(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004313
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】発信機の取付構造及び防災装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
A62C35/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103911
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】保護板を取り外すことなく、発信機の押釦を露出する操作を更に容易にして、発信機の点検作業の効率を向上可能する。
【解決手段】消火栓装置の電装扉20の発信機24が配置されている。電装扉20の裏側の取付板32には発信機24の押釦スイッチが取り付けられた横開きする内側子扉34が設けられている。扉開閉操作部35のロッド36の操作レバー40が第1操作位置にある場合は電装扉20及び内側子扉34を閉鎖固定し、第2操作位置へ移動するとロッド36の下降で内側子扉34の閉鎖固定を維持したまま電装扉20の閉鎖固定を解除して開放可能とし、第3操作位置へ移動するとロッド36の更なる下降で内側子扉34の閉鎖固定が解除され、内側子扉34の横開きにより、押釦スイッチを直接オン操作可能とする。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の装置に形成された所定の扉開口部に設けられる電装扉に、電装扉に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより前記保護板の裏面側に位置する押釦スイッチの操作部が操作される発信機を取り付ける発信機の取付構造であって、
前記電装扉の裏面側に設けられ、側端を軸として前記電装扉の裏面側で前記発信機の押釦スイッチを左右方向に回動させる発信機点検構造と、
所定の開操作により前記電装扉と前記押釦スイッチの固定を順次解除して開放可能とし、当該固定を解除した後の所定の閉操作により前記押釦スイッチと前記電装扉を順次固定する開閉操作部と、
を備え、
前記押釦スイッチは、前記保護板の押込みにより前記押釦スイッチの操作部が操作される位置から前記発信機点検構造により横向きに回転されることで前記電装扉の裏面側で前記押釦スイッチの操作部が操作可能な位置に移動することを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項2】
請求項1記載の発信機の取付構造において、
前記発信機点検構造は、前記所定の電装機器を前記電装扉に取り付けるための取付部材の、前記発信機の取付位置に対応して形成された子扉開口部に側端を軸として子扉が前記電装扉の裏側で左右回りに開閉自在に設けられ、前記子扉に前記発信機の押釦スイッチが取り付けられており、
前記開閉操作部は、前記電装扉の端部裏面側の上下方向に配置されたロッドガイドに沿ったロッドの段階的な下降による前記開操作により前記電装扉と前記子扉の閉鎖固定を順次解除して開放可能とし、当該閉鎖固定を解除した後の前記ロッドの段階的な上昇による前記閉操作により閉鎖位置にある前記子扉と前記電装扉を順次閉鎖固定し、
前記押釦スイッチは、前記保護板の押込みによりオン操作される位置から前記扉開閉操作部により閉鎖固定が解除された前記子扉を横方向に回転させることで直接オン操作可能な位置に移動することを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項3】
請求項2記載の発信機の取付構造において、
前記開閉操作部は、
前記ロッドガイドに沿ったロッドの移動操作により、前記電装扉及び前記子扉を閉鎖固定する第1操作位置、
前記子扉を閉鎖固定したまま前記電装扉の閉鎖固定を解除して開放可能とする第2操作位置、及び
前記子扉の閉鎖固定を解除して開放可能とする第3操作位置
を備え、
前記ロッドを前記第3操作位置に移動した状態で前記子扉を開いて取り付けている前記発信機の操作を可能とすることを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項4】
請求項2記載の発信機の取付構造において、
前記ロッドは横方向に操作桿を起立しており、
前記ロッドガイドは、前記ロッドを軸方向に挿通する円筒状部材であり、
前記ロッドの操作桿を前記第1操作位置、第2操作位置及び前記第3操作位置に段階的に案内移動させる階段状のガイド溝が前記円筒状部材の外周面に形成されたことを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項5】
請求項4記載の発信機の取付構造において、
前記ガイド溝は、前記ロッドの操作桿を第1操作位置と第2操作位置の間で案内移動させる第1階段溝と、前記第2操作位置と第3操作位置の間で案内移動させる第2階段溝が連設されたことを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項6】
請求項5記載の発信機の取付構造において、
前記第1階段溝の第1操作位置と第2階段溝の第2操作位置の各々には、前記ロッドの操作桿を前記各位置に留めるための凹嵌部が形成されたことを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項7】
請求項4記載の発信機の取付構造において、
前記開閉操作部は、
前記操作桿が前記ガイド溝の第1操作位置に保持されている場合に、前記ロッドの上端を前記装置の扉開口部側のロッド受け部の通し穴に挿入して前記電装扉を閉鎖固定すると共に、前記子扉の側端の張出部に形成された通し穴に前記ロッドを挿通して前記子扉を閉鎖固定しており、
前記操作桿を前記ガイド溝の第1操作位置から第2操作位置へ移動して保持した場合に、前記ロッドの上端を前記ロッド受け部の通し穴から抜き出して前記電装扉の閉鎖固定を解除して開放可能とすると共に、前記子扉の側端の張出部に形成された通し穴に対する前記ロッドの挿通を維持して前記子扉を閉鎖固定しており、
前記操作桿を前記ガイド溝の第2操作位置から第3操作位置へ移動して保持した場合に、前記ロッドを前記子扉の側端の張出部に形成された通し穴から抜き出して前記子扉の閉鎖固定を解除して開放可能とすることを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項8】
装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、所定の電装機器として発信機が設けられた電装扉と、
装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、装置内部にアクセスするときに開放される装置扉と、
を備えた防災装置であって、
前記発信機は、請求項1記載の発信機の取付構造により前記電装扉に取り付けられ、
前記装置扉の開放により開放された扉開口部から前記発信機の取付構造の前記発信機点検構造及び前記開閉操作部にアクセス可能としたことを特徴とする防災装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発信機の取付構造、及び発信機を備えた消火栓装置等の防災装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路等のトンネル内に設置され、火災等の非常時に使用するための防災機器を備えた防災装置が知られている。このような防災装置としては、消火栓装置や消火器箱等がある。例えば、消火栓装置は、開閉自在な消火栓扉を備えた消火栓収納部にノズルを装着したホースやバルブ類等の消火栓機器が収納され、道路に面する前面側から開閉可能な消火器扉を備えた消火器収納部に、例えば2本の消火器が収納され、更に消火器扉に隣接して、消火器扉と同様に前面側から開閉可能な電装扉を備えている。また、電装扉には、前面側に赤色表示灯、発信機、応答ランプ、並びに裏面側に電話ジャック等の電装機器が設けられており、発信機は電装扉の閉鎖状態で前面側から操作可能になっている。
【0003】
ここで、消火器扉と電装扉は、装置前面の各扉開口部に設けられ、通常時、電装扉は、裏面に設けられたねじ穴を備えた取付片に、取付片に相対して筐体側の扉開口部付近に設けられた受け部の通し穴を通したローレットねじ等をねじ込むことで、閉鎖位置で仮止め固定されており、例えば消火器扉は閉鎖位置に仮止め固定された電装扉に対して扉ハンドルの操作等により開閉可能に閉鎖位置に保持されている。
【0004】
