(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025043045
(43)【公開日】2025-03-28
(54)【発明の名称】電磁接触器
(51)【国際特許分類】
H01H 9/44 20060101AFI20250321BHJP
H01H 50/00 20060101ALI20250321BHJP
H01H 50/38 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
H01H9/44 A
H01H50/00 D
H01H50/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150339
(22)【出願日】2023-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】草野 祐馬
(72)【発明者】
【氏名】堤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 裕也
(72)【発明者】
【氏名】小西 弘純
【テーマコード(参考)】
5G027
【Fターム(参考)】
5G027AA03
5G027BB03
5G027BC11
(57)【要約】
【課題】大電流の遮断時に多量の金属蒸気が発生しても消弧性能の低下を防止する電磁接触器を提供する。
【解決手段】収納ケース6の内部に配置され、一対の固定接触子3a,3b及び可動接触子4を収納する箱形状の消弧壁35と、消弧壁に囲まれた空間であり、可動接触子の長手方向の一方側及び他方側に設けた第1及び第2アーク消弧空間S1、S2と、第1固定接点及び第1可動接点の間に発生した第1アークを第1アーク消弧空間に引き延ばし、第2固定接点及び第2可動接点の間に発生した第2アークを第2アーク消弧空間に引き延ばす、互いに対向配置された一対のアーク消弧用永久磁石36、37と、第1アークが引き延ばされる方向の消弧壁の壁部に設けた第1開口部40a,40bと、第2アークが引き延ばされる方向の消弧壁の壁部に設けた第2開口部40c,40dと、を備えている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2固定接点を有する一対の固定接触子と、前記第1及び第2固定接点に接離可能な第1及び第2可動接点を長手方向の両端に設けた可動接触子と、前記可動接触子を駆動する電磁石ユニットと、前記一対の固定接触子、前記可動接触子及び前記電磁石ユニットを収納する収納ケースと、を備えた電磁接触器において、
前記収納ケースの内部に配置され、前記一対の固定接触子及び可動接触子を収納する箱形状の消弧壁と、
前記消弧壁に囲まれた空間であり、前記可動接触子の長手方向の一方側及び他方側に設けた第1及び第2アーク消弧空間と、
前記第1固定接点及び前記第1可動接点の間に発生した第1アークを前記第1アーク消弧空間に引き延ばし、前記第2固定接点及び前記第2可動接点の間に発生した第2アークを前記第2アーク消弧空間に引き延ばす、互いに対向配置された一対のアーク消弧用永久磁石と、
前記第1アークが引き延ばされる方向の前記消弧壁の壁部に設けた第1開口部と、
前記第2アークが引き延ばされる方向の前記消弧壁の壁部に設けた第2開口部と、を備えていることを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記消弧壁は長方形箱形状であり、前記第1開口部及び前記第2開口部は、前記消弧壁の角部に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記消弧壁の外側に、前記第1開口部を介して前記第1アーク消弧空間と連通する第1外側連通空間と、前記第2開口部を介して前記第2アーク消弧空間と連通する第2外側連通空間と、が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁接触器。
【請求項4】
前記第1外側連通空間及び前記第2外側連通空間は、前記消弧壁の外側を囲って配置した磁極板で形成されていることを特徴とする請求項3記載の電磁接触器。
【請求項5】
前記第1外側連通空間及び前記第2外側連通空間は、前記電磁石ユニットを収納している前記収納ケースの内部空間に連通していることを特徴とする請求項4記載の電磁接触器。
【請求項6】
