並列に配置され、複数のトラフ8(リニア搬送面8t)が略平行に配置される。振動搬送装置1は、例えば電子部品等のワークを直線状のリニア搬送面8t上において振動により移動させながら所定の搬送先に搬送するリニアフィーダである。
【0023】
なお、リニア搬送面8tの後方上面は、漏斗などによりワークが常にたまっている状態になっている(図示省略)。したがって、振動搬送装置1が搬送を開始すると、リニア搬送面8tの終端まで搬送して所定の搬送先に供給可能なものである。
【0024】
以下、1台の振動搬送装置1について説明するが、複数の振動搬送装置1は何れも略同一の構成である。図2は、振動搬送装置の側面図であり、図3では、図2の振動搬送装置から紙面手前側の連結板を外した図である。
【0025】
振動搬送装置1は、図2及び図3に示すように、床面上に固定される基台2と、基台2の上方に配設された可動部5と、可動部5の上方に配設された固定部6と、固定部6の上方でワークを搬送するリニア搬送面8tを有するトラフ8とを備える。
【0026】
基台2は、リニア搬送面8tに沿って延びる基台水平部2aと、基台水平部2aの搬送方向上流側端部及び搬送方向下流側端部にそれぞれ取り付けられた2つの基台鉛直部2bとを有している。基台水平部2aは、水平方向に延びる部材であるのに対して、2つの基台鉛直部2bは、何れも鉛直方向に延びる部材である。
【0027】
2つの基台鉛直部2bは、その下端部において基台水平部2aの搬送方向上流側端部及び搬送方向下流側端部に接続され、その上端部は、トラフ8の下面近くに配置される。2つの基台鉛直部2bは、その上端部に配置された平らな支持面2cをそれぞれ有している。支持面2cは、防振バネ50を取り付ける部分であり、搬送方向上流側端部が搬送方向下流側端部より下方に配置されるように傾斜している。
【0028】
可動部5と固定部6とは、板バネを用いた一対の駆動バネ10によって前後方向2箇所を連結されている。一対の駆動バネ10は、下端において締結ボルト10aによって可動部5の前後方向端面に固定されるとともに、上端において締結ボルト10bによって固定部6の前後方向端面に固定される。
【0029】
駆動バネ10は、平板状のバネ(板バネ)である。駆動バネ10には、加振源として機能する圧電素子11を貼り付け、圧電素子11に電荷を付与することにより駆動バネ10が弾性変形して振動が生じ、可動部5及び固定部6が逆位相で振動する。
【0030】
本実施形態において、駆動バネ10は、弾性変形していない通常姿勢が鉛直方向に対して傾斜した姿勢となるように取り付けられる。一対の駆動バネ10は、互いに略平行となるように、可動部5及び固定部6に固定される。駆動バネ10及び圧電素子11からなるバネ定数は、搬送する部品の重量、大きさ及びトラフ8の重量等によって定められる任意の共振周波数の条件に応じて適宜選択される。
【0031】
また、固定部6の内部には、一対の駆動バネ10を振動させる駆動部(図示省略)が設けられている。駆動部は、圧電素子11等の駆動源を備え、可動部5と固定部6とを相対的に振動させることが可能となっている。
【0032】
トラフ8は、固定部6の上方に配置されるトラフ支持台12と連結されている。トラフ支持台12は、連結板16によって可動部5と連結され、可動部5と同期して振動する。連結板16は、締結ボルト16aによってトラフ支持台12と連結されるとともに、連結ボルト16bによって可動部5と連結される。
【0033】
トラフ8の前端側部分の下面には、図4に示すように、係止部30(フック部)が形成される。係止部30は、トラフ8の下面から下方に向かって突出する突出部31と、突出部31の先端から搬送方向上流側に向かって延びる先端突部32とを有している。
【0034】
トラフ支持台12の前端部には、トラフ8の係止部30の先端突部32を係止するための係止凹部12aが形成されている。そのため、係止部30の先端突部32をトラフ支持台12の係止凹部12aに係止させることで、トラフ8の前端側部分がトラフ支持台12の前端部に固定される。トラフ8の後端部は、係止部30がトラフ支持台12の前端部に係止された状態で、ボルト8aによりトラフ支持台12の後端部に固定される。
【0035】
トラフ8の下面の後端部には、下方に向かって突出する支持部33が形成され、係止部30より搬送方向上流側には、下方に向かって突出する支持部34が形成される。トラフ8がトラフ支持台12に取り付けられた状態では、支持部33及び支持部34の下面がトラフ支持台12の上面に接触する。
【0036】
トラフ8の下面とトラフ支持台12の上面との間には、硬質ゴム35が配置される。硬質ゴム35は、支持部33と支持部34との間の略中央部分に配置される。硬質ゴム35は、トラフ8と略同一の幅を有する略矩形状の板状部材である。硬質ゴム35の所定厚さは、支持部33及び支持部34の突出量と略同一である。
【0037】
トラフ8がトラフ支持台12に取り付けられた状態では、支持部33と硬質ゴム35との間、及び、支持部34と硬質ゴム35との間には、隙間が形成される。そのため、トラフ8の下面は、トラフ支持台12の上面に対して、支持部33と硬質ゴム35と支持部34の3箇所で支持される。
【0038】
本実施形態において、可動部5と連結板16とトラフ支持台12とトラフ8が、本発明の第1質量体であり、固定部6が、本発明の第2質量体であり、駆動バネ10が、本発明の駆動弾性体であり、防振バネ50が、本発明の防振弾性体である。そのため、振動体Tは、可動部5と連結板16とトラフ支持台12とトラフ8と固定部6と駆動バネ10を含んで構成される。
【0039】
振動体Tは、板バネである一対の防振バネ50によって2つの基台鉛直部2bの支持面2cに対して支持される。防振バネ50は、支持面2cに取り付けられ垂直成分の振動を減衰させる第1アーム部51と、第1アーム部51に対して垂直に配置された第2アーム部52とを有している。第1アーム部51と第2アーム部52とは、一体に形成されており、防振バネ50は、平板L字状の弾性部材(L字型バネ)である。
【0040】
防振バネ50は、その第1アーム部51において締結ボルト51aによって支持面2cに固定されるとともに、その第2アーム部52において締結ボルト52aによって駆動バネ10に固定される。ここで、一対の防振バネ50は、第1アーム部51が平行に配置されるように支持面2cに取り付けられるとともに、第2アーム部52が平行に配置されるように一対の駆動バネ10に取り付けられる。
【0041】
また、防振バネ50の第1アーム部51は、駆動バネ10に垂直に配置されるとともに、第2アーム部52は、駆動バネ10に平行に配置される。そのため、防振バネ50の第1アーム部51は、駆動バネ10の弾性主軸に対して平行であり、第2アーム部52は、駆動バネ10の弾性主軸に対して垂直に配置される。なお、本実施形態において、駆動バネ10の弾性主軸の方向は、駆動バネ10の取付角度で規定され、「防振バネ50の第1アーム部51が駆動バネ10の弾性主軸に対して平行に配置される」とは、防振バネ50の第1アーム部51が駆動バネ10の弾性主軸に対して平行または略平行となる方向に沿って配置されることを意味し、「防振バネ50の第2アーム部52が駆動バネ10の弾性主軸に対して垂直に配置される」とは、防振バネ50の第2アーム部52が駆動バネ10の弾性主軸に対して直交または略直交する方向(弾性主軸に対する法線方向)に沿って配置されることを意味する。
【0042】
本実施形態では、一対の駆動バネ10のそれぞれに、水平方向及び鉛直方向に変位しない節の部分に突部53を設け、突部53に防振バネ50の第2アーム部52の先端部分を固定している。なお、駆動バネ10は、両端(上端、下端)を固定部6と可動部5にそれぞれ固定したもの(両端固定持ち)であるため、節は、駆動バネ10の長手方向中央部分である。
【0043】
駆動バネ10の節は、点として捉えることができるものであるが、駆動バネ10において突部53を設けた領域は、駆動バネ10の節を含む所定領域(節及び節の近傍領域)である。突部53には、雌ネジ孔(図示省略)が設けられている。
【0044】
防振バネ50の第2アーム部52には、突部53の雌ネジ孔に連通するボルト挿通孔(図示省略)を形成し、そのボルト挿通孔に挿通したボルト52aを突部53の雌ネジ孔に螺合することで、防振バネ50の第2アーム部52は、駆動バネ10の突部53に固定される。
【0045】
2つの基台鉛直部2bの上端部に配置された支持面2cは、振動体Tの高さ方向中央部より上方に配置される。そのため、トラフ8の側面部分に横から力が作用した場合、図2において2つの支持面2cを通過する直線を回転軸として揺動しようとするが、支持面2cが振動体Tの高さ方向中央部より下方に配置される場合と比べて、力の作用点と回転軸との距離は小さくなり、トラフ8に横から作用するトルクは小さくなる。本実施形態において、振動体Tの高さとは、トラフ8の上端部と可動部5の下端部との間の上下方向に沿った距離である。
【0046】
振動体Tが一対の防振バネ50によって2つの基台鉛直部2bの支持面2cに支持された状態では、防振バネ50の第2アーム部52は、第1アーム部51の端部から下方に向かって延びる。振動体Tと第2アーム部52との第1固定部A1は、支持面2cと第1アーム部51との第2固定部A2より下方に配置される。
【0047】
そのため、2つの支持面2cは、振動体Tに対して搬送方向上流側及び搬送方向下流側にそれぞれ配置されており、振動体Tは、2つの基台鉛直部2bの支持面2cに対して一対の防振バネ50によって吊り下げられるように支持される。なお、振動体Tのトラフ8より下方の側面部分に横から力が作用しないようにするために、基台2の側面にカバー部材を取り付けて、カバー部材により振動体Tのトラフ8より下方の側面部分を覆うようにしてもよい。
【0048】
振動搬送装置1の主たる作用について説明する。振動搬送装置1を床面に固定した状態で、略水平に設定されたトラフ8の上面にワークを載置する。この状態で、駆動バネ10を起振させることで、可動部5と固定部6とは振動することとなる。ここで、可動部5と固定部6とは、互いを連結する駆動バネ10が搬送方向に傾斜しているため、傾斜角に応じて、搬送方向の成分とともに搬送方向と垂直な垂直方向成分を有して振動することとなる。そして、この振動が連結板16を介してトラフ8へ伝達され、トラフ8からワークに伝達されることで、ワークは、トラフ8の上面を搬送されることとなる。
【0049】
この際、固定部6の重心位置は、固定部6の略中央付近に存在する。また、可動部5の重心と、可動部5と一体となって振動する連結板16の重心及びトラフ8の重心とを合成した重心位置は、可動部5とトラフ8とが固定部6を跨るようにして一体となっていることで、固定部6の重心位置近傍となる。このため、両者の振動は打ち消されることとなり、防振バネ10による作用と相まって基台2及び床面に伝達される振動を効果的に減衰させることができる。
【0050】
本実施形態の多列振動搬送システムでは、複数の振動搬送装置1のトラフ8が並列配置されるため、トラフ8の幅は非常に小さく、トラフ8の前端側部分と後端部との間の複数箇所を上方からボルトによりトラフ支持台12に固定するのは困難である。そこで、トラフ8の前端側部分を係止部30によりトラフ支持台12に固定している。
【0051】
例えば、トラフ8の前端側部分をトラフ支持台12の前端の下方からボルトにより固定すると、トラフ8にネジ部を形成する必要があるため、トラフ8の厚さが大きくなり、トラフ8の重量が増加して搬送能力が低下する問題がある。これに対して、本実施形態では、トラフ8の前端側部分が係止部30によりトラフ支持台12に固定されるため、トラフ8にネジ部を形成する必要がない。
【0052】
また、トラフ8を前端側部分と後端部との2箇所でトラフ支持台12に固定すると、固定箇所間の距離が長くなり、トラフ8の固定箇所間の部分がトラフ支持台12に支持されなくなるため、固定箇所間のトラフ8の共振周波数が低下して、振動分布が不均等になる問題がある。これに対して、本実施形態では、トラフ8を前端側部分と後端部とでトラフ支持台12に固定するとともに、トラフ8の前端側部分と後端部との間の部分は、硬質ゴム35によりトラフ支持台12に固定される。そのため、搬送能力が低下する問題や、振動分布が不均等になる問題がない。なお、本実施形態では、1つの硬質ゴム35をトラフ8の前端側部分と後端部との間に配置すると、トラフ8の下面はトラフ支持台12に3箇所で支持されるが、2つの硬質ゴム35をトラフ8の前端側部分と後端部との間に配置すると、トラフ8の下面はトラフ支持台12に4箇所で支持される。いずれの場合も、振動分布が不均等になる問題がない。
【0053】
以上のように、本実施形態の振動搬送装置1は、振動によってリニア搬送面8t上の搬送対象物を搬送する振動搬送装置であり、リニア搬送面8tを有する第1質量体(可動部5と連結板16とトラフ支持台12とトラフ8)と、第1質量体と逆位相で振動する第2質量体(固定部6)と、第1質量体と第2質量体を接続する駆動弾性体(一対の駆動バネ10)と、第1質量体、第2質量体及び駆動弾性体を含む振動体Tに対して搬送方向上流側及び搬送方向下流側において、振動体Tの高さ方向中央部より上方に配置される支持面2cを有する基台2と、支持面2cに対して振動体Tを接続する防振弾性体(一対の防振バネ50)とを備える。
【0054】
これにより、本実施形態の振動搬送装置1では、振動体Tを支持する支持面2c(振動体Tと基台2との第2固定点A2)が振動体Tの高さ方向中央部より上方に配置されるため、垂直成分の防振バネ50を柔らかくし減衰率を最大限に大きくした状態であっても、トラフ8の側面部分に横から力が作用したとしても、力の作用点と、振動体Tと基台2との固定点(回転軸)との距離が比較的小さくなる。これにより、トラフ8に横から作用するトルクが小さくなり、トラフ8が横方向に揺動するのが抑制される。そのため、複数の振動搬送装置1を有する多列振動搬送システムにおいて、トラフ8が周辺部品と衝突するのを低減可能であるとともに、トラフ8を並列配置する場合に、トラフ8間の隙間寸法を低減可能である。
【0055】
本実施形態の振動搬送装置1において、防振バネ50は、支持面2cに取り付けられ垂直成分の振動を減衰させる第1アーム部51と、第1アーム部51に垂直に配置され且つ振動体Tに取り付けられる第2アーム部52とを有する。
【0056】
これにより、本実施形態の振動搬送装置1では、基台2から設置面へ伝達される振動をさらに減少させるための、防振バネ50において、平行となる方向の弾性係数や、垂直となる方向の弾性係数とを独立して調整することができる。
【0057】
本実施形態の振動搬送装置1において、振動体Tと防振バネ50との第1固定部A1は、支持面2cと防振バネ50との第2固定部A2より下方に配置される。
【0058】
これにより、本実施形態の振動搬送装置1では、振動体Tが基台2の基台鉛直部2bに対して吊り下げられるように支持されるため、振動体Tが大型化した場合でも振動体Tの振動が安定する。
【0059】
本実施形態の多列振動搬送システムは、振動搬送装置1を複数備え、複数のリニア搬送面8tが略平行に配置される。
【0060】
これにより、本実施形態の多列振動搬送システムでは、振動搬送装置1のトラフ8に横から力が作用した場合でも、トラフ8が横方向に揺動するのが抑制されるため、隣のトラフ8に衝突して部品が破損するのを防止することが可能になる。
【0061】
(第2実施形態)
本実施形態の振動搬送装置101と第1実施形態の振動搬送装置1とが異なる点は、第1実施形態において、振動体Tと防振バネ50の第2アーム部52との第1固定部A1が、支持面2cと防振バネ50の第1アーム部51との第2固定部A2より下方に配置されるのに対して、本実施形態において、振動体Tと防振バネ150の第2アーム部152との第1固定部A1が、支持面2cと防振バネ150の第1アーム部151との第2固定部A2より上方に配置される点である。なお、本実施形態の振動搬送装置101において、第1実施形態の振動搬送装置1と同様の構成である点については、その説明を省略する。
【0062】
振動搬送装置101は、図5に示すように、床面上に固定される基台2と、基台2の上方に配設された可動部5と、可動部5の上方に配設された固定部6と、固定部6の上方でワークを搬送するリニア搬送面8tを有するトラフ8とを備える。
【0063】
本実施形態において、可動部5と連結板16とトラフ支持台12とトラフ8が、本発明の第1質量体であり、固定部6が、本発明の第2質量体であり、駆動バネ10が、本発明の駆動弾性体であり、防振バネ150が、本発明の防振弾性体である。そのため、振動体Tは、可動部5と連結板16とトラフ支持台12とトラフ8と固定部6と駆動バネ10を含んで構成される。
【0064】
振動体Tは、板バネである一対の防振バネ150によって2つの基台鉛直部2bの支持面2cに対して支持されている。防振バネ150は、第1アーム部151と、第1アーム部151に対して垂直に配置された第2アーム部152とを有している。第1アーム部151と第2アーム部152とは、一体に形成されており、防振バネ150は、平板L字状の弾性部材(L字型バネ)である。
【0065】
防振バネ150は、その第1アーム部151において締結ボルト51aによって支持面2cに固定されるとともに、その第2アーム部152において締結ボルト10bによって固定部6に固定される。一対の防振バネ150は、第1アーム部151が平行に配置されるように支持面2cに取り付けられるとともに、第2アーム部152が平行に配置されるように固定部6に取り付けられる。
【0066】
振動体Tが一対の防振バネ150によって2つの基台鉛直部2bの支持面2cに支持された状態では、防振バネ150の第2アーム部152は、第1アーム部151の端部から上方に向かって延びる。そのため、振動体Tと防振バネ150の第2アーム部152との第1固定部A1は、支持面2cと防振バネ150の第1アーム部151との第2固定部A2より上方に配置される。
【0067】
2つの基台鉛直部2bの上端部に配置された支持面2cは、振動体Tに対して搬送方向上流側及び搬送方向下流側において、振動体Tの高さ方向中央部より上方に配置される。
【0068】
以上のように、本実施形態の振動搬送装置101では、本実施形態の振動搬送装置1と同様の効果が得られる。
【0069】
(第3実施形態)
本実施形態の振動搬送装置201と第1実施形態の振動搬送装置1とが異なる点は、第1実施形態において、振動体Tは、第1質量体と第2質量体と駆動弾性体とを有しているのに対して、本実施形態において、振動体Tは、第1質量体と第2質量体と駆動弾性体とを有するとともに、第2質量体に駆動弾性体により接続される第3質量体を有している点である。なお、本実施形態の振動搬送装置201において、第1実施形態の振動搬送装置1と同様の構成である点については、その説明を省略する。
【0070】
振動搬送装置201は、図6に示すように、床面上に固定される基台2と、基台2の上方に配設されたメインブロック213a及びサブブロック213bと、その上方に配設されたメインブロック212a及びサブブロック212bと、その上方でワークを搬送するリニア搬送面8tを有するトラフ8とを備える。
【0071】
メインブロック212aとサブブロック212bとは、一体的に固定され、メインブロック213aとサブブロック213bとは、一体的に固定される。
【0072】
トラフ8と連結されたトラフ支持台12とメインブロック212aとは、板バネを用いた一対の駆動バネ10によって前後方向2箇所を連結されている。一対の駆動バネ10は、下端において締結ボルト10aによってメインブロック212aの前後方向端面に固定されるとともに、上端において締結ボルト10bによってトラフ支持台12の前後方向端面に固定される。
【0073】
サブブロック212bとサブブロック213bとは、板バネを用いた一対の駆動バネ210によって前後方向2箇所を連結されている。一対の駆動バネ210は、下端において締結ボルト210aによってサブブロック213bの前後方向端面に固定されるとともに、上端において締結ボルト210bによってサブブロック212bの前後方向端面に固定される。
【0074】
駆動バネ10及び駆動バネ210は、平板状のバネ(板バネ)である。駆動バネ10及び駆動バネ210には、加振源として機能する圧電素子(図示省略)を貼り付け、圧電素子に電荷を付与することにより駆動バネ10及び駆動バネ210が弾性変形して振動が生じる。