また、発信機は、発信操作のための押釦スイッチを備えており、押釦スイッチの操作部である押釦が電装扉に設けられた所定の開口部を介して前面側から押圧操作できるようにして電装扉の裏面側から取り付けられており、また、電装扉の開口部の押釦位置の前面側には、透明な有機ガラス板等を使用した保護板(セフテクタ)が前面側から着脱自在に保持されている(特許文献1)。
【0005】
車両事故などに伴う火災時には、利用者が発信機の保護板を前面側から強く押し込むと、押釦スイッチの押釦が押し込まれて押釦スイッチがオン操作され、発信機から発信信号が電気室等の防災受信盤に送信されて防災受信盤から火災警報が出力され、これに伴う応答信号が防災受信盤から消火栓装置側に送られて応答ランプが点灯する。
【0006】
ところで、このような従来の発信機にあっては、定期点検等の際に、発信機を操作して正常に動作することを確認している。この発信機の点検作業時に火災時と同じ操作をする場合、点検終了後に保護板を再び開口部に嵌め込んで元の状態に戻す作業が必要になる。特許文献1においては、保護板は前面側からの押圧を受けて電装扉の前面パネルと押釦の間の空間に脱落するようになっており、保護板を通常位置に戻す作業には専用工具を必要として手間がかかる。或いは、保護板が破壊封板の場合には、保護板を新しいものに交換する作業が必要となり、同じように手間がかかる。
【0007】
このため、発信機の点検に手間と時間が掛かり、トンネル設備等においては所定間隔で設置されている多数の発信機を順次点検していく必要があるため、点検作業の効率が悪いことが問題となる。
【0008】
この問題を解決するために、特許文献2にあっては、特許文献2の
図1、
図2及び
図4に示すように、外扉側に保護板を設け、外扉の裏面側に押釦スイッチが取り付けられた内扉を設け、押釦スイッチの押釦が内扉の前面側に位置するように構成している。このようにして、点検時には外扉のみを開放することで保護版を押圧することなく、即ち保護版を通常状態に保持したまま押しボタン操作を可能とすることで、発信機の点検作業を容易にして点検作業の効率を向上させている。
【0009】
また、特許文献2にあっては、
図5乃至
図7に示すように、通報装置扉(電装扉)の裏面側に内側子扉を設け、内側子扉に発信機の押釦スイッチを取り付けており、内側子扉が装置の設置状態における上下方向を軸として回動し装置の幅方向(設置状態における横方向)に開放するように構成している。このようにして、点検時には、電装扉を開いた状態で内側子扉を開放することで、発信機のスイッチノブを外部に露出させ、保護版を通常状態に保持したまま押釦操作を可能とすることで、発信機の点検作業を容易にして点検作業の効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011-060580号公報
【特許文献2】特開2016-018219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような特許文献2の
図1、
図2及び
図4に示す外扉の裏面側に押釦スイッチが取り付けられた内扉を設ける構成については、前面側から外扉を比較的簡単に開放可能としているため、専門の点検者だけでなく一般の利用者が不要に外扉を開放してしまう可能性が高まり、好ましくない。
【0012】
また、特許文献2の
図5乃至
図7に示す通報装置扉(電装扉)の裏面側に内側子扉を設ける構成については、点検員は手袋をはめた状態で、消火器扉を開いて扉開口から電装扉の裏側に手を入れてローレットねじ等による仮止めを解除し、電装扉を開いた状態で内側子扉の閉鎖固定を解除して横開きする操作が必要となり、また、点検終了後には内側子扉と電装扉を別々に閉鎖状態に戻す操作が必要となり、発信機の点検に手間と時間がかかる場合がある。
【0013】
本発明は、特許文献2における上述の問題点を解決し、保護板を取り外すことなく、発信機の押釦を露出する操作を更に容易にして、発信機の点検作業の効率を向上可能とする発信機の取付構造及び発信機を備えた防災装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発信機の取付構造)
本発明は、所定の装置に形成された所定の扉開口部に設けられる電装扉に、電装扉に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより保護板の裏面側に位置する押釦スイッチの操作部が操作される発信機を取り付ける発信機の取付構造であって、
電装扉の裏面側に設けられ、側端を軸として電装扉の裏面側で発信機の押釦スイッチを左右方向に回動させる発信機点検構造と、
所定の開操作により電装扉と押釦スイッチの固定を順次解除して開放可能とし、当該固定を解除した後の所定の閉操作により押釦スイッチと電装扉を順次固定する開閉操作部と、
を備え、
押釦スイッチは、保護板の押込みにより押釦スイッチの操作部が操作される位置から発信機点検構造により横向きに回転されることで電装扉の裏面側で押釦スイッチの操作部が操作可能な位置に移動することを特徴とする。
【0015】
(発信機点検構造と開閉操作部)
発信機点検構造は、所定の電装機器を電装扉に取り付けるための取付部材の、発信機の取付位置に対応して形成された子扉開口部に側端を軸として子扉が電装扉の裏側で左右回りに開閉自在に設けられ、子扉に発信機の押釦スイッチが取り付けられており、
開閉操作部は、電装扉の先端部の裏面側の上下方向に配置されたロッドガイドに沿ったロッドの段階的な下降による開操作により電装扉と子扉の閉鎖固定を順次解除して開放可能とし、当該閉鎖固定を解除した後のロッドの段階的な上昇による閉操作により閉鎖位置にある子扉と電装扉を順次閉鎖固定し、
押釦スイッチは、保護板の押込みによりオン操作される位置から開閉操作部により閉鎖固定が解除された子扉を横方向に回転させることで直接オン操作可能な位置に移動する。
【0016】
(ロッドの段階的な移動による操作位置)
開閉操作部は、ロッドガイドに沿ったロッドの段階的な移動操作により、
電装扉及び子扉を閉鎖固定する第1操作位置、
子扉を閉鎖固定したまま電装扉の閉鎖固定を解除して開放可能とする第2操作位置及び
子扉の閉鎖固定を解除して開放可能とする第3操作位置
を備え、
ロッドを第3位置に移動した状態で子扉を開いて取付け固定している発信機の操作を可能とする。
【0017】
(ロッドの操作桿とロッドガイドのガイド溝)
ロッドは横方向に操作桿を起立しており、
ロッドガイドは、ロッドを軸方向に挿通する円筒状部材であり、
ロッドの操作桿を第1操作位置、第2操作位置及び第3操作位置に段階的に案内移動させる階段状のガイド溝が円筒状部材の外周面に形成される。
【0018】
(ガイド溝)
ガイド溝は、ロッドの操作桿を、第1操作位置と第2操作位置の間で案内移動させる第1階段溝と、第2操作位置と第3操作位置の間で案内移動させる第2階段溝が連設される。
【0019】
(ガイド溝の凹嵌部)
第1階段溝の第1操作位置と第2階段溝の第2操作位置の各々には、ロッドの操作桿を各位置に留めるための凹嵌部が形成される。
【0020】
(ロッドの操作位置と電装扉及び子扉の開閉)
開閉操作部は、
操作桿がガイド溝の第1操作位置に保持されている場合に、ロッドの上端を筐体扉開口側のロッド受け部の通し穴に挿入して電装扉を閉鎖固定すると共に、子扉の側端の張出部に形成された通し穴にロッドを挿通して子扉を閉鎖固定しており、
操作桿をガイド溝の第1操作位置から第2操作位置へ移動して保持した場合に、ロッドの上端をロッド受け部の通し穴から抜き出して電装扉の閉鎖固定を解除して開放可能とすると共に、子扉の側端の張出部に形成された通し穴に対するロッドの挿通を維持して子扉を閉鎖固定しており、
操作桿をガイド溝の第2操作位置から第3操作位置へ移動して保持した場合に、ロッドを子扉の側端の張出部に形成された通し穴から抜き出すことで子扉の閉鎖固定を解除して開放可能とする。
【0021】
(防災装置)
本発明の別の形態にあっては、
装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、所定の電装機器として発信機が設けられた電装扉と、
装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、装置内部にアクセスするときに開放される装置扉と、
を備えた防災装置であって、
発信機は、前述した発信機の取付構造により電装扉に取り付けられ、
装置扉の開放により開放された扉開口部から発信機の取付構造の発信機点検構造及び開閉操作部にアクセス可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
(発信機の取付構造の効果)
