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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042901
(43)【公開日】2025-03-28
(54)【発明の名称】回転装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20250321BHJP
【FI】
F16H1/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150094
(22)【出願日】2023-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】牧角 知祥
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027GA01
3J027GB03
3J027GC03
3J027GC13
3J027GC24
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE05
(57)【要約】
【課題】駆動効率を確実に向上できる回転装置を提供する。
【解決手段】筒状のケース2と、ケース2の内周面2bに第1軸受及び第2軸受16を介して回転自在に支持され、回転軸線の方向に沿う第1ピン挿入孔及び第2ピン挿入孔25bが形成されたキャリアと、キャリアの各ピン挿入孔に挿入され、キャリアに支持された動力伝達ピン9と、動力伝達ピン9の外周面9aに嵌め合わされ、第1軸受及び第2軸受16と回転軸線の方向に並んで配置された第1ブッシュ及び第2ブッシュ72と、動力伝達ピン9に第1ブッシュ及び第2ブッシュ72を介して係り合い、動力伝達ピン9を介してキャリアとの間で回転力を伝達し合う第1揺動歯車及び第2揺動歯車12と、を備える。各ブッシュ72の外端面72aは、第1軸受又は第2軸受16のみに接触している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の第1部材と、
前記第1部材の内周面に軸受を介して回転自在に支持され、回転軸線の方向に沿うピン挿入孔が形成された第2部材と、
前記第2部材の前記ピン挿入孔に挿入され、前記第2部材に支持されたピンと、
前記ピンの外周面に嵌め合わされ、前記軸受と前記回転軸線の方向に並んで配置されたブッシュと、
前記ピンに前記ブッシュを介して係り合い、前記ピンを介して前記第2部材との間で回転力を伝達し合う第3部材と、
を備え、
前記ブッシュの前記軸受側の端面は、前記軸受のみに接触している、
回転装置。
【請求項2】
前記軸受は、前記第2部材の前記ブッシュ側の端面よりも突き出ており、
前記ブッシュの径方向の肉厚は、前記ピンの前記外周面と前記軸受の内周面との間の距離よりも大きい、
請求項1に記載の回転装置。
【請求項3】
前記軸受の硬度と前記ブッシュの硬度とは同一である、
請求項1又は請求項2に記載の回転装置。
【請求項4】
内歯が設けられた筒状の内歯歯車と、
前記内歯歯車の内周面に第1軸受を介して回転自在に支持され、回転軸線の方向に沿う第1ピン挿入孔が設けられたキャリアと、
前記キャリアに第2軸受を介して回転自在に支持され、偏心部を有するクランクシャフトと、
前記クランクシャフトの前記偏心部に回転自在に支持されるとともに、前記内歯に噛み合わされる外歯と第2ピン挿入孔とが設けられた揺動歯車と、
前記第1ピン挿入孔及び前記第2ピン挿入孔に挿入されるピンと、
前記ピンの外周面のうち、前記第2ピン挿入孔に挿入された箇所に嵌め合わされるブッシュと、
を備え、
前記第1軸受と前記第2軸受とは径方向に並んで配置されており、
前記第1ピン挿入孔と前記第2ピン挿入孔とは前記回転軸線の方向で対向配置されており、
前記第1軸受及び前記第2軸受と前記ブッシュとは前記回転軸線の方向で並んで配置されており、
前記ブッシュの前記第1軸受及び前記第2軸受側の端面は、前記第1軸受及び前記第2軸受の少なくともいずれかのみに接触している、
回転装置。
【請求項5】
前記第1軸受は、前記キャリアの前記ブッシュ側の端面よりも突き出ており、
前記ブッシュの径方向の肉厚は、前記ピンの前記外周面と前記第1軸受の内周面との間の距離よりも大きい、
請求項4に記載の回転装置。
【請求項6】
前記第2軸受は、前記キャリアの前記ブッシュ側の端面よりも突き出ており、
前記ブッシュの径方向の肉厚は、前記ピンの前記外周面と前記第2軸受の外周面との間の距離よりも大きい、
請求項4又は請求項5に記載の回転装置。
【請求項7】
前記第1軸受の硬度、前記第2軸受の硬度、及び前記ブッシュの硬度は同一である、
請求項4に記載の回転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転装置の中には、例えば電動モータ等から入力部に回転が入力され、この回転を減速又は増速して出力部より出力する変速機がある。変速機の中には、例えば回転位置精度や耐荷重性の高い偏心揺動型の減速機がある。この種の減速機は、例えば内周面に内歯歯車が形成されたケース(フレーム)と、内歯歯車に噛合わされるとともに揺動回転される揺動歯車(外歯歯車)と、揺動歯車を回転自在に支持する偏心部を有するとともに、揺動歯車に回転力を伝達するクランクシャフト(入力回転体)と、揺動歯車の回転力が伝達されるピン(キャリアピン)と、ピンに連結されたキャリア(出力回転体)と、を備える。
