IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機ビルテクノサービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-エレベーター調速機の異物除去装置 図1
  • 特開-エレベーター調速機の異物除去装置 図2
  • 特開-エレベーター調速機の異物除去装置 図3
  • 特開-エレベーター調速機の異物除去装置 図4
  • 特開-エレベーター調速機の異物除去装置 図5
  • 特開-エレベーター調速機の異物除去装置 図6
  • 特開-エレベーター調速機の異物除去装置 図7
  • 特開-エレベーター調速機の異物除去装置 図8
  • 特開-エレベーター調速機の異物除去装置 図9
  • 特開-エレベーター調速機の異物除去装置 図10
  • 特開-エレベーター調速機の異物除去装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042645
(43)【公開日】2025-03-28
(54)【発明の名称】エレベーター調速機の異物除去装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/12 20060101AFI20250321BHJP
   B08B 5/00 20060101ALI20250321BHJP
   B66B 5/04 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
B66B7/12 Z
B08B5/00 Z
B66B5/04 A
B66B5/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149683
(22)【出願日】2023-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217021
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 進吾
(72)【発明者】
【氏名】飯田 康雅
【テーマコード(参考)】
3B116
3F304
3F305
【Fターム(参考)】
3B116AA47
3B116AB53
3B116BA03
3B116BB82
3B116CD42
3B116CD43
3F304CA18
3F304DA23
3F305BB03
3F305EA04
(57)【要約】
【課題】調速機綱車から除去された異物が調速機綱車に再付着することを抑制することができるエレベーター調速機の異物除去装置を得る。
【解決手段】このエレベーター調速機の異物除去装置7は、調速機綱車3の外周面であって調速機軸2よりも下方にある部分である外周面下方部分302から異物を除去する外周面スクレーパ701と、外周面スクレーパ701を加熱する外周面スクレーパ加熱装置702と、調速機綱車3の側面における外周側部分であって調速機軸2よりも下方にある部分である側面外周側下方部分303から異物を除去する側面スクレーパ704と、側面スクレーパ704を加熱する側面スクレーパ加熱装置705と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調速機綱車の外周面であって調速機軸よりも下方にある部分である外周面下方部分から異物を除去する外周面スクレーパと、
前記外周面スクレーパを加熱する外周面スクレーパ加熱装置と、
を備えているエレベーター調速機の異物除去装置。
【請求項2】
前記外周面スクレーパの温度を測定する外周面スクレーパ温度センサと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記外周面スクレーパ温度センサの測定結果に基づいて、前記外周面スクレーパ加熱装置の駆動を制御する請求項1に記載のエレベーター調速機の異物除去装置。
【請求項3】
前記外周面スクレーパは、先端部が前記外周面下方部分に対向する外周面刃部を有し、
前記外周面下方部分における前記外周面刃部の先端部が対向する部分を外周面異物除去対象部分とし、
前記外周面刃部は、前記調速機軸に沿って見た場合に、前記調速機綱車の外周面を構成する円における前記外周面異物除去対象部分の接線であって前記外周面異物除去対象部分よりも上方にある半直線と前記外周面刃部との間の成す角が90度よりも大きくなるように配置されている請求項1または請求項2に記載のエレベーター調速機の異物除去装置。
【請求項4】
