(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042885
(43)【公開日】2025-03-28
(54)【発明の名称】コーティング組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20250321BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20250321BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/63
B32B27/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150072
(22)【出願日】2023-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中平 裕輔
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AK12
4F100AK12A
4F100AK25
4F100AK25A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CC00
4F100CC00A
4F100DG10
4F100DG10B
4F100EH46
4F100EH46A
4F100JB06
4F100JD15
4F100JM01
4F100JM01A
4J038BA212
4J038CG121
4J038CJ031
4J038JB24
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA07
4J038PB04
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】撥水性、インキの上刷り適性、及び、接着性に優れており、かつ、吸水を抑制できる塗膜を形成できるコーティング組成物を提供する。
【解決手段】樹脂と、撥水剤と、尿素系化合物とを含有するコーティング組成物であって、上記尿素系化合物が、上記コーティング組成物の全固形分中に10~60質量%含有されているコーティング組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、撥水剤と、尿素系化合物とを含有するコーティング組成物であって、
前記尿素系化合物が、前記コーティング組成物の全固形分中に10~60質量%含有されている
コーティング組成物。
【請求項2】
前記尿素系化合物は、尿素である請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記撥水剤は、パラフィン系化合物を含む請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記尿素系化合物が、前記コーティング組成物の全固形分中に20質量%以上含有されている請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記撥水剤が、前記コーティング組成物の全固形分中に20~50質量%含有されている請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
紙基材上に、請求項1又は2に記載のコーティング組成物の塗膜を備える積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーティング剤として、樹脂と、尿素系化合物とを含有するものが用いられてきた。
【0003】
例えば、特許文献1では、卵白タンパク質、可塑剤、および水性媒体を含有する、ヒートシール性コート材が開示され、上記可塑剤として尿素を用いることが開示されている。
【0004】
また例えば、特許文献2では、塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、炭酸カルシウム粉末と、発泡剤と、発泡助剤と、吸湿剤とを必須成分として含有し、該発泡助剤として脂肪酸処理した尿素あるいは尿素系化合物を用いることを特徴とする塩化ビニルプラスチゾル系アンダーコート組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-222915号公報
【特許文献2】特開平11-001658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
キャベツ等の青果物で使用される段ボールケースには、コーティングにより撥水性が付与されたボール紙が使用されている。
【0007】
近年では、撥水性に加えて、上刷りインキに対する接着性(以下、インキの上刷り適性ともいう)、紙基材とコーティング剤(コーティング組成物)の塗膜との接着性(以下、接着性ともいう)に優れており、かつ、吸水を抑制できるコーティングが求められている。
【0008】
