(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004275
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 51/00 20060101AFI20250107BHJP
F02M 26/67 20160101ALI20250107BHJP
F02M 26/74 20160101ALI20250107BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
F16K51/00 C
F02M26/67 311
F02M26/74 301
F16K31/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103834
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】324003048
【氏名又は名称】三菱電機モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 龍太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健夫
【テーマコード(参考)】
3G062
3H062
3H066
【Fターム(参考)】
3G062EA10
3G062EC15
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB26
3H062CC01
3H062DD01
3H062EE06
3H062GG04
3H062HH02
3H066AA01
3H066BA38
(57)【要約】
【課題】モータに向けて侵入した煤及び水分を装置外部に排出することができるバルブ装置を提供する。
【解決手段】バルブ装置は、モータシャフト21を有するモータ20と、モータシャフト21の先端が他端に挿入される弁軸11と、弁軸11を軸方向に移動可能に支持するブッシュ41,42と、弁軸11をブッシュ41,42を介して支持する貫通孔31と、弁軸11を付勢するスプリング45が設けられるスプリング室33と、貫通孔31に開口する大気開放孔34とを備える。弁軸11は、モータシャフト21の先端が嵌合する嵌合孔11aと、スプリング室33に配置され、径方向内側の開口端が、嵌合孔11aに挿入されたモータシャフト21の先端によって、封止可能となる上段連通孔11bと、上段ブッシュ41と対向する位置と、大気開放孔34と対向する位置との間において移動する下段連通孔11とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に移動するモータシャフトを有するモータと、
弁体が一端側に設けられ、前記モータシャフトの先端が他端に挿入される弁軸と、
前記弁軸を軸方向に移動可能に支持する第1ブッシュ及び第2ブッシュと、
前記弁軸を前記第1ブッシュ及び前記第2ブッシュを介して支持する貫通孔と、
前記モータシャフトが配置され、前記弁軸を閉弁側に向けて付勢するスプリングが設けられるスプリング室と、
前記貫通孔における前記第1ブッシュと前記第2ブッシュとに間に開口し、大気と連通する第1大気開放孔とを備え、
前記弁軸は、
前記モータシャフトの先端が嵌合し、軸方向に形成される嵌合孔と、
前記弁軸の外周面に開口して前記嵌合孔と連通すると共に、前記スプリング室に配置され、径方向内側の開口端が、前記嵌合孔に挿入された前記モータシャフトの先端によって、封止可能となる第1連通孔と、
前記弁軸の外周面に開口して前記嵌合孔と連通し、前記第1ブッシュの内周面と対向する位置と、前記第1大気開放孔と対向する位置との間において移動する第2連通孔とを有する
ことを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
前記第2連通孔は、
径方向内側の開口端が、前記嵌合孔に挿入された前記モータシャフトの先端によって封止されない
ことを特徴とする請求項1記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記スプリング室に開口し、大気と連通する第2大気開放孔を備える
ことを特徴とする請求項1記載のバルブ装置。
【請求項4】
外側から前記第1大気開放孔及び前記第2大気開放孔への異物の侵入を防止する異物侵入防止部材を備える
ことを特徴とする請求項3記載のバルブ装置。