前記外周面刃部は、前記調速機軸に沿って見た場合に、前記外周面異物除去対象部分から下方に向かって延びるように配置されている請求項3に記載のエレベーター調速機の異物除去装置。
【請求項5】
前記調速機綱車の側面における外周側部分であって前記調速機軸よりも下方にある部分である側面外周側下方部分から異物を除去する側面スクレーパと、
前記側面スクレーパを加熱する側面スクレーパ加熱装置と、
を備えている請求項1または請求項2に記載のエレベーター調速機の異物除去装置。
【請求項6】
前記側面スクレーパの温度を測定する側面スクレーパ温度センサと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記側面スクレーパ温度センサの測定結果に基づいて、前記側面スクレーパ加熱装置の駆動を制御する請求項5に記載のエレベーター調速機の異物除去装置。
【請求項7】
前記側面スクレーパは、前記側面外周側下方部分に沿って配置された側面刃部を有している請求項5に記載のエレベーター調速機の異物除去装置。
【請求項8】
調速機綱車の側面における外周側部分であって調速機軸よりも下方にある部分である側面外周側下方部分から異物を除去する側面スクレーパと、
前記側面スクレーパを加熱する側面スクレーパ加熱装置と、
を備えているエレベーター調速機の異物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーター調速機の異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調速機綱車の側面における外周側部分から異物を除去する異物除去装置を備えたエレベーター調速機が知られている。異物除去装置は、調速機綱車の側面における外周側部分に対向する対向部を有している。調速機綱車の側面における外周側部分に付着した異物は、対向部によって調速機綱車から除去される。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-160921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたエレベーター調速機の異物除去装置では、対向部における調速機綱車の側面から異物を除去する部分が水平面となっている。これにより、調速機綱車の側面から除去された異物は、対向部の水平面に堆積する。対向部の水平面に堆積した異物が大きくなることによって、対向部の水平面に堆積した異物が調速機綱車の側面に再付着してしまうという問題点があった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、調速機綱車から除去された異物が調速機綱車に再付着することを抑制することができるエレベーター調速機の異物除去装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベーター調速機の異物除去装置は、調速機綱車の外周面であって調速機軸よりも下方にある部分である外周面下方部分から異物を除去する外周面スクレーパと、外周面スクレーパを加熱する外周面スクレーパ加熱装置と、を備えている。
本開示に係るエレベーター調速機の異物除去装置は、調速機綱車の側面における外周側部分であって調速機軸よりも下方にある部分である側面外周側下方部分から異物を除去する側面スクレーパと、側面スクレーパを加熱する側面スクレーパ加熱装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るエレベーター調速機の異物除去装置によれば、調速機綱車から除去された異物が調速機綱車に再付着することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るエレベーター調速機の異物除去装置を備えたエレベーター調速機を示す正面図である。
図2図1のエレベーター調速機を示す左側面図である。
図3図1のIII-III線に沿った矢視断面図である。
図4図1の異物除去装置7を示すブロック図である。
図5図1の調速機おもりが過大速度検出スイッチに接触した状態を示す正面図である。
図6】比較例のエレベーター調速機を示す正面図である。
図7図6のエレベーター調速機を示す左側面図である。
図8図6の調速機おもりが過大速度検出スイッチに接触した状態を示す正面図である。
図9図6の調速機綱車に異物が形成された状態を示す正面図である。
図10図9のエレベーター調速機を示す左側面図である。
