(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042905
(43)【公開日】2025-03-28
(54)【発明の名称】ブレーキ付きモータ
(51)【国際特許分類】
F16N 31/00 20060101AFI20250321BHJP
F16C 33/78 20060101ALI20250321BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20250321BHJP
H02K 5/10 20060101ALI20250321BHJP
H02K 5/173 20060101ALI20250321BHJP
H02K 7/102 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
F16N31/00 B
F16C33/78 Z
F16C19/06
H02K5/10 Z
H02K5/173 A
H02K7/102
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150101
(22)【出願日】2023-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 武志
【テーマコード(参考)】
3J216
3J701
5H605
5H607
【Fターム(参考)】
3J216AA02
3J216AA12
3J216AB29
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA04
3J216CB03
3J216CB04
3J216CB12
3J216CB18
3J216CB19
3J216CC03
3J216CC17
3J216CC33
3J216CC41
3J216CC46
3J216CC70
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA73
3J701CA14
3J701CA16
3J701FA13
3J701GA24
5H605AA02
5H605EB10
5H605EB26
5H607AA05
5H607EE07
5H607GG01
5H607GG08
5H607GG28
(57)【要約】
【課題】軸受の油がブレーキ内部の摩擦部材に付着することを抑制することができるブレーキ付きモータを提供する
【解決手段】本開示に係るブレーキ付きモータ1は、ヨーク3と、摩擦部を含むブレーキディスク7と、ブレーキディスク7を支持する回転部材10と、回転部材10を回転軸線L回りに回転可能にヨーク3に支持する軸受11と、油吸着材60と、回転軸線L方向について油吸着材60と軸受11との間に設けられる油切りリング50と、を有し、軸受11は内輪11aと外輪11bを有し、油切りリング50は、内輪11aと外輪11bの隙間を覆うように内輪11a側から延びており、ヨーク3の内周面には、油切りリング50と向かい合う油誘導面32が設けられており、油誘導面32と油切りリング50と回転部材10との間に形成される油だまり空間Aに、油吸着材60が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨークと、
摩擦部を含むブレーキディスクと、
前記ブレーキディスクを支持する回転部材と、
前記回転部材を回転軸線回りに回転可能に前記ヨークに支持する軸受と、
油吸着材と、
前記回転軸線方向について前記油吸着材と前記軸受との間に設けられる油切りリングと、
を有し、
前記軸受は内輪と外輪を有し、
前記油切りリングは、前記内輪と前記外輪の隙間を覆うように前記内輪側から延びており、
前記ヨークの内周面には、前記油切りリングと向かい合う油誘導面が設けられており、
前記油誘導面と前記油切りリングと前記回転部材との間に形成される油だまり空間に、前記油吸着材が設けられている、ブレーキ付きモータ。
【請求項2】
前記油吸着材は、前記回転部材から離間した位置に配置されている、請求項1に記載のブレーキ付きモータ。
【請求項3】
前記油吸着材は、フェルトまたはスポンジから構成されている、請求項1または2に記載のブレーキ付きモータ。
【請求項4】
前記ヨークは、前記油誘導面から径方向内側に延びる支持部を有し、
前記油吸着材は、前記支持部に固定されている、請求項1または2に記載のブレーキ付きモータ。
【請求項5】
前記ブレーキ付きモータはさらに補助油吸着材を有し、
前記油吸着材が、前記補助油吸着材と前記油切りリングとの間に配置されている、請求項1または2に記載のブレーキ付きモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブレーキ付きモータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、軸受の油分が漏れた際に外に排出する構造を有するブレーキ付きモータを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は軸受の油がブレーキ内部の摩擦部材に付着することを抑制することができるブレーキ付きモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るブレーキ付きモータは、
ヨークと、
摩擦部を含むブレーキディスクと、
前記ブレーキディスクを支持する回転部材と、