本発明は、所定の装置に形成された所定の扉開口部に設けられる電装扉に、電装扉に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより保護板の裏面側に位置する押釦スイッチの操作部が操作される発信機を取り付ける発信機の取付構造であって、電装扉の裏面側に設けられ、側端を軸として電装扉の裏面側で発信機の押釦スイッチを左右方向に回動させる発信機点検構造と、所定の開操作により電装扉と押釦スイッチの固定を順次解除して開放可能とし、当該固定を解除した後の所定の閉操作により押釦スイッチと電装扉を順次固定する開閉操作部と、を備え、押釦スイッチは、保護板の押込みにより押釦スイッチの操作部が操作される位置から発信機点検構造により横向きに回転されることで電装扉の裏面側で押釦スイッチの操作部が操作可能な位置に移動するようにしたため、発信機の点検時等には、開閉操作部の開操作を行うことで、まず電装扉の閉鎖固定が解除されて開放させることができ、続いて、押釦スイッチの固定が解除され、押釦スイッチを横向きに回転させることで直接オン操作可能な位置に露出させ、押釦スイッチを直接オン操作することで発信機の点検を行うことを可能とし、従来の電装扉と子扉の閉鎖保持を別々の操作で解除して開放させていた場合に比べ、単一の操作で済むことから、電装扉及び子扉を開放させるための操作が簡単となり、点検の作業効率を向上することを可能とする。
【0023】
また、点検終了後の復旧作業にあっても、開閉操作部の閉操作を行うことで、押釦スイッチと電装扉を順次固定して簡単且つ容易に初期状態となる固定状態に復旧ことができ、同様に、従来の電装扉と押釦スイッチを別々の操作で固定させていた場合に比べ、電装扉及び押釦スイッチの固定状態に復旧するための操作が簡単となり、点検の作業効率を向上することを可能とする。
【0024】
(発信機点検構造と開閉操作部の効果)
また、発信機点検構造は、所定の電装機器を電装扉に取り付けるための取付部材の、発信機の取付位置に対応して形成された子扉開口部に側端を軸として子扉が電装扉の裏側で左右回りに開閉自在に設けられ、子扉に発信機の押釦スイッチが取り付けられており、開閉操作部は、電装扉の先端部の裏面側の上下方向に配置されたロッドガイドに沿ったロッドの段階的な下降による開操作により電装扉と子扉の閉鎖固定を順次解除して開放可能とし、当該閉鎖固定を解除した後のロッドの段階的な上昇による閉操作により閉鎖位置にある子扉と電装扉を順次閉鎖固定し、押釦スイッチは、保護板の押込みによりオン操作される位置から開閉操作部により閉鎖固定が解除された子扉を横方向に回転させることで直接オン操作可能な位置に移動するようにしたため、発信機の点検時等には、電装扉の先端部の裏面側に配置されている開閉操作部のロッドを段階的に押下げる開操作を行うことで、まず電装扉の閉鎖固定が解除されて開放させることができ、続いて、ロッドを更に押下げる開操作を行うことで子扉の閉鎖固定が解除され、子扉を横開きすることで子扉に取り付けられている発信機の押釦スイッチを直接オン操作可能な位置に露出させ、押釦スイッチを直接オン操作することで発信機の点検を行うことを可能とし、従来の電装扉と子扉の閉鎖保持を別々の操作で解除して開放させていた場合に比べ、単一のロッドの操作で済むことから、電装扉及び子扉を開放させるための操作が簡単となり、点検の作業効率を向上することを可能とする。
【0025】
また、点検終了後の復旧作業にあっても、扉開放位置に押下げている開閉操作部のロッドを段階的に上昇させる閉操作を行うことで、閉鎖位置にある子扉と電装扉を順次固定して簡単且つ容易に初期状態となる閉鎖固定状態に復旧ことができ、同様に、従来の電装扉と子扉を別々の操作で閉鎖固定させていた場合に比べ、電装扉及び子扉の閉鎖固定を復旧するための操作が簡単となり、点検の作業効率を向上することを可能とする。
【0026】
(ロッドの段階的な移動による操作位置の効果)
また、扉開閉操作部は、ロッドガイドに沿ったロッドの段階的な移動操作により、電装扉及び子扉を閉鎖固定する第1操作位置、子扉を閉鎖固定したまま電装扉の固定を解除して開放可能とする第2操作位置及び子扉の閉鎖固定を解除して開放可能とする第3操作位置を備え、ロッドを第3位置に移動した状態で子扉を開いて取付け固定している発信機の操作を可能とするようにしたため、ロッドが第1操作位置にある場合に電装扉と子扉が閉鎖固定され、ロッドが第2操作位置にある場合に電装扉の閉鎖固定が解除されるが子扉の閉鎖固定は維持され、更に、ロッドが第3操作位置にある場合に子扉の閉鎖固定が解除され、例えば、ロッドの第1操作位置から第2第操作位置を経由した第3操作位置への移動により、電装扉と子扉の順次開放を確実に行って、子扉の開放に伴う発信機のスイッノブの露出により、発信機点検の作業効率を向上可能とする。
【0027】
(ロッドの操作桿とロッドガイドのガイド溝による効果)
また、ロッドは横方向に操作桿(例えば、操作レバー)を起立しており、ロッドガイドは、ロッドを軸方向に挿通する円筒状部材であり、ロッドの操作桿を第1操作位置、第2操作位置及び第3操作位置に段階的に案内移動させる階段状のガイド溝が円筒状部材の外周面に形成されたため、点検員は、ロッドの操作桿を第1操作位置、第2操作位置及び第3操作位置となるように段階的に操作することで、電装扉と子扉を順次開放させる操作を簡単に行って、発信機点検の作業効率を向上可能とする。
【0028】
(ガイド溝の効果)
また、ガイド溝は、ロッドの操作桿を、第1操作位置と第2操作位置の間で案内移動させる第1階段溝と、第2操作位置と第3操作位置の間で案内移動させる第2階段溝が連設されたため、第1操作位置に保持されているロッドの操縦桿を回動して下げることで第1階段溝に沿って第2操作位置へ確実に移動することができ、また、第2操作位置に保持されているロッドの操作桿を回動して下げることで第2階段溝に沿って第3操作位置へ確実に移動することができ、電装扉と子扉を順次開放させる操作を簡単にして、発信機点検の作業効率を向上可能とする。
【0029】
(ガイド溝の凹嵌部による効果)
また、第1階段溝の第1操作位置と第2階段溝の第2操作位置の各々には、ロッドの操作桿を各位置に留めるための凹嵌部が形成されたため、ロッドの操作桿を第1操作位置の凹嵌部に留めることで、電装扉及び子扉の閉鎖固定が維持され、また、ロッドの操作桿を第2操作位置の凹嵌部に留めることで、電装扉の閉鎖固定の解除及び子扉の閉鎖固定が維持され、段階的な電装扉の閉鎖固定の解除と子扉の閉鎖固定の解除を可能とし、また、電装扉と子扉を開放した後の段階的な子扉の閉鎖固定と電装扉の閉鎖固定による復旧を可能とするものである。さらに、ロッドは第1操作位置で凹嵌部に受け止められているため、振動によりロッドが第1操作位置から外れて電装扉の閉鎖固定が解除される電装扉の不時開放を防止することを可能とする。
【0030】
(ロッドの操作位置と電装扉及び子扉の開閉による効果)
また、扉開閉操作部は、操作桿がガイド溝の第1操作位置に保持されている場合に、ロッドの上端を筐体扉開口側のロッド受け部の通し穴に挿入して電装扉を閉鎖固定すると共に、子扉の側端の張出部に形成された通し穴にロッドを挿通して子扉を閉鎖固定しており、操作桿をガイド溝の第1操作位置から第2操作位置へ移動して保持した場合に、ロッドの上端をロッド受け部の通し穴から抜き出して電装扉の閉鎖固定を解除して開放可能とすると共に、子扉の側端の張出部に形成された通し穴に対するロッドの挿通を維持して子扉を閉鎖固定しており、操作桿をガイド溝の第2操作位置から第3操作位置へ移動して保持した場合に、ロッドを子扉の側端の張出部に形成された通し穴から抜き出すことで子扉の閉鎖固定を解除して開放可能とするようにしたため、電装扉はロッド上端の筐体扉開口のロッド受け部の通し穴に対する出没で閉鎖保持とその解除が簡単且つ確実に行え、また、子扉は側端張出部の通し穴に対するロッドの出没で閉鎖保持とその解除が簡単且つ確実に行うことを可能とする。
【0031】
(防災装置の効果)
また、本発明の別形態にあっては、装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、所定の電装機器として発信機が設けられた電装扉と、装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、装置内部にアクセスするときに開放される装置扉と、を備えた防災装置であって、発信機は、前述した発信機の取付構造により電装扉に取り付けられ、装置扉の開放により開放された扉開口部から発信機の取付構造の発信機点検構造及び開閉操作部にアクセス可能としたため、防災装置の1種である消火栓装置全般の電装扉には、発信機以外にも裏面に電話ジャックが設けられており、点検時には電話ジャックに受話器を接続して通話するために、装置扉に相当する消火器扉が必ず開放されることから、電装扉の裏面側で発信機の点検ができる本発信機の取付構造が適用されている消火栓装置では、発信機の点検のためだけに敢えて消火器扉を開放する作業とならず、かつ電装扉の裏面側で押し釦を押せるようにしたことで、受話器を持ちながら簡単且つ容易に発信機の点検を行うことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】電装扉が設けられたトンネル用の消火栓装置を示した説明図である。
