(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042613
(43)【公開日】2025-03-27
(54)【発明の名称】電気ブラシモジュール及びX線CT装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20250319BHJP
【FI】
A61B6/03 521A
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024158311
(22)【出願日】2024-09-12
(31)【優先権主張番号】202311189084.3
(32)【優先日】2023-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】タン ゴンティン
(72)【発明者】
【氏名】イェン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】スン チ
(72)【発明者】
【氏名】ウェン ズファ
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA41
4C093EC44
(57)【要約】
【課題】摩耗粉を効率的に回収すること。
【解決手段】本実施形態に係る電気ブラシモジュールは、スリップリング及び架台固定部を有するX線CT装置に用いられ、電気ブラシホルダーと、電気ブラシと、摩耗粉収集機構とを備える。前記電気ブラシホルダーは、前記架台固定部に設けられ、開口部が形成された円弧形状であり、板状である。前記電気ブラシは、前記電気ブラシホルダーに取り付けられ、前記スリップリングと接触することで電力または信号の伝送を行う。前記摩耗粉収集機構は、前記電気ブラシ及び前記電気ブラシホルダーと略密閉の空間を形成するように、前記電気ブラシホルダーに取り付けられる。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリップリング及び架台固定部を有するX線CT装置に用いられる電気ブラシモジュールであって、
前記架台固定部に設けられ、開口部が形成された円弧形状であり、板状の電気ブラシホルダーと、
前記電気ブラシホルダーに取り付けられ、前記スリップリングと接触することで電力または信号の伝送を行う電気ブラシと、
前記電気ブラシ及び前記電気ブラシホルダーと略密閉の空間を形成するように、前記電気ブラシホルダーに取り付けられた摩耗粉収集機構と、
を備える電気ブラシモジュール。
【請求項2】
前記摩耗粉収集機構は、
前記電気ブラシホルダーの径方向外側において、前記電気ブラシホルダーにおける前記電気ブラシが取り付けられる一方側の表面であって且つ前記電気ブラシと前記スリップリングとの接触部の付近に取り付けられた集塵機構と、
前記電気ブラシホルダーにおける前記開口部の円周方向に沿った端部に取り付けられた風路仕切りと、
前記電気ブラシホルダーにおける前記電気ブラシが取り付けられる一方側の反対側の表面において、径方向外側から前記スリップリングに近づくように、前記電気ブラシホルダーにおける径方向外側の部分に取り付けられた密封板と、
前記風路仕切りを介在させて前記密封板に対向するように、前記電気ブラシホルダーにおける径方向内側の部分に取り付けられた摩耗粉仕切りと、
を備える請求項1に記載の電気ブラシモジュール。
【請求項3】
前記集塵機構は、
一面が前記電気ブラシホルダーに取り付けられ、内部には前記電気ブラシホルダーに取り付けられた一面に対向した面側に向かって開口したチャンバーが形成されており、前記電気ブラシホルダーに取り付けられた状態で前記径方向内側に位置した表面に摩耗粉を吸い込むための粉入口が形成されており、前記電気ブラシホルダーに取り付けられた状態で前記径方向外側に位置した表面に開口が形成されているケージングと、
前記ケージングの前記チャンバーに着脱可能に取り付けられた吸着綿と、
前記開口に連通するように前記ケージングに取り付けられた吸気機構と、
を備える請求項2に記載の電気ブラシモジュール。
【請求項4】
前記風路仕切りは、L字状の断面に形成され、前記電気ブラシと前記スリップリングとの接触部の径方向内側の部分よりも径方向内側に寄る部分から前記電気ブラシと前記スリップリングとの接触部の径方向外側の部位よりも径方向外側に寄る部分まで、径方向に沿って伸びており、
前記風路仕切りの径方向外側の端部は、前記粉入口の円周方向外側の端部に近づき、
前記風路仕切りは、前記電気ブラシホルダーの表面から、前記電気ブラシホルダーの板面方向に垂直した方向に沿って、前記電気ブラシが取り付けられた方向に伸びている
請求項3に記載の電気ブラシモジュール。
【請求項5】
前記密封板の板面は、円弧度が前記電気ブラシホルダーと同一の円弧に沿って伸びており、
前記密封板の円弧長さは、径が同じ箇所で前記電気ブラシホルダーの円弧長さよりも大きく、
前記密封板は、前記電気ブラシホルダーの前記開口部よりも径方向外側に寄る位置に取り付けられている
請求項2に記載の電気ブラシモジュール。
【請求項6】
前記密封板の径方向の断面は、逆L字状であり、
前記密封板において、円弧内側に向かってフィンシートが形成されており、
前記密封板には、前記集塵機構を収容するための切り欠きが形成されている
請求項2に記載の電気ブラシモジュール。
【請求項7】
前記摩耗粉仕切りの板面は、円弧度が前記電気ブラシホルダーと同一の円弧に沿って伸びており、
前記摩耗粉仕切りの円弧長さは、径が同じ箇所で前記電気ブラシホルダーの円弧長さと同一であり、
前記摩耗粉仕切りは、前記電気ブラシホルダーの前記開口部よりも径方向内側に寄る位置に取り付けられている
請求項2に記載の電気ブラシモジュール。
【請求項8】
前記摩耗粉仕切りの径方向の断面は、逆L字状であり、
前記摩耗粉仕切りにおいて、円弧外側に向かってフィンシートが形成されている
請求項2に記載の電気ブラシモジュール。
【請求項9】
前記摩耗粉仕切りは、前記電気ブラシホルダーの板面方向に垂直な方向において、前記スリップリングに近づくように設けられており、
前記摩耗粉仕切りは、前記電気ブラシホルダーの表面に垂直な方向において、前記スリップリングと5mm以上離れている
請求項2に記載の電気ブラシモジュール。
【請求項10】
前記吸気機構は、軸流ファン、遠心ファン、ブレードレスファンのいずれか1つのファンである
請求項3に記載の電気ブラシモジュール。
【請求項11】
排気口が露出するように前記吸気機構を囲んで前記ケージングに設けられた防音機構、
をさらに備える請求項3に記載の電気ブラシモジュール。
【請求項12】
前記防音機構は、隣り合う2つの面が開口した六面体に形成されている
請求項11に記載の電気ブラシモジュール。
【請求項13】
前記吸気機構の排気口を遮蔽するように、前記ケージングと前記吸気機構との間のセパレータから、前記吸気機構の排気口が位置した方向に向かって伸びている摩耗粉遮蔽シールド、
をさらに備える請求項3に記載の電気ブラシモジュール。
【請求項14】
架台固定部と、
スリップリングと、
請求項1に記載の電気ブラシモジュールと、
を備えるX線CT装置。
【請求項15】
前記スリップリングに沿って、前記スリップリングの前記電気ブラシモジュールと重ねて設けられた部分以外の部分に設けられており、前記スリップリングを略密封するように当該スリップリングを囲んだスリップリング密封機構、
をさらに備える請求項14に記載のX線CT装置。
【請求項16】
前記スリップリング密封機構は、
前記スリップリングの径方向外側及び前記スリップリングの前記架台固定部に対向した一方側の反対側を囲むように前記架台固定部に取り付けられたスリップリングシェルと、
前記スリップリングの径方向内側を覆うように前記スリップリングシェルに取り付けられたスリップリングシェル密封板と、
を備える請求項15に記載のX線CT装置。
【請求項17】
前記スリップリング密封機構は、
前記スリップリングと前記架台固定部との間で前記架台固定部に取り付けられた密閉固定板、
をさらに備え、
前記スリップリングシェルは、前記スリップリングの径方向外側及び前記スリップリングの前記架台固定部に対向した一方側の反対側を囲むように前記密閉固定板に取り付けられる
請求項16に記載のX線CT装置。
【請求項18】
前記密閉固定板は、少なくとも一部が前記架台固定部と隙間を空けるように前記架台固定部に取り付けられている
請求項17に記載のX線CT装置。
【請求項19】
前記密閉固定板の少なくとも一部と前記架台固定部との間、及び、前記密閉固定板の別の少なくとも一部と前記スリップリングシェルとの間には、密封ガスケットが挟んで設けられている
請求項17に記載のX線CT装置。
【請求項20】
前記密封ガスケットは、弾性的変形が可能な材料からなり、圧縮されて弾性的に変形するように挟んで設けられている
請求項19に記載のX線CT装置。
【請求項21】
円周方向に垂直な断面でみると、前記スリップリングシェルが逆L字状である
請求項16に記載のX線CT装置。