前記回転部材を回転軸線回りに回転可能に前記ヨークに支持する軸受と、
油吸着材と、
前記回転軸線方向について前記油吸着材と前記軸受との間に設けられる油切りリングと、
を有し、
前記軸受は内輪と外輪を有し、
前記油切りリングは、前記内輪と前記外輪の隙間を覆うように前記内輪側から延びており、
前記ヨークの内周面には、前記油切りリングと向かい合う油誘導面が設けられており、
前記油誘導面と前記油切りリングと前記回転部材との間に形成される油だまり空間に、前記油吸着材が設けられている、ブレーキ付きモータ。
【発明の効果】
【0006】
上記によれば、軸受の油がブレーキ内部の摩擦部材に付着することを抑制することができるブレーキ付きモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係るブレーキ付きモータの一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係るブレーキ付きモータ断面拡大図である。
【
図3】
図3は、本開示の別の実施形態に係るブレーキ付きモータ断面拡大図である。
【
図4】
図4は、本開示の別の実施形態に係るブレーキ付きモータ断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係るブレーキ付きモータの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0009】
図1は、本開示の実施形態に係るブレーキ付きモータの一例を示す断面図である。本開示の実施形態に係るブレーキ付きモータ1は
図1に示すように、ブラケット2と、回転部材10と、軸受11と、を有する。ブラケット2の内部には、ヨーク3と、インナプレート6と、アウタプレート9と、ブレーキディスク7と、ピン8と、ハブ12と、スペーサ13が設けられている。
【0010】
回転部材10は、図示せぬモータにより回転軸線L回りに回転される。回転部材10は、モータの出力軸に接続される。回転部材10は、ヨーク3に対して回転可能である。軸受11は、回転部材10をヨーク3に回転可能に支持されている。軸受11は内輪11aと、外輪11bと、転動体11cと、を有しており、内輪11aと外輪11bの間に転動体11cが設けられている。内輪11aと転動体11cとの間、及び外輪11bと転動体11cとの間には、部材間の摩擦係数を低減させるためにグリスなどの油脂分である潤滑油が塗布されている。
【0011】
ヨーク3は通電用のコイル4及びコイルばね5を収納している。インナプレート6は、ピン8が貫通される貫通孔を有している。インナプレート6はピン8により、回転軸線L方向に移動可能かつ、回転軸線L周りに回転不可能とされている。
ブレーキディスク7は、回転部材10に固定されておらず、回転部材10に固定したハブ12と接触して回転軸線L周りに回転できる。ブレーキディスク7は、回転軸線L方向についてアウタプレート9とインナプレート6との間に設けられている。ブレーキディスク7の外周部には、高摩擦係数を有する摩擦部(ブレーキシュー)が設けられている。
【0012】
本開示に係るブレーキ付きモータ1はコイル4による励磁力と、コイルばね5によるばね力とによって、インナプレート6を回転軸線L方向に移動可能としている。これにより、コイル4への非通電時にはコイルばね5のばね力によってインナプレート6がブレーキディスク7に当接する。これによって生じた制動力が回転部材10に伝わり、ブレーキトルクが生じる。一方、コイル4への通電時には、コイル4の励磁力によってインナプレート6はブレーキディスク7から離間し、ヨーク3に引き付けられる。コイル4の励磁力によってインナプレート6とヨーク3が引き付けられるが、インナプレート6とヨーク3の位置関係はスペーサ13によって決められる。これにより、通電時には回転部材10に制動力が作用せず、回転部材10は自由に回転可能である。
【0013】
図2は本開示の実施形態に係るブレーキ付きモータ1の断面拡大図である。
図2に示すように、本開示に係るブレーキ付きモータ1は油切りリング50と、潤滑油を吸着可能な油吸着材60と、をさらに有する。
【0014】
図2に示すように、ヨーク3は、回転部材10に向かい合う内周面30を有する。内周面30は油誘導面32を有する。油誘導面32と、油切りリング50と、回転部材10と、によって油だまり空間Aが形成されている。油吸着材60は、この油だまり空間Aの中に設けられている。
より詳細には、回転軸線L方向について軸受11と反対側の油誘導面32の端部に、支持部31が設けられている。支持部31はヨーク3から径方向内側に突き出る凸状の部位である。支持部31は、回転軸線L方向について油切りリング50と向かい合う支持面33を有する。この支持面33に、油吸着材60が取り付けられている。図示の例では、油だまり空間Aの回転軸線L方向について軸受11と反対側に支持面33が設けられている。この支持面33に油吸着材60を取り付けることにより、油吸着材60を油だまり空間Aに位置させている。
【0015】
油切りリング50は回転部材10と軸受11の間に設けられ、回転部材10の径方向に延びる円盤状の部材である。油切りリング50は軸受11の内輪11aと外輪11bの隙間を覆うように設けられる。油切りリング50は内輪11aと回転部材10とに挟まれることで、回転部材10と共に回転可能に設けられている。
【0016】