【0075】
本実施形態において、トラフ8とトラフ支持台12が、本発明の第1質量体であり、メインブロック212aとサブブロック212bが、本発明の第2質量体であり、駆動バネ10が、本発明の駆動弾性体であり、防振バネ50が、本発明の防振弾性体である。
【0076】
本実施形態の振動搬送装置201は、本発明の第2質量体に、一対の駆動バネ210により接続されるメインブロック213a及びサブブロック213b(第3質量体)を有している。そのため、振動体Tは、トラフ8とトラフ支持台12とメインブロック212aとサブブロック212bとメインブロック213aとサブブロック213bと駆動バネ10と駆動バネ210を含んで構成される。
【0077】
振動体Tは、第1実施形態と同様に、板バネである一対の防振バネ50によって2つの基台鉛直部2bの支持面2cに対して支持される。
【0078】
2つの基台鉛直部2bの上端部に配置された支持面2cは、振動体Tに対して搬送方向上流側及び搬送方向下流側において、振動体Tの高さ方向中央部より上方に配置される。
【0079】
振動体Tが一対の防振バネ50によって2つの基台鉛直部2bの支持面2cに支持された状態では、振動体Tと防振バネ50の第2アーム部52との第1固定部A1は、支持面2cと防振バネ50の第1アーム部51との第2固定部A2より下方に配置される。
【0080】
そのため、2つの支持面2cは、振動体Tに対して搬送方向上流側及び搬送方向下流側にそれぞれ配置されており、振動体Tは、2つの基台鉛直部2bの支持面2cに対して一対の防振バネ50によって吊り下げられるように支持される。
【0081】
以上のように、本実施形態の振動搬送装置201では、本実施形態の振動搬送装置1と同様の効果が得られる。
【0082】
本実施形態に係る振動搬送装置201は、駆動バネ10と駆動バネ210のそれぞれの共振周波数を互いに異ならせ、駆動部(図示省略)によって駆動バネ10を振動させる加振状態と、駆動バネ210を振動させる加振状態とに切換可能に構成している。
【0083】
本実施形態の振動搬送装置201において、駆動バネ10の傾斜姿勢(向き、角度)と駆動バネ210の傾斜姿勢は異なる。特に、本実施形態では、駆動バネ10の傾斜方向(駆動バネ10の上端が向く方向)とは逆方向に駆動バネ210の傾斜方向を設定している。本実施形態に係る振動搬送装置201では、駆動バネ10の振動角と駆動バネ210の振動角を相互に異ならせて、駆動バネ10を振動させた場合におけるリニア搬送面上の搬送物の搬送方向と、駆動バネ210を振動させた場合におけるリニア搬送面上のワークの搬送方向が逆方向(前進方向と後退方向)になるように設定している。
【0084】
なお、具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0085】
例えば、上記第1~第3実施形態では、防振バネ50、150が平板L字状の弾性部材(L字型バネ)であるが、防振バネ50、150の形状(長さ、面積、厚み等)は任意である。防振バネ50、150は、第1アーム部51、151と第2アーム部52、152とが一体に形成されたものに限られない。
【0086】
例えば、第1アーム部51、151と第2アーム部52、152とが、それ以外の弾性部材を介して接続されたものでもよい。防振バネ50、150は、駆動バネ10の弾性主軸に対して平行に配置される第1アーム部51、151と駆動バネ10の弾性主軸に対して垂直に配置される第2アーム部52、152とを有するものに限られない。防振バネ50、150は、L字型バネ以外のバネ(例えばI字型のバネの基端同士を接続したバネやT字型バネ等)や、バネ以外の弾性体(ゴム等)でもよい。
【0087】
例えば、図7に示すように、防振バネ350は、支持面2cに取り付けられ垂直成分の振動を減衰させる第1アーム部351と、第1アーム部351に垂直に配置され且つ振動体Tに取り付けられる第2アーム部352と、第1アーム部351と第2アーム部352とを接続し且つ凸状に湾曲する湾曲部353とを有してもよい。
【0088】
これにより、本変形例の振動搬送装置では、基台2から設置面へ伝達される振動をさらに減少させるための、防振バネ350において、平行となる方向の弾性係数や、垂直となる方向の弾性係数とを独立して調整することができる。また、トラフ8の側面部分に横から力が作用した際に、トラフ8が横方向に揺動するのが効果的に抑制される。
【0089】
上記第1~第3実施形態では、振動体の例を示したが、振動体の構成は、それに限られない。そのため、本発明の振動体は、第1質量体、第2質量体及び駆動弾性体を含むとともに、それ以外の部材を含んでいてもよい。
【0090】
上記第1~第3実施形態では、2つの基台鉛直部2bの支持面2cが振動体Tの高さ方向中央部より上方に配置されるが、2つの基台鉛直部2bの支持面2cが振動体Tの重心位置より上方に配置されても、本発明の効果が得られる。
【0091】
上記第1~第3実施形態では、駆動バネ10の加振源が圧電素子であるが、加振源は、圧電素子以外のものであってもよい。また、振動搬送装置により搬送される搬送対象物は、LED等の各種LEDや、LED以外の電子部品、あるいは食品など電子部品以外のものでもよい。
【0092】
上記第1実施形態において、1または2つの硬質ゴム35をトラフ8の前端側部分と後端部との間に配置する代わりに、トラフ8の前端側部分と後端部との間においてトラフ8の下面から下方に向かって突出する1または2つの突出部を形成してもよい。トラフ8の前端側部分と後端部との間においてトラフ支持台12の上面から上方に向かって突出する1または2つの突出部を形成してもよい。
【0093】
上記第1実施形態において、トラフ8の前端側部分を係止部30によりトラフ支持台12に固定する代わりに、トラフ8の後端部と同様に、ボルトによりトラフ支持台12に固定してもよい。
【0094】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0095】
以下、本発明の参考例に係る発明について説明する。
【0096】
振動搬送装置として、さまざまな形態のものが知られている。例えば文献1(特開2016-160099)に開示されている装置は、基台に対して弾性的に支持された質量体(可動体)を振動させることによって、搬送面上の搬送対象物が搬送されるように構成されている。また例えば文献2(特開2007-168936)に開示されている装置は、弾性部材を介して接続された一対の質量体(可動部およびウェイト部)を有し、これらを逆位相で振動させることで、搬送面上の搬送対象物が搬送されるように構成されている。
【0097】
これらの振動搬送装置において、質量体を振動させるための加振部は、圧電素子や電磁石を含んで構成されており、制御を担うドライブ回路から該圧電素子や電磁石に所定の駆動電圧が印加されることで、質量体に所定の振動が励起され、所定の搬送態様が実現されるようになっている。
【0098】
上記のような振動搬送装置においては、当然のことながら、制御を担うドライブ回路と、圧電素子や電磁石とを電気的に接続するための配線構造を形成する必要があるが、制御を担うドライブ回路は、質量体や基台などといった構造体(装置の本体部分)とは別の位置に設けられることが多い。したがって、この配線構造は、一端において、構造体の内部に設けられている圧電素子や電磁石と接続され、質量体の表面に沿って敷設されたり、必要に応じて質量体に設けられた挿通孔に挿通されたりした上で、構造体の外部に引き出されて、他端において、ドライブ回路と接続されるようなものとなる。
【0099】
従来の振動搬送装置では、このような配線構造を、丸ケーブルを用いて形成していた。そして、この丸ケーブルの敷設作業を容易にするために、また、敷設された丸ケーブルに損傷や断線が生じないように保護するために、質量体の表面に配線用の溝を形成して、丸ケーブルをこの溝に沿って敷設するようにしていた。また、質量体の表面に沿って敷設された丸ケーブルが露出したままであると危険を伴うため、上からカバーが設けられることもあった。
【0100】
このような構成においては、質量体が加振された際に、丸ケーブルが溝やカバーと擦れてしまい、ひきつれを起こして、振動を弱めるダンパーのように作用してしまうという問題があった。これを回避するためには、配線用の溝の深さと幅を、敷設される丸ケーブルの外径に対して十分に大きなものとしておく必要がある。
【0101】
一方で、振動搬送装置において十分な振幅を確保して安定した搬送を実現するためには、質量体、特に、ウェイトとして機能する質量体の重量を十分に確保することが必要不可欠である。ところが、質量体の表面に形成される配線用の溝の深さや幅が大きくなるにつれて、この溝によって失われる質量体の重量(欠損質量)が大きくなり、質量体の重量を確保することが難しくなる。
【0102】
このように、丸ケーブルによって振動が弱められないようにするために、質量体の表面に形成する溝を大きくすると、質量体の重量が確保されず、結局、振幅の低下を招いてしまう。振動搬送装置の製造者はこのようなジレンマに常に悩まされていた。特に、近年は、振動搬送装置の高機能化などに伴い、設置される圧電素子などの個数が増加する傾向にある。すなわち、配線の本数が増加する傾向にある。したがって、このジレンマは一層深刻なものとなっていた。
【0103】
本参考例の発明は、振動搬送装置において、その搬送性能が損なわれにくい配線構造を実現することを目的としている。
【0104】
本参考例の発明は、上記の目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0105】
すなわち、本参考例の発明は、弾性的に支持された質量体を含んで構成される構造体と、前記質量体を振動させる加振部とを備え、前記加振部が前記質量体を振動させることで搬送対象物が搬送されるように構成されている振動搬送装置であって、前記構造体の内部に設けられている接続対象部品と、前記構造体の外部に設けられている被接続部品とを接続する接続配線の少なくとも一部が、フレキシブル基板を用いて形成されており、前記フレキシブル基板の少なくとも一部が前記質量体の表面に沿って配設されている、ことを特徴とする。
【0106】
この構成によると、接続配線によって振動が弱められないように、該質量体の表面に深い溝を設ける必要がない。したがって、該質量体の重量が損なわれることもない。すなわち、上記のジレンマが解消され、接続配線によって搬送性能が損なわれるという事態が回避される。
【0107】
好ましくは、前記振動搬送装置において、前記フレキシブル基板が、加振により相対移動する部材の間に亘って設けられる亘り部分、を備え、前記亘り部分に、前記部材間の相対移動を許容する弛みが設けられている、ことを特徴とする。
【0108】
この構成によると、加振によって部材間の相対移動が生じた際に、フレキシブル基板が振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0109】
好ましくは、前記振動搬送装置において、前記構造体が、複数の前記質量体を備え、複数の前記質量体の間に前記亘り部分が設けられる、ことを特徴とする。
【0110】
この構成によると、加振によって複数の質量体が相対移動した際に、フレキシブル基板が振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0111】
好ましくは、前記振動搬送装置において、前記質量体と接続対象部品の間に前記亘り部分が設けられる、ことを特徴とする。
【0112】
この構成によると、加振によって質量体と接続対象部品とが相対移動した際に、フレキシブル基板が振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0113】
好ましくは、前記振動搬送装置において、前記構造体が、前記質量体に設けられた弾性体を備え、前記加振部が、前記弾性体に設けられた加振用の圧電素子と、これに駆動電圧を印加する加振制御部と、を備え、前記接続対象部品が前記加振用の圧電素子であり、前記被接続部品が前記加振制御部である、ことを特徴とする。
【0114】
この構成によると、搬送性能を損なうことなく、加振用の圧電素子を加振制御部と接続することができる。
【0115】
好ましくは、前記振動搬送装置において、前記構造体が、前記質量体に設けられた弾性体を備え、前記加振部が、前記弾性体に設けられた検出用の圧電素子と、これから検出電圧を取得する加振制御部と、を備え、前記接続対象部品が前記検出用の圧電素子であり、前記被接続部品が前記加振制御部である、ことを特徴とする。
【0116】
この構成によると、搬送性能を損なうことなく、検出用の圧電素子を加振制御部と接続することができる。
【0117】
本参考例の発明によると、振動搬送装置の搬送性能が損なわれにくい配線構造を実現することができる。
【0118】
以下、本参考例の発明を、図面を参照しつつ説明する。
【0119】
<1.振動搬送装置の構成>
本参考例に係る振動搬送装置の構成を、図8図10を参照しながら説明する。図8は、本参考例に係る振動搬送装置1100の構成を示す斜視図である。図9は、振動搬送装置1100の側面図である。図10は、振動搬送装置1100の分解図である。
【0120】
振動搬送装置1100は、搬送対象物(具体的には例えば、ICチップ、微小なコイル、などといった各種のワーク)を、振動によって搬送する装置である。
【0121】
振動搬送装置1100は、質量体1001a,1001b,1001c、弾性体1002a,1002b、基台1003、カバー部材1004、などを含んで構成される構造体Xと、圧電素子1005p,1005q、加振制御部1006、接続配線1007、などを含んで構成される加振部Yと、を備える。加振部Yが、構造体Xが有する質量体1001a,1001b,1001cを振動させることで、搬送対象物が搬送されるようになっている。
【0122】
図10に示されるように、第1質量体1001aは、上ブロック部1011aと下ブロック部1012aを備える。上ブロック部1011aは、長尺なブロック状の部材である。一方、下ブロック部1012aは、上ブロック部1011aより短いブロック状の部材であり、上面において上ブロック部1011aの下面に固定されている。下ブロック部1012aは、上ブロック部1011aに対してボルト留めなどによって固定されてもよいし、上ブロック部1011aと一体的に構成されてもよい。
【0123】
第1質量体1001aの上面(すなわち、上ブロック部1011aの上面)は、直線状の搬送面(リニア搬送面)Lを形成し、振動搬送装置1100は、このリニア搬送面Lが水平面となるように設置される。以下において、リニア搬送面Lの延在方向(長手方向)を、「前後方向」とよび、水平面内において前後方向と直交する方向(すなわち、リニア搬送面Lの幅方向(短尺方向))を、「左右方向」とよぶ。
【0124】
第2質量体1001bは、前方に配置されるブロック状の部分(前ブロック部分)1011bと、後方に配置されるブロック状の部分(後ブロック部分)1012bが、各々の上端側において、前後に延在する長尺な連結部分1013bで連結されてなる、全体として門型状のメインブロックを備える。また、第2質量体1001bは、連結部分1013bの下面にボルト留めにより固定されたサブブロック部1014bを備える。
【0125】
第3質量体1001cは、前方に配置されるブロック状の部分(前ブロック部分)1011cと、後方に配置されるブロック状の部分(後ブロック部分)1012cが、各々の下端側において、前後に延在する長尺な連結部分1013cで連結されてなる、全体として逆門型状のメインブロックを備える。また、第3質量体1001cは、連結部分1013cの上面にボルト留めにより固定されたサブブロック部1014cを備える。
【0126】
図9などに示されるように、第1質量体1001aは、前後に設けられて互いに平行に延在する一対の第1弾性体1002a,1002aを介して第2質量体1001bと接続されることにより、第2質量体1001bに対して弾性的に支持される。また、第2質量体1002bは、前後に設けられて互いに平行に延在する一対の第2弾性体1002b,1002bを介して第3質量体1001cと接続されることにより、第3質量体1001cに対して弾性的に支持される。さらに、第3質量体1002cは、前後に設けられて互いに平行に延在する一対の防振バネ1030,1030を介して基台1003と接続されることにより、基台1003に対して弾性的に支持される。ただし、第1弾性体1002a、第2弾性体、および、防振ばね1030は、いずれも、平板状の弾性部材であり、板バネなどにより構成される。また、基台1003は、前後に長尺なブロック状の部材であって、振動搬送装置1100が設置される現場の床面などに配置される。
【0127】
第1弾性体1002aの接続態様をより具体的に説明する。図10に示されるように、第1質量体1001aの下ブロック部1012aの前後の各端面には、上ボルト孔H1001aが設けられている。また、第2質量体1001bの前ブロック部分1011bの前面の下端付近と、後ブロック部分1012bの後面の下端付近には、下ボルト孔H1002aが設けられている。そして、一方の第1弾性体1002aが、上端において、第1質量体1001aの下ブロック部1012aの前面にボルト固定されるとともに、下端において、第2質量体1001bの前ブロック部分1011bの前面にボルト固定される。また、他方の第1弾性体1002aが、上端において、第1質量体1001aの下ブロック部1012aの後面にボルト固定されるとともに、下端において、第2質量体1001bの後ブロック部分1012bの後面にボルト固定される。これによって、第1質量体1001aが、一対の第1弾性体1002a,1002aを介して第2質量体1001bと接続される。
【0128】
第2弾性体1002bの接続態様をより具体的に説明する。図10に示されるように、第2質量体1001bの前ブロック部分1011bの後面の上端付近と、後ブロック部分1012bの前面の上端付近には、上ボルト孔H1001bが設けられている。また、第3質量体1001cの前ブロック部分1011cの後面の下端付近と、後ブロック部分1012cの前面の下端付近には、下ボルト孔H1002bが設けられている。そして、一方の第2弾性体1002bが、上端において、第2質量体1001bの前ブロック部分1011bの後面にボルト固定されるとともに、下端において、第3質量体1001cの前ブロック部分1011cの後面にボルト固定される。また、他方の第2弾性体1002bが、上端において、第2質量体1001bの後ブロック部分1012bの前面にボルト固定されるとともに、下端において、第3質量体1001cの後ブロック部分1012cの前面にボルト固定される。これによって、第2質量体1001bが、一対の第2弾性体1002b,1002bを介して第3質量体1001cと接続される。
【0129】
防振バネ1030の接続態様をより具体的に説明する。図10に示されるように、第3質量体1001cの前ブロック部分1011cの前面と、後ブロック部分1012cの後面には、上ボルト孔H1301が設けられている。また、基台1003の前後の端面には、下ボルト孔H1302が設けられている。そして、一方の防振バネ1030が、上端において、第3質量体1001cの前面にボルト固定されるとともに、下端において、基台1003の前面にボルト固定される。また、他方の防振バネ1030が、上端において、第3質量体1001cの後面にボルト固定されるとともに、下端において、基台1003の後面にボルト固定される。これによって、第3質量体1001cが、一対の防振バネ1030,1030を介して基台1003と接続される。
【0130】
このように、振動搬送装置1100は、基台3上に防振バネ1030を介して設置された第3質量体1001cの上に、第2弾性体1002bを介して弾性的に支持された第2質量体1001bが配置され、さらに、その上に、第1弾性体1002aを介して弾性的に支持された第1質量体1001aが配置されている。これを建物に例えると、基礎部分をなす第3質量体1001cの上に、1階部分をなす第2質量体1001aが配置され、さらにその上に、2階部分をなす第1質量体1001aが配置された、2階建て構造ということになる。
