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  • 特開-インストルメントパネル 図1
  • 特開-インストルメントパネル 図2
  • 特開-インストルメントパネル 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004294
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】インストルメントパネル
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/205 20110101AFI20250107BHJP
   B60K 35/70 20240101ALI20250107BHJP
【FI】
B60R21/205
B60K37/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103881
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山下 圭介
【テーマコード(参考)】
3D054
3D344
【Fターム(参考)】
3D054AA03
3D054AA14
3D054BB09
3D344AA01
3D344AA07
3D344AA08
3D344AC02
3D344AC03
(57)【要約】
【課題】表皮を開裂させることなくエアバッグを展開可能なインストルメントパネルを提供する。
【解決手段】本開示に係るインストルメントパネルは、自動車のフロントガラスの下かつ前記自動車の座席の前に設置され、エアバッグを収容するインストルメントパネルであって、基材180と、基材180に接着される表皮110と、を備え、前記エアバッグが展開される展開領域100において、表皮110と基材180との接着強度が、フロントガラス側から座席側に向かって弱くなる、又は座席側からフロントガラス側に向かって弱くなる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロントガラスの下かつ前記自動車の座席の前に設置され、エアバッグを収容するインストルメントパネルであって、
基材と、
前記基材に接着される表皮と、を備え、
前記エアバッグが展開される展開領域において、前記表皮と前記基材との接着強度が、フロントガラス側から座席側に向かって弱くなる、又は座席側からフロントガラス側に向かって弱くなる、
インストルメントパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インストルメントパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エアバッグは、通常、自動車に設置されたインストルメントパネルに収容されており、展開時にインストルメントパネルを開裂する。インストルメントパネルは、基材と、当該基材に接着される表皮と、を備える。
例えば、特許文献1には、基材(ハウジング)の縁部に高い初期付着性を有する接着剤を塗布し、ハウジングの中央側に低い初期付着性を有する接着剤を塗布し、表皮(カバー)を基材に接着する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-112336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、インストルメントパネルについて、以下の課題を見出した。
通常、エアバッグ展開時にはインストルメントパネルの表皮も開裂させる。表皮を安定的に開裂させるためには、表皮の開裂強度を制御する必要がある。そのため、表皮に使用できる材料に限りがあり、開発に長い時間を要していた。
【0005】
本開示は、このような問題に鑑みなされたものであり、表皮を開裂させることなくエアバッグを展開可能なインストルメントパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する一態様は、
自動車のフロントガラスの下かつ前記自動車の座席の前に設置され、エアバッグを収容するインストルメントパネルであって、
基材と、
前記基材に接着される表皮と、を備え、
前記エアバッグが展開される展開領域において、前記表皮と前記基材との接着強度が、フロントガラス側から座席側に向かって弱くなる、又は座席側からフロントガラス側に向かって弱くなる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、表皮を開裂させることなくエアバッグを展開可能なインストルメントパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るインストルメントパネルの外観を示す図である。
図2図1のII-II線に沿う一部拡大断面図である。
図3】展開領域の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。ただし、本開示が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0010】
まず、図1を参照して本実施形態に係るインストルメントパネルの概要を説明する。図1に示すように、インストルメントパネル10は、自動車のフロントガラスの下かつ座席の前に設置される部材である。インストルメントパネル10は、図示しないエアバッグを収容する。エアバッグは、所定以上の衝撃を受けると展開し、乗員が受ける衝撃を吸収・緩和する装置である。エアバッグ展開時に、インストルメントパネル10は、所定箇所から展開されたエアバッグが飛び出す。このとき、エアバッグが飛び出す箇所に対応する表皮が捲れる。図1に示す展開領域100は、エアバッグ展開時にエアバッグが飛び出す領域である。
【0011】