図11図9の異物が過大速度検出スイッチに接触した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るエレベーター調速機の異物除去装置を備えたエレベーター調速機を示す正面図である。図2は、図1のエレベーター調速機を示す左側面図である。図3は、図1のIII-III線に沿った矢視断面図である。エレベーター調速機は、フレーム1と、調速機軸2と、調速機綱車3と、調速機ロープ4と、一対の調速機おもり5と、過大速度検出スイッチ6と、異物除去装置7と、を備えている。
【0010】
フレーム1は、土台101と、第1側板102と、第2側板103と、複数の固定アンカーボルト104と、を有している。
【0011】
土台101は、平板形状に形成されている。土台101は、機械室の床8に重ねられている。土台101は、複数の固定アンカーボルト104を介して、機械室の床8に固定されている。
【0012】
第1側板102および第2側板103のそれぞれは、平板形状に形成されている。第1側板102および第2側板103は、互いに平行に配置されている。したがって、第1側板102および第2側板103は、板厚方向に互いに対向するように配置されている。第1側板102および第2側板103のそれぞれは、土台101の上面に立てられている。土台101、第1側板102および第2側板103は、互いに一体に形成されている。したがって、第1側板102および第2側板103のそれぞれは、土台101に固定されている。
【0013】
調速機軸2は、フレーム1に回転可能に支持されている。具体的には、調速機軸2は、第1側板102および第2側板103に渡って設けられており、第1側板102および第2側板103のそれぞれに回転可能に支持されている。
【0014】
調速機綱車3は、調速機軸2に固定されている。調速機綱車3は、第1側板102と第2側板103との間に配置されている。調速機綱車3は、調速機軸2を中心にフレーム1に対して回転可能になっている。
【0015】
調速機綱車3は、円板形状に形成されている。調速機綱車3の外周面には、調速機綱車3の周方向に延びた溝301が形成されている。
【0016】
調速機ロープ4は、調速機綱車3に巻き掛けられている。具体的には、調速機ロープ4は、調速機綱車3の溝301に嵌められている。調速機ロープ4には、図示しないかごが図示しない連結部材を介して連結されている。したがって、かごの移動に連動して、調速機ロープ4が移動する。
【0017】
調速機ロープ4には、図示しない張り車が吊り下げられており、吊り下げられた張り車によって、調速機ロープ4には張力が与えられている。調速機ロープ4に張力が与えられることによって、調速機ロープ4と調速機綱車3の溝301との間には、摩擦力が発生する。調速機ロープ4と調速機綱車3の溝301との間に発生する摩擦力によって、調速機ロープ4の移動に連動して調速機綱車3が回転する。
【0018】
一対の調速機おもり5のそれぞれは、調速機綱車3に設けられている。具体的には、一対の調速機おもり5のそれぞれは、調速機綱車3の軸方向を向く調速機綱車3の一対の側面のうちの一方の側面に設けられている。
【0019】
一対の調速機おもり5のそれぞれは、おもり軸501と、おもり本体502と、作動片503と、を有している。
【0020】
おもり軸501は、調速機綱車3の側面に設けられている。調速機軸2に沿って見た場合に、おもり軸501は、調速機軸2と調速機綱車3の外周面との間に配置されている。おもり軸501は、調速機綱車3の側面に対して垂直に延びるように配置されている。言い換えれば、おもり軸501は、調速機軸2に対して平行に配置されている。
【0021】
おもり本体502は、長尺形状に形成されている。おもり本体502は、調速機綱車3の側面に沿って配置されている。おもり本体502の長手方向一端部504がおもり軸501に取り付けられている。おもり本体502は、おもり軸501を中心に回転可能になっている。
【0022】
おもり本体502の長手方向他端部505には、図示しないばねが取り付けられている。ばねは、おもり本体502と調速機綱車3とに渡って設けられている。調速機綱車3が回転する場合に、おもり本体502には、遠心力が作用する。おもり本体502に作用する遠心力によって、おもり本体502の長手方向他端部505が、ばねの弾性力に逆らって、調速機綱車3の径方向の外側に移動する。したがって、調速機綱車3の回転速度に応じて、調速機おもり5が調速機綱車3の径方向に移動する。
【0023】
作動片503は、おもり本体502の長手方向他端部505に設けられている。したがって、調速機綱車3の回転速度に応じて、作動片503が調速機綱車3の径方向に移動する。
【0024】
