(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004264
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】衣類
(51)【国際特許分類】
A41B 9/02 20060101AFI20250106BHJP
【FI】
A41B9/02 H
A41B9/02 P
A41B9/02 Q
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024185283
(22)【出願日】2024-10-21
(62)【分割の表示】P 2023036776の分割
【原出願日】2018-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2017129435
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018119283
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】399086263
【氏名又は名称】学校法人帝京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】木村 将貴
(57)【要約】
【課題】尿漏れによる尿の滲みや脇漏れを防止できるとともに、衛生面に優れた衣類を提供する。
【解決手段】 ユーザー(U)の腰部に配置されるウエスト部(2)と、ウエスト部(2)よりも下方に位置し、ユーザー(U)の前方を覆う前身頃(5)と、を備え、前身頃(5)は、ユーザー(U)の下腹部を覆う前身頃本体部(51)と、前身頃本体部(51)に設けられ、ユーザー(U)の陰茎(P)が挿通可能なように形成された挿通孔(53)と、前身頃本体部(51)に対して装着および剥離可能に設けられ、装着状態において挿通孔(53)および挿通孔(53)の周辺の所定領域(W)を覆い、剥離状態において挿通孔(53)から挿通された陰茎(P)を露出可能なフラップ部材(60)と、を有し、フラップ部材(60)には、装着状態において挿通孔(53)から挿通された陰茎(P)の亀頭(K)に当接可能に設けられ、水分を吸水保持可能な吸水部(67)が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成され、生体の腰部に配置されるウエスト部と、
前記ウエスト部よりも下方に位置し、前記生体の前方を覆う前身頃と、
を備え、
前記前身頃は、
前記生体の下腹部を覆う前身頃本体部と、
前記前身頃本体部に設けられ、前記生体の陰茎が挿通可能なように形成された挿通孔と、
前記前身頃本体部に対して装着および剥離可能に設けられ、装着状態において前記挿通孔および前記挿通孔の周辺の所定領域を覆い、剥離状態において前記挿通孔から挿通された前記陰茎を露出可能なフラップ部材と、
を有し、
前記フラップ部材には、前記装着状態において前記挿通孔から挿通された前記陰茎の亀頭に当接可能に設けられ、水分を吸水保持可能な吸水部が設けられ、
前記挿通孔の縁部に処理が施されることによって、前記挿通孔の縁部が伸縮不能に形成され、
前記挿通孔は、円形を有し、
前記挿通孔の直径は、3.2cmよりも大きく、かつ前記生体の陰嚢が前記前身頃本体部の外に露出不能な大きさとなっている、
ことを特徴とする衣類。
【請求項2】
前記装着状態において、前記フラップ部材と前記前身頃本体部との間には、前記陰茎を露出可能なスリットが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の衣類。
【請求項3】
前記フラップ部材は、少なくとも左右方向の一方側の部分が前記前身頃本体部に対して接合されるとともに、上部が前記前身頃本体部に対して係脱可能に設けられ、
前記吸水部は、前記フラップ部材に対して着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の衣類。
【請求項4】
前記前身頃本体部のうち、前記所定領域に対応する部位は、防水素材により形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の衣類。
