(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042865
(43)【公開日】2025-03-28
(54)【発明の名称】車載用太陽光発電システム及び車載用太陽電池パネルの動作電圧を決定する方法
(51)【国際特許分類】
G05F 1/67 20060101AFI20250321BHJP
H02S 40/32 20140101ALI20250321BHJP
H02S 50/10 20140101ALI20250321BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20250321BHJP
H10K 39/10 20230101ALI20250321BHJP
【FI】
G05F1/67 A
H02S40/32
H02S50/10
H10K30/40
H10K39/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150044
(22)【出願日】2023-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】本部 惇史
(72)【発明者】
【氏名】谷本 勉
(72)【発明者】
【氏名】冨田 要介
(72)【発明者】
【氏名】峯元 高志
(72)【発明者】
【氏名】根上 卓之
(72)【発明者】
【氏名】菱川 善博
(72)【発明者】
【氏名】中村 友祐
【テーマコード(参考)】
5F251
5H420
【Fターム(参考)】
5F251AA05
5F251AA09
5F251AA10
5F251AA11
5F251BA05
5F251JA07
5F251KA09
5H420BB03
5H420BB17
5H420CC03
5H420DD02
5H420DD06
5H420DD09
5H420EB37
5H420EB39
5H420FF03
5H420FF04
5H420FF05
5H420FF13
5H420FF22
5H420KK01
5H420KK10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】温度センサや照度センサを必要としない最大電力点追従制御が可能な車載用太陽電池パネル及び動作電圧の決定方法を提供する。
【解決手段】温度センサや照度センサが不要な車載用太陽光発電システムにおいて、その動作電圧を決定する方法は、複数の太陽電池モジュール11が並列接続して形成された太陽電池パネル1と、上記太陽電池パネルにスイッチ4を介して接続されたコンバータ3と、上記太陽電池パネルに接続された電圧計5と、制御装置2と、を備える。制御装置は、スイッチをOFFにして上記電圧計から太陽電池パネルの開放電圧を取得し、予め記憶された、太陽電池パネル1の開放電圧と最大電力点電圧との関係から、車載用太陽電池パネルの動作電圧を決定し、スイッチ4をONにすると共にコンバータ3を制御して、決定した動作電圧で発電させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池モジュールが並列接続して形成された太陽電池パネルと、
上記太陽電池パネルにスイッチを介して接続されたコンバータと、
上記太陽電池パネルに接続された電圧計と、
制御装置と、を備える車載用太陽光発電システムであって、
上記制御装置は、上記スイッチをOFFにして上記電圧計から太陽電池パネルの開放電圧を得、
予め記憶された、上記太陽電池パネルの開放電圧と最大電力点電圧との関係から、車載用太陽電池パネルの動作電圧を決定し、
上記スイッチをONにすると共に、上記コンバータを制御して上記決定した動作電圧で発電させることを特徴とする車載用太陽光発電システム。
【請求項2】
上記制御装置は、予め記憶している複数のIVカーブの開放電圧と、取得した開放電圧を比較して、受ける日射強度が最も高い太陽電池モジュールのIVカーブとして推定することを特徴とする請求項1に記載の車載用太陽光発電システム。
【請求項3】
上記制御装置が、車速に応じて太陽電池パネルの開放電圧を得る頻度を変えることを特徴とする請求項1に記載の車載用太陽光発電システム。
【請求項4】
上記制御装置は、上記太陽電池パネルの開放電圧が、予め記憶された閾値電圧未満であるとき、閾値電圧で発電させることを特徴とする請求項1に記載の車載用太陽光発電システム。
【請求項5】
上記複数の太陽電池モジュールのうち、少なくとも1つの太陽電池モジュールが、他の太陽電池モジュールと角度をもって設置されていることを特徴とする請求項1に記載の車載用太陽光発電システム。