過大速度検出スイッチ6は、フレーム1に設けられている。具体的には、過大速度検出スイッチ6は、第2側板103に設けられている。過大速度検出スイッチ6は、スイッチボックス601と、動作片602と、を有している。
【0025】
スイッチボックス601は、第2側板103に設けられている。動作片602は、スイッチボックス601に設けられている。
【0026】
過大速度検出スイッチ6は、予め設定された位置に配置されている。過大速度検出スイッチ6が配置されている予め設定された位置は、調速機綱車3の回転速度が予め設定された回転速度に達した場合に、作動片503が動作片602に接触する位置になっている。調速機綱車3の回転速度における予め設定された回転速度は、かごの速度が予め設定された速度に達した場合の調速機綱車3の回転速度である。したがって、かごの速度が予め設定された速度に達した場合に、作動片503が動作片602に接触する。
【0027】
スイッチボックス601は、作動片503が動作片602に接触したことを検出する。作動片503が動作片602に接触したことをスイッチボックス601が検出することによって、過大速度検出スイッチ6は、調速機綱車3の回転速度が予め設定された回転速度に達したことを検出する。言い換えれば、作動片503が動作片602に接触したことをスイッチボックス601が検出することによって、過大速度検出スイッチ6は、かごの速度が予め設定された速度に達したことを検出する。
【0028】
異物除去装置7は、一対の外周面スクレーパ701と、一対の外周面スクレーパ加熱装置702と、一対の外周面スクレーパ温度センサ703と、を備えている。また、異物除去装置7は、一対の側面スクレーパ704と、一対の側面スクレーパ加熱装置705と、一対の側面スクレーパ温度センサ706と、を備えている。また、異物除去装置7は、一対の油受け707を備えている。
【0029】
調速機綱車3の径方向に沿った方向であって、機械室の床8に沿った方向を異物除去装置7の幅方向Dとする。調速機軸2に沿って見た場合に、調速機軸2の中心を通り高さ方向に延びた直線を中心にして、一対の外周面スクレーパ701は、幅方向Dに互いに離れて配置されている。一対の外周面スクレーパ加熱装置702は、一対の外周面スクレーパ701に1つずつ設けられている。一対の外周面スクレーパ温度センサ703は、一対の外周面スクレーパ701に1つずつ設けられている。
【0030】
調速機軸2に沿って見た場合に、調速機軸2の中心を通り高さ方向に延びた直線を中心にして、一対の側面スクレーパ704は、幅方向Dに互いに離れて配置されている。一対の側面スクレーパ加熱装置705は、一対の側面スクレーパ704に1つずつ設けられている。一対の側面スクレーパ温度センサ706は、一対の側面スクレーパ704に1つずつ設けられている。
【0031】
一対の油受け707のうちの一方の油受け707は、一対の外周面スクレーパ701のうちの一方の外周面スクレーパ701の下方、および、一対の側面スクレーパ704のうちの一方の側面スクレーパ704の下方に設けられている。一方の外周面スクレーパ701から流れ落ちた液状化した異物および一方の側面スクレーパ704から流れ落ちた液状化した異物は、一方の油受け707に溜められる。
【0032】
一対の油受け707のうちの他方の油受け707は、一対の外周面スクレーパ701のうちの他方の外周面スクレーパ701の下方、および、一対の側面スクレーパ704のうちの他方の側面スクレーパ704の下方に設けられている。他方の外周面スクレーパ701から流れ落ちた液状化した異物、および、他方の側面スクレーパ704から流れ落ちた液状化した異物は、他方の油受け707に溜められる。
【0033】
調速機綱車3の外周面であって調速機軸2よりも下方にある部分を外周面下方部分302とする。一対の外周面スクレーパ701のそれぞれは、外周面下方部分302から異物を除去する。
【0034】
調速機綱車3の側面における外周側部分であって調速機軸2よりも下方にある部分を側面外周側下方部分303とする。一対の側面スクレーパ704のそれぞれは、側面外周側下方部分303から異物を除去する。
【0035】
一対の外周面スクレーパ701のそれぞれは、互いに同一の構成になっている。したがって、以下、一対の外周面スクレーパ701のうちの一方の外周面スクレーパ701の構成について説明する。外周面スクレーパ701は、外周面基部708と、外周面刃部709と、を有している。
【0036】
外周面基部708は、第1側板102と第2側板103とに渡って設けられている。外周面基部708は、複数のねじ710を介して、第1側板102および第2側板103に固定されている。
【0037】