【請求項5】
前記フラップ部材は、防水素材により形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の衣類。
【請求項6】
前記所定領域は、前記生体の鼠蹊部と前記生体のウエストラインとにより囲まれた領域に対応した領域であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の衣類。
【請求項7】
前記挿通孔の縁部にステッチが施されることで前記挿通孔の縁部が伸縮不能に形成されている、または、前記挿通孔の縁部に補強用のパッチが縫合されることで前記挿通孔の縁部が伸縮不能に形成されている、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢による筋力の低下や前立腺肥大等によって排尿時の尿切れが悪くなり、尿道に溜まった尿がパンツの中で漏れる「尿漏れ」が発生することが知られている。漏れた尿は、ズボンに滲みだす場合もあり、その対策が望まれている。
例えば脊髄の損傷や前立腺の摘出等により、自らの意思に反して排尿されるいわゆる排尿障害を抱える疾病者についても、尿漏れの対策が望まれている。
【0003】
例えば特許文献1には、外装体と内装体の二重構造とし、内装体は前身頃と後身頃の間の股間部に少なくとも肌に接する内表面を通気性,通水生を有するメッシュ生地で構成し尿を吸収することができる保水部を形成するとともに、該保水部の外側に吸水材を出し入れすることができる間隔を保持させて防水シート材による防水皿を装着し、全体の外表面を外装体で覆ったことを特徴とする失禁パンツ(衣類)が提案されている。
【0004】
ところで、上述のような失禁パンツは、尿漏れによるズボンへの尿の滲みを防止することはもちろんだが、ユーザーの鼠蹊部と失禁パンツとの間からの尿の漏れ(以下、「脇漏れ」という)や、尿を吸収した後における衛生面の向上等が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の態様は、尿漏れによる尿の滲みや脇漏れを防止できるとともに、衛生面に優れた衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、衣類は、環状に形成され、生体の腰部に配置されるウエスト部と、前記ウエスト部よりも下方に位置し、前記生体の前方を覆う前身頃と、を備え、前記前身頃は、前記生体の下腹部を覆う前身頃本体部と、前記前身頃本体部に設けられ、前記生体の陰茎が挿通可能なように形成された挿通孔と、前記前身頃本体部に対して装着および剥離可能に設けられ、装着状態において前記挿通孔および前記挿通孔の周辺の所定領域を覆い、剥離状態において前記挿通孔から挿通された前記陰茎を露出可能なフラップ部材と、を有し、前記フラップ部材には、前記装着状態において前記挿通孔から挿通された前記陰茎の亀頭に当接可能に設けられ、水分を吸水保持可能な吸水部が設けられ、前記挿通孔の縁部に処理が施されることによって、前記挿通孔の縁部が伸縮不能に形成され、前記挿通孔は、円形を有し、前記挿通孔の直径は、3.2cmよりも大きく、かつ前記生体の陰嚢が前記前身頃本体部の外に露出不能な大きさとなっている、ことを特徴としている。
【0008】
本発明の第2の態様は、前記装着状態において、前記フラップ部材と前記前身頃本体部との間には、前記陰茎を露出可能なスリットが設けられていることを特徴としている。
【0009】
本発明の第3の態様は、前記挿通孔の直径は、前記陰茎の直径に対応して設定され、前記挿通孔の縁部は、伸縮不能に形成されていることを特徴としている。
【0010】
本発明の第4の態様は、前記フラップ部材は、少なくとも左右方向の一方側の部分が前記前身頃本体部に対して接合されるとともに、上部が前記前身頃本体部に対して係脱可能に設けられ、前記吸水部は、前記フラップ部材に対して着脱可能に設けられていることを特徴としている。
【0011】
本発明の第5の態様は、前記前身頃本体部のうち、前記所定領域に対応する部位は、防水素材により形成されていることを特徴としている。
【0012】