特許文献1、2に記載のコート材では、撥水性、インキの上刷り適性、及び、接着性に優れており、かつ、吸水を抑制できる塗膜は得られておらず、更なる改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、樹脂と、撥水剤と、尿素系化合物とを含有するコーティング組成物であって、上記尿素系化合物が、上記コーティング組成物の全固形分中に10~60質量%含有されているコーティング組成物である。
【0010】
本発明のコーティング組成物において、上記尿素系化合物は、尿素であることが好ましい。
また、上記撥水剤は、パラフィン系化合物を含むことが好ましい。
また、上記尿素系化合物が、上記コーティング組成物の全固形分中に20質量%以上含有されていることが好ましい。
また、上記撥水剤が、前記コーティング組成物の全固形分中に20~50質量%含有されていることが好ましい。
本発明は、紙基材上に、上記コーティング組成物の塗膜を備える積層体でもある。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、撥水性、インキの上刷り適性、及び、接着性に優れており、かつ、吸水を抑制できる塗膜を形成できるコーティング組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<コーティング組成物>
本発明のコーティング組成物は、樹脂と、撥水剤と、尿素系化合物とを含有するコーティング組成物であって、上記尿素系化合物が、上記コーティング組成物の全固形分中に10~60質量%含有されている。
【0013】
本発明のコーティング組成物は、尿素系化合物を特定量含有することにより塩析効果が発現し、コーティング組成物の塗膜上に印刷されたインキが紙基材に対して浸透しにくくなる。これにより塗膜にインキの上刷り適性、及び、接着性が付与されると考えられる。
また、上記尿素系化合物により、いわゆる「蓮の花効果」が発現し、塗膜に撥水性を付与しつつ、吸水されにくい塗膜が形成されると考えられる。
ただし、本発明は上記メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0014】
(樹脂)
本発明のコーティング組成物は、樹脂を含有する。
【0015】
上記樹脂は、塩基性化合物によって中和された樹脂であってもよい。
【0016】
上記樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレンアクリル系樹脂及びスチレンブタジエン共重合体等が挙げられる。
上記樹脂は、単独又は2種以上を併用してもよい。また、エマルジョンの形態であってもよい。
なかでも塗膜の諸耐性(耐水性、耐摩擦性など)の観点から、スチレンアクリル系樹脂が好ましい。
【0017】
上記スチレンアクリル系樹脂は、下記のスチレン系モノマーとアクリル系モノマーとを組み合わせて得られる重合体が挙げられる。
【0018】
上記スチレン系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン及びp-フェニルスチレンが挙げられる。
【0019】
上記アクリル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジメチルフォスフェートエチル(メタ)アクリレート、ジエチルフォスフェートエチル(メタ)アクリレート、ジブチルフォスフェートエチル(メタ)アクリレート及び2-ベンゾイルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
【0020】
上記スチレンアクリル系樹脂は、無水マレイン酸とモノアルコールの反応物を含有してもよい。
上記モノアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ペタンタノール、ヘキサノール、デカノール、エチルカルビトール等のアルキルカルビトール、エチルセロソルブ等のアルキルセロソルブ等が挙げられる。
【0021】
上記スチレンアクリル系樹脂は、必要に応じて下記のモノマーを含んでも良い。
ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン系モノマー;
エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類;
【0022】
上記モノマーの重合体を作製する方法としては特に限定されず、公知の方法により重合を行えばよい。
また、重合開始剤、連鎖移動剤及び重合禁止剤等についても公知のものを用いることができる。
【0023】
上記スチレンアクリル系樹脂は、単独又は2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記樹脂は、酸価が30~300mg/KOHであることが好ましい。
酸価が上記範囲であることにより、コーティング組成物の保存安定性を良好にすることができる。
上記酸価は、50~100mg/KOHであることがより好ましい。
本明細書において「酸価」とは、上記樹脂1gの未中和物を中和するのに理論上要する水酸化カリウムのmg数を算術的に求めた理論酸価である。
なお、上記酸価は、後述する塩基性化合物により中和される前の数値を意味する。
【0025】