【請求項6】
上記太陽電池モジュールが、湾曲した面に設置されていることを特徴とする請求項5に記載の車載用太陽光発電システム。
【請求項7】
上記太陽電池モジュールを構成する単位セルは、垂直投影像が長方形であることを特徴とする請求項1に記載の車載用太陽光発電システム。
【請求項8】
上記単位セルは、CIS系、a-Si系、CdTe系、ペロブスカイト系及び有機系から成る群から選ばれた薄膜材料で形成されていることを特徴とする請求項7に記載の車載用太陽光発電システム。
【請求項9】
並列に繋がれた複数の太陽電池モジュールで構成された車載用太陽電池パネルの動作点を決定する方法であって、
開放状態の太陽電池パネルの電圧を検知し、
予め設定された、上記太陽電池パネルの開放電圧と最大電力点電圧との関係から、上記車載用太陽電池パネルの動作電圧を決定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用太陽光発電システム及び車載用太陽電池パネルの動作電圧を決定する方法に係り、更に詳細には、太陽電池パネルの温度と照度とのセンシングが不要な車載用太陽光発電システム及び車載用太陽電池パネルの動作電圧を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池システムは、太陽電池の出力電力が最大になる最大電力点に追従するように制御され、上記最大電力点は受ける日照強度や温度によって変化する。
【0003】
特許文献1には、太陽電池パネルを構成する複数の太陽電池モジュールのそれぞれにDC/DCコンバータを設け、太陽電池モジュールの電圧が所定電圧以下である場合、太陽電池モジュールのそれぞれについて最大電力点追従制御を行う発電制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽電池の最適動作電圧が気象条件などによって変動するため、従来の最大電力点追従制御は、太陽電池モジュールの温度と照度とをセンシングし、予め記憶されている複数のIVカーブの中から、測定された温度及び照度に対応するIVカーブを選択し、このIVカーブに基づいて動作電圧を決定する。
【0006】
したがって、太陽電池パネルを構成するすべての太陽電池モジュールに温度センサや照度センサを設ける必要があり、上記センサの数が多くなって低コスト化が困難であると共に、太陽電池モジュールそれぞれについて制御を行うことは煩雑であると共に損失大きくなる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、温度センサや照度センサを必要としない最大電力点追従制御が可能な車載用太陽電池パネル及び動作電圧の決定方法を提供することにある。
車載用太陽光発電システム
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、太陽電池パネルを構成する太陽電池モジュールのすべてを、受ける日射強度が最も高い太陽電池モジュールの最大電力点電圧で動作させることで、太陽電池パネル全体の発電効率の低下を抑制でき、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の車載用太陽光発電システムは、複数の太陽電池モジュールが並列接続して形成された太陽電池パネルと、上記太陽電池パネルにスイッチを介して接続されたコンバータと、上記太陽電池パネルに接続された電圧計と、制御装置と、を備える。
そして、上記制御装置は、上記スイッチをOFFにして上記電圧計から太陽電池パネルの開放電圧を得、予め記憶された、上記太陽電池パネルの開放電圧と最大電力点電圧との関係から、車載用太陽電池パネルの動作電圧を決定し、上記スイッチをONにすると共に、上記コンバータを制御して上記決定した動作電圧で発電させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の車載用太陽電池パネルの動作電圧を決定する方法は、並列に繋がれた複数の太陽電池モジュールで構成された車載用太陽電池パネルの動作点を決定する方法である。