【請求項22】
円周方向に垂直な断面でみると、前記スリップリングシェル密封板と前記スリップリングシェルとが、U字状に一体形成されている
請求項16に記載のX線CT装置。
【請求項23】
前記スリップリングシェル密封板と前記スリップリングの前記架台固定部に対向した一方側の表面の径方向内側の周縁との距離が、5mm以上である
請求項16に記載のX線CT装置。
【請求項24】
前記密閉固定板の少なくとも一部と前記架台固定部との前記隙間が、5mm以上である
請求項18に記載のX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、電気ブラシモジュール及びX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、医療機器において、回転すると共に電力及び信号の伝送を行う通信システムが用いられている。このような通信システムにおいて、スリップリング及び電気ブラシが重要である。スリップリングと電気ブラシは、連続回転すると共に固定部から回転部に電力及び信号を伝送可能な電気機械システムに利用される。スリップリングと電気ブラシを利用して電力及び信号を伝送するとき、電気ブラシのブラシヘッドがスリップリングと摩擦し、摩耗粉を発生させることがある。
【0003】
摩耗粉が発生した場合、摩耗粉により不良を引き起こす可能性がある。例えば、摩耗粉が架台内部の基板に飛び散った場合、電気回路などのショート(短絡)が発生する可能性がある。また、例えば、スリップリングと電気ブラシとを有する通信システムが、X線コンピュータ断層撮影(CT:Computed Tomography)装置に適用される場合、摩耗粉が架台内部に飛び散った際、撮影の品質に影響が出てしまう可能性がある。さらに、摩耗粉が架台の外側に飛び散った際、飛び散った摩耗粉が患者に当たってしまう可能性がある上に、架台を汚してしまう可能性がある。
【0004】
そのため、スリップリングと電気ブラシとを有する通信システムについて、既存の技術として、電気ブラシの摩耗粉を収集する技術が開発されている。
【0005】
例えば、既存のスリップリングと電気ブラシとを有する通信システムでは、スリップリングシェルの下に収集溝が設けられ、且つ、収集溝にメンテナンス窓が設けられている。これにより、スリップリングと電気ブラシとが作用する時に発生した摩耗粉が、スリップリングシェルの下に設けられた収集溝に自由落下し、操作者がメンテナンス窓により定期的に清掃することができる。
【0006】
しかし、既存のスリップリングと電気ブラシを有する通信システムでは、架台の回転重力により摩耗粉をスリップリングの底部の収集ボックスに落とし、収集及びメンテナンスを行うものに過ぎない。既存の技術では、摩耗粉を収集できるとはいえ、摩耗粉は分散性を有し、摩耗粉の発生源で飛び散る。このため、既存の技術では、収集効果が劣っている。そのため、摩耗粉を簡単に且つ効率的に回収できる技術が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、摩耗粉を効率的に回収することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係る電気ブラシモジュールは、スリップリング及び架台固定部を有するX線CT装置に用いられ、電気ブラシホルダーと、電気ブラシと、摩耗粉収集機構とを備える。前記電気ブラシホルダーは、前記架台固定部に設けられ、開口部が形成された円弧形状であり、板状である。前記電気ブラシは、前記電気ブラシホルダーに取り付けられ、前記スリップリングと接触することで電力または信号の伝送を行う。前記摩耗粉収集機構は、前記電気ブラシ及び前記電気ブラシホルダーと略密閉の空間を形成するように、前記電気ブラシホルダーに取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、第1の実施形態に係る電気ブラシモジュール及びX線CT装置の構造の概略図である。
【
図2A】
図2Aは、第1の実施形態に係るスリップリング及び電気ブラシモジュールを説明するための概略立体図である。
【
図2B】
図2Bは、第1の実施形態に係る電気ブラシモジュールを説明するための、観察角度が
図2Aと異なった拡大後の分解立体図である。
【
図3A】
図3Aは、第1の実施形態に係る電気ブラシモジュールを説明するための立体図である。
【
図3B】
図3Bは、第1の実施形態に係る電気ブラシモジュールを説明するための分解立体図である。
【
図3C】
図3Cは、第1の実施形態に係る電気ブラシモジュールを説明するための、観察角度が
図3Bと異なった分解立体図である。
【
図4A】
図4Aは、第1の実施形態に係る電気ブラシモジュールの集塵機構を説明するための分解立体図である。
【
図4B】
図4Bは、第1の実施形態に係る電気ブラシモジュールの集塵機構を説明するための、観察角度が
図4Aと異なった分解立体図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る電気ブラシモジュールの集塵機構を説明するための立体図である。
【
図6A】
図6Aは、第2の実施形態に係る電気ブラシモジュールの集塵機構を説明するための分解立体図である。
【
図6B】
図6Bは、第2の実施形態に係る電気ブラシモジュールの集塵機構を説明するための、観察角度が
図6Aと異なった分解立体図である。
【
図7】
図7は、第3の実施形態に係るX線CT装置のスリップリング密封機構を説明するための概略図である。
【
図8A】
図8Aは、第3の実施形態に係るX線CT装置のスリップリング密封機構を説明するための、円周方向に垂直な断面に沿って切った後に観察した立体図である。
【
図8B】
図8Bは、第3の実施形態に係るX線CT装置のスリップリング密封機構を説明するための、円周方向に垂直な断面に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る電気ブラシモジュール及びX線CT装置について説明する。
【0012】
まず、本実施形態に係る電気ブラシモジュールが適用されるX線CT装置について説明する。
【0013】
図1Aは、本実施形態に係るX線CT装置1000の構成の一例を示す図である。
【0014】
X線CT装置1000は、被検体のCT画像データを収集する。具体的には、X線CT装置1000は、被検体を略中心にX線管及びX線検出器を旋回移動させ、被検体を透過したX線を検出して投影データを収集する。そして、X線CT装置1000は、収集した投影データに基づいて、CT画像データを生成する。
図1Aに示すように、X線CT装置1000は、架台装置1010と、寝台装置1030と、コンソール装置1040とを有する。
【0015】
なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム1013の回転軸又は寝台装置1030の天板1033の長手方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とする。なお、
図1Aは、説明のために架台装置1010を複数方向から描画したものであり、X線CT装置1000が架台装置1010を1つ有する場合を示す。
【0016】
架台装置1010は、X線管1011と、X線検出器1012と、回転フレーム1013と、X線高電圧装置1014と、制御装置1015と、ウェッジ1016と、コリメータ1017と、データ収集システム(Data Acquisition System:DAS)1018と、固定フレーム1019とを有する。
【0017】
X線管1011は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管1011は、X線高電圧装置1014からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することで、被検体Pに対し照射するX線を発生する。例えば、X線管1011には、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0018】
ウェッジ1016は、X線管1011から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ1016は、X線管1011から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管1011から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ1016は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工したフィルタである。
【0019】
コリメータ1017は、ウェッジ1016を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ1017は、X線絞りと呼ばれる場合もある。また、