上記樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が50℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましい。
ガラス転移温度(Tg)が上記範囲であることにより、後述する撥水剤との相溶性を好適に付与することができる。
本明細書において「ガラス転移温度」とは、示差走査熱量計(DSC)等の熱分析装置を用いて測定してもよいが、下記のWoodの式を適用できる場合は、下記のWoodの式により求めた理論ガラス転移温度であることが好ましい。
Woodの式:
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・・・+Wn/Tgn
(式中、Tgは樹脂の理論ガラス転移温度;Tg1~Tgnは樹脂の共重合体を構成する単量体1、2、3・・・nのそれぞれの単独重合体のガラス転移温度;W1~Wnは樹脂の単量体1、2、3・・・nのそれぞれの重合分率を表す。ただし、Woodの式におけるガラス転移温度は絶対温度である。)
なお、上記ガラス転移温度は、後述する塩基性化合物により中和される前の数値を意味する。
【0026】
上記塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ポリアミン系化合物等が挙げられる。
【0027】
上記樹脂を中和する方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、上記酸価の範囲である樹脂に対して、上述した塩基性化合物を添加すればよい。
【0028】
上記樹脂の含有量は、コーティング組成物の全質量に対して固形分で1~20質量%であることが好ましい。
上記樹脂の含有量が上記範囲であることにより、撥水性を好適に付与し、吸水を好適に抑制できる塗膜を形成することができる。
上記樹脂の含有量は、コーティング組成物の全質量に対して固形分で5~15質量%であることがより好ましい。
【0029】
(撥水剤)
本発明のコーティング組成物は、撥水剤を含有する。
【0030】
上記撥水剤としては、パラフィン系化合物、ロジン、ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、カルナバワックス、マイクロスタリンワックス等が挙げられる。
上記撥水剤は、単独又は2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記撥水剤の中でも、撥水性の観点から、パラフィン系化合物が好ましい。
上記撥水剤の全量に対して、これらの撥水剤を80~99質量%含むことが好ましい。
【0032】
上記パラフィン系化合物としては、例えば、分子式:CH3-(CH2)n-CH3(n=16~40、好ましくは20~30の正数)で示される、パラフィンワックスやポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0033】
上記撥水剤は、撥水性の観点から、融点が50℃~130℃であることが好ましく、50℃~80℃であることがより好ましい。
なお、融点は、JIS K 2235:2022により測定することができる。
【0034】
なお、フッ素系撥水剤は環境の観点から好ましくなく、シリコーン系撥水剤は滑り性の観点から好ましくない。また、フッ素系撥水剤とシリコーン系撥水剤のいずれも、インキの上刷り適性の観点からも好ましくない。
そのためフッ素系撥水剤、シリコーン系撥水剤は含まないことが好ましい。
【0035】
上記撥水剤の市販品としては、例えば、RP-907N(製品名「ベルトールRP-907N」、パラフィン系化合物、融点59℃、固形分50%、近代化学工業社製)等が挙げられる。
【0036】
上記撥水剤は、コーティング組成物の全固形分中に10~50質量%含有する。
上記撥水剤を上記範囲で含有することにより撥水性を好適に付与することができる。
上記撥水剤は、コーティング組成物の全固形分中に15~45質量%含有することが好ましく、20~45質量%であることが更に好ましい。
【0037】
(尿素系化合物)
本発明のコーティング組成物は、尿素系化合物を含有する。
【0038】
上記尿素系化合物は、コーティング組成物の全固形分中に10~60質量%含有されている。
上記尿素系化合物を上記範囲で含有することにより、撥水性、インキの上刷り適性、接着性に優れ、かつ、吸水を抑制できる塗膜を形成することができる。
上記尿素系化合物は、コーティング組成物の全固形分中に20質量%以上含有されていることが好ましく、30質量%以上含有されていることがより好ましく、40質量%以上含有されていることが更に好ましい。
【0039】
上記尿素系化合物としては、尿素、ジメチルアセチル尿素、ベンゼンスルホニル尿素、トリメチル尿素、テトラエチル尿素、テトラメチル尿素、トリフェニル尿素、テトラフェニル尿素、メチル尿素、ヒダントイン等が挙げられる。
上記尿素系化合物は、単独又は2種以上を併用してもよい。
【0040】
上記尿素系化合物としては、インキの上刷り適性の観点から、尿素が好ましい。
【0041】
(水性媒体)
本発明のコーティング組成物は、水性媒体を含有してもよい。
