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特開2025-4261溶融金属浴の温度値を決定するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004261
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】溶融金属浴の温度値を決定するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/00 20220101AFI20250106BHJP
   G01J 5/0821 20220101ALI20250106BHJP
   C23C 2/00 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
G01J5/00 101D
G01J5/0821
C23C2/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024184302
(22)【出願日】2024-10-18
(62)【分割の表示】P 2023531611の分割
【原出願日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】20211284.3
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】598083577
【氏名又は名称】ヘレーウス エレクトロ-ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro-Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B-3530 Houthalen,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ヴリエルベルゲ、ミシェル
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、従来技術の問題の少なくとも1つを解決する、光学コアワイヤを用いて溶融金属浴の温度値を決定するための改善された方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、溶融金属浴の温度値を決定するための方法及びシステムに関する。本発明による方法は、温度値を繰り返し決定することに特に適していることが証明されている。すなわち、本方法は、光学コアワイヤの、繰り返し新たに生成される前端、を用いた複数の測定を可能にする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学コアワイヤと検出器とを備える装置を用いて溶融金属浴の温度値を決定するための方法であって、
(a)前端が前記溶融金属浴の表面の上方の位置p1にある前記光学コアワイヤを提供する工程と、
(b)前記溶融金属浴に向けられた前記前端を、t1からt2までの第1の時間にわたって、位置p1から前記溶融金属浴の前記表面の下方の浸漬深さi1の位置p2に速度v1で送る工程と、
(c)前記前端を、t2からt3までの第2の時間にわたって、前記溶融金属浴の前記表面の下方の浸漬深さi2の位置p3に速度v2で送る工程と、
(d)前記前端を、t3からt4までの第3の時間にわたって、前記溶融金属浴の前記表面の下方の浸漬深さi3の位置p4まで速度v3で送る工程と、
(e)それぞれt4からt5までの第4の時間にわたって、前記前端の前記送りを一次停止させるか、又は前記前端を速度v4で送る工程と、
(f)t5の後に、前記前端を前記溶融金属浴の前記表面の上方の位置まで速度v5で後退させる工程と、
(g)t2からt5までの測定時間内に前記溶融金属浴の温度情報を取得する工程と、
を含み、
前記浸漬深さ及び前記速度は、以下の関係:
(i)i2>i1
(ii)i3>i2
(iii)v1>v2
(iv)v2<v3及び
(v)v4<v1又はv2又はv3
を有する、
方法。
【請求項2】
前記溶融金属は溶鋼である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光学コアワイヤは、少なくとも1つの追加の金属管によって側方から取り囲まれている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記光学コアワイヤの線密度が25~80g/mの範囲内である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
t4からt5までの前記第4の時間の長さが、
(i)溶融金属浴の測定データを時間の長さに関連付けるデータセットを提供する工程と、
(ii)t4より前の時間中に測定値を取得する工程と、
(iii)提供された前記データセットから、t4より前の前記時間中に取得された前記測定データに対応する前記第4の時間の前記長さを選択する工程と、
を含む方法によって選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記測定データは温度値である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶融金属浴表面の下方に送られる前記光学コアワイヤの前記部分はt5までに消耗される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記温度測定値はt3からt5までの測定時間内に取得される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記測定時間の開始がt3+(t4-t3)/2以降である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記測定時間の終了がt4+(t5-t4)/2以前である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の時間の長さ、前記第2の時間の長さ、前記第3の時間の長さ又は前記第4の時間の長さのうちの少なくとも1つが、前記光学コアワイヤの特性に基づいて選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記速度v1、v2、又はv3のうちの少なくとも1つが、