本発明の第6の態様は、前記フラップ部材は、防水素材により形成されていることを特徴としている。
【0013】
本発明の第7の態様は、前記所定領域は、前記生体の鼠蹊部と前記生体のウエストラインとにより囲まれた領域に対応した領域であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、前身頃は、生体の下腹部を覆う前身頃本体部に設けられ、生体の陰茎が挿通可能なように形成された挿通孔と、装着状態において挿通孔および挿通孔の周辺の所定領域を覆うフラップ部材と、を有し、フラップ部材には、装着状態において挿通孔から挿通された陰茎の亀頭に当接可能に設けられ、水分を吸水保持可能な吸水部が設けられているので、尿漏れが発生した場合であっても、吸水部で漏れた尿を吸収することができる。したがって、尿漏れによるズボン等への尿の滲みを防止できる。
装着状態において、挿通孔から挿通された陰茎の亀頭は、フラップ部材に設けられた吸水部に当接しているので、脇漏れを防止できる。
前身頃本体部の挿通孔から陰茎が挿通されているので、尿を吸収した吸水部は陰茎以外の下腹部に接触することがない。したがって、吸水部に尿が吸収された後でも、ユーザーの履き心地を害することがなく、従来技術と比較して衛生面に優れた衣類とすることができる。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、装着状態において、フラップ部材と前身頃本体部との間には、陰茎を露出可能なスリットが設けられているので、フラップ部材の装着状態であっても、スリットから陰茎を露出させて排尿することができる。これにより、従来の下着(パンツ)と同様、違和感なく排尿することができるので、ユーザーにとって使い易い衣類とすることができる。外観上も、従来の下着(パンツ)と同様、違和感のないデザインを有する衣類とすることができる。
【0016】
本発明の第7の態様によれば、挿通孔の直径は、陰茎の直径に対応して設定され、挿通孔の縁部は、伸縮不能に形成されているので、挿通孔から陰茎のみを挿通させることができるとともに、挿通孔から陰嚢が挿通して前身頃本体部の外に露出するのを防止できる。
これにより、尿を吸収した吸水部は、陰嚢に接触することがない。したがって、吸水部に尿が吸収された後でも、ユーザーの履き心地を害することがなく、従来技術と比較して衛生面に優れた衣類とすることができる。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、フラップ部材は、少なくとも左右方向の一方側の部分が前身頃本体部に対して接合されるとともに、上部が前身頃本体部に対して係脱可能に設けられているので、フラップ部材の上部を前身頃本体部から離脱させることで容易にフラップ部材を前身頃本体部から剥離させることができる。吸水部は、フラップ部材に対して着脱可能に設けられているので、フラップ部材を前身頃本体部から剥離させた状態で、フラップ部材から使用済みの吸水部を取り外した後、フラップ部材に新たな吸水部を取り付けることで容易に吸水部を交換することができる。したがって、従来技術と比較して、吸水部のみを交換することができるので、衛生面に優れた衣類とすることができる。
吸水部のみを交換することができるので、従来技術と比較して、洗濯の頻度を減らすことができる。したがって、ユーザーにとって使い易い衣類とすることができる。
【0018】
本発明の第4の態様によれば、前身頃本体部のうち、挿通孔の周辺の所定領域に対応する部位は、防水素材により形成されているので、フラップ部材の装着状態において、吸水部が前身頃本体部に接した場合であっても、前身頃本体部に尿が滲むのを防止できる。これにより、陰茎周辺を含む下腹部には、前身頃本体部から尿が滲み出て付着することがない。したがって、ユーザーの履き心地を害することがなく、従来技術と比較して衛生面に優れた衣類とすることができる。
【0019】
本発明の第5の態様によれば、フラップ部材は、防水素材により形成されているので、尿漏れが発生した場合であっても、吸水部で漏れた尿を吸収するとともに、フラップ部材から外部に尿が滲むのを防止できる。したがって、尿漏れによるズボン等への尿の滲みを確実に防止できる。
【0020】