【0042】
上記水性媒体としては、水や、メタノール、エタノール等のアルコールや、ピロリドン等のアミド系化合物等を挙げることができる。
なお、上記水性媒体は、上述した樹脂(エマルジョン)、撥水剤等の固形分以外の成分として含まれているものであってもよい。
【0043】
上記水性媒体の含有量としては、上記尿素系化合物を溶解させることができる範囲であれば特に限定されないが、例えば、コーティング組成物の全質量に対して20~80質量%である。
【0044】
(添加剤)
本発明のコーティング組成物は、滑剤、硬化剤、可塑剤、湿潤剤、界面活性剤、接着補助剤、消泡剤、帯電防止剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、防腐剤等を含んでもよい。
これらの添加剤は、公知ものを適宜選択して用いることができる。
【0045】
(コーティング組成物の製造方法)
本発明のコーティング組成物の製造方法としては特に限定されず、例えば、上記材料を公知の方法により撹拌混合すればよい。
【0046】
(コーティング組成物の物性)
本発明のコーティング組成物は、撥水性に優れる塗膜を形成することができる。
本明細書において、撥水性は以下の方法により測定する。
【0047】
本発明のコーティング組成物を、FS大王アトラス未晒(坪量120g、紙基材)に、メアバー(0.10mm)を用いて塗布し、180℃のアイロンを5秒当てて積層体を得る。
上記積層体を用い、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.68:2000に準拠する方法で撥水性を評価する。
室温下、積層体を45°に傾けたところに、積層体から10mm上方からイオン交換水の水滴を落とし、積層体上を水滴が通過したあとの様子を確認することで、撥水度R0~R10を判定する。
上記撥水度がR9以上のものを、撥水性に優れると判断する。
上記撥水度は、R10が最も好ましい。
【0048】
本発明のコーティング組成物は、吸水を抑制できる塗膜を形成することができる。
本明細書において、吸水を抑制する性質は、吸水度を用いて以下の方法により評価する。
【0049】
上記撥水性と同様の方法により積層体を作製する。
上記積層体の塗膜を形成した面について、JIS P 8140:1998に従い、温度23℃、接触時間120秒後のコッブ値(Cobb120)の条件で吸水度を測定する。
上記吸水度が20以下であれば、吸水を抑制することができると評価する。
上記吸水度は、19以下が好ましく、18以下がより好ましく、17以下が更に好ましい。
【0050】
本発明のコーティング組成物は、接着性に優れる塗膜を形成することができる。
本明細書において、接着性は以下の方法により評価する。
【0051】
上記撥水性と同様の方法により積層体を作製する。
上記積層体の塗膜を形成した面にセロハンテープ(製品名:セロテープ(登録商標)、ニチバン社製)を貼り、急速に剥がした時の状態を目視にて確認する。
紙基材が完全に破れて、紙基材が塗膜を形成した面に付着している場合、接着性に優れると評価する。
【0052】
本発明のコーティング組成物は、インキの上刷り適性に優れる塗膜を形成することができる。
本明細書において、インキの上刷り適性は以下の方法により評価する。
【0053】
上記撥水性と同様の方法により積層体を作製する。
上記積層体の塗膜が形成された面に、FK-FM DCB-312 藍 SSS-1(インキ組成物、サカタインクス社製、水で50%希釈)を200線ハンドプルーファーにて塗工する。
インキ組成物の塗工面にセロハンテープ(製品名:セロテープ(登録商標)、ニチバン社製)を貼り、急速に剥離した時のインキ組成物の塗膜の接着具合を目視にて確認する。
紙基材が完全に破れて、紙基材が塗膜(コーティング組成物及びその上面に形成されたインキ組成物の塗膜)を形成した面に付着している場合、インキの上刷り適性に優れると評価する。
【0054】
<積層体>
本発明の積層体は、紙基材上に、本発明のコーティング組成物の塗膜を備える。
【0055】
上記紙基材としては、例えば、化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプ等の一種、又は、二種以上を適宜混合されて得られるライナー原紙が挙げられる。
更に、二層以上のパルプ層を抄き合わせて多層構成になる原紙等も使用することもできる。また、上記ライナー原紙を使用した段ボールも使用することができる。
【0056】
上記紙基材に本発明のコーティング組成物を塗布する方法としては特に限定されず、公知の印刷又は塗工方式を用いることができ、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷及びインクジェット印刷等の印刷方式や、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター、エアードクターコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、スプレイコータ及びスロットオリフィスコーター等の塗工方式を用いることができる。