前記収納ケースに、アーク消弧用ガスが封入されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流路の開閉を行う電磁接触器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1の電磁接触器は、固定接点を有する一対の固定接触子と、これら一対の固定接触子の固定接点に接離可能な一対の可動接点を有する可動接触子と、一対の固定接触子及び可動接触子を収納している接点ケースと、可動接触子に駆動軸を介して連結している電磁石ユニットと、固定接点及び可動接点の間で発生したアークを接点ケース内で引き延ばすアーク消弧用永久磁石と、を備えている。
【0003】
特許文献1の電磁接触器は、電流路の遮断時に一対の固定接点及び一対の可動接点の間にアークが発生すると、アーク消弧用永久磁石の磁束がアークを横切ることで、フレミングの左手の法則によりローレンツ力が作用したアークが、接点ケース内で引き延されて消弧されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の電磁接触器は、大電流の遮断時にアークが発生すると、固定接点及び可動接点が溶融することで多量の金属蒸気が接点ケース内に滞留する。この金属蒸気の圧力が局所的に高まり、アークが引き延ばされる方向に対して逆方向のアークを押し戻す方向に作用する金属蒸気の気流が発生する場合があり、消弧性能が低下するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、大電流の遮断時に多量の金属蒸気が発生しても消弧性能の低下を防止することができる電磁接触器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電磁接触器は、第1及び第2固定接点を有する一対の固定接触子と、第1及び第2固定接点に接離可能な第1及び第2可動接点を長手方向の両端に設けた可動接触子と、可動接触子を駆動する電磁石ユニットと、一対の固定接触子、可動接触子及び電磁石ユニットを収納する収納ケースと、を備えた電磁接触器において、収納ケースの内部に配置され、一対の固定接触子及び可動接触子を収納する箱形状の消弧壁と、消弧壁に囲まれた空間であり、可動接触子の長手方向の一方側及び他方側に設けた第1及び第2アーク消弧空間と、第1固定接点及び第1可動接点の間に発生した第1アークを第1アーク消弧空間に引き延ばし、第2固定接点及び第2可動接点の間に発生した第2アークを第2アーク消弧空間に引き延ばす、互いに対向配置された一対のアーク消弧用永久磁石と、第1アークが引き延ばされる方向の消弧壁の壁部に設けた第1開口部と、第2アークが引き延ばされる方向の消弧壁の壁部に設けた第2開口部と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電磁接触器によれば、大電流のアークにより多量の金属蒸気が発生しても消弧性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の電磁接触器の断面図である。
【
図2】電磁接触器を構成する消弧壁の形状を示す斜視図である。
【
図3】消弧壁に装着した一対のアーク消弧用永久磁石と一対の磁極板を示す斜視図である。
【
図5】本発明に係る第2実施形態の電磁接触器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0011】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
なお、以下の説明で記載されている「上」、「下」、「左」、「右」等の方向を示す用語は、添付図面の方向を参照して用いられている。
[第1実施形態]
【0013】
図1は、本発明に係る第1実施形態の電磁接触器1を示すものである。
【0014】
電磁接触器1は、電磁力を利用して主回路を開閉する密閉型高電圧コンタクタであり、電気絶縁性を有する樹脂製の密閉容器2と、密閉容器2に収納された一対の固定接触子3、可動接触子4及び電磁石ユニット5と、を備えており、電磁石ユニット5は、可動接触子4を一対の固定接触子3に接離する方向に駆動する。
【0015】
密閉容器2は、ケース6とカバー7とで構成されており、密閉容器2の内部にはアーク消弧用ガスが封入されている。なお、本発明に係る収納ケースが密閉容器2に対応している。
【0016】