【0131】
ただし、第1弾性体1002aと第2弾性体1002bは、互いに逆の傾斜姿勢とされている。すなわち、図9に示されるように、第1質量体1001aと第2質量体1001bの間に設けられる第1弾性体1002aは、下方に行くにつれて前方に向かうような傾斜姿勢とされており、第2質量体1001bと第3質量体1001cの間に設けられる第2弾性体1002bは、下方に行くにつれて後方に向かうような傾斜姿勢とされている。
【0132】
また、第1弾性体1002aと第2弾性体1002bは、互いに異なる共振周波数を有するものとなるように設定されている。一例として、第1弾性体1002aの共振周波数は500Hzに設定され、第2弾性体1002bの共振周波数は200Hzに設定されている。
【0133】
第1弾性体1002aおよび第2弾性体1002bは、質量体1001a,1001b,1001cを振動させるための加振バネとしての役割を担っており、各弾性体1002a,1002bには、これを弾性変形させて振動させるための圧電素子(加振用圧電素子)1005pが設けられる。また、各弾性体1002a,1002bには、その弾性変形の度合いを検出するための圧電素子(検出用圧電素子)1005qが設けられる。加振用圧電素子1005pは、2個の第1弾性体1002a,1002aおよび2個の第2弾性体1002b,1002bの全ての両面に設けられる。つまり、加振用圧電素子1005pは、計8個設けられる。一方、検出用圧電素子1005qは、後方に設けられた第1弾性体1002aと、前方に設けられた第2弾性体1002bの片面に設けられる。つまり、検出用圧電素子1005qは、計2個設けられる。
【0134】
図17に示されるように、各加振用圧電素子1005pおよび各検出用圧電素子1005qには、配線部品1050が取り付けられる。配線部品1050は、弾性体1002a,1002bとその両面に設けられている2枚の加振用圧電素子1005p(あるいは、その片面に設けられている1枚の検出用圧電素子1005q)とを一体的に巻回する部分と、この部分から延出するU字状に屈曲した部分とを有している。配線部品1050における該U字状に屈曲した部分には、圧電素子1005p,1005qから延びるリード線などが敷設されており、ここに接続配線1007の一端が接続される。この接続配線1007の他端が、加振制御部1006と接続されることによって、各圧電素子1005p,1005qが加振制御部1006とが電気的に接続される。
【0135】
加振制御部1006は、リニア搬送面L上の搬送対象物が所定の搬送態様で搬送されるように質量体1001a,1001b,1001cを振動させるための加振制御を行う機能部であり、ドライブ回路などによって実現される。
【0136】
<2.振動搬送装置の動作>
次に、振動搬送装置1100で実現される搬送態様について、引き続き図8図10を参照しながら説明する。
【0137】
振動搬送装置1100では、リニア搬送面L上のワークが前方に搬送される搬送態様(送り搬送)と、ワークが後方に搬送される搬送態様(戻り搬送)とを切り換えて行うことができる。
【0138】
送り搬送を行う場合、加振制御部1006は、各第1弾性体1002aに設けられている各加振用圧電素子1005pに駆動電圧を印加して、各第1弾性体1002aをその共振周波数で振動させる。すると、第1質量体1001aと第2質量体1001bとが互いに逆位相で振動する。ただし、第1弾性体1002aは、下方に行くにつれて前方に向かうような傾斜姿勢とされているため、このとき、リニア搬送面Lは、前上方に向かう斜め方向とその逆方向に振動する。これによって、リニア搬送面L上のワークが前方に搬送される。
【0139】
一方、戻り搬送を行う場合、加振制御部1006は、各第2弾性体1002bに設けられている各加振用圧電素子1005pに駆動電圧を印加して、各第2弾性体1002bをその共振周波数で振動させる。すると、第2質量体1001bと第3質量体1001cとが互いに逆位相で振動する。ただし、第2弾性体1002bは、下方に行くにつれて後方に向かうような傾斜姿勢とされているため、このとき、リニア搬送面Lは、後上方に向かう斜め方向とその逆方向に振動する。これによって、リニア搬送面L上のワークが後方に搬送される。
【0140】
このように、振動搬送装置1100では、加振制御部1006が、駆動電圧を印加する加振用圧電素子1005pを切り換えることによって、第1弾性体1002aが振動する状態と第2弾性体1002bが振動する状態とを切り換える。これによって、質量体1001a,1001b,1001cの振動の態様が切り換えられ、送り搬送と戻り搬送とが切り換えられるようになっている。
【0141】
また、加振制御部1006は、接続配線1007を通じて加振用圧電素子1005pに駆動電圧を印加する一方で、接続配線1007を通じて検出用圧電素子1005qから検出電圧を取得する。すなわち、検出用圧電素子1005qは、各弾性体1002a,1002bの変形に応じて発生する電圧を検出電圧として出力し、これを加振制御部1006が取得する。加振制御部1006は、取得した検出電圧に基づいて、加振用圧電素子1005pに印加する駆動電圧の補正などを行う。
【0142】
上記の通り、第1弾性体1002aと第2弾性体1002bの各共振周波数は、互いに異なる値に設定されている。したがって、第1弾性体1002aと第2弾性体1002bのうちの一方が共振周波数で振動して所定方向への搬送がなされている状態において、他方の弾性体がその搬送の妨げとなることがない。
【0143】
すなわち、第1弾性体1002aがその共振周波数で振動している状態において、第2弾性体1002bは第1弾性体1002aほど大きく弾性変形せず、ワークの前方への搬送を妨げない。第2弾性体1002bが大きく弾性変形しないため、第2弾性体1002bを介して接続されている第2質量体1001bと第3質量体1001cはあたかも1つの剛体のように振動する。このとき、第2質量体1001bはウェイトとして機能し、第2弾性体1002bは補助的な防振バネとして機能する。
【0144】
また、第2弾性体1002bがその共振周波数で振動している状態において、第1弾性体1002aは、第2弾性体1002bほど大きくは弾性変形せず、ワークの後方への搬送を妨げない。第1弾性体1002aが大きく弾性変形しないため、第1弾性体1002aを介して接続されている第1質量体1001aと第2質量体1001bはあたかも1つの剛体のように振動する。このとき、第3質量体1001cはウェイトとして機能し、第1質量体1001aおよび第2質量体1001bがいわば一体となって、ワークを後方向へ搬送するように振動する。
【0145】
振動搬送装置1100の具体的な適用例として、リニア搬送面Lの後端部分にボウルフィーダを接続する構成が想定できる。この場合、ボウルフィーダから供給されたワークを、送り搬送にて前方に搬送することができる。その一方で、例えば第1質量体1001aの下ブロック部1012aをシュート台として機能させ、このシュート台に落とされたワークを、戻り搬送によってボウルフィーダに戻すことができる。
【0146】
従来の振動搬送装置では、送り搬送と戻り搬送を切り換えて行えるようにするために、例えば、リニア搬送面が設けられた質量体を含んで構成される構造体と、これを加振するための加振部とからなる装置ユニットを、2個並置していた。そして、一方の構造体側のリニア搬送面を一方の加振部で加振することで送り搬送を行い、他方の構造体側のリニア搬送面を他方の加振部で加振することで戻り搬送を行っていた。このような従来の振動搬送装置に対し、この参考例に係る振動搬送装置1100は、構造体Xおよび加振部Yの個数は1つでありながら、送り搬送と戻り搬送の両方を実現できるように構成されている。したがって、従来の振動搬送装置と比べて、装置のサイズ(特に、幅サイズ)を約半分にすることができる。このため、スペースがない現場にも容易に導入することができる。また、複数の振動搬送装置1100を多列配置して使用する場合、従来の振動搬送装置と比べて、2倍の台数の振動搬送装置1100を配置することができるので、搬送効率を2倍にすることができる。
【0147】
<3.接続配線>
次に、振動搬送装置1100が備える接続配線1007について、図11図12を参照しながら説明する。図11は、カバー部材1004を取り外した状態の振動搬送装置1100の斜視図である。図12は、カバー部材1004を取り外した状態の振動搬送装置1100の側面図である。なお、以下において、加振用圧電素子1005pと検出用圧電素子1005qを区別しない場合は、単に「圧電素子1005」という。
【0148】
接続配線1007は、各圧電素子1005を接続対象部品とし、加振制御部1006を被接続部品として、両者1005,1006を接続する配線である。上記の通り、振動搬送装置1100においては、質量体1001a,1001b,1001c、弾性体1002a,1002b、基台1003、カバー部材1004、などを含んで構造体Xが構成されているところ、加振制御部1006は、この構造体Xの外部に設けられている。一方、各圧電素子1005は、上記の通り、弾性体1002a,1002bに取り付けられている。すなわち、構造体Xの内部に設けられている。つまり、接続配線1007は、一端において、構造体Xの内部に設けられている圧電素子1005と接続され、構造体Xの外部に引き出されて、他端において、加振制御部1006と接続される。
【0149】
接続配線1007は、その一部が、フレキシブル基板Fを用いて構成されている。すなわち、加振制御部1006から延びるケーブルの端子1060は、基台1003に形成されている挿通部1031を介して基台1003の上面側にまで引き出されており(図10)、接続配線1007における、この端子1060と各圧電素子1005とを接続する部分が、フレキシブル基板Fを用いて構成されている。
【0150】
接続配線1007の一部を構成するフレキシブル基板Fについて、図11図12に加え、図13図14を参照しながら説明する。図13は、立体的に折り曲げられる前のフレキシブル基板Fを示す図である。図14は、立体的に折り曲げられたフレキシブル基板Fを示す図である。
【0151】
フレキシブル基板Fとは、いわゆるリジッド基板とは異なり、柔軟性を有する薄肉の基材(ベースフィルム)に、配線パターンを形成したものであり、フレキシブルプリント配線板、FPC(Flexible Printed Circuits)、などとも呼ばれる。ここでは、ポリイミドなどの絶縁材料により形成されるベースフィルムの両面に、銅箔などを用いて配線パターンが形成されたフレキシブル基板Fによって接続配線1007の一部を構成した。配線(ケーブル)を形成するフレキシブル基板はフレキケーブルとも呼ばれる。
【0152】
フレキシブル基板Fは、一対の基端部F1から、6個の先端部F2に向けて枝分かれした形状となっている。各端部F1,F2には端子部分1070が設けられており、基材の表裏面には、基端部F1側の端子部分1070を、先端部F2側の端子部分1070と接続するような配線パターンが形成される。
【0153】
フレキシブル基板Fは、屈曲性を有しており、図13に示される平面状の形態から、所定の位置で折り曲げられるとともに、所定の位置で屈曲されることによって、構造体Xの形状に応じた立体形状とされて(図14)、構造体Xに取り付けられる(図11図12)。このとき、各基端部F1に設けられた端子部分1070が加振制御部1006の端子1060と接続され、各先端部F2に設けられた端子部分1070が圧電素子1005と接続される。フレキシブル基板Fが取り付けられた後、フレキシブル基板Fを覆うようにして、カバー部材1004が配設される(図11)。
【0154】
構造体Xに取り付けられた状態において、フレキシブル基板Fの一部分1711,1712,1713は、質量体1001b,1001cの側面に沿って配設される(このような部分を以下「沿設部分」ともいう)。また、別の部分1721,1722,1723は、加振により相対移動する部材の間に亘って設けられる(このような部分を以下「亘り部分」ともいう)。以下、延設部分および亘り部分について説明する。
【0155】
(沿設部分)
フレキシブル基板Fには、第3質量体1001cの側面に沿って配設される延設部分(下側延設部分)1711と、第2質量体1001bの前ブロック部分1011bの側面に沿って配設される延設部分(前側延設部分)1712と、第2質量体1001bの後ブロック部分1012bの側面に沿って配設される延設部分(後側延設部分)1713と、が設けられる。
【0156】
各延設部分1711,1712,1713は、質量体1001c,1001bの側面の面内に収まるような形状とされており、該側面に沿って配設されて、該側面に対して両面テープなどを用いて固定される。
【0157】
(第1亘り部分)
フレキシブル基板Fは、第2質量体1001bと第3質量体1001cの間に亘って配設される2個の亘り部分(第1亘り部分)1721を備える。一方の第1亘り部分1721は、フレキシブル基板Fにおける、下側延設部分1711と前側延設部分1712の間に設けられ(図13図14)、構造体Xに取り付けられた状態において、第3質量体1001cと第2質量体1001bの前ブロック部分11bの間に配置される(図12)。また、他方の第1亘り部分1721は、フレキシブル基板Fにおける、下側延設部分1711と後側延設部分1713の間に設けられ(図13図14)、構造体Xに取り付けられた状態において、第3質量体1001cと第2質量体1001bの後ブロック部分1012bの間に配置される(図12)。
【0158】
第1亘り部分1721について、図15を参照しながら説明する。図15には、後方側に設けられる第1亘り部分1721が示されているが、前方側に設けられる第1亘り部分1721もこれと同じ構成を有している。
【0159】
第1亘り部分1721は、立体的に折り曲げられる前の状態において、直線状に延在する帯状の部分であり(図13)、立体形状においては、延設部分1711,1713(1712)との境界1730が略90°に折り曲げられるとともに、第1亘り部分1721の略中央部分がU字状に折り曲げられる(図14)。そして、このようにU字状に折り曲げられた第1亘り部分1721が、一対の対向面S1,S2の間、すなわち、第2質量体1001bの下面S1と第3質量体1001cの上面S2の間に、挿入される(図15)。
【0160】
したがって、第1亘り部分1721は、一端側から屈曲部に至る部分が第2質量体1001bの下面S1に沿い、他端側から屈曲部に至る部分が第3質量体1001cの上面S2に沿うようにして設けられる。ただし、第1亘り部分1721は、その両端部が、カバー部材1004に設けられた突出片1041と各面S1,S2との間に挟まれることによって、各面S1,S2から浮き上がらないようになっているが、これらを除く部分において、各面S1,S2に対して固定されておらず、各面S1,S2から離間できるように設けられる。
【0161】
このように、第1亘り部分1721は、両質量体1001b,1001cの間に直線的に設けられるのではなく、弛み(すなわち、遊び)をもって設けられる。したがって、加振によって両質量体1001b,1001cが相対移動したときに、この弛みで両質量体1001b,1001cの変位が吸収され、両質量体1001b,1001cの相対移動が許容される。すなわち、フレキシブル基板Fによって両質量体1001b,1001cの相対移動が妨げられることがなく、この亘り部分でフレキシブル基板Fが振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0162】
特に、加振の際に両質量体1001b,1001cが相対移動する方向は、基本的に、前後方向および上下方向の成分のみを含むようなものであるところ、第1亘り部分1721は、これらの各方向に柔軟に変形することができるようになっており、これによって、両質量体1001b,1001cがこれらの各方向に相対移動することを十分に許容できる。すなわち、第1亘り部分1721は、U字状に折り曲げられて、前後に沿うように配置され、両端部が上下に重なるように配置される。したがって、第1亘り部分1721は、屈曲部の位置が変わるように変形することで、両質量体1001b,1001cの前後方向の相対移動に広く追従することが可能であり、屈曲角度が変わるように変形することで、両質量体1001b,1001cの上下方向の相対移動にも広く追従することが可能である。
【0163】
(第2亘り部分)
フレキシブル基板Fは、第3質量体1001cと加振制御部1006の端子1060の間に亘って配設される、2個の亘り部分(第2亘り部分)1722,1722を備える。各第2亘り部分1722は、フレキシブル基板Fにおける、各基端部F1と下側延設部分1711との間に設けられ(図13図14)、構造体Xに取り付けられた状態において、第3質量体1001cと基台1003の間に前後に配置される(図12)。
【0164】
第2亘り部分1722について、図16を参照しながら説明する。図16には、後方の第2亘り部分1722が示されているが、前方の第2亘り部分1722もこれと同じ構成を有している。
【0165】
第2亘り部分1722は、立体的に折り曲げられる前の状態において、直線状に延在する帯状の部分であり(図13)、立体形状においては、下側延設部分1711との境界1730が略90°に折り曲げられるとともに、第2亘り部分1722の略中央部分がU字状に折り曲げられる(図14)。そして、このようにU字状に折り曲げられた第2亘り部分1722が、一対の対向面S1,S2の間、すなわち、第3質量体1001cの下面S1と基台3の上面S2の間に、挿入される(図16)。その後、基端部F1に設けられている端子部分1070が、基台1003の上面に引き出されている加振制御部1006の端子1060と接続される。
【0166】
したがって、第2亘り部分1722は、一端側から屈曲部に至る部分が第3質量体1001cの下面S1に沿い、他端側から屈曲部に至る部分が基台1003の上面S2に沿うようにして設けられる。ただし、第2亘り部分1722は、端子1060と接続される側の端部において基台1003の上面S2に固定されるが、これを除く部分において、各面S1,S2に対して固定されておらず、各面S1,S2から離間できるように設けられる。
【0167】
このように、第2亘り部分1722は、第3質量体1001cと基台1003の間に直線的に設けられるのではなく、弛みをもって設けられる。したがって、加振によって第3質量体1001cが基台1003に対して相対移動したときに、この弛みで基台1003に対する第3質量体1001cの変位が吸収され、第3質量体1001cの相対移動が許容される。すなわち、フレキシブル基板Fによって第3質量体1001cの相対移動が妨げられることがなく、この亘り部分でフレキシブル基板Fが振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0168】
特に、加振の際に第3質量体1001cが基台1003に対して相対移動する方向は、基本的に、前後方向および上下方向の成分のみを含むようなものであるところ、第2亘り部分1722は、第1亘り部分1721と同様、U字状に折り曲げられて、前後に沿うように配置され、両端部が上下に重なるように配置されるので、これらの各方向に柔軟に変形することができる。したがって、第2亘り部分1722は、第3質量体1001cが基台1003に対してこれらの各方向に相対移動することを十分に許容できる。
【0169】
(第3亘り部分)
フレキシブル基板Fは、第2質量体1001bあるいは第3質量体1001cと各圧電素子1005の間に亘って配設される、6個の亘り部分(第3亘り部分)1723を備える。各第3亘り部分1723は、フレキシブル基板Fにおける、各先端部F2と各延設部分1711,1712,1713との間に設けられ(図13図14)、構造体Xに取り付けられた状態において、質量体1001b,1001cと各圧電素子1005の間に配置される(図12)。
【0170】
第3亘り部分1723について、図17を参照しながら説明する。図17には、第3質量体1001cの前ブロック部分1011cと、前方の第2弾性体1002bに設けられている圧電素子1005(加振用圧電素子1005p)の間に配置される第3亘り部分1723が示されているが、他の第3亘り部分1723もこれとほぼ同じ構成を有している。