油切りリング50は軸受11から漏れ出る潤滑油をヨーク3の油誘導面32に誘導することができる縁部51を有する。縁部51は径方向においてヨーク3の油誘導面32に対して延びている。縁部51は、誘導した潤滑油をヨーク3の油誘導面32に付着させることができる程度に、ヨーク3の油誘導面32に対して近づけるように延びて構成されている。また、
図2に示すように、本実施形態においては、潤滑油を誘導しやすくするために、縁部51の一部を回転軸線L方向に傾斜させている。
【0017】
次に本実施形態に係るブレーキ付きモータ1が、潤滑油の漏れを抑制する態様について詳述する。軸受11内部に塗布された潤滑油は、遠心力によって外輪11bに押し付けられる。外輪11bが潤滑油を保持できなくなると、潤滑油は
図2に矢印で示したように、主に軸受11の内輪11aと外輪11bの間から漏れ出る。油切りリング50の縁部51は軸受11から漏れ出る潤滑油を受け止める。油切りリング50は回転部材10とともに回転している。そのため、縁部51が受け止めた潤滑油は、遠心力によって縁部51の径方向端部に向かって流れる。油切りリング50の径方向の端部は、潤滑油を油誘導面32に案内するように、油誘導面32の近傍まで径方向外側に延びている。そのため、遠心力により縁部51まで流された潤滑油は、油誘導面32に付着する。このようにして、軸受11から漏れ出た潤滑油は油切りリング50によって油誘導面32に誘導される。
【0018】
油誘導面32に潤滑油が誘導されると、油誘導面32に付着した潤滑油は徐々に回転軸線L方向に沿って油吸着材60に向かって流れる。油吸着材60は、上述した態様で油切りリング50及び油誘導面32によって軸受11から誘導された潤滑油を吸着する。
このように、油切りリング50および油誘導面32により、潤滑油は油だまり空間Aに誘導される。この油だまり空間Aにおいて、油誘導面32を伝って流れてきた潤滑油は、油誘導面32から連続している支持部31の支持面33に取り付けた油吸着材60で吸着される。このようにして、油吸着材60で効率的に潤滑油を吸着できるため、軸受11から漏れ出た潤滑油が回転部材10を通じてブレーキディスク7まで流出することを防ぐことができる。
【0019】
本開示に係るブレーキ付きモータ1によれば、油切りリング50は、内輪11aと外輪11bの隙間を覆うように内輪11a側から延びており、ヨーク3の内周面30には、油切りリング50と向かい合う油誘導面32が設けられており、油誘導面32と油切りリング50と回転部材10との間に形成される油だまり空間Aに、油吸着材60が設けられている。
当該構成によれば、軸受11に近い油切りリング50によって、軸受11から潤滑油がブレーキディスク7方向に漏れ出ることを抑制することができる。
このように本開示に係るブレーキ付きモータ1によれば、潤滑油がブレーキディスク7に付着することを抑制することができるブレーキ付きモータを提供することができる。
【0020】
また、本開示に係るブレーキ付きモータ1によれば、油吸着材60は、回転部材10から離間する位置に配置されている。これにより、回転部材10の回転による油吸着材60の磨耗を低減することができる。上記構成によれば、油吸着材60の寿命が延びるとともに、油吸着材60が摩耗することによる摩耗粉の発生を抑制することができる。
【0021】
また、本開示に係るブレーキ付きモータ1によれば、油吸着材60は、フェルトまたはスポンジから構成されている。これにより、油吸着材60を抜き加工等の安価な方法で製造可能である。そのためブレーキ付きモータ1のコストを低減することができる。
【0022】
また、本開示に係るブレーキ付きモータ1によれば、ヨーク3は、油誘導面32から径方向内側に延びる支持部31を有し、油吸着材60は、支持部31に設けられる。油吸着材60は、略リング状の部材である。支持部31はリング状の油吸着材60の軸方向の端面を支持するので、油吸着材60を支持しやすい。
【0023】
ここまで、本開示に係るブレーキ付きモータ1について説明してきたが、本開示は上述した構成に限られない。例えば、
図3に示すようにブレーキ付きモータ1はさらに補助油吸着材61を有していてもよい。また、
図4に示すようにブレーキ付きモータ1はさらに補助油切りリング52を有していてもよい。上述した補助油吸着材61や補助油切りリング52を有することにより、さらに軸受の油がブレーキディスクに付着することを抑制することができるブレーキ付きモータ1を提供することができる。
【0024】
また、上述した実施形態においては特に言及していないが、潤滑油をより油吸着材60に流れやすくするために、ヨーク3の内周面30を回転軸線L方向に傾斜するように設けてもよい。
【0025】
以上、本開示の実施形態について説明をしたが、本開示の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本開示の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0026】
1 ブレーキ付きモータ
2 ブラケット
3 ヨーク
4 コイル
6 インナプレート
7 ブレーキディスク
8 ピン
9 アウタプレート
10 回転部材
11 軸受
11a 内輪
11b 外輪
11c 転動体
12 ハブ
13 スペーサ
30 内周面
31 支持部
32 油誘導面
33 支持面
50 油切りリング
51 縁部
52 補助油切りリング
60 油吸着材
61 補助油吸着材