ケース6は、
図1において下端(一端)が開放され、上端(他端)が閉塞された角型の筒形状の部材である。カバー7は、蓋形状の部材である。ケース6の下端及びカバー7は、開放端同士が嵌り合い接着剤で接合される。
【0017】
一対の固定接触子3a,3bは、導電性を有する金属によって略円柱状に形成された電極であり、インサート成形によってケース6の壁部を突き抜けた状態で一体化されている。一対の固定接触子3a,3bの上部にはネジ穴8が形成されており、ケース6の外側に露出している。これらネジ穴8に、主回路の一次側及び二次側の端子ネジ(不図示)が嵌め合わされるようになっている。一対の固定接触子3a,3bの下側はケース6の内部に突出しており、それらの下部に固定接点9a,9bが形成されている。なお、本発明に係る第1及び第2固定接点が固定接点9a,9bに対応している。
【0018】
可動接触子4は、導電性を有する金属であり、
図1において左右方向に延在する平板状に形成され、一対の固定接触子3に対向して配置されている。可動接触子4の左右方向の両端には、一対の固定接触子3a,3bの固定接点9a,9bに接離する一対の可動接点10a,10bが形成されている。
【0019】
可動接触子4は、接点支え11を介して電磁石ユニット5に連結されている。接点支え11は、電磁石ユニット5に連結した基部12と、可動接触子4を保持する押さえ部材13と、可動接触子4に接触圧を与える接触スプリング14と、を備えている。接触スプリング14は圧縮コイルばねであり、基部12と可動接触子4との間に介在し、可動接触子4を
図1において上方に付勢している。このように、接触スプリング14が可動接触子4を弾性支持することで、可動接点10a,10b及び固定接点9a,9bの接触圧力が一定に保たれる。
【0020】
電磁石ユニット5は、スプール20と、摺動カラー21と、可動プランジャ22と、アーマチュア23と、一対の外ヨーク24a,24bと、一対の底部ヨーク25a,25bと、プランジャリング26と、バックスプリング27と、永久磁石28と、補助ヨーク29と、を備える。
【0021】
スプール20は、電気絶縁性を有する樹脂によって形成された巻き枠であり、上下方向に延びる円筒状の巻き軸30にコイル31が巻かれている。
【0022】
摺動カラー21は、電気絶縁性を有する樹脂によって円筒状に形成されており、巻き軸30の内側に上下方向の下側から挿入されて嵌り合っている。
【0023】
可動プランジャ22は、可動鉄心として上下方向に延びる円柱状に形成されており、摺動カラー21の内側に嵌り合うことによって軸方向の進退が案内される。可動プランジャ53は、上下方向の上側が連結部32を介して接点支え11の基部12に連結されている。アーマチュア23は、円板状の継鉄であり、可動プランジャ22の下端部に固定されている。
【0024】
一対の外ヨーク24は板状の継鉄であり、巻き軸30に対して左側及び右側に固定されている。一対の底部ヨーク25a,25bは、一対の外ヨーク24a,24bの下部に、同一延長線上の左側及び右側に延在して固定されている。
【0025】
プランジャリング26は、上下方向に延びる円筒状の継鉄であり、巻き軸30の内側に上下方向の上部側から挿入されて嵌り合い、且つ一対の外ヨーク24における上下方向の上部の上片に固定されている。プランジャリング26の内径は可動プランジャ22の外径よりも大きく、可動プランジャ22に対して予め定めたクリアランスを保つように設定されている。
【0026】
バックスプリング27は、圧縮コイルばねであり、アーマチュア23と摺動カラー21との間に挟まれた状態で可動プランジャ22に挿通され、スプール20に対して可動プランジャ22を上下方向の下側に付勢している。
【0027】
永久磁石28は、丸穴が形成された矩形の平板状であり、一対の底部ヨーク25a,25bの下部に接触し、アーマチュア23を囲むように配置されている。補助ヨーク29は、平板状の継鉄であり、永久磁石28の下部に取り付けられている。
【0028】
そして、本実施形態の電磁接触器は、一対の固定接触子3a,3b及び可動接触子4の周囲を囲む消弧壁35が配置されているとともに、消弧壁35に一対のアーク消弧用永久磁石36,37及び一対の磁極板38,39が装着されている。
【0029】
消弧壁35は、
