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特開2025-42877情報処理装置、気象レーダシステム、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042877
(43)【公開日】2025-03-28
(54)【発明の名称】情報処理装置、気象レーダシステム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/10 20060101AFI20250321BHJP
   G01S 13/95 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
G01W1/10 T
G01S13/95
G01W1/10 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150059
(22)【出願日】2023-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 将太
(72)【発明者】
【氏名】塩川 教次
(72)【発明者】
【氏名】青木 朝海
(72)【発明者】
【氏名】和田 将一
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB01
5J070AC20
5J070AD01
5J070AE13
5J070AG07
5J070AH33
5J070AH34
5J070AK22
(57)【要約】
【課題】降水強度を高精度と高距離分解能で算出できる情報処理装置、気象レーダシステム、情報処理方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】実施形態に係る情報処理装置は、受信電力と偏波間位相差を取得する取得部と処理部とを具備する。処理部は、受信電力を基に反射因子を算出し、偏波間位相差を基に第1空間範囲より広い第2空間範囲について偏波間位相差変化率を算出し、偏波間位相差変化率を基に第1降水強度を算出し、反射因子と第1降水強度を基に第1係数と第2係数のいずれか一方を第2空間範囲より広い第3空間範囲について推定し、反射因子と第1降水強度を基に第1係数と第2係数のいずれか他方を第3空間範囲より狭い第4空間範囲について推定し、第3空間範囲の第1係数または第2係数の推定値と第4空間範囲の第1係数または第2係数の推定値と反射因子とを基に、第2降水強度を算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダから送信された第1空間範囲の受信電力と偏波間位相差を取得する取得部と、
前記受信電力と前記偏波間位相差を処理する処理部と、を具備し、
前記処理部は、
前記受信電力を基に前記第1空間範囲の反射因子を算出し、
前記偏波間位相差を基に前記第1空間範囲より広い第2空間範囲について前記第1空間範囲の偏波間位相差変化率を算出し、
前記偏波間位相差変化率を基に前記第2空間範囲について前記第1空間範囲の第1降水強度を算出し、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記反射因子から前記第1空間範囲の第2降水強度を求める第1係数と第2係数のいずれか一方を、前記第2空間範囲より広い第3空間範囲について推定し、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記第1係数と前記第2係数のいずれか他方を、前記第3空間範囲より狭い第4空間範囲について推定し、
前記第3空間範囲の前記第1係数と前記第2係数のいずれか一方の推定値と、前記第4空間範囲の前記第1係数と前記第2係数のいずれか他方の推定値と、前記反射因子とを基に、前記第2降水強度を算出する、情報処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、
前記反射因子が第1値以下の範囲における、固定値の前記第1係数と前記第2係数で表される前記反射因子と降水強度の関係に適合するように前記第1係数と前記第2係数のいずれか一方を前記第3空間範囲について推定する、請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、
前記第1係数と前記第2係数を前記第3空間範囲について推定し、
前記第1係数と前記第2係数を基に前記第1空間範囲の第3降水強度を算出し、
前記第2降水強度または前記第3降水強度を出力する、請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記処理部は、
前記反射因子が第1値以下の範囲における、固定値の前記第1係数と前記第2係数で表される前記反射因子と降水強度の関係に適合するように前記第1係数と前記第2係数のいずれか一方を第3空間範囲について推定する、請求項3記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第4空間範囲は、前記第1空間範囲と等しい、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記処理部は、
現在から過去の第1期間の前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記第1係数と第2係数を推定する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記反射因子の複数の範囲に、前記第1係数と第2係数を推定する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記処理部は、
現在から過去の第1期間の前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記反射因子の複数の範囲に、前記第1係数と第2係数を推定する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記処理部は、前記反射因子Zから前記第1空間範囲の第2降水強度RKDP、ZをZ=B×RKDP、Z βに基づいて求め、Bは第1係数であり、βは第2係数である、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
水平偏波と垂直偏波の電波を送信し、反射波を受信する送受信装置と、
前記送受信装置から出力された反射波信号を基に第1空間範囲の受信電力と偏波間位相差を含むレーダ信号を算出する信号処理装置と、
前記受信電力と前記偏波間位相差を処理する情報処理装置と、を具備し、
前記情報処理装置は、
前記受信電力を基に前記第1空間範囲の反射因子を算出し、
前記偏波間位相差を基に前記第1空間範囲より広い第2空間範囲について前記第1空間範囲の偏波間位相差変化率を算出し、
前記偏波間位相差変化率を基に前記第2空間範囲について前記第1空間範囲の第1降水強度を算出し、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記反射因子から前記第1空間範囲の第2降水強度を求める第1係数と第2係数のいずれか一方を、前記第2空間範囲より広い第3空間範囲について推定し、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記第1係数と前記第2係数のいずれか他方を、前記第3空間範囲より狭い第4空間範囲について推定し、
