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  • 特開-電磁弁 図1
  • 特開-電磁弁 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042727
(43)【公開日】2025-03-28
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20250321BHJP
【FI】
F16K31/06 305E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149830
(22)【出願日】2023-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 守
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐之
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘典
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA05
3H106DB02
3H106DB22
3H106DB32
3H106DB39
3H106DC02
3H106DD02
3H106EE27
3H106EE35
3H106EE48
(57)【要約】
【課題】流体流量を正確に制御することができ、且つ、コアの素材が制限されない電磁弁を提供する。
【解決手段】電磁弁10は、流体流入流路20a及び流体流出流路20bが形成された流路ブロック20と、流体流入流路20aと流体流出流路20bとの一方を開閉するプランジャ30と、プランジャ30を挟んで流路ブロック20とは反対側に設けられ、プランジャ30が収容される収容室40を外部空間から隔離するダイヤフラム50と、外部空間においてダイヤフラム50を挟んでプランジャ30とは反対側に設けられた固定コア60と、固定コア60の径方向外側に設けられたコイル70と、固定コア60及びコイル70を収容するケース80と、を備え、ダイヤフラム50と固定コア60とが接着剤95で固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流入流路及び流体流出流路が形成された流路ブロックと、
前記流体流入流路と前記流体流出流路との一方を開閉するプランジャと、
前記プランジャを挟んで前記流路ブロックとは反対側に設けられ、前記プランジャが収容される収容室を外部空間から隔離するダイヤフラムと、
前記外部空間において前記ダイヤフラムを挟んで前記プランジャとは反対側に設けられた固定コアと、
前記固定コアの径方向外側に設けられたコイルと、
前記固定コア及び前記コイルを収容するケースと、
を備え、
前記ダイヤフラムと前記固定コアとが接着剤で固定されている、
電磁弁。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁弁であって、
前記接着剤は、磁性接着剤である、
電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流入口及び流出口が形成されたベースと、流出口を閉鎖可能な弁頭と、弁頭を取り囲んで内部空間を形成するダイヤフラムと、ケースに保持されたコアと、コアを囲繞するソレノイドと、を有し、コアがダイヤフラムを貫通し、その先端が弁頭に対向している電磁弁が開示されている。
【0003】
上記電磁弁は、コアがダイヤフラムを貫通して弁頭に対向しているので、弁頭のストロークは、コアの先端と弁頭の間隙によってのみ定まる。従って、半導体製造工程のようにダイヤフラムの内外で圧力差が生じるような用途に使用した場合において、仮にダイヤフラムが変形したときでも、弁頭のストロークが変わることはなく、流体流量を正確に制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-28737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記電磁弁は、コアがダイヤフラムを貫通しているので、電磁弁を流れる流体とコアとが接触する。