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特開2025-43120音響信号処理装置及び音響信号処理方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025043120
(43)【公開日】2025-03-28
(54)【発明の名称】音響信号処理装置及び音響信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20250321BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
H04S7/00 300
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150448
(22)【出願日】2023-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 達彦
【テーマコード(参考)】
5D162
5D220
【Fターム(参考)】
5D162AA07
5D162CA01
5D162CA11
5D162CD03
5D162CD09
5D162DA22
5D162DA44
5D162EG02
5D220AB01
5D220AB08
(57)【要約】
【課題】上下方向の音像定位を簡易に実現できる音響信号処理装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る音響信号処理装置は、変調周波数制御部、周波数シフト処理部、及び振幅制御部を備える。変調周波数制御部は、音源の速度を示す速度情報に基づいて変調周波数を制御する。周波数シフト処理部は、前記変調周波数に従って音響信号に対してSSB(Single Sideband)変調を行って変調音響信号を生成する。振幅制御部は、前記変調音響信号の振幅を制御する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源の速度を示す速度情報に基づいて第1の変調周波数を制御する第1の変調周波数制御部と、
前記第1の変調周波数に従って第1の音響信号に対してSSB(Single Sideband)変調を行って第1の変調音響信号を生成する第1の周波数シフト処理部と、
前記第1の変調音響信号の振幅を制御する第1の振幅制御部と、
を備える音響信号処理装置。
【請求項2】
前記第1の変調音響信号は、前記第1の変調周波数だけ周波数がシフトした第1の音響信号である、請求項1に記載の音響信号処理装置。
【請求項3】
前記速度情報は前記速度の時間変化を示し、
前記第1の変調周波数制御部は、前記音源の前記速度をドップラーシフト量に変換することにより前記第1の変調周波数を制御する、
請求項1に記載の音響信号処理装置。
【請求項4】
入力音響信号を分岐して前記第1の音響信号と第2の音響信号とを含む複数の音響信号を生成する分波器と、
互いに異なる通過帯域を有し、前記複数の音響信号をフィルタリングする複数のバンドパスフィルタと、
前記複数のバンドパスフィルタを通過した前記複数の音響信号に対して前記SSB変調を行って複数の変調音響信号を生成する複数の周波数シフト処理部と、
前記複数の変調音響信号の振幅を制御する複数の振幅制御部と、
振幅制御された前記複数の変調音響信号を加算する加算器と、
を備え、
前記複数のバンドパスフィルタは、前記第1の音響信号をフィルタリングする第1のバンドパスフィルタと、前記第2の音響信号をフィルタリングする第2のバンドパスフィルタと、を含み、
前記複数の周波数シフト処理部は、前記第1の変調周波数に従って、前記第1のバンドパスフィルタを通過した前記第1の音響信号に対して前記SSB変調を行って前記第1の変調音響信号を生成する前記第1の周波数シフト処理部と、前記第1の変調周波数とは異なる第2の変調周波数に従って、前記第2のバンドパスフィルタを通過した前記第2の音響信号に対して前記SSB変調を行って第2の変調音響信号を生成する第2の周波数シフト処理部と、を含む、
請求項1に記載の音響信号処理装置。
【請求項5】
入力音響信号を分岐して前記第1の音響信号及び第2の音響信号を生成する分波器と、
所定の通過帯域を有し、前記第1の音響信号をフィルタリングするバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタと逆の動作を行うように構成され、前記第2の音響信号をフィルタリングするバンドストップフィルタと、
前記バンドストップフィルタを通過した前記第2の音響信号の振幅を制御する第2の振幅制御部と、
振幅制御された前記第1の変調音響信号及び振幅制御された前記第2の音響信号を加算する加算器と、
をさらに備え、
前記第1の周波数シフト処理部は、前記第1の変調周波数に従って、前記バンドパスフィルタを通過した前記第1の音響信号に対して前記SSB変調を行って前記第1の変調音響信号を生成する、
請求項1に記載の音響信号処理装置。
【請求項6】
前記速度情報と前記振幅の制御に使用される振幅情報とを入力するためのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を提供するパラメータ設定部をさらに備える請求項1に記載の音響信号処理装置。
【請求項7】
外部装置に入力される、前記速度情報と前記振幅の制御に使用される振幅情報とを含む設定情報を、前記外部装置から取得するパラメータ設定部をさらに備える請求項1に記載の音響信号処理装置。
【請求項8】
コンピュータにより実行される音響信号処理方法であって、
音源の速度を示す速度情報に基づいて変調周波数を制御することと、