前記第3空間範囲の前記第1係数と前記第2係数のいずれか一方の推定値と、前記第4空間範囲の前記第1係数と前記第2係数のいずれか他方の推定値と、前記反射因子とを基に、前記第2降水強度を算出する、気象レーダシステム。
【請求項11】
レーダから送信された第1空間範囲の受信電力と偏波間位相差を取得し、
前記受信電力を基に前記第1空間範囲の反射因子を算出し、
前記偏波間位相差を基に前記第1空間範囲より広い第2空間範囲について前記第1空間範囲の偏波間位相差変化率を算出し、
前記偏波間位相差変化率を基に前記第2空間範囲について前記第1空間範囲の第1降水強度を算出し、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記反射因子から前記第1空間範囲の第2降水強度を求める第1係数と第2係数のいずれか一方を、前記第2空間範囲より広い第3空間範囲について推定し、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記第1係数と前記第2係数のいずれか他方を、前記第3空間範囲より狭い第4空間範囲について推定し、
前記第3空間範囲の前記第1係数と前記第2係数のいずれか一方の推定値と、前記第4空間範囲の前記第1係数と前記第2係数のいずれか他方の推定値と、前記反射因子とを基に、前記第2降水強度を算出する、情報処理方法。
【請求項12】
レーダから送信された第1空間範囲の受信電力と偏波間位相差を取得させ、
前記受信電力を基に前記第1空間範囲の反射因子を算出させ、
前記偏波間位相差を基に前記第1空間範囲より広い第2空間範囲について前記第1空間範囲の偏波間位相差変化率を算出させ、
前記偏波間位相差変化率を基に前記第2空間範囲について前記第1空間範囲の第1降水強度を算出させ、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記反射因子から前記第1空間範囲の第2降水強度を求める第1係数と第2係数のいずれか一方を、前記第2空間範囲より広い第3空間範囲について推定させ、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記第1係数と前記第2係数のいずれか他方を、前記第3空間範囲より狭い第4空間範囲について推定させ、
前記第3空間範囲の前記第1係数と前記第2係数のいずれか一方の推定値と、前記第4空間範囲の前記第1係数と前記第2係数のいずれか他方の推定値と、前記反射因子とを基に、前記第2降水強度を算出させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、気象レーダのデータを解析する情報処理装置、気象レーダシステム、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の気候変動により、局所的なゲリラ豪雨や竜巻等による大規模な水災害が社会問題となっている。水災害の発生を予測するため、降水強度(単位時間あたりの降水量)を測定する気象レーダの高精度化が求められている。気象レーダは、アンテナから電波を送信し、雨粒に反射して返ってくる電波を受信する。気象レーダは、受信電波に基づいて降水強度を観測する気象観測装置である。従来の気象レーダは、偏波間位相差変化率または反射因子のいずれか一方から降水強度を算出している。
【0003】
反射因子から算出した降水強度は、偏波間位相差変化率から算出した降水強度より、精度は低いが、分解能は高い。偏波間位相差変化率から算出した降水強度は、反射因子から算出した降水強度より、精度は高いが、分解能は低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011‐47742号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】土屋修一、外2名、“XRAIN雨量観測の実用化技術に関する検討資料”、国土技術政策総合研究所資料、第909号、平成28年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、降水強度を高精度と高分解能で算出できる情報処理装置、気象レーダシステム、情報処理方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る情報処理装置は、レーダから送信された第1空間範囲の受信電力と偏波間位相差を取得する取得部と、受信電力と偏波間位相差を処理する処理部と、を具備する。処理部は、受信電力を基に第1空間範囲の反射因子を算出し、偏波間位相差を基に第1空間範囲より広い第2空間範囲について第1空間範囲の偏波間位相差変化率を算出し、偏波間位相差変化率を基に第2空間範囲について第1空間範囲の第1降水強度を算出し、反射因子と第1降水強度を基に、反射因子から第1空間範囲の第2降水強度を求める第1係数と第2係数のいずれか一方を、第2空間範囲より広い第3空間範囲について推定し、反射因子と第1降水強度を基に、第1係数と第2係数のいずれか他方を、第3空間範囲より狭い第4空間範囲について推定し、第3空間範囲の第1係数と第2係数のいずれか一方の推定値と、第4空間範囲の第1係数と第2係数のいずれか他方の推定値と、反射因子とを基に、第2降水強度を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る情報処理装置の一例を説明するためのブロック図。
図2】第1実施形態に係る処理部の一例を説明するためのブロック図。
図3】第1実施形態に係る偏波間位相差変化率の算出範囲と、係数の推定範囲の一例を説明するための図。
図4】第1実施形態に係る格子点の降水強度と平均反射因子のデータセットの例を説明するための図。
図5】第1実施形態に係る降水強度の一例を説明するための図。
図6】第1実施形態に係る処理部の作用の一例を説明するための図。
図7】第1実施形態に係る処理部の変形例を説明するための図。
図8】第2実施形態に係る処理部の一例を説明するためのブロック図。
図9】第2実施形態に係る選択部の選択原理の一例を説明するための図。
図10】第3実施形態に係る処理部の一例を説明するためのブロック図。
図11】第3実施形態に係るメモリに保存される現在時刻と過去時刻のデータの一例を説明するための図。
図12】第3実施形態の変形例に係る処理部の一例を説明するためのブロック図。
図13】第4実施形態に係る係数の推定空間の一例を説明するための図。
図14】第5実施形態に係る処理部の一例を説明するための図。
図15】第5実施形態に係る処理部により得られるZ-R特性の一例を説明するための図。