図2に示すように、セラミックス製または合成樹脂製の箱体であり、一対の固定接触子3a,3bが挿通される一対の接触子穴35a1を形成した長方形板状の蓋35aと、蓋35aの4辺縁部から同一方向に延在する短辺壁35b、35c及び長辺壁35d,35eと、短辺壁35b、35c及び長辺壁35d,35eの先端から外方向に直角に延在する載置板35fと、を備えている。そして、隣接する短辺壁及び長辺壁(例えば隣接する短辺壁35b及び長辺壁35e)の交差部には角部が存在せず、短辺壁35b、35c及び長辺壁35d,35eが延在する方向と同一に直線状に延在する4箇所の角部開口部40a~40dが形成されている。なお、本発明の第1開口部が角部開口部40a,40bに対応し、本発明の第2開口部が角部開口部40c,40dに対応し、
【0030】
一対のアーク消弧用永久磁石36,37は、
図3に示すように、消弧壁35の短辺壁35b、35cに当接しながら載置板35fに載って配置されている。
【0031】
一方の磁極板38は、
図3に示すように、磁石当接板38aと、磁石当接板38aの左右方向から屈曲部38b,38cを介して互いに平行に延在する一対の平行板部38d,38eと、を備えた部材である。この磁極板38は、
図3に示すように、磁石当接板38aがーク消弧用永久磁石36に当接し、一対の平行板部38d,38eが消弧壁35の長辺壁35d,35eに当接した状態で載置板35fに載って配置されている。そして、磁極板38の屈曲部38b,38cが消弧壁35の角部開口部40に対向することで、2箇所の角部開口部40a,40bの外側に外側連通空間41a,41bが形成される。また、他方の磁極板39も、
図3に示すように、磁石当接板39aと、磁石当接板39aの左右方向から屈曲部39b,39cを介して互いに平行に延在する一対の平行板部39d,39eと、を備えた部材である。この磁極板39も、磁石当接板39aが消弧壁35の短辺壁35c側に配置したアーク消弧用永久磁石37に当接し、一対の平行板部39d,39eが消弧壁35の長辺壁35d,35eに当接して載置板35fに載って配置されている。そして、磁極板39の屈曲部39b,39cが消弧壁35の角部開口部40に対向することで、2箇所の角部開口部40c,40dの外側に2箇所の外側連通空間41c,41dが形成される。なお、本発明に係る第1外側連通空間が外側連通空間41a,41bに対応し、本発明に係る第2外側連通空間が外側連通空間41c,41dに対応している。
【0032】
そして、
図4に示すように、一対のアーク消弧用永久磁石36,37及び一対の磁極板38,39を一体に配置した消弧壁35は、一対の固定接触子3a,3b及び可動接触子4の周囲を囲った状態でケース6の内壁に装着されている。
【0033】
アーク消弧用永久磁石36の短辺壁35bに当接する磁極面はS極とされ、アーク消弧用永久磁石37の短辺壁35cに当接する磁極面はN極とされている。
【0034】
一方の固定接触子3aの固定接点9aと、固定接点9aに接離する可動接触子4の可動接点10aとを接点部42aと称し、他方の固定接触子3bの固定接点9bと、固定接点9bに接離する可動接触子4の可動接点10bとを接点部42bと称すると、一方のアーク消弧用永久磁石37から他方のアーク消弧用永久磁石36に流れる磁束(
図4の破線矢印)が接点部42a,42bを横切る。
【0035】
接点部42aに対して
図4の左側の消弧壁35で囲まれた空間を第1アーク消弧空間S1とする。また、接点部42bに対して右側の消弧壁35で囲まれた空間を第2アーク消弧空間S2とする。これら第1アーク消弧空間S1及び第1アーク消弧空間S1は、消弧壁35に形成した4箇所の角部開口部40a~40dを介して一対の磁極板38,39で形成した4箇所の外側連通空間41a~41dに連通している。そして、4箇所の外側連通空間41a~41dは、電磁石ユニット5が密閉容器2(ケース6)に収納されている空間に連通している。
【0036】
次に、本実施形態の電磁接触器1の動作を、
図4を参照して説明する。
【0037】
本実施形態の電磁接触器1は、一方の固定接触子3aに正極(+)端子を接続し、他方の固定接触子3bに負極(-)端子を接続している。
【0038】