本発明の第6の態様によれば、所定領域は、生体の鼠蹊部と生体のウエストラインとにより囲まれた領域に対応した領域であるので、この所定領域において、尿の滲みを確実に防止できる。したがって、尿漏れによるズボン等への尿の滲みを防止できるとともに脇漏れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る衣類を前方から見たときの説明図であって、フラップ部材の装着状態を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る衣類を前方から見たときの説明図であって、フラップ部材の剥離状態を示す説明図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る衣類を前方から見たときの説明図であって、フラップ部材の装着状態を示す説明図である。
図2は、本発明の実施形態に係る衣類を前方から見たときの説明図であって、フラップ部材の剥離状態を示す説明図である。
【0023】
図1および
図2に示すように、本実施形態の衣類1は、いわゆるトランクスタイプの男性用の下着である。さらに、本実施形態の衣類1は、後述のとおり、尿道に溜まった尿が下着の中で漏れる「尿漏れ」への対策が施された尿漏れ防止下着である。以下に説明する衣類1がトランクスタイプである場合は、本発明の実施形態の一例である。したがって、本発明が適用される衣類1は、トランクスタイプに限定されることはなく、例えばいわゆるブリーフタイプであってもよい。
各図において、衣類1の使用者としての成人男性であるユーザーUを二点鎖線で図示している。以下の説明における前後上下左右方向は、ユーザーUから見た前後上下左右方向と一致している。
【0024】
本実施形態の衣類1は、ユーザーUの下半身に装着されるものであって、例えば全体が主に綿等の天然繊維や、キュプラ、ビスコースレーヨン等の再生セルロース繊維、ポリエステル等の合成繊維等により形成されている。衣類1の編地として、例えばフライス編みやスムース編み、天竺編み等のヨコ編地や、ラッセル編み等のタテ編地が好適に用いられる。上述した衣類1の繊維や編地はあくまで一例であって、特に限定されない。
【0025】
衣類1は、ウエスト部2と、身頃部3と、を有する。
ウエスト部2は、全体として環状に形成されており、衣類1がユーザーUの下半身に装着されたときに、ユーザーUの腰部のウエストラインに沿って配置される。ウエスト部2は、周方向に沿って弾性変形可能なゴム編み生地等の弾性繊維素材により形成されており、伸縮性を有している。
ウエスト部2の直径は、ユーザーUのウエストサイズよりも若干小さくなるように設定されている。このため、衣類1は、ユーザーUが下半身に装着した時に、ウエスト部2の収縮力によってユーザーUの腰部に係止される。
【0026】
身頃部3は、ウエスト部2よりも下方に位置しており、ユーザーUの下半身を覆っている。身頃部3には、一対の脚ぐり31,31が形成されている。一対の脚ぐり31,31は、幅方向における両側に設けられている。一対の脚ぐり31,31は、ユーザーUの脚が挿通可能な孔となっている。一対の脚ぐり31,31には、それぞれユーザーUの右大腿部と左大腿部とが挿通されて配置される。
【0027】
身頃部3は、後身頃4と、前身頃5と、を備える。
後身頃4は、身頃部3のうち脇中央部よりも後方に位置している。後身頃4は、ユーザーUの下半身のうち、主に臀部を覆っている。
【0028】
前身頃5は、身頃部3のうち脇中央部よりも前方に位置している。前身頃5は、ユーザーUの下半身のうち、主にユーザーUの下腹部を覆っている。
前身頃5は、前身頃本体部51と、挿通孔53と、フラップ部材60と、を有している。以下、衣類1の前身頃5について、詳細に説明する。
【0029】
前身頃本体部51は、ウエスト部2よりも下方において、ユーザーUの下腹部を覆っている。
前身頃本体部51には、挿通孔53が形成されている。挿通孔53は、前身頃本体部51の表裏を貫通しており、ユーザーUの陰茎Pが挿通可能なように形成されている。