前記変調周波数に従って音響信号に対してSSB(Single Sideband)変調を行って変調音響信号を生成することと、
前記変調音響信号の振幅を制御することと、
を備える音響信号処理方法。
【請求項9】
音源の速度を示す速度情報に基づいて変調周波数を制御する手段、
前記変調周波数に従って音響信号に対してSSB(Single Sideband)変調を行って変調音響信号を生成する手段、及び
前記変調音響信号の振幅を制御する手段
としてコンピュータを機能させるための音響信号処理プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、音響信号処理装置及び音響信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水平方向に配置した2つのスピーカを使用して左右方向の音像定位を実現する技術が知られている。左右方向の音像定位は、一般に、両耳への音の到達時間差を利用して実現することができる。一方、上下方向の音像定位は、音の両耳への到達時間差がなくても認知できる。よって、上下方向の音像定位を実現するには、別のアプローチが必要となる。
【0003】
上下方向の音像定位は、水平方向に配置した無指向性スピーカ群(2個以上の無指向性スピーカ)を使用して実現することは技術的に難しい。また、複数のスピーカを一列に配置したサウンドバーを斜め上向きに配置することで上下方向の立体感を創出する手法もあるが、ハードコストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-261787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上下方向の音像定位を簡易に実現できる音響信号処理装置及び音響信号処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る音響信号処理装置は、変調周波数制御部、周波数シフト処理部、及び振幅制御部を備える。変調周波数制御部は、音源の速度を示す速度情報に基づいて変調周波数を制御する。周波数シフト処理部は、前記変調周波数に従って音響信号に対してSSB(Single Sideband)変調を行って変調音響信号を生成する。振幅制御部は、前記変調音響信号の振幅を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る音響信号処理装置を示すブロック図。
図2図1に示した変調周波数制御部を示すブロック図。
図3図1に示した音響信号処理装置により達成される周波数シフトを示す図。
図4図1に示したパラメータ設定部を説明するための図。
図5】移動音源アプリケーション(A)に係る音響信号処理装置を示すブロック図。
図6】移動音源アプリケーション(B)に係る音響信号処理装置を示すブロック図。
図7A】移動音源アプリケーション(B)の実施例に係る音響信号を示す図。
図7B】移動音源アプリケーション(B)の実施例に係る速度変化テーブルを示す図。
図7C】移動音源アプリケーション(B)の実施例に係る変調周波数を示す図。
図7D】移動音源アプリケーション(B)の実施例に係る振幅制御を示す図。
図8A図7Aに示した音響信号を図6に示した音響信号処理装置で処理することにより得られる音響信号を示す図。
図8B図8Aの一部を拡大して示す図。
図8C図8Bの一部を拡大して示す図。
図9A図7Aに示した音響信号を図6に示した音響信号処理装置で処理することにより得られる音響信号を示す図。
図9B図9Aの一部を拡大して示す図。
図9C図9Bの一部を拡大して示す図。
図10】移動音源アプリケーション(C)に係る音響信号処理装置を示すブロック図。
図11A】移動音源アプリケーション(C)の実施例に係る音響信号を示す図。
図11B】移動音源アプリケーション(C)の実施例に係る速度変化テーブルを示す図。
図11C】移動音源アプリケーション(C)の実施例に係る変調周波数を示す図。
図12A図11Aに示した音響信号を図10に示した音響信号処理装置で処理することにより得られる音響信号を示す図。
図12B図7Aに示した音響信号を図6に示した音響信号処理装置で処理することにより得られる音響信号を示す図。
図13A図7Aに示した音響信号を図6に示した音響信号処理装置で処理することにより得られる音響信号を示す図。
図13B図7Aに示した音響信号を図6に示した音響信号処理装置で処理することにより得られる音響信号を示す図。
図14】実施形態に係る音響信号処理装置のハードウェア構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
【0009】
実施形態は、周波数シフトによる音像定位手法に関する。実施形態に係る周波数シフトによる音像定位手法は、上下方向の音像定位を簡易に実現できる。例えば、実施形態に係る周波数シフトによる音像定位手法は、水平方向に配置した2つの無指向性スピーカを使用して、上下方向の音像定位を実現することができる。
【0010】
人間は、低い音から高い音にピッチが遷移していくと、上方向に音源が移動しているように感じる(錯覚する)。反対に、高い音から低い音にピッチが遷移していくと、下方向に音源が移動しているように感じる。これは、ロケットの打ち上げや、ドローンの離着陸(スピンアップ又はスピンダウン)などの視聴経験があるためと考えられる。このことを踏まえ、移動音源を模擬可能な音響信号処理装置を実施形態で示す。基本的には、実施形態に係る音像定位手法は、ドップラーシフトを利用して移動音源を模擬するものである。なお、実施形態に係る音像定位手法は、上下方向の音像定位以外にも、移動音源模擬に適用することも可能であり、応用範囲が広い。
【0011】