【請求項5】
前記異物侵入防止部材は、
前記第1大気開放孔及び前記第2大気開放孔を外側から覆うカバー部材である
ことを特徴とする請求項4記載のバルブ装置。
【請求項6】
前記カバー部材は、ラビリンス構造を備える
ことを特徴とする請求項5記載のバルブ装置。
【請求項7】
前記異物侵入防止部材は、
前記第1大気開放孔及び前記第2大気開放孔から外側に向かう流れのみを許容する逆止弁である
ことを特徴とする請求項4記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンから排出された排気ガスの一部を、吸気系に再循環させる技術が提供されている。このような技術において、排気ガスの還流量を調整する場合、バルブ装置が採用されることがある。このバルブ装置としては、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたバルブ装置は、弁体を有する弁軸と、この弁軸を軸方向に移動可能に支持するブッシュとを、備えている。ここで、弁軸の表面に、排気ガス中に含まれる煤(カーボン)及び水分が付着(堆積を含む)してしまうと、当該弁軸がブッシュに固着すおそれがある。
【0005】
そこで、特許文献1に開示されたバルブ装置は、弁軸におけるブッシュの中に出入りする部分と、その付近とに、逃げ溝を備えることで、その逃げ溝内に、煤を付着させるようにしている。このため、特許文献1に開示されたバルブ装置は、煤が付着しても、弁軸とブッシュとの間に隙間を形成することができ、弁軸のブッシュへの固着を抑制することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたバルブ装置においては、煤が、弁軸とブッシュとの間の隙間が無くなる程、付着した場合、その効果は発揮されなくなる。また、煤及び水分が、弁軸とブッシュとの間の隙間を通過してしまった場合、それらは、弁軸を移動させるためのモータに侵入するおそれがある。このように、煤及び水分がモータに侵入した場合、バルブ装置の性能低下及び短命化を引き起こしてしまう。
【0007】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、モータに向けて侵入した煤及び水分を装置外部に排出することができるバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るバルブ装置は、軸方向に移動するモータシャフトを有するモータと、弁体が一端側に設けられ、モータシャフトの先端が他端に挿入される弁軸と、弁軸を軸方向に移動可能に支持する第1ブッシュ及び第2ブッシュと、弁軸を第1ブッシュ及び第2ブッシュを介して支持する貫通孔と、モータシャフトが配置され、弁軸を閉弁側に向けて付勢するスプリングが設けられるスプリング室と、貫通孔における第1ブッシュと第2ブッシュとの間に開口し、大気と連通する第1大気開放孔とを備え、弁軸は、モータシャフトの先端が嵌合し、軸方向に形成される嵌合孔と、弁軸の外周面に開口して嵌合孔と連通すると共に、スプリング室に配置され、径方向内側の開口端が、嵌合孔に挿入されたモータシャフトの先端によって、封止可能となる第1連通孔と、弁軸の外周面に開口して嵌合孔と連通し、第1ブッシュの内周面と対向する位置と、第1大気開放孔と対向する位置との間において移動する第2連通孔とを有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、モータに向けて侵入した煤及び水分を装置外部に排出することができる。この結果、バルブ装置は、性能低下の抑制及び長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係るバルブ装置の縦断面図である。
【
図2】実施の形態1に係るバルブ装置の縦断面図である。
【
図3】実施の形態1に係るバルブ装置の縦断面図である
【
図4】実施の形態1に係るバルブ装置の縦断面図である
【
図5】実施の形態1に係るバルブ装置の動作を説明する動作説明図である。
【
図6】
図5に続く、バルブ装置の動作を説明する動作説明図である。
【
図7】
図6に続く、バルブ装置の動作を説明する動作説明図である。
【
図8】
図7に続く、バルブ装置の動作を説明する動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
実施の形態1.