(i)溶融金属浴の予想温度を速度v1、v2又はv3に関連付けるデータセットを提供する工程と、
(ii)前記溶融金属浴の予想温度値を提供する工程と、
(iii)前記提供されたデータセットから、前記速度のうちの前記予想温度に対応する少なくとも1つを選択する工程と、
を含む方法によって選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、
(a1)前記溶融金属浴の前記表面のレベルを測定する工程
を更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法を実行するためのシステム。
【請求項15】
前記システムが送り手段を備える、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属浴の温度値を決定するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
冶金容器内の溶融金属浴の温度は、金属製造プロセス中の重要なパラメータであり、得られる製品の品質を決定する。溶融金属浴、特に電気アーク炉(EAF)の融解環境における鉄又は鋼の温度を測定するための可能な手段は、金属管によって囲まれた光ファイバを溶融金属中に浸漬する工程を含む。金属管によって囲まれた光ファイバは、しばしば、光学コアワイヤとも呼ばれる。
【0003】
溶融金属浴の温度を測定するために、光学コアワイヤを冶金容器内に送ることができる。光学コアワイヤの前端は溶融金属浴内に浸漬され、その途中で最初に高温雰囲気に遭遇し、続いてスラグ層に遭遇し、次に溶融金属浴に遭遇する。光学コアワイヤの一部分が溶融金属浴の表面の下方に浸漬されると、光ファイバは、溶融金属から受け取った熱放射を検出器、例えばパイロメータに伝達することができる。溶融金属浴の温度を求めるために、適切な計器を検出器と関連付けることができる。この測定中、光学コアワイヤの浸漬された部分は、溶融金属浴によって部分的に又は完全に消耗され得る。温度測定が終了すると、光学コアワイヤの先端を溶融金属浴から後退させることができる。後退された光学コアワイヤの先端は、次の温度測定のための新しい前端となる。
【0004】
このような装置は、一連の浸漬サイクルの形態のオンデマンド温度測定及び半連続温度測定に適している。操作者は、冶金容器に近接した過酷な環境に直接介入することなく、温度測定値を取得することができる。
【0005】
正確な測定値を提供するためには、測定値が取得されている間、光ファイバの浸漬された前端付近で黒体状態が確保されなければならない。ファイバは、金属浴表面の下方の十分な深さまで、かつ液体金属浴の温度を代表する容器内の位置に浸漬されなければならない。一方、深い浸漬は、光学コアワイヤにかかる浮力を増加させ、測定シーケンス中の消耗を増加させる。
【0006】
正確な温度測定のためには、ガラス化されていない光ファイバの利用が不可欠である。特に、前端の状態が重要である。失透速度は、様々な要因、とりわけ、光学コアワイヤの構造、各測定サイクルの前、間及び後に光学コアワイヤが曝露される冶金容器の熱環境、溶融金属浴を覆うスラグ層の量及び種類、並びに溶融金属浴の実際の条件及び温度に依存する。
【0007】
従来技術で知られている装置の多くは、一般に、保護管内に設置された光ファイバを使用することによって構成されている。光ファイバと金属管との間の空隙は、浸漬及びデータ収集の前に、過酷な環境及び溶融金属浴の熱から光ファイバを更に保護するために、充填材料で充填されてもよい。層状構造は、比較的長時間にわたって光ファイバを低温に保つのに役立つ。光ファイバを破壊する高温による失透が遅延される。例えば、特開平10-176954号公報には、金属管によって間隔をあけて取り囲まれたファイバが記載されている。この金属管の周囲には断熱コーティングで作製された管が配置されており、この断熱コーティングは外側の金属管によって取り囲まれている。この構造は、内側の金属管が過度に急速に融解することを防止する。
【0008】
一連の測定を行う場合、冶金容器内の環境への光学コアワイヤの曝露が顕著な問題となる。そのような場合、光ファイバの熱曝露は、測定値が取得される直前の時間枠だけでなく、測定間の間隔においても発生する。
【0009】
これらの複数の浸漬に関して、特開平09-243459号公報は、損傷を受けた可能性のある浸漬された光ファイバを各測定サイクルの後に送り部から切断して、各測定の前に新しい前端を提供する追加の是正措置を教示している。この解決策は、光ファイバの損傷部分の使用の問題を解決するが、追加の機器が必要であり、またファイバの失透部分の大きさが不明である。
【0010】
更に、光ファイバコアを失透前に溶融金属に供給するために、消耗型光ファイバを溶融金属浴に送る様々な方式が提案されている。
【0011】
例えば、特開平09-304185号公報は、ファイバ消耗速度が失透速度よりも大きくなければならない光ファイバ送り方法を開示している。この方式は、待機時間が介在する2つの送り工程を含み、第1の送りは、所定の閾値温度が記録されるまで行われる。その後、各送り工程中に取得された温度測定値を比較して、追加の測定サイクルが必要かどうかを判定する。
【0012】
米国特許出願公開第2007-268477号明細書は、測定サイクル中に送り速度が調整される送り方法を開示している。最初の送り段階中に熱応答が記録され、次の第2の段階における検出温度の変化と比較される。この方法はいくつかの利点を提供するが、初期段階中、光学コアワイヤが溶融金属浴にほとんど浸漬されないものの、溶融炉の環境又はスラグ層に遭遇し、不正確な結果をもたらすという事実に対処していない。
【0013】
いくつかの先行技術文献は、金属被覆光ファイバの送り方法を開示しており、この金属被覆光ファイバは、溶融金属への浸漬の前に可動ガイド管によって更に覆われる。例えば、特開2010-071666号公報は、ファイバ及びガイド管が退避位置から溶融金属浴表面の近傍まで3段階で速度を低下させながら送られる第1段階を開示している。続いて、ファイバを浴中に送り、温度を記録することができる。特開平10-185698号公報では、光ファイバの送りは、とりわけ、測定された温度の増加率に関するフィードバック及び所定の時間の長さに基づいて、いくつかの手段によって更に制御される。