次に、図2を参照してインストルメントパネル10の構成をより詳細に説明する。図2は、図1のII-II線に沿う一部拡大断面図である。図2に示すように、インストルメントパネル10は、少なくとも表皮110及び基材180を備え、さらに接着剤120、フォーム130、接着剤140、面ファスナー150、面ファスナー160、接着剤170等の構成を備えていてもよい。インストルメントパネル10は、板状の各構成が重ねられた多層構造である。
【0012】
表皮110は、基材180を被覆する。表皮110は、インストルメントパネル10使用時に人目に触れる箇所である。表皮110は、レザー、布等の材料を用いて構成される。接着剤120は、表皮110とフォーム130とを接着する。フォーム130は、クッション性及び成形性に優れる観点より薄板状のスポンジ等により構成される。図2に示す例では、フォーム130が接着剤120によって表皮110と接着されている。しかしながら、フォーム130と表皮110とを接着する方法は特に限定されず、例えば熱によってフォーム130と表皮110とを接着してもよい。
【0013】
接着剤140は、フォーム130と面ファスナー150とを接着する。面ファスナー150,160は、一対の面ファスナーである。面ファスナー150は、面ファスナー160側の面に多数のフックを有する。面ファスナー160は、面ファスナー150側の面に多数のループを有する。尚、面ファスナー150、160の構成は図2に示した構成に限定されず、例えば、面ファスナー150がループを有し面ファスナー160がフックを有する構成であってもよい。図2に示す例では、インストルメントパネル10が面ファスナー150,160を有するため、表皮110を基材180から容易に取り外すことができる。そのため、自動車の所有者等は、自身の好みに応じて表皮110を容易に付け替えることができる。
【0014】
接着剤170は、面ファスナー160と基材180とを接着する。基材180は、樹脂等を用いて構成される部材である。基材180には、展開したエアバッグが通るための開口部が設けられていてもよい。この場合、開口部が設けられた箇所が図1に示す展開領域100として機能する。
【0015】
図3は、展開領域100の外観を示す図である。以下、図3に示すように、展開領域100を3つの領域100a,100b,100cに分けて説明する。領域100aは、3つの領域100a,100b,100cのうち最もフロントガラス側の領域である。領域100cは、3つの領域100a,100b,100cのうち最も座席側の領域である。領域100bは、領域100a,100cに挟まれた領域である。
【0016】
展開領域100における表皮110と基材180との接着強度は、フロントガラス側から座席側に向かって弱くなる、又は座席側からフロントガラス側に向かって弱くなるように設計される。図3に示す例では、表皮110と基材180との接着強度は、面ファスナー150,160の接着強度であり、具体的には、面ファスナー150を面ファスナー160から引きはがす際に要する力の大きさである。図3に示す例では、領域100a,100b,100cの順に接着強度が弱くなっている。そのため、エアバッグ展開時には、まず、領域100cにおいて表皮110が基材180から外れ、展開したエアバッグが展開領域100の座席側から飛び出す。このとき、面ファスナー150が面ファスナー160から外れた状態であるため、飛び出したエアバッグによって面ファスナー160は、開裂するが、表皮110、フォーム130及び面ファスナー150は、開裂しない。
【0017】
このように、本実施形態に係るインストルメントパネル10は、展開領域100において表皮110と基材180との接着強度に勾配を持たせているため、エアバッグの展開方向を制御することができる。また、インストルメントパネル10は、表皮110が基材180から容易に外れる構造であるため、エアバッグ展開時に表皮110を開裂させる必要がない。そのため、開裂強度の高い素材等を用いて表皮110を構成することができる。また、インストルメントパネル10は、開裂部分を展開領域100に設ける必要がないため、意匠性に優れる。インストルメントパネル10は、例えば、各構成を層状に重ねて加熱し、型に押し当てて真空貼り付けすることによって成形される。すなわち、インストルメントパネル10は、接着強度に勾配を持たないインストルメントパネルと同様の工程で成形可能である。
【0018】
<その他の実施の形態>
上述した実施の形態では、フォーム130と基材180との間に面ファスナー150,160を設け、面ファスナー150,160の接着強度に勾配を持たせる場合について説明した。しかしながら、インストルメントパネル10は、展開領域100において所定の方向に接着強度の勾配を持たせて表皮110を基材180に接着可能であれば、どのような構成であってもよい。例えば、インストルメントパネル10は、接着剤170に所定方向の接着強度の勾配を持たせる構成であってもよい。この場合、表皮110と基材180との接着強度は、接着剤170の接着強度であり、具体的には、面ファスナー160を基材180から引きはがす際に要する力の大きさである。
【0019】
また、インストルメントパネル10は、表皮110とフォーム130との間に面ファスナー150,160を設ける構成であってもよい。この場合、フォーム130は基材180に接着剤によって接着されてもよい。また、インストルメントパネル10は、面ファスナー150,160を有さない構成であってもよい。具体的には例えば、インストルメントパネル10は、面ファスナー150,160に代えて、所定方向に接着強度の勾配を持たせた接着剤を備える構成であってもよい。
【0020】
また、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0021】
10 インストルメントパネル
100 展開領域
100a,100b,100c 領域
110 表皮
120 接着剤
130 フォーム
140 接着剤
150,160 面ファスナー
170 接着剤
180 基材
図1
図2
図3