実施の形態1に係るバルブ装置について、
図1から
図8を用いて説明する。
【0013】
先ず、実施の形態1に係るバルブ装置の構成について、
図1から
図4を用いて説明する。
図1から
図4は、実施の形態1に係るバルブ装置の縦断面図である。
【0014】
具体的には、
図1は、弁体12a,12bが弁座43a,43bに着座した閉弁状態を示している。
図2は、弁体12a,12bが弁座43a,43bから離れた開弁状態を示している。
図3は、モータシャフト21が弁軸11を引き込むことで、弁体12a,12bが弁座43a,43bに着座した閉弁状態である。
図4は、
図3に示す閉弁状態から、更に、モータシャフト21のみが引き込まれた閉弁状態である。また、
図1から
図4に記載した矢印Gは、EGRガスの流れ方向を示している。
【0015】
図1に示す実施の形態1に係るバルブ装置は、例えば、車両に搭載された排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation:以下、EGRと称す)システムのEGRバルブ装置に適用されるものである。EGRシステムは、車両のエンジンにおいて、その燃焼室から排出される排気ガス中に含まれる有害物質の低減を図ることを目的として、排気ガスの一部(以下、EGRガスと称す)を、排気系から吸気系へ再循環(還流)させるための排気ガス再循環通路(以下、EGR通路と称す)を備えている。このEGRシステムは、EGRガスの流量を制御するため、EGR通路の途中に、EGRバルブ装置を備えている。EGRバルブ装置は、バルブ開度を調整することで、EGRガスの流量を制御する。
【0016】
図1から
図4に示すように、に示すように、実施の形態1に係るバルブ装置は、例えば、弁部材10、モータ20、及び、ハウジング30を備えている。
【0017】
モータ20の下部は、ハウジング30の上部に対して、例えば、ボルト等を用いて固定されている。このモータ20は、モータシャフト21を備えている。モータ20は、モータシャフト21を、その軸方向において、往復移動させることができる。段付きのモータシャフト21は、小径軸部21aを有している。小径軸部21aは、モータシャフト21の先端に形成されている。この小径軸部21aの径は、モータシャフト21における小径軸部21a以外の径よりも小径となっている。
【0018】
図1から
図4に示すように、弁部材10は、モータシャフト21の先端に対して、摺動可能に接続されている。この弁部材10は、例えば、1つの弁軸11及び2つの弁体12a,12bを備えている。弁軸11の一端側には、2つの弁体12a,12bが軸方向に並んで設けられている。なお、弁体の段数は、適宜、調整可能である。
【0019】
弁軸11は、嵌合孔11a、上段連通孔11b、及び、下段連通孔11cを有している。嵌合孔11a、上段連通孔11b、及び、下段連通孔11cは、弁軸11の他端側に形成されている。
【0020】
嵌合孔11aは、弁軸11の他端に開口し、当該弁軸11の軸方向に延びる孔である。この嵌合孔11aには、モータシャフト21の小径軸部21aが嵌合可能となっている。
【0021】
上段連通孔11b及び下段連通孔11cは、弁軸11の外周面に開口し、当該弁軸11の径方向に延びる孔である。嵌合孔11aと、上段連通孔11b及び下段連通孔11cとは、互いの軸心が直交するように配置されている。上段連通孔11bは、下段連通孔11cよりも上方に配置されている。即ち、上段連通孔11bは、下段連通孔11cよりも弁軸11の他端に近い位置に配置されている。なお、上段連通孔11bは、第1連通孔を構成し、下段連通孔11cは、第2連通孔を構成するものである。
【0022】
ここで、モータシャフト21の小径軸部21aが、嵌合孔11aに対して、最も深く挿入された場合、小径軸部21aは、上段連通孔11bを完全に封止すると共に、下段連通孔11cのうち、少なくとも一部分を開放する。また、モータシャフト21の小径軸部21aが、嵌合孔11aに対して、最も浅く挿入された場合、言い換えれば、最も引き抜かれた場合、小径軸部21aは、上段連通孔11bのうち、少なくとも一部分を開放すると共に、下段連通孔11cを完全に開放する。