図1は、実施形態に係る音響信号処理装置100の構成例を概略的に示している。図1に示すように、音響信号処理装置100は、周波数シフト処理部102、変調周波数制御部126、振幅制御部128、130、及びパラメータ設定部132を備えている。周波数シフト処理部102は、変調周波数制御部126により制御される変調周波数f1に対応する周波数シフトを音響信号に適用する。本実施形態では、音源の速度を事前に設定し、音源の速度からドップラーシフト量を算出し、算出したドップラーシフト量を変調周波数f1として使用する。ドップラーシフト量は、ドップラーシフトによる周波数変化を示す。
【0012】
ドップラーシフトによれば、周波数faの音を発する音源が観測者に対して速度vで遠ざかる場合、観測者は下記式(1)に示す周波数fbの音を観測する。
【0013】
【数1】
ここで、cは音速を表す。ドップラーシフト量は(-v/(c+v))faである。音源が近づく場合(vが負である場合)、周波数は高くなり、音源が遠ざかる場合、周波数は低くなる。
【0014】
変調周波数f1は、ドップラーシフト量を実現するように決定される。具体的には、変調周波数f1は、下記式(2)に従って算出される。
【数2】
ここで、faは、入力される音響信号を代表する基準周波数を表す。基準周波数faは、音響信号処理装置100を操作するオペレータにより指定され得る。
【0015】
周波数シフト処理部102は、入力端子104、正弦波信号生成部106、乗算器108、遅延器110、余弦波信号生成部112、乗算器114、90度シフタ116、加算器118、減算器120、及び出力端子122、124を備える。
【0016】
入力端子104には、音響信号を供給する音響信号源150が接続されている。乗算器108の第1入力ポートは入力端子104に接続され、乗算器108の第2入力ポートは正弦波信号生成部106に接続されている。乗算器108の出力ポートは遅延器110の入力ポートに接続されている。遅延器110の出力ポートは加算器118の第1入力ポート及び減算器120の第1入力ポートに接続されている。乗算器114の第1入力ポートは入力端子104に接続され、乗算器114の第2入力ポートは余弦波信号生成部112に接続されている。乗算器114の出力ポートは90度シフタ116の入力ポートに接続されている。90度シフタ116の出力ポートは加算器118の第2入力ポート及び減算器120の第2入力ポートに接続されている。加算器118の出力ポートは出力端子122に接続されている。減算器120の出力ポートは出力端子122に接続されている。
【0017】
音響信号源150からの音響信号は入力端子104に入力される。音響信号はcos(2π×fa×t)と表すことができる。音響信号は二分岐されて乗算器108及び乗算器114に入力される。
【0018】
正弦波信号生成部106は、変調周波数f1の正弦波信号sin(2π×f1×t)を生成する。乗算器108は、第1入力ポートから入力される音響信号に第2入力ポートから入力される正弦波信号を乗じる。乗算器108から出力される信号は、{sin(2π×(fa+f1)×t)+sin(2π×(f1-fa)×t)}/2となる。遅延器110は、乗算器108の出力信号を所定時間だけ遅延させる。所定時間は、90度シフタ116に含まれる遅延時間に一致する。遅延器110から出力される信号は、{sin(2π×(fa+f1)×t)-sin(2π(fa-f1)×t)}/2×Dとなる。Dは遅延器110にて生じる遅延を示す。
【0019】
余弦波信号生成部112は、変調周波数f1の余弦波信号cos(2π×f1×t)を生成する。乗算器114は、第1入力ポートから入力される音響信号に第2入力ポートから入力される余弦波信号を乗じる。乗算器114から出力される信号は、{cos(2π×(fa+f1)×t)+cos(2π×(fa-f1)×t)}/2となる。90度シフタ116は、乗算器114の出力信号に-π/2の位相シフトを適用する。90度シフタ116は、例えば、ヒルベルト変換器を使用して実現することができる。90度シフタ116から出力される信号は、{sin(2π×(fa+f1)×t)+sin(2π×(fa-f1)×t)}/2×Dとなる。Dは、90度シフタ116にて生じる遅延を示す。
【0020】
加算器118は、90度シフタ116の出力信号と遅延器110の出力信号を加算する。加算器118から出力される信号は、sin(2π×(fa+f1)×t)×Dとなる。このようにして、出力端子122において、周波数がf1だけシフトした音響信号が得られる。
【0021】
減算器120は、90度シフタ116の出力信号から遅延器110の出力信号を減算する。減算器120から出力される信号は、sin(2π×(fa-f1)×t)×Dとなる。このようにして、出力端子124において、周波数が-f1だけシフトした音響信号が得られる。
【0022】
以下では、周波数がf1だけシフトした音響信号が得られる出力端子を正側出力端子と称することもあり、周波数が-f1だけシフトした音響信号が得られる出力端子を負側出力端子と称することもある。
【0023】
周波数シフト処理部102により行われる上述した信号処理は、無線通信分野で使用されているSingle Sideband(SSB)変調に類似する。本明細書では、周波数シフト処理部102により行われる上述した信号処理をSSB変調と称する。周波数シフト処理部102は、音響信号に対してSSB変調を行って周波数がシフトした音響信号を得る。
【0024】
図2を参照して、変調周波数制御部126を説明する。変調周波数制御部126は、周波数シフト処理部102の正弦波信号生成部106及び余弦波信号生成部112に設定される変調周波数f1を制御する。図2に示すように、変調周波数制御部126は、速度設定部202及び変調周波数算出部204を備えている。