【0014】
これらの解決策は、ファイバに長期持続する保護環境を提供し、ファイバ消耗需要が低いが、追加の機器が必要とされる。
【0015】
米国特許出願公開第2018-180484号明細書は、複数の測定サイクルに適し、追加の機器を必要としない、溶融金属浴の温度測定方法を開示している。提案された送り方式は、2つの送り速度とそれに続く静止時間とを含み、その後、温度測定が行われる。一方で、この方法は、冶金プロセスにおける特定の条件について以前に知られていた問題のいくつかを解決する。一方、それは金属浴の正確なレベルに対処していない。第1の送りは、光学コアワイヤの前端を溶融金属浴表面の下方に確実に浸漬させることを必要とするので、測定サイクル中に消耗される光学コアワイヤの量が必要以上に多くなり得る。
【0016】
従来技術を考慮すると、特に、溶融金属浴の様々なパラメータ及び冶金容器の多様な構造詳細などの、溶融金属の処理において一般的な可能な条件の全範囲にわたって高い精度を提供する測定方法及びシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0017】
したがって、本発明の目的は、上述の問題の少なくとも1つを解決する、光学コアワイヤを用いて溶融金属浴の温度値を決定するための改善された方法を提供することである。特に、目的の1つは、広範な適用条件にわたって温度値をより確実に決定するための改善された方法を提供することである。具体的には、この目的は、温度値を決定中及び決定後の光学コアワイヤの融解及び分解挙動を改善することである。別の目的は、決定中の光学コアワイヤの消耗を最小限に抑えることを可能にする装置を提供することである。更に、光学コアワイヤの特定の浸漬深さで温度値を取得する方法を提供することを目的とする。
【0018】
本発明の更なる目的は、本発明の方法を実行するための改良されたシステムを提供することである。
【0019】
これらの目的は、独立請求項において定義される主題によって達成される。
【0020】
本発明は、光学コアワイヤと検出器とを備える装置を用いて溶融金属浴の温度値を決定するための方法であって、
(a)前端が溶融金属浴の表面の上方の位置p1にある光学コアワイヤを提供する工程と
(b)溶融金属浴に向けられた前端を、t1からt2までの第1の時間にわたって、位置p1から溶融金属浴の表面の下方の浸漬深さi1の位置p2に速度v1で送る工程と、
(c)前端を、t2からt3までの第2の時間にわたって、溶融金属浴の表面の下方の浸漬深さi2の位置p3に速度v2で送る工程と、
(d)前端を、t3からt4までの第3の時間にわたって、溶融金属浴の表面の下方の浸漬深さi3の位置p4まで速度v3で送る工程と、
(e)それぞれt4からt5までの第4の時間にわたって、前端の送りを一次停止させるか、又は前端を速度v4で送る工程と、
(f)t5の後に、前端を溶融金属浴の表面の上方の位置まで速度v5で後退させる工程と、
(g)t2からt5までの測定時間内に溶融金属浴の温度情報を取得する工程と、
を含み、
浸漬深さ及び速度は、以下の関係:
(i)i2>i1
(ii)i3>i2
(iii)v1>v2
(iv)v2<v3及び
(v)v4<v1又はv2又はv3
を有する、
方法を提供する。
【0021】
誤解を避けるために、工程(a)~(d)で述べた位置p1、p2、p3及びp4、並びに工程(f)で述べた溶融金属浴の表面の上方の位置は、光学コアワイヤの前端の位置である。当業者であれば、「前端を供給すること」及び「前端を送ること」は、光学コアワイヤを供給すること及び送ること、すなわち、前端を有する光学コアワイヤを供給すること、及び前端を有する光学コアワイヤを上述の位置に移動させることを必然的に含むことを理解するであろう。
【0022】
時点t1、t2、t3、t4及びt5は、互いのすぐ後に、すなわち、間を置かずに続く。
【0023】
更に、本発明は、本発明による方法を実行するためのシステムを提供する。
【0024】
より好ましい実施形態は、従属請求項に定義されている。好ましい実施形態は、個別に実現されても任意の可能な組み合わせで実現されてもよい。
【0025】
本発明による方法は、温度値を繰り返し決定することに特に適していることが証明されている。すなわち、本方法は、「エンドレス」光学コアワイヤの、繰り返して新たに生成される前端を用いた複数の測定を可能にする。本発明の方法は、光学コアワイヤの前端の信頼性の高い位置決めを可能にするので、光学コアワイヤの消耗を最小限に抑えて正確な温度値を決定することを更に可能にする。本明細書で使用される「消耗」という用語は、例えば、溶融金属浴による、及び溶融金属浴への、光学コアワイヤの融解及び溶解、光学コアワイヤ全体又はその異なる部分の分解又は燃焼などの光学コアワイヤの損壊を指す。特に、本発明による方法は、光学コアワイヤの前端が、特定の浸漬深さの位置における温度値を決定するのに最適な状態にあることを保証する。
【0026】
本発明は、溶融金属浴の温度値を決定するための方法を提供する。
【0027】
「温度値を決定すること」は、本明細書では、温度を測定することの同義語として使用され得る。これは、単一点測定値を取得すること、又は複数の単一点測定値及び任意選択の関連データ処理を含む方法を指すことが理解されよう。
【0028】
本明細書で使用される場合、「溶融金属浴」という用語は、容器内の溶融物を説明するために使用される。当業者に知られている「溶融金属浴」の代替用語は、「金属溶融物」である。溶融金属浴の溶融金属は特に限定されない。好ましい実施形態によれば、溶融金属は溶鋼である。溶融金属浴という用語は、例えばそれぞれの金属の非溶融部分を含む任意の固体部分又は気体部分の存在を除外しない。溶融金属浴はスラグ層で覆われていてもよい。
【0029】
金属溶融物の温度は異なり、通常、金属の組成及び融解プロセスの段階に依存する。好ましくは、溶融金属浴の温度は1500~1800℃の範囲内であり、より好ましくは1500~1700℃の範囲内である。
【0030】
溶融金属浴は、光学コアワイヤを送るのに適した入り口を含む容器内に収容されてもよい。そのような入り口は、容器を覆う側壁パネル又は屋根に配置されてもよい。
【0031】
本発明は、光学コアワイヤを備える装置を用いて温度値を決定する方法を提供する。好ましくは、光学コアワイヤは、金属管によって側方から取り囲まれた光ファイバである。