【0003】
クランクシャフトは、キャリアに軸受を介して回転自在に支持されている。キャリアは、ケースに軸受を介して回転自在に支持されている。また、キャリアには、ピンが挿入又は圧入されるピン挿入孔が形成されている。揺動歯車にもピンが挿入されるピン挿入孔が形成されている。これらピン挿入孔にピンが挿入されることにより、揺動歯車の回転がピンを介してキャリアに伝達される。
揺動歯車のピン挿入孔は、ピンに対する揺動歯車の揺動運動を許容可能な大きさに形成されている。ピンの外周面には、揺動歯車のピン挿入孔の箇所に円筒状のブッシュが嵌め合わされている。これにより、ブッシュとピン及び揺動歯車とを滑り接触させ、接触抵抗をできるだけ小さくすることで、駆動効率を向上させようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-82993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述の従来技術では、ブッシュの軸方向の端面が軸受やキャリアに摺動するため接触抵抗が大きくなってしまう。このため、減速機の駆動効率を向上しにくいという課題があった。
【0006】
本発明は、駆動効率を確実に向上できる回転装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る回転装置は、筒状の第1部材と、前記第1部材の内周面に軸受を介して回転自在に支持され、回転軸線の方向に沿うピン挿入孔が形成された第2部材と、前記第2部材の前記ピン挿入孔に挿入され、前記第2部材に支持されたピンと、前記ピンの外周面に嵌め合わされ、前記軸受と前記回転軸線の方向に並んで配置されたブッシュと、前記ピンに前記ブッシュを介して係り合い、前記ピンを介して前記第2部材との間で回転力を伝達し合う第3部材と、を備え、前記ブッシュの前記軸受側の端面は、前記軸受のみに接触している。
【0008】
このように構成することで、ブッシュが軸受の他に第2部材と接触してしまうことを防止できる。この結果、ブッシュの軸受側の端面での接触面積を、ブッシュと軸受及び第2部材とが接触する場合と比較して小さくできる。この結果、ブッシュによる接触抵抗を小さくでき、回転装置の駆動効率を確実に向上できる。
【0009】
上記構成で、前記軸受は、前記第2部材の前記ブッシュ側の端面よりも突き出ており、前記ブッシュの径方向の肉厚は、前記ピンの前記外周面と前記軸受の内周面との間の距離よりも大きくてもよい。
【0010】
上記構成で、前記軸受の硬度と前記ブッシュの硬度とは同一であってもよい。
【0011】
本発明の他の態様に係る回転装置は、内歯が設けられた筒状の内歯歯車と、前記内歯歯車の内周面に第1軸受を介して回転自在に支持され、回転軸線の方向に沿う第1ピン挿入孔が設けられたキャリアと、前記キャリアに第2軸受を介して回転自在に支持され、偏心部を有するクランクシャフトと、前記クランクシャフトの前記偏心部に回転自在に支持されるとともに、前記内歯に噛み合わされる外歯と第2ピン挿入孔とが設けられた揺動歯車と、前記第1ピン挿入孔及び前記第2ピン挿入孔に挿入されるピンと、前記ピンの外周面のうち、前記第2ピン挿入孔に挿入された箇所に嵌め合わされるブッシュと、を備え、前記第1軸受と前記第2軸受とは径方向に並んで配置されており、前記第1ピン挿入孔と前記第2ピン挿入孔とは前記回転軸線の方向で対向配置されており、前記第1軸受及び前記第2軸受と前記ブッシュとは前記回転軸線の方向で並んで配置されており、前記ブッシュの前記第1軸受及び前記第2軸受側の端面は、前記第1軸受及び前記第2軸受の少なくともいずれかのみに接触している。
【0012】
このように、クランクシャフトと揺動歯車とを有するいわゆる偏心揺動型の減速機構において、ブッシュが第1軸受や第2軸受の他にキャリアと接触してしまうことを防止できる。この結果、ブッシュの各軸受側の端面での接触面積を、ブッシュとキャリア及び各軸受とが接触する場合と比較して小さくできる。この結果、ブッシュによる接触抵抗を小さくでき、回転装置の駆動効率を確実に向上できる。
【0013】
上記構成で、前記第1軸受は、前記キャリアの前記ブッシュ側の端面よりも突き出ており、前記ブッシュの径方向の肉厚は、前記ピンの前記外周面と前記第1軸受の内周面との間の距離よりも大きくてもよい。
【0014】
上記構成で、前記第2軸受は、前記キャリアの前記ブッシュ側の端面よりも突き出ており、前記ブッシュの径方向の肉厚は、前記ピンの前記外周面と前記第2軸受の外周面との間の距離よりも大きくてもよい。
【0015】
上記構成で、前記第1軸受の硬度、前記第2軸受の硬度、及び前記ブッシュの硬度は同一であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