【0025】
速度設定部202は、音源の遠ざかる速度vを示す速度情報を設定する。速度vは、オペレータにより指定され得る。速度vは、固定値であってもよい。速度vは、可変であってもよい、すなわち、時間変化してもよい。例えば、速度設定部202は、ユーザにより指定される速度vの時間変化を記録した速度変化テーブルを速度情報として保持し、速度変化テーブルに従って速度vを示す信号を変調周波数算出部204に出力する。
【0026】
変調周波数算出部204は、速度設定部202により設定された速度vから変調周波数f1を算出する。例えば、変調周波数算出部204は、上記式(2)に従って、速度v及び基準周波数faから変調周波数f1を算出する。
【0027】
変調周波数算出部204は、算出した変調周波数f1を示す信号を周波数シフト処理部102に出力する。速度vが固定値である場合、変調周波数f1も固定値である。速度vが時間変化する場合、変調周波数f1も時間変化する。
【0028】
図1を再び参照すると、振幅制御部128は、周波数シフト処理部102の出力端子122に接続されている。振幅制御部128は、出力端子122から出力される音響信号の振幅を制御する。具体的には、振幅制御部128は、オペレータにより指定され得る増幅率又は利得で、出力端子122から出力される音響信号を増幅する。
【0029】
振幅制御部130は、周波数シフト処理部102の出力端子124に接続されている。振幅制御部130は、出力端子124から出力される音響信号の振幅を制御する。具体的には、振幅制御部130は、オペレータにより指定され得る増幅率又は利得で、出力端子124から出力される音響信号を増幅する。
【0030】
パラメータ設定部132は、変調周波数制御部126で使用される速度vと振幅制御部128で使用される増幅率と振幅制御部130で使用される増幅率とをパラメータとして含むパラメータセットを設定する。パラメータセットは、基準周波数faをパラメータとして含んでよい。パラメータは、オペレータの入力に基づいて設定され得る。
【0031】
図1に示す構成は例示であり、音響信号処理装置100は、図1に示す構成とは異なる構成を有してよい。例えば、周波数シフト処理部102が単一の出力端子を備えていてもよい。具体的には、音響信号処理装置100から減算器120、出力端子124、及び振幅制御部130が削除されてもよい。代替として、音響信号処理装置100から加算器118、出力端子122、及び振幅制御部128が削除されてもよい。
【0032】
図3は、図1に示す周波数シフト処理部102により達成される周波数シフトを概略的に示している。図3において、(a)は周波数シフト処理部102に入力される音響信号に対応するベルの音を示し、(b)は乗算器108の出力信号を示し、(c)は乗算器114の出力信号を示し、(d)は加算器118の出力信号を示し、(e)は減算器120の出力信号を示す。この例では、変調周波数f1は100Hzに設定されている。100Hzの変調周波数f1は、例えば、速度vを約38m/s、基準周波数faを1kHzに設定することにより得られる。
【0033】
図3の(d)に示すように、周波数が100Hzシフトした音響信号が出力端子122から出力される。また、図3の(e)に示すように、周波数が-100Hzシフトした音響信号が出力端子124から出力される。図3からは、周波数シフト処理部102がベル音の周波数をシフトできていることが確認できる。
【0034】
図4は、実施形態に係るユーザインタフェース400のハードウェア構成例を概略的に示している。図4に示すユーザインタフェース400は、音響信号処理装置100に接続され、上述したパラメータセットを設定するために使用される。
【0035】
ユーザインタフェース400は、速度vを調整するためのスライダ402、振幅制御部128の増幅率を調整するためのスライダ404、振幅制御部130の増幅率を調整するためのスライダ(図示せず)、及びメモリボタン406を備えている。オペレータがメモリボタン406を押すと、音響信号処理装置100は、それに接続されるスピーカ又はヘッドホンを通じて本手法のエフェクトをかける音響信号を出力する。オペレータは、スピーカ又はヘッドホンから出力される音を聞きながら、パラメータを調整するためにスライダ402、404を操作する。ユーザインタフェース400は、スライダ402、404の操作を示す操作信号を音響信号処理装置100のパラメータ設定部132に送信する。パラメータ設定部132は、ユーザインタフェース400から受信した操作信号に従って、パラメータを設定する。例えば、音響信号処理装置100は、スライダ402の操作を示す操作信号に従って、速度変化テーブルを生成する。
【0036】
なお、ユーザインタフェース400は、ハードウェアに代えて、ソフトウェアにより実施されてもよい。具体的には、パラメータ設定部132は、ユーザインタフェース400に対応するグラフィカルユーザインタフェース(GUI;Graphic User Interface)を表示装置に表示するようにしてもよい。この場合、オペレータは、マウスなどの入力装置を操作してパラメータを調整する。
【0037】
上述した構成を有する音響信号処理装置100は、音響信号の周波数をシフトさせることができる。これは、上下方向の音像定位を簡易に実現することを可能にする。例えば、周波数がシフトした音響信号を水平方向に配置した1つ以上の無指向性スピーカ又はヘッドホンから出力することにより、音像が上方向又は下方向に移動する定位感を得ることができる。
【0038】
次に、図1に示す音響信号処理装置100を利用した移動音源アプリケーションを説明する。