【0023】
図1から
図4に示すように、ハウジング30は、貫通孔31、排気ガス通路32、スプリング室33、及び、大気開放孔34,35を備えている。
【0024】
貫通孔31は、ハウジング30の内部に形成される部位を、上下方向に貫通する孔である。ハウジング30には、貫通孔31を境にして、当該貫通孔31の上部に、スプリング室33が形成される一方、当該貫通孔31の下部に、排気ガス通路32が形成されている。排気ガス通路32とスプリング室33とは、貫通孔31を介して連通している。
【0025】
排気ガス通路32は、上記EGR通路の一部分を形成するものである。この排気ガス通路32には、流体であるEGRガスが流される。排気ガス通路32は、流入通路32a及び流出通路32b,32cから構成されている。
【0026】
流入通路32aは、排気ガス通路32の上流側を形成し、EGRガスが流入する。流出通路32b,32cは、排気ガス通路32の下流側を形成し、EGRガスを流出させる。流入通路32aは、その下流端において、流出通路32b,32cに分岐されている。上段の弁体12aは、流出通路32bに対応し、下段の弁体12bは、流出通路32cに対応している。
【0027】
スプリング室33は、モータ20と対向している。即ち、スプリング室33には、モータシャフト21が配置されている。
【0028】
大気開放孔34は、ハウジング30における貫通孔31を形成する側壁に設けられている。この大気開放孔34は、貫通孔31の内部とハウジング30の外部との間を連通している。このため、大気開放孔34は、貫通孔31の内部を大気に開放させることができる。大気開放孔34は、第1大気開放孔を構成するものである。
【0029】
大気開放孔35は、ハウジング30におけるスプリング室33を形成する側壁に設けられている。この大気開放孔35は、スプリング室33の内部とハウジング30の外部との間を連通している。このため、大気開放孔35は、スプリング室33の内部を大気に開放させることができる。大気開放孔35は、第2大気開放孔を構成するものである。
【0030】
また、
図1から
図4に示すように、ハウジング30には、上段ブッシュ41、下段ブッシュ42、弁座43a,43b、スプリング押さえ44、スプリング45、及び、カバー部材46が、設けられている。
【0031】
上段ブッシュ41及び下段ブッシュ42は、弁軸11をその軸方向において往復移動可能に支持している。この上段ブッシュ41及び下段ブッシュ42は、貫通孔31に設けられている。また、上段ブッシュ41は、下段ブッシュ42よりも上方に配置されている。上段ブッシュ41と下段ブッシュ42とは、弁軸11の軸方向において、所定の間隔で配置されている。即ち、弁軸11は、ブッシュ41,42を介して、貫通孔31に往復移動可能に支持されている。なお、上段ブッシュ41は、第1ブッシュを構成し、下段ブッシュ42は、第2ブッシュを構成するものである。
【0032】
このように、弁軸11を、ブッシュ41,42を介して、貫通孔31に支持すると、貫通孔31の内部には、空間31aが形成される。この空間31aは、弁軸11の外周面、上段ブッシュ41に下面、下段ブッシュ42の上面、及び、貫通孔31の周面によって区画形成された環状空間である。また、空間31aには、大気開放孔34が連通している。
【0033】
弁座43a,43bは、排気ガス通路32に設けられている。具体的には、弁座43aは、流出通路32bの上流端に設けられている。この弁座43aには、上段の弁体12aが着座可能となっている。弁座43bは、流出通路32cの上流端に設けられている。この弁座43bには、下段の弁体12bが着座可能となっている。
【0034】
このため、弁体12a,12bが弁座43a,43bから離れる、即ち、弁体12a,12bが開くと、流入通路32aに流入したEGRガスは、流出通路32b,32cに分岐される。このとき、弁体12a,12bの弁座43a,43bに対する開度を制御することで、排気ガス通路32を通過するEGRガスの流量が、調整可能となる。一方、弁体12a,12bが弁座43a,43bに着座、即ち、弁体12a,12bが閉まると、流入通路32aに流入したEGRガスは、弁体12a,12bによって、流出通路32b,32cへの流れが遮断される。