上述の回転装置は、駆動効率を確実に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態における減速機の断面図である。
図2図1のII部拡大図である。
図3】本発明の実施形態の変形例における減速機の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
<減速機>
図1は、減速機1の断面図である。
回転装置としての減速機1は、いわゆる偏心揺動型の減速機である。減速機1は、円筒状のケース(請求項における内歯歯車及び第1部材の一例)2と、ケース2に2つの軸受(請求項における軸受及び第1軸受の一例)15,16(第1軸受15、第2軸受16)を介して回転自在に支持されたキャリア(請求項における第2部材の一例)7と、を備える。以下では、ケース2の軸方向を単に軸方向と称する。ケース2の周方向を単に周方向と称する。ケース2の径方向を単に径方向と称する。軸方向について、ケース2の軸方向中央側を軸方向内側、軸方向内側とは反対側を軸方向外側と称する場合がある。
【0020】
<ケース>
ケース2は、例えば鋳鉄など鉄系材料により形成されている。その他、ケース2は、例えばアルミ合金、マグネシウム合金、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、窒化ホウ素を含有して熱伝導率を高めた樹脂等により形成してもよい。ケース2の外周部には、軸方向に貫通する複数のボルト孔2aが周方向に等間隔で形成されている。ボルト孔2aに図示しないボルトを挿入し、このボルトを外部機器に締め付けることにより、外部機器に減速機1が固定される。
【0021】
ケース2の内周面2bのうち軸方向両側には、それぞれ軸受ハウジング3,4(第1軸受ハウジング3、第2軸受ハウジング4)が形成されている。各軸受ハウジング3,4は、それぞれその内径がケース2の内周面2bの内径よりも段差部3a,4aを介して大きくなるように形成されている。
【0022】
ケース2の内周面2bのうち第2軸受ハウジング4よりも軸方向の外側には、シールハウジング5が形成されている。シールハウジング5は、内径が第2軸受ハウジング4の内径よりも段差部5aを介して大きくなるように形成されている。シールハウジング5には、シール40が嵌め合わされている。シール40は、ケース2とキャリア7との間をシールする。
【0023】
ケース2の内周面2bのうち2つの軸受ハウジング3,4の間には、複数の内歯ピン6が設けられている。内歯ピン6は、軸方向に延びる円柱状に形成されている。しかしながらこれに限られるものではなく、内歯ピン6は、中空の部材でもよい。内歯ピン6は、周方向に等間隔で配置されている。内歯ピン6は、減速機構30の一部として機能する。すなわち、内歯ピン6は、後述する揺動歯車11,12に噛合わされる内歯として機能する。
【0024】
このように構成されたケース2の第1軸受ハウジング3には、第1軸受15が嵌め合わされている。第2軸受ハウジング4には、第2軸受16が嵌め合わされている。第1軸受15及び第2軸受16は同一構成であるので、以下の説明では第2軸受16についてのみ説明する。第1軸受15の説明については、第2軸受16と同一符号を付して説明を省略する。
【0025】
第2軸受16は、例えばSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼によって形成されている。第2軸受16は、玉軸受である。より具体的には、第2軸受16は、例えばアンギュラ玉軸受である。第2軸受16は、円環状の外輪17と外輪17の径方向内側に配置された円環状の内輪18と、外輪17と内輪18との間に配置された転動体19と、を備える。外輪17が、第2軸受ハウジング4に嵌め合わされている。第2軸受ハウジング4の段差部4aに、外輪17の軸方向内側の端面17aが突き当たっている。これにより、ケース2に対する第2軸受16の位置決めが行われる。
【0026】
<減速機構>
減速機構30は、キャリア7と、キャリア7に設けられている動力伝達ピン9と、キャリア7に2つの軸受(請求項における第2軸受の一例)33,34(第3軸受33、第4軸受34)を介して回転自在に支持されたクランクシャフト8と、クランクシャフト8に回転自在に支持された2つの揺動歯車(請求項における第3部材の一例)11,12(第1揺動歯車11、第2揺動歯車12)と、を備える。キャリア7の回転軸線とクランクシャフト8の回転軸線とは一致している。これら回転軸線とケース2の中心軸線とは一致している。
【0027】
キャリア7は、軸方向の両側に配置された円板状の第1フランジ13及び第2フランジ14により構成されている。第1フランジ13及び第2フランジ14は、例えば鋳鉄など鉄系材料により形成されている。
2つのフランジ13,14のうち、第2フランジ14がケース2のシールハウジング5側に配置されている。すなわち、第2フランジ14の外周面が第2軸受16の内輪18に嵌め合わされている。第1フランジ13の外周面が第1軸受15の内輪18に嵌め合わされている。