図1Aにおいては、X線管1011とコリメータ1017との間にウェッジ1016が配置される場合を示すが、X線管1011とウェッジ1016との間にコリメータ1017が配置される場合であってもよい。この場合、ウェッジ1016は、X線管1011から照射され、コリメータ1017により照射範囲が制限されたX線を透過して減衰させる。
【0020】
X線検出器1012は、X線を検出する検出素子を複数有する。X線検出器1012における各検出素子は、X線管1011から照射されて被検体Pを通過したX線を検出し、検出したX線量に対応した信号をDAS1018へと出力する。X線検出器1012は、例えば、X線管1011の焦点を中心とした1つの円弧に沿ってチャンネル方向(チャネル方向)に複数の検出素子が配列された複数の検出素子列を有する。X線検出器1012は、例えば、チャンネル方向に複数の検出素子が配列された検出素子列が列方向(スライス方向、row方向)に複数配列された構造を有する。
【0021】
例えば、X線検出器1012は、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、フォトダイオード等の光センサを有する。なお、X線検出器1012は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0022】
X線高電圧装置1014は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管1011に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管1011が発生するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。なお、X線高電圧装置1014は、回転フレーム1013に設けられてもよいし、固定フレーム1019に設けられても構わない。ここで、固定フレーム1019は、回転フレーム1013を回転可能に支持するフレームであり、回転フレーム1013を回転させるための回転機構を有する。
【0023】
DAS1018は、X線検出器1012が有する各検出素子によって検出されるX線の信号を収集する。例えば、DAS1018は、各検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS1018は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0024】
回転フレーム1013は、X線管1011とX線検出器1012とを対向支持し、制御装置1015によってX線管1011とX線検出器1012とを回転させる円環状のフレームである。例えば、回転フレーム1013は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム1013は、X線管1011及びX線検出器1012に加えて、X線高電圧装置1014やウェッジ1016、コリメータ1017、DAS1018等を支持することもできる。さらに、回転フレーム1013は、
図1Aにおいて図示しない種々の構成を支持することもできる。
【0025】
制御装置1015は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置1015は、入力インターフェース1043からの入力信号を受けて、架台装置1010及び寝台装置1030の動作制御を行う。例えば、制御装置1015は、回転フレーム1013の回転や架台装置1010のチルト、寝台装置1030及び天板1033の動作等について制御を行う。一例を挙げると、制御装置1015は、架台装置1010をチルトさせる制御として、入力された傾斜角度(チルト角度)情報により、X軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム1013を回転させる。なお、制御装置1015は架台装置1010に設けられてもよいし、コンソール装置1040に設けられてもよい。
【0026】
寝台装置1030は、撮影対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台1031と、寝台駆動装置1032と、天板1033と、支持フレーム1034とを有する。基台1031は、支持フレーム1034を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置1032は、被検体Pが載置された天板1033を、天板1033の長軸方向に移動する駆動機構であり、モータ及びアクチュエータ等を含む。支持フレーム1034の上面に設けられた天板1033は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置1032は、天板1033に加え、支持フレーム1034を天板1033の長軸方向に移動してもよい。
【0027】
コンソール装置1040は、メモリ1041と、ディスプレイ1042と、入力インターフェース1043と、処理回路1044とを有する。なお、コンソール装置1040は架台装置1010とは別体として説明するが、架台装置1010にコンソール装置1040又はコンソール装置1040の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0028】
メモリ1041は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ1041は、例えば、投影データやCT画像データを記憶する。また、例えば、メモリ1041は、X線CT装置1000に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。なお、メモリ1041は、X線CT装置1000とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0029】
ディスプレイ1042は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ1042は、処理回路1044によって生成された各種の画像を表示したり、操作者から各種の操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。例えば、ディスプレイ1042は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。なお、ディスプレイ1042は、架台装置1010に設けられてもよい。また、ディスプレイ1042は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置1040本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0030】
入力インターフェース1043は、操作者から各種の入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路1044に出力する。例えば、入力インターフェース1043は、CT画像データを再構成する際の再構成条件や、CT画像データから後処理画像を生成する際の画像処理条件等の入力操作を操作者から受け付ける。例えば、入力インターフェース1043は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース1043は、架台装置1010に設けられてもよい。また、入力インターフェース1043は、コンソール装置1040本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース1043は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、コンソール装置1040とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、当該電気信号を処理回路1044へ出力する処理回路も入力インターフェース1043の例に含まれる。
【0031】
処理回路1044は、X線CT装置1000全体の動作を制御する。例えば、処理回路1044は、システム制御機能1440、スキャン制御機能1441、前処理機能1442、再構成処理機能1443、及び、表示制御機能1444を実行する。
【0032】
システム制御機能1440は、入力インターフェース1043を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路1044の各種機能を制御する。
【0033】
スキャン制御機能1441は、当該被検体Pに対してX線を利用したスキャンを実行する。例えば、スキャン制御機能1441は、入力インターフェース1043を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、スキャンを制御する。具体的には、スキャン制御機能1441は、入力操作に基づいて、X線高電圧装置1014に制御信号を送信することで、高電圧発生装置からの出力電圧を制御する。また、スキャン制御機能1441は、DAS1018に制御信号を送信することで、DAS1018によるデータ収集を制御する。