そして、予め設定された、上記太陽電池パネルの開放電圧と最大電力点電圧との関係から、上記車載用太陽電池パネルの動作電圧を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、受ける日射強度が最も多い太陽電池モジュールの最大電力点電圧で、太陽電池パネルを構成する太陽電池モジュールのすべてを動作させることとしたため、温度センサや照度センサが不要な車載用太陽光発電システム及びその動作電圧を決定する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】車載用太陽光発電システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】太陽光発電パネル(モジュール)の配置状態の一例を示す図である。
【
図3】垂直投影像が長方形の単位セルが集積した太陽光発電モジュールの照度別のIVカーブの例を示す図である。
【
図4】垂直投影像が長方形の単位セルが集積した太陽光発電モジュールの温度別のIVカーブの例である。
【
図5】制御装置の制御フローの例を示すチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の車載用太陽光発電システムについて詳細に説明する。
本発明の車載用太陽光発電システムは、太陽電池パネルと、該太陽電池パネルに接続された電圧計と、上記該太陽電池パネルにスイッチを介して接続されて上記太陽電池パネルの動作電圧の調整を行うコンバータと、該コンバータを制御する制御装置とを備える。
【0014】
図1に示すように、上記太陽電池パネルは、複数の太陽電池モジュールが並列に接続して形成され、各太陽電池モジュールは、太陽電池モジュールを構成するセルの直列接続数した数が同数であり、同条件における出力が揃うように調整されている。
【0015】
車載用太陽電池パネルの太陽電池モジュールは、
図2に示すように、車両の屋根だけでなく、ボンネットやバックドア、さらには車体の側面にも設けられることがある。
【0016】
このように、車載用太陽電池パネルは、定置型の太陽電池パネルとは異なり、湾曲した面に設置された太陽電池モジュールで構成されることや、太陽電池パネルを構成する一の太陽電池モジュールが、他の太陽電池モジュールと角度をもって設置されることがある。
【0017】
したがって、太陽電池パネルを構成する太陽電池モジュール間で日射方向に対する角度が異なって受ける日射強度が異なってしまい、太陽電池モジュール間で最大電力点電圧が異なってしまう。
【0018】
本発明は、上記のように、太陽電池モジュール間で最大電力点電圧が異なるという特質を有する車載用太陽電池パネルについて、太陽電池パネルを構成する個々の太陽電池モジュールに対して最大電力点追従制御を行うのではなく、車載用太陽電池パネルを構成するすべての太陽電池モジュールを同じ動作電圧で動作させる。
【0019】
図3に、一般的な太陽電池モジュールの照度別のIVカーブの例に示す。
図3に示すように、太陽電池モジュールは、受ける日射強度が大きくなると太陽電池モジュールが出力する短絡電流密度が増え、その照度におけるIVカーブは、短絡状態付近では平行移動に近く、高電圧側で急激に落ち込む形状をしている(傾きが急である)。
【0020】
したがって、通常の日射条件では、動作電圧が最大電力点電圧からずれる場合、高電圧側にずれたときの電流値の変化量よりも低電圧側にずれたときの電流値の変化量が小さいので、動作電圧は、最大電力点電圧から高電圧側にずれるよりも低電圧側にずれる方が、発電効率の低下を抑制できる。
【0021】
つまり、太陽電池モジュールの変換効率(η)は、短絡電流密度(Jsc)×開放電圧(Voc)×曲線因子(FF)で決定され、受ける日射強度の上昇による電流密度の上昇が電圧減少を上回ることが多い。
【0022】
したがって、受ける日射強度が最も高い太陽電池モジュールの最大電力点電圧で、太陽電池パネルを構成するすべての太陽電池モジュールを動作させることで、受ける日射強度が高い太陽電池モジュールは、最大電力点電圧で動作し、受ける日射強度が低い太陽電池モジュールについては、発電効率の低下が僅かで済む。
【0023】
このため、太陽電池モジュールのそれぞれについて最大電力点追従制御を行う太陽電池パネルに対する発電効率の低下を最小限に抑制することができる。
【0024】
そして、太陽電池パネル全体を、受ける日射強度が大きな太陽電池モジュールの最大電力点で動作させることで、太陽電池パネルの動作電圧の調整を1つのDC-DCコンバータで行うことができ、複数のDC-DCコンバータで動作電圧を調整するよりも、DC-DCコンバータによる損失を低減することができ、太陽光発電システム全体としての発電効率を向上できる。
【0025】
また、太陽電池モジュールは、