【0028】
第1フランジ13は、軸方向の厚さが全体で均一となるように形成されている。すなわち、第1フランジ13の軸方向外側の外端面13b及び軸方向内側の内端面13cはそれぞれ平坦に形成されており互いに平行に配置されている。第1フランジ13の径方向中央には、第1フランジ13を軸方向に貫通する第1開口部13aが形成されている。第1開口部13aには、第3軸受ハウジング35が形成されている。
第1フランジ13には、外周面と第3軸受ハウジング35との間に複数の第1ボルト挿入孔51が形成されている。第1ボルト挿入孔51は、第1フランジ13を軸方向に貫通している。第1ボルト挿入孔51は、周方向に等間隔で配置されている。
【0029】
第2フランジ14は、軸方向の厚さが全体で均一となるように形成されている。すなわち、第2フランジ14の軸方向外側の外端面14d及び軸方向内側の内端面14eはそれぞれ平坦に形成されており互いに平行に配置されている。第2フランジ14の外周面の一部は、ケース2のシールハウジング5と径方向で対向している。この対向した箇所には、シール40が嵌め合わされている。これにより、ケース2とキャリア7のうちの第2フランジ14との間がシールされる。
【0030】
第2フランジ14の外周面のうち軸方向内側には、外周軸受ハウジング14aが形成されている。外周軸受ハウジング14aは、第2フランジ14の外径よりも段差部14bを介して外径が小さくなるように形成されている。外周軸受ハウジング14aには、第2軸受16の内輪18が嵌め合わされている。この内輪18の軸方向外側の外端面18aは、段差部14bに突き当たっている。これにより、第2フランジ14に対する第2軸受16の位置決めが行われる。
【0031】
第2フランジ14の径方向中央には、第2フランジ14を軸方向に貫通する第2開口部14cが形成されている。第2開口部14cの内周面のうち軸方向内側には、第4軸受ハウジング36が形成されている。第4軸受ハウジング36は、第2開口部14cの内径よりも段差部36aを介して内径が大きくなるように形成されている。第4軸受ハウジング36は、外周軸受ハウジング14a及び第2軸受ハウジング4と径方向で並んでいる。
【0032】
第2フランジ14には、外周軸受ハウジング14aと第4軸受ハウジング36との間に複数の第2ボルト挿入孔52が形成されている。第2ボルト挿入孔52は、第2フランジ14を軸方向に貫通している。複数の第2ボルト挿入孔52は、周方向に等間隔で、かつ第1ボルト挿入孔51と同軸上に配置されている。第2ボルト挿入孔52の内径は、第1ボルト挿入孔51の内径と同一である。第2ボルト挿入孔52の軸方向外側には、座繰り部52aが形成されている。座繰り部52aは、第2ボルト挿入孔52の内径よりも段差部52bを介して内径が大きくなるように形成されている。
【0033】
このように構成されたキャリア7のうち、第1フランジ13の第3軸受ハウジング35には、第3軸受33が嵌め合わされている。第2フランジ14の第4軸受ハウジング36には、第4軸受34が嵌め合わされている。第3軸受33及び第4軸受34は同一構成であるので、以下の説明では第4軸受34についてのみ説明し、第3軸受33の説明については第4軸受34と同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
第4軸受34は、例えばSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼によって形成されている。第4軸受34は、玉軸受である。より具体的には、第4軸受34は、例えば深溝玉軸受である。第4軸受34は、円環状の外輪41と外輪41の径方向内側に配置された円環状の内輪42と、外輪41と内輪42との間に配置された転動体43と、を備える。外輪41が、第4軸受ハウジング36に嵌め合わされている。第4軸受ハウジング36の段差部36aに、外輪41の軸方向外側の外端面41aが突き当たっている。これにより、第2フランジ14に対する第4軸受34の位置決めが行われる。
【0035】
各フランジ13,14の各ボルト挿入孔51,52には、それぞれ動力伝達ピン9が挿入されている。動力伝達ピン9は、例えばアルミニウムクロムモリブデン鋼により形成されている。動力伝達ピン9は、円柱状の軸部61と、軸部61の軸方向の一端に一体成形された雄ネジ部62と、軸部61の軸方向の他端に一体成形された頭部63と、を備える。これら軸部61、雄ネジ部62、及び頭部63は、同軸上に配置されている。
【0036】
軸部61の外径は、第1ボルト挿入孔51の内径及び第2ボルト挿入孔52の内径と同一か若干小さい程度である。
雄ネジ部62は、軸部61の外径よりもネジ段差部62aを介して外径が小さくなるように形成されている。
頭部63は、軸部61の外径よりも頭段差部63aを介して外径が大きくなるように形成されている。頭部63の外径は、第2フランジ14の座繰り部52aの外径よりも若干小さい程度である。
【0037】