【0032】
好ましくは、光ファイバは、柔軟で透明なファイバである。光ファイバは、ファイバの2つの端部の間で、特にIR波長範囲内の光を伝送する手段として使用されることが最も多い。好ましくは、光ファイバは、ガラス又はプラスチック、より好ましくは石英ガラスから形成される。好ましくは、光ファイバは、グレーデッドインデックスファイバ及びシングルモードステップインデックスファイバからなる群から選択される。
【0033】
光ファイバを取り囲む金属管は、光ファイバを完全に取り囲んでもよいが、ケーシングが光ファイバを完全に取り囲まないように少なくとも部分的に開いてもよい。
【0034】
好ましくは、光ファイバを取り囲む金属管の金属は、鉄又は鋼、好ましくはステンレス鋼である。
【0035】
好ましい実施形態では、光学コアワイヤの線密度は、25~80g/mの範囲内、更により好ましくは35~70g/mの範囲内である。線密度は、単位長さ当たりの質量によって定義される。
【0036】
好ましくは、光学コアワイヤは、少なくとも1つの追加の金属管によって側方から取り囲まれており、すなわち、少なくとも2つの金属管が光ファイバを側方から取り囲んでいる。より好ましくは、光学コアワイヤは、少なくとも1つの追加の金属管の中心に配置される。
【0037】
好ましくは、少なくとも1つの追加の金属管は、光学コアワイヤと接触していない。より好ましくは、これらの少なくとも2つの金属管の間の空隙は、気体材料もしくは固体材料又はそれらの組み合わせからなる群から選択される材料で少なくとも部分的に充填される。固体材料は、好ましくは、無機材料、天然ポリマー、合成ポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。気体材料は、好ましくはガス又はガスの混合物である。より好ましくは、ガスは空気又は不活性ガスである。
【0038】
好ましい実施形態によれば、光学コアワイヤは、少なくとも1つの金属管内に配置された複数の分離要素を備え、これらの分離要素は、分離要素間に少なくとも1つの区画を形成する。ここで、「区画」という用語は、管内の異なる分離要素間の容積に関する。「分離要素」という用語は、管内に配置された、管内の容積を細分する部分に関する。好ましくは、分離要素は、管の内側に配置される円板状要素であり、円板状要素は開口部を備え、開口部を通って光学コアワイヤが延在し、開口部は光学コアワイヤを少なくとも部分的に支持することができる。分離要素の材料は、シリコーン、好ましくは二成分シリコーン、ゴム、革、コルク、金属及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。
【0039】
光学コアワイヤは、任意選択的に、少なくとも1つの追加の層によって取り囲まれている。この少なくとも1つの追加の層を、上述の少なくとも1つの追加の金属管と置き換えてもよいし、置き換えなくてもよい。好ましい実施形態では、この少なくとも1つの追加の層は複数の部分を含み、より好ましくは、層はファイバを含む。
【0040】
更に好ましい実施形態では、少なくとも1つの追加の層の材料は、織布構造、網構造、織物構造又は編物構造の形態を有する。
【0041】
好ましくは、少なくとも1つの追加の層は、様々な材料で作られる。より好ましくは、材料は非金属材料であり、最も好ましくは有機材料である。
【0042】
光学コアワイヤは、上述の構成の任意の組み合わせを含み得ることを理解されたい。例えば、光学コアワイヤが追加の層及び第2の金属管によって側方から取り囲まれていることが有利であってもよい。
【0043】
本発明による方法を適用するために使用される装置は、検出器を更に含む。検出器は、光学コアワイヤの一端に結合されてもよく、光ファイバによって伝送される、特にIR波長範囲内の光信号を受信してもよい。本発明の文脈における検出器は、パイロメータであってもよい。
【0044】
光学コアワイヤは、浸漬端及び反対端を有する。光学コアワイヤの前端は、光学コアワイヤの浸漬端の先端である。好ましくは、本発明による方法が適用されると、光学コアワイヤは浸漬端から反対端に向かう方向に消耗され、各測定シーケンスの後、光学コアワイヤの別の部分が浸漬端になる。すなわち、各測定シーケンスの後に、前端が新たに生成される。反対端は検出器に接続され、測定中に消耗されない。
【0045】
本発明による方法の工程(a)では、光学コアワイヤは、その前端が溶融金属浴の表面の上方の位置p1にある状態で提供される。
【0046】
溶融金属の表面は、容器内のその表面の上方のガス雰囲気に面する表面であってもよく、又は、スラグ層が存在する場合には、スラグ層に面する表面であってもよい。
【0047】
位置p1は、容器の上方であってもよく、又は好ましくは容器内であってもよい。位置p1の前端は、任意に存在するスラグと接触してもしなくてもよい。
【0048】
本発明による方法の工程(b)では、溶融金属浴に向けられている前端は、t1からt2までの第1の時間にわたって、位置p1から溶融金属浴の表面の下方の浸漬深さi1の位置p2に速度v1で送られる。
【0049】
溶融金属浴に向かう動きは、存在してもしなくてもよい、前述のスラグ層を通る前端の通過を含んでもよい。
【0050】
本発明に関する浸漬深さは、溶融金属浴の表面からの前端の距離として理解されるべきであり、表面に垂直な軸に沿って測定される。
【0051】
浸漬角度が45°~90°の範囲内、好ましくは60°~90°の範囲内、最も好ましくは浸漬角度が90°であることが有利であり得る。この角度は、溶融金属浴の表面と、最適な直線での光学コアワイヤに沿った軸との間の角度として定義される。90°は、溶融金属浴の表面に対して垂直な光学コアワイヤの浸漬として理解され得る。
【0052】
浸漬角度は、送りを含む工程の間、すなわち、工程(b)、(c)、(d)及び(e)の間、一定に保たれる。
【0053】
好ましい実施形態では、v1は2~4m/sの範囲内、より好ましくは2,5~3,5m/sの範囲内である。
【0054】
好ましい実施形態によれば、i1は、溶融金属浴の表面の下方0,01~0,35mの範囲内、より好ましくは0,05~0,35mの範囲内である。
【0055】
好ましくは、t1からt2までの第1の時間の長さは、0,1~1秒の範囲内、好ましくは0,25~0,75秒の範囲内である。