【0039】
下記に説明するいずれの移動音源アプリケーションも、信号処理にかかる演算コストが低く、小規模演算器にて実時間で実現可能である。
【0040】
音源が近づいてくる場合には周波数が高くなる。一方、ユーザは、低い音から高い音にピッチが遷移していくと、上方向に音源が移動しているように錯覚する。この錯覚を利用し、上方向への定位感を創出する。
【0041】
音源が遠ざかる場合には周波数が低くなる。一方、ユーザは、高い音から低い音にピッチが遷移していくと、下方向に音源が移動しているように錯覚する。この錯覚を利用し、下方向への定位感を創出する。
【0042】
また、音源の近づく又は遠ざかる速度の遷移を適切に与えると、速度を一定とした場合と比べて、より現実味のある上方向又は下方向の定位感を創出することが可能となる。
【0043】
音量変化を付与することも可能である。上方向に上昇する定位を提示する場合においては、音量変化の付与について2つのケースが考えられる。例えば、ヘリコプターやドローンのように、回転速度の上昇に伴って音量が大きくなるような音源では、上方向に行くにつれて音量を上げることになる。逆に、一定音量の音源(鳥の鳴き声など)では、上方向に行につれて音量を下げることになる。これは、距離が遠ざかるほど、音が小さくなるためである。つまり、音量変化の付与は、コンテンツによっていかようにも変えることができる。
【0044】
<移動音源アプリケーション(A)>
図5は、移動音源アプリケーション(A)に係る音響信号処理装置500を概略的に示している。図5に示すように、音響信号処理装置500は、周波数シフト処理部502、変調周波数制御部510、切替部512、及び振幅制御部514を備えている。
【0045】
周波数シフト処理部502は、図1に示した周波数シフト処理部102と同じ構成を有する。周波数シフト処理部502は、周波数シフト処理部102の入力端子104に対応する入力端子504及び周波数シフト処理部102の出力端子122、124に対応する出力端子506、508を備える。変調周波数制御部510は、図2に示した変調周波数制御部126と同じ構成を有する。周波数シフト処理部502は、変調周波数制御部510により制御される変調周波数f1に従って音響信号にSSB変調を行う。
【0046】
周波数シフト処理部502の入力端子504には、音響信号を供給する音響信号源550が接続されている。周波数シフト処理部502の出力端子506、508は切替部512を介して振幅制御部514に接続されている。
【0047】
切替部512は、振幅制御部514を出力端子506、508のいずれに接続するかを切り替える。振幅制御部514は、切替部512から出力される音響信号の振幅を制御する。例えば、振幅制御部514は、オペレータにより指定される増幅率で、切替部512から出力される音響信号を増幅する。
【0048】
例えば、音響信号源550が救急車のサイレンを録音した音響信号を供給する。切替部512が振幅制御部514の接続先を出力端子506から出力端子508に切り替え、振幅制御部514が切り替えに同期して切替部512から出力される音響信号の振幅を切り替えタイミング近傍にて増加させる。このようにすると、救急車が、近づいてきて、目の前を通過し、遠ざかっていくようにユーザに知覚させることができる。
【0049】
このように、音響信号処理装置500は、救急車などの移動音源を模擬することが可能である。
【0050】
なお、変調周波数f1が可変である場合、切替部512が音響信号処理装置500から削除されてもよい。音響信号処理装置500が切替部512を含まない場合、周波数シフト処理部502の出力端子506、508のいずれか一方が振幅制御部514に接続される。例えば、変調周波数f1がAから-Aに又は-AからAに変わるように速度vを設定することにより、上述したものと同じ処理を行うことができる。
【0051】
<移動音源アプリケーション(B)>
図6は、移動音源アプリケーション(B)に係る音響信号処理装置600を概略的に示している。図6に示すように、音響信号処理装置600は、分波器601、N個のバンドパスフィルタ602-1~602-N、N個の周波数シフト処理部604-1~604-N、N個の変調周波数制御部610-1~610-N、N個の振幅制御部612-1~612-N、及び加算器614を備えている。ここで、Nは2以上の整数である。
【0052】
音響信号処理装置600には、音響信号を供給する音響信号源650が接続されている。音響信号処理装置600において、分波器601は音響信号源650からの音響信号をN個の経路620-1~620-Nに分岐する。
【0053】
経路620-iには、バンドパスフィルタ602-i、周波数シフト処理部604-i、及び振幅制御部612-iが設けられている。ここで、iは1以上N以下の任意の整数である。経路620-1~620-Nのそれぞれに設けられているバンドパスフィルタ602-1~602-Nは互いに異なる通過帯域を有する。バンドパスフィルタ602-iの通過帯域は、バンドパスフィルタ602-(i+1)の通過帯域と部分的に重複していてよい。バンドパスフィルタ602-iの中心周波数をfa(i)と表し、fa(1)<fa(2)<・・・<fa(N)とする。バンドパスフィルタ602-1~602-Nとして、例えば、1/1オクターブバンドフィルタ又は1/3オクターブバンドフィルタを使用することができる。1/1オクターブバンドフィルタを使用する場合、fa(i)/fa(i-1)=2となる。
【0054】