【0034】
前処理機能1442は、DAS1018から送信されたX線検出データに対して前処理を行うことで、前処理を施したデータを生成する。具体的には、前処理機能1442は、対数変換処理や、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の補正処理を行うことで、前処理を施したデータを生成する。なお、前処理前のデータ(X線検出データ)及び前処理後のデータを総称して、投影データと称する場合もある。
【0035】
再構成処理機能1443は、前処理機能1442により生成された投影データを種々の再構成法(例えば、FBP(Filtered Back Projection)などの逆投影法や、逐次近似法など)によって再構成することでCT画像データを生成する。また、再構成処理機能1443は、生成したCT画像データをメモリ1041に格納する。
【0036】
表示制御機能1444は、処理回路1044によって生成された各種の画像をディスプレイ1042に表示させる。例えば、表示制御機能1444は、再構成処理機能1443によって生成されたCT画像データをディスプレイ1042に表示させる。
【0037】
図1Aに示すX線CT装置1000においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ1041へ記憶されている。処理回路1044は、メモリ1041からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路1044は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0038】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)等の回路を意味する。また、「プロセッサ」という文言は、プログラマブル論理デバイス等の回路を意味する。プログラマブル論理デバイスとして、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)が挙げられる。また、プログラマブル論理デバイスとして、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))が挙げられる。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサはメモリ1041に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、メモリ1041にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムが直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1Aにおける複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0039】
ここで、
図1Aに示すX線CT装置1000について説明した。以降、本発明の技術思想に関する部材について説明するが、それ以外の部材については説明を省略する。また、同一のまたは類似した機能を有する部材について同一の記号を表記し、重複する説明については省略する。
【0040】
また、後述する
図1Bでは、円形になったスリップリング103の直径方向を径方向とし、スリップリング103から円心に近づく一方側を径方向内側とし、スリップリング103の円心から離れる一方側を径方向外側とし、スリップリング103の円周で描いた方向を円周方向とする。
【0041】
また、各図面は、説明の便宜上に示されたものであり、図面において示された状況が必ずしも現実において用いられた状態での状況とは限らない。且つ、表示の便宜上に、図中の各部材の表示比例が完全に同一のものではない。なお、各図間は、完全に対応付けて表示されるものではなく、便宜上、一部の部材の図示を省略する場合がある。
【0042】
(第1の実施形態)
図1B~
図4Bを参照しながら、第1の実施形態に係る電気ブラシモジュール104について説明する。
図1Bは、第1の実施形態に係る電気ブラシモジュール104及びX線CT装置1000の構造の概略図である。
【0043】
図1Bに示すように、第1の実施形態に係るX線CT装置1000は、回転部101と、固定部(架台固定部に相当)102と、スリップリング103と、固定部102に設けられた電気ブラシモジュール104とを備える。
【0044】
図1Bに示す回転部101は、
図1Aに示す回転フレーム1013に相当し、
図1Bに示す固定部102は、
図1Aに示す固定フレーム1019に相当する。固定部102は、上述のように、回転部101を支持し、固定部102には、電気ブラシモジュール104が取り付けられる。
【0045】
スリップリング103は、回転部101に設けられ、導電性の材質からなり、電気ブラシモジュール104と連携し、回転部101と固定部102との間で電力伝送及び信号伝送を行うためのものである。
【0046】
電気ブラシモジュール104は、固定部102に設けられ、導電性の材質からなる。X線CT装置1000が動作する時、電気ブラシモジュール104がスリップリング103と接触し、スリップリング103が回転すると共に、回転部101と固定部102との間で電力伝送及び信号伝送が行われる。
【0047】
以下、
図2A~
図4Bを参照しながら、第1の実施形態に係る電気ブラシモジュール104について説明する。
図2Aは、第1の実施形態に係るスリップリング及び電気ブラシモジュール104を説明するための概略立体図である。
図2Bは、第1の実施形態に係る電気ブラシモジュール104を説明するための、観察角度が
図2Aと異なった拡大後の分解立体図である。
図3Aは、第1の実施形態に係る電気ブラシモジュール104を説明するための立体図である。
図3Bは、第1の実施形態に係る電気ブラシモジュール104を説明するための分解立体図である。
図3Cは、第1の実施形態に係る電気ブラシモジュール104を説明するための、観察角度が
図3Bと異なった分解立体図である。
図4Aは、第1の実施形態に係る電気ブラシモジュール104の集塵機構30を説明するための分解立体図である。
図4Bは、第1の実施形態に係る電気ブラシモジュール104の集塵機構30を説明するための、観察角度が
図4Aと異なった分解立体図である。
【0048】
観察の便宜上に、
図2A及び
図2Bには、スリップリング103及び電気ブラシモジュール104のみについて示されており、
図3A~
図3Cには、電気ブラシモジュール104のみについて示されており、それ以外の部材に対する図示が省略されている。
【0049】
電気ブラシモジュール104は、スリップリング103及び架台固定部(固定部102)を有するX線CT装置1000に用いられる。電気ブラシモジュール104は、電気ブラシホルダー20と、電気ブラシ10と、摩耗粉収集機構100とを備える。電気ブラシ10は、電気ブラシホルダー20に取り付けられ、スリップリング103と接触することで電力または信号の伝送を行う。電気ブラシホルダー20は、固定部102に設けられ、電気ブラシホルダー20の形状は、開口部が形成された円弧形状であり、板状である。摩耗粉収集機構100は、電気ブラシ10及び電気ブラシホルダー20と略密閉の空間を形成するように、電気ブラシホルダー20に取り付けられる。ここで、摩耗粉収集機構100と電気ブラシ10及び電気ブラシホルダー20とにより「略密閉の空間」が形成されるとは、摩耗粉の略全てが回収できる程度に、摩耗粉収集機構100と電気ブラシ10及び電気ブラシホルダー20とによりスリップリング103が覆われていることを意味する。
【0050】
ここで、電気ブラシ10は、電気ブラシホルダー20の
図3Bにおける紙面の下側で、回転するスリップリング103と接触するように、例えば、ネジなどにより、
図3Bにおける紙面の上側から電気ブラシ10が電気ブラッシュホルダー20の開口部Lに取り付けられる。これにより、
図3Bにおける紙面の下側から見た場合、電気ブラシ10が開口部Lから露出している。電気ブラシ10がスリップリング103と接触し、スリップリング103の回転につれて摩擦し、これで発生した摩耗粉が、電気ブラシ10とスリップリング103との接触部から、スリップリング103の回転による空気の動きにつれて流れ、摩耗粉の流れを形成する。また、摩耗粉の流れを形成しておらず、電気ブラシ10とスリップリング103との接触部から各方向に向かって飛び散り回った摩耗粉も存在している。
【0051】
また、
図3A~
図3Cに示すように、電気ブラシホルダー20には、電気ブラシ10を取り付けるための開口部L及び下記の集塵機構30を取り付けるための切り欠きKが形成されている。
【0052】
図2A~