【0056】
本発明による方法の工程(c)では、前端は、t2からt3までの第2の時間にわたって、溶融金属浴の表面の下方の浸漬深さi2の位置p3に速度v2で送られる。
【0057】
本発明によれば、i2>i1である。すなわち、i2はi1よりも溶融金属浴の表面の下方に深い。
【0058】
本発明によれば、速度v2は速度v1よりも低い。
【0059】
好ましい実施形態では、v2は、0,05~0,5m/sの範囲内、より好ましくは0,1~0,3m/sの範囲内である。
【0060】
好ましい実施形態によれば、i2は0,05~0,4mの範囲内、より好ましくは0,1~0,3mの範囲内である。
【0061】
好ましい実施形態では、t2からt3までの第2の時間の長さは、0,2~2,0秒の範囲内、好ましくは0,3~1,5秒の範囲内である。
【0062】
本発明による方法の工程(d)では、前端は、t3からt4までの第3の時間にわたって、溶融金属浴の表面の下方の浸漬深さi3の位置p4に速度v3で送られる。
【0063】
本発明によれば、i3>i2である。すなわち、i3はi2よりも溶融金属浴の表面の下方により深く、速度v2は速度v3よりも低い。
【0064】
有利には、v3は0,5~4,5m/sの範囲内、好ましくは1,5~3,5m/sの範囲内である。
【0065】
好ましい実施形態によれば、i3は0,1~1,0mの範囲内、より好ましくは0,2~0,8mの範囲内である。
【0066】
好ましい実施形態では、t3からt4までの第3の時間の長さは、0,05~0,45秒の範囲内、好ましくは0,05~0,25秒の範囲内である。
【0067】
好ましい実施形態によれば、v1及びv3は両方ともv2より高い。
【0068】
本発明による方法の工程(e)では、それぞれt4からt5までの第4の時間にわたって、前端の送りが一時停止されるか、又は前端が速度v4で送られる。
【0069】
本明細書で使用される「前端の送りを一時停止させる」とは、前端を能動的に動かさないことを意味する。
【0070】
代替的な実施形態では、前端は速度v4で送られる。好ましくは、速度v4は、光学コアワイヤの前端が融解中の光学コアワイヤのある程度の消耗に起因して溶融金属浴の表面の方向に戻る速度よりも低い。
【0071】
いずれの代替形態においても、溶融金属浴の表面に向かう前端の位置の移動が消耗に起因してもたらされる。それにもかかわらず、前端は依然として溶融金属浴の表面の下方に浸漬されている。
【0072】
好ましくは、t1~t5の間に溶融金属浴の表面の下方に送られた光学コアワイヤの全体が、t5までに完全に消耗される。
【0073】
好ましい実施形態によれば、v4は0,2m/s未満、より好ましくは0,1m/s未満である。
【0074】
好ましい実施形態では、t4からt5までの第3の時間の長さは、0,05~0,5秒の範囲内、好ましくは0,1~0,4秒の範囲内である。
【0075】
好ましい実施形態では、t4からt5までの第4の時間の長さは
(i)溶融金属浴の測定データを時間の長さに関連付けるデータセットを提供する工程と、
(ii)t4より前の時間中に測定値を取得する工程と
(iii)提供されたデータセットから、t4より前の時間中に取得された測定データに対応する第4の時間の長さを選択する工程と、
を含む方法によって選択される。
【0076】
「データセット」という用語は、本明細書では、対応するデータを含むデータベースとして使用され、すなわち、そのようなセットは、ある種類のデータの1つの特定の値が別の種類のデータの特定の値に割り当てられるデータ対を含む。それはまた、ある種類のデータの1つの特定の値がモデルやいくつかの工程のシーケンスなどに割り当てられるデータ対を含んでもよい。
【0077】
好ましくは、測定データは温度値を含む。より好ましくは、測定データは一連の温度値である。最も好ましくは、測定データは、一連の温度値を記述する関数の勾配である。
【0078】
有利には、第4の時間の長さは、t4より前の時間中に取得された温度値が高いほど短くなる。
【0079】
本発明による方法の工程(f)では、前端は、t5の後に、溶融金属浴の表面の上方の位置まで速度v5で後退させられる。すなわち、前端が位置p1に向かって後方に動かされる。
【0080】
工程(f)の後退は、前端の位置p1への位置決めをもたらしてもよいし、もたらさなくてもよい。
【0081】
好ましくは、v5は2~4m/sの範囲内であり、より好ましくは2,5~3,5m/sの範囲内である。
【0082】
本発明による方法の工程(g)では、溶融金属浴の温度情報は、t2からt5までの測定時間内に取得される。
【0083】
「温度情報の取得」は、本明細書では、温度値の決定をもたらす工程を説明するために使用される。これは、単一のデータ点の測定又は2つ以上のデータ点の測定、すなわち、一連のデータ点の測定を含み得る。
【0084】
好ましくは、温度情報の取得は、一連のデータ点の測定を含む。
【0085】
測定された温度は、一連のデータ点の平均値であってもよい。更なる実施形態では、取得された温度は、一連のデータ点を処理するアルゴリズムの適用に基づいて導出されてもよい。
【0086】
好ましくは、温度情報は、t3からt5までの測定時間内に取得される。
【0087】
測定時間の開始が
t3+(t4-t3)/2以降であることが有利であってもよい。
【0088】
測定時間の終了が
t4+(t5-t4)/2以前であることが有利であってもよい。
【0089】
好ましい実施形態では、速度v1、v2、又はv3のうちの少なくとも1つが、光学コアワイヤの特性に基づいて、特に、管の壁厚、化合物の材料、特定の設計、又はそれらの組み合わせに基づいて選択される。
【0090】
「特定の設計」とは、例えば、上述の光学コアワイヤに関する実施形態の選択された組み合わせ、すなわち、とりわけ、層及び材料の選択を指す。
【0091】
別の好ましい実施形態では、速度v1、v2又はv3のうちの少なくとも1つが、
(i)溶融金属浴の予想温度を速度v1、v2又はv3に関連付けるデータセットを提供する工程と、
(ii)溶融金属浴の予想温度値を提供する工程と、
(iii)提供されたデータセットから、速度v1、v2、又はv3のうちの予想温度に対応する少なくとも1つを選択する工程と、
を含む方法によって選択される。
【0092】