外周面刃部709は、外周面基部708と一体に形成されている。外周面刃部709の先端部は、鋭角に形成されている。外周面刃部709の先端部は、外周面下方部分302に対向している。外周面下方部分302における外周面刃部709の先端部が対向する部分を外周面異物除去対象部分304とする。外周面異物除去対象部分304に付着する異物は、外周面刃部709の先端部によって削り取られる。
【0038】
調速機軸2に沿って見た場合に、調速機綱車3の外周面を構成する円における外周面異物除去対象部分304を通る接線であって外周面異物除去対象部分304よりも上方にある半直線を接線半直線Lとする。図1では、接線半直線Lは、二点鎖線で示されている。
【0039】
外周面刃部709は、調速機軸2に沿って見た場合に、接線半直線Lと外周面刃部709との間の成す角θが90度よりも大きくなるように配置されている。言い換えれば、外周面刃部709は、調速機軸2に沿って見た場合に、接線半直線Lと外周面刃部709との間の成す角θが鈍角になるように配置されている。また、外周面刃部709は、調速機軸2に沿って見た場合に、外周面異物除去対象部分304から下方に向かって延びるように配置されている。
【0040】
外周面スクレーパ加熱装置702は、外周面スクレーパ701の外周面基部708に設けられている。外周面スクレーパ加熱装置702が外周面基部708を加熱することによって、外周面スクレーパ701が加熱される。
【0041】
外周面スクレーパ温度センサ703は、外周面スクレーパ701の外周面基部708に設けられている。外周面スクレーパ温度センサ703が外周面基部708の温度を測定することによって、外周面スクレーパ701の温度が測定される。
【0042】
一対の側面スクレーパ704のそれぞれは、互いに同一の構成になっている。したがって、以下、一対の側面スクレーパ704のうちの一方の側面スクレーパ704について説明する。側面スクレーパ704は、一対の側面基部711と、一対の側面刃部712と、を有している。
【0043】
一対の側面基部711のうちの一方の側面基部711は、第1側板102に設けられている。一対の側面基部711のうちの一方の側面基部711は、複数のねじ713を介して第1側板102に固定されている。
【0044】
一対の側面基部711のうちの他方の側面基部711は、第2側板103に設けられている。一対の側面基部711のうちの他方の側面基部711は、複数のねじ714を介して第2側板103に固定されている。
【0045】
一対の側面刃部712は、一対の側面基部711に1つずつ設けられている。一対の側面刃部712のうちの一方の側面刃部712は、調速機綱車3における軸方向を向く一対の側面のうちの一方の側面に対向して設けられている。一対の側面刃部712のうちの他方の側面刃部712は、調速機綱車3における軸方向を向く一対の側面のうちの他方の側面に対向して設けられている。
【0046】
一対の側面刃部712は、対応する側面基部711と一体に形成されている。一対の側面刃部712のそれぞれの先端部は、鋭角に形成されている。一対の側面刃部712のそれぞれは、側面外周側下方部分303に沿って配置されている。
【0047】
側面スクレーパ加熱装置705は、側面スクレーパ704のそれぞれの側面基部711に設けられている。外周面スクレーパ加熱装置702がそれぞれの側面基部711を加熱することによって、側面スクレーパ704が加熱される。
【0048】
側面スクレーパ温度センサ706は、側面スクレーパ704のそれぞれの側面基部711に設けられている。側面スクレーパ温度センサ706がそれぞれの側面基部711の温度を測定することによって、側面スクレーパ704の温度が測定される。
【0049】
図4は、図1の異物除去装置7を示すブロック図である。異物除去装置7は、制御装置715を有している。図4では、1つの外周面スクレーパ加熱装置702および1つの外周面スクレーパ温度センサ703が示されているが、一対の外周面スクレーパ加熱装置702のそれぞれと、一対の外周面スクレーパ温度センサ703のそれぞれとが制御装置715に接続されている。また、図4では、1つの側面スクレーパ加熱装置705および1つの側面スクレーパ温度センサ706が示されているが、一対の側面スクレーパ加熱装置705のそれぞれと、一対の側面スクレーパ温度センサ706のそれぞれとが制御装置715に接続されている。外周面スクレーパ温度センサ703の測定結果および側面スクレーパ温度センサ706の測定結果のそれぞれは、制御装置715に入力される。
【0050】