よって、流体流量を正確に制御することができるものの、コアの素材が、流体に対応可能な素材に制限されるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、流体流量を正確に制御することができ、且つ、コアの素材が制限されない電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、流体流入流路及び流体流出流路が形成された流路ブロックと、前記流体流入流路と前記流体流出流路との一方を開閉するプランジャと、前記プランジャを挟んで前記流路ブロックとは反対側に設けられ、前記プランジャが収容される収容室を外部空間から隔離するダイヤフラムと、前記外部空間において前記ダイヤフラムを挟んで前記プランジャとは反対側に設けられた固定コアと、前記固定コアの径方向外側に設けられたコイルと、前記固定コア及び前記コイルを収容するケースと、を備え、前記ダイヤフラムと前記固定コアとが接着剤で固定されている、電磁弁が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、ダイヤフラムと固定コアとが接着剤で固定されるので、収容室の内外で圧力差が生じた場合でも、固定コアの剛性によってダイヤフラムの変形が抑制される。よって、プランジャのストロークを一定にできるので、流体流量を正確に制御することができる。また、固定コアは外部空間に設けられるので、収容室を流れる流体と接触しない。よって、流体の種類によって固定コアの素材が制限されることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電磁弁の概略断面図である。
図2図2は、電磁弁の要部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態に係る電磁弁10について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る電磁弁10の概略断面図である。図2は、電磁弁10の要部の拡大図である。図1図2における上下方向が、電磁弁10の軸方向(以下、単に軸方向という。)である。
【0012】
本実施形態に係る電磁弁10は、例えば、半導体の製造に用いられる流体制御装置に設けられる。流体は、例えば、プロセスガス等である。
【0013】
図1に示すように、電磁弁10は、流体流入流路20a及び流体流出流路20bが形成された流路ブロック20と、流体流出流路20bを開閉するプランジャ30と、プランジャ30を挟んで流路ブロック20とは反対側に設けられ、プランジャ30が収容される収容室40(図2参照)を外部空間から隔離するダイヤフラム50と、外部空間においてダイヤフラム50を挟んでプランジャ30とは反対側に設けられた固定コア60と、固定コア60の径方向外側に設けられたコイル70と、固定コア60及びコイル70を収容するケース80と、を備える。流体流入流路20a、流体流出流路20b、及び収容室40は、流体の流路を構成する。
【0014】
図1図2に示すように、流路ブロック20は、流体流入流路20aと、流体流出流路20bと、流体流出流路20bの一端の周縁に形成された円環状の弁座20cと、弁座20cの周囲に形成された円環状の環状溝20dと、環状溝20dの周囲に形成された円環状の載置部20eと、を有する。流体流入流路20aの一端は、環状溝20dの底部に開口している。
【0015】
プランジャ30は、弁座20cに着座した状態では、流体流出流路20bの一端を閉鎖する。これにより、流体流入流路20aと流体流出流路20bとの連通が遮断される。プランジャ30は、弁座20cから離座した状態では、流体流出流路20bの一端を開放する。これにより、流体流入流路20aと流体流出流路20bとの連通が許容される。
【0016】
プランジャ30は、流路ブロック20側の面に円形の段部30aを有する。段部30aは、弁座20cよりも直径が大きく、その外周に環状のディスクスプリング31が圧入固定されている。
【0017】
載置部20eには、ディスクスプリング31、環状のダイヤフラムボディ51、円盤状のダイヤフラム50、環状のサポートリング52、環状の第1スラストプレート53、環状の第2スラストプレート54、がこの順に積層されており、ナット90によって流路ブロック20に締結固定されている。
【0018】
具体的には、ナット90は、保持部90aと雌ねじ90bとを有し、流路ブロック20は、雄ねじ20fを有し、雄ねじ20fと雌ねじ90bとを螺合させてナット90を流路ブロック20に締結する。これにより、保持部90aと載置部20eとの間に、ディスクスプリング31、ダイヤフラムボディ51、ダイヤフラム50、サポートリング52、第1スラストプレート53、及び第2スラストプレート54が保持される。
【0019】
ダイヤフラムボディ51は、軸方向においてプランジャ30とダイヤフラム50との間に隙間が形成されるように、軸方向の寸法が設定されている。当該隙間を含む空間が、プランジャ30を収容する収容室40である。隙間は、例えば、0.05[mm]~0.2[mm]程度である。
【0020】
ダイヤフラムボディ51、ダイヤフラム50、及びサポートリング52は、予め外周部が溶接固定されて一体化されている。また、ディスクスプリング31の径方向外側であって、流路ブロック20とダイヤフラムボディ51との間には、環状のガスケット55が設けられる。ガスケット55は、流路ブロック20とダイヤフラムボディ51との間を封止する。これにより、収容室40が外部空間から遮断される。