このような構成のもと、動力伝達ピン9は、第2フランジ14側から雄ネジ部62を第1フランジ13側に向け、第2ボルト挿入孔52、第1ボルト挿入孔51の順に挿入される。このとき、第2ボルト挿入孔52の座繰り部52aに動力伝達ピン9の頭部63が挿入される。第2ボルト挿入孔52の段差部52bに動力伝達ピン9の頭段差部63aが突き当たることにより、第2フランジ14に対する動力伝達ピン9の軸方向の位置決めが行われる。
【0038】
一方、動力伝達ピン9の雄ネジ部62は、第1ボルト挿入孔51を介して軸方向外側に突出される。雄ネジ部62には、平ワッシャ65が挿入される。雄ネジ部62には、平ワッシャ65の上からナット66が締め付けられる。これにより、キャリア7(第1フランジ13、第2フランジ14)に対して動力伝達ピン9が固定される。
【0039】
このとき、第1軸受15の内輪18と平ワッシャ65との間には、円環状の第1スペーサ64aが設けられる。第3軸受33の外輪41と平ワッシャ65との間には、円環状の第2スペーサ64bが設けられる。第1スペーサ64aの厚さT1は、第2スペーサ64bの厚さT2よりも厚い。以下に、各厚さT1,T2についてより具体的に説明する。
【0040】
第1スペーサ64aの厚さT1は、第1フランジ13の内端面13cから第1軸受15の内輪18における軸方向内側の内端面18bが僅かに突出する厚さである。以下、このような第1軸受15の状態を満たす条件を第1軸受条件と称する。
第2スペーサ64bの厚さT2は、第1フランジ13の内端面13cから第3軸受33の外輪41における軸方向内側の内端面41bが僅かに陥没する厚さである。以下、このような第3軸受33の状態を満たす条件を第3軸受条件と称する。
【0041】
動力伝達ピン9が固定された状態では、軸部61のうちの第1フランジ13と第2フランジ14との間には、2つのブッシュ71,72(第1ブッシュ71、第2ブッシュ72)が嵌め合わされている。ブッシュ71,72は、例えばSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼によって形成されている。すなわち、ブッシュ71,72の硬度は、各軸受15,16,33,34の硬度と同一である。
【0042】
クランクシャフト8は、各フランジ13,14に対して第3軸受33及び第4軸受34を介して回転自在に支持されている。クランクシャフト8は、動力伝達ピン9と同様に、例えばアルミ合金により形成されている。この他、クランクシャフト8として、動力伝達ピン9と同様に例えばステンレスやさまざまな鉄系金属を用いることができる。
【0043】
クランクシャフト8は中空状に形成されている。クランクシャフト8の外周面には、第3軸受33と第4軸受34との間に第1偏心部21a及び第2偏心部21bが軸方向で並んで形成されている。
第1偏心部21aは、第1フランジ13側に配置されている。第2偏心部21bは、第2フランジ14側に配置されている。各偏心部21a,21bは、クランクシャフト8(キャリア7)の回転軸線から偏心されている。各偏心部21a,21bは、互いに位相角がずれている。例えば、各偏心部21a,21bは、互いに180°位相角がずれている。
【0044】
各偏心部21a,21bには、それぞれ軸受37,38(第5軸受37、第6軸受38)が設けられている。これら軸受37,38は、例えばニードル軸受である。
各偏心部21a,21bには、各々軸受37,38を介して揺動歯車11,12(第1揺動歯車11、第2揺動歯車12)が回転自在に支持されている。すなわち、各揺動歯車11,12は、第1フランジ13と第2フランジ14との間に配置される。
【0045】
2つの揺動歯車11,12は、例えばクロムモリブデン鋼など鉄系材料により形成されている。2つの揺動歯車11,12の径方向中央には、厚さ方向に貫通するクランクシャフト挿入孔24a,24b(第1クランクシャフト挿入孔24a、第2クランクシャフト挿入孔24b)が形成されている。各クランクシャフト挿入孔24a,24bに、それぞれ軸受37,38が嵌め合わされている。
2つの揺動歯車11,12の外周部には、ケース2の内歯ピン6に噛合わされる外歯23a,23bが形成されている。各外歯23a,23bの歯数は、内歯ピン6の数よりも例えば1つ少ない。
【0046】
2つの揺動歯車11,12のうち動力伝達ピン9に対応する位置には、ピン挿入孔25a,25b(第1ピン挿入孔25a、第2ピン挿入孔25b)が形成されている。各ピン挿入孔25a,25bには、それぞれ動力伝達ピン9の軸部61が挿入される。また、ピン挿入孔25a,25bのうちの第1ピン挿入孔25aには、軸部61に嵌め合わされている第1ブッシュ71が挿入されている。ピン挿入孔25a,25bのうちの第2ピン挿入孔25bには、軸部61に嵌め合わされている第2ブッシュ72が挿入されている。
【0047】
このような構成のもと、クランクシャフト8の各偏心部21a,21bによって、各揺動歯車11,12が揺動回転される。各揺動歯車11,12の各ピン挿入孔25a,25bの内径は、動力伝達ピン9の軸部61及び各ブッシュ71,72が挿入された状態で各揺動歯車11,12の揺動回転を許容できる大きさである。