【0171】
第3亘り部分1723は、展開状態において、直線状に延在する帯状の部分であり(図13)、立体形状においては、各延設部分1711,1712,1713との境界1730が略90°に折り曲げられるとともに、第3亘り部分1723の略中央部分がU字状に折り曲げられる(図14)。そして、このようにU字状に折り曲げられた第3亘り部分1723が、一対の対向面S1,S2の間、すなわち、図17に示される第3亘り部分1723の場合は、第3質量体1001cの前ブロック部分1011cの後面S1と、圧電素子1005に設けられている配線部品1050の前面S2の間に、挿入される(図17)。その後、先端部F2に設けられている端子部分1070が、配線部分1050(ひいては、圧電素子1005)と接続される。
【0172】
したがって、第3亘り部分1723は、一端側から屈曲部に至る部分が第3質量体1001cの後面S1に沿い、他端側から屈曲部に至る部分が配線部品1050の前面S2に沿うようにして設けられる。ただし、第3亘り部分1723は、配線部品1050と接続される側の端部において配線部品1050の前面S2に固定されるが、これを除く部分において、各面S1,S2に対して固定されておらず、各面S1,S2から離間できるように設けられる。
【0173】
このように、第3亘り部分1723は、第2質量体1001bあるいは第3質量体1001cと圧電素子1005との間に直線的に設けられるのではなく、弛みをもって設けられる。したがって、加振によって弾性体1002a,1002bが変形して、圧電素子1005が質量体1001b,1001cに対して相対移動したときに、この弛みで質量体1001b,1001cに対する圧電素子1005の変位が吸収され、圧電素子1005の相対移動が許容される。すなわち、フレキシブル基板Fによって弾性体1002a,1002bの変形が妨げられることがなく、この亘り部分でフレキシブル基板Fが振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0174】
特に、加振の際に圧電素子1005が質量体1001b,1001cに対して相対移動する方向は、基本的に、前後方向および上下方向の成分のみを含むようなものであるところ、第2亘り部分1722は、これらの各方向に柔軟に変形することができるようになっており、これによって、圧電素子1005が質量体1001b,1001cに対してこれらの各方向に相対移動することを十分に許容できる。すなわち、第3亘り部分1723は、U字状に折り曲げられて、略上下に沿うように配置され、両端部が略左右に重なるように配置される。したがって、第3亘り部分1723は、屈曲部の位置が変わるように変形することで、圧電素子1005の上下方向の相対移動に広く追従することが可能であり、屈曲角度が変わるように変形することで、圧電素子1005の左右方向の相対移動にも広く追従することが可能である。
【0175】
<4.効果>
上記の参考例に係る振動搬送装置1100は、弾性的に支持された質量体1001a,1001b,1001cを含んで構成される構造体Xと、質量体1001a,1001b,1001cを振動させる加振部Yとを備え、加振部Yが質量体1001a,1001b,1001cを振動させることで搬送対象物が搬送されるように構成されている。ここにおいて、構造体Xの内部に設けられている接続対象部品である圧電素子1005と、構造体Xの外部に設けられている被接続部品である加振制御部11006とを接続する接続配線1007の少なくとも一部が、フレキシブル基板Fを用いて形成されており、フレキシブル基板Fの少なくとも一部1711,1712,1713が質量体1001b,1001cの表面に沿って配設されている。この構成によると、接続配線1007によって振動が弱められないように、該質量体1001b,1001cの表面に深い溝を設ける必要がない。したがって、該質量体1001b,1001cの重量が損なわれることもない。すなわち、接続配線1007によって搬送性能が損なわれるという事態が回避される。
【0176】
特に、ここでは、接続配線1007における、第2質量体1001bおよび第3質量体1001cの表面に沿って配設される各部分が、フレキシブル基板Fにより構成される。第2質量体1001bは、送り搬送の際のウェイトとして機能し、第3質量体1001cは、戻り搬送の際のウェイトとして機能するところ、これら両質量体1001b,1001cの質量を十分に確保できることによって、送り搬送と戻り搬送の両方に係る搬送性能を十分に担保することができる。
【0177】
また、上記の参考例に係る振動搬送装置1100は、フレキシブル基板Fが、加振により相対移動する部材の間に亘って設けられる亘り部分1721,1722,1723を備え、亘り部分1721,1722,1723に、部材間の相対移動を許容する弛みが設けられている。したがって、加振によって部材間の相対移動が生じた際に、フレキシブル基板Fが振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0178】
また、上記の参考例に係る振動搬送装置1100は、構造体Xが複数の質量体1001b,1001cを備え、複数の質量体1001b,1001cの間に亘り部分(第1亘り部分)1721が設けられる。したがって、加振によって複数の質量体1001b,1001cが相対移動した際に、フレキシブル基板Fが振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0179】
また、上記の参考例に係る振動搬送装置1100は、質量体1001b,1001cと接続対象部品である圧電素子1005の間に亘り部分(第3亘り部分)1723が設けられる。したがって、加振によって質量体1001b,1001cと圧電素子1005とが相対移動した際に、フレキシブル基板Fが振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0180】
また、上記の参考例に係る振動搬送装置1100は、構造体Xが、質量体1001a,1001b,1001cに設けられた弾性体1002a,1002bを備え、加振部Yが、弾性体1002a,1002bに設けられた加振用圧電素子1005pと、これに駆動電圧を印加する加振制御部1006と、を備える。そして、接続配線1007における接続対象部品が加振用圧電素子1005pであり、被接続部品が加振制御部1006である。したがって、搬送性能を損なうことなく、加振用圧電素子1005pを加振制御部1006と接続することができる。
【0181】
また、上記の参考例に係る振動搬送装置1100は、構造体Xが、質量体1001a,1001b,1001cに設けられた弾性体1002a,1002bを備え、加振部Yが、弾性体1002a,1002bに設けられた検出用圧電素子1005qと、これから検出電圧を取得する加振制御部1006と、を備える。そして、接続配線1007における接続対象部品が検出用圧電素子1005qであり、被接続部品が加振制御部1006である。したがって、搬送性能を損なうことなく、検出用圧電素子1005qを加振制御部1006と接続することができる。
【0182】
また、フレキシブル基板Fは、これを所定の位置で折り曲げるとともに所定の位置で屈曲させて立体形状として、構造体Xに取り付けるだけで、敷設作業が完了する。したがって、例えば丸ケーブルの敷設作業と比べて、敷設に係る作業負担が大幅に軽減される。
【0183】
また、上記の参考例では、接続配線1007における質量体1001b,1001cの表面に沿って配設される部分1711,1712,1713が、丸ケーブルなどと比べて格段に厚みが小さいフレキシブル基板Fにより構成されている。例えば、ベースフィルムを、耐電圧性に優れたポリイミドから形成すれば、ベースフィルムの厚さを25μm程度にまで薄くすることができる。また例えば、配線パターンを銅箔で形成すれば、膜厚を18μm程度の薄さにすることができる。例えばこの組み合わせでフレキシブル基板Fを形成すれば、その厚みを127μm程度のものとすることができる。接続配線1007における質量体1001b,1001cの表面に沿って配設される部分1711,1712,1713が、このように薄いフレキシブル基板Fを用いて形成されることで、接続配線1007が敷設されることに伴う装置の幅寸法の増大幅を、丸ケーブルを用いる場合と比べて格段に小さく抑えることができる。
【0184】
特に、上記の参考例に係る振動搬送装置1100は、装置のサイズ(特に、幅サイズ)を増大させることなく、送り搬送と戻り搬送を切り換えて行えるように構成されており、これによって、スペースがない現場への導入、多列配置による高い搬送効率の実現、などを実現しているところ、フレキシブル基板Fを含んで構成される接続配線1007を採用することで、幅サイズがコンパクトな薄型の振動搬送装置1100のメリットを損なうことなく、これを最大限に活かすことができる。
【0185】
また、上記の参考例に係る振動搬送装置1100は、装置のサイズを増大させることなく、送り搬送と戻り搬送を切り換えて行えるようにするために、構造体Xに、比較的多数個の弾性体1002a,1002b、ひいては、比較的多数個の圧電素子1005を設けている。すなわち、接続対象部品の点数が多い。しかしながら、接続配線1007の少なくとも一部を、フレキシブル基板Fを用いて形成すれば、振動搬送装置1100の搬送性能を損なうことなく、多数の接続対象部品を難なく接続することができる。
【0186】
<5.変形例>
上記の参考例に係る振動搬送装置1100において、質量体1001c,1001bの表面に、ここに沿って配設される各延設部分1711,1712,1713の形状に応じた溝が形成されて、各延設部分1711,1712,1713が、対応する溝の内部に収容されるようにして各表面に沿って配設されるようにしてもよい。ただし、この場合、溝の深さは、フレキシブル基板Fの厚み相当であれば十分であり、数ミリメートル程度のごく浅いものでよい。このような溝を形成しておくことで、フレキシブル基板Fの敷設作業をさらに簡易化することができる。
【0187】
また、上記の参考例においては、接続対象部品である圧電素子1005と、被接続部品である加振制御部1006とを接続する接続配線1007の一部分が、フレキシブル基板Fにより構成されるものとしたが、接続配線7の全体がフレキシブル基板Fにより構成されてもよい。
【0188】
また、上記の参考例においては、接続配線1007における、加振制御部1006から延びるケーブルの端子1060と各圧電素子1005とを接続する部分が、1個のフレキシブル基板Fにより構成されるものとしたが、該部分が例えば、複数のフレキシブル基板を含んで構成されてもよい。例えば、各延設部分1711,1712,1713に相当する部分をそれぞれ別個のフレキシブル基板により構成し、各亘り部分1721,1722,1723に相当する部分を、弛みをもって設けられた丸ケーブルにより構成してもよい。
【0189】
上記の参考例に係る接続配線1007は、各種の振動搬送装置に適用することができる。例えば、振動搬送装置の中には、基台などに対して弾性的に支持された質量体を、電磁石で振動させることによって、該質量体の上面に形成された搬送面上の搬送対象物が搬送されるように構成されたものがある。このような振動搬送装置に、上記の参考例に係る接続配線7を適用してもよい。この場合、例えば、電磁石と加振制御部を接続する接続配線の少なくとも一部をフレキシブル基板により構成し、該フレキシブル基板の少なくとも一部が、質量体の表面に沿って配設されたものとすることができる。
【0190】
また例えば、振動搬送装置の中には、弾性体を介して接続された2個の質量体(可動部およびウェイト部)と、一方の質量体と接続された搬送台とを有し、該弾性体に貼り付けられた圧電素子に駆動電圧を印加して両質量体を逆位相で振動させることによって、搬送台に形成されている搬送面上の搬送対象物が搬送されるように構成されたものがある。このような振動搬送装置に、上記の参考例に係る接続配線1007を適用してもよい。この場合、例えば、圧電素子と加振制御部を接続する接続配線の少なくとも一部をフレキシブル基板により構成し、該フレキシブル基板の少なくとも一部が、一方、あるいは、両方の質量体の表面に沿って配設されたものとすることができる。
【0191】
上記の参考例においては、接続配線1007における接続対象部品は圧電素子1005であるとしたが、接続対象部品は圧電素子1005に限られるものではなく、例えば上記の変形例のように、電磁石であってもよいし、各種のセンサ部品などであってもよい。
【0192】
上記の参考例においては、接続配線1007における被接続部品は加振制御部1006であるとしたが、被接続部品は、これに限られるものではない。
【0193】
また、フレキシブル基板Fの基材や配線の形成材料は、上記の参考例において例示したものに限定されない。
【0194】
また、振動搬送装置における搬送対象物は、ICチップ、微小なコイル等のワークに限られるものではない。
【0195】
その他の構成も、本参考例の発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明は、搬送対象物を所定方向に搬送可能な振動搬送装置及びそれを備える多列振動搬送システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0197】
1 振動搬送装置
2 基台
2c 支持面
5 可動部(第1質量体)
6 固定部(第2質量体)
8 トラフ(第1質量体)
8t リニア搬送面
10 駆動バネ(駆動弾性体)
12 トラフ支持台(第1質量体)
50 防振バネ(防振弾性体)
51 第1アーム部
52 第2アーム部
201 振動搬送装置
210 駆動バネ
212a メインブロック(第2質量体)
212b サブブロック(第2質量体)
213a メインブロック
213b サブブロック
350 防振バネ(防振弾性体)
351 第1アーム部
352 第2アーム部
353 湾曲部
A1 第1固定部
A2 第2固定部
T 振動体
X 構造体
1001a 第1質量体
1001b 第2質量体
1001c 第3質量体
1002a 第1弾性体
1002b 第2弾性体
1003 基台
1004 カバー部材
Y 加振部
1005 圧電素子(接続対象部品)
1005p 加振用圧電素子
1005q 検出用圧電素子
1006 加振制御部(被接続部品)
1007 接続配線
F フレキシブル基板
1711 下側延設部分
1712 前側延設部分
1713 後側延設部分
1721 第1亘り部分
1722 第2亘り部分
1723 第3亘り部分
1100 振動搬送装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2024-10-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性的に支持された質量体を含んで構成される構造体と、前記質量体を振動させる加振部とを備え、前記加振部が前記質量体を振動させることで搬送対象物が搬送されるように構成されている振動搬送装置であって、
前記構造体の内部に設けられている接続対象部品と、前記構造体の外部に設けられている被接続部品とを接続する接続配線の少なくとも一部が、フレキシブル基板を用いて形成されており、
前記フレキシブル基板の少なくとも一部が前記質量体の表面に沿って配設されている、
ことを特徴とする、振動搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動搬送装置において、
前記フレキシブル基板が、加振により相対移動する部材の間に亘って設けられる亘り部分、
を備え、
前記亘り部分に、前記部材間の相対移動を許容する弛みが設けられている、
ことを特徴とする、振動搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の振動搬送装置において、
前記質量体と接続対象部品の間に前記亘り部分が設けられる、
ことを特徴とする、振動搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の振動搬送装置において、
前記構造体が、前記質量体に設けられた弾性体を備え、
前記加振部が、前記弾性体に設けられた加振用の圧電素子と、これに駆動電圧を印加する加振制御部と、を備え、
前記接続対象部品が前記加振用の圧電素子であり、前記被接続部品が前記加振制御部である、
ことを特徴とする、振動搬送装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の振動搬送装置において、
前記構造体が、前記質量体に設けられた弾性体を備え、
前記加振部が、前記弾性体に設けられた検出用の圧電素子と、これから検出電圧を取得する加振制御部と、を備え、
前記接続対象部品が前記検出用の圧電素子であり、前記被接続部品が前記加振制御部である、
ことを特徴とする、振動搬送装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物を所定方向に搬送可能な振動搬送装置及びそれを備える多列振動搬送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワーク等の搬送対象物を振動により搬送面に沿って所定の搬送先へ搬送可能な振動搬送装置が知られている。振動搬送装置として、横方向にして配設する加振体の上面に固定された慣性質量体と、加振体の下面に固定された加振体取付け部材と、傾斜立設する第1連結部材を介して加振体取付け部材と連結される搬送体とを有するものがある(例えば特許文献1参照)。この振動搬送装置では、加振体で惹起された変位振動により第1連結部材に撓み振動を惹起させ、この撓み振動が搬送体に伝達されることで、ワークが搬送面に沿って所定方向に搬送される。ここで、上記撓み振動は、水平方向及び垂直方向各々の振動成分を含むものである。また、この振動搬送装置では、第1連結部材の長手方向中間部に連結部材支持片を固定し、連結部材支持片と基台とを第2連結部材を介して連結される。このように、連結部材支持片を第1連結部材の長手方向中間部(振動振幅の節)となる部所に固定することで、基台から設置面へ伝達される振動が大幅に減少する。
【0003】
また、特許文献1に記載のように、基台から設置面へ伝達される振動をさらに減少させるには、第2連結部材として、AlとZnをベースとするAl系合金,NiとCoをベースとするNi系合金,FeとCrをベースとするFe系合金等の吸振材を用いることが考えられる。こうした特許文献1の構成では、基台から設置面に伝達される水平方向の振動を大幅に減少させる防振効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-91928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、こうした振動搬送装置における振動は、水平方向及び垂直方向各々の振動成分を有するため、防振効果をさらに高めるには水平成分の減少に加え、垂直成分も減少させることが望まれる。例えば、特許文献1においては、連結部材支持片を弾性体で構成しつつ、この連結部材支持片の厚みを薄くすることで、垂直成分を減少させることが考えられる。
【0006】
しかし、連結部材支持片の厚みを薄くすることで、基台と第2連結部材の接続点を中心とする回転方向において剛性が弱まる。通常、搬送対象物を搬送する搬送体は装置上端部において作業者が接触可能な状態にあるため、上記のように、連結部材支持片の厚さを薄くした状態で、例えば作業者が作業を行っている際に搬送体の側面部分を横から押してしまうと、搬送体は、基台と第2連結部材との接続点を回転軸として横方向に揺動する問題がある。
【0007】