【0021】
なお、ディスクスプリング31には複数の通孔31aが形成されており、流体流入流路20aと収容室40との間で圧力差が生じないようになっている。
【0022】
第1スラストプレート53及び第2スラストプレート54は、ナット90によって締結される他の構成部品(ダイヤフラムボディ51等)よりも摩擦係数が小さい。そのため、ナット90を締結する際に、第1スラストプレート53と第2スラストプレート54との間で滑りが発生しやすくなっている。第1スラストプレート53と第2スラストプレート54とは、同じ部品であってもよい。
【0023】
これにより、流路ブロック20とガスケット55との間、ガスケット55とダイヤフラムボディ51との間、等で滑りが発生することが抑制される。すなわち、ナット90を締結する際に、ガスケット55やダイヤフラムボディ51等に滑りが発生して削れてしまうことを抑制できるので、コンタミネーションの発生を抑制できる。また、部材同士の共回りを防止することができる。
【0024】
固定コア60は、軸方向において、ダイヤフラム50を挟んでプランジャ30とは反対側に設けられる。すなわち、固定コア60は、収容室40から隔てられた外部空間に位置する。固定コア60は、ダイヤフラム50に接着剤95で接着固定されている。
【0025】
コイル70は、ボビン70aに銅線(図示せず)を巻き回して構成され、固定コア60の径方向外側に配設される。
【0026】
ケース80は、固定コア60及びコイル70をその内側に収容し、ボルト(図示せず)で流路ブロック20に締結固定される。
【0027】
ケース80には、コイル70に電流を供給するための電気配線部81が設けられている。
【0028】
本実施形態の電磁弁10は以上のように構成され、コイル70に電流を供給すると、コイル70で発生した磁力線が、固定コア60、ダイヤフラム50、プランジャ30、ダイヤフラムボディ51、ナット90、ケース80の順に通り、磁力線のループが形成される。なお、固定コア60、プランジャ30、ダイヤフラムボディ51、ナット90、ケース80は磁性体であり、ダイヤフラム50は非磁性体である。
【0029】
プランジャ30に磁力が働くと、プランジャ30が、ダイヤフラム50を介して固定コア60側に吸着されて弁座20cから離座し、ディスクスプリング31のばね力とバランスする位置まで上昇する。これにより、流体の流量が電流に応じた流量に制御される。そして、プランジャ30がダイヤフラム50に当接した状態が、流体の流量が最大となる状態(最大流量に制御された状態)である。
【0030】
コイル70への電流の供給を停止すると、ディスクスプリング31のばね力によってプランジャ30が弁座20cに着座し、流体流出流路20bが閉鎖される。
【0031】
ここで、半導体の製造に用いられる流体制御装置は、系内を負圧にすることがある。そのため、電磁弁においては、ダイヤフラムによって覆われる空間(プランジャの収容室)が負圧になると、内外圧力差によってダイヤフラムが収容室側に歪むおそれがある。ダイヤフラムが収容室側に歪むと、ダイヤフラムとプランジャとの隙間が小さくなってプランジャの可動域が減少してしまうので、電磁弁の最大流量を狙い通りに制御することができなくなる。
【0032】
これに対して、ダイヤフラムの厚みを増やしてダイヤフラムが変形し難くすることや、固定コアがダイヤフラムを貫通した構造とすることが考えられる。しかしながら、ダイヤフラム自体は非磁性体のため、ダイヤフラムの厚みを増やした場合は、磁気抵抗が増えてプランジャの吸引力が弱くなってしまう。また、固定コアがダイヤフラムを貫通する構造では、電磁弁を流れる流体と固定コアとが接触するので、固定コアの素材が、流体に対応可能な素材に制限されてしまう。
【0033】
この点、本実施形態では、ダイヤフラム50と固定コア60とが接着剤95で固定されるので、収容室40の内外で圧力差が生じた場合でも、固定コア60の剛性によってダイヤフラム50の変形が抑制される。よって、プランジャ30のストローク(最大ストローク)を一定にできるので、流体流量(最大流量)を正確に制御することができる。また、固定コア60は外部空間に設けられるので、収容室40を流れる流体と接触しない。よって、流体の種類によって固定コア60の素材が制限されることを回避できる。
【0034】
接着剤95は、磁性接着剤とすることが好ましい。磁性接着剤としては、例えば、Niフィラー入りの接着剤が挙げられる。
【0035】
接着剤95を磁性接着剤とした場合は、ダイヤフラム50と固定コア60との間の空間を磁性体で埋めることができるので、より安定した磁気特性が得られる。
【0036】
ところで、本実施形態では、以上説明したように、ケース80と固定コア60とを別体とし、固定コア60とダイヤフラム50とを接着剤95で接着固定している。しかしながら、電磁弁10の構造としては、ケース80と固定コア60とを一体部品として形成することも考えられる。