【0048】
<第2フランジ、第2軸受、第4軸受、及び第2ブッシュの寸法関係>
次に、図2に基づいて、第2フランジ14、第2軸受16、第4軸受34、及び第2ブッシュ72の寸法関係について説明する。
図2は、図1のII部拡大図である。
図2に示すように、外周軸受ハウジング14aの軸方向の長さL1は、第2軸受16における内輪18の軸方向の長さL2よりも短い。このため、第2軸受16の内端面18bは、外周軸受ハウジング14a(第2フランジ14)の内端面14eよりも軸方向内側に突出している。以下、このような第2軸受16の状態を満たす条件を第2軸受条件と称する。
【0049】
第4軸受ハウジング36の軸方向の長さL3は、第4軸受34における外輪41の軸方向の長さL4よりも長い。このため、第4軸受34における外輪41の内端面41bは、第4軸受ハウジング36(第2フランジ14)の内端面14eから陥没している。以下、このような第4軸受34の状態を満たす条件を第4軸受条件と称する。
【0050】
第2ブッシュ72の径方向の肉厚T3は、動力伝達ピン9の外周面9aと第2軸受16における内輪18の内周面18cとの間の距離T4よりも大きい。特に図示しないが、第1ブッシュ71の径方向の肉厚は、動力伝達ピン9の外周面9aと第1軸受15における内輪18の内周面18cとの間の距離よりも大きい。以下、このような寸法を満たす条件をブッシュの外径条件と称する。
【0051】
このように、第2軸受条件及びブッシュの外径条件を満たすことにより、第2ブッシュ72における軸方向外側の外端面72aは、第2軸受16における内輪18の内端面18bのみに接触する。第2フランジ14の内端面14eは平坦に形成されているので、第4軸受条件であっても第2ブッシュ72の外端面72aと第4軸受ハウジング36とが接触することがない。
【0052】
このことは、第1軸受15と第1ブッシュ71との関係、及び第3軸受33と第1ブッシュ71との関係でも同様のことが言える。すなわち、第1軸受条件及びブッシュの外径条件を満たすことにより、第1ブッシュ71における軸方向外側の外端面71a(図1参照)は、第1軸受16における内輪18の内端面18bのみに接触する。第1フランジ13の内端面13cは平坦に形成されているので、第3軸受条件であっても第1ブッシュ71の外端面71aと第1フランジ13とが接触することがない。
【0053】
<減速機の動作>
次に、減速機1の動作について説明する。
例えば図示しない電動モータによってクランクシャフト8が回転されると、各偏心部21a,21bに回転自在に支持された各揺動歯車11,12が揺動回転される。すると、ケース2の内歯ピン6に、各揺動歯車11,12の外歯23a,23bの一部が噛合わされる。
このとき、各外歯23a,23bの歯数は、内歯ピン6の数よりも例えば1つ少ないので、内歯ピン6(ケース2)に対して各外歯23a,23bの噛合い箇所が周方向に順次ずれるようにして各揺動歯車11,12が自転される。この自転は、クランクシャフト8の回転に対して減速している。
【0054】
各揺動歯車11,12のピン挿入孔25a,25bには、動力伝達ピン9が挿入されている。このため、各揺動歯車11,12が自転されることにより、各動力伝達ピン9に揺動歯車11,12の自転方向の回転力がそれぞれブッシュ71,72を介して伝達される。すなわち、ブッシュ71,72は、対応する揺動歯車11,12と摺動される。各動力伝達ピン9は、キャリア7(第1フランジ13、第2フランジ14)に固定されている。このため、各動力伝達ピン9を介し、キャリア7に揺動歯車11,12の回転力が伝達される。キャリア7は、第1軸受15及び第2軸受16を介してケース2に回転自在に支持されている。この結果、ケース2に対してキャリア7が回転される。すなわち、クランクシャフト8に入力された回転が減速してキャリア7から出力される。
【0055】
ところでブッシュ71,72は、揺動歯車11,12等の駆動に伴って若干軸方向に移動する場合がある。この場合、ブッシュ71,72の軸方向外側に存在する部材と摺動されることになる。
【0056】
ここで、第2ブッシュ72の外端面72aは、第2軸受16における内輪18の内端面18bのみに接触する。第2ブッシュ72の外端面72aと第4軸受ハウジング36とが接触することがない。第1ブッシュ71の外端面71a(図1参照)は、第1軸受15における内輪18の内端面18bのみに接触する。第1ブッシュ71の外端面71aと第1フランジ13とが接触することがない。このため、各ブッシュ71,72の外端面71a,72aでの接触面積を、各ブッシュ71,72の外端面71a,72aが対応する軸受15,16とともに対応するフランジ13,14と接触する場合と比較して小さくできる。
【0057】
このように上述の実施形態では、各ブッシュ71,72の外端面71a,72aは、それぞれ対応する軸受15,16における内輪18の内端面18bのみに接触する。このため、各ブッシュ71,72の外端面71a,72aでの接触面積をできる限り小さくでき、各ブッシュ71,72による接触抵抗を小さくできる。よって、減速機1の駆動効率を確実に向上できる。