周波数シフト処理部604-1~604-Nの各々は、図1に示した周波数シフト処理部102と同じ構成を有する。周波数シフト処理部604-iは、周波数シフト処理部102の入力端子104に対応する入力端子606-i及び周波数シフト処理部102の出力端子122、124のいずれか一方に対応する出力端子608-iを備える。入力端子606-iはバンドパスフィルタ602-iに接続され、出力端子608-iは振幅制御部612-iに接続されている。
【0055】
変調周波数制御部610-1~610-Nの各々は、図2に示した変調周波数制御部126と同じ構成を有する。バンドパスフィルタ602-iの中心周波数fa(i)が経路620-iの基準周波数として使用される。変調周波数制御部610-iは、例えば下記式(3)に従って、速度v及び基準周波数fa(i)から変調周波数f(i)を算出する。
【数3】
周波数シフト処理部604-iは、変調周波数制御部610-iにより決定された変調周波数f(i)に応じて音響信号にSSB変調を行う。
【0056】
振幅制御部612-iは、周波数シフト処理部604-iから出力される、周波数がシフトした音響信号の振幅を制御する。例えば、振幅制御部612-iは、ユーザにより指定される増幅率で、周波数シフト処理部604-iから出力される音響信号を増幅する。振幅制御部612-1~612-Nに対して異なる増幅率が設定されてよい。例えば、経路620-iを通る音響信号が不要である場合、振幅制御部612-iの増幅率がゼロに設定されてよい。
【0057】
経路620-1~620-Nは加算器614において結合される。加算器614は、振幅制御部612-1~612-Nから出力される音響信号を加算し、それにより得られる音響信号を出力する。
【0058】
上述した構成を有する音響信号処理装置600は、音響信号を互いに異なる周波数帯域の音響信号に分離し、周波数帯域ごとに、その周波数帯域に応じた周波数シフトをその周波数帯域の音響信号に適用し、周波数シフトが適用された音響信号を加算する。上述した分波器601及びバンドパスフィルタ602-1~602-Nは、入力される音響信号を互いに異なる周波数帯域の音響信号に分離する分離部として機能する。
【0059】
ドップラーシフトでは、周波数変化は周波数に比例する。これに対して、SSB変調は、全周波数を一様にシフトさせる。移動音源アプリケーション(B)は、周波数帯域ごとにSSB変調を行うようにするので、ドップラーシフトによる周波数変化を再現することが可能となる。
【0060】
移動音源アプリケーション(B)の実施例について説明する。
【0061】
実施例では、図7Aに示すベル音を音響信号として使用し、図7Bに示す、時間経過に従って速度vが上がる速度変化テーブルを使用する。バンドパスフィルタ602-1~602-Nとして、21個の1/3オクターブバンドフィルタを使用する。バンドパスフィルタ602-1~602-21の中心周波数fa(1)~fa(21)については、fa(1)=100Hz、fa(2)=125Hz、fa(3)=160Hz、fa(4)=200Hz、fa(5)=250Hz、fa(6)=315Hz、fa(7)=400Hz、fa(8)=500Hz、fa(9)=630Hz、fa(10)=800Hz、fa(11)=1000Hz、fa(12)=1250Hz、fa(13)=1600Hz、fa(14)=2000Hz、fa(15)=2500Hz、fa(16)=3100Hz、fa(17)=4000Hz、fa(18)=5000Hz、fa(19)=6300Hz、fa(20)=8000Hz、fa(21)=10000Hzである。図7Cに示す変調周波数f(1)のように、変調周波数f(1)~f(21)は時間経過に従って高くなる。周波数シフト処理部604-iの出力端子608-iが正側出力端子である場合には、図7Dの実線に示すように時間経過に従って増幅率を増大させ、周波数シフト処理部604-iの出力端子608-iが負側出力端子である場合には、図7Dの破線に示すように時間経過に従って増幅率を低減させる。
【0062】
図8Aは、周波数シフト処理部604-iの正側出力端子を出力端子608-iとして使用する場合における音響信号処理装置600から出力される音響信号を示している。図8Bは、図8Aに示すグラフの一部を拡大して示し、図8Cは、図8Bに示すグラフの一部を拡大して示している。
【0063】
図8A図8B、及び図8Cに示すように、ベル音の周波数が時間経過に従ってアップする。図8Aに示す音響信号をスピーカから出力すると、ベルが上に上がっていくように聞こえる。
【0064】
図9Aは、周波数シフト処理部604-iの負側出力端子を出力端子608-iとして使用する場合における音響信号処理装置600から出力される音響信号を示している。図9Bは、図9Aに示すグラフの一部を拡大して示し、図9Cは、図9Bに示すグラフの一部を拡大して示している。
【0065】
図9A図9B、及び図9Cに示すように、ベル音の周波数が時間経過に従ってダウンする。図9Aに示す音響信号をスピーカから出力すると、ベルが下に下がっていくように聞こえる。
【0066】
図7Aに示すベル音は約7000Hzの音を含む。7000Hzは、6300Hzと8000Hzの中間に位置しており、中心周波数が6300Hzであるオクターブバンドフィルタと中心周波数が8000Hzであるオクターブバンドフィルタを通過する。このため、2つの経路で7000Hzの音に対してSSB変調が施される。この結果、図8B図8C図9B、及び図9Cに示すように、7000Hzの音は2つの音に分離されてしまい、うなりのように聞こえてしまう。移動音源アプリケーション(B)に係る音響信号処理装置600は、このような分離が気にならない速度範囲で使用することが望ましい。本例では、10秒程度までが許容範囲である。
【0067】
<移動音源アプリケーション(C)>