【0057】
本発明のコーティング組成物の塗布量としては、固形分で0.1~10g/m2とすることが好ましく、塗膜耐性を好適に付与する観点から、固形分で0.1~5g/m2とすることがより好ましい。
【0058】
本明細書では、以下の事項が開示されている。
【0059】
本開示(1)は、樹脂と、撥水剤と、尿素系化合物とを含有するコーティング組成物であって、上記尿素系化合物が、上記コーティング組成物の全固形分中に10~60質量%含有されているコーティング組成物である。
本開示(2)は、上記尿素系化合物は、尿素である本開示(1)に記載のコーティング組成物である。
本開示(3)は、上記撥水剤は、パラフィン系化合物を含む本開示(1)又は(2)に記載のコーティング組成物である。
本開示(4)は、上記尿素系化合物が、上記コーティング組成物の全固形分中に20質量%以上含有されている本開示(1)~(3)の何れかに記載のコーティング組成物である。
本開示(5)は、上記撥水剤が、前記コーティング組成物の全固形分中に20~50質量%含有されている本開示(1)~(4)の何れかに記載のコーティング組成物である。
本開示(6)は、紙基材上に、本開示(1)~(5)の何れかに記載のコーティング組成物の塗膜を備える積層体である。
【実施例0060】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0061】
実施例及び比較例で用いた材料は以下の通りである。
【0062】
<樹脂>
樹脂1(製品名「サイビノールEK-61」、固形分40質量%、スチレンアクリル系エマルジョン、酸価87mgKOH/g、ガラス転移温度24℃、アルカリ中和物、サイデン化学社製)
樹脂2(製品名「ジョンクリル PDX-7357」、固形分50質量%、スチレンアクリル系エマルジョン、酸価59mgKOH/g、ガラス転移温度-4℃、中和アルカリはアンモニア、BASF社製)
<撥水剤>
RP-907N(製品名「ベルトールRP-907N」、パラフィン系化合物、融点59℃、固形分50質量%、近代化学工業社製)
<尿素系化合物>
尿素
<その他>
消泡剤(鉱油系消泡剤)
精製水
【0063】
(コーティング組成物の作製)
表1に記載の配合で各材料を撹拌機により混合撹拌し、実施例及び比較例に係るコーティング組成物を作製した。
【0064】
<撥水性>
作製したコーティング組成物を、FS大王アトラス未晒(坪量120g)に、メアバー(0.10mm)を用いて塗布し、180℃のアイロンを5秒当てて積層体を得た。
上記積層体を用い、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.68:2000に準拠する方法で撥水性を評価した。
室温下、積層体を45°に傾けたところに、積層体から10mm上方からイオン交換水の水滴を落とし、積層体上を水滴が通過したあとの様子を確認することで、撥水度R0~R10を判定した。
その結果を表1に示した。なお、R9以上のものを合格と判断した。
【0065】
<吸水度>
上記撥水性の評価と同様の方法により積層体を作製した。
上記積層体の塗膜を形成した面について、JIS P 8140:1998に従い、温度23℃、接触時間120秒後のコッブ値(Cobb120)の条件で吸水度を測定した。
その結果を表1に示した。なお、吸水度が20以下のものを合格と判断した。
【0066】
<接着性>
上記撥水性の評価と同様の方法により積層体を作製した。
上記積層体の塗膜を形成した面にセロハンテープ(製品名:セロテープ(登録商標)、ニチバン社製)を貼り、急速に剥がした時の状態を目視にて確認し、以下の基準で評価した。その結果を表1に示した。なお、「〇」評価のものを合格と判断した。
(評価基準)
○:紙基材が完全に破れて、紙基材が塗膜を形成した面に付着している
△:紙基材の一部が破れて、紙基材が塗膜を形成した面に付着している
×:形成した塗膜のみが剥離し、紙基材が破れていない
【0067】
<インキの上刷り適性>
上記撥水性と同様の方法により積層体を作製した。
上記積層体の塗膜が形成された面に、FK-FM DCB-312 藍 SSS-1(インキ組成物、サカタインクス社製、水で50%希釈)を200線ハンドプルーファーにて塗工した。
インキ組成物の塗工面にセロハンテープ(製品名:セロテープ(登録商標)、ニチバン社製)を貼り、急速に剥離した時のインキ組成物の塗膜の接着具合を目視にて確認し、以下の基準で評価した。その結果を表1に示した。なお、「〇」評価のものを合格と判断した。
(評価基準)
○:紙基材が完全に破れて、紙基材が塗膜(コーティング組成物及びその上面に形成されたインキ組成物の塗膜)を形成した面に付着している
△:紙基材の一部が破れて、紙基材が塗膜を形成した面に付着している
×:インキ組成物の塗膜と、コーティング組成物の塗膜との界面で剥離し、紙基材が破れていない
【0068】
【0069】
実施例のコーティング組成物より、撥水性、インキの上刷り適性、及び、接着性に優れており、かつ、吸水を抑制できる塗膜を形成できることが確認された。
なお、比較例5は、コーティング組成物から尿素系化合物が析出してしまい、各評価を行うことができなかった。