予想温度は、測定温度でも決定温度でもない温度、すなわち、例えば経験的データに基づいて取得される温度として理解され得る。そのような経験的データは、溶融金属浴の特性、又は溶融プロセスのために提供されたエネルギーもしくはプロセスの時間の長さ等の金属製造プロセスの動作パラメータであってもよい。溶融金属浴の特性は、溶融金属浴の物理的特性、例えば、溶融金属の投入質量又は金属の組成を含む。
【0093】
好ましい実施形態では、第1、第2、第3、又は第4の時間の長さのうちの少なくとも1つが、光学コアワイヤの特性に基づいて、特に、管の壁厚、化合物の材料、特定の設計、又はそれらの組み合わせに基づいて選択される。
【0094】
別の好ましい実施形態では、第1、第2、第3又は第4の時間の長さのうちの少なくとも1つが、
(i)溶融金属浴の予想温度を第1、第2、第3及び第4の時間の長さに関連付けるデータセットを提供する工程と、
(ii)溶融金属浴の予想温度値を提供する工程と、
(iii)提供されたデータセットから、第1、第2、第3、及び第4の時間の長さのうちの予想温度に対応する少なくとも1つを選択する工程と、
を含む方法によって選択される。
【0095】
好ましい実施形態では、浸漬深さi1、i2、又はi3のうちの少なくとも1つが、光学コアワイヤの特性に基づいて、特に、管の壁厚、化合物の材料、特定の設計、又はそれらの組み合わせに基づいて選択される。
【0096】
別の好ましい実施形態では、浸漬深さi1、i2又はi3のうちの少なくとも1つが、
(i)溶融金属浴の予想温度を浸漬深さi1、i2又はi3に関連付けるデータセットを提供する工程と、
(ii)溶融金属浴の予想温度値を提供する工程と、
(iii)提供されたデータセットから、浸漬深さi1、i2又はi3のうちの予想温度に対応する少なくとも1つを選択する工程と、
を含む方法によって選択される。
【0097】
好ましくは、本方法は、溶融金属浴の表面のレベルを測定する工程(a1)を更に含んでもよい。
【0098】
溶融金属浴のレベルを測定するための多種多様な方法が当業者に知られている。そのような方法は、例えば、溶融材料の既知の密度及び容器の設計と併せた原料の積載質量の決定、浸漬ランス又は接触センサの利用などの接触ベースの測定、レーダ又はマイクロ波に基づいてもよい非接触ベースの決定、並びに容器内の圧力の測定のような間接的な方法を含む。
【0099】
好ましくは、工程(a1)は工程(a)の前に行われる。
【0100】
本発明は更に、本発明による方法を実行するためのシステムに関する。
【0101】
本発明の方法に関する好ましい実施形態については、上記の好ましい実施形態を参照されたい。
【0102】
好ましくは、システムは、光学コアワイヤ及び検出器を備える前述の装置を備える。
【0103】
一実施形態では、システムは送り手段を備えることができる。本発明の文脈では、送り手段は、溶融金属浴内への光学コアワイヤの送りを可能にする手段として理解され得る。このような手段は、フィーダ、送り制御装置、ストレートナー及びガイド管からなる群から選択することができる。
【0104】
この実施形態の変形例では、システムは制御手段も備える。制御手段は、上述の方法を実行するために装置の動作を制御するように構成される。制御手段は、ハードウェア、メモリユニット、及び処理ユニットを備えてもよい。
【0105】
好ましい実施形態によれば、システムは、光学コアワイヤの長さに対応するコイルを更に備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
本発明の根底にある概念は、図面に示された実施形態に関してより詳細に後述される。しかしながら、本発明は、示される正確な構成及び手段に限定されないことが理解されるべきである。ここで、
【0107】
図1】光学コアワイヤの様々な設計の概略断面図である。
図2】溶融金属浴の温度を測定するための例示的なシステムの概略図である。
図3】本発明による光学コアワイヤの前端の位置対時間のグラフである。
図4】本発明の方法の異なる工程における代表的な容器内の前端の位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0108】
図1は、本発明の例示的な実施形態による光学コアワイヤの様々な設計の概略断面図である。図1Aは、金属管3’によって取り囲まれた光ファイバ2’を含む光学コアワイヤ1’を示す。
【0109】
図1Bは、金属管3’’によって取り囲まれた光ファイバ2’’を含む光学コアワイヤ1’’を示す。第2の金属管4’’が、金属管3’’を更に取り囲んでいる。2つの金属管5”の間の空隙は固体材料で充填されていない。すなわち、空隙はガス又はガス混合物を含んでもよい。
【0110】
図1Cは、金属管3’’’及び第2の金属管4’’’によって取り囲まれた光ファイバ2’’’を含む光学コアワイヤ1’’’を示す。2つの金属管5’’’の間の空隙は、充填材料、例えば有機材料又はEガラスからのファイバで充填されている。
【0111】
図2は、溶融金属浴7の温度値を決定するための例示的なシステム6の概略図である。
【0112】
システム6は、コイル8上に少なくとも部分的に設置されて、測定を行うためにコイル8から少なくとも部分的に巻き出される光学コアワイヤ1を備える。光学コアワイヤ9の一端は、検出器10に接続されており、検出器10は、装置6で取得されたデータを処理するためにコンピュータシステム(図示せず)に接続されることができる。溶融金属浴7は、電気アーク炉、取鍋、タンディッシュ、又は溶融金属処理の当業者に知られている任意の容器であってよい容器11内に収容されている。光学コアワイヤ1は、フィーダ12によってガイド管13を通して、入り口14を有する容器11内に送られる。図示の構成は一例として使用されており、それぞれの入り口を有する屋根は、本発明を実現するための前提条件ではない。
【0113】
図示の構成は、前端15が溶融金属浴MBSの表面の下方に浸漬された状態の光学コアワイヤ1の例示的な測定位置を示している。本実施形態では、溶融金属浴MBSの表面に対する光学コアワイヤ1の浸漬角度は90°である。しかしながら、この角度は、冶金設備の構造の詳細に応じて可変である。
【0114】