今、電磁石ユニット5のコイル31が無励磁状態にあって、電磁石ユニット5で可動プランジャ22を上方向に移動させる励磁力を発生していない釈放状態にあるものとする。この釈放状態では、可動プランジャ22がバックスプリング27によって下方向に付勢され、アーマチュア23が補助ヨーク29に永久磁石28の作用によって吸着している。このため、可動プランジャ22に連結されている可動接触子4が、一対の固定接触子3a,3bに対して下方に所定距離だけ離間している。このため、一対の固定接触子3a,3bの間の電流路が遮断状態にあり、接点部42a,42bが開いた状態となっている(接点部42a,42bの開状態)。
【0039】
この接点部42a,42bの開状態から、電磁石ユニット5のコイル31に通電すると、電磁石ユニット5で励磁力が発生し、可動プランジャ22を、永久磁石28による補助ヨーク29に対する吸着力及びバックスプリング27の付勢力に抗して上方に押し上げ、アーマチュア23が底部ヨ-ク25a,25bに吸着される。
【0040】
このように、可動プランジャ22が上方向に移動することにより、可動プランジャ22に連結されている可動接触子4も上方向に移動し、可動接触子4の可動接点10a,10bが、一対の固定接触子3a,3bの固定接点9a,9bに対して接触スプリング14の接触圧で接触し、接点部42a,42bが閉じた状態となる。
【0041】
そして、接点部42a,42bの閉状態から、主回路に大電流が流れて電磁石ユニット5のコイル31への通電を停止すると、電磁石ユニット5で可動プランジャ22を上方向に移動させる励磁力がなくなることで、可動プランジャ22がバックスプリング27の付勢力によって下方向に移動し、アーマチュア23が補助ヨーク29に永久磁石28の作用によって吸着する。可動プランジャ22が下方向に移動すると、可動プランジャ22に連結している可動接触子4が一対の固定接触子3a,3bから下方に離間する開極開始状態となる。
【0042】
主回路に大電流が流れて接点部42a,42bの開極開始状態となると、接点部42aの間に第1アークが発生し、接点部42bの間に第2アークが発生し、これら第1及び第2アークによって電流の通電状態が継続され、第1アークの電流方向は、固定接点9aから可動接点10aに向う方向であり、第2アークの電流方向は、可動接点10bから固定接点9aに向う方向である。
【0043】
このとき、アーク消弧用永久磁石37のN極から出てアーク消弧用永久磁石36のS極に流れる磁束が第1アーク及び第2アークを横切る。第1アークの電流の流れと磁束との関係から、フレミング左手の法則により
図4において第1アーク消弧空間S1の左上側の消弧壁35の角部開口部40aに向かう側にローレンツ力F1が発生する。また、第2アークの電流の流れと磁束との関係から、フレミング左手の法則により
図4において第2アーク消弧空間S2の右下側の消弧壁35の角部開口部40dに向かう側にローレンツ力F2が発生する。
【0044】
ローレンツ力F1が発生すると、第1アークは、第1アーク消弧空間S1の
図4の左上側の消弧壁35の角部開口部40a側に大きく引き延ばされていき、アーク消弧用ガスとの接触で冷却されていく。そして、大きく引き延ばされた第1のアークは、角部開口部40aより外側連通空間41aを形成している磁極板38の屈曲部38bに接触することで冷却されていく。また、ローレンツ力F2が発生すると、第2アークが第2アーク消弧空間S2の右下側の消弧壁35の角部開口部40d側に大きく引き延ばされていき、アーク消弧用ガスとの接触で冷却されていく。そして、大きく引き延ばされた第2のアークは、角部開口部40dより外側連通空間41dを形成している磁極板39の屈曲部39cに接触することで冷却されていく。
【0045】
一方、主回路に大電流が流れて接点部42a,42bが開極状態となると、接点部42aは、第1アークの温度上昇により固定接点12a及び可動接点13bが溶融して高温の金属蒸気が大量に発生する。また、接点部42bも、第2アークの温度上昇により固定接点12a及び可動接点13bが溶融して高温の金属蒸気が大量に発生する。
【0046】
接点部42aで発生した金属蒸気は、第1アーク消弧空間S1に流れていき、
図4に示すように、消弧壁35の角部開口部40a,40bから外側連通空間41a,41bを通過して電磁石ユニット5を収納する空間に向けて流れていく。また、接点部42bで発生した金属蒸気は、第2アーク消弧空間S2に流れていき、消弧壁35の角部開口部40c,40dから外側連通空間41c,41dを通過して電磁石ユニット5を収納する空間に向けて流れていく。外側連通空間41a~41dを流れる金属蒸気は、外側連通空間41a~41dを形成している磁極板38,39の屈曲部38b,38c,39b,39cと接触することで冷却されていく。