【0037】
しかしながら、ケース80と固定コア60とを一体部品とした場合は、軸方向の寸法ばらつきによって、ダイヤフラム50と固定コア60との隙間が大きくなる可能性がある。この場合は、磁気抵抗が増えてプランジャ30の吸引力が弱くなってしまう。
【0038】
また、ケース80と固定コア60とを一体部品とした場合は、軸方向の寸法ばらつきによって、固定コア60がダイヤフラム50をプランジャ30側に押し出してしまう可能性がある。この場合は、ダイヤフラム50とプランジャ30との隙間が小さくなってプランジャ30の可動域が減少してしまう。
【0039】
この点、本実施形態の電磁弁10は、固定コア60とケース80とを別体としているので、ケース80と固定コア60とを一体部品とした場合に発生し得る上記の問題が発生しない。また、ケース80と固定コア60とを一体部品とした場合よりも、各部品の寸法ばらつきを許容可能となっている。
【0040】
続いて、電磁弁10の組立方法について説明する。
【0041】
第1工程では、ガスケット55、プランジャ30、及びディスクスプリング31を流路ブロック20の上に配置する。なお、プランジャ30とディスクスプリング31とは、予め圧入固定されている。
【0042】
第2工程では、ダイヤフラムボディ51、ダイヤフラム50、サポートリング52、第1スラストプレート53、及び第2スラストプレート54をガスケット55の上に配置する。なお、ダイヤフラムボディ51、ダイヤフラム50、及びサポートリング52は、予め溶接固定されている。
【0043】
第3工程では、ナット90と流路ブロック20とを締結する。
【0044】
第4工程では、ダイヤフラム50の上面に接着剤95を注入する。
【0045】
第5工程では、固定コア60をダイヤフラム50の上に配置する。
【0046】
第6工程では、コイル70及びケース80をナット90の上に配置し、ボルト(図示せず)で流路ブロック20に締結固定する。
【0047】
接着剤95が乾く前に固定コア60をダイヤフラム50の上に配置して固定できればよいので、第4工程と第5工程の順序は逆であってもよい。
【0048】
また、ダイヤフラム50と固定コア60との隙間に接着剤95が介在してもよいし、介在しなくてもよい。固定コア60の周縁部とダイヤフラム50の上面部が接着剤95によって接着され、固定されてもよい。
【0049】
以下、本発明の実施形態に係る電磁弁10の主な作用効果についてまとめて説明する。
【0050】
電磁弁10は、流体流入流路20a及び流体流出流路20bが形成された流路ブロック20と、流体流出流路20bを開閉するプランジャ30と、プランジャ30を挟んで流路ブロック20とは反対側に設けられ、プランジャ30が収容される収容室40を外部空間から隔離するダイヤフラム50と、外部空間においてダイヤフラム50を挟んでプランジャ30とは反対側に設けられた固定コア60と、固定コア60の径方向外側に設けられたコイル70と、固定コア60及びコイル70を収容するケース80と、を備え、ダイヤフラム50と固定コア60とが接着剤95で固定されている。
【0051】
これによれば、ダイヤフラム50と固定コア60とが接着剤95で固定されるので、収容室40の内外で圧力差が生じた場合でも、固定コア60の剛性によってダイヤフラム50の変形が抑制される。よって、プランジャ30のストローク(最大ストローク)を一定にできるので、流体流量(最大流量)を正確に制御することができる。また、固定コア60は外部空間に設けられるので、収容室40を流れる流体と接触しない。よって、流体の種類によって固定コア60の素材が制限されることを回避できる。
【0052】
接着剤95は、磁性接着剤であってもよい。
【0053】
接着剤95を磁性接着剤とした場合は、ダイヤフラム50と固定コア60との間の空間を磁性体で埋めることができるので、より安定した磁気特性が得られる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0055】
例えば、上記実施形態の電磁弁10は、プランジャ30が流体流出流路20bを開閉するように構成されている。しかしながら、プランジャ30が流体流入流路20aを開閉するように構成してもよい。
【0056】
また、上記実施形態の電磁弁10は、流体流入流路20aが環状溝20dに開口し、流体流出流路20bが弁座20cの内側に開口するように構成されている。しかしながら、流体流出流路20bが環状溝20dに開口し、流体流入流路20aが弁座20cの内側に開口するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 電磁弁
20 流路ブロック
20a 流体流入流路
20b 流体流出流路
30 プランジャ
40 収容室
50 ダイヤフラム
60 固定コア
70 コイル
80 ケース
95 接着剤
図1
図2