図16】第6実施形態に係る気象レーダシステムの一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。以下の説明は、実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、以下に説明する構成要素の構造、形状、配置、材質等に限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各要素のサイズ、厚み、平面寸法又は形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、互いの寸法の関係や比率が異なる要素が含まれることもある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して重複する説明を省略する場合もある。いくつかの要素に複数の呼称を付す場合があるが、これら呼称の例はあくまで例示であり、これらの要素に他の呼称を付すことを否定するものではない。また、複数の呼称が付されていない要素についても、他の呼称を付すことを否定するものではない。以下の説明において、「接続」は直接接続のみならず、他の要素を介した接続を含む場合もある。
【0010】
実施形態における降水強度の算出の概要を説明する。
【0011】
偏波間位相差変化率KDP[°/km]から降水強度R[mm/h]を算出する際、一般的に次式が用いられる。
【0012】
【数1】
【0013】
a1とa2は定数である。偏波間位相差変化率KDPから算出した降水強度Rは、降水強度RKDPと称される。
【0014】
反射因子Zの真数をζとすると、反射因子Z[dBZ]と降水強度Rの関係は、式2に示すZ-R関係式で表される。
【0015】
【数2】
【0016】
【数3】
【0017】
B、βは係数である。反射因子Zから算出された降水強度Rは、降水強度Rと称される。
【0018】
反射因子Zを用いて降水強度Rを算出する際、式2を変形した式4が用いられる。
【0019】
【数4】
【0020】
適切な係数B、βは雨滴の粒径分布によって変動する。もし、係数Bを或る値に固定して、係数βを別の或る値に固定して降水強度Rを算出すると、降水強度Rの精度は低くなる場合がある。
【0021】
反射因子Zの観測値は、降雨による電波減衰の影響を受ける。降雨減衰量を補償する処理をしても、降雨域の遠方の反射因子Zの観測値は、大きな誤差を含む。このため、降水強度Rは、降水強度RKDPと比較して、観測誤差が大きく、精度が低い。
【0022】
一般的に、降水強度Rと比較して、降水強度RKDPの距離分解能は低い。偏波間位相差変化率KDPの算出に用いる距離(以下、算出区間と称される)が短過ぎる場合、偏波間位相差ΦDPの傾きである偏波間位相差変化率KDPに対しノイズの影響が大きくなり、適切な偏波間位相差変化率KDPが算出されない。そのため、適切な偏波間位相差変化率KDPを算出するためには、算出区間を長く設定する必要がある。算出区間が長いと、距離分解能は低い。
【0023】
以上のように、降水強度Rは距離分解能が高い一方で精度が低い。一方、降水強度RKDPは精度が高い一方で距離分解能が粗い。
【0024】
従来の気象レーダシステムは、降水強度の強弱や観測条件によって一長一短の関係の関係にある2つの降水強度R、降水強度RKDPのいずれか一方を選択しており、高い精度と高い距離分解能の降水強度を求めることができない。高い精度と高い距離分解能の降水強度を求めることが望まれている。
【0025】
例えば、低分解能な降水強度RKDPと反射因子Zから係数B、βをリアルタイムに推定し、推定した係数B、βと反射因子Zから高分解能な降水強度Rを算出することを考える。
【0026】
両係数を推定する方法として、(1)一方の係数Bを200等の値に固定して、低分解能な降水強度RKDPと反射因子Zを基に他方の係数βをZ-R関係式(式2)から導出する方法と、(2)係数B、βの両方を低分解能な降水強度RKDPと反射因子Zから同時に推定する方法を想定する。
【0027】
先にも述べたように適切な係数B、βは、雨滴の粒径分布によって変動する。そのため、観測地点毎に適切な係数B、βは変動する。しかしながら、(1)の方法では、係数Bが固定されており、状況に応じて適切な係数Bを選択することができない。(2)の方法では、係数B、βを同時に推定するためには、降水強度RKDPとKDP算出区間の反射因子Zがペアになったデータサンプルが複数必要になる。しかし、少ないデータサンプル数ではノイズの影響が大きくなり、係数B、βの推定精度が下がる。他方、データサンプル数を増やすために広い領域のデータを使用すると、両係数B、βを推定する空間分解能が下がるため、係数B、βの精度と空間分解能がトレードオフの関係となる。そのため、高空間分解能かつ高精度な係数B、βを得ることができず、その結果として降水強度の推定精度が低下する。高空間分解能かつ高精度な係数B、βをリアルタイムに算出する降水強度推定方式が望まれている。
【0028】
第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る情報処理装置10の一例を説明するためのブロック図である。情報処理装置10は、第1データベース4と第2データベース6に接続される。第1データベース4と第2データベース6は気象レーダ2に接続される。
【0029】
気象レーダ2は、アンテナと送受信回路を備える。アンテナは、モータに接続され、回転される。送受信回路は、アンテナの回転中、設置場所を中心とする所定半径(例えば、数10km乃至数100km)の観測範囲に電波を送信し、観測範囲内の雨粒に反射して返ってくる電波を受信する。電波の例は、XバンドとCバンドのマイクロ波を含む。以降、電波はマイクロ波と称される。送受信回路が送信するマイクロ波は、水平偏波と垂直偏波を含む。
【0030】
気象レーダ2は、反射波に応じたデータを出力する。データは、気象レーダ2の位置を原点とする極座標で表される観測範囲の最小単位である格子点毎に得られる。気象レーダ2が出力するデータの例は、偏波間位相差ΦDPと受信電力Pを含む。第1データベース4は、偏波間位相差ΦDPを記憶する。第2データベース6は、受信電力Pを記憶する。
【0031】
情報処理装置10は、第1取得部12、第2取得部14、処理部16及び出力部18を備える。第1取得部12は、第1データベース4に接続される。第1取得部12は、第1データベース4から偏波間位相差ΦDPを取得し、偏波間位相差ΦDPを処理部16に供給する。第2取得部14は、第2データベース6に接続される。第2取得部14は、第2データベース6から受信電力Pを取得し、受信電力Pを処理部16に供給する。処理部16は、偏波間位相差ΦDPと受信電力Pを演算処理し、処理結果を出力部18に供給する。
【0032】
処理部16は、CPU22、ストレージ24及びメモリ26を備える。CPU22、ストレージ24及びメモリ26は、バスライン28に接続される。第1取得部12、第2取得部14及び出力部18も、バスライン28に接続される。ストレージ24は、処理部16の演算処理プログラムを記憶する。CPU22は、演算処理プログラムを実行する。メモリ26は、演算処理中のデータを記憶する。処理部16は、CPU22が演算処理プログラムを実行することによりソフトウェア的に実装される。
【0033】
図1は、第1データベース4、第2データベース6、気象レーダ2及び情報処理装置10をそれぞれ別体として示したが、これらの中の一部が他の一部を備えてもよい。例えば、気象レーダ2が第1データベース4と第2データベースを備えてもよい。気象レーダ2が情報処理装置10を備えてもよい。情報処理装置10が第1データベース4と第2データベース6を備えてもよい。
【0034】
単一の気象レーダ2が2つのデータ(偏波間位相差ΦDPと受信電力P)を出力したが、2つの気象レーダを備えて、一つの気象レーダが偏波間位相差ΦDPを出力し、他の気象レーダが受信電力Pを出力してもよい。