【0035】
スプリング押さえ44及びスプリング45は、スプリング室33に設けられている。スプリング押さえ44は、円形状をなしている。このスプリング押さえ44は、弁軸11の他端側外周面に固定されている。これに対して、スプリング45は、弁軸11に取り付けられたスプリング押さえ44と、スプリング室33の底面との間において、圧縮状態で設けられている。このため、スプリング45は、スプリング押さえ44を介して、弁軸11を上方に向けて付勢した状態となっている。即ち、弁部材10は、閉弁方向に向けて常に付勢された状態となっている。
【0036】
図4に示すように、カバー部材46は、塵及び埃等の異物がハウジング30の外部から大気開放孔34,35に侵入することを防止するためにものである。このカバー部材46は、ハウジング30の外壁面に対して、大気開放孔34,35をその外側から覆うように設けられている。カバー部材46は、異物侵入防止部材を構成するものである。
【0037】
なお、カバー部材46は、平板状のものでも良いが、ラビリンス構造を備えても良い。カバー部材46は、ラビリンス構造を備えることで、異物の大気開放孔34,35への到達を困難にすることができる。また、バルブ装置は、異物侵入防止部材として、カバー部材46に替えて、逆止弁を備えても良い。この逆止弁は、大気開放孔34,35からハウジング30の外側に向かう方向の流れのみを、許容するものである。
【0038】
そして、弁軸11が軸方向において往復移動する場合、下段連通孔11cは、上段ブッシュ41の内周面と対向する位置と、空間31aと対向する位置との間で、往復移動する。下段連通孔11cは、上段ブッシュ41の内周面と対向することで、当該上段ブッシュ41によって封止される。一方、下段連通孔11cは、空間31aと対向することで、大気開放孔34を介して、大気と連通する。
【0039】
これに対して、弁軸11が軸方向において往復移動する場合、上段連通孔11bは、常に、スプリング室33の内部に配置され、上段ブッシュ41の内周面と対向することは無い。即ち、上段連通孔11bは、上段ブッシュ41の上方において、往復移動する。
【0040】
従って、モータ20に駆動電力が供給されると、モータシャフト21は、当該モータ20の軸方向内側から軸方向外側に向けて押し出される。このため、モータシャフト21の先端は、これに嵌合する弁軸11の他端を押圧し、当該モータシャフト21は、弁軸11と一体となって、下方に向けて移動する。更に、モータシャフト21は、スプリング45の付勢力に抗して、弁軸11を下方に向けて移動させる。この結果、弁軸11の弁体12a,12bは、弁座43a,43bから離脱して、流出通路32b,32cを開放する。よって、EGRガスは、流入通路32aから流出通路32b,32cに分流し、エンジンの吸気系に還流される。このとき、EGRガスの流量は、弁体12a,12bの弁座43a,43bに対するバルブ開度に応じて制御される。
【0041】
また、モータ20に駆動電力が供給されると、モータシャフト21は、当該モータ20の軸方向外側から軸方向内側に向けて引き込まれる。このため、モータシャフト21の先端は、これに嵌合する弁軸11の他端を引き込み、当該モータシャフト21は、スプリング45の付勢力を利用しつつ、弁軸11と一体となって、上方に向けて移動する。この結果、弁軸11の弁体12a,12bは、弁座43a,43bに着座して、流出通路32b,32cを閉鎖する。よって、EGRガスの流入通路32aから流出通路32b,32cへの流れは、遮断される。即ち、EGRガスは、エンジンの吸気系に還流されない。
【0042】
ここで、排気ガス通路32を流れるEGRガスには、煤(カーボン)及び水分が含まれることが多くある。このような、煤及び水分は、弁軸11の往復移動及びモータ20側の負圧等に伴って、当該弁軸11の外周面とブッシュ41,42の内周面との間を通過し、スプリング室33を介して、モータ20の内部に侵入するおそれがある。このように、煤及び水分がモータ20の内部に侵入した場合、モータ20は、正しく動作しない。このため、バルブ装置の性能低下及び短命化を招いてしまう。