コイルから容器14の入り口まで延在する光学コアワイヤ1の一部の温度は低いと考えることができ、例えば、室温から100℃までの範囲の温度であり得る。入り口14を溶融金属浴7の方向に通過すると、最初に最高1700℃又はそれ以上の高温雰囲気に遭遇し、次にスラグ層17に遭遇し、次に溶融金属浴7に遭遇する。スラグ層17は、液体、主に液体又は泡状であってもよい。容器への入り口14には、ガイド管13内への金属及びスラグの侵入を防止するために吹き込みランス18を設けることができる。
【0115】
様々な状況下で本発明の方法を実施するために、容器及びその中に含まれる溶融金属の設計の少なくとも基本的な知識を有することが有利であり得る。溶融金属浴MBSの表面の最適レベルは、各冶金容器について、その設計及び動作モードによっておおよそ知ることができる。実際には、実際の表面レベルは、容器の浸食又は過剰なスカル又は耐火物の堆積及び/又は傾斜操作による容器壁の輪郭の変化のために、固定値ではない。溶融金属浴MBSの表面のレベルを測定するための多くの方法が知られている。例えば、既知の基準点を有する浴表面の上方の位置から測定バーを浸漬し、溶融金属の表面まで燃焼させてもよい。残りのバーと基準点との間の距離によって、溶融金属MBSの表面のレベルを計算することが可能である。適切なプローブを用いた導電率測定によって表面MBSの位置を測定してもよい。これは、その場で行うこともでき、これは、光学コアワイヤの導電性部分が導電率プローブとして機能することを意味する。このような測定は当技術分野で知られており、本発明の実施を制限するものではない。
【0116】
温度値を決定するために、光学コアワイヤ1は、その前端が浸漬端15にある状態で、溶融金属浴7に向かって必要な浸漬深さまで送られる。適切な送りシステム12は、光学コアワイヤ1の送り速度を正確に制御する。
【0117】
測定シーケンスの後、溶融金属浴に浸漬された光学コアワイヤの部分19は溶融され、したがって、消耗される。この部分の長さはLCで示されている。
【0118】
温度が測定された後、高温雰囲気内に位置し、スラグ層を通って延びている光学コアワイヤの部分20は、コイル8の方向に送り戻され、次の測定のために再使用されてもよい。
【0119】
図3及び図4は、本発明の方法をより詳細に示す。特に、図3は、例示的な送り方式中の前端の動きを示す。x軸は時間を示し、y軸は前端の位置を示す。溶融金属浴MBSの表面の位置並びに異なる時間の長さの間の送り速度もまた、説明のために示されている。明確にするために、加速及び減速は無視される。光学コアワイヤの融解及び失透挙動は、環境からの熱伝達量に依存し、これは、前端が送られる速度に直接関連する。
【0120】
最初の工程では、光学コアワイヤの前端を位置p1に位置決めする。続いて、光学コアワイヤを、高速(v1)で溶融金属浴に向かって、好ましい実施形態によれば溶融金属浴内に送り、前端を特定の浸漬深さi1(位置p2)に浸漬する。試験は、i1がセンチメートル単位の範囲内にあることが好ましいことを示している。
【0121】
次の工程では、送り速度をv2まで低下させる。この第2の送りの時間の長さは、溶融金属浴に浸漬された光学コアワイヤの外側金属管が融解しないように選択することができる。
【0122】
その後、送給速度を速度v3まで上昇させ、光学コアワイヤの前端を溶融金属浴p4の最も深い位置である浸漬深さi3まで送る。v3はv2よりも高いので、溶融金属浴の均質な状態を保証するのに十分な浸漬深さまで前端が到達することができる。
【0123】
最も深い位置p4に到達した後、送りを、好ましくは、概略図に示すように一時停止させ、すなわち、静止段階とする。あるいは、特定の状況下では、低速の送りが有利であり得る。明確化の目的で、融解及び分解プロセス、並びに新たに現れる前端の結果として生じる動きは、図3には示されていない。
【0124】
温度測定値は、図にも示されている測定時間中に取得される。図示の好ましい実施形態では、この時間は、光学コアワイヤがv3で送られる第3の時間及び静止段階と時間的に重なる。より早い送り段階で取得された温度値は、溶融金属浴のバルク温度を表さないことが多い。更に、損傷した前端によって取得されたデータを防止することができる。
【0125】
最後に、光学コアワイヤを速度v5で溶融金属浴から後退させて、表面の上方の位置に戻す。
【0126】
図4は、本発明による方法の例示的な実施形態の異なる工程における代表的な容器11内の光学コアワイヤ1及びその前端15の、溶融金属浴7、その表面MBS、及びスラグ層17に対する位置を示す。
【0127】
測定シーケンスの開始前に、光学コアワイヤの前端は、冶金容器、すなわち溶融金属浴を収容している容器内の高温環境の外側に配置されてもよい。特に、前の測定が行われた場合には、前端15を含む浸漬端の一部が既に損傷している可能性がある。そのような場合には、光学コアワイヤのこの部分を信頼性の高い測定に使用できないことが観察されている。熱需要ゾーンにおける前の測定シーケンス中の滞留時間が長いほど、より多くの損傷が観察され得る。本発明による方法を適用することにより、この損傷が最小限に抑えられる。
【0128】
図4Aは、位置p1における光学コアワイヤ1の前端15を示す。これは、冶金容器の内側であってもよく、入り口、すなわち、光学コアワイヤが容器に入る点の近くに近接していてもよい。
【0129】
好ましい実施形態によれば、光学コアワイヤは、続いて溶融金属浴7内に送られて、図4Bに示す位置p2に対応する特定の浸漬深さi1に前端を浸漬する。その結果、光学コアワイヤ15の前端はこの時点から溶融金属浴7に接触することができる。冶金設備の条件に応じて、浴レベルが安定していると考えられる場合、第1の浸漬深さi1を減少させてもよい。浴レベルが不安定な場合には、この深さを増加させてもよい。浴レベルの安定性は、様々な状況に依存し、操作者の選択によって、又はスクラップ品質などの外部の影響によって影響され得る。
【0130】
次の送り段階の後、前端は、図4Cに示す位置p2に到達する。この段階の間に、損傷を受けた可能性のある部分は、溶融金属の環境内で予熱され得る。光学コアワイヤ1の損傷を受けていない部分は、溶融金属浴の表面の上方の熱需要の少ないゾーンに留まってもよく、光ファイバはその外被によって熱的に保護されてもよい。
【0131】