このような問題は、特に、上述の振動搬送装置を幅方向に複数並列し、複数のリニア搬送面が略平行に配置される多列振動搬送システムにおいて顕著に生じる。ここで、特許文献1の慣性質量体と加振体取付け部材と搬送体と第1連結部材とで構成される振動体を複数並列する場合(多列振動搬送システム)を例に挙げる。この多列振動搬送システムでは、同時にすべての振動体を駆動する場合に限らず、一部の振動体のみを駆動するケースが存在する。一般的に、振動搬送装置で用いられる振動体は、大きな振幅を得るために、共振周波数またはその付近で振動させる。こうした振動搬送装置における振動は、上述のように、水平成分及び垂直成分を有しており、これらを共に減衰させないと、基台から設置面に伝達される防振効果は十分発揮できない。特に多列振動搬送システムにおいては、互いの共振周波数が一致することで、振動する振動体の振動成分が、停止中または停止が必要な他の振動体に伝わり、共振で増幅され、予期せぬ搬送を開始してしまう問題がある。
【0008】
本発明の目的は、垂直成分の防振効果を発揮し、かつ搬送対象物を搬送する搬送部材に横から力が作用した場合でも搬送部材が横方向に揺動するのを抑制可能な振動搬送装置及びそれを備える多列振動搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る振動搬送装置は、弾性的に支持された質量体を含んで構成される構造体と、前記質量体を振動させる加振部とを備え、前記加振部が前記質量体を振動させることで搬送対象物が搬送されるように構成されている振動搬送装置であって、前記構造体の内部に設けられている接続対象部品と、前記構造体の外部に設けられている被接続部品とを接続する接続配線の少なくとも一部が、フレキシブル基板を用いて形成されており、前記フレキシブル基板の少なくとも一部が前記質量体の表面に沿って配設されている、ことを特徴とする。
【0010】
この構成によると、接続配線によって振動が弱められないように、該質量体の表面に深い溝を設ける必要がない。したがって、該質量体の重量が損なわれることもない。すなわち、上記のジレンマが解消され、接続配線によって搬送性能が損なわれるという事態が回避される。
【0011】
好ましくは、前記振動搬送装置において、前記フレキシブル基板が、加振により相対移動する部材の間に亘って設けられる亘り部分、を備え、前記亘り部分に、前記部材間の相対移動を許容する弛みが設けられている、ことを特徴とする。
【0012】
この構成によると、加振によって部材間の相対移動が生じた際に、フレキシブル基板が振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0013】
好ましくは、前記振動搬送装置において、前記構造体が、複数の前記質量体を備え、複数の前記質量体の間に前記亘り部分が設けられる、ことを特徴とする。
【0014】
この構成によると、加振によって複数の質量体が相対移動した際に、フレキシブル基板が振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0015】
好ましくは、前記振動搬送装置において、前記質量体と接続対象部品の間に前記亘り部分が設けられる、ことを特徴とする。
【0016】
この構成によると、加振によって質量体と接続対象部品とが相対移動した際に、フレキシブル基板が振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0017】
好ましくは、前記振動搬送装置において、前記構造体が、前記質量体に設けられた弾性体を備え、前記加振部が、前記弾性体に設けられた加振用の圧電素子と、これに駆動電圧を印加する加振制御部と、を備え、前記接続対象部品が前記加振用の圧電素子であり、前記被接続部品が前記加振制御部である、ことを特徴とする。
【0018】
この構成によると、搬送性能を損なうことなく、加振用の圧電素子を加振制御部と接続することができる。
好ましくは、前記振動搬送装置において、前記構造体が、前記質量体に設けられた弾性体を備え、前記加振部が、前記弾性体に設けられた検出用の圧電素子と、これから検出電圧を取得する加振制御部と、を備え、前記接続対象部品が前記検出用の圧電素子であり、前記被接続部品が前記加振制御部である、ことを特徴とする。
この構成によると、搬送性能を損なうことなく、検出用の圧電素子を加振制御部と接続することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、振動搬送装置の搬送性能が損なわれにくい配線構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1参考例に係る振動搬送装置を有する多列振動搬送システムの平面図である。
図2図1の振動搬送装置の側面図である。
図3図2において紙面手前側の連結板を外した図である。
図4図2の振動搬送装置のトラフとトラフ支持台との取り付け部を示す図である。
図5】本発明の第2参考例に係る振動搬送装置の側面図である。
図6】本発明の第3参考例に係る振動搬送装置の側面図である。
図7】本発明の第1参考例に係る振動搬送装置の変形例を示す側面図である。
図8】本発明の実施形態に係る振動搬送装置の構成を示す斜視図である。
図9】振動搬送装置の側面図である。
図10】振動搬送装置の分解図である。
図11】カバー部材を取り外した状態の振動搬送装置の斜視図である。
図12】カバー部材を取り外した状態の振動搬送装置の側面図である。
図13】立体的に折り曲げられる前のフレキシブル基板を示す図である。
図14】立体的に折り曲げられたフレキシブル基板を示す図である。
図15】第1亘り部分を示す図である。
図16】第2亘り部分を示す図である。
図17】第3亘り部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
(第1参考例
参考例に係る多列振動搬送システムは、図1に示すように、複数の振動搬送装置1を有している。複数の振動搬送装置1は、並列に配置され、複数のトラフ8(リニア搬送面8t)が略平行に配置される。振動搬送装置1は、例えば電子部品等のワークを直線状のリニア搬送面8t上において振動により移動させながら所定の搬送先に搬送するリニアフィーダである。
【0023】
なお、リニア搬送面8tの後方上面は、漏斗などによりワークが常にたまっている状態になっている(図示省略)。したがって、振動搬送装置1が搬送を開始すると、リニア搬送面8tの終端まで搬送して所定の搬送先に供給可能なものである。
【0024】
以下、1台の振動搬送装置1について説明するが、複数の振動搬送装置1は何れも略同一の構成である。図2は、振動搬送装置の側面図であり、図3では、図2の振動搬送装置から紙面手前側の連結板を外した図である。
【0025】
振動搬送装置1は、図2及び図3に示すように、床面上に固定される基台2と、基台2の上方に配設された可動部5と、可動部5の上方に配設された固定部6と、固定部6の上方でワークを搬送するリニア搬送面8tを有するトラフ8とを備える。
【0026】
基台2は、リニア搬送面8tに沿って延びる基台水平部2aと、基台水平部2aの搬送方向上流側端部及び搬送方向下流側端部にそれぞれ取り付けられた2つの基台鉛直部2bとを有している。基台水平部2aは、水平方向に延びる部材であるのに対して、2つの基台鉛直部2bは、何れも鉛直方向に延びる部材である。
【0027】
2つの基台鉛直部2bは、その下端部において基台水平部2aの搬送方向上流側端部及び搬送方向下流側端部に接続され、その上端部は、トラフ8の下面近くに配置される。2つの基台鉛直部2bは、その上端部に配置された平らな支持面2cをそれぞれ有している。支持面2cは、防振バネ50を取り付ける部分であり、搬送方向上流側端部が搬送方向下流側端部より下方に配置されるように傾斜している。
【0028】
可動部5と固定部6とは、板バネを用いた一対の駆動バネ10によって前後方向2箇所を連結されている。一対の駆動バネ10は、下端において締結ボルト10aによって可動部5の前後方向端面に固定されるとともに、上端において締結ボルト10bによって固定部6の前後方向端面に固定される。
【0029】
駆動バネ10は、平板状のバネ(板バネ)である。駆動バネ10には、加振源として機能する圧電素子11を貼り付け、圧電素子11に電荷を付与することにより駆動バネ10が弾性変形して振動が生じ、可動部5及び固定部6が逆位相で振動する。
【0030】
参考例において、駆動バネ10は、弾性変形していない通常姿勢が鉛直方向に対して傾斜した姿勢となるように取り付けられる。一対の駆動バネ10は、互いに略平行となるように、可動部5及び固定部6に固定される。駆動バネ10及び圧電素子11からなるバネ定数は、搬送する部品の重量、大きさ及びトラフ8の重量等によって定められる任意の共振周波数の条件に応じて適宜選択される。
【0031】
また、固定部6の内部には、一対の駆動バネ10を振動させる駆動部(図示省略)が設けられている。駆動部は、圧電素子11等の駆動源を備え、可動部5と固定部6とを相対的に振動させることが可能となっている。
【0032】
トラフ8は、固定部6の上方に配置されるトラフ支持台12と連結されている。トラフ支持台12は、連結板16によって可動部5と連結され、可動部5と同期して振動する。連結板16は、締結ボルト16aによってトラフ支持台12と連結されるとともに、連結ボルト16bによって可動部5と連結される。
【0033】
トラフ8の前端側部分の下面には、図4に示すように、係止部30(フック部)が形成される。係止部30は、トラフ8の下面から下方に向かって突出する突出部31と、突出部31の先端から搬送方向上流側に向かって延びる先端突部32とを有している。
【0034】
トラフ支持台12の前端部には、トラフ8の係止部30の先端突部32を係止するための係止凹部12aが形成されている。そのため、係止部30の先端突部32をトラフ支持台12の係止凹部12aに係止させることで、トラフ8の前端側部分がトラフ支持台12の前端部に固定される。トラフ8の後端部は、係止部30がトラフ支持台12の前端部に係止された状態で、ボルト8aによりトラフ支持台12の後端部に固定される。
【0035】
トラフ8の下面の後端部には、下方に向かって突出する支持部33が形成され、係止部30より搬送方向上流側には、下方に向かって突出する支持部34が形成される。トラフ8がトラフ支持台12に取り付けられた状態では、支持部33及び支持部34の下面がトラフ支持台12の上面に接触する。
【0036】
トラフ8の下面とトラフ支持台12の上面との間には、硬質ゴム35が配置される。硬質ゴム35は、支持部33と支持部34との間の略中央部分に配置される。硬質ゴム35は、トラフ8と略同一の幅を有する略矩形状の板状部材である。硬質ゴム35の所定厚さは、支持部33及び支持部34の突出量と略同一である。
【0037】
トラフ8がトラフ支持台12に取り付けられた状態では、支持部33と硬質ゴム35との間、及び、支持部34と硬質ゴム35との間には、隙間が形成される。そのため、トラフ8の下面は、トラフ支持台12の上面に対して、支持部33と硬質ゴム35と支持部34の3箇所で支持される。
【0038】
参考例において、可動部5と連結板16とトラフ支持台12とトラフ8が、本発明の第1質量体であり、固定部6が、本発明の第2質量体であり、駆動バネ10が、本発明の駆動弾性体であり、防振バネ50が、本発明の防振弾性体である。そのため、振動体Tは、可動部5と連結板16とトラフ支持台12とトラフ8と固定部6と駆動バネ10を含んで構成される。
【0039】
振動体Tは、板バネである一対の防振バネ50によって2つの基台鉛直部2bの支持面2cに対して支持される。防振バネ50は、支持面2cに取り付けられ垂直成分の振動を減衰させる第1アーム部51と、第1アーム部51に対して垂直に配置された第2アーム部52とを有している。第1アーム部51と第2アーム部52とは、一体に形成されており、防振バネ50は、平板L字状の弾性部材(L字型バネ)である。
【0040】
防振バネ50は、その第1アーム部51において締結ボルト51aによって支持面2cに固定されるとともに、その第2アーム部52において締結ボルト52aによって駆動バネ10に固定される。ここで、一対の防振バネ50は、第1アーム部51が平行に配置されるように支持面2cに取り付けられるとともに、第2アーム部52が平行に配置されるように一対の駆動バネ10に取り付けられる。
【0041】
また、防振バネ50の第1アーム部51は、駆動バネ10に垂直に配置されるとともに、第2アーム部52は、駆動バネ10に平行に配置される。そのため、防振バネ50の第1アーム部51は、駆動バネ10の弾性主軸に対して平行であり、第2アーム部52は、駆動バネ10の弾性主軸に対して垂直に配置される。なお、本参考例において、駆動バネ10の弾性主軸の方向は、駆動バネ10の取付角度で規定され、「防振バネ50の第1アーム部51が駆動バネ10の弾性主軸に対して平行に配置される」とは、防振バネ50の第1アーム部51が駆動バネ10の弾性主軸に対して平行または略平行となる方向に沿って配置されることを意味し、「防振バネ50の第2アーム部52が駆動バネ10の弾性主軸に対して垂直に配置される」とは、防振バネ50の第2アーム部52が駆動バネ10の弾性主軸に対して直交または略直交する方向(弾性主軸に対する法線方向)に沿って配置されることを意味する。
【0042】
参考例では、一対の駆動バネ10のそれぞれに、水平方向及び鉛直方向に変位しない節の部分に突部53を設け、突部53に防振バネ50の第2アーム部52の先端部分を固定している。なお、駆動バネ10は、両端(上端、下端)を固定部6と可動部5にそれぞれ固定したもの(両端固定持ち)であるため、節は、駆動バネ10の長手方向中央部分である。
【0043】
駆動バネ10の節は、点として捉えることができるものであるが、駆動バネ10において突部53を設けた領域は、駆動バネ10の節を含む所定領域(節及び節の近傍領域)である。突部53には、雌ネジ孔(図示省略)が設けられている。
【0044】
防振バネ50の第2アーム部52には、突部53の雌ネジ孔に連通するボルト挿通孔(図示省略)を形成し、そのボルト挿通孔に挿通したボルト52aを突部53の雌ネジ孔に螺合することで、防振バネ50の第2アーム部52は、駆動バネ10の突部53に固定される。
【0045】
2つの基台鉛直部2bの上端部に配置された支持面2cは、振動体Tの高さ方向中央部より上方に配置される。そのため、トラフ8の側面部分に横から力が作用した場合、図2において2つの支持面2cを通過する直線を回転軸として揺動しようとするが、支持面2cが振動体Tの高さ方向中央部より下方に配置される場合と比べて、力の作用点と回転軸との距離は小さくなり、トラフ8に横から作用するトルクは小さくなる。本参考例において、振動体Tの高さとは、トラフ8の上端部と可動部5の下端部との間の上下方向に沿った距離である。
【0046】
振動体Tが一対の防振バネ50によって2つの基台鉛直部2bの支持面2cに支持された状態では、防振バネ50の第2アーム部52は、第1アーム部51の端部から下方に向かって延びる。振動体Tと第2アーム部52との第1固定部A1は、支持面2cと第1アーム部51との第2固定部A2より下方に配置される。
【0047】
そのため、2つの支持面2cは、振動体Tに対して搬送方向上流側及び搬送方向下流側にそれぞれ配置されており、振動体Tは、2つの基台鉛直部2bの支持面2cに対して一対の防振バネ50によって吊り下げられるように支持される。なお、振動体Tのトラフ8より下方の側面部分に横から力が作用しないようにするために、基台2の側面にカバー部材を取り付けて、カバー部材により振動体Tのトラフ8より下方の側面部分を覆うようにしてもよい。
【0048】
振動搬送装置1の主たる作用について説明する。振動搬送装置1を床面に固定した状態で、略水平に設定されたトラフ8の上面にワークを載置する。この状態で、駆動バネ10を起振させることで、可動部5と固定部6とは振動することとなる。ここで、可動部5と固定部6とは、互いを連結する駆動バネ10が搬送方向に傾斜しているため、傾斜角に応じて、搬送方向の成分とともに搬送方向と垂直な垂直方向成分を有して振動することとなる。そして、この振動が連結板16を介してトラフ8へ伝達され、トラフ8からワークに伝達されることで、ワークは、トラフ8の上面を搬送されることとなる。
【0049】
この際、固定部6の重心位置は、固定部6の略中央付近に存在する。また、可動部5の重心と、可動部5と一体となって振動する連結板16の重心及びトラフ8の重心とを合成した重心位置は、可動部5とトラフ8とが固定部6を跨るようにして一体となっていることで、固定部6の重心位置近傍となる。このため、両者の振動は打ち消されることとなり、防振バネ10による作用と相まって基台2及び床面に伝達される振動を効果的に減衰させることができる。
【0050】
参考例の多列振動搬送システムでは、複数の振動搬送装置1のトラフ8が並列配置されるため、トラフ8の幅は非常に小さく、トラフ8の前端側部分と後端部との間の複数箇所を上方からボルトによりトラフ支持台12に固定するのは困難である。そこで、トラフ8の前端側部分を係止部30によりトラフ支持台12に固定している。
【0051】
例えば、トラフ8の前端側部分をトラフ支持台12の前端の下方からボルトにより固定すると、トラフ8にネジ部を形成する必要があるため、トラフ8の厚さが大きくなり、トラフ8の重量が増加して搬送能力が低下する問題がある。これに対して、本参考例では、トラフ8の前端側部分が係止部30によりトラフ支持台12に固定されるため、トラフ8にネジ部を形成する必要がない。
【0052】
また、トラフ8を前端側部分と後端部との2箇所でトラフ支持台12に固定すると、固定箇所間の距離が長くなり、トラフ8の固定箇所間の部分がトラフ支持台12に支持されなくなるため、固定箇所間のトラフ8の共振周波数が低下して、振動分布が不均等になる問題がある。これに対して、本参考例では、トラフ8を前端側部分と後端部とでトラフ支持台12に固定するとともに、トラフ8の前端側部分と後端部との間の部分は、硬質ゴム35によりトラフ支持台12に固定される。そのため、搬送能力が低下する問題や、振動分布が不均等になる問題がない。なお、本参考例では、1つの硬質ゴム35をトラフ8の前端側部分と後端部との間に配置すると、トラフ8の下面はトラフ支持台12に3箇所で支持されるが、2つの硬質ゴム35をトラフ8の前端側部分と後端部との間に配置すると、トラフ8の下面はトラフ支持台12に4箇所で支持される。いずれの場合も、振動分布が不均等になる問題がない。
【0053】
以上のように、本参考例の振動搬送装置1は、振動によってリニア搬送面8t上の搬送対象物を搬送する振動搬送装置であり、リニア搬送面8tを有する第1質量体(可動部5と連結板16とトラフ支持台12とトラフ8)と、第1質量体と逆位相で振動する第2質量体(固定部6)と、第1質量体と第2質量体を接続する駆動弾性体(一対の駆動バネ10)と、第1質量体、第2質量体及び駆動弾性体を含む振動体Tに対して搬送方向上流側及び搬送方向下流側において、振動体Tの高さ方向中央部より上方に配置される支持面2cを有する基台2と、支持面2cに対して振動体Tを接続する防振弾性体(一対の防振バネ50)とを備える。
【0054】
これにより、本参考例の振動搬送装置1では、振動体Tを支持する支持面2c(振動体Tと基台2との第2固定点A2)が振動体Tの高さ方向中央部より上方に配置されるため、垂直成分の防振バネ50を柔らかくし減衰率を最大限に大きくした状態であっても、トラフ8の側面部分に横から力が作用したとしても、力の作用点と、振動体Tと基台2との固定点(回転軸)との距離が比較的小さくなる。これにより、トラフ8に横から作用するトルクが小さくなり、トラフ8が横方向に揺動するのが抑制される。そのため、複数の振動搬送装置1を有する多列振動搬送システムにおいて、トラフ8が周辺部品と衝突するのを低減可能であるとともに、トラフ8を並列配置する場合に、トラフ8間の隙間寸法を低減可能である。
【0055】
参考例の振動搬送装置1において、防振バネ50は、支持面2cに取り付けられ垂直成分の振動を減衰させる第1アーム部51と、第1アーム部51に垂直に配置され且つ振動体Tに取り付けられる第2アーム部52とを有する。
【0056】
これにより、本参考例の振動搬送装置1では、基台2から設置面へ伝達される振動をさらに減少させるための、防振バネ50において、平行となる方向の弾性係数や、垂直となる方向の弾性係数とを独立して調整することができる。
【0057】
参考例の振動搬送装置1において、振動体Tと防振バネ50との第1固定部A1は、支持面2cと防振バネ50との第2固定部A2より下方に配置される。