【0058】
第2ブッシュ72の外端面72aが第2軸受16における内輪18の内端面18bのみに接触するので、第2ブッシュ72の外端面72aと外周軸受ハウジング14aの内端面14eとの間に微小隙間G1が形成される。しかもこの微小隙間G1は、第2ブッシュ72の外端面72a、動力伝達ピン9の外周面9a、外周軸受ハウジング14aの内端面14e、及び第2軸受16における内輪18の内周面18cによって取り囲まれる。このため、微小隙間G1に潤滑油を積極的に保持させておくことも可能になる。よって、さらに減速機1の駆動効率を向上できる。第1ブッシュ71の外端面71aと第1フランジ13との間も同様である。
【0059】
第2軸受条件及びブッシュの外径条件を満たすことにより、第2ブッシュ72の外端面72aを、第2軸受16における内輪18のみに確実に接触させることができる。第1軸受条件及びブッシュの外径条件を満たすことにより、第1ブッシュ71の外端面71aを、第1軸受16の内輪18のみに確実に接触させることができる。
【0060】
しかも、各ブッシュ71,72の硬度は、各軸受15,16,33,34の硬度と同一である。第1軸受15や第2軸受16の硬度と各ブッシュ71,72の硬度とが異なると、軸受15,16又はブッシュ71,72のいずれか一方の摩耗が促進されてしまう。この結果、減速機1の駆動効率が低下する可能性がある。このため、各ブッシュ71,72の硬度と、各軸受15,16,33,34の硬度と、を同一とすることにより、軸受15,16又はブッシュ71,72のいずれか一方の摩耗が促進されてしまうことを抑制できる。よって、減速機1の駆動効率をより確実に向上できる。
【0061】
[変形例]
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0062】
例えば、上述の実施形態では、回転装置として減速機1について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、さまざまな回転装置に上述の減速機1の構成を採用できる。回転装置としては、ケース2を一例とする筒状の第1部材と、第1部材の内周面に軸受を介して回転自在に支持されるキャリア7を一例とする第2部材と、第2部材に形成されたピン挿入孔に挿入されるピンと、ピンの外周面に嵌め合わされたブッシュと、ピンにブッシュを介して係り合い、ピンを介して第2部材との間で回転力を伝達し合う揺動歯車11,12を一例とする第3部材と、を備えればよい。ブッシュと軸受とが軸方向で並んで配置されていればよい。
【0063】
上述の実施形態では、クランクシャフト8の回転を減速して出力する減速機構30を備えた減速機1について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、減速機構30に代わって増速機に上記の動力伝達ピン9を採用してもよい。さらには、減速機構30(キャリア7や揺動歯車11,12)に代わる部材が設けられた回転装置に、上記の動力伝達ピン9を採用してもよい。減速機構30に代わる部材に、動力伝達ピン9を挿入するピン挿入孔(ピン挿入孔25a,25b)が形成されていればよい。
【0064】
上述の実施形態では、減速機構30は、クランクシャフト8を1つ備え、キャリア7の回転軸線とクランクシャフト8の回転軸線とは一致している場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、減速機構30は、2つの揺動歯車11,12を揺動回転させるいわゆる偏心揺動型の減速機構であればよい。例えば、3つのクランクシャフト8を設け、キャリア7の回転軸線回りに配置してもよい。これらクランクシャフト8によって、2つの揺動歯車11,12を揺動回転させてもよい。
【0065】
上述の実施形態では、ブッシュ71,72は各軸受15,16,33,34と同一の材料で形成されている場合について説明した。これにより、ブッシュ71,72の硬度は、各軸受15,16,33,34の硬度と同一であるについて説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、ブッシュ71,72は各軸受15,16,33,34と同一の材料で形成されていなくてもよい。ブッシュ71,72の硬度は、各軸受15,16,33,34の硬度と完全に同一である必要はなく、同程度であればよい。本明細書でいうブッシュ71,72の硬度と各軸受15,16,33,34の硬度とが同一であるとの意味は、同程度の意味も含んでいる。同程度とは、例えばロックウェル硬さの差の絶対値が6HRC以下をいうものとする。
【0066】
上述の実施形態では、各ブッシュ71,72の外端面71aは、それぞれ対応する第1軸受15及び第2軸受16における内輪18の内端面18bのみに接触する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、各ブッシュ71,72の外端面71aが、少なくとも各軸受15,16,33,34のみに接触していればよい。各ブッシュ71,72の外端面71aが、キャリア7(第1フランジ13、第2フランジ14)に接触していなければよい。具体的な例について、図3に基づいて説明する。