挿通孔53の直径は、ユーザーUの陰茎Pの直径に対応して設定される。より具体的には、挿通孔53の直径は、例えば日本人の成人男性における陰茎の標準的な直径である約3.2cmよりもわずかに大きくなるように設定されている。挿通孔53の直径は、例えば衣類1のサイズ(Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ等)に対応させて、複数のサイズを備えていてもよい。
【0030】
ここで、挿通孔53の縁部53aは、伸縮不能に形成されている。挿通孔53の縁部53aは、全周にわたって例えばステッチを施すことで伸縮不能に形成されてもよいし、全周にわたって例えば補強用のパッチを縫合することで伸縮不能に形成されてもよい。挿通孔53の縁部53aは、伸縮不能に形成されているので、挿通孔53から陰茎Pのみを挿通させることができるとともに、挿通孔53から陰嚢Fが挿通して前身頃本体部51の外に露出するのを防止できる。
【0031】
前身頃本体部51のうち、挿通孔53および挿通孔53の周辺を所定領域Wと定義する。所定領域Wは、例えばユーザーUの鼠蹊部とユーザーUのウエストラインとにより囲まれた領域に対応した領域である。
所定領域Wは、防水性があり、かつ水蒸気を透過させる透湿性を有している素材により形成されていてもよい。具体的には、布面に対して樹脂材料を薄く均一に塗布した後、熱をかけて樹脂材料を乾燥させて被膜を形成した、いわゆる防水用のコーティング加工が施された布材が好適である。
【0032】
フラップ部材60は、前身頃本体部51に対して装着および剥離可能に設けられている。具体的に、フラップ部材60は、左側部63と下部64とが前身頃本体部51に対して縫合されることで接合されている。
フラップ部材60の上部62は、前身頃本体部51に対して係合可能に形成されている。フラップ部材60の上部62と前身頃本体部51との係合手段は特に限定されないが、本実施形態においては、前身頃本体部51とフラップ部材60の上部62とに、それぞれ面ファスナー21,22は貼付されており、前身頃本体部51とフラップ部材60の上部62とは、面ファスナー21,22により係合可能となっている。
【0033】
図1に示すように、前身頃本体部51とフラップ部材60の上部62とを面ファスナー21,22により係合することで、フラップ部材60が装着状態となる。このとき、フラップ部材60の右側部61と前身頃本体部51とは、互いに固定されない。したがって、フラップ部材60の右側部61と前身頃本体部51と間には、スリットSが形成される。
スリットSからは、フラップ部材60が装着状態であっても、ユーザーUの陰茎Pが露出可能となっている。
【0034】
図2に示すように、面ファスナー21,22の係合を解除し、前身頃本体部51とフラップ部材60の上部62とを離脱することで、フラップ部材60が剥離状態となる。フラップ部材60は、剥離状態において、前身頃本体部51に対して縫合された左側部63および下部64以外の部分、すなわち、フラップ部材60の右側部61および上部62が前身頃本体部51から離脱している。
【0035】
図3は、
図1のIII-III線に沿う断面図である。
図2および
図3に示すように、フラップ部材60には、吸水部67が設けられている。
吸水部67は、例えば一般に吸収性ポリマー、高吸水性樹脂、高分子吸収体と呼ばれる高吸水性高分子を不織布により包装することにより形成されたシート状の部材である。吸水部67は、例えば銀イオンが配合されることで抗菌効果および消臭効果を有していてもよい。本実施形態においては、吸水部67は、市販のいわゆる吸水パッドと呼ばれる製品が採用される。
【0036】
吸水部67は、フラップ部材60の内面(装着状態において前身頃本体部51と対向する面)において、面ファスナー22を除いた領域に設けられている。吸水部67は、フラップ部材60の内面に対して、例えば両面テープ等により、着脱可能に貼付されている。
図3に示すように、フラップ部材60は、装着状態において挿通孔53から挿通された陰茎Pの亀頭Kに当接している。これにより、尿道に溜まった尿が漏れる尿漏れが発生した場合であっても、ユーザーUの陰茎Pから漏れた尿は、吸水部67により確実に吸収される。
【0037】
(効果)