【0058】
これにより、本参考例の振動搬送装置1では、振動体Tが基台2の基台鉛直部2bに対して吊り下げられるように支持されるため、振動体Tが大型化した場合でも振動体Tの振動が安定する。
【0059】
参考例の多列振動搬送システムは、振動搬送装置1を複数備え、複数のリニア搬送面8tが略平行に配置される。
【0060】
これにより、本参考例の多列振動搬送システムでは、振動搬送装置1のトラフ8に横から力が作用した場合でも、トラフ8が横方向に揺動するのが抑制されるため、隣のトラフ8に衝突して部品が破損するのを防止することが可能になる。
【0061】
(第2参考例
参考例の振動搬送装置101と第1参考例の振動搬送装置1とが異なる点は、第1参考例において、振動体Tと防振バネ50の第2アーム部52との第1固定部A1が、支持面2cと防振バネ50の第1アーム部51との第2固定部A2より下方に配置されるのに対して、本参考例において、振動体Tと防振バネ150の第2アーム部152との第1固定部A1が、支持面2cと防振バネ150の第1アーム部151との第2固定部A2より上方に配置される点である。なお、本参考例の振動搬送装置101において、第1参考例の振動搬送装置1と同様の構成である点については、その説明を省略する。
【0062】
振動搬送装置101は、図5に示すように、床面上に固定される基台2と、基台2の上方に配設された可動部5と、可動部5の上方に配設された固定部6と、固定部6の上方でワークを搬送するリニア搬送面8tを有するトラフ8とを備える。
【0063】
参考例において、可動部5と連結板16とトラフ支持台12とトラフ8が、本発明の第1質量体であり、固定部6が、本発明の第2質量体であり、駆動バネ10が、本発明の駆動弾性体であり、防振バネ150が、本発明の防振弾性体である。そのため、振動体Tは、可動部5と連結板16とトラフ支持台12とトラフ8と固定部6と駆動バネ10を含んで構成される。
【0064】
振動体Tは、板バネである一対の防振バネ150によって2つの基台鉛直部2bの支持面2cに対して支持されている。防振バネ150は、第1アーム部151と、第1アーム部151に対して垂直に配置された第2アーム部152とを有している。第1アーム部151と第2アーム部152とは、一体に形成されており、防振バネ150は、平板L字状の弾性部材(L字型バネ)である。
【0065】
防振バネ150は、その第1アーム部151において締結ボルト51aによって支持面2cに固定されるとともに、その第2アーム部152において締結ボルト10bによって固定部6に固定される。一対の防振バネ150は、第1アーム部151が平行に配置されるように支持面2cに取り付けられるとともに、第2アーム部152が平行に配置されるように固定部6に取り付けられる。
【0066】
振動体Tが一対の防振バネ150によって2つの基台鉛直部2bの支持面2cに支持された状態では、防振バネ150の第2アーム部152は、第1アーム部151の端部から上方に向かって延びる。そのため、振動体Tと防振バネ150の第2アーム部152との第1固定部A1は、支持面2cと防振バネ150の第1アーム部151との第2固定部A2より上方に配置される。
【0067】
2つの基台鉛直部2bの上端部に配置された支持面2cは、振動体Tに対して搬送方向上流側及び搬送方向下流側において、振動体Tの高さ方向中央部より上方に配置される。
【0068】
以上のように、本参考例の振動搬送装置101では、第1参考例の振動搬送装置1と同様の効果が得られる。
【0069】
(第3参考例
参考例の振動搬送装置201と第1参考例の振動搬送装置1とが異なる点は、第1参考例において、振動体Tは、第1質量体と第2質量体と駆動弾性体とを有しているのに対して、本参考例において、振動体Tは、第1質量体と第2質量体と駆動弾性体とを有するとともに、第2質量体に駆動弾性体により接続される第3質量体を有している点である。なお、本参考例の振動搬送装置201において、第1参考例の振動搬送装置1と同様の構成である点については、その説明を省略する。
【0070】
振動搬送装置201は、図6に示すように、床面上に固定される基台2と、基台2の上方に配設されたメインブロック213a及びサブブロック213bと、その上方に配設されたメインブロック212a及びサブブロック212bと、その上方でワークを搬送するリニア搬送面8tを有するトラフ8とを備える。
【0071】
メインブロック212aとサブブロック212bとは、一体的に固定され、メインブロック213aとサブブロック213bとは、一体的に固定される。
【0072】
トラフ8と連結されたトラフ支持台12とメインブロック212aとは、板バネを用いた一対の駆動バネ10によって前後方向2箇所を連結されている。一対の駆動バネ10は、下端において締結ボルト10aによってメインブロック212aの前後方向端面に固定されるとともに、上端において締結ボルト10bによってトラフ支持台12の前後方向端面に固定される。
【0073】
サブブロック212bとサブブロック213bとは、板バネを用いた一対の駆動バネ210によって前後方向2箇所を連結されている。一対の駆動バネ210は、下端において締結ボルト210aによってサブブロック213bの前後方向端面に固定されるとともに、上端において締結ボルト210bによってサブブロック212bの前後方向端面に固定される。
【0074】
駆動バネ10及び駆動バネ210は、平板状のバネ(板バネ)である。駆動バネ10及び駆動バネ210には、加振源として機能する圧電素子(図示省略)を貼り付け、圧電素子に電荷を付与することにより駆動バネ10及び駆動バネ210が弾性変形して振動が生じる。
【0075】
参考例において、トラフ8とトラフ支持台12が、本発明の第1質量体であり、メインブロック212aとサブブロック212bが、本発明の第2質量体であり、駆動バネ10が、本発明の駆動弾性体であり、防振バネ50が、本発明の防振弾性体である。
【0076】
参考例の振動搬送装置201は、本発明の第2質量体に、一対の駆動バネ210により接続されるメインブロック213a及びサブブロック213b(第3質量体)を有している。そのため、振動体Tは、トラフ8とトラフ支持台12とメインブロック212aとサブブロック212bとメインブロック213aとサブブロック213bと駆動バネ10と駆動バネ210を含んで構成される。
【0077】
振動体Tは、第1参考例と同様に、板バネである一対の防振バネ50によって2つの基台鉛直部2bの支持面2cに対して支持される。
【0078】
2つの基台鉛直部2bの上端部に配置された支持面2cは、振動体Tに対して搬送方向上流側及び搬送方向下流側において、振動体Tの高さ方向中央部より上方に配置される。
【0079】
振動体Tが一対の防振バネ50によって2つの基台鉛直部2bの支持面2cに支持された状態では、振動体Tと防振バネ50の第2アーム部52との第1固定部A1は、支持面2cと防振バネ50の第1アーム部51との第2固定部A2より下方に配置される。
【0080】
そのため、2つの支持面2cは、振動体Tに対して搬送方向上流側及び搬送方向下流側にそれぞれ配置されており、振動体Tは、2つの基台鉛直部2bの支持面2cに対して一対の防振バネ50によって吊り下げられるように支持される。
【0081】
以上のように、本参考例の振動搬送装置201では、第1参考例の振動搬送装置1と同様の効果が得られる。
【0082】
参考例に係る振動搬送装置201は、駆動バネ10と駆動バネ210のそれぞれの共振周波数を互いに異ならせ、駆動部(図示省略)によって駆動バネ10を振動させる加振状態と、駆動バネ210を振動させる加振状態とに切換可能に構成している。
【0083】
参考例の振動搬送装置201において、駆動バネ10の傾斜姿勢(向き、角度)と駆動バネ210の傾斜姿勢は異なる。特に、本参考例では、駆動バネ10の傾斜方向(駆動バネ10の上端が向く方向)とは逆方向に駆動バネ210の傾斜方向を設定している。本参考例に係る振動搬送装置201では、駆動バネ10の振動角と駆動バネ210の振動角を相互に異ならせて、駆動バネ10を振動させた場合におけるリニア搬送面上の搬送物の搬送方向と、駆動バネ210を振動させた場合におけるリニア搬送面上のワークの搬送方向が逆方向(前進方向と後退方向)になるように設定している。
【0084】
なお、具体的な構成は、上述した参考例のみに限定されるものではない。
【0085】
例えば、上記第1~第3参考例では、防振バネ50、150が平板L字状の弾性部材(L字型バネ)であるが、防振バネ50、150の形状(長さ、面積、厚み等)は任意である。防振バネ50、150は、第1アーム部51、151と第2アーム部52、152とが一体に形成されたものに限られない。
【0086】
例えば、第1アーム部51、151と第2アーム部52、152とが、それ以外の弾性部材を介して接続されたものでもよい。防振バネ50、150は、駆動バネ10の弾性主軸に対して平行に配置される第1アーム部51、151と駆動バネ10の弾性主軸に対して垂直に配置される第2アーム部52、152とを有するものに限られない。防振バネ50、150は、L字型バネ以外のバネ(例えばI字型のバネの基端同士を接続したバネやT字型バネ等)や、バネ以外の弾性体(ゴム等)でもよい。
【0087】
例えば、図7に示すように、防振バネ350は、支持面2cに取り付けられ垂直成分の振動を減衰させる第1アーム部351と、第1アーム部351に垂直に配置され且つ振動体Tに取り付けられる第2アーム部352と、第1アーム部351と第2アーム部352とを接続し且つ凸状に湾曲する湾曲部353とを有してもよい。
【0088】
これにより、本変形例の振動搬送装置では、基台2から設置面へ伝達される振動をさらに減少させるための、防振バネ350において、平行となる方向の弾性係数や、垂直となる方向の弾性係数とを独立して調整することができる。また、トラフ8の側面部分に横から力が作用した際に、トラフ8が横方向に揺動するのが効果的に抑制される。
【0089】
上記第1~第3参考例では、振動体の例を示したが、振動体の構成は、それに限られない。そのため、本発明の振動体は、第1質量体、第2質量体及び駆動弾性体を含むとともに、それ以外の部材を含んでいてもよい。
【0090】
上記第1~第3参考例では、2つの基台鉛直部2bの支持面2cが振動体Tの高さ方向中央部より上方に配置されるが、2つの基台鉛直部2bの支持面2cが振動体Tの重心位置より上方に配置されても、本発明の効果が得られる。
【0091】
上記第1~第3参考例では、駆動バネ10の加振源が圧電素子であるが、加振源は、圧電素子以外のものであってもよい。また、振動搬送装置により搬送される搬送対象物は、LED等の各種LEDや、LED以外の電子部品、あるいは食品など電子部品以外のものでもよい。
【0092】
上記第1参考例において、1または2つの硬質ゴム35をトラフ8の前端側部分と後端部との間に配置する代わりに、トラフ8の前端側部分と後端部との間においてトラフ8の下面から下方に向かって突出する1または2つの突出部を形成してもよい。トラフ8の前端側部分と後端部との間においてトラフ支持台12の上面から上方に向かって突出する1または2つの突出部を形成してもよい。
【0093】
上記第1参考例において、トラフ8の前端側部分を係止部30によりトラフ支持台12に固定する代わりに、トラフ8の後端部と同様に、ボルトによりトラフ支持台12に固定してもよい。
【0094】
その他、各部の具体的構成についても上記参考例に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0095】
以下、本発明の実施形態に係る発明について説明する。
【0096】
振動搬送装置として、さまざまな形態のものが知られている。例えば文献1(特開2016-160099)に開示されている装置は、基台に対して弾性的に支持された質量体(可動体)を振動させることによって、搬送面上の搬送対象物が搬送されるように構成されている。また例えば文献2(特開2007-168936)に開示されている装置は、弾性部材を介して接続された一対の質量体(可動部およびウェイト部)を有し、これらを逆位相で振動させることで、搬送面上の搬送対象物が搬送されるように構成されている。
【0097】
これらの振動搬送装置において、質量体を振動させるための加振部は、圧電素子や電磁石を含んで構成されており、制御を担うドライブ回路から該圧電素子や電磁石に所定の駆動電圧が印加されることで、質量体に所定の振動が励起され、所定の搬送態様が実現されるようになっている。
【0098】
上記のような振動搬送装置においては、当然のことながら、制御を担うドライブ回路と、圧電素子や電磁石とを電気的に接続するための配線構造を形成する必要があるが、制御を担うドライブ回路は、質量体や基台などといった構造体(装置の本体部分)とは別の位置に設けられることが多い。したがって、この配線構造は、一端において、構造体の内部に設けられている圧電素子や電磁石と接続され、質量体の表面に沿って敷設されたり、必要に応じて質量体に設けられた挿通孔に挿通されたりした上で、構造体の外部に引き出されて、他端において、ドライブ回路と接続されるようなものとなる。
【0099】
従来の振動搬送装置では、このような配線構造を、丸ケーブルを用いて形成していた。そして、この丸ケーブルの敷設作業を容易にするために、また、敷設された丸ケーブルに損傷や断線が生じないように保護するために、質量体の表面に配線用の溝を形成して、丸ケーブルをこの溝に沿って敷設するようにしていた。また、質量体の表面に沿って敷設された丸ケーブルが露出したままであると危険を伴うため、上からカバーが設けられることもあった。
【0100】
このような構成においては、質量体が加振された際に、丸ケーブルが溝やカバーと擦れてしまい、ひきつれを起こして、振動を弱めるダンパーのように作用してしまうという問題があった。これを回避するためには、配線用の溝の深さと幅を、敷設される丸ケーブルの外径に対して十分に大きなものとしておく必要がある。
【0101】
一方で、振動搬送装置において十分な振幅を確保して安定した搬送を実現するためには、質量体、特に、ウェイトとして機能する質量体の重量を十分に確保することが必要不可欠である。ところが、質量体の表面に形成される配線用の溝の深さや幅が大きくなるにつれて、この溝によって失われる質量体の重量(欠損質量)が大きくなり、質量体の重量を確保することが難しくなる。
【0102】
このように、丸ケーブルによって振動が弱められないようにするために、質量体の表面に形成する溝を大きくすると、質量体の重量が確保されず、結局、振幅の低下を招いてしまう。振動搬送装置の製造者はこのようなジレンマに常に悩まされていた。特に、近年は、振動搬送装置の高機能化などに伴い、設置される圧電素子などの個数が増加する傾向にある。すなわち、配線の本数が増加する傾向にある。したがって、このジレンマは一層深刻なものとなっていた。
【0103】
本発明は、振動搬送装置において、その搬送性能が損なわれにくい配線構造を実現することを目的としている。
【0104】
本発明は、上記の目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0105】
すなわち、本発明は、弾性的に支持された質量体を含んで構成される構造体と、前記質量体を振動させる加振部とを備え、前記加振部が前記質量体を振動させることで搬送対象物が搬送されるように構成されている振動搬送装置であって、前記構造体の内部に設けられている接続対象部品と、前記構造体の外部に設けられている被接続部品とを接続する接続配線の少なくとも一部が、フレキシブル基板を用いて形成されており、前記フレキシブル基板の少なくとも一部が前記質量体の表面に沿って配設されている、ことを特徴とする。
【0106】
この構成によると、接続配線によって振動が弱められないように、該質量体の表面に深い溝を設ける必要がない。したがって、該質量体の重量が損なわれることもない。すなわち、上記のジレンマが解消され、接続配線によって搬送性能が損なわれるという事態が回避される。
【0107】
好ましくは、前記振動搬送装置において、前記フレキシブル基板が、加振により相対移動する部材の間に亘って設けられる亘り部分、を備え、前記亘り部分に、前記部材間の相対移動を許容する弛みが設けられている、ことを特徴とする。
【0108】
この構成によると、加振によって部材間の相対移動が生じた際に、フレキシブル基板が振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0109】
好ましくは、前記振動搬送装置において、前記構造体が、複数の前記質量体を備え、複数の前記質量体の間に前記亘り部分が設けられる、ことを特徴とする。
【0110】
この構成によると、加振によって複数の質量体が相対移動した際に、フレキシブル基板が振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0111】
好ましくは、前記振動搬送装置において、前記質量体と接続対象部品の間に前記亘り部分が設けられる、ことを特徴とする。
【0112】
この構成によると、加振によって質量体と接続対象部品とが相対移動した際に、フレキシブル基板が振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0113】
好ましくは、前記振動搬送装置において、前記構造体が、前記質量体に設けられた弾性体を備え、前記加振部が、前記弾性体に設けられた加振用の圧電素子と、これに駆動電圧を印加する加振制御部と、を備え、前記接続対象部品が前記加振用の圧電素子であり、前記被接続部品が前記加振制御部である、ことを特徴とする。
【0114】
この構成によると、搬送性能を損なうことなく、加振用の圧電素子を加振制御部と接続することができる。
【0115】
好ましくは、前記振動搬送装置において、前記構造体が、前記質量体に設けられた弾性体を備え、前記加振部が、前記弾性体に設けられた検出用の圧電素子と、これから検出電圧を取得する加振制御部と、を備え、前記接続対象部品が前記検出用の圧電素子であり、前記被接続部品が前記加振制御部である、ことを特徴とする。
【0116】
この構成によると、搬送性能を損なうことなく、検出用の圧電素子を加振制御部と接続することができる。
【0117】
本発明によると、振動搬送装置の搬送性能が損なわれにくい配線構造を実現することができる。
【0118】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0119】
<1.振動搬送装置の構成>
実施形態に係る振動搬送装置の構成を、図8図10を参照しながら説明する。図8は、本実施形態に係る振動搬送装置1100の構成を示す斜視図である。図9は、振動搬送装置1100の側面図である。図10は、振動搬送装置1100の分解図である。
【0120】
振動搬送装置1100は、搬送対象物(具体的には例えば、ICチップ、微小なコイル、などといった各種のワーク)を、振動によって搬送する装置である。
【0121】
振動搬送装置1100は、質量体1001a,1001b,1001c、弾性体1002a,1002b、基台1003、カバー部材1004、などを含んで構成される構造体Xと、圧電素子1005p,1005q、加振制御部1006、接続配線1007、などを含んで構成される加振部Yと、を備える。加振部Yが、構造体Xが有する質量体1001a,1001b,1001cを振動させることで、搬送対象物が搬送されるようになっている。
【0122】
図10に示されるように、第1質量体1001aは、上ブロック部1011aと下ブロック部1012aを備える。上ブロック部1011aは、長尺なブロック状の部材である。一方、下ブロック部1012aは、上ブロック部1011aより短いブロック状の部材であり、上面において上ブロック部1011aの下面に固定されている。下ブロック部1012aは、上ブロック部1011aに対してボルト留めなどによって固定されてもよいし、上ブロック部1011aと一体的に構成されてもよい。
【0123】
第1質量体1001aの上面(すなわち、上ブロック部1011aの上面)は、直線状の搬送面(リニア搬送面)Lを形成し、振動搬送装置1100は、このリニア搬送面Lが水平面となるように設置される。以下において、リニア搬送面Lの延在方向(長手方向)を、「前後方向」とよび、水平面内において前後方向と直交する方向(すなわち、リニア搬送面Lの幅方向(短尺方向))を、「左右方向」とよぶ。