制御装置715は、外周面スクレーパ温度センサ703の測定結果に基づいて、外周面スクレーパ加熱装置702の駆動を制御する。制御装置715には、外周面スクレーパ701に関する許容温度が予め設定されている。外周面スクレーパ701に関する許容温度としては、調速機綱車3から除去されて外周面スクレーパ701に付着した異物が発火しない温度が設定されている。
【0051】
外周面スクレーパ701の温度が許容温度以下である場合に、制御装置715は、外周面スクレーパ加熱装置702に外周面スクレーパ701を加熱させる。一方、外周面スクレーパ701の温度が許容温度を超えた場合に、制御装置715は、外周面スクレーパ加熱装置702による外周面スクレーパ701の加熱を停止させる。
【0052】
制御装置715は、側面スクレーパ温度センサ706の測定結果に基づいて、側面スクレーパ加熱装置705の駆動を制御する。制御装置715には、側面スクレーパ704に関する許容温度が予め設定されている。側面スクレーパ704に関する許容温度としては、調速機綱車3から除去されて側面スクレーパ704に付着した異物が発火しない温度が設定されている。
【0053】
側面スクレーパ704の温度が許容温度以下である場合に、制御装置715は、側面スクレーパ加熱装置705に側面スクレーパ704を加熱させる。一方、側面スクレーパ704の温度が許容温度を超えた場合に、制御装置715は、側面スクレーパ加熱装置705による側面スクレーパ704の加熱を停止させる。
【0054】
図5は、図1の調速機おもり5が過大速度検出スイッチ6に接触した状態を示す正面図である。調速機綱車3の回転速度が予め設定された回転速度に達した場合に、調速機おもり5の作動片503が過大速度検出スイッチ6の動作片602に接触する。これにより、過大速度検出スイッチ6は、かごの速度が予め設定された速度に達したことを検出する。かごの速度が予め設定された速度に達したことを過大速度検出スイッチ6が検出した場合に、図示しない巻上機への電力の供給が停止される。これにより、かごが非常停止する。
【0055】
次に、異物除去装置7による調速機綱車3からの異物の除去について説明する。実施の形態1に係るエレベーター調速機の異物除去装置7では、調速機綱車3の外周面に付着した異物は、外周面スクレーパ701によって調速機綱車3から除去される。これにより、調速機綱車3の外周面に付着した異物が過大速度検出スイッチ6の動作片602に接触することが抑制される。したがって、過大速度検出スイッチ6が誤検出することが抑制される。
【0056】
外周面スクレーパ701の外周面刃部709は、外周面スクレーパ加熱装置702によって加熱される。これにより、外周面刃部709に付着した異物は、液状化して、外周面刃部709から流れ落ちて、油受け707に溜められる。したがって、外周面刃部709に付着した異物が調速機綱車3の外周面に再付着することが抑制される。
【0057】
また、実施の形態1に係るエレベーター調速機の異物除去装置7では、調速機綱車3の側面に付着した異物は、側面スクレーパ704によって調速機綱車3から除去される。これにより、調速機綱車3の側面に付着した異物が過大速度検出スイッチ6の動作片602に接触することが抑制される。したがって、過大速度検出スイッチ6が誤検出することが抑制される。
【0058】
側面スクレーパ704の側面刃部712は、側面スクレーパ加熱装置705によって加熱される。これにより、側面刃部712に付着した異物は、液状化して、側面刃部712から流れ落ちて、油受け707に溜められる。したがって、側面刃部712に付着した異物が調速機綱車3の側面に再付着することが抑制される。
【0059】
次に、比較例のエレベーター調速機について説明する。図6は、比較例のエレベーター調速機を示す正面図である。図7は、図6のエレベーター調速機を示す左側面図である。比較例のエレベーター調速機は、異物除去装置7を備えていない点で、実施の形態1に係るエレベーター調速機と相違する。比較例のエレベーター装置におけるその他の構成は、実施の形態1に係るエレベーター調速機の構成と同様である。
【0060】
図8は、図6の調速機おもり5が過大速度検出スイッチ6に接触した状態を示す正面図である。調速機綱車3の回転速度が予め設定された回転速度に達した場合に、調速機おもり5の作動片503が過大速度検出スイッチ6の動作片602に接触する。これにより、過大速度検出スイッチ6は、かごの速度が予め設定された速度に達したことを検出する。かごの速度が予め設定された速度に達したことを過大速度検出スイッチ6が検出した場合に、図示しない綱車への電力の供給が停止される。これにより、かごが非常停止する。