図3Cに示すように、摩耗粉収集機構100は、例えば、集塵機構30と、風路仕切り40と、密封板50と、摩耗粉仕切り60とを備える。
【0053】
集塵機構30は、集塵ボックスとも呼ばれ、電気ブラシホルダー20の径方向外側において、電気ブラシホルダー20における電気ブラシ10が取り付けられる一方側の表面に取り付けられている。集塵機構30は、電気ブラシホルダー20の切り欠きKに収容されている。また、集塵機構30は、電気ブラシ10とスリップリング103との接触部の付近に設けられ、すなわち、摩耗粉の発生源に近く設けられていることが好ましい。これにより、電気ブラシ10とスリップリング103との摩擦により、電気ブラシ10とスリップリング103との接触部で発生した摩耗粉は、摩耗粉の発生源付近で集塵機構30に収集することができる。また、集塵機構30の数が電気ブラシホルダー20において設けられた開口部Lの数と同一であり、集塵機構30が電気ブラシホルダー20において設けられた開口部Lとそれぞれ対応して設けられていることが好ましい。
【0054】
図4A及び
図4Bに示すように、集塵機構30は、ケージング301と、吸着綿302と、吸気機構303とを備える。
【0055】
図4Bに示すように、ケージング301は、電気ブラシホルダー20に取り付けられている。具体的には、ケージング301を構成する複数の面のうちの一面である面301aに電気ブラシホルダー20が取り付けられている。また、ケージング301の内部には、ケージング301の面301aに対向した面301b側に向かって開口したチャンバーが形成されている。
【0056】
また、
図4Bに示すように、ケージング301が電気ブラシホルダー20に取り付けられた状態でケージング301における径方向内側に位置した表面には、摩耗粉を吸い込むための粉入口304が形成されている。また、粉入口304の周りに、案内部304aが形成されている。
【0057】
また、
図4Aに示すように、ケージング301が電気ブラシホルダー20に取り付けられた状態でケージング301における径方向外側に位置した表面301dには、開口a1が形成されている。
【0058】
吸着綿302は、ケージング301のチャンバーに着脱可能に取り付けられている。当該吸着綿302は、例えば、スポンジなどの多孔質で且つ通気性のある材料からなり、摩耗粉が飛び散らないように、集塵機構30により収集された摩耗粉を確実に吸着するためのものである。
【0059】
吸気機構303は、ケージング301の表面301dに形成された開口a1に連通するようにケージング301に取り付けられている。吸気機構303がケージング301に取り付けられる方法としては、例えば、吸気機構303に形成されたネジ穴Hと、ケージング301の表面301dに形成されたネジ穴Hと、固定部材としてのネジDとにより、ケージング301の表面301dに取り付けられる。また、吸気機構303は、例えば、軸流ファン、遠心ファン、ブレードレスファンのいずれか1つのファンである。また、吸気機構303は、摩耗粉を吸着するように、ケージング301から吸気して負圧を発生させることさえできれば、上記ファンに限定されず、他の部材にしてもよい。
【0060】
また、集塵機構30は、複数の板部材c1~c4を備え、板部材c1~c4がそれぞれケージング301の対応した表面と略同一の大きさに形成されている。また、板部材c1~c4には、ケージング301の対応した表面において開いたネジ穴Hに対応するネジ穴Hがそれぞれ開いている。
【0061】
そのうち、板部材c1、c4は、例えば、ゴムなどの弾性的変形が可能な材質であり、密封の作用があり、摩耗粉の飛び出しを防止するためのものである。また、図面には、集塵機構30が板部材c1、c4を備えることが示されているが、板部材c1、c4は、必須ではなく、状況に応じて省略することができる。
【0062】
また、板部材c2は、金属材料からなり、吸着綿302を支持し固定させるためのものである。具体的には、板部材c2がケージング301の面301bと同一の大きさに形成されており、且つ、板部材c2には、ケージング301の面301bにおいて開いたネジ穴Hに1つずつ対応するように、ネジ穴Hが開いている。これにより、吸着綿302をケージング301のチャンバーに置いた後、ネジなどにより板部材c2をケージング301の面301bに固定させることで、吸着綿302をケージング301のチャンバーに確実に取り付けている。また、吸着綿302のメンテナンスと清掃が必要になった場合、板部材c2をケージング301の面301bに固定させたネジを緩め、ケージング301のチャンバーに置かれた吸着綿302を取り出し清掃することが可能である。
【0063】
また、板部材c1が設けられている場合、板部材c1には、板部材c2と同様に、ケージング301の面301bにおいて開いた穴に1つずつ対応するように、ネジ穴Hが開いている。この場合、吸着綿302をケージング301のチャンバーに置いた後、ネジなどにより板部材c1、c2をケージング301の面301bに共に固定させることで、密封の方式により吸着綿302をケージング301のチャンバーに確実に取り付けている。
【0064】
また、板部材c3は金属材料からなり、吸気機構303を支持し固定させるためのものである。具体的に、板部材c3がケージング301の表面301d(面301d)と同一の大きさに形成されており、且つ、板部材c3には、ケージング301の面301dにおいて開いたネジ穴H及び開口a1に1つずつ対応するように、ネジ穴H及び開口aが開いている。この場合、吸気機構303の吸気口とケージング301の面301dにおいて開いた開口a1とを連通させた状態で、ネジなどにより板部材c3をケージング301の面301dに固定させることで、吸気機構303をケージング301の面301dに確実に取り付けている。
【0065】
また、板部材c4が設けられている場合、板部材c4には、板部材c3と同様に、ケージング301の面301dにおいて開いたネジ穴Hに1つずつ対応するように、穴(ネジ穴にしてもよい)H及び開口aが開いている。この場合、吸気機構303の吸気口とケージング301の面301dにおいて開いた開口a1及び板部材c4において開いた開口とを連通させた状態で、ネジなどにより板部材c3、c4をケージング301の面301dに共に固定させることで、密封の方式により吸気機構303をケージング301の面301dに確実に取り付けている。
【0066】
また、板部材c3にはさらに、長さ方向の両側に固定部材がそれぞれ設けられ、固定部材にケージング301に設けられた穴(例えば、H2)またはジョーQ2などに対応した穴H3及び/またはノッチQ3がそれぞれ設けられる。これにより、ネジーなどを利用した捩じ合いまたは係り合いにより、板部材c3をケージング301に確実に固定させる。
【0067】
また、
図4A及び
図4Bに示すように、ケージング301における粉入口304の付近には、ネジ穴H31が形成されている。ネジなどにより、例えば、
図3Bにおける紙面の上側から、ケージング301におけるネジ穴H31、及び、電気ブラシホルダー20における開口部Lと切り欠きKとの間の部分に設けられたネジ穴(
図3B及び
図3Cを参照)を順次に貫通させる。また、ネジなどにより、例えば、
図3Bにおける紙面の上側から、ケージング301におけるネジ穴H1(
図4Bを参照)、及び、電気ブラシホルダー20の取付部20a(または、取付部20c)(
図3B及び
図3Cを参照)を順次に貫通させる。また、ネジなどにより、例えば、
図3Bにおける紙面の上側から、ケージング301におけるネジ穴H1(
図2Bを参照)、及び、電気ブラシホルダー20の取付部20b(または、取付部20d)を順次に貫通させることで、集塵機構30を電気ブラシホルダー20に取り付けることができる。
【0068】
また、風路仕切り40については、
図3Aに示すように、それが電気ブラシホルダー20における開口部Lに取り付けられている。例えば、風路仕切り40が、電気ブラシホルダー20の開口部Lに対応して設けられている。具体的には、風路仕切り40は、電気ブラシホルダー20の開口部Lの円周方向に沿った端部に取り付けられる。例えば、1つの風路仕切り40が電気ブラシホルダー20の1つの開口部Lに対応した場合、
図3A~
図3Cに示す例では、電気ブラシホルダー20の開口部Lの円周方向に沿った端部として、摩耗粉の流れの下流側に、風路仕切り40が取り付けられることが好ましい。なお、これに限定されず、風路仕切り40を摩耗粉の流れの上流側に取り付けることもできる。また、2つの風路仕切り40が電気ブラシホルダー20の1つの開口部Lに対応した場合、2つの風路仕切り40をそれぞれ電気ブラシホルダー20の1つの開口部Lの円周方向に沿った2つの端部(両端部)に取り付けることもできる。すなわち、摩耗粉の流れの上流側及び下流側の両方において、風路仕切り40が取り付けられることが好ましい。
【0069】
また、
図2Bなどに示すように、風路仕切り40は、L字状の断面に形成されている。具体的には、風路仕切り40は、長尺状の金属シート材を略90°屈折しパンチングすることで形成される。