本実施形態の衣類1によれば、前身頃5は、ユーザーUの下腹部を覆う前身頃本体部51に設けられ、ユーザーUの陰茎Pが挿通可能なように形成された挿通孔53と、装着状態において挿通孔53および挿通孔53の周辺の所定領域Wを覆うフラップ部材60と、を有し、フラップ部材60には、装着状態において挿通孔53から挿通された陰茎Pの亀頭Kに当接可能に設けられ、水分を吸水保持可能な吸水部67が設けられているので、尿漏れが発生した場合であっても、吸水部67で漏れた尿を吸収することができる。したがって、尿漏れによるズボン等への尿の滲みを防止できる。
装着状態において、挿通孔53から挿通された陰茎Pの亀頭Kは、フラップ部材60に設けられた吸水部67に当接しているので、脇漏れを防止できる。
前身頃本体部51の挿通孔53から陰茎Pが挿通されているので、尿を吸収した吸水部67は陰茎P以外の下腹部に接触することがない。したがって、吸水部67に尿が吸収された後でも、ユーザーUの履き心地を害することがなく、従来技術と比較して衛生面に優れた衣類1とすることができる。
【0038】
本実施形態の衣類1では、装着状態において、フラップ部材60と前身頃本体部51との間には、陰茎Pを露出可能なスリットSが設けられているので、フラップ部材60の装着状態であっても、スリットSから陰茎Pを露出させて排尿することができる。これにより、従来の下着(パンツ)と同様、違和感なく排尿することができるので、ユーザーUにとって使い易い衣類とすることができる。外観上も、従来の下着(パンツ)と同様、違和感のないデザインを有する衣類1とすることができる。
【0039】
本実施形態の衣類1では、挿通孔53の直径は、陰茎Pの直径に対応して設定され、挿通孔53の縁部53aは、伸縮不能に形成されているので、挿通孔53から陰茎Pのみを挿通させることができるとともに、挿通孔53から陰嚢Fが挿通して前身頃本体部51の外に露出するのを防止できる。これにより、尿を吸収した吸水部67は、陰嚢Fに接触することがない。したがって、吸水部67に尿が吸収された後でも、ユーザーUの履き心地を害することがなく、従来技術と比較して衛生面に優れた衣類1とすることができる。
【0040】
本実施形態の衣類1では、フラップ部材60は、左側部63および下部64が前身頃本体部51に対して接合されるとともに、上部62が前身頃本体部51に対して係脱可能に設けられているので、フラップ部材60の上部62を前身頃本体部51から離脱させることで容易にフラップ部材60を前身頃本体部51から剥離させることができる。吸水部67は、フラップ部材60に対して着脱可能に設けられているので、フラップ部材60を前身頃本体部51から剥離させた状態で、フラップ部材60から使用済みの吸水部67を取り外した後、フラップ部材60に新たな吸水部67を取り付けることで容易に吸水部67を交換することができる。したがって、従来技術と比較して、吸水部67のみを交換することができるので、衛生面に優れた衣類1とすることができる。
吸水部67のみを交換することができるので、従来技術と比較して、洗濯の頻度を減らすことができる。したがって、ユーザーUにとって使い易い衣類1とすることができる。
【0041】
本実施形態の衣類1では、前身頃本体部51のうち、挿通孔53の周辺の所定領域Wに対応する部位は、防水素材により形成されているので、フラップ部材60の装着状態において、吸水部67が前身頃本体部51に接した場合であっても、前身頃本体部51に尿が滲むのを防止できる。これにより、陰茎P周辺を含む下腹部には、前身頃本体部51から尿が滲み出て付着することがない。したがって、ユーザーUの履き心地を害することがなく、従来技術と比較して衛生面に優れた衣類1とすることができる。
【0042】
本実施形態の衣類1では、フラップ部材60は、防水素材により形成されているので、尿漏れが発生した場合であっても、吸水部67で漏れた尿を吸収するとともに、フラップ部材60から外部に尿が滲むのを防止できる。したがって、尿漏れによるズボン等への尿の滲みを確実に防止できる。
【0043】
本実施形態の衣類1では、所定領域Wは、ユーザーUの鼠蹊部とユーザーUのウエストラインとにより囲まれた領域に対応した領域であるので、この所定領域Wにおいて、尿の滲みを確実に防止できる。したがって、尿漏れによるズボン等への尿の滲みを防止できるとともに脇漏れを防止できる。