【0035】
2個のデータベース2、4を備える代わりに、偏波間位相差ΦDPと受信電力Pを記憶する単一のデータベースを備えてもよい。
【0036】
図2は、第1実施形態に係る処理部16の一例を説明するためのブロック図である。処理部16は、偏波間位相差変化率算出部(KDP算出部)34、降水強度算出部(RKDP算出部)36、反射因子算出部(Z算出部)38、統計量算出部(Za算出部)40、第1係数推定部42、第2係数推定部44及び降水強度算出部(RKDP,Z算出部)46を備える。
【0037】
処理部16はCPU22によりソフトウェア的に実装される代わりに、図2に示す各機能ブロックを実現する複数のハードウェアブロックにより実装されてもよい。例えば処理部16は、1つ以上のCPU、マイクロプロセッサ、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の処理回路、または、これらの回路等を含む電子回路によって実現されてもよい。また、処理部16は、コンピュータ等の情報処理装置、ネットワークを介して複数のコンピュータまたはサーバが相互に通信をして構成されるコンピュータシステム、または、複数台のコンピュータが連携して情報処理を実行するPCクラスタ等により実現されてもよい。また、処理部16は、1つのCPU22を備える代わりに、複数の機能ブロックの少なくとも一部をそれぞれ実現する複数のCPUを備えてもよい。
【0038】
反射因子Z、偏波間位相差ΦDP、偏波間位相差変化率KDP、係数B、βのそれぞれは、気象レーダ2の観測範囲の格子点のデータである。偏波間位相差変化率KDP、係数B、βのそれぞれは、気象レーダ2の観測範囲の全格子点について算出、推定されるものではなく、観測範囲より狭い空間範囲について算出、推定される。図3は、第1実施形態に係る偏波間位相差変化率KDPの算出範囲と、係数B、βそれぞれの推定範囲の一例を説明するための図である。算出範囲と推定範囲は、距離方向と方位方向(または仰角方向)で定義される空間範囲である。
【0039】
反射因子Zと偏波間位相差ΦDPは第1空間範囲(格子点)に算出される。反射因子Zと偏波間位相差ΦDPは観測範囲全体について算出される。
【0040】
偏波間位相差変化率KDPは、第2空間範囲について算出される。第2空間範囲は、距離方向において第1空間範囲より広く、方位方向において第1空間範囲と同じである。偏波間位相差変化率KDPは、第2空間範囲の中心を第1空間範囲にずらしながら算出される。
【0041】
係数B、βの一方は、第3空間範囲について算出される。第3空間範囲は、距離方向と方位方向の両方向において第2空間範囲より広い。第3空間範囲の一例は、観測範囲全体である。
【0042】
係数B、βの他方は、第4空間範囲について算出される。第4空間範囲は、距離方向と方位方向の両方向において第3空間範囲より狭い。第4空間範囲の一例は、第1空間範囲である。
【0043】
第1空間範囲は、距離方向において第2空間範囲より狭く、方位方向において第2空間範囲と同じである。第1空間範囲は、距離方向と方位方向の両方向において第3空間範囲より狭い。第1空間範囲は、距離方向と方位方向の両方向において第4空間範囲と同じである、または狭い。
【0044】
第3空間範囲または第4空間範囲が第1空間範囲より広い場合、第3空間範囲または第4空間範囲に含まれる全ての第1空間範囲の係数βまたはBは、同一である。
【0045】
図2の説明に戻り、KDP算出部34は、第1空間範囲の偏波間位相差ΦDPを基に偏波間位相差変化率KDPを第2空間範囲について算出する。偏波間位相差変化率KDPは、距離方向の2地点r1,r2の偏波間位相差ΦDPをそれぞれΦDP(r)、ΦDP(r)としたとき、以下で定義される。
【0046】
【数5】
【0047】
KDP算出部34は、偏波間位相差ΦDPに対し折り返し補正処理等の品質管理処理と距離方向の平滑化処理を行ったのち、偏波間位相差ΦDPの観測格子点に偏波間位相差変化率KDPの算定に用いる第2空間範囲を算出し、第2空間範囲の偏波間位相差ΦDPから最小二乗法により回帰直線を求め、その傾きを偏波間位相差変化率KDPとする。この手法の一例は、非特許文献1に記載されている。
【0048】
反射因子Zと偏波間位相差ΦDPは第1空間範囲に算出される。偏波間位相差変化率KDPは第2空間範囲について算出される。このように、偏波間位相差変化率KDPの算出範囲は観測格子点とは一致しない。
【0049】
偏波間位相差変化率KDPは次のように算出されてもよい。先ず、(1)固定区間(固定した第2空間範囲:KDP算出区間)で、おおよそのKDPが算出される。次に、(2)おおよそのKDPをもとに、格子点毎にKDP算出区間が変動され、最終的なKDPが算出される。(1)では、KDPの大きさがいずれであっても、固定区間(例えばKDPを算出する中心格子点±15の距離格子点範囲)でKDPが算出される。(2)では、算出する格子点(中心格子点)によってKDP算出区間(第2空間範囲)が変動される。例えば、強雨域でKDPが大きい領域では、中心格子点±5の距離格子点の偏波間位相差ΦDPからKDPが算出され、弱雨域でKDPが小さい領域では、中心格子点±20の距離格子点の偏波間位相差ΦDPからKDPが算出される。この場合(1)で算出されたおおよそのKDPが使われてもよいし、(2)で算出されたKDPが使われてもよい。
【0050】
RKDP算出部36は、第2空間範囲の偏波間位相差変化率KDPから、式1により降水強度RKDPを第2空間範囲について算出する。
【0051】
Z算出部38は、気象レーダ2が観測した受信電力Pからレーダ方程式に基づいて反射因子Zを第2空間範囲について算出する。Z算出部38は、当該領域までの降雨による電波減衰量(降雨減衰量)を推定し、レーダ方程式から算出した反射因子Zに対して降雨減衰補正処理も行ってもよい。例えば、Z算出部38は、偏波間位相差変化率KDPから式6、式7により降雨減衰量の積算値(Path Integrated Attenuation:PIA)を算出してもよい。Z算出部38は、PIAを反射因子Zの観測値に足し合わせることにより、反射因子Zに対する降雨減衰を補正してもよい。
【0052】
【数6】
【0053】
【数7】
【0054】
Nはレーダから該当する格子までの距離方向のデータ数、drはレーダの距離分解能[km]、ah1とah2は定数である。図3で、レーダの位置は、左端である。図3は、距離x方位の2次元格子を示す。
【0055】
降雨減衰補正処理は他の公知技術によって行われてもよい。以降、降雨減衰補正処理後の反射因子Zは単に反射因子Zと称される。
【0056】
Za算出部40は、反射因子Zの統計量Zaを算出する。統計量Zaの一例は、降水強度RKDPの算出に用いた偏波間位相差変化率KDPの算出区間(第2空間範囲)と同一区間の反射因子Zの平均値Zaを含む。以降、反射因子Zの平均値Zaは平均反射因子Zaと称される。
【0057】
第1係数推定部42は、降水強度RKDPと平均反射因子Zaから、第2空間範囲より広い第3空間範囲について係数B、βを推定する。第3空間範囲は、観測範囲全体(Plan Position Indicator:PPI全体)とする。
【0058】