【0070】
また、
図2Bなどに示すように、風路仕切り40は、基部40aと起立部40bとを備える。基部40aには、風路仕切り40を電気ブラシホルダー20に取り付けるためのネジ穴(図示しない)が開いている。起立部40bの基部40aからの立ち上がりの高さは、電気ブラシホルダー20の厚さよりも小さい。風路仕切り40は、電気ブラシホルダー20の表面から、電気ブラシホルダー20の板面方向に垂直な方向に沿って、電気ブラシ10が取り付けられる方向に伸びている。例えば、風路仕切り40において、起立部40bの基部40aからの立ち上がりの高さが、電気ブラシホルダー20の厚さよりも小さく設置されている。
【0071】
また、
図3A、
図3Bに示すように、風路仕切り40は、電気ブラシ10とスリップリング103との接触部の径方向内側の部分よりも径方向内側に寄る部分から電気ブラシ10とスリップリング103との接触部の径方向外側の部位よりも径方向外側に寄る部分まで、径方向に沿って伸びていることが好ましい。また、風路仕切り40の径方向外側の端部は、下記の集塵機構30の粉入口304の円周方向外側の端部に近づくことが好ましい。これにより、摩耗粉の発生源から発生した摩耗粉が流れを形成し風路仕切り40に流れると、風路仕切り40によって摩耗粉が集塵機構30の粉入口304に案内される。すなわち、風路仕切り40により密封した空間を実現することで、風路仕切り40によって摩耗粉の流れが案内される。このように、風路仕切り40により、摩耗粉をよりよく案内し、摩耗粉の分散を防止することができる。
【0072】
また、
図3A、
図3Bに示すように、密封板50は、電気ブラシホルダー20における電気ブラシ10が取り付けられる一方側の表面とは反対側の表面において、径方向外側からスリップリング103に近づくように、電気ブラシホルダー20における径方向外側の部分に取り付けられている。また、密封板50の板面は、円弧度が電気ブラシホルダー20と同一の円弧に沿って伸びていることが好ましい。密封板50の円弧長さは、径が同じ箇所で電気ブラシホルダー20の円弧長さよりも大きいことが好ましい。これにより、密封板50が後述の第3の実施形態におけるスリップリングシェル2と緊密に接続することで、摩耗粉の回収に対して優れた密閉の空間を形成することができる。また、密封板50は、電気ブラシホルダー20の開口部Lよりも径方向外側に寄る位置に取り付けられていることが好ましい。また、密封板50の径方向の断面は、逆L字状であることが好ましい。
【0073】
また、
図2Bに示すように、密封板50において、円弧内側に向かってフィンシート50fが形成されており、フィンシート50fにより、スリップリング103と電気ブラシホルダー20との密封に寄与し、摩耗粉が飛び散り漏れることを防止する。また、密封板50には、電気ブラシモジュール104が取り付けられた状態で集塵機構30を収容するための切り欠き50kが形成されている。
【0074】
また、
図3A、
図3Bに示すように、摩耗粉仕切り60は、風路仕切り40を介在させて密封板50に対向するように、電気ブラシホルダー20における径方向内側の部分に取り付けられている。また、摩耗粉仕切り60の径方向の断面は、逆L字状であり、摩耗粉仕切り60において、円弧外側に向かってフィンシート60fが形成されている。摩耗粉仕切り60は、フィンシート60fにおいて開いたネジ穴及びネジなどにより、電気ブラシホルダー20に固定されている。
【0075】
また、摩耗粉仕切り60の板面は、円弧度が電気ブラシホルダー20と同一の円弧に沿って伸びている。摩耗粉仕切り60の円弧長さは、径が同じ箇所で電気ブラシホルダー20の円弧長さと同一である。また、摩耗粉仕切り60は、電気ブラシホルダー20の開口部Lよりも径方向内側に寄る位置に取り付けられていることが好ましい。
【0076】
また、摩耗粉仕切り60は、電気ブラシホルダー20の板面方向に垂直な方向において、スリップリング103に近づくように設けられていることが好ましい。また、摩耗粉仕切り60は、電気ブラシホルダー20の表面に垂直な方向において、スリップリング103と5mm以上離れていることが好ましい。
【0077】
このように、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104は、電気ブラシ10と、電気ブラシホルダー20と、摩耗粉収集機構100とを備えることで、摩耗粉収集機構100と電気ブラシ10及び電気ブラシホルダー20により略密閉の空間を形成する。これにより、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104は、摩耗粉の飛び散りを有効に防止し、摩耗粉の収集プロセスを短縮させることができる。
【0078】
具体的には、摩耗粉収集機構100は、集塵機構30と、風路仕切り40と、密封板50と、摩耗粉仕切り60とを備えることで、電気ブラシモジュール104がスリップリング103と連携し作用する時、電気ブラッシュ10、電気ブラッシュホルダー20、集塵機構30、風路仕切り40、密封板50、摩耗粉仕切り60及びスリップリング103により、摩耗粉の流れを案内することができる略密閉の空間(第1の空間)を形成する。これにより、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104は、摩耗粉の飛び散りを有効に防止し、摩耗粉の収集プロセスを短縮させることができる。
【0079】
また、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、集塵機構30が電気ブラシ10とスリップリング103との接触部の付近に取り付けられている。また、集塵機構30の粉入口304が摩耗粉の発生源としての電気ブラシ10とスリップリング103との接触部の付近で、第1の空間に向き合う。これにより、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、集塵機構30が摩耗粉の発生源に近く、摩耗粉が飛び散る前に摩耗粉を効率的に回収することができる。
【0080】
また、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、集塵機構30は、着脱可能に取り付けられた吸着綿302を備えて、集塵機構30により収集された摩耗粉を吸着することで、摩耗粉が飛び散らないように、収集された摩耗粉を確実に吸着する。
【0081】
また、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、集塵機構30は、吸気機構303を備え、吸気機構303の吸気により、集塵機構30及び第1の空間において負圧を形成させることで、摩耗粉をよりよく案内し吸着し、摩耗粉を吸着綿に確実且つ効率的に吸着する。
【0082】
また、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、密封板50は、フィンシート50fを備えることで、スリップリング103と電気ブラシホルダー20との密封に寄与し、摩耗粉が飛び散り漏れることを防止する。
【0083】
また、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、密封板50の円弧長さが、実装される箇所での電気ブラシホルダー20の円弧長さよりも大きくすることが好ましい。これにより、密封板50が後述の第3の実施形態におけるスリップリングシェル密封板3と緊密に接続することで、摩耗粉の回収に対して優れた密閉の空間を形成することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、摩耗粉仕切り60は、電気ブラシホルダー20の板面方向に垂直な方向において、スリップリング103に近づくように設けられている。ここで、摩耗粉仕切り60は、電気ブラシホルダー20の表面に垂直な方向において、スリップリング103と5mm以上離れていることが好ましい。これにより、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、摩耗粉収集機構100と電気ブラシ10及び電気ブラシホルダー20が略密閉の空間を形成することで、摩耗粉の飛び散りを防止し、且つ、摩耗粉の収集プロセスを短縮させることができる。また、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、摩耗粉仕切り60がスリップリング103と離れて設けられているため、摩耗粉仕切り60がスリップリング103と接触することによる不具合を避けられる。
【0085】