【0067】
図3は、変形例における減速機1の一部拡大図である。図3は、前述の図2に対応している。
図3に示すように、各ブッシュ71,72の外端面71aは、それぞれ対応する第3軸受33及び第4軸受34における外輪41の内端面41bのみに接触していてもよい。以下、このような場合の各部の寸法関係について説明する。
【0068】
<変形例における第2フランジ、第2軸受、第4軸受、及び第2ブッシュの寸法関係>
すなわち、外周軸受ハウジング14aの軸方向の長さL1’は、第2軸受16における内輪18の軸方向の長さL2’と同等か又は若干長い。このため、第2軸受16の内端面18bと、外周軸受ハウジング14a(第2フランジ14)の内端面14eと、は同一平面上である。又は第2軸受16の内端面18bは、外周軸受ハウジング14a(第2フランジ14)の内端面14eから陥没している。以下、このような第2軸受16の状態を満たす条件を変形例の第2軸受条件と称する。
【0069】
第4軸受ハウジング36の軸方向の長さL3’は、第4軸受34における外輪41の軸方向の長さL4’よりも短い。このため、第4軸受34における外輪41の内端面41bは、第4軸受ハウジング36(第2フランジ14)の内端面14eよりも軸方向内側に突出している。以下、このような第4軸受34の状態を満たす条件を変形例の第4軸受条件と称する。
【0070】
第2ブッシュ72の径方向の肉厚T3は、動力伝達ピン9の外周面9aと第4軸受34における外輪41の外周面41cとの間の距離T5よりも大きい。特に図示しないが、第1ブッシュ71の径方向の肉厚は、動力伝達ピン9の外周面9aと第3軸受33における外輪41の外周面41cとの間の距離よりも大きい。以下、このような寸法を満たす条件を変形例のブッシュの外径条件と称する。
【0071】
このように、変形例の第2軸受条件及び変形例のブッシュの外径条件を満たすことにより、第2ブッシュ72における軸方向外側の外端面72aは、第4軸受34における外輪41の内端面41bのみに接触する。第2フランジ14の内端面14eは平坦に形成されているので、変形例の第2軸受条件であっても第2ブッシュ72の外端面72aと外周軸受ハウジング14aとが接触することがない。
【0072】
第1軸受15と第1ブッシュ71との条件、及び第3軸受33と第1ブッシュ71との条件についても上記と同様の条件を採用することができる。これにより、第1ブッシュ71の外端面71aを、第3軸受33における外輪41の内端面41bのみに接触させることができる。したがって、本変形例によれば、前述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0073】
本変形例では、第2ブッシュ72の外端面72aと第4軸受ハウジング36の内端面14eとの間に微小隙間G2が形成される。微小隙間G2は、第2ブッシュ72の外端面72a、動力伝達ピン9の外周面9a、第4軸受ハウジング36の内端面14e、及び第4軸受34における外輪41の外周面41cによって取り囲まれる。このため、微小隙間G2に潤滑油を積極的に保持させておくことも可能になる。第1ブッシュ71の外端面71aと第1フランジ13との間も同様である。
【0074】
この他、第1ブッシュ71の外端面71aを、第1軸受15の内輪18及び第3軸受33の外輪41の両方に接触させてもよい。第2ブッシュ72の外端面72aを、第2軸受16の内輪18及び第4軸受34の外輪41の両方に接触させてもよい。このように構成した場合であっても、各ブッシュ71,72の外端面71aでの接触面積を、各ブッシュ71,72の外端面71aが対応する軸受15,16とともに対応するフランジ13,14と接触する場合と比較して小さくできる。
【0075】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0076】
1…減速機(回転装置)
2…ケース(内歯歯車、第1部材)
2b…内周面
6…内歯ピン(内歯)
7…キャリア(第2部材)
8…クランクシャフト
9…動力伝達ピン(ピン)
9a…外周面
11…第1揺動歯車(第3部材)
12…第2揺動歯車(第3部材)
13…第1フランジ(第2部材)
13c…内端面
14…第2フランジ(第2部材)
14e…内端面
15…第1軸受(軸受、第1軸受)
16…第2軸受(軸受、第1軸受)
18…内輪
18b…内端面
18c…内周面
21a…第1偏心部(偏心部)
21b…第2偏心部(偏心部)
23a…外歯
23b…外歯
25a…第1ピン挿入孔(ピン挿入孔)
25b…第2ピン挿入孔(ピン挿入孔)
33…第3軸受(第2軸受)
34…第4軸受(第2軸受)
41…外輪
41b…内端面
41c…外周面
71…第1ブッシュ(ブッシュ)
71a…外端面(端面)
72…第2ブッシュ(ブッシュ)
72a…外端面(端面)
T3…肉厚
T4,T5…距離
図1
図2
図3