【0044】
本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
【0045】
上述の実施形態では、本発明にかかる衣類1として、いわゆるトランクスタイプの男性用の下着を例に説明をしたが、本発明の適用はトランクスタイプの男性用の下着に限定されない。したがって、本発明にかかる衣類1としては、例えばいわゆるブリーフタイプの男性用の下着や、いわゆるボクサータイプの男性用の下着等であってもよい。
【0046】
上述の実施形態では、衣類1のユーザーUとして成人男性を例に説明をしたが、衣類1のユーザーUは成人男性に限定されない。したがって、ユーザーUは、例えば排尿障害を有する男性児童であってもよい。
上述の実施形態では、衣類1のユーザーUとして成人男性を例に説明をしたが、ユーザーUは、人間の男性に限定されることはなく、陰茎を有する生体に対して広く適用できる。したがって、衣類1のユーザーUは、例えば陰茎を有する犬や馬等の雄の動物であってもよい。すなわち本実施形態の衣類1は、人間の男性に対しての適用に限定されることはなく、雄の動物に対して適用されてもよい。
【0047】
上述の実施形態の衣類1について、素材の構成は一例であって、上述の実施形態に限定されない。したがって、衣類1の素材は、綿等の天然繊維や、キュプラ、ビスコースレーヨン等の再生セルロース繊維、ポリエステル等の合成繊維以外の素材、例えばシルクやポリウレタン等の繊維であってもよい。
【0048】
上述の実施形態では、フラップ部材60および前身頃本体部51の所定領域Wに対応する部位は、防水素材により形成されていたが、防水素材でなくてもよい。フラップ部材60および前身頃本体部51の所定領域Wに対応する部位は、防水素材に替えて、撥水部材により形成されていてもよい。
【0049】
上述の実施形態では、フラップ部材60は、左側部63および下部64が前身頃本体部51に対して接合されるとともに、上部62が前身頃本体部51に対して係脱可能に設けられていたが、この形態に限定されない。したがって、例えばフラップ部材60は、下部64のみが前身頃本体部51に対して接合されるとともに、上部62が前身頃本体部51に対して係脱可能に設けられていてもよいし、上部62のみが前身頃本体部51に対して接合されるとともに、下部64が前身頃本体部51に対して係脱可能に設けられていてもよい。
【0050】
さらに、フラップ部材60は、全周が前身頃本体部51に対して係脱可能に設けられていてもよい。この場合においては、フラップ部材60と前身頃本体部51とを離脱させることができるので、例えばフラップ部材60のみを洗濯する場合に好適である。
【0051】
上述の実施形態では、前身頃本体部51とフラップ部材60の上部62とに、それぞれ面ファスナー21,22は貼付されており、前身頃本体部51とフラップ部材60の上部62とは、面ファスナー21,22により係合可能となっていたが、前身頃本体部51とフラップ部材60の上部62とを係合する部材は面ファスナー21,22に限定されない。したがって、前身頃本体部51とフラップ部材60の上部62とは、例えばボタンで係合されていてもよいし、例えば紐等により結束されることによって係合されていてもよいし、いわゆるスナップ等によって係合されていてもよい。すなわち、前身頃本体部51とフラップ部材60とが着脱可能に係合されていればその形態は限定されない。
【0052】
上述の実施形態では、吸水部67は、フラップ部材60の内面に対して、例えば両面テープ等により、着脱可能に貼付されていたが、この形態に限定されない。したがって、例えば吸水部67は、フラップ部材60の内面に対して、面ファスナーにより着脱可能に貼付されていてもよい。
【0053】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 衣類
2 ウエスト部
5 前身頃
51 前身頃本体部
53 挿通孔
53a 縁部
60 フラップ部材
62 上部
63 左側部(左右方向の一方側の部分)
67 吸水部
K 亀頭
P 陰茎
S スリット
U ユーザー(生体)
W 所定領域