【0061】
次に、比較例のエレベーター調速機の調速機綱車3に異物が付着した場合の比較例のエレベーター調速機の動作について説明する。図9は、図6の調速機綱車3に異物が付着した状態を示す正面図である。図10は、図9のエレベーター調速機を示す左側面図である。図9および図10では、異物除去装置7を備えていないエレベーター調速機が示されているが、特許文献1に記載されたエレベーター調速機において、異物除去装置における対向部の水平面に堆積した異物が調速機綱車の側面に再付着した場合も同様の動作となる。
【0062】
調速機ロープ4には、油が染み込んでいる。調速機ロープ4に染み込んでいる油の一部は、調速機ロープ4から染み出る。調速機ロープ4から染み出た油は、調速機ロープ4に接触されている調速機綱車3に付着する。調速機ロープ4から染み出た油が次々と調速機綱車3に堆積することによって、調速機綱車3には、固化した油の塊である異物9が付着する。
【0063】
図11は、図9の異物9が過大速度検出スイッチ6に接触した状態を示す正面図である。調速機綱車3に付着した異物9が過大速度検出スイッチ6の動作片602に接触することによって、過大速度検出スイッチ6が誤検出する。
【0064】
以上説明したように、実施の形態1に係るエレベーター調速機の異物除去装置7は、外周面スクレーパ701と、外周面スクレーパ加熱装置702と、を備えている。外周面スクレーパ701は、外周面下方部分302から異物を除去する。外周面スクレーパ加熱装置702は、外周面スクレーパ701を加熱する。この構成によれば、外周面スクレーパ701によって調速機綱車3の外周面から異物が除去され、外周面スクレーパ加熱装置702によって、外周面スクレーパ701に付着した異物が流れ落ちる。これにより、外周面スクレーパ701に付着した異物が調速機綱車3の外周面に再付着することを抑制することができる。その結果、調速機綱車3から除去された異物が調速機綱車3に再付着することを抑制することができる。
【0065】
また、実施の形態1に係るエレベーター調速機の異物除去装置7では、外周面スクレーパ701は、先端部が外周面下方部分302に対向する外周面刃部709を有している。外周面刃部709は、調速機軸2に沿って見た場合に、接線半直線Lと外周面刃部709との間の成す角が90度よりも大きくなるように配置されている。この構成によれば、調速機綱車3の外周面から外周面スクレーパ701に異物が次々と堆積する場合に、外周面スクレーパ701に先に堆積した異物は、後に堆積した異物によって、調速機綱車3の外周面から離れる方向に押し出される。これにより、外周面スクレーパ701に付着した異物が調速機綱車3の外周面に再付着することを抑制することができる。
【0066】
また、実施の形態1に係るエレベーター調速機の異物除去装置7では、外周面刃部709は、調速機軸2に沿って見た場合に、外周面異物除去対象部分304から下方に向かって延びるように配置されている。この構成によれば、調速機綱車3の外周面から外周面スクレーパ701に異物が次々と堆積する場合に、外周面スクレーパ701に先に堆積した異物は、重力によって、調速機綱車3の外周面から離れる方向に移動する。これにより、外周面スクレーパ701に付着した異物が調速機綱車3の外周面に再付着することを抑制することができる。
【0067】
また、実施の形態1に係るエレベーター調速機の異物除去装置7は、側面スクレーパ704と、側面スクレーパ加熱装置705と、を備えている。側面スクレーパ704は、側面外周側下方部分303から異物を除去する。側面スクレーパ加熱装置705は、側面スクレーパ704を加熱する。この構成によれば、側面スクレーパ704によって調速機綱車3の側面から異物が除去され、側面スクレーパ加熱装置705によって、側面スクレーパ704に付着した異物が流れ落ちる。これにより、側面スクレーパ704に付着した異物が調速機綱車3の外周面に再付着することを抑制することができる。その結果、調速機綱車3から除去された異物が調速機綱車3に再付着することを抑制することができる。
【0068】
また、実施の形態1に係るエレベーター調速機の異物除去装置7では、側面スクレーパ704は、側面外周側下方部分303に沿って配置された側面刃部712を有している。この構成によれば、調速機綱車3の外周面から側面スクレーパ704に異物が次々と堆積する場合に、側面スクレーパ704に先に堆積した異物は、後に堆積した異物によって、調速機綱車3の側面から下方に押し出される。これにより、側面スクレーパ704に付着した異物が調速機綱車3の外周面に再付着することを抑制することができる。