また、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104には、2つの集塵機構30が設けられており、2つの集塵機構30が近接し、且つ、いずれも摩耗粉の発生源に近い。このため、摩耗粉の流れの下流側に位置した集塵機構30が、上流側に位置した集塵機構30に対して補充的に収集する作用があり、上流側の集塵機構30によって収集されていない摩耗粉を下流側の集塵機構30によって補充的に収集する。このように、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、摩耗粉の発生源に近い位置で集塵機構30により摩耗粉を収集するため、摩耗粉の飛び散りを減少させ、摩耗粉の収集効果が改善し、摩耗粉の収集効率を向上させることができる。
【0086】
また、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、X線CT装置1000に適用される場合、摩耗粉が架台内部に飛び散ることがないので、電気回路などのショート(短絡)が発生するリスクを低減すると共に、撮影の品質を向上させることができる。さらに、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、摩耗粉が架台の外側に飛び散ることもないので、患者に当たってしまうリスクや、架台を汚してしまうリスクを低減することができる。
【0087】
(第2の実施形態)
以下、
図5~
図6Bを参照しながら、第2の実施形態に係る電気ブラシモジュール104について説明する。
図5は、第2の実施形態に係る電気ブラシモジュール104の集塵機構300を説明するための立体図である。
図6Aは、第2の実施形態に係る電気ブラシモジュール104の集塵機構300を説明するための分解立体図である。
図6Bは、第2の実施形態に係る電気ブラシモジュール104の集塵機構300を説明するための、観察角度が
図6Aと異なった分解立体図である。
【0088】
また、第2の実施形態と第1の実施形態とを比較すると、相違点が集塵機構30の吸気機構303に関する構造のみにあり、その他が第1の実施形態と同一である。このため、本実施形態では、第1の実施形態と同一の部材に対する記載を省略し、集塵機構30の吸気機構303に関する構造のみについて説明する。
【0089】
図5に示すように、第2の実施形態に係る電気ブラシモジュール104は、さらに、防音機構400と板部材c33とを備える。具体的には、第1の実施形態と第2の実施形態との相違点は、第2の実施形態において、電気ブラシモジュール104には、集塵機構30の板部材c3の代わりに、板部材c33が設けられ、さらに、電気ブラシモジュール104は、防音機構400を備えていることにある。
【0090】
防音機構400は、排気口が露出するように吸気機構303を囲んでケージング301に設けられている。
【0091】
図6A及び
図6Bに示すように、防音機構400は、隣り合う2つの面が開口した六面体に形成されている。例えば、当該防音機構400は、金属板をクリップして、折り曲げて、プレスすることで形成されている。具体的には、防音機構400は、第1の側壁401と、第1の側壁に対向した第2の側壁402と、第1の側壁401と第2の側壁402との間で挟まれた第3の側壁403と、第1の側壁401、第2の側壁402及び第3の側壁403に隣接した底壁404とを備える。当該防音機構400が吸気機構303を収容可能な大きさに設けられている。すなわち、第1の側壁401、第2の側壁402及び第3の側壁403に隣接した底壁404のサイズが、吸気機構303のサイズに合わせて設けられている。
【0092】
第3の側壁403には、ネジにより第2の側壁402と固定するためのネジ穴が開いている。
【0093】
防音機構400は、溶接またはカジメなどにより板部材c33に固定されている。
【0094】
第2の実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、防音機構400を設けることにより、吸気機構303に発生した騒音を遮蔽し吸収し、患者、操作者の不快感を低減させ、優れた医療環境の構築、電気ブラシモジュール104及び電気ブラシモジュール104を利用したデバイスの性能の向上に寄与することができる。
【0095】
ここで、例えば、防音機構400の底壁404には、吸音綿などの騒音消去機構が取り付けられることが好ましい。これにより、第2の実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、吸気機構303に発生した騒音をさらに吸収し、より優れた騒音防止の効果を図ることができる。
【0096】
なお、防音機構400の内壁においても、吸音綿などの騒音消去機構が設けられてもよい。この場合でも、より優れた騒音防止の効果を図ることができる。
【0097】
また、防音機構400は、吸気機構303の排気口が露出するように吸気機構303を囲んでいる。これにより、吸気機構303の通常の作用を確保するように、吸気機構303の排気を保証する。
【0098】
また、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、集塵機構300は、板部材c33と吸気機構303との間で板部材c5が挟んで設けられていることが好ましい。板部材c5は、例えば、ゴムなどの弾性的変形が可能な材質であり、騒音吸収の作用があり、騒音をさらに消去し、摩耗粉の飛び出しをより有効に防止することができる。
【0099】
また、本実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、集塵機構300の板部材c33は、摩耗粉遮蔽シールドとして、吸気機構303の排気口を遮蔽するように、ケージング301と吸気機構303との間のセパレータから、吸気機構303の排気口が位置した方向に向かって屈折し伸びていることが好ましい。
【0100】
具体的には、
図5、
図6Aに示すように、集塵機構300の板部材c33は、取り付けられた状態でケージング301と吸気機構303との間に位置したセパレータの部分に加えて、第1の延伸部331と、第2の延伸部332と、第3の延伸部333とを備える。
【0101】
第1の延伸部331は、ケージング301と吸気機構303との間のセパレータ部分の少なくとも一部(吸気機構と重ねて設けられた一部)から、吸気機構303が位置した方向に向かって、略直交に所定の高さで伸びている。当該所定の高さが、吸気機構303の高さよりも僅かに大きく設けられる。
【0102】
第2の延伸部332は、第1の延伸部331の長い辺から、吸気機構303に近づいた方向に向かって略直交に伸びている。第2の延伸部332が、ケージング301と吸気機構303との間のセパレータ部分に略平行している。
【0103】
第3の延伸部333は、第1の延伸部331の短い辺の一方側から、吸気機構303に近づいた方向に向かって略直交に伸びている。第3の延伸部333は、ケージング301と吸気機構303との間のセパレータ部分が、ケージング301と吸気機構303との間のセパレータ部分に略平行しており、第1の延伸部331及び第2の延伸部332にそれぞれ隣接している。
【0104】
第1の延伸部331、第2の延伸部332及び第3の延伸部333のサイズが、吸気機構303に合わせて設けられる。
【0105】
集塵機構300の板部材c33は、第1の延伸部331と、第2の延伸部332と、第3の延伸部333とを備えた摩耗粉遮蔽シールドとして構成することができる。これにより、第2の実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、吸気機構303の排気口から飛び出した少量の摩耗粉を受け、摩耗粉をより確実に回収することができる。
【0106】
また、第2の延伸部332の内側には、摩耗粉収集溝が形成されることが好ましい。これにより、第2の実施形態に係る電気ブラシモジュール104では、摩耗粉をより確実に回収でき、摩耗粉がさらに飛び散ることを防止できる。
【0107】
このように、第2の実施形態に係る電気ブラシモジュール104は、第1の実施形態による效果を奏することに加えて、防音機構400を備えるので、吸気機構303に発生した騒音を吸収し、摩耗粉の飛び出しをより有効に防止することができる。また、第2の実施形態に係る電気ブラシモジュール104は、第1の延伸部331と、第2の延伸部332と、第3の延伸部333とを備えた摩耗粉遮蔽シールド(板部材c33)を備えているので、吸気機構303の排気口から飛び出した少量の摩耗粉を受け、摩耗粉をより確実に回収することができる。
【0108】
(第3の実施形態)
以下、
図7~
図8Bを参照しながら、第3の実施形態について説明する。
図7は、第3の実施形態に係るX線CT装置1000のスリップリング密封機構500を説明するための概略図である。
図8Aは、第3の実施形態に係るX線CT装置1000のスリップリング密封機構500を説明するための、円周方向に垂直な断面に沿って切った後に観察した立体図である。
図8Bは、第3の実施形態に係るX線CT装置1000のスリップリング密封機構500を説明するための、円周方向に垂直な断面に沿った断面図である。
【0109】