【
図2】消火器収納部側を断面として
図1の消火栓装置を平面で示した説明図である。
【
図3】電装扉及び消火器扉を取り出して扉裏面側から示した説明図である。
【
図4】電装扉の発信機の取付部分を裏面側から示した説明図である。
【
図5】電装扉の発信機の取付部分を側面から示した説明図である。
【
図6】電装扉の発信機の取付部分を平面から示した説明図である
【
図7】
図3について扉開閉操作部の操作により電装扉の閉鎖固定を解除した状態を示した説明図である。
【
図8】
図4に続いて扉開閉操作部の操作により内側子扉の閉鎖固定を解除した状態を示した説明図である。
【
図9】
図7の内側子扉の閉鎖固定を解除した状態を拡大して示した説明図である。
【
図10】扉開閉操作部のロッドガイドを取出して示した説明図である。
【
図11】扉開閉操作部のロッドガイドを展開して示した説明図である。
【
図12】扉開閉操作部のロッドを取出して示した説明図である。
【
図13】扉開閉操作部のロッドガイドに対するロッドの移動位置を取出して示した説明図である。
【
図14】発信機の点検作業で消火器扉を開放し、続いて電装扉を開放した状態を消火栓装置の平面で示した説明図である。
【
図15】電装扉の裏面の内側子扉を開いて発信機のスイッチノブを露出させた状態を消火栓装置の平面で示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、電装扉に発信機を取り付けるための発信機の取付構造及び当該発信機の取付構造により発信機が取り付けられた電装扉が設けられる防災装置に関するものである。
【0034】
ここで、「電装扉」は、防災装置といった所定の装置に形成された扉開口部に開閉可能に取り付けられたものである。尚、「電装扉」には、発信機以外にも赤色表示灯や応答ランプ等の電装機器が取り付けられていても良い。
【0035】
また、「発信機」とは、電装扉に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより保護板の裏面側に位置する押釦スイッチの操作部が操作されるものであり、操作され作動した場合には、例えば発信信号を送信する。そのため、「発信機」は、点検時に押釦スイッチの操作部を操作して正常に作動することが確認されるものである。尚、「前面側」といった場合には、電装板が装置の扉開口部に設けられた場合の装置の外側を指し、「裏面側」といった場合には装置の内側を指している。
【0036】
そして、実施形態の発信機の取付構造は、発信機点検構造と開閉操作部を備えたことを特徴とするものである。
【0037】
ここで、「発信機点検構造」とは、電装扉の裏面側に設けられ、側端を軸として電装扉の裏面側で発信機の押釦スイッチを左右方向に回動させるものである。
【0038】
また、「開閉操作部」とは、所定の開操作により電装扉と押釦スイッチの固定を順次解除して開放可能とし、当該固定を解除した後の所定の閉操作により押釦スイッチと電装扉を順次固定するものであり、電装扉と発信機の押釦スイッチを開閉可能とするための共通の操作部として機能するものである。
【0039】
そして、押釦スイッチは、保護板の押込みにより押釦スイッチの操作部が操作される位置から発信機点検構造により横向きに回転されることで電装扉の裏面側で押釦スイッチの操作部が操作可能な位置に移動し、簡単且つ容易に発信機の押釦スイッチをオン操作により作動する点検作業を可能とするものである。
【0040】
また、「発信機点検構造」の構造や機能は任意であるが、例えば、所定の電装機器を電装扉に取り付けるための取付部材の、発信機の取付位置に対応して形成された子扉開口部に側端を軸として子扉が電装扉の裏側で左右回り(横回り)に開閉自在に設けられ、子扉に発信機の押釦スイッチが取り付けられるものである。
【0041】
ここで、「子扉」とは、取付部材の子扉開口部に左右回りに開閉自在に設けられ、発信機の押釦スイッチが取り付けられた小さめの扉であり、開放することにより取付けている発信機の前方側に位置する操作部を外部に露出して操作可能とするものである。また、「取付部材」とは、所定の電装機器を電装扉に取り付けるための部材であり、板部材とした取付板を含むものである。
【0042】
また、「開閉操作部」の構造や機能も任意であるが、例えば、電装扉の先端部の裏面側の上下方向に配置されたロッドガイドに沿ったロッドの段階的な下降による開操作により電装扉と子扉の閉鎖固定を順次解除して開放可能とし、当該閉鎖固定を解除した後のロッドの段階的な上昇による閉操作により閉鎖位置にある子扉と電装扉を順次閉鎖固定するものである。
【0043】
ここで、「電装扉の先端部の裏面側」とは、電装扉のヒンジ側を後端部とした場合の扉の反対側を先端部とした場合の扉の裏面側を意味する。また、「ロッド」とは、所定の直径と長さを持った中実の金属棒であり、ロッドガイドやロッド受け部の通し穴等に通過させるため、ロッド端部には半球状に丸みが付けられている。また、「ロッドガイド」とは、ロッドを挿通して軸方向に案内移動させるための部材である。また、「扉を閉鎖固定する」とは、「扉を閉鎖位置に固定して開かないようにする」ことを意味する。また、「扉を閉鎖保持する」とは、「扉を閉鎖位置に保持するが、保持力を超える力を加えると開くことができる」ことを意味する。
【0044】
このため、実施形態の発信機の取付構造によれば、発信機の点検時等には、電装扉の端部裏側に配置されている開閉操作部のロッドを段階的に押下げる開操作を行うことで、まず電装扉の閉鎖固定が解除されて開放することができ、続いて、ロッドを更に押下げる開操作を行うことで電装扉の裏面側に配置している発信機の押釦スイッチを取付け固定している子扉の閉鎖固定が解除され、子扉を開放することで、発信機の押釦スイッチは、保護板の押込みによりオン操作される位置から直接オン操作可能な外部に露出する位置に移動し、簡単且つ容易に発信機の押釦スイッチをオン操作により作動する点検作業を可能とする。
【0045】
この場合、電装扉及び子扉の閉鎖固定の解除が開閉操作部に設けたロッドの段階的な移動により簡単且つ容易に行うことができ、従来の電装扉と子扉の閉鎖固定を別々の操作で解除して開放させていた場合に比べ、電装扉及び子扉を開放させるための操作が簡単となり、点検作業の効率を向上可能とするものである。
【0046】
また、点検終了後の復旧作業にあっても、開放位置に押下げている開閉操作部のロッドを段階的に上昇させる閉操作を行うことで、閉鎖位置にある子扉と電装扉を順次閉鎖固定して簡単且つ容易に初期状態となる閉鎖固定状態に戻すことができ、同様に、従来の電装扉と子扉を別々の操作で閉鎖固定させていた場合に比べ、電装扉及び子扉を閉鎖固定するための復旧操作が簡単となり、点検作業の効率を向上可能とするものである。
【0047】
ここで、発信機の押釦スイッチについて、「保護板の押込みによりオン操作される位置」とは、通常時の位置であり、火災時等に利用者が発信機を使用できるように押釦スイッチが保護板の裏側に位置している状態である。一方、「電装扉の裏側で直接オン操作可能な位置」とは、点検時等の保護板を介さずに押釦スイッチを操作したい場合に子扉を横開きして発信機の押釦スイッチを外部に露出させる位置となる。
【0048】
また、扉開閉操作部は、ロッドガイドに沿ったロッドの段階的な移動操作により、電装扉及び子扉を閉鎖固定する第1操作位置、子扉を閉鎖固定したまま電装扉の固定を解除して開放可能とする第2操作位置及び子扉の閉鎖固定を解除して開放可能とする第3操作位置を備え、ロッドを第3操作位置に移動した状態で子扉を開き、子扉に取り付けている発信機の押釦スイッチを露出させてオン操作による作動確認を可能とするものである。
【0049】
また、ロッドは横方向に操作桿を起立しており、ロッドガイドは、ロッドを軸方向に挿通する円筒状部材であり、ロッドの操作桿を第1操作位置、第2操作位置及び第3操作位置に段階的に案内移動させる階段状のガイド溝が円筒状部材の外周面に形成されている。ここで、「操作桿」とは、ロッドをロッドガイドに沿って上下方向に移動させるためにロッドに横方向から取付けた棒状の操作部材であり、操作レバーや操作ノブ等の概念を含むものである。