【0043】
このような問題を解決するため、例えば、ブッシュ41,42の設置付近にシール部を設けることが、考えられる。しかしながら、シール部を用いたとしても、煤及び水分の侵入を完全に阻止することは、非常に困難である。また、上記問題を解決するため、弁軸11の外周面とブッシュ41,42の内周面との間の隙間を狭くすることが、考えられる。しかしながら、その隙間を狭くすると、弁軸11に対する摺動抵抗が大きくなってしまう。この場合でも、煤及び水分の侵入を完全に阻止することは、非常に困難である。
【0044】
そこで、実施の形態1に係るバルブ装置は、侵入した煤及び水分を装置の外部に排出することができる構造を、採用した。
【0045】
次に、実施の形態1に係るバルブ装置における、侵入した煤及び水分を装置の外部に排出する動作について、
図2から
図8を用いて説明する。
図5から
図8は、実施の形態1に係るバルブ装置の動作を順に説明する動作説明図である。なお、
図5及び
図8は、
図2に対応するものであり、その
図2の要部を拡大したものである。
図6は、
図3に対応するものであり、その
図3の要部を拡大したものである。
図7は、
図4に対応するものであり、その
図7の要部を拡大したものである。また、
図7及び
図8に記載した矢印は、煤及び水分の流れ方向を示している。
【0046】
先ず、
図2及び
図5に示すように、弁体12a,12bを開けた場合、上段連通孔11bは、スプリング室33の内部に配置され、下段連通孔11cは、空間31aの内部に配置される。このとき、小径軸部21aは、嵌合孔11aに対して、最も深く挿入された状態となる。この嵌合孔11aに嵌合した小径軸部21aは、上段連通孔11bの径方向内側の開口端を封止する。
【0047】
次いで、
図3及び
図6に示すように、弁体12a,12bを閉じた場合、上段連通孔11bは、スプリング室33の内部に配置され、下段連通孔11cは、上段ブッシュ41の内周面と対向している。このとき、小径軸部21aは、モータ20側に引き込まれた分、嵌合孔11aに対する挿入量が小さくなる。その嵌合孔11aに嵌合した小径軸部21aは、上段連通孔11bの径方向内側の開口端を封止する。また、下段連通孔11cは、その径方向内側の開口端が、嵌合孔11aを介して、小径軸部21aによって封止されると共に、その径方向外側の開口端が、上段ブッシュ41によって封止される。
【0048】
次いで、
図4及び
図7に示すように、弁体12a,12bを閉じた場合でも、モータシャフト21は、更に、引き込まれる。これに対して、弁軸11は、モータシャフト21が更に引き込まれても、スプリング45がそれ以上伸びないため、上方には移動しない。このため、下段連通孔11cは、上段ブッシュ41の内周面に対向し続けているが、上段連通孔11bは、小径軸部21aによる径方向内側の開口端からの封止が解除される。この結果、スプリング室33に侵入した煤及び水分のうち、大気開放孔35から排出されなかったものが、上段連通孔11bから嵌合孔11aの内部に向けて流れ込む。
【0049】
そして、
図2及び
図8に示すように、次に、弁体12a,12bを開けた場合、嵌合孔11aの内部に取り込まれた煤及び水分は、小径軸部21aの嵌合孔11aへの最深挿入によって、余すことなく、下段連通孔11cから空間31aを介して大気開放孔34に向けて排出される。このため、スプリング室33の内部に侵入した煤及び水分は、嵌合孔11a、上段連通孔11b、下段連通孔11c、及び、小径軸部21aの協働によって、空間31aから大気開放孔34を介して、大気中に排出される。
【0050】