ここで、第3の実施形態に係るX線CT装置1000は、第1、第2の実施形態に係る電気ブラシモジュール104に加えて、スリップリング103の電気ブラシモジュール104と重ねて配置された部分以外の部分に対し、スリップリング密封機構500がさらに設けられている。以下、主にスリップリング密封機構500について説明し、第3の実施形態に係るX線CT装置1000が備えた電気ブラシモジュール104の構造については、第1、第2の実施形態に係る電気ブラシモジュール104の構造と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0110】
図7に示すように、本実施形態に係るX線CT装置1000は、さらに、スリップリング密封機構500を備える。スリップリング密封機構500は、第1の部分501と、第2の部分502と、第3の部材503とを備える。
【0111】
スリップリング密封機構500としての第1の部分501、第2の部分502及び第3の部材503が、スリップリング103の円周方向に沿って配列されている。具体的には、第1の部分501、第2の部分502及び第3の部材503は、スリップリング103の円周方向に全て設けられるのではなく、スリップリング103の円周方向における電気ブラシモジュール104と重ねて配置された部分(
図7における円で示されている部分)以外の部分に設けられている。
【0112】
図8A及び
図8Bには、第1の部分501の円周方向に垂直な断面で観察した構造について示されている。第1の部分501、第2の部分502及び第3の部材503の構造がほぼ同一であるため、第2の部分502及び第3の部材503の円周方向に垂直な断面の構造に対する詳細な説明を省略する。
【0113】
図8A及び
図8Bに示すように、スリップリング密封機構500は、スリップリング103を略密封するように、スリップリング固定環4に支持されたスリップリング103を囲んでいる。
【0114】
スリップリング密封機構500は、密閉固定板1と、スリップリングシェル2と、スリップリングシェル密封板3とを備える。
【0115】
密閉固定板1は、スリップリング103と、架台固定部としてのメインフレーム5との間で、メインフレーム5に取り付けられている。密閉固定板1は、ネジなどによりメインフレーム5に固定される。
【0116】
スリップリングシェル2は、スリップリング103の径方向外側及びスリップリング103のメインフレーム5に対向した一方側の反対側を囲むように、メインフレーム5に取り付けられている。具体的には、
図8Bにおいて、スリップリングシェル2は、スリップリング103の径方向外側及びスリップリング103のメインフレーム5に対向した一方側の反対側を囲むように、密閉固定板1に取り付けられている。スリップリングシェル2は、例えば、貼り付けられることにより密閉固定板1に取り付けられる。円周方向に垂直な断面で観察すると、スリップリングシェル2が逆L字状である。また、スリップリングシェル2が一体成形された部材にされてもよい。
【0117】
スリップリングシェル密封板3は、スリップリング103の径方向内側を覆うように、スリップリングシェル2に取り付けられている。スリップリングシェル密封板3の材質が、スリップリングシェル2と同一にされてもよい。スリップリングシェル密封板3は、粘着、リベット締め、溶接、ネジ止めなどによりスリップリングシェル2に取り付けられる。また、スリップリングシェル密封板3は、上述の電気ブラシモジュール104の密封板50に緊密に接続している。
【0118】
例えば、上述のように、
図3A、
図3Bに示す電気ブラシモジュール104では、摩耗粉仕切り60が電気ブラシホルダー20の表面に垂直な方向において、スリップリング103と5mm以上離れている。同様に、
図8Bの右側に示すように、スリップリングシェル密封板3とスリップリング103のメインフレーム5に対向した一方側の表面の径方向内側の周縁との距離は、5mm以上である。
【0119】
これにより、第3の実施形態に係るX線CT装置1000は、密閉固定板1、スリップリングシェル2及びスリップリングシェル密封板3により、スリップリング103を略密封して囲んだ空間(第2の空間)を形成するので、摩耗粉を第2の空間を流れるように案内し、摩耗粉の飛び散りを効率的に防止する。
【0120】
また、円周方向に垂直な断面で観察すると、スリップリングシェル密封板3とスリップリングシェル2とがU字状に一体形成されていることが好ましい。これにより、第3の実施形態に係るX線CT装置1000では、部材を便利に加工すると共に、密封の効果を向上させることができる。
【0121】
また、密閉固定板1は、少なくとも一部がメインフレーム5と隙間を空けるようにメインフレーム5に取り付けられていることが好ましい。ここで、密閉固定板1の少なくとも一部とメインフレーム5との隙間が5mm以上であることが好ましい。これにより、第3の実施形態に係るX線CT装置1000では、密閉固定板1とメインフレーム5との干渉によるカダカダなどの異音の発生を防止することができる。
【0122】
また、密閉固定板1の少なくとも一部(
図8Bにおける右側)とメインフレーム5との間、及び、密閉固定板1の別の少なくとも一部(
図8Bにおける左側)とスリップリングシェル2との間には、密封ガスケット6が挟んで設けられていることが好ましい。ここで、密封ガスケット6は、例えば、ゴムなどの弾性的変形が可能な材料からなる。密封ガスケット6は、圧縮されて弾性的に変形するように挟んで設けられている。これにより、第3の実施形態に係るX線CT装置1000では、密封の効果を向上させ、また、各部材の接触によるカダカダなどの異音の発生を防止することができる。
【0123】
以上の説明により、本実施形態に係るX線CT装置1000のスリップリング103の全ての円周方向において、上述の電気ブラシモジュール104及びスリップリング密封機構500としての第1の部分501、第2の部分502及び第3の部材503がスリップリング103の円周方向を全てわたって設けられている。且つ、電気ブラシモジュール104が設けられた位置では、電気ブラシ、電気ブラシホルダー20、集塵機構30、風路仕切り40、密封板50、摩耗粉仕切り60及びスリップリング103により、摩耗粉の流れを案内可能な略密閉の第1の空間が形成されている。また、スリップリング密封機構500としての第1の部分501、第2の部分502及び第3の部材503には、略密閉の第2の空間が形成されている。また、電気ブラシモジュール104の密封板50がスリップリングシェル2に緊密に接続しており、かつ摩耗粉仕切り60がスリップリングシェル密封板3に緊密に接続されている。これにより、第3の実施形態に係るX線CT装置1000では、スリップリング103の円周を全てにわたって、摩耗粉の回収に対して優れた密閉の空間が形成されており、摩耗粉の飛び散りを有効に防止し、摩耗粉の収集プロセスを短縮させることができる。
【0124】
また、第3の実施形態に係るX線CT装置1000では、スリップリング103の円周を全てにわたって、摩耗粉の回収に対して優れた密閉の空間が形成されていることで、吸気機構303が作動する時、当該空間において負圧が発生し、摩耗粉を効率的に案内し吸着し、集塵機構30に収集することができる。
【0125】
(変形例)
また、上述の実施形態において、電気ブラシホルダー20には2つの開口部L及び切り欠きKが形成された場合について例示したが、これに限定されない。例えば、状況に応じて、電気ブラシホルダー20には、1つの開口部L及び切り欠きKが形成されてもよく、3つ以上の開口部L及び切り欠きKが形成されてもよい。開口部L及び切り欠きKの数が電気ブラシ10の数に対応し、且つ、集塵機構30の数に対応すればよい。
【0126】
また、上述の実施形態において、スリップリング密封機構500が第1の部分501と、第2の部分502と、第3の部材503との3つの部材を含んだ場合について例示したが、これに限定されない。例えば、実際の状況、技術の発展状況、製品の規格要求などに応じて、部材や部材の数を変更してもよい。
【0127】
また、上述の第2の実施形態において、防音機構400及び摩耗粉遮蔽シールド(板部材c33)を同時に備えた例について示されたが、これに限定されず、電気ブラシモジュール104が防音機構400及び摩耗粉遮蔽シールド(板部材c33)のいずれか1つを備えてもよい。
【0128】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、摩耗粉を効率的に回収することができる。
【0129】
なお、いくつかの実施形態および実施例について説明したが、これらの実施形態及び実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置換および変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0130】
10 電気ブラシ
20 電気ブラシホルダー
100 摩耗粉収集機構
102 固定部
103 スリップリング
104 電気ブラシモジュール