【0047】
次に、本実施形態の電磁接触器1の作用効果について説明する。
【0048】
大電流の遮断時に接点部42aに第1アークが発生すると、第1アークの電流の流れと磁束との関係から第1アーク消弧空間S1の消弧壁の角部開口部40aに向かう側にローレンツ力F1が発生し、第1アークを大きく引き延ばすことができる。また、接点部42bに第2アークが発生すると、第2アークの電流の流れと磁束との関係から第2アーク消弧空間S2の消弧壁35の角部開口部40dに向かう側にローレンツ力F1が発生し、第1アークも大きく引き延ばすことができる。
【0049】
そして、大電流の遮断時において接点部42a,42bに高温の金属蒸気が大量に発生しても、接点部42aで発生した金属蒸気は消弧壁35の角部開口部40a,40bから外側連通空間41a,41b側へ流れていき、電磁石ユニット5を収納する空間に向けて流れていく。また、接点部42bで発生した金属蒸気も、消弧壁35の角部開口部40c,40dから外側連通空間41a,41b側へ流れていき、電磁石ユニット5を収納する空間に向けて流れていく。このように、接点部42a,42bで発生した金属蒸気は、第1アーク消弧空間S1及び第2アーク消弧空間S2で滞留せず、圧力上昇も発生させず、消弧壁35の角部開口部40a、40dに向う方向に気流が発生することで、第1アーク及び第2アークをさらに引き延ばしていく。
【0050】
したがって、第1及び第2アークは、金属蒸気の気流に沿って効率的に引き延ばされていくので、遮断性能を向上させることができる。
【0051】
また、大きく引き延ばされた第1のアークは、角部開口部40aより外側連通空間41aを形成している磁極板38の屈曲部38bに接触することでさらに冷却され、大きく引き延ばされた第2のアークも、角部開口部40dより外側連通空間41dを形成している磁極板39の屈曲部39cに接触することでさらに冷却されるので、遮断性能をさらに向上させることができる。
【0052】
また、消弧壁35の角部開口部40a,40bから外側連通空間41a,41bに流れた金属蒸気と、消弧壁35の角部開口部40c,40dから外側連通空間41c,41dに流れた金属蒸気は、外側連通空間41a~41dを形成する磁極板38,39の屈曲部38b,38c,39b,39cと接触することで効率的に冷却されて液体や固体に相変化し、密閉容器2内部の圧力、温度が短時間で低下するので、消弧性能の低下を防止することができるとともに、第1及び第2アークの再発弧を防止することができる。
[第2実施形態]
【0053】
次に、
図5は、本発明に係る第2実施形態の電磁接触器1の要部を示すものである。本実施形態は、第1実施形態の一対のアーク消弧用永久磁石36,37と異なる構成の一対のアーク消弧用永久磁石45,46を備えている。その他の構成は、第1実施形態と同一構成であり、同一符号を付して説明は省略する。
【0054】
本実施形態の一方の消弧用永久磁石45の消弧壁35の短辺壁35bに当接する磁極面はN極とされ、他方のアーク消弧用永久磁石46の短辺壁35cに当接する磁極面はN極とされている。
【0055】
一方のアーク消弧用永久磁石45は、
図5の破線で示すように、消弧壁35の短辺壁35bから長辺壁35d,35eに流れる磁束が発生し、他方のアーク消弧用永久磁石46は、消弧壁35の短辺壁35cから長辺壁35d,35eに流れる磁束が発生する。
【0056】
本実施形態の電磁接触器1は、主回路に大電流が流れて接点部42a,42bの開極開始状態となると、接点部42aの間に第1アークが発生し、接点部42bの間に第2アークが発生し、これら第1及び第2アークによって電流の通電状態が継続され、第1アークの電流方向は、固定接点9aから可動接点10aに向う方向とし、第2アークの電流方向は、可動接点10bから固定接点9aに向う方向とする。
【0057】
このとき、第1アークの電流の流れと、一方の消弧用永久磁石45の磁束との関係から、フレミング左手の法則により第1アーク消弧空間S1の左下側の消弧壁35の角部開口部40bに向かう側にローレンツ力F1が発生する。また、第2アークの電流の流れと他方の消弧用永久磁石46の磁束との関係から、フレミング左手の法則により第2アーク消弧空間S2の右下側の消弧壁35の角部開口部40dに向かう側にローレンツ力F2が発生する。
【0058】