第1係数推定部42は、先ず、第2空間範囲より広い任意の領域(第3空間範囲)について、第2空間範囲の降水強度RKDPと平均反射因子Zaの関係を整理する。具体的には、格子点(第1空間範囲)の降水強度RKDPと平均反射因子Zaのペアをデータセットのような形式で内部のメモリに格納する。降水強度RKDPと平均反射因子Zaのペアの集合はデータセットと称される。図4は、第1実施形態に係る格子点の降水強度RKDPと平均反射因子Zaのデータセットの例を説明するための図である。
【0059】
第1係数推定部42は、次に、データセットにおいて、平均反射因子Zaを1[dBZ]の間隔で強度に区切り、各強度区間の降水強度RKDPの平均値RaKDPと平均反射因子Zaの平均値Zaaを求め、強度区間のRaKDPとZaaの関係を整理する。平均反射因子Zaがz1,z2,z3,z4が1[dBZ]の範囲に対応し、平均反射因子Zaがz5,z6,z7,z8,z9が1[dBZ]の範囲に対応する。
【0060】
第1係数推定部42は、最後に、降水強度RKDPの平均値RaKDPと平均反射因子Zaの平均値Zaaの関係を基に、最小二乗法によって係数B、βを推定する。具体的には、式8のように式2の両辺をlog演算し、傾きβ、切片logBの回帰直線を求めることにより係数B、βを推定する。ここで、ζaは、平均反射因子Zaの平均値Zaaの真数である。
【0061】
【数8】
【0062】
式9により切片logBから係数Bを算出することができる。
【0063】
【数9】
【0064】
第1係数推定部42により第3空間範囲について推定された係数B、βは、それぞれB、βと称される。
【0065】
第1係数推定部42は、平均反射因子Zaを1[dBZ]の間隔で区切った強度の降水強度RKDPの平均値RaKDPと平均反射因子Zaの平均値Zaaを算出せずに、データセットから最小二乗法によって係数B、βを直接算出してもよい。
【0066】
第2係数推定部44は、第3空間範囲について推定された係数βと、平均反射因子Zaと、降水強度RKDPから、第3空間範囲より狭い第4空間範囲について係数Bを算出する。第2係数推定部44は、係数Bを演算に使用しないので、第1係数推定部42は、係数Bを求めなくてもよい。本実施形態では、反射因子Zの格子点間隔(第1分解能)を第4空間範囲とし、次式により係数Bを算出する。
【0067】
【数10】

KDP,Z算出部46は、第3空間範囲について算出された係数βと、第4空間範囲について推定された係数Bと、第1空間領域の反射因子Zから、第4空間範囲の降水強度RKDP,Zを次式により算出する。
【0068】
【数11】
【0069】
出力部18は、降水強度RKDP,Zを出力する。出力の形態の例は、画面表示、リスト形式の印刷、他の装置への送信である。
【0070】
降水強度RKDP,Zは、偏波間位相差変化率KDPに基づいているので、精度が高い。さらに、降水強度RKDP,Zは、狭い第1空間範囲に算出されるので、距離分解能が高い。そのため、第1実施形態によれば、高空間分解能かつ高精度な降水強度が推定される。
【0071】
図5は、第1実施形態に係る降水強度RKDP,Zの一例を説明するための図である。図5(a)は、偏波間位相差変化率KDPから第2空間範囲について算出された低分解能の降水強度RKDPの一例を示す。図5(b)は降水強度RKDP,Zの一例を示す。降水強度RKDP,Zでは、降水強度RKDPに比べて図中央の強雨域の空間分解能が改善され、強雨域の詳細な降雨状況が観測できる。
【0072】
単一の気象レーダ2の代わりに、2つの気象レーダを備えて、一つの気象レーダが偏波間位相差ΦDPを出力し、他の気象レーダが受信電力Pを出力する場合、処理部16は、2つのレーダ間の座標の違いを補償するために、座標変換部を備えてもよい。座標変換部は、第1取得部とKDP算出部との間または第2取得部とZ算出部との間に接続してもよい。座標変換部は、同じ地点の偏波間位相差ΦDPと受信電力Pの座標が同じ座標になるように、偏波間位相差ΦDPまたは受信電力Pの座標を変換する。
【0073】
第1係数推定部42が第3空間範囲について係数B、βを推定し、第2係数推定部44が第4空間範囲について係数Bを推定したが、係数の推定順番は上記の逆でもよい。すなわち、先ず、第1係数推定部42が係数Bを推定し、次に、第2係数推定部44が係数B、βを推定してもよい。Za算出部40の出力が第2係数推定部44に供給され、第2係数推定部44の出力が第1係数推定部42に供給されてもよい。
【0074】
図6は、第1実施形態に係る処理部16の作用の一例を説明するための図である。係数Bが推定される第4空間範囲は、気象レーダ2の観測格子点である第1空間範囲と同じであるとする。或る格子点(第1空間範囲)を中心とする第2空間範囲について降水強度RKDPと反射因子Zが算出される。第2空間範囲内の格子点に平均反射因子Zaが算出される。格子点をずらしながら降水強度RKDPと平均反射因子Zaが算出される。第1空間範囲(格子点)に、精度と距離分解能が高い係数B、βが計算される。
【0075】
図7は、第1実施形態に係る処理部16の変形例を説明するための図である。変形例では、第1実施形態の処理部16が2つの処理部16、16に分割される。第1処理部16は、KDP算出部34とZ算出部38を備える。第2処理部16は、RKDP算出部36、Za算出部40、第1係数推定部42、第2係数推定部44及びRKDP,Z算出部46を備える。第1処理部16は、複数の気象レーダ2に設けられ、第2処理部16は、複数の気象レーダ2(第1処理部16)に対して共通に設けられてもよい。この場合、第2処理部16は、クラウド上に設けられ、ネットワークを介して複数の第1処理部16に接続されてもよい。この場合、気象レーダ2に、第2処理部16を設ける必要が無く、システム全体のコストが下げられる。
【0076】
第2実施形態
第2実施形態について、第1実施形態と同様の部分はその詳しい説明を省略し、第1実施形態と異なる部分について主に述べる。
【0077】
第1実施形態に係る処理部16は、平均反射因子Za、降水強度RKDP及び第3空間範囲について算出された低分解能の係数βから、第4空間範囲について高分解能の係数Bを算出する。このため、処理部16は、高精度かつ高空間分解能の降水強度RKDP,Zを算出することができる。しかし、弱雨領域では偏波間位相差変化率KDPが算出できず、降水強度RKDPが算出できない場合がある。この場合、処理部16は、式9によって第4空間範囲について高分解能の係数Bを算出することができず、式10によって降水強度RKDP,Zを算出することができない。第1実施形態に係る処理部16は、弱雨領域では、従来通り、固定の定数として設定された係数B、βを基に、反射因子Zから式4を用いて低精度な降水強度Rを算出することがある。
【0078】
第2実施形態は、偏波間位相差変化率KDPが算出できない弱雨領域の降水強度の精度を改善することを目的としている。
【0079】
図8は、第2実施形態に係る処理部16Bの一例を説明するためのブロック図である。処理部16Bは、第1実施形態の処理部16の構成に加えて、降水強度算出部(R算出部)52と選択部54を備える。
【0080】
算出部52は、反射因子Zと第3空間範囲について算出された係数B、βを用いて、式12により第3空間範囲について降水強度Rを算出する。
【0081】
【数12】
【0082】