その後、光学コアワイヤの前端は、図4Dに示す構成に対応する、浸漬深さi3の溶融金属浴内の最も深い位置p4に送られる。第2の送り段階中の予熱により、外側金属管は、この第3の送り中に融解し始め、その結果、光学コアワイヤの損傷を受けていない部分から新しい前端15*が構築されてもよい。この段階の間、送り速度v3が前の送り速度v2よりも大きいので、溶融金属浴の均質な状態を保証するのに十分な浸漬深さまで前端15が到達することができる。液体金属浴中の位置p4における最も深い浸漬深さi3は、浴中の温度勾配長さよりも大きく選択されるべきであり、また典型的なスラグ層厚さよりも大きいことが好ましい。これに従う場合、光学コアワイヤ15*の新たに形成された前端は、限られた時間だけスラグ層17の熱に曝露される。
【0132】
図4Eは、第4の時間の長さの静止段階又はほぼ静止段階、すなわち、前端が能動的に動かされないか、又は低速で送られる段階の後の新たに形成された前端15*の位置を示す。好ましくは、光学コアワイヤは、溶融金属浴の表面まで消耗されている。光学コアワイヤの浸漬部分が溶融金属浴の表面まで完全に消耗されるのに必要な時間は、溶融金属の温度及び光学コアワイヤの特性に依存する。溶融金属浴の温度が高いほど光学コアワイヤの消耗が速くなると予想されるので、この静止段階又はほぼ静止段階の時間の長さは、溶融金属浴の予想温度、すなわち測定シーケンスの前に想定される温度又は測定シーケンスの初期段階で測定される温度が高いほど短くてもよい。上述の融解又は消耗挙動に影響を及ぼす光学コアワイヤの特性は、その設計及びそれを構成する材料を含む。例えば、より厚い壁厚を有する金属管は、より薄い壁厚を有する同じ材料の金属管よりも遅く融解する。選択された材料はまた、正確な融解挙動を決定し、特に融点は定義パラメータである。更に、設計と選択された材料との組み合わせの結果である線密度は、消費挙動に影響を及ぼす可能性がある。所与の理由から、送り方式のパラメータが、使用される光学コアワイヤの特性に合わせて調整されることが有利であり得る。
【0133】
最後に、光学コアワイヤを溶融金属浴から後退させて、前端15*が表面の上方にある位置に戻す(図4F)。
【0134】
上記の説明から明らかなように、溶融金属浴に浸漬された光学コアワイヤの一部は、本発明による測定シーケンス中に消耗される。溶融金属を収容している容器内の環境に曝露された光学コアワイヤの部分は、損傷を受けている可能性があり、その後の測定には適さなくなる。
【0135】
以下では、本発明による例示的な条件が与えられる。
【実施例0136】
芯径50μmのグレーデッドインデックスファイバと、外径6mm及び壁厚0,3mmのステンレス鋼管に埋め込まれた外径1,3mmのステンレス鋼管とを含む、線密度46g/mの光学コアワイヤが、図2による構成の電気アーク炉に設置された送りシステムで使用される。
【0137】
電気アーク炉システムの特定の積算電力消費の後に、又は手動入力によって、光学コアワイヤの前端を溶融金属浴の表面の上方120cmに配置する。最初の送りを速度3m/sで0,45秒間にわたって開始する。続いて、送りを速度0,2m/sに減速する。溶融金属浴の予想温度が1600℃の場合、この送りは0,4秒間行われる。この低速の送りの終わりに、光学コアワイヤの損傷部分は融解状態に近いが、スラグ層に配置されたコアワイヤの長さは予熱された状態にある。第3段階では、送り速度を再び2,3m/sに上昇させ、前端を溶融金属浴の表面の0,5m下方に位置決めする。この最も深い浸漬深さに到達した後、送りを0,15秒間一次停止させる。温度を測定するために必要なデータの測定値は、第3の高速の送り及び静止段階の間に取得される。温度を表す複数のデータ点が検出器によって取得される。他の測定間隔及び時間の長さも可能であるが、十分かつ最も正確な温度検出値はこの間隔内で取得することができる。
【0138】
最後に、光学コアワイヤを速度3m/sで後退させて、新たに構築された前端を溶融金属浴の表面の上方に位置決めする。光学コアワイヤの全長に対して、前端の位置は、検出器に接続された端部の方向に、測定方式中に消耗された長さだけ、説明した例では0,5mだけ移動している。必要であれば、この測定シーケンスを繰り返すことができる。
【符号の説明】
【0139】
1、1‘、1‘‘、1‘‘‘ 光学コアワイヤ
2、2‘、2‘‘、2‘‘‘ 光ファイバ
3‘、3‘‘、3‘‘‘ 金属管
4‘‘、4‘‘‘ 第2金属管
5‘‘、5‘‘‘ 金属管間の空隙
6 システム
7 溶融金属浴
8 コイル
9 反対端(検出器に接続されたコアワイヤの端)
10 検出器
11 容器;冶金容器
12 フィーダ
13 ガイド管
14 入り口
15、15* 光学コアワイヤの前端
MBS 溶融金属浴の表面
17 スラグ層
18 吹き込みランス
19 溶融金属浴に浸漬されたコアワイヤの部分
20 高温雰囲気及びスラグにさらされたコアワイヤの部分
p1-p5 測定シーケンス中の前端の位置
v1-v5 測定シーケンス中の前端の速度
i1-i4 測定シーケンス中の前端の浸漬深さ
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学コアワイヤと検出器とを備える装置を用いて溶融金属浴の温度値を決定するための方法であって、
(a)前端が前記溶融金属浴の表面の上方の位置p1にある前記光学コアワイヤを提供する工程と、
(b)前記溶融金属浴に向けられた前記前端を、t1からt2までの第1の時間にわたって、位置p1から前記溶融金属浴の前記表面の下方の浸漬深さi1の位置p2に速度v1で送る工程と、
(c)前記前端を、t2からt3までの第2の時間にわたって、前記溶融金属浴の前記表面の下方の浸漬深さi2の位置p3に速度v2で送る工程と、
(d)前記前端を、t3からt4までの第3の時間にわたって、前記溶融金属浴の前記表面の下方の浸漬深さi3の位置p4まで速度v3で送る工程と、
(e)それぞれt4からt5までの第4の時間にわたって、前記前端の前記送りを一次停止させるか、又は前記前端を速度v4で送る工程と、
(f)t5の後に、前記前端を前記溶融金属浴の前記表面の上方の位置まで速度v5で後退させる工程と、
(g)t2からt5までの測定時間内に前記溶融金属浴の温度情報を取得する工程と、
を含み、
前記浸漬深さ及び前記速度は、以下の関係:
(i)i2>i1
(ii)i3>i2
(iii)v1>v2
(iv)v2<v3及び
(v)v4<v1又はv2又はv3
を有する、
方法。
【外国語明細書】