図10は、移動音源アプリケーション(C)に係る音響信号処理装置1000を概略的に示している。図10に示すように、音響信号処理装置1000は、分波器1001、バンドパスフィルタ1002、周波数シフト処理部1004、変調周波数制御部1010、振幅制御部1012、バンドストップフィルタ1014、振幅制御部1016、及び加算器1018を備えている。
【0068】
音響信号処理装置1000には、音響信号を供給する音響信号源1050が接続されている。移動音源アプリケーション(C)では、白色ノイズなど、ブロードな周波数帯域を持つ音響信号を扱う。分波器1001は、音響信号源1050からの音響信号を2つの経路1020-1、1020-2に分岐する。経路1020-1には、バンドパスフィルタ1002、周波数シフト処理部1004、及び振幅制御部1012が設けられている。経路1020-2には、バンドストップフィルタ1014及び振幅制御部1016が設けられている。
【0069】
バンドパスフィルタ1002は、経路1020-1を進む音響信号をフィルタリングする。具体的には、バンドパスフィルタ1002は、所定の通過範囲内の周波数を通過させ、その通過範囲外の周波数を減衰させる。
【0070】
周波数シフト処理部1004は、図1に示した周波数シフト処理部102と同じ構成を有する。周波数シフト処理部1004は、周波数シフト処理部102の入力端子104に対応する入力端子1006及び周波数シフト処理部102の出力端子122、124のいずれか一方に対応する出力端子1008を備える。入力端子1006はバンドパスフィルタ1002に接続され、出力端子1008は振幅制御部1012に接続されている。
【0071】
変調周波数制御部1010は、図2に示した変調周波数制御部126と同じ構成を有する。変調周波数制御部1010は、例えば上記式(2)に従って、基準周波数fa及び速度vから変調周波数f1を算出し、変調周波数f1を示す信号を周波数シフト処理部1004に出力する。ここでは、バンドパスフィルタ1002の中心周波数が基準周波数faとして使用される。周波数シフト処理部1004は、変調周波数制御部1010により決定された変調周波数f1に応じてバンドパスフィルタ1002を通過した音響信号にSSB変調を行う。
【0072】
振幅制御部1012は、周波数シフト処理部1004から出力される、周波数がシフトした音響信号の振幅を制御する。例えば、振幅制御部1012は、ユーザにより指定される増幅率で、周波数シフト処理部1004から出力される音響信号を増幅する。典型的には、振幅制御部1012は、周波数シフト処理部1004から出力される音響信号の振幅を増大させる。
【0073】
バンドストップフィルタ1014は、経路1020-2を進む音響信号をフィルタリングする。バンドストップフィルタ1014は、バンドパスフィルタ1002とは逆の動作を行う。具体的には、バンドストップフィルタ1014は、所定の通過範囲内の周波数を減衰させ、その通過範囲内の周波数を通過させる。例えば、バンドパスフィルタ1002の通過帯域が100Hz~500Hzである場合、バンドストップフィルタ1014は、100Hz~500Hzの範囲内の周波数を減衰させ、その範囲外の周波数を通過させる。振幅制御部1016は、バンドストップフィルタ1014を通過した音響信号の振幅を制御する。例えば、振幅制御部1016は、ユーザにより指定される増幅率で、バンドストップフィルタ1014を通過した音響信号を増幅する。典型的には、振幅制御部1016は、バンドストップフィルタ1014を通過した音響信号の振幅を低下させる。例えば、経路1020-2を進む音響信号が不要である場合、振幅制御部1016の増幅率がゼロに設定されてよい。
【0074】
経路1020-1、1020-2は加算器1018において結合される。加算器1018は、振幅制御部1012から出力される音響信号と振幅制御部1016から出力される音響信号を加算し、それにより得られる音響信号を出力する。
【0075】
なお、音響信号処理装置1000からバンドストップフィルタ1014、振幅制御部1016、及び加算器1018が削除されてもよい。
【0076】
上述した構成を有する音響信号処理装置1000は、所定の周波数帯域についてSSB変調を行い、それ以外の周波数帯域についてはSSB変調を行わないようにしている。すなわち、SSB変調を行う周波数帯域を制限している。これにより、移動音源アプリケーション(B)に関して説明したような帯域境界での周波数分離が生じることがない。その結果、白色ノイズなどのブロードな周波数帯域を持つ音響信号を扱うことが可能となる。
【0077】
移動音源アプリケーション(C)の実施例について説明する。
【0078】
実施例では、図11Aに示すランダム音を音響信号として使用し、図11Bに示す、時間経過に従って速度vが上がる速度変化テーブルを使用する。バンドパスフィルタ1002は100Hz~500Hzの通過帯域を有し、基準周波数faは300Hzである。この場合、変調周波数f1は、図11Cに示すように時間経過に従って高くなる。振幅制御部1012の利得は12dBであり、振幅制御部1016の利得は-36dBである。
【0079】
図12Aは、周波数シフト処理部1004の正側出力端子を使用する場合における振幅制御部1012の出力信号を示し、図12Bは、周波数シフト処理部1004の正側出力端子を使用する場合における音響信号処理装置1000から出力される音響信号を示している。図12A及び図12Bに示すように、時間経過に従って周波数がアップしている。振幅制御部1016の出力信号である背後ランダム音は雨音のような位置アンカー機能を有する。図12A又は図12Bに示す音響信号をスピーカから出力すると、ロケットを打ち上げたときの音のように上方に音源が上がっていくように聞こえる。