式12で用いた係数Bと係数βは第3空間範囲について算出された低分解能の係数ではあるものの、当該データの観測時刻における各領域(第3空間範囲)の平均的な雨粒の粒径分布に応じた係数である。そのため、R算出部52は、従来固定の定数として設定されていた係数B、βをそのまま用いる場合と比較して、高精度な降水強度Rを算出することができる。
【0083】
選択部54は、降水強度RKDP,Zと降水強度Rのうちいずれか一方を選択し、選択した降水強度を出力部18へ送信する。図9は、第2実施形態に係る選択部54の選択原理の一例を説明するための図である。気象レーダ2の観測範囲は、強雨領域102と弱雨領域104を含む。強雨領域102では、降水強度RKDPが算出できるので、選択部54は、降水強度RKDP,Zを選択する。弱雨領域104では、降水強度RKDPが算出できないため、選択部54は、降水強度Rを選択する。選択部54は、降水強度RKDPがしきい値以上である場合、降水強度RKDP,Zを選択する。選択部54は、降水強度RKDPがしきい値以下である場合、降水強度Rを選択する。
【0084】
第2実施形態によれば、降水強度RKDP,Zが求められない弱雨領域104については、降水強度RKDP,Zの代わりに降水強度Rを出力する。そのため、弱雨領域についても降水強度を算出することができる。さらに、係数B、βは、当該データの観測時刻における平均的な雨粒の粒径分布に応じているので、降水強度Rの精度が高い。
【0085】
第3実施形態
第3実施形態について、第1実施形態と同様の部分はその詳しい説明を省略し、第1実施形態と異なる部分について主に述べる。
【0086】
図10は、第3実施形態に係る処理部16Cの一例を説明するためのブロック図である。処理部16Cは、第1実施形態の第1係数推定部42、第2係数推定部44の代わりに係数推定部62を備える。
【0087】
第3実施形態は、現在時刻のデータに加え過去時刻のデータも利用して第3空間範囲の係数B、βを推定する点で、第1実施形態と異なる。
【0088】
係数推定部62は、現在時刻の降水強度RKDPと平均反射因子Zaのデータ及び過去時刻の降水強度RKDPと平均反射因子Zaのデータを保存するメモリを備える。図11は、第3実施形態に係るメモリに保存される現在時刻と過去時刻のデータの一例を説明するための図である。現在時刻の降水強度RKDPと平均反射因子Zaのデータ及び過去時刻の降水強度RKDPと平均反射因子Zaのデータの例は、例えば方位方向にアンテナを機械的に1分間に1回転させる気象レーダ2において、現在時刻(単位:分)をTとしたときのT=0及び過去時刻T=-1,T=-2,…,T=-9に観測したアンテナ10周回分の偏波間位相差ΦDPから算出した降水強度RKDPとアンテナ10周回分の受信電力Pから算出した平均反射因子Zaのデータを含む。斜線領域は、係数B、βが推定される第3空間範囲を示す。第1実施形態では、係数Bまたはβの推定領域である第3空間範囲は、観測範囲全体である。第3実施形態では、係数B及びβは同じ空間範囲(第3空間範囲)について推定される。第3実施形態の第3空間範囲は、第1実施形態の第3空間範囲より狭い。
【0089】
係数推定部62は、現在時刻及び過去時刻の降水強度RKDP及び平均反射因子Zaのデータを基に、降水強度RKDPと平均反射因子Zaの関係を整理したデータセットを作成し、作成したデータセットを基に第1実施形態の第1係数推定部42と同様の方法で第3空間範囲について係数B、βを推定する。
【0090】
第3実施形態によれば、過去時刻のデータの活用によって、過去時刻のデータを使わない場合に比べ、同程度のデータサンプル数を備えた係数B、βを推定するデータセットを得るために必要な空間範囲を狭くすることができる。そのため、係数B、βの推定空間である第3空間範囲を観測範囲より狭い範囲と設定しても、高精度な係数B、βを得ることができる。これにより、RKDP,Z算出部46は、高空間分解能かつ高精度な降水強度RKDP,Zを算出できる。
【0091】
過去時刻のデータ利用を第1実施形態と組合せた第3実施形態は、過去時刻のデータ利用を第2実施形態と組合せることにより変形することができる。図12は、第3実施形態の変形例に係る処理部16Dの一例を説明するためのブロック図である。処理部16Dは、第2実施形態の第1係数推定部42、第2係数推定部44の代わりに係数推定部62を備える。係数推定部62は、現在時刻のデータに加え過去時刻のデータも利用して第3空間範囲について係数B、βを推定する。係数推定部62は、第4空間範囲の係数Bを推定しない。R算出部52は、第4空間範囲の係数Bではなく、係数推定部62で推定された第3空間範囲の係数B、βから式12により降水強度Rを算出する。
【0092】
第4実施形態
第4実施形態について、第1乃至第3実施形態と同様の部分はその詳しい説明を省略し、第1乃至第3実施形態と異なる部分について主に述べる。
【0093】
第1乃至第3実施形態では、係数B、βは第3空間範囲または第4空間範囲の各第1空間範囲で同じ値である。第4実施形態では、反射因子Zのレベルに応じて第3空間範囲または第4空間範囲を複数の第1空間範囲群に分割し、反射因子Zのレベルに応じて異なる値の係数B、βが複数の第1空間範囲群それぞれについて推定される。
【0094】
第4実施形態に係る処理部16の構成は、第1~第3実施形態の処理部16と同様であるため、図示省略する。
【0095】
第3実施形態において、平均反射因子Zaのレベルに応じて異なる値の係数B、βが複数の第1空間範囲群にそれぞれ推定される第4実施形態を説明する。図13は、第4実施形態に係る係数B、βの推定空間の一例を説明するための図である。
【0096】
便宜上、第3実施形態に係る図10を参照して第4実施形態を説明する。係数推定部62は、第3空間範囲の降水強度RKDP及び平均反射因子Zaの関係を整理したデータセットを作成し、データセットを平均反射因子Zaの強度区間に応じて複数のグループに分ける。係数推定部62は、グループごとに係数B、βを推定する。例えば、係数推定部62は、データセットを平均反射因子Zaが35[dBZ]以下のグループ1、平均反射因子Zaが35[dBZ]より大きく60[dBZ]以下のグループ2及び平均反射因子Zaが60[dBZ]より大きいグループ3に分ける。係数推定部62は、グループ毎に降水強度RKDPの平均値RaKDP及び平均反射因子Zaの平均値Zaaの関係を基に、式8の回帰直線を求め、B,βを推定する。
【0097】
グループ1のデータセットから推定した第4空間範囲の係数をBw1、βw1とし、グループ2のデータセットから推定した第4空間範囲の係数をBw2、βw2とし、グループ3のデータセットから推定した第4空間範囲の係数をBw3、βw3とする。データセットの分割数は3に限らず、2以上の任意の数でよい。
【0098】
算出部52は、係数推定部62で推定した係数B、βのペアのいずれかを選択し、第4空間領域の降水強度Rを算出する。本実施形態では、平均反射因子Zaが35dBZ以下のグループ1、平均反射因子Zaが35[dBZ]より大きく60[dBZ]以下のグループ2及び平均反射因子Zaが60[dBZ]より大きいグループ3の係数(グループ1:Bw1、βw1、グループ2:Bw2、βw2、グループ3:Bw3、βw3)に基づいて降水強度Rを次式で算出する。
【0099】
【数13】
【0100】