図4に示すように、温度が上昇するほど開放電圧が低くなる傾向があり、太陽電池モジュールの温度上昇は、主に日射によるものであるので、受けた日射強度が高い太陽電池モジュールほど温度が高くなって開放電圧が低くなる。
【0026】
そして、本発明の太陽電池パネルは、複数の太陽電池モジュールが並列接続されて形成されているので、太陽電池パネル全体の開放電圧は、受けた日射強度が最も高い太陽電池モジュールの開放電圧に収斂して低くなる。
【0027】
つまり、電圧の異なる太陽電池モジュールが並列接続されている場合、電圧の大きな太陽電池モジュールの電流は逆流するため、並列接続された太陽電池モジュールのうち、最も開放電圧の小さなモジュールの開放電圧が太陽電池パネルの開放電圧として検知される。
【0028】
したがって、DC-DCコンバータをスイッチによって太陽電池パネルから一時的に切り離し、そのときの太陽電池パネルの開放電圧を測定することで、受けた日射強度が最も高い太陽電池モジュールの開放電圧を検出でき、このの開放電圧に基いて太陽電池パネル全体の動作電圧を決定できる。
【0029】
したがって、太陽電池モジュールの温度と照度とをセンシングすることなく、最大電力点にほぼ追従して制御することができ、温度センサや照度センサが不要であるので、低コスト化可能である。
【0030】
ここで、車載用太陽光発電システムの制御装置の動作及び太陽電池パネルの動作電圧を決定する方法について説明する。
図5に、制御装置の制御フローを示す。
【0031】
本発明の制御装置は、スイッチをOffにして太陽電池パネルをDC-DCコンバータとの接続を解除し(S101)、電圧計から太陽電池パネル全体の開放電圧(Vo)を取得する。(S102)
【0032】
そして、取得した開放電圧(Vo)と、制御装置が予め記憶している複数のIVカーブの開放電圧と、を比較して、開放電圧が最も近いIVカーブを受ける日射強度が最も高い太陽電池モジュールのIVカーブとして推定し(S103)、このIVカーブから最適動作点電圧(Vmpp)を取得する。(S104)
【0033】
なお、最適動作点電圧の取得は、必しも制御装置が記憶しているIVカーブから取得する必要はなく、取得した開放電圧(Vo)との比や差から取得してもよい。
【0034】
そして、取得した最適動作点電圧と制御装置が予め記憶している閾値電圧(Vth)とを比較し(S105)、最適動作点電圧が閾値電圧以上であるときは、太陽電池モジュールの電圧を制御するDC-DCコンバータへの指令電圧を最適動作点電圧(Vmpp)とし(S106)、最適動作点電圧が閾値電圧未満であるときは指令電圧を閾値電圧(Vth)とする(S107)。
【0035】
これは、受けた日射強度が極端に低い、超低照度環境の太陽電池モジュールが存在する場合、その太陽電池モジュールの開放電圧は、高照度環境の太陽電池モジュールよりも小さくなるため、上記超低照度環境の太陽電池モジュールの最適動作点電圧で動作させると取り出せる電力が減ってしまうためである。
【0036】
例えば、開放電圧閾値を、8Vに設定し、8V未満の開放電圧が検出された場合は、その開放電圧に関わらず、上記閾値電圧での動作させることで取り出せる電力が減少することを防止できる。
【0037】
上記開放電圧閾値は、例えば、制御装置に記録された最大定格出力のときの動作電圧の1/4の値とすることができる。
【0038】
そして、スイッチをOnにして太陽電池パネルとDC-DCコンバータとを接続し(S108)、決定した指令電圧となるようにDC-DCコンバータのデューティ比を調節(S109)して太陽電池パネルに発電させる。
【0039】
上記制御装置は、太陽電池パネルの開放電圧を得る頻度を車速に応じて変えることが好ましい。具体的には、車速が速いときは、開放電圧を得る頻度を多くし、車速がゆっくりであるときは開放電圧を得る頻度を少なくすることで、日射条件の変化に応じた発電が可能である。
【0040】
本発明の太陽電池パネルを構成する太陽電池モジュールとしては、垂直投影像が長方形の単位セルが透明導電膜で接続された集積構造をしたものを使用することができ、また、上記単位セルを形成する材料としては、CIS系、a-Si系、CdTe系、ペロブスカイト系及び有機系の従来公知の薄膜材料を挙げることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 太陽電池パネル
11 太陽電池モジュール
12 単位セル
2 制御装置
3 DC-DCコンバータ
4 スイッチ
5 電圧計