【0069】
なお、実施の形態1に係るエレベーター調速機の異物除去装置7では、外周面スクレーパ701および外周面スクレーパ加熱装置702と、側面スクレーパ704および側面スクレーパ加熱装置705との両方を備えている構成について説明した。しかしながら、これに限らない。外周面スクレーパ701および外周面スクレーパ加熱装置702と、側面スクレーパ704および側面スクレーパ加熱装置705との何れか一方のみを備えている構成であってもよい。
【0070】
以上、好ましい実施の形態1に係るエレベーター調速機の異物除去装置7について説明したが、上述した実施の形態1に係るエレベーター調速機の異物除去装置7に制限されることはない。特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態1に係るエレベーター調速機の異物除去装置7に種々の変形および変換を加えることができる。
【0071】
(付記1)
調速機綱車の外周面であって調速機軸よりも下方にある部分である外周面下方部分から異物を除去する外周面スクレーパと、
前記外周面スクレーパを加熱する外周面スクレーパ加熱装置と、
を備えているエレベーター調速機の異物除去装置。
(付記2)
前記外周面スクレーパの温度を測定する外周面スクレーパ温度センサと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記外周面スクレーパ温度センサの測定結果に基づいて、前記外周面スクレーパ加熱装置の駆動を制御する付記1に記載のエレベーター調速機の異物除去装置。
(付記3)
前記外周面スクレーパは、先端部が前記外周面下方部分に対向する外周面刃部を有し、
前記外周面下方部分における前記外周面刃部の先端部が対向する部分を外周面異物除去対象部分とし、
前記外周面刃部は、前記調速機軸に沿って見た場合に、前記調速機綱車の外周面を構成する円における前記外周面異物除去対象部分の接線であって前記外周面異物除去対象部分よりも上方にある半直線と前記外周面刃部との間の成す角が90度よりも大きくなるように配置されている付記1または付記2に記載のエレベーター調速機の異物除去装置。
(付記4)
前記外周面刃部は、前記調速機軸に沿って見た場合に、前記外周面異物除去対象部分から下方に向かって延びるように配置されている付記3に記載のエレベーター調速機の異物除去装置。
(付記5)
前記調速機綱車の側面における外周側部分であって前記調速機軸よりも下方にある部分である側面外周側下方部分から異物を除去する側面スクレーパと、
前記側面スクレーパを加熱する側面スクレーパ加熱装置と、
を備えている付記1から付記4までの何れか一項に記載のエレベーター調速機の異物除去装置。
(付記6)
前記側面スクレーパの温度を測定する側面スクレーパ温度センサ、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記側面スクレーパ温度センサの測定結果に基づいて、前記側面スクレーパ加熱装置の駆動を制御する付記5に記載のエレベーター調速機の異物除去装置。
(付記7)
前記側面スクレーパは、前記側面外周側下方部分に沿って配置された側面刃部を有している付記5または付記6に記載のエレベーター調速機の異物除去装置。
(付記8)
調速機綱車の側面における外周側部分であって調速機軸よりも下方にある部分である側面外周側下方部分から異物を除去する側面スクレーパと、
前記側面スクレーパを加熱する側面スクレーパ加熱装置と、
を備えているエレベーター調速機の異物除去装置。
【符号の説明】
【0072】
1 フレーム、2 調速機軸、3 調速機綱車、4 調速機ロープ、5 調速機おもり、6 過大速度検出スイッチ、7 異物除去装置、8 機械室の床、9 異物、101 土台、102 第1側板、103 第2側板、104 固定アンカーボルト、301 溝、302 外周面下方部分、303 側面外周側下方部分、304 外周面異物除去対象部分、501 おもり軸、502 おもり本体、503 作動片、504 長手方向一端部、505 長手方向他端部、601 スイッチボックス、602 動作片、701 外周面スクレーパ、702 外周面スクレーパ加熱装置、703 外周面スクレーパ温度センサ、704 側面スクレーパ、705 側面スクレーパ加熱装置、706 側面スクレーパ温度センサ、707 油受け、708 外周面基部、709 外周面刃部、710 ねじ、711 側面基部、712 側面刃部、713 ねじ、714 ねじ、715 制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11