第4実施形態では、反射因子Zの値の範囲に係数B、βを推定することにより、降水強度の値の範囲に適した降水強度の算出が可能になり、高空間分解能かつ高精度な降水強度を算出することができる。
【0101】
反射因子Zの値の範囲の係数B、βの推定を第3実施形態と組合せた第4実施形態は、反射因子Zの値の範囲の係数B、βの推定を第1、第2実施形態と組合せることにより、変形することができる。
【0102】
第5実施形態
第5実施形態について、第1乃至第4実施形態と同様の部分はその詳しい説明を省略し、第1乃至第4実施形態と異なる部分について主に述べる。
【0103】
図14は、第5実施形態に係る処理部16Eの一例を説明するための図である。第5実施形態に係る処理部16Eは、第2実施形態に係る処理部16B(図8)の構成に加えて、係数メモリ66を備える。係数メモリ66は、固定の係数B、βを記憶する。固定の係数B、βは、弱雨領域の降水強度RKDPの算出に使用された場合、算出精度をある精度以上に保つことができるような係数である。固定の係数B、βは、過去の降雨事例における気象レーダ2の観測データを元に、反射因子Zから算出した降水強度Rが地上雨量計のデータに合うように調整された係数である。固定の係数B、βは、機械学習によりに決定されてもよい。
【0104】
第1乃至第4実施形態では、降水強度RKDPと同一区間の平均反射因子Zaの関係を整理したデータセットを基に、係数B、βが第3空間範囲について推定される。偏波間位相差変化率KDPは一定の降水強度以上の降水領域についてのみ算出可能である。そのため、弱雨領域(例えば数mm/h以下の降水領域)では、偏波間位相差変化率KDPを基に降水強度RKDPが算出できない。降水強度RKDPと同一区間の平均反射因子Zaの関係を整理したデータセットから推定した第3空間範囲の係数B、係数βは弱雨域には適さないことがあり得る。この場合、弱雨域の降水強度Rの精度が劣化する可能性がある。
【0105】
第5実施形態は、弱雨領域の降水強度の精度を改善することを目的としている。第5実施形態に係る処理部16Eの第1係数推定部42は、平均反射因子Zaと降水強度RKDPに加えて、係数メモリ66に記憶されている固定の係数B、βも利用して第3空間範囲について係数B、βを推定する。
【0106】
第1係数推定部42は、先ず、第1実施形態と同様に、第3空間範囲について、降水強度RKDPと平均反射因子Zaの関係を整理したデータセットを作成し、データセットに含まれる平均反射因子Zaを1[dBZ]の強度で区切り、各強度区間の降水強度RKDPの平均値RaKDP及び平均反射因子Zaの平均値Zaaを求め、強度区間のRaKDPとZaaの関係を整理する。以上はステップ1と称される。
【0107】
次に、非常に弱い降水強度(例えば0.5mm/h~3mm/h)に相当する反射因子Zを数点選び、選択した反射因子Zと、固定係数B、βから、降水強度Rを式4により算出する。以上はステップ2と称される。
【0108】
次に、ステップ1で整理したRaKDPとZaaの関係とステップ2で算出した非常に弱い降水強度の反射因子Zと降水強度Rの両データを連結したデータを基に、第1実施形態と同様に反射因子Zが上記量データを連結したデータに適合するように最小二乗法によって第3空間範囲について係数B、係数βを推定する。以上はステップ3と称される。
【0109】
図15は、第5実施形態に係る処理部16Eにより得られるZ-R特性の一例を説明するための図である。図15の縦軸は、反射因子Zを示す。図15の横軸は、降水強度Rを示す。黒点は、観測データ(反射因子Z)からリアルタイムに算出した降水強度Rを示す。実線は、観測データからリアルタイムに算出した降水強度Rから求めたZ-R直線を示す。白点は、固定の係数B、βを用いて算出した降水強度Rを示す。破線は、ステップ3で推定された係数B、βから算出した降水強度Rから求めたZ-R直線を示す。図15から、弱雨領域について固定係数B、βを用いて係数B、係数βを推定することにより、弱雨領域の降水強度の精度が改善されることが分かる。
【0110】
第2実施形態に係数メモリ66が追加された第5実施形態は、第1乃至第4実施形態に係数メモリ66を追加することにより、変形可能である。
【0111】
第6実施形態
第1乃至第5実施形態は、降水強度を観測する気象レーダ2とは別個の装置として構成されている情報処理装置10を説明した。第6実施形態は、第1乃至第5実施形態の情報処理装置10が気象レーダ2に組み込まれるシステムを説明する。
【0112】
図16は、第6実施形態に係る気象レーダシステム70の一例を説明するための図である。システム70は、送受信装置72、信号処理装置74及び情報処理装置80を備える。
【0113】
送受信装置72は、第1乃至第5実施形態の気象レーダ2に対応する。送受信装置72は、アンテナとモータを備える。送受信装置72は、モータを駆動し、アンテナを回転させる。送受信装置72は、アンテナからマイクロ波を送信させる。マイクロ波は、雨雲76内の雨粒78で反射される。送受信装置72は、アンテナで反射波を受信させる。
【0114】
信号処理装置74は、第1乃至第5実施形態の第1データベース4と第2データベース6に対応する記憶部を備える。信号処理装置74は、送受信装置72において受信された反射波の信号を処理することによって、観測範囲内の各格子点における観測データを取得し、観測データに基づいて偏波間位相差ΦDP及び受信電力Pを含むレーダ観測量を算出する。情報処理装置80は、偏波間位相差ΦDP及び受信電力Pのレーダ観測量も算出してよい。レーダ観測量の例は、ドップラー速度V、偏波間相関係数ρhvを含む。信号処理装置74によって生成された偏波間位相差ΦDP及び受信電力Pは、情報処理装置80に出力される。
【0115】
情報処理装置80は、前述した第1~第5実施形態において説明した情報処理装置10と同様の構成を有する。第6実施形態は、情報処理装置80が気象レーダシステム70に組み込まれている点以外は、前述した第1乃至第5実施形態と同様である。そのため、情報処理装置80の動作についての説明は省略する。
【0116】
第6実施形態によれば、第1乃至第5実施形態において説明した情報処理装置を備える気象レーダシステムが提供される。第6実施形態に係る気象レーダシステムによっても、第1乃至第5実施形態において説明したように高精度かつ高分解能の降水強度を算出することができる。
【0117】
図7に示す第1実施形態の変形例に係る第1処理部16と第2処理部16は、第2乃至第6実施形態にも適用される。図12に示す第3実施形態の変形例に係る係数推定部62は、第5乃至第6実施形態にも適用される。
【0118】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、高空間範囲かつ高精度な降水強度データを作成することができる。
【0119】
少なくとも1つの実施形態によれば、以下の情報処理装置、情報処理方法、プログラム及び気象レーダシステムが提供される。
【0120】
(1)
レーダから送信された第1空間範囲の受信電力と偏波間位相差を取得する取得部と、
前記受信電力と前記偏波間位相差を処理する処理部と、を具備し、
前記処理部は、
前記受信電力を基に前記第1空間範囲の反射因子を算出し、
前記偏波間位相差を基に前記第1空間範囲より広い第2空間範囲について前記第1空間範囲の偏波間位相差変化率を算出し、