以上、実施の形態1に係るバルブ装置は、軸方向に移動するモータシャフト21を有するモータ20と、弁体12a,12bが一端側に設けられ、モータシャフト21の先端が他端に挿入される弁軸11と、弁軸11を軸方向に移動可能に支持する上段ブッシュ41及び下段ブッシュ42と、弁軸11を上段ブッシュ41及び下段ブッシュ42を介して支持する貫通孔31と、モータシャフト21が配置され、弁軸11を閉弁側に向けて付勢するスプリング45が設けられるスプリング室33と、貫通孔31における上段ブッシュ41と下段ブッシュ42とのに開口し、大気と連通する大気開放孔34とを備える。また、弁軸11は、モータシャフト21の先端が嵌合し、軸方向に形成される嵌合孔11aと、弁軸11の外周面に開口して嵌合孔11aと連通すると共に、スプリング室33に配置され、径方向内側の開口端が、嵌合孔11aに挿入されたモータシャフト21の先端によって、封止可能となる上段連通孔11bと、弁軸11の外周面に開口して嵌合孔11aと連通し、上段ブッシュ41の内周面と対向する位置と、大気開放孔34と対向する位置との間において移動する下段連通孔11cとを有する。このため、バルブ装置は、モータ20に向けて侵入した煤及び水分を装置外部に排出することができる。この結果、バルブ装置は、性能低下の抑制及び長寿命化を図ることができる。
【0051】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは、実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0052】
以下、本開示の諸形態を付記としてまとめて記載する。
【0053】
(付記1)
軸方向に移動するモータシャフトを有するモータと、
弁体が一端側に設けられ、前記モータシャフトの先端が他端に挿入される弁軸と、
前記弁軸を軸方向に移動可能に支持する第1ブッシュ及び第2ブッシュと、
前記弁軸を前記第1ブッシュ及び前記第2ブッシュを介して支持する貫通孔と、
前記モータシャフトが配置され、前記弁軸を閉弁側に向けて付勢するスプリングが設けられるスプリング室と、
前記貫通孔における前記第1ブッシュと前記第2ブッシュとの間に開口し、大気と連通する第1大気開放孔とを備え、
前記弁軸は、
前記モータシャフトの先端が嵌合し、軸方向に形成される嵌合孔と、
前記弁軸の外周面に開口して前記嵌合孔と連通すると共に、前記スプリング室に配置され、径方向内側の開口端が、前記嵌合孔に挿入された前記モータシャフトの先端によって、封止可能となる第1連通孔と、
前記弁軸の外周面に開口して前記嵌合孔と連通し、前記第1ブッシュの内周面と対向する位置と、前記第1大気開放孔と対向する位置との間において移動する第2連通孔とを有する
ことを特徴とするバルブ装置。
【0054】
(付記2)
前記第2連通孔は、
径方向内側の開口端が、前記嵌合孔に挿入された前記モータシャフトの先端によって封止されない
ことを特徴とする付記1記載のバルブ装置。
【0055】
(付記3)
前記スプリング室に開口し、大気と連通する第2大気開放孔を備える
ことを特徴とする付記1又は付記2記載のバルブ装置。
【0056】
(付記4)
外側から前記第1大気開放孔及び前記第2大気開放孔への異物の侵入を防止する異物侵入防止部材を備える
ことを特徴とする付記3記載のバルブ装置。
【0057】
(付記5)
前記異物侵入防止部材は、
前記第1大気開放孔及び前記第2大気開放孔を外側から覆うカバー部材である
ことを特徴とする付記4記載のバルブ装置。
【0058】
(付記6)
前記カバー部材は、ラビリンス構造を備える
ことを特徴とする付記5記載のバルブ装置。
【0059】
(付記7)
前記異物侵入防止部材は、
前記第1大気開放孔及び前記第2大気開放孔から外側に向かう流れのみを許容する逆止弁である
ことを特徴とする付記4記載のバルブ装置。
【符号の説明】
【0060】
10 弁部材、11 弁軸、11a 嵌合孔、11b 上段連通孔、11c 下段連通孔、12a,12b 弁体、20 モータ、21 モータシャフト、21a 小径軸部、30 ハウジング、31 貫通孔、31a 空間、32 排気ガス通路、32a 流入通路、32b,32c 流出通路、33 スプリング室、34,35 大気開放孔、41 上段ブッシュ、42 下段ブッシュ、43a,43b 弁座、44 スプリング押さえ、45 スプリング、46 カバー部材。