【0124】
第2質量体1001bは、前方に配置されるブロック状の部分(前ブロック部分)1011bと、後方に配置されるブロック状の部分(後ブロック部分)1012bが、各々の上端側において、前後に延在する長尺な連結部分1013bで連結されてなる、全体として門型状のメインブロックを備える。また、第2質量体1001bは、連結部分1013bの下面にボルト留めにより固定されたサブブロック部1014bを備える。
【0125】
第3質量体1001cは、前方に配置されるブロック状の部分(前ブロック部分)1011cと、後方に配置されるブロック状の部分(後ブロック部分)1012cが、各々の下端側において、前後に延在する長尺な連結部分1013cで連結されてなる、全体として逆門型状のメインブロックを備える。また、第3質量体1001cは、連結部分1013cの上面にボルト留めにより固定されたサブブロック部1014cを備える。
【0126】
図9などに示されるように、第1質量体1001aは、前後に設けられて互いに平行に延在する一対の第1弾性体1002a,1002aを介して第2質量体1001bと接続されることにより、第2質量体1001bに対して弾性的に支持される。また、第2質量体1002bは、前後に設けられて互いに平行に延在する一対の第2弾性体1002b,1002bを介して第3質量体1001cと接続されることにより、第3質量体1001cに対して弾性的に支持される。さらに、第3質量体1002cは、前後に設けられて互いに平行に延在する一対の防振バネ1030,1030を介して基台1003と接続されることにより、基台1003に対して弾性的に支持される。ただし、第1弾性体1002a、第2弾性体、および、防振ばね1030は、いずれも、平板状の弾性部材であり、板バネなどにより構成される。また、基台1003は、前後に長尺なブロック状の部材であって、振動搬送装置1100が設置される現場の床面などに配置される。
【0127】
第1弾性体1002aの接続態様をより具体的に説明する。図10に示されるように、第1質量体1001aの下ブロック部1012aの前後の各端面には、上ボルト孔H1001aが設けられている。また、第2質量体1001bの前ブロック部分1011bの前面の下端付近と、後ブロック部分1012bの後面の下端付近には、下ボルト孔H1002aが設けられている。そして、一方の第1弾性体1002aが、上端において、第1質量体1001aの下ブロック部1012aの前面にボルト固定されるとともに、下端において、第2質量体1001bの前ブロック部分1011bの前面にボルト固定される。また、他方の第1弾性体1002aが、上端において、第1質量体1001aの下ブロック部1012aの後面にボルト固定されるとともに、下端において、第2質量体1001bの後ブロック部分1012bの後面にボルト固定される。これによって、第1質量体1001aが、一対の第1弾性体1002a,1002aを介して第2質量体1001bと接続される。
【0128】
第2弾性体1002bの接続態様をより具体的に説明する。図10に示されるように、第2質量体1001bの前ブロック部分1011bの後面の上端付近と、後ブロック部分1012bの前面の上端付近には、上ボルト孔H1001bが設けられている。また、第3質量体1001cの前ブロック部分1011cの後面の下端付近と、後ブロック部分1012cの前面の下端付近には、下ボルト孔H1002bが設けられている。そして、一方の第2弾性体1002bが、上端において、第2質量体1001bの前ブロック部分1011bの後面にボルト固定されるとともに、下端において、第3質量体1001cの前ブロック部分1011cの後面にボルト固定される。また、他方の第2弾性体1002bが、上端において、第2質量体1001bの後ブロック部分1012bの前面にボルト固定されるとともに、下端において、第3質量体1001cの後ブロック部分1012cの前面にボルト固定される。これによって、第2質量体1001bが、一対の第2弾性体1002b,1002bを介して第3質量体1001cと接続される。
【0129】
防振バネ1030の接続態様をより具体的に説明する。図10に示されるように、第3質量体1001cの前ブロック部分1011cの前面と、後ブロック部分1012cの後面には、上ボルト孔H1301が設けられている。また、基台1003の前後の端面には、下ボルト孔H1302が設けられている。そして、一方の防振バネ1030が、上端において、第3質量体1001cの前面にボルト固定されるとともに、下端において、基台1003の前面にボルト固定される。また、他方の防振バネ1030が、上端において、第3質量体1001cの後面にボルト固定されるとともに、下端において、基台1003の後面にボルト固定される。これによって、第3質量体1001cが、一対の防振バネ1030,1030を介して基台1003と接続される。
【0130】
このように、振動搬送装置1100は、基台3上に防振バネ1030を介して設置された第3質量体1001cの上に、第2弾性体1002bを介して弾性的に支持された第2質量体1001bが配置され、さらに、その上に、第1弾性体1002aを介して弾性的に支持された第1質量体1001aが配置されている。これを建物に例えると、基礎部分をなす第3質量体1001cの上に、1階部分をなす第2質量体1001aが配置され、さらにその上に、2階部分をなす第1質量体1001aが配置された、2階建て構造ということになる。
【0131】
ただし、第1弾性体1002aと第2弾性体1002bは、互いに逆の傾斜姿勢とされている。すなわち、図9に示されるように、第1質量体1001aと第2質量体1001bの間に設けられる第1弾性体1002aは、下方に行くにつれて前方に向かうような傾斜姿勢とされており、第2質量体1001bと第3質量体1001cの間に設けられる第2弾性体1002bは、下方に行くにつれて後方に向かうような傾斜姿勢とされている。
【0132】
また、第1弾性体1002aと第2弾性体1002bは、互いに異なる共振周波数を有するものとなるように設定されている。一例として、第1弾性体1002aの共振周波数は500Hzに設定され、第2弾性体1002bの共振周波数は200Hzに設定されている。
【0133】
第1弾性体1002aおよび第2弾性体1002bは、質量体1001a,1001b,1001cを振動させるための加振バネとしての役割を担っており、各弾性体1002a,1002bには、これを弾性変形させて振動させるための圧電素子(加振用圧電素子)1005pが設けられる。また、各弾性体1002a,1002bには、その弾性変形の度合いを検出するための圧電素子(検出用圧電素子)1005qが設けられる。加振用圧電素子1005pは、2個の第1弾性体1002a,1002aおよび2個の第2弾性体1002b,1002bの全ての両面に設けられる。つまり、加振用圧電素子1005pは、計8個設けられる。一方、検出用圧電素子1005qは、後方に設けられた第1弾性体1002aと、前方に設けられた第2弾性体1002bの片面に設けられる。つまり、検出用圧電素子1005qは、計2個設けられる。
【0134】
図17に示されるように、各加振用圧電素子1005pおよび各検出用圧電素子1005qには、配線部品1050が取り付けられる。配線部品1050は、弾性体1002a,1002bとその両面に設けられている2枚の加振用圧電素子1005p(あるいは、その片面に設けられている1枚の検出用圧電素子1005q)とを一体的に巻回する部分と、この部分から延出するU字状に屈曲した部分とを有している。配線部品1050における該U字状に屈曲した部分には、圧電素子1005p,1005qから延びるリード線などが敷設されており、ここに接続配線1007の一端が接続される。この接続配線1007の他端が、加振制御部1006と接続されることによって、各圧電素子1005p,1005qが加振制御部1006とが電気的に接続される。
【0135】
加振制御部1006は、リニア搬送面L上の搬送対象物が所定の搬送態様で搬送されるように質量体1001a,1001b,1001cを振動させるための加振制御を行う機能部であり、ドライブ回路などによって実現される。
【0136】
<2.振動搬送装置の動作>
次に、振動搬送装置1100で実現される搬送態様について、引き続き図8図10を参照しながら説明する。
【0137】
振動搬送装置1100では、リニア搬送面L上のワークが前方に搬送される搬送態様(送り搬送)と、ワークが後方に搬送される搬送態様(戻り搬送)とを切り換えて行うことができる。
【0138】
送り搬送を行う場合、加振制御部1006は、各第1弾性体1002aに設けられている各加振用圧電素子1005pに駆動電圧を印加して、各第1弾性体1002aをその共振周波数で振動させる。すると、第1質量体1001aと第2質量体1001bとが互いに逆位相で振動する。ただし、第1弾性体1002aは、下方に行くにつれて前方に向かうような傾斜姿勢とされているため、このとき、リニア搬送面Lは、前上方に向かう斜め方向とその逆方向に振動する。これによって、リニア搬送面L上のワークが前方に搬送される。
【0139】
一方、戻り搬送を行う場合、加振制御部1006は、各第2弾性体1002bに設けられている各加振用圧電素子1005pに駆動電圧を印加して、各第2弾性体1002bをその共振周波数で振動させる。すると、第2質量体1001bと第3質量体1001cとが互いに逆位相で振動する。ただし、第2弾性体1002bは、下方に行くにつれて後方に向かうような傾斜姿勢とされているため、このとき、リニア搬送面Lは、後上方に向かう斜め方向とその逆方向に振動する。これによって、リニア搬送面L上のワークが後方に搬送される。
【0140】
このように、振動搬送装置1100では、加振制御部1006が、駆動電圧を印加する加振用圧電素子1005pを切り換えることによって、第1弾性体1002aが振動する状態と第2弾性体1002bが振動する状態とを切り換える。これによって、質量体1001a,1001b,1001cの振動の態様が切り換えられ、送り搬送と戻り搬送とが切り換えられるようになっている。
【0141】
また、加振制御部1006は、接続配線1007を通じて加振用圧電素子1005pに駆動電圧を印加する一方で、接続配線1007を通じて検出用圧電素子1005qから検出電圧を取得する。すなわち、検出用圧電素子1005qは、各弾性体1002a,1002bの変形に応じて発生する電圧を検出電圧として出力し、これを加振制御部1006が取得する。加振制御部1006は、取得した検出電圧に基づいて、加振用圧電素子1005pに印加する駆動電圧の補正などを行う。
【0142】
上記の通り、第1弾性体1002aと第2弾性体1002bの各共振周波数は、互いに異なる値に設定されている。したがって、第1弾性体1002aと第2弾性体1002bのうちの一方が共振周波数で振動して所定方向への搬送がなされている状態において、他方の弾性体がその搬送の妨げとなることがない。
【0143】
すなわち、第1弾性体1002aがその共振周波数で振動している状態において、第2弾性体1002bは第1弾性体1002aほど大きく弾性変形せず、ワークの前方への搬送を妨げない。第2弾性体1002bが大きく弾性変形しないため、第2弾性体1002bを介して接続されている第2質量体1001bと第3質量体1001cはあたかも1つの剛体のように振動する。このとき、第2質量体1001bはウェイトとして機能し、第2弾性体1002bは補助的な防振バネとして機能する。
【0144】
また、第2弾性体1002bがその共振周波数で振動している状態において、第1弾性体1002aは、第2弾性体1002bほど大きくは弾性変形せず、ワークの後方への搬送を妨げない。第1弾性体1002aが大きく弾性変形しないため、第1弾性体1002aを介して接続されている第1質量体1001aと第2質量体1001bはあたかも1つの剛体のように振動する。このとき、第3質量体1001cはウェイトとして機能し、第1質量体1001aおよび第2質量体1001bがいわば一体となって、ワークを後方向へ搬送するように振動する。
【0145】
振動搬送装置1100の具体的な適用例として、リニア搬送面Lの後端部分にボウルフィーダを接続する構成が想定できる。この場合、ボウルフィーダから供給されたワークを、送り搬送にて前方に搬送することができる。その一方で、例えば第1質量体1001aの下ブロック部1012aをシュート台として機能させ、このシュート台に落とされたワークを、戻り搬送によってボウルフィーダに戻すことができる。
【0146】
従来の振動搬送装置では、送り搬送と戻り搬送を切り換えて行えるようにするために、例えば、リニア搬送面が設けられた質量体を含んで構成される構造体と、これを加振するための加振部とからなる装置ユニットを、2個並置していた。そして、一方の構造体側のリニア搬送面を一方の加振部で加振することで送り搬送を行い、他方の構造体側のリニア搬送面を他方の加振部で加振することで戻り搬送を行っていた。このような従来の振動搬送装置に対し、この実施形態に係る振動搬送装置1100は、構造体Xおよび加振部Yの個数は1つでありながら、送り搬送と戻り搬送の両方を実現できるように構成されている。したがって、従来の振動搬送装置と比べて、装置のサイズ(特に、幅サイズ)を約半分にすることができる。このため、スペースがない現場にも容易に導入することができる。また、複数の振動搬送装置1100を多列配置して使用する場合、従来の振動搬送装置と比べて、2倍の台数の振動搬送装置1100を配置することができるので、搬送効率を2倍にすることができる。
【0147】
<3.接続配線>
次に、振動搬送装置1100が備える接続配線1007について、図11図12を参照しながら説明する。図11は、カバー部材1004を取り外した状態の振動搬送装置1100の斜視図である。図12は、カバー部材1004を取り外した状態の振動搬送装置1100の側面図である。なお、以下において、加振用圧電素子1005pと検出用圧電素子1005qを区別しない場合は、単に「圧電素子1005」という。
【0148】
接続配線1007は、各圧電素子1005を接続対象部品とし、加振制御部1006を被接続部品として、両者1005,1006を接続する配線である。上記の通り、振動搬送装置1100においては、質量体1001a,1001b,1001c、弾性体1002a,1002b、基台1003、カバー部材1004、などを含んで構造体Xが構成されているところ、加振制御部1006は、この構造体Xの外部に設けられている。一方、各圧電素子1005は、上記の通り、弾性体1002a,1002bに取り付けられている。すなわち、構造体Xの内部に設けられている。つまり、接続配線1007は、一端において、構造体Xの内部に設けられている圧電素子1005と接続され、構造体Xの外部に引き出されて、他端において、加振制御部1006と接続される。
【0149】
接続配線1007は、その一部が、フレキシブル基板Fを用いて構成されている。すなわち、加振制御部1006から延びるケーブルの端子1060は、基台1003に形成されている挿通部1031を介して基台1003の上面側にまで引き出されており(図10)、接続配線1007における、この端子1060と各圧電素子1005とを接続する部分が、フレキシブル基板Fを用いて構成されている。
【0150】
接続配線1007の一部を構成するフレキシブル基板Fについて、図11図12に加え、図13図14を参照しながら説明する。図13は、立体的に折り曲げられる前のフレキシブル基板Fを示す図である。図14は、立体的に折り曲げられたフレキシブル基板Fを示す図である。
【0151】
フレキシブル基板Fとは、いわゆるリジッド基板とは異なり、柔軟性を有する薄肉の基材(ベースフィルム)に、配線パターンを形成したものであり、フレキシブルプリント配線板、FPC(Flexible Printed Circuits)、などとも呼ばれる。ここでは、ポリイミドなどの絶縁材料により形成されるベースフィルムの両面に、銅箔などを用いて配線パターンが形成されたフレキシブル基板Fによって接続配線1007の一部を構成した。配線(ケーブル)を形成するフレキシブル基板はフレキケーブルとも呼ばれる。
【0152】
フレキシブル基板Fは、一対の基端部F1から、6個の先端部F2に向けて枝分かれした形状となっている。各端部F1,F2には端子部分1070が設けられており、基材の表裏面には、基端部F1側の端子部分1070を、先端部F2側の端子部分1070と接続するような配線パターンが形成される。
【0153】
フレキシブル基板Fは、屈曲性を有しており、図13に示される平面状の形態から、所定の位置で折り曲げられるとともに、所定の位置で屈曲されることによって、構造体Xの形状に応じた立体形状とされて(図14)、構造体Xに取り付けられる(図11図12)。このとき、各基端部F1に設けられた端子部分1070が加振制御部1006の端子1060と接続され、各先端部F2に設けられた端子部分1070が圧電素子1005と接続される。フレキシブル基板Fが取り付けられた後、フレキシブル基板Fを覆うようにして、カバー部材1004が配設される(図11)。
【0154】
構造体Xに取り付けられた状態において、フレキシブル基板Fの一部分1711,1712,1713は、質量体1001b,1001cの側面に沿って配設される(このような部分を以下「沿設部分」ともいう)。また、別の部分1721,1722,1723は、加振により相対移動する部材の間に亘って設けられる(このような部分を以下「亘り部分」ともいう)。以下、延設部分および亘り部分について説明する。
【0155】
(沿設部分)
フレキシブル基板Fには、第3質量体1001cの側面に沿って配設される延設部分(下側延設部分)1711と、第2質量体1001bの前ブロック部分1011bの側面に沿って配設される延設部分(前側延設部分)1712と、第2質量体1001bの後ブロック部分1012bの側面に沿って配設される延設部分(後側延設部分)1713と、が設けられる。
【0156】
各延設部分1711,1712,1713は、質量体1001c,1001bの側面の面内に収まるような形状とされており、該側面に沿って配設されて、該側面に対して両面テープなどを用いて固定される。
【0157】
(第1亘り部分)
フレキシブル基板Fは、第2質量体1001bと第3質量体1001cの間に亘って配設される2個の亘り部分(第1亘り部分)1721を備える。一方の第1亘り部分1721は、フレキシブル基板Fにおける、下側延設部分1711と前側延設部分1712の間に設けられ(図13図14)、構造体Xに取り付けられた状態において、第3質量体1001cと第2質量体1001bの前ブロック部分11bの間に配置される(図12)。また、他方の第1亘り部分1721は、フレキシブル基板Fにおける、下側延設部分1711と後側延設部分1713の間に設けられ(図13図14)、構造体Xに取り付けられた状態において、第3質量体1001cと第2質量体1001bの後ブロック部分1012bの間に配置される(図12)。
【0158】
第1亘り部分1721について、図15を参照しながら説明する。図15には、後方側に設けられる第1亘り部分1721が示されているが、前方側に設けられる第1亘り部分1721もこれと同じ構成を有している。
【0159】
第1亘り部分1721は、立体的に折り曲げられる前の状態において、直線状に延在する帯状の部分であり(図13)、立体形状においては、延設部分1711,1713(1712)との境界1730が略90°に折り曲げられるとともに、第1亘り部分1721の略中央部分がU字状に折り曲げられる(図14)。そして、このようにU字状に折り曲げられた第1亘り部分1721が、一対の対向面S1,S2の間、すなわち、第2質量体1001bの下面S1と第3質量体1001cの上面S2の間に、挿入される(図15)。
【0160】
したがって、第1亘り部分1721は、一端側から屈曲部に至る部分が第2質量体1001bの下面S1に沿い、他端側から屈曲部に至る部分が第3質量体1001cの上面S2に沿うようにして設けられる。ただし、第1亘り部分1721は、その両端部が、カバー部材1004に設けられた突出片1041と各面S1,S2との間に挟まれることによって、各面S1,S2から浮き上がらないようになっているが、これらを除く部分において、各面S1,S2に対して固定されておらず、各面S1,S2から離間できるように設けられる。