前記偏波間位相差変化率を基に前記第2空間範囲について前記第1空間範囲の第1降水強度を算出し、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記反射因子から前記第1空間範囲の第2降水強度を求める第1係数と第2係数のいずれか一方を、前記第2空間範囲より広い第3空間範囲について推定し、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記第1係数と前記第2係数のいずれか他方を、前記第3空間範囲より狭い第4空間範囲について推定し、
前記第3空間範囲の前記第1係数と前記第2係数のいずれか一方の推定値と、前記第4空間範囲の前記第1係数と前記第2係数のいずれか他方の推定値と、前記反射因子とを基に、前記第2降水強度を算出する、情報処理装置。
【0121】
(2)
(1)に記載の情報処理装置において、
前記処理部は、
前記反射因子が第1値以下の範囲における、固定値の前記第1係数と前記第2係数で表される前記反射因子と降水強度の関係に適合するように前記第1係数と前記第2係数のいずれか一方を前記第3空間範囲について推定する。
【0122】
(3)
(1)又は(2)に記載の情報処理装置において、
前記処理部は、
前記第1係数と前記第2係数を前記第3空間範囲について推定し、
前記第1係数と前記第2係数を基に前記第1空間範囲の第3降水強度を算出し、
前記第2降水強度または前記第3降水強度を出力する。
【0123】
(4)
(1)乃至(3)のいずれかに記載の情報処理装置において、
前記処理部は、
前記反射因子が第1値以下の範囲における、固定値の前記第1係数と前記第2係数で表される前記反射因子と降水強度の関係に適合するように前記第1係数と前記第2係数のいずれか一方を第3空間範囲について推定する。
【0124】
(5)
(1)乃至(4)のいずれかに記載の情報処理装置において、
前記第4空間範囲は、前記第1空間範囲と等しい。
【0125】
(6)
(1)乃至(5)のいずれかに記載の情報処理装置において、
前記処理部は、
現在から過去の第1期間の前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記第1係数と第2係数を推定する。
【0126】
(7)
(1)乃至(6)のいずれかに記載の情報処理装置において、
前記処理部は、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記反射因子の複数の範囲に、前記第1係数と第2係数を推定する。
【0127】
(8)
(1)乃至(6)のいずれかに記載の情報処理装置において、
前記処理部は、
現在から過去の第1期間の前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記反射因子の複数の範囲に、前記第1係数と第2係数を推定する。
【0128】
(9)
(1)乃至(8)のいずれかに記載の情報処理装置において、
前記処理部は、前記反射因子Zから前記第1空間範囲の第2降水強度RKDP、ZをZ=B×RKDP、Z βに基づいて求め、Bは第1係数であり、βは第2係数である。
【0129】
(10)
水平偏波と垂直偏波の電波を送信し、反射波を受信する送受信装置と、
前記送受信装置から出力された反射波信号を基に第1空間範囲の受信電力と偏波間位相差を含むレーダ信号を算出する信号処理装置と、
前記受信電力と前記偏波間位相差を処理する情報処理装置と、を具備し、
前記情報処理装置は、
前記受信電力を基に前記第1空間範囲の反射因子を算出し、
前記偏波間位相差を基に前記第1空間範囲より広い第2空間範囲について前記第1空間範囲の偏波間位相差変化率を算出し、
前記偏波間位相差変化率を基に前記第2空間範囲について前記第1空間範囲の第1降水強度を算出し、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記反射因子から前記第1空間範囲の第2降水強度を求める第1係数と第2係数のいずれか一方を、前記第2空間範囲より広い第3空間範囲について推定し、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記第1係数と前記第2係数のいずれか他方を、前記第3空間範囲より狭い第4空間範囲について推定し、
前記第3空間範囲の前記第1係数と前記第2係数のいずれか一方の推定値と、前記第4空間範囲の前記第1係数と前記第2係数のいずれか他方の推定値と、前記反射因子とを基に、前記第2降水強度を算出する、気象レーダシステム。
【0130】
(11)
レーダから送信された第1空間範囲の受信電力と偏波間位相差を取得し、
前記受信電力を基に前記第1空間範囲の反射因子を算出し、
前記偏波間位相差を基に前記第1空間範囲より広い第2空間範囲について前記第1空間範囲の偏波間位相差変化率を算出し、
前記偏波間位相差変化率を基に前記第2空間範囲について前記第1空間範囲の第1降水強度を算出し、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記反射因子から前記第1空間範囲の第2降水強度を求める第1係数と第2係数のいずれか一方を、前記第2空間範囲より広い第3空間範囲について推定し、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記第1係数と前記第2係数のいずれか他方を、前記第3空間範囲より狭い第4空間範囲について推定し、
前記第3空間範囲の前記第1係数と前記第2係数のいずれか一方の推定値と、前記第4空間範囲の前記第1係数と前記第2係数のいずれか他方の推定値と、前記反射因子とを基に、前記第2降水強度を算出する、情報処理方法。
【0131】
(12)
レーダから送信された第1空間範囲の受信電力と偏波間位相差を取得させ、
前記受信電力を基に前記第1空間範囲の反射因子を算出させ、
前記偏波間位相差を基に前記第1空間範囲より広い第2空間範囲について前記第1空間範囲の偏波間位相差変化率を算出させ、
前記偏波間位相差変化率を基に前記第2空間範囲について前記第1空間範囲の第1降水強度を算出させ、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記反射因子から前記第1空間範囲の第2降水強度を求める第1係数と第2係数のいずれか一方を、前記第2空間範囲より広い第3空間範囲について推定させ、
前記反射因子と前記第1降水強度を基に、前記第1係数と前記第2係数のいずれか他方を、前記第3空間範囲より狭い第4空間範囲について推定させ、
前記第3空間範囲の前記第1係数と前記第2係数のいずれか一方の推定値と、前記第4空間範囲の前記第1係数と前記第2係数のいずれか他方の推定値と、前記反射因子とを基に、前記第2降水強度を算出させる、プログラム。
【0132】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0133】
2…気象レーダ、34…偏波間位相差変化率算出部、36…降水強度算出部、38…反射因子算出部、40…統計量算出部、42…第1係数推定部、44…第2係数推定部、46…降水強度算出部
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