ローレンツ力F1が発生すると、第1アークは、第1アーク消弧空間S1の左下
側の消弧壁35の角部開口部40b側に大きく引き延ばされていき、アーク消弧用ガスとの接触で冷却されていく。そして、大きく引き延ばされた第1のアークは、角部開口部40bより外側連通空間41bを形成している磁極板38の屈曲部38cに接触することで冷却されていく。また、ローレンツ力F2が発生すると、第2アークが第2アーク消弧空間S2の右下側の消弧壁35の角部開口部40d側に大きく引き延ばされていき、アーク消弧用ガスとの接触で冷却されていく。そして、大きく引き延ばされた第2のアークは、角部開口部40dより外側連通空間41dを形成している磁極板39の屈曲部39cに接触することで冷却されていく。
【0059】
また、接点部42aで発生した金属蒸気は、第1アーク消弧空間S1に流れていき、消弧壁35の角部開口部40a,40bから外側連通空間41a,41bを通過して電磁石ユニット5を収納する空間に向けて流れていく。また、接点部42bで発生した金属蒸気は、第2アーク消弧空間S2に流れていき、消弧壁35の角部開口部40c,40dから外側連通空間41c,41dを通過して電磁石ユニット5を収納する空間に向けて流れていく。外側連通空間41a~41dを流れる金属蒸気は、外側連通空間41a~41dを形成している磁極板38,39の屈曲部38b,38c,39b,39cと接触することで冷却されていく。
【0060】
本実施形態の電磁接触器1によると、大電流の遮断時に接点部42aに第1アークが発生すると、第1アークの電流の流れと一方の消弧用永久磁石45の磁束との関係から第1アーク消弧空間S1の消弧壁35の角部開口部40bに向かう側にローレンツ力F1が発生し、第1アークを大きく引き延ばすことができる。また、接点部42bに第2アークが発生すると、第2アークの電流の流れと磁束との関係から第2アーク消弧空間S2の消弧壁35の角部開口部40dに向かう側にローレンツ力F1が発生し、第1アークも大きく引き延ばすことができる。
【0061】
そして、大電流の遮断時において接点部42a,42bに高温の金属蒸気が大量に発生しても、接点部42aで発生した金属蒸気は消弧壁35の角部開口部40a,40bから外側連通空間41a,41b側へ流れていき、電磁石ユニット5を収納する空間に向けて流れていく。また、接点部42bで発生した金属蒸気も、消弧壁35の角部開口部40c,40dから外側連通空間41a,41b側へ流れていき、電磁石ユニット5を収納する空間に向けて流れていく。したがって、第1及び第2アークは、金属蒸気の気流に沿って効率的に引き延ばされていくので、遮断性能を向上させることができる。
【0062】
また、第1実施形態と同様に、第1のアークは、磁極板38の屈曲部38cに接触することでさらに冷却され、第2のアークも、磁極板39の屈曲部39cに接触することでさらに冷却されるので、遮断性能をさらに向上させることができる。
【0063】
さらに、第1実施形態と同様に、金属蒸気は、外側連通空間41a~41dを形成する磁極板38,39の屈曲部38b,38c,39b,39cと接触するので、消弧性能の低下を防止することができるとともに、第1及び第2アークの再発弧を防止することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 電磁接触器
2 密閉容器
3a,3b 固定接触子
4 可動接触子
5 電磁石ユニット
6 ケース
7 カバー
8 ネジ穴
9a,9b 固定接点
10a,10b 可動接点
11 接点支え
12 基部
13 押さえ部材
14 接触スプリング
20 スプール
21 摺動カラー
22 可動プランジャ
23 アーマチュア
24a,24b 外ヨーク
25a,25b 底部ヨーク
26 プランジャリング
27 バックスプリング
28 永久磁石
29 補助ヨーク
30 巻き軸
31 コイル
32 連結部
35 消弧壁
35a 蓋
35a1 接触子穴
35b、35c 短辺壁
35d,35e 長辺壁
35f 載置板
36,37,45,46 アーク消弧用永久磁石
38,39 磁極板
38a,39a 磁石当接板
38b,38c,39b,39c 屈曲部
38d,38e,39d,39e 平行板部
40a~40d 角部開口部
41a~41d 外側連通空間
42a,42b 接点部
F1、F2 ローレンツ力
S1 第1アーク消弧空間
S2 第2アーク消弧空間