(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025043152
(43)【公開日】2025-03-28
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20250321BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150492
(22)【出願日】2023-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慶
(72)【発明者】
【氏名】藤野 伸一
(72)【発明者】
【氏名】久保木 誉
(57)【要約】
【課題】インダクタンスを低減できる。
【解決手段】半導体装置は、半導体素子を搭載するリードフレームと、リードフレームに接続され、一部が封止樹脂に覆われると共に、残部が封止樹脂から突出する直流端子と、直流端子と対向し、封止樹脂に覆われる金属板と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を搭載するリードフレームと、
前記リードフレームに接続され、一部が封止樹脂に覆われると共に、残部が前記封止樹脂から突出する直流端子と、
前記直流端子と対向し、前記封止樹脂に覆われる金属板と、を備える半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記金属板は、前記リードフレームのタイバーを切除した痕跡であるタイバー痕を有する、半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記半導体素子には板状の導電部材が接続され、
前記リードフレームに対して、前記導電部材および前記金属板が同じ側に配される、半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記半導体素子は、上アームを構成する第1半導体素子、および下アームを構成する第2半導体素子であり、
前記導電部材は、前記第1半導体素子の交流端子に接続される第2導電部材、および前記第2半導体素子の負極端子に接続される第1導電部材であり、
前記リードフレームに対して、前記第1導電部材、前記第2導電部材、および前記金属板が同じ側に配される、半導体装置。
【請求項5】
リードフレームに接続される直流端子と金属板とが互いにタイバーで接続されたリードベースを準備する準備工程と、