【0080】
図13Aは、周波数シフト処理部1004の負側出力端子を使用する場合における振幅制御部1012の出力信号を示し、図13Bは、周波数シフト処理部1004の負側出力端子を使用する場合における音響信号処理装置1000から出力される音響信号を示している。図13A及び図13Bに示すように、時間経過に従って周波数がダウンしている。振幅制御部1016の出力信号である背後ランダム音は雨音のような位置アンカー機能を有する。図13A又は図13Bに示す音響信号をスピーカから出力すると、下方に音源が下がっていくように聞こえる。
【0081】
上述した音響信号処理装置の各々における一連の処理は、例えば、1又は複数のプロセッサを含む処理回路により実現され得る。一連の処理は、CPU(Central Processing Unit)などの汎用プロセッサにプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよい。一連の処理は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用プロセッサ、すなわちハードウェアにより実現してもよい。一連の処理は、ソフトウェアとハードウェアを併用して実現してもよい。
【0082】
図14は、実施形態に係る音響信号処理装置を実現し得るコンピュータ1400のハードウェア構成例を概略的に示している。図14に示すように、コンピュータ1400は、CPU1402、メモリ1404、及び入出力インタフェース1406を備えている。
【0083】
メモリ1404は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ、及びハードディスクドライブなどの不揮発性メモリを含む。メモリ1404は、音響信号処理プログラムを含む各種プログラム及び速度情報を含む各種データを格納する。
【0084】
CPU1402は、メモリ1404に記憶されているプログラムに従って動作する。音響信号処理プログラムは、CPU1402により実行されたときに、図1に示した音響信号処理装置100、図5に示した音響信号処理装置500、図6に示した音響信号処理装置600、又は図10に示した音響信号処理装置100に関して説明した処理をCPU1402に行わせる。例えば、CPU1402は、音響信号処理プログラムに従って、音響信号処理装置100に含まれる周波数シフト処理部102、変調周波数制御部126、振幅制御部128、130、及びパラメータ設定部132として動作する。具体的には、CPU1402は、音響信号処理プログラムに従って、周波数シフト処理部102、変調周波数制御部126、振幅制御部128、130、及びパラメータ設定部132として動作する。
【0085】
入出力インタフェース1406は、入力装置及び出力装置を接続するためのインタフェースを含む。入力装置は、オペレータが情報を入力することを可能にする装置である。入力装置の例は、図4に示したユーザインタフェース400、キーボード、マウスを含む。出力装置は、情報を出力する装置である。出力装置の例は、表示装置、スピーカ、ヘッドホンを含む。
【0086】
音響信号処理プログラムなどのプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記憶された状態でコンピュータ1400に提供されてよい。この場合、コンピュータ1400は、記録媒体からデータを読み出すドライブを備え、記録媒体からプログラムを取得する。記録媒体の例は、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD-ROM、DVD-Rなど)、光磁気ディスク(MOなど)、及び半導体メモリを含む。また、プログラムは通信ネットワークを通じて配布するようにしてもよい。具体的には、プログラムを通信ネットワーク上のサーバに記憶させ、コンピュータ1400がサーバからプログラムをダウンロードするようにしてもよい。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
100…音響信号処理装置、102…周波数シフト処理部、104…入力端子、106…正弦波信号生成部、108…乗算器、110…遅延器、112…余弦波信号生成部、114…乗算器、116…90度シフタ、118…加算器、120…減算器、122…出力端子、124…出力端子、126…変調周波数制御部、128,130…振幅制御部、132…パラメータ設定部、150…音響信号源、202…速度設定部、204…変調周波数算出部、400…ユーザインタフェース、402,404…スライダ、406…メモリボタン、500…音響信号処理装置、502…周波数シフト処理部、504…入力端子、506,508…出力端子、510…変調周波数制御部、512…切替部、514…振幅制御部、550…音響信号源、600…音響信号処理装置、601…分波器、602…バンドパスフィルタ、604…周波数シフト処理部、606…入力端子、608…出力端子、610…変調周波数制御部、612…振幅制御部、614…加算器、620…経路、650…音響信号源、1000…音響信号処理装置、1001…分波器、1002…バンドパスフィルタ、1004…周波数シフト処理部、1006…入力端子、1008…出力端子、1010…変調周波数制御部、1012…振幅制御部、1014…バンドストップフィルタ、1016…振幅制御部、1018…加算器、1020…経路、1050…音響信号源、1400…コンピュータ、1402…CPU、1404…メモリ、1406…入出力インタフェース。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B
図14