【0161】
このように、第1亘り部分1721は、両質量体1001b,1001cの間に直線的に設けられるのではなく、弛み(すなわち、遊び)をもって設けられる。したがって、加振によって両質量体1001b,1001cが相対移動したときに、この弛みで両質量体1001b,1001cの変位が吸収され、両質量体1001b,1001cの相対移動が許容される。すなわち、フレキシブル基板Fによって両質量体1001b,1001cの相対移動が妨げられることがなく、この亘り部分でフレキシブル基板Fが振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0162】
特に、加振の際に両質量体1001b,1001cが相対移動する方向は、基本的に、前後方向および上下方向の成分のみを含むようなものであるところ、第1亘り部分1721は、これらの各方向に柔軟に変形することができるようになっており、これによって、両質量体1001b,1001cがこれらの各方向に相対移動することを十分に許容できる。すなわち、第1亘り部分1721は、U字状に折り曲げられて、前後に沿うように配置され、両端部が上下に重なるように配置される。したがって、第1亘り部分1721は、屈曲部の位置が変わるように変形することで、両質量体1001b,1001cの前後方向の相対移動に広く追従することが可能であり、屈曲角度が変わるように変形することで、両質量体1001b,1001cの上下方向の相対移動にも広く追従することが可能である。
【0163】
(第2亘り部分)
フレキシブル基板Fは、第3質量体1001cと加振制御部1006の端子1060の間に亘って配設される、2個の亘り部分(第2亘り部分)1722,1722を備える。各第2亘り部分1722は、フレキシブル基板Fにおける、各基端部F1と下側延設部分1711との間に設けられ(図13図14)、構造体Xに取り付けられた状態において、第3質量体1001cと基台1003の間に前後に配置される(図12)。
【0164】
第2亘り部分1722について、図16を参照しながら説明する。図16には、後方の第2亘り部分1722が示されているが、前方の第2亘り部分1722もこれと同じ構成を有している。
【0165】
第2亘り部分1722は、立体的に折り曲げられる前の状態において、直線状に延在する帯状の部分であり(図13)、立体形状においては、下側延設部分1711との境界1730が略90°に折り曲げられるとともに、第2亘り部分1722の略中央部分がU字状に折り曲げられる(図14)。そして、このようにU字状に折り曲げられた第2亘り部分1722が、一対の対向面S1,S2の間、すなわち、第3質量体1001cの下面S1と基台3の上面S2の間に、挿入される(図16)。その後、基端部F1に設けられている端子部分1070が、基台1003の上面に引き出されている加振制御部1006の端子1060と接続される。
【0166】
したがって、第2亘り部分1722は、一端側から屈曲部に至る部分が第3質量体1001cの下面S1に沿い、他端側から屈曲部に至る部分が基台1003の上面S2に沿うようにして設けられる。ただし、第2亘り部分1722は、端子1060と接続される側の端部において基台1003の上面S2に固定されるが、これを除く部分において、各面S1,S2に対して固定されておらず、各面S1,S2から離間できるように設けられる。
【0167】
このように、第2亘り部分1722は、第3質量体1001cと基台1003の間に直線的に設けられるのではなく、弛みをもって設けられる。したがって、加振によって第3質量体1001cが基台1003に対して相対移動したときに、この弛みで基台1003に対する第3質量体1001cの変位が吸収され、第3質量体1001cの相対移動が許容される。すなわち、フレキシブル基板Fによって第3質量体1001cの相対移動が妨げられることがなく、この亘り部分でフレキシブル基板Fが振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0168】
特に、加振の際に第3質量体1001cが基台1003に対して相対移動する方向は、基本的に、前後方向および上下方向の成分のみを含むようなものであるところ、第2亘り部分1722は、第1亘り部分1721と同様、U字状に折り曲げられて、前後に沿うように配置され、両端部が上下に重なるように配置されるので、これらの各方向に柔軟に変形することができる。したがって、第2亘り部分1722は、第3質量体1001cが基台1003に対してこれらの各方向に相対移動することを十分に許容できる。
【0169】
(第3亘り部分)
フレキシブル基板Fは、第2質量体1001bあるいは第3質量体1001cと各圧電素子1005の間に亘って配設される、6個の亘り部分(第3亘り部分)1723を備える。各第3亘り部分1723は、フレキシブル基板Fにおける、各先端部F2と各延設部分1711,1712,1713との間に設けられ(図13図14)、構造体Xに取り付けられた状態において、質量体1001b,1001cと各圧電素子1005の間に配置される(図12)。
【0170】
第3亘り部分1723について、図17を参照しながら説明する。図17には、第3質量体1001cの前ブロック部分1011cと、前方の第2弾性体1002bに設けられている圧電素子1005(加振用圧電素子1005p)の間に配置される第3亘り部分1723が示されているが、他の第3亘り部分1723もこれとほぼ同じ構成を有している。
【0171】
第3亘り部分1723は、展開状態において、直線状に延在する帯状の部分であり(図13)、立体形状においては、各延設部分1711,1712,1713との境界1730が略90°に折り曲げられるとともに、第3亘り部分1723の略中央部分がU字状に折り曲げられる(図14)。そして、このようにU字状に折り曲げられた第3亘り部分1723が、一対の対向面S1,S2の間、すなわち、図17に示される第3亘り部分1723の場合は、第3質量体1001cの前ブロック部分1011cの後面S1と、圧電素子1005に設けられている配線部品1050の前面S2の間に、挿入される(図17)。その後、先端部F2に設けられている端子部分1070が、配線部分1050(ひいては、圧電素子1005)と接続される。
【0172】
したがって、第3亘り部分1723は、一端側から屈曲部に至る部分が第3質量体1001cの後面S1に沿い、他端側から屈曲部に至る部分が配線部品1050の前面S2に沿うようにして設けられる。ただし、第3亘り部分1723は、配線部品1050と接続される側の端部において配線部品1050の前面S2に固定されるが、これを除く部分において、各面S1,S2に対して固定されておらず、各面S1,S2から離間できるように設けられる。
【0173】
このように、第3亘り部分1723は、第2質量体1001bあるいは第3質量体1001cと圧電素子1005との間に直線的に設けられるのではなく、弛みをもって設けられる。したがって、加振によって弾性体1002a,1002bが変形して、圧電素子1005が質量体1001b,1001cに対して相対移動したときに、この弛みで質量体1001b,1001cに対する圧電素子1005の変位が吸収され、圧電素子1005の相対移動が許容される。すなわち、フレキシブル基板Fによって弾性体1002a,1002bの変形が妨げられることがなく、この亘り部分でフレキシブル基板Fが振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0174】
特に、加振の際に圧電素子1005が質量体1001b,1001cに対して相対移動する方向は、基本的に、前後方向および上下方向の成分のみを含むようなものであるところ、第2亘り部分1722は、これらの各方向に柔軟に変形することができるようになっており、これによって、圧電素子1005が質量体1001b,1001cに対してこれらの各方向に相対移動することを十分に許容できる。すなわち、第3亘り部分1723は、U字状に折り曲げられて、略上下に沿うように配置され、両端部が略左右に重なるように配置される。したがって、第3亘り部分1723は、屈曲部の位置が変わるように変形することで、圧電素子1005の上下方向の相対移動に広く追従することが可能であり、屈曲角度が変わるように変形することで、圧電素子1005の左右方向の相対移動にも広く追従することが可能である。
【0175】
<4.効果>
上記の実施形態に係る振動搬送装置1100は、弾性的に支持された質量体1001a,1001b,1001cを含んで構成される構造体Xと、質量体1001a,1001b,1001cを振動させる加振部Yとを備え、加振部Yが質量体1001a,1001b,1001cを振動させることで搬送対象物が搬送されるように構成されている。ここにおいて、構造体Xの内部に設けられている接続対象部品である圧電素子1005と、構造体Xの外部に設けられている被接続部品である加振制御部11006とを接続する接続配線1007の少なくとも一部が、フレキシブル基板Fを用いて形成されており、フレキシブル基板Fの少なくとも一部1711,1712,1713が質量体1001b,1001cの表面に沿って配設されている。この構成によると、接続配線1007によって振動が弱められないように、該質量体1001b,1001cの表面に深い溝を設ける必要がない。したがって、該質量体1001b,1001cの重量が損なわれることもない。すなわち、接続配線1007によって搬送性能が損なわれるという事態が回避される。
【0176】
特に、ここでは、接続配線1007における、第2質量体1001bおよび第3質量体1001cの表面に沿って配設される各部分が、フレキシブル基板Fにより構成される。第2質量体1001bは、送り搬送の際のウェイトとして機能し、第3質量体1001cは、戻り搬送の際のウェイトとして機能するところ、これら両質量体1001b,1001cの質量を十分に確保できることによって、送り搬送と戻り搬送の両方に係る搬送性能を十分に担保することができる。
【0177】
また、上記の実施形態に係る振動搬送装置1100は、フレキシブル基板Fが、加振により相対移動する部材の間に亘って設けられる亘り部分1721,1722,1723を備え、亘り部分1721,1722,1723に、部材間の相対移動を許容する弛みが設けられている。したがって、加振によって部材間の相対移動が生じた際に、フレキシブル基板Fが振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0178】
また、上記の実施形態に係る振動搬送装置1100は、構造体Xが複数の質量体1001b,1001cを備え、複数の質量体1001b,1001cの間に亘り部分(第1亘り部分)1721が設けられる。したがって、加振によって複数の質量体1001b,1001cが相対移動した際に、フレキシブル基板Fが振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0179】
また、上記の実施形態に係る振動搬送装置1100は、質量体1001b,1001cと接続対象部品である圧電素子1005の間に亘り部分(第3亘り部分)1723が設けられる。したがって、加振によって質量体1001b,1001cと圧電素子1005とが相対移動した際に、フレキシブル基板Fが振動を弱めるダンパーのように作用することがない。
【0180】
また、上記の実施形態に係る振動搬送装置1100は、構造体Xが、質量体1001a,1001b,1001cに設けられた弾性体1002a,1002bを備え、加振部Yが、弾性体1002a,1002bに設けられた加振用圧電素子1005pと、これに駆動電圧を印加する加振制御部1006と、を備える。そして、接続配線1007における接続対象部品が加振用圧電素子1005pであり、被接続部品が加振制御部1006である。したがって、搬送性能を損なうことなく、加振用圧電素子1005pを加振制御部1006と接続することができる。
【0181】
また、上記の実施形態に係る振動搬送装置1100は、構造体Xが、質量体1001a,1001b,1001cに設けられた弾性体1002a,1002bを備え、加振部Yが、弾性体1002a,1002bに設けられた検出用圧電素子1005qと、これから検出電圧を取得する加振制御部1006と、を備える。そして、接続配線1007における接続対象部品が検出用圧電素子1005qであり、被接続部品が加振制御部1006である。したがって、搬送性能を損なうことなく、検出用圧電素子1005qを加振制御部1006と接続することができる。
【0182】
また、フレキシブル基板Fは、これを所定の位置で折り曲げるとともに所定の位置で屈曲させて立体形状として、構造体Xに取り付けるだけで、敷設作業が完了する。したがって、例えば丸ケーブルの敷設作業と比べて、敷設に係る作業負担が大幅に軽減される。
【0183】
また、上記の実施形態では、接続配線1007における質量体1001b,1001cの表面に沿って配設される部分1711,1712,1713が、丸ケーブルなどと比べて格段に厚みが小さいフレキシブル基板Fにより構成されている。例えば、ベースフィルムを、耐電圧性に優れたポリイミドから形成すれば、ベースフィルムの厚さを25μm程度にまで薄くすることができる。また例えば、配線パターンを銅箔で形成すれば、膜厚を18μm程度の薄さにすることができる。例えばこの組み合わせでフレキシブル基板Fを形成すれば、その厚みを127μm程度のものとすることができる。接続配線1007における質量体1001b,1001cの表面に沿って配設される部分1711,1712,1713が、このように薄いフレキシブル基板Fを用いて形成されることで、接続配線1007が敷設されることに伴う装置の幅寸法の増大幅を、丸ケーブルを用いる場合と比べて格段に小さく抑えることができる。
【0184】
特に、上記の実施形態に係る振動搬送装置1100は、装置のサイズ(特に、幅サイズ)を増大させることなく、送り搬送と戻り搬送を切り換えて行えるように構成されており、これによって、スペースがない現場への導入、多列配置による高い搬送効率の実現、などを実現しているところ、フレキシブル基板Fを含んで構成される接続配線1007を採用することで、幅サイズがコンパクトな薄型の振動搬送装置1100のメリットを損なうことなく、これを最大限に活かすことができる。
【0185】
また、上記の実施形態に係る振動搬送装置1100は、装置のサイズを増大させることなく、送り搬送と戻り搬送を切り換えて行えるようにするために、構造体Xに、比較的多数個の弾性体1002a,1002b、ひいては、比較的多数個の圧電素子1005を設けている。すなわち、接続対象部品の点数が多い。しかしながら、接続配線1007の少なくとも一部を、フレキシブル基板Fを用いて形成すれば、振動搬送装置1100の搬送性能を損なうことなく、多数の接続対象部品を難なく接続することができる。
【0186】
<5.変形例>
上記の実施形態に係る振動搬送装置1100において、質量体1001c,1001bの表面に、ここに沿って配設される各延設部分1711,1712,1713の形状に応じた溝が形成されて、各延設部分1711,1712,1713が、対応する溝の内部に収容されるようにして各表面に沿って配設されるようにしてもよい。ただし、この場合、溝の深さは、フレキシブル基板Fの厚み相当であれば十分であり、数ミリメートル程度のごく浅いものでよい。このような溝を形成しておくことで、フレキシブル基板Fの敷設作業をさらに簡易化することができる。
【0187】
また、上記の実施形態においては、接続対象部品である圧電素子1005と、被接続部品である加振制御部1006とを接続する接続配線1007の一部分が、フレキシブル基板Fにより構成されるものとしたが、接続配線7の全体がフレキシブル基板Fにより構成されてもよい。
【0188】
また、上記の実施形態においては、接続配線1007における、加振制御部1006から延びるケーブルの端子1060と各圧電素子1005とを接続する部分が、1個のフレキシブル基板Fにより構成されるものとしたが、該部分が例えば、複数のフレキシブル基板を含んで構成されてもよい。例えば、各延設部分1711,1712,1713に相当する部分をそれぞれ別個のフレキシブル基板により構成し、各亘り部分1721,1722,1723に相当する部分を、弛みをもって設けられた丸ケーブルにより構成してもよい。
【0189】
上記の実施形態に係る接続配線1007は、各種の振動搬送装置に適用することができる。例えば、振動搬送装置の中には、基台などに対して弾性的に支持された質量体を、電磁石で振動させることによって、該質量体の上面に形成された搬送面上の搬送対象物が搬送されるように構成されたものがある。このような振動搬送装置に、上記の実施形態に係る接続配線7を適用してもよい。この場合、例えば、電磁石と加振制御部を接続する接続配線の少なくとも一部をフレキシブル基板により構成し、該フレキシブル基板の少なくとも一部が、質量体の表面に沿って配設されたものとすることができる。
【0190】
また例えば、振動搬送装置の中には、弾性体を介して接続された2個の質量体(可動部およびウェイト部)と、一方の質量体と接続された搬送台とを有し、該弾性体に貼り付けられた圧電素子に駆動電圧を印加して両質量体を逆位相で振動させることによって、搬送台に形成されている搬送面上の搬送対象物が搬送されるように構成されたものがある。このような振動搬送装置に、上記の実施形態に係る接続配線1007を適用してもよい。この場合、例えば、圧電素子と加振制御部を接続する接続配線の少なくとも一部をフレキシブル基板により構成し、該フレキシブル基板の少なくとも一部が、一方、あるいは、両方の質量体の表面に沿って配設されたものとすることができる。
【0191】
上記の実施形態においては、接続配線1007における接続対象部品は圧電素子1005であるとしたが、接続対象部品は圧電素子1005に限られるものではなく、例えば上記の変形例のように、電磁石であってもよいし、各種のセンサ部品などであってもよい。
【0192】
上記の実施形態においては、接続配線1007における被接続部品は加振制御部1006であるとしたが、被接続部品は、これに限られるものではない。
【0193】
また、フレキシブル基板Fの基材や配線の形成材料は、上記の実施形態において例示したものに限定されない。
【0194】
また、振動搬送装置における搬送対象物は、ICチップ、微小なコイル等のワークに限られるものではない。
【0195】
その他の構成も、本実施形態の発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明は、搬送対象物を所定方向に搬送可能な振動搬送装置及びそれを備える多列振動搬送システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0197】
1 振動搬送装置
2 基台
2c 支持面
5 可動部(第1質量体)
6 固定部(第2質量体)
8 トラフ(第1質量体)
8t リニア搬送面
10 駆動バネ(駆動弾性体)
12 トラフ支持台(第1質量体)
50 防振バネ(防振弾性体)
51 第1アーム部
52 第2アーム部
201 振動搬送装置
210 駆動バネ
212a メインブロック(第2質量体)
212b サブブロック(第2質量体)
213a メインブロック
213b サブブロック
350 防振バネ(防振弾性体)
351 第1アーム部
352 第2アーム部
353 湾曲部
A1 第1固定部
A2 第2固定部
T 振動体
X 構造体
1001a 第1質量体
1001b 第2質量体
1001c 第3質量体
1002a 第1弾性体
1002b 第2弾性体
1003 基台
1004 カバー部材
Y 加振部
1005 圧電素子(接続対象部品)
1005p 加振用圧電素子
1005q 検出用圧電素子
1006 加振制御部(被接続部品)
1007 接続配線
F フレキシブル基板
1711 下側延設部分
1712 前側延設部分
1713 後側延設部分
1721 第1亘り部分
1722 第2亘り部分
1723 第3亘り部分
1100 振動搬送装置