【0050】
このため、点検員は、ロッドの操作桿を第1操作位置、第2操作位置及び第3操作位置となるようにガイド溝に沿って段階的に移動させる操作することで、ロッドを下降移動させ、電装扉と子扉を順次開放させる操作を可能とするものである。
【0051】
また、「ガイド溝」とは、ロッドの操作桿を、第1操作位置と第2操作位置の間で案内移動させる第1階段溝と、第2操作位置と第3操作位置の間で案内移動させる第2階段溝が連設されるものである。ここで、「階段溝」とはロッドガイドを構成する円筒部材の外周面の上下方向に、ロッドの操作桿を案内移動させるために階段状に切られた溝であり、実施形態は第1階段溝と第2階段溝を連設した2段階のガイド溝であり、ステップ状の溝又はクランク状の溝を含む概念である。
【0052】
このため、実施形態の開閉操作部は、第1操作位置に保持されているロッドの操作桿を回動して下げることで第1階段溝に沿って第2操作位置へ移動することを可能とし、また、第2操作位置に保持されているロッドの操作桿を回動して下げることで第2階段溝に沿って第3操作位置へ確実に移動すること可能とする。
【0053】
また、第1階段溝の第1操作位置と第2階段溝の第2操作位置には、ロッドの操作桿を各位置に留めるための凹嵌部(窪み)が形成され、ガイド溝に沿ってロッドの操作桿を移動させる場合、第1操作位置及び第2操作位置の各々の凹嵌部に操作桿を留めて扉の閉鎖固定と閉鎖固定の解除を可能とするものである。また、ロッドは第1操作位置で凹嵌部に受け止められているため、振動によりロッドが第1操作位置から外れて電装扉の閉鎖固定が解除される電装扉の不時開放を防止することを可能とする。
【0054】
ここで、ロッドを下降移動して電装扉及び子扉の閉鎖固定を解除する場合には、ロッドの操作桿を第2操作位置の凹嵌部に留めることなく第1操作位置から第3操作位置へ移動させてもよい。一方、発信機の点検が終了した後の復旧時にあっては、子扉を閉鎖状態として操作桿を第3操作位置から第2操作位置に上昇移動し、ロッドを子扉の張出部の通し穴に通して閉鎖固定し、この場合、電装扉は開いた状態にあることから、操作桿を第2操作位置の凹嵌部に留めて子扉の閉鎖固定を維持してロッド上端を飛び出さないようにし、ロッド上端を扉開口部に当てることなく電装扉を閉鎖位置に閉じることを可能とする。続いて、電装扉の閉鎖位置で操作桿を第2操作位置から第1操作位置に上昇移動し、ロッド上端を扉開口部に設けたロッド受け部の通し穴に通して電装扉を閉鎖固定し、操作桿を第1操作位置の凹嵌部に留めることで電装扉の閉鎖固定を維持するものである。
【0055】
また、実施形態の開閉操作部は、操作桿がガイド溝の第1操作位置に保持されている場合に、ロッドの上端を筐体の扉開口側のロッド受け部材の通し穴に挿入して電装扉を閉鎖固定すると共に、子扉の側端の張出部に形成された通し穴にロッドを挿通して子扉を閉鎖固定している。また、操作桿をガイド溝の第1操作位置から第2操作位置へ移動して保持した場合に、ロッドの上端をロッド受部材の通し穴から抜き出して電装扉の閉鎖固定を解除して開放可能とすると共に、子扉の側端の張出部に形成された通し穴に対するロッドの挿通を維持して子扉を閉鎖固定している。さらに、操作桿をガイド溝の第2操作位置から第3操作位置へ移動して保持した場合に、ロッドを子扉の側端の張出部に形成された通し穴から抜き出すことで子扉の閉鎖固定を解除して開放可能とするものである。
【0056】
また、実施形態は、前述した発信機の取付構造により発信機が取り付けられた電装扉を備える防災装置を対象とするものであり、防災装置は、発信機が設けられたあらゆる装置、機器等を含むものであり、例えば消火栓装置、消火器箱や非常通報装置等を含むものである。
【0057】
ここで、「消火栓装置」とは、消火対象領域となる、例えば高速道路や自動車専用道路のトンネル内等に設置されるものであり、内部に消火用ホース等の消火栓機器が収納されたものであり、「非常通報装置」とは、発信機以外にも赤色表示灯や応答ランプ等の必要な電装機器が設けられたものであり、「消火器箱」とは、内部に消火器が収納されたものである。また、「消火栓装置」は、「非常通報装置」や「消火器箱」と一体に設けられたものを含み、「消火器箱」は、「非常通報装置」と一体に設けられたものを含む。
【0058】
また、「防災装置」は、装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、所定の電装機器として発信機が設けられた電装扉と、装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、装置内部にアクセスするときに開放される装置扉と、を備え、装置扉の開放により開放された扉開口部から発信機の取付構造の発信機点検構造及び開閉操作部にアクセス可能とするものである。
【0059】
また、「装置扉」とは、例えば内部に収納されている消火栓機器や消火器等の使用時等の装置内部にアクセスするときに開放される扉であり、特許文献2の
図5乃至
図7に示すような従来の消火器箱にあっては、電装扉に隣接している消火器扉が装置扉に相当する。尚、電装扉が設けられる扉開口部と装置扉が設けられる扉開口部は同一の扉開口部であっても良く、異なる扉開口部であっても良い。
【0060】
以下、具体的な実施形態を説明する。実施形態では、「防災装置」が「消火器箱及び非常通報装置が一体化された消火栓装置」であり、「装置扉」が「消火器扉」であり、「子扉」が取付板の子扉開口部に蝶番で横開き自在に軸支された「内側子扉」であり、「開閉操作部」が「操作桿を備えたロッド」と「階段状のガイド溝を備えたロッドガイド」とにより構成された「扉開閉操作部」であり、「操作桿」が「操作レバー」であり、「押釦スイッチの操作部」が「押釦スイッチのスイッチノブ」である場合について説明する。
【0061】
[実施形態の具体的内容]
実施形態の消火栓装置について、次のように分けて詳細に説明する。
a.消火栓装置
b.消火器収納部側の筐体、消火器扉及び電装扉の構造
c.発信機点検構造
c1.内側子扉
c2:扉開閉操作部
d.扉開閉操作部の構造
d1.ロッドガイドの構造
d2.ロッドの構造
d3.開閉操作部の操作
e.発信機の点検
f.本発明の変形例
【0062】
[a.消火栓装置]
まず、消火栓装置について説明する。当該説明にあっては、消火器箱及び非常通報装置が一体化された消火栓装置を示した
図1参照する。
【0063】
ここで、
図1の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、各種扉が設けられた消火栓装置の前面を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする(尚、
図1においてZ方向は図示されていない)。この点は
図2~
図15においても同様である。
【0064】
図1に示すように、消火栓装置10は、内部が消火栓収納部となる筐体10aと内部が消火器収納部となる筐体10bとに分割された構造であり、筐体10a,10bの前面には化粧枠11a,11bが設けられている。
【0065】
筐体10aの化粧枠11aの扉開口部には上下に分けて別々の扉が設けられ、扉開口部の下側にはヒンジにより下向きに開く前傾式の消火栓扉12が設けられ、扉開口部の上側にはヒンジにより上向きに開く保守扉14が設けられている。消火栓扉12には扉ハンドル1210が設けられ、利用者が扉ハンドル1210に手を入れて手前に引く操作を行うと、消火栓扉12のロックが解除されて消火栓扉12を開くことができる。また、筐体10aの内部である消火栓収納部には消火栓機器として、消火用ホースと消火栓弁を含むバルブ類等が収納されている。
【0066】
筐体10bの化粧枠11bの扉開口部には左右に分けて別々の扉が設けられ、扉開口部の左側にはヒンジにより左向きに横開きする消火器扉18が設けられ、内部である消火器収納部には、例えば2本の消火器30を収納可能としている。消火器扉18には扉ハンドル1810が設けられ、利用者が扉ハンドル1810に手を入れて手前に引く操作を行うと、例えば磁気吸着による電装扉20に対する消火器扉18のロックが解除されて消火器扉18を開くことができる。また、消火器扉18には覗き窓1820が設けられ、外部から消火器30の有無を確認可能としている。
【0067】
また、化粧枠11bの扉開口部の右側にはヒンジにより右向きに横開きする電装扉20が設けられている。電装扉20には電装機器として、例えば赤色表示灯22、発信機24及び応答ランプ26が設けられ、また、発信機24の下に配置された発信機操作を示すSOS銘板25が位置する電装扉20の裏側には電話ジャックが設けられている。このように電装扉20に設けられた赤色表示灯22、発信機24、応答ランプ26及び電話ジャックにより非常通報装置が構成される。
【0068】
赤色表示灯22は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から分かるようにしている。また、火災が発生した場合には、利用者が発信機24の保護板を押し込んで発信機24の押釦スイッチがオンされることで、発信機24から火災通報信号(発信信号)が電気室等の防災受信盤に送信されて防災受信盤から火災警報が出力され、これに伴い防災受信盤から応答信号が消火栓装置10側に送信されて、赤色表示灯22が点滅し、応答ランプ26が点灯する。
【0069】
[b.消火器収納部側の筐体、消火器扉及び電装扉の構造]
続いて、消火器収納部側の筐体、消火器扉及び電装扉の構造について説明する。当該説明にあっては、消火器収納部の断面を平面(上面)で示した
図2、及び電装扉と消火器扉を取り出して示した
図3を参照する。尚、
図2は、
図1のa-a切断線の断面を示し、
図3(A)は扉の裏面(後面)を示し、
図3(B)は
図3(A)のb-b切断線の断面を平面(上面)で示している。
【0070】
まず、消火器収納部側の筐体の構造について説明する。
図2に示すように、筐体10bの内部である消火器収納部には2本の消火器30が収納され、筐体10bの内部後面には端子箱23a,23bが設けられている。端子箱23aには電装扉20に設けられた赤色表示灯22が配線用ケーブルを介して接続され、端子箱23bには電装扉20に設けられた発信機24、応答ランプ26、電話ジャック28及び筐体10aの消火栓収納部に設けられたポンプ起動スイッチとポンプ起動連動スイッチが配線用ケーブルを介して接続されている。
【0071】
また、
図3(A)に示すように、化粧枠11bの扉開口部13の周囲には防水用のゴムシール17が設けられている。また、上側から順番に、赤色表示灯22、発信機24、電話ジャック28及び応答ランプ26を電装扉20に取り付けるために、取付板32(取付部材)が電装扉20の裏側に設けられる。
【0072】
次に、消火器扉18及び電装扉20の構造について説明する。
図2、3に示すように、化粧枠11bの扉開口部13の左側にはヒンジ18aにより左向きに横開きする消火器扉18が設けられ、化粧枠11bの扉開口部13の右側にはヒンジ20aにより右向きに横開きする電装扉20が設けられている。消火器扉18と電装扉20は、ヒンジ18a,20aにより相対する向きに開く両開き構造の外扉として化粧枠11bの扉開口部13に設けられており、扉の合わせ部分は、扉の閉鎖位置では電装扉20の扉枠2010が筐体11bの内部側に位置し、扉枠2010の外側(前側)に消火器扉18の扉枠1830が位置している。
【0073】
また、電装扉20は消火器扉18に対して扉枠として機能するものであり、扉枠として機能するために、電装扉20に対応した扉開口部13の上下に磁気吸着保持部として機能するマグネット部21が設けられ、マグネット部21に対して電装扉20の扉枠の裏面に設けられた磁気吸着板が吸着することで、通常、電装扉20は扉開口部13の閉鎖位置に仮止め的に保持にされている。また、電装扉20の裏面側には扉開閉操作部35が設けられ、通常、扉開閉操作部35により電装扉20は閉鎖位置に固定されている。
【0074】
また、
図3(B)に示すように、消火器扉18との扉合わせ部分となる電装扉20の扉枠2010の中央にはマグネット2020が設けられ、マグネット2020に対して消火器扉18の扉合わせ部分となる扉枠1830の裏面(電装扉20の扉枠2010側)に設けられた磁気吸着板が吸着固定することで、消火器扉18は閉鎖位置で保持されている。
【0075】
また、消火器扉18の扉ハンドル1810は、電装扉20側(右側)の略中央に設けられ、扉ハンドル1810に手を入れて手前に引く操作を行うことで、マグネット2020による磁気吸着を解除してヒンジ18aを軸に消火器扉18を開放可能とする。
【0076】
一方、消火栓装置10の点検時には、発信機24の押釦スイッチをオン操作して発信機24が正常に機能することを確認する点検操作が行われる。本実施形態にあっては、発信機24を点検する場合には、発信機24の押釦スイッチのオン操作を可能とするため、点検員は消火器扉18を開放し、電装扉20の扉先端裏面側に設けられた扉開閉操作部35の開操作により電装扉20の閉鎖固定を解除して開放し、続いて、扉開閉操作部35の開操作で、電装扉20の裏面側に横開き自在設けた発信機24の押釦スイッチを取付けている内側子扉34の閉鎖固定を解除し、電装扉20の裏側で内側子扉34を横開きして発信機24の押釦スイッチを露出させて、押釦スイッチのオン操作することを可能としている。
【0077】
[c.発信機点検構造]
続いて、電装扉の裏側に設けられた発信機点検構造について説明する。実施形態の発信機点検構造は、発信機の押釦スイッチを取り付けた内側子扉34と扉開閉操作部35で構成されるものである。当該説明にあっては、
図3に加え、電装扉の発信機の取付部分を裏面側から示した
図4、電装扉の発信機の取付部分を側面から示した
図5、電装扉の発信機の取付部分を平面から示した
図6、
図3について扉開閉操作部の操作により電装扉の閉鎖固定を解除した状態を示した
図7、
図7に続いて扉開閉操作部の操作により内側子扉の閉鎖固定を解除した状態を示した
図8、及び
図8の内側子扉の閉鎖固定を解除した状態を拡大して示した
図9を参照する。尚、
図6(A)は内側子扉を閉鎖固定した状態を示し、
図6(B)は内側子扉の閉鎖固定を解除して開いた状態を示す。また、
図7(A)及び
図8(A)は扉裏面を示し、
図7(B)及び
図8(B)は
図3(A)のb-b切断線と同じ断面を平面(上面)で示している。
【0078】
(c1.内側子扉)
まず、内側子扉について説明する。
図3(A)に示すように、電装扉20の裏面側には取付板32が設けられ、取付板32は発信機24の取付部分では後方に起立された段付き構造となっている。
【0079】
図4に示すように、取付板32の発信機24の取付部分には矩形状の子扉開口部33が形成され、子扉開口部33には内側子扉34が開閉自在に設けられ、内側子扉34には発信機24の押釦スイッチ2410が取り付けられている。
【0080】
押釦スイッチ2410は2回路のa接点を備えたスイッチであり、
図5及び
図6(A)に示すように、後方に4本の接続端子2420が設けられ、前方にはオン操作されるスイッチノブ(操作部)2430が設けられている。また、接続端子2420には端子箱23bからの配線用ケーブル(図示なし)が接続され、接続端子2420及びスイッチノブ2430には防水用のゴムカバーが装着されている。
【0081】
内側子扉34は、電装扉20の後端側(ヒンジ側)に設けられた蝶番(ヒンジ)44により子扉開口部33に取り付けられ、蝶番44を中心に取付板32の裏側で左右回りに開閉自在に設けられている。また、内側子扉34の先端(右端)の上下2個所にはロッド通し部46が張出部として形成され、ロッド通し部46の通し穴4610に扉開閉操作部35のロッド36を通すことで、内側子扉34を閉鎖位置に固定している。扉開閉操作部35のロッド36を下方に移動してロッド通し部46の通し穴から抜き出されると、内側子扉34の閉鎖固定が解除され、
図6(B)に示すように、内側子扉33は蝶番44を中心に取付板32の裏側で横回りに開放され、押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430が取付板32の裏側で操作可能な位置に露出する。
【0082】
また、内側子扉34が閉鎖位置にあるときのスイッチノブ2430の位置に対応して電装扉20には保護板収納部2440が設けられている。保護板収納部2440には、特許文献1に示したと同様に、電装扉20の開口穴(操作開口部)にリング状に形成したプラスチック製の枠部材により透明な有機ガラス板等を使用した保護板が着脱自在に保持されている。このため、車両事故などに伴う火災時には、利用者が発信機24の保護板を強く押し込むと、保護板が枠部材から外れて押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を押し込むことでオン操作され、発信機24から火災通報信号(発信信号)が電気室等の防災受信盤に送信されて防災受信盤から火災警報が出力される。
【0083】
(c2.扉開閉操作部)
続いて、扉開閉操作部35について説明する。
図3(A)に示すように、電装扉20の先端裏面側に設けられた扉開閉操作部35は、ロッド36とロッドガイド38で構成される。
【0084】
ロッドガイド38は電装扉20の先端裏面側の上下方向に配置されている。ロッドガイド38にはロッド36が上下方向に移動自在に挿通されている。ロッド36には横方向に操作レバー40が起立されており、点検員は操作レバー40によりロッド36を上下方向に移動して電装扉20と内側子扉34の開閉を操作可能とする。
【0085】
ロッドガイド38の外周には、
図4に一部を示すように、操作レバー40を通すガイド溝3840が階段状に形成されており、
図3(A)に示すロッド36が上部に移動された位置が第1操作位置となり、
図7(A)に示すように、ロッド36を下降操作して電装扉20の閉鎖固定を解除した位置が第2操作位置となり、さらに、
図8(A)に示すように、ロッド36を更に下降操作してロッド下端をストッパ部45に当接して内側子扉34の閉鎖固定を解除した位置が第3操作位置となる。
【0086】
通常、ロッド36は
図3に示す第1操作位置に保持されており、第1操作位置では、ロッド36の上端が化粧枠11bの扉開口部13側に固定したロッド受け部42の通し穴に嵌め込まれ、電装扉20を閉鎖位置に固定している。このときロッド36は
図4に示したように、内側子扉34のロッド通し部46の通し穴にも挿通され、このためロッド36の第1操作位置で内側子扉34も閉鎖位置に固定されている。また、ロッド36の第1操作位置で、操作レバー40は
図3(B)、
図4及び
図5に示すように、奥行き方向に向いた位置に保持されている。
【0087】
尚、発信機24の下側には電話ジャック28が配置されている。電話ジャック28は、取付板32の矩形の開口を有する起立した取付部分に取り付けられ、ジャック本体2810の先端に蓋部材2820を装着しており、点検者等が携帯している電話機のプラグを、蓋部材2820を外してジャック本体2810のジャック穴に差し込むことで、防災受信盤側の親電話機と接続して通話することを可能にしている。
【0088】
点検時に発信機24を点検する場合、点検員は、操作レバー40を
図3(A)に示す第1操作位置から
図7(A)に示す第2操作位置へ移動操作する。このとき、
図3(B)に示す第1操作位置で奥行方向に位置している操作レバー40を、
図7(B)に示すように、左回りに45°程度回して下降させることで、第2操作位置に移動させることができる。
【0089】
第1操作位置から第2操作位置への操作レバー40を移動する開操作に伴うロッド36の下降によりロッド36の上端がロッド受け部42の通し穴から抜け出し、電装扉20の閉鎖固定が解除される。また、第2操作位置ではロッド36は内側子扉34のロッド通し部46の通し穴に挿通した状態を維持しており、このため内側子扉34の閉鎖固定は維持されている。
【0090】
このとき、扉開閉操作部35により閉鎖固定が解除された電装扉20は、上下のマグネット部21の磁気吸着により閉鎖位置に保持されているが、磁気吸着による保持力を超える力を加えることで開放可能となる。
【0091】
続いて、点検員は、閉鎖固定が解除された電装扉20を開いて裏面側を前方に露出させ、この状態で操作レバー40を
図7(A)に示す第2操作位置から
図8(A)に示す第3操作位置へ移動する開操作を行う。このとき、
図7(B)に示す第1操作位置で奥行きの45°方向に位置している操作レバー40を、
図8(B)に示すように、更に左回りに45°程度回して下降させることで、第3操作位置に移動させることができる。
【0092】
第2操作位置から第3操作位置への操作レバー40を移動させる開操作に伴うロッド36の下降により、
図8(A)に示すように、ロッド36は下端がストッパ部46に当接する位置まで下降し、
図9(A)に示すように、ロッド36の上端が内側子扉34のロッド通し部46の通し穴から抜け出し、内側子扉34の閉鎖固定が解除され、発信機24の押釦スイッチ2410を取付けている内側子扉34が開放可能となる。このため、点検員は、内側子扉34を開いて内側子扉34に取付けている押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を外部に露出させ、スイッチノブ2430を押込んでスイッチオンすることで発信機24の動作を確認することが可能となる。
【0093】
[d.扉開閉操作部の構造]
続いて、扉開閉操作部を構成するロッドガイドとロッドの構造について説明する。当該説明にあっては、扉開閉操作部のロッドガイドを取出して示した
図10、扉開閉操作部のロッドガイドを展開して示した
図11、扉開閉操作部のロッドを取出して示した
図12、及び扉開閉操作部のロッドガイドに対するロッドの移動位置を取出して示した
図13を参照する。
【0094】
なお、
図10(A)はロッドガイドの平面を示し、
図10(B)は裏側から見た正面を示し、
図10(C)は裏側から見た側面を示し、
図10(D)~(G)は第1乃至第3操作位置に対応したガイド溝を平面から見た断面で示す。また、
図12(A)はロッドの正面を示し、
図12(B)は側面を示す。さらに、
図13(A)はロッドガイドで案内するロッドの位置を裏側から見た正面で示し、
図13(B)は側面を示し、
図13(C)~(D)は第1乃至第3操作位置に対応したロッドガイドに対する操作レバーを平面から見た断面で示す。
【0095】
(d1.ロッドガイドの構造)
まず、ロッドガイドの構造について説明する。
図10に示すように、ロッドガイド38は金属製の円筒部材であり、ガイド管部3810の軸方向にロッド穴3830が貫通され、ガイド管部3810の外周の軸方向にガイド溝3840が形成され、ガイド溝3840に沿ってロッド36の操作レバー40を、第1操作位置P1、第2操作位置P2及び第3操作位置P3に案内移動させるようにしている。ガイド管部3810の左側には板状の取付部3820が一体に形成され、
図4及び
図5に示したように、電装扉20の裏側の取付板32の電話ジャック28の下側にねじ止め固定される。
【0096】
ガイド溝3840は、
図11のロッドガイド38の展開図に示すように、階段状に形成された溝であり、操作レバー40によりロッド36を第1操作位置P1と第2操作位置と間となる経路a-b-cで案内移動させる第1階段溝3850と、第2操作位置P2と第3操作位置P3の間となる経路c-d-eで案内移動させる第2階段溝3860が連設された2段階の階段溝としている。
【0097】
第1階段溝3850の第1操作位置P1で操作レバー40が位置するa点に対応して、操作レバー40を第1操作位置P1に留めてロッド36を保持するための凹嵌部(窪み)48が形成されている。また、第2階段溝3860の第2操作位置P2で操作レバー40が位置するc点に対応して、操作レバー40を第2操作位置P1付近に留めてロッド36を保持するための凹嵌部(窪み)50が形成されている。
【0098】
このように形成されたロッドガイド38のガイド溝3840は、
図10(D)に示すように、ロッドガイド38の中心に対し奥行方向(筐体の背面方向)を0°とした場合、第1操作位置P1で操作レバー40を0°から45°までの範囲(
図11のa-bの範囲)の角度θ1で回動できるように円周回りに開口されている。
【0099】
また、
図10(E)に示すように、ガイド溝3840は、第1操作位置P1から第2操作範囲P2の範囲(
図11のb-cの範囲)で移動できるように、途中位置P12では45°方向に開口されている。また、
図10(F)に示すように、第2操作位置P2で操作操作レバー40を45°から90°までの範囲(
図11のc-dの範囲)の角度θ2で回動できるように円周回りに開口されている。
【0100】
さらに、
図10(G)に示すように、ガイド溝3840は、第2操作位置P2から第3操作範囲P3の範囲(
図11のd-eの範囲)で移動できるように、90°方向に開口されている。ここで、ロッドガイド38の製造方法は任意であるが、例えば、
図11に示すガイド溝3840を形成した金属板を円筒状に曲げ加工して製作することが可能となる。
【0101】
(d2.ロッドの構造)
続いて、ロッド36の構造について説明する。
図12に示すように、ロッド36は
図10に示したロッドガイド38のロッド穴3830の内径に対し僅かに小さい外径を持った中実の金属棒であり、上下のロッド端部3610,3620は半球状に丸みがつけられており、軸方向の所定位置に操作レバー40を横方向に起立している。操作レバー40は軸部4010と球状のノブ4020で構成され、点検員が電装扉20の側面裏側から手を入れて操作可能な十分な長さ、例えば、数cm程度の長さとしている。
【0102】
ここで、ロッド36に設けた操作レバー40の軸中心線からロッド先端3610までの長さL1は、操作レバー40が
図3に示す第1操作位置P1にあるときに、ロッド先端が扉開口部13の上側に配置したロッド受け部42の通し穴に挿通して電装扉20を閉鎖固定する長さとしている。
【0103】
また、ロッド36に設けた操作レバー40の軸中心線からロッド下端3620までの長さL2は、
図8に示すロッド36の操作レバー40が第3操作位置P3にあるときに、ロッド下端が扉開口部13の下側に設けたストッパ部45に当接して停止する長さとしている。
【0104】
これに対応して
図11に示すガイド溝3840における第1操作位置P1と第2操作位置P2の間隔L3は、操作レバー40を第1操作位置P1から第2操作位置P2に移動した場合に、ロッド先端3610がロッド受け部42の通し穴から抜け出すが、内側子扉34のロッド通し部46から抜け出すことのない長さとしている。
【0105】
さらに、
図11に示すガイド溝3840における第2操作位置P2と第3操作位置P3の間隔L4は、操作レバー40を第2操作位置P2から第3操作位置P3に移動した場合に、ロッド先端3610が内側子扉34のロッド通し部46から抜け出すに十分な長さとしている。
【0106】
ここで、ロッド36の長さL1,L2及びガイド溝3840の間隔L3,L4は任意であるが、例えば、
図3(A)に示す化粧枠11bの扉開口部13の縦幅L0をL0=1000mmとした場合、例えば、L1=425mm、L2=300mm、L3=50mm、L4=300mmとなる。
【0107】
(d3.扉開閉操作部の操作)
続いて、扉開閉操作部35の操作について説明する。
図13(A)(B)に示すように、操作レバー40がガイド溝3840の第1操作位置P1にある場合、
図13(C)に示すように操作レバー40は奥行きに向けた0°の位置にあり、ロッド上端は
図3(A)に示したように、ロッド受け部42の通し穴に挿通され、電装扉20を閉鎖固定しており、且つ、内側子扉34のロッド通し部46に挿通して同じく閉鎖固定している。
【0108】
第1操作位置P1にある操作レバー40を、
図13(D)に示すように、45°回して押下げることでガイド溝3840の第2操作位置P2に移動し、
図7(A)に示したように、ロッド上端はロッド受け部42から抜け出して電装扉20の閉鎖固定が解除される。しかし、内側子扉34についてはロッド36のロッド通し部46の挿通状態が維持され、内側子扉34の閉鎖固定が継続される。
【0109】
第2操作位置P2にある操作レバー40を、
図13(E)に示すように、更に45°回して押下げることで、途中位置P23を経由してガイド溝3840の第3操作位置P3に移動し、
図8(A)に示したように、ロッド下端がストッパ部45に当接して停止し、ロッド上端は内側子扉34のロッド通し部46から抜け出し、内側子扉34の閉鎖固定が解除される。
【0110】
また、第3操作位置P3に移動した操作レバー40をガイド溝3840に沿って第2操作位置P2を経由して元の第1操作位置P1に戻す操作を行うことで、内側子扉34と電装扉20を順次閉鎖固定して初期状態に復旧させることを可能とする。
【0111】
[e.発信機の点検作業]
続いて、発信機の点検作業について説明する。当該説明にあっては、発信機の点検作業で消火器扉を開放し、続いて電装扉を開放した状態を消火栓装置の平面で示した
図14、及び電装扉の裏面の内側子扉を開いて発信機のスイッチノブを露出させた状態を消火栓装置の平面で示した
図15を参照する。なお、
図14(A)は消火器扉を開いた状態を示し、
図14(A)は電装扉を開いた状態を示す。
【0112】
点検時に消火栓装置10の電装扉20に設けられた発信機24を点検員が点検する場合には、
図14(A)に示すように、消火器扉18を開放し、続いて、消火器扉18の開放により開放された開口部分から電装扉20の裏側に作業手袋をした手を入れ、電装扉20の扉開閉操作部35に設けられた操作レバー40を奥行き方向から手前の45°方向に回して押下げることで、ロッド36を第1操作位置から第2操作位置に移動する開操作を行い、
図7(A)に示したように、ロッド36の上端を扉開口部13のロッド受け部42の通し穴から抜き出すことで、電装扉20のロッド36による閉鎖固定を解除する。
【0113】
続いて、
図14(B)に示すように、閉鎖固定を解除した電装扉20を開放して扉裏側の発信機24を外側に露出させ、この状態で扉開閉操作部35の操作レバー40を奥行き方向から手前の45°方向に回して押下げることで、ロッド36を第2操作位置から第3操作位置に移動する開操作を行い、
図8(A)に示したように、ロッド36の上端を内側子扉34のロッド通し部46の通し穴から抜き出すことで、発信機24を取付けている内側子扉34のロッド36による閉鎖固定を解除する。
【0114】
続いて、
図15に示すように、閉鎖固定を解除した内側子扉34を開放して発信機24のスイッチノブ2430を外部に露出させ、スイッチノブ2430を押込み操作してスイッチオンし、防災受信盤へ発信信号を送信して動作を確認する。
【0115】
発信機24の点検が終了した後の復旧作業は次のようにして行う。まず、
図15に示すように開いている内側子扉34を閉鎖位置に閉じ、この状態で扉開閉操作部35の操作レバー40を最下端の第3操作位置から第2操作位置に引き上げ移動して保持する閉操作を行うことで、内側子扉34のロッド通し部46にロッド36を挿通して閉鎖固定する。
【0116】
続いて、
図14(B)に示すように内側子扉34を閉鎖固定した状態で、電装扉20を
図14(A)に示すように閉鎖位置に閉じ、扉開閉操作部35の操作レバー40を第2操作位置から第1操作位置に引き上げ移動して保持する閉操作を行うことで、ロッド上端を扉開口部13のロッド受け部42の通し穴に挿通し、電装扉20を閉鎖固定する。最終的に消火器扉18を閉じて発信機24の点検を終了する。
【0117】
このように電装扉20に設けられた発信機24の点検作業にあっては、1箇所に設けられた扉開閉操作部35のロッド36を操作レバー40により下降させる開操作を行うことで、電装扉20と発信機24を取付けている内側子扉34の閉鎖固定を順次解除し、また、点検終了後は、逆に辿る閉操作を行うことで内側子扉34と電装扉20を順次閉鎖固定して初期状態に戻すことができ、発信機24の動作を確認する点検作業の効率を高めることを可能とする。
【0118】
[e.本発明の変形例]
本発明による消火栓装置の変形例について説明する。本発明の消火栓装置は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0119】
(防災機器収納装置)
上記の実施形態は、防災機器収納装置として発信機を備えた消火栓装置を例にとるものであったが、これに限定されず、発信機を備えた消火器箱を含むものである。この場合の消火器箱は、消火器扉と電装扉が設けられた扉構造であれば任意の構造で良く、例えば
図1に示した内部が消火栓収納部となる筐体10aを除いた筐体10bのみとなる消火器箱としてもよい。また、防災機器収納装置として、その他に非常通報装置を含むものである。非常通報装置は、開閉自在な電装扉に消火栓装置の電装扉と同様に、赤色表示灯、発信機、応答ランプが設けられると共に電装扉の裏側に電話ジャックが設けられ、発信機について上記の実施形態と同様に、発信機点検構造が設けられるものである。
【0120】
(扉開閉操作部のロッド)
上記の実施形態は、扉開閉操作部35のロッド36に操作レバー40を起立して移動操作しているが、これに限定されるものではなく、他のレバー形状や操作構造を適用して電装扉20と内側子扉24の閉鎖保持とその解除を行うようにしてもよい。
【0121】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0122】
10:消火栓装置
10a,10b:筐体
11a,11b:化粧枠
12:消火栓扉
1210,1810:扉ハンドル
14:保守扉
18:消火器扉
1820:覗き窓
20:電装扉
21:マグネット部
22:赤色表示灯
23a,23b:端子箱
24:発信機
2410:押釦スイッチ
2420:接続端子
2430:スイッチノブ
2440:保護板収納部
25:SOS銘板
26:応答ランプ
28:電話ジャック
30:消火器
32:取付板
34:内側子扉
3410:子扉開口
35:扉開閉操作部
36:ロッド
3610:ロッド上端
38:ロッドガイド
3810:ガイド管部
3820:取付部
3830:ガイド穴
3840:ガイド溝
3850:第1階段溝
3860:第2階段溝
40:操作レバー
4010:レバー軸
4020:ノブ
42:ロッド受け部材
44:蝶番
45:ストッパ部
46:ロッド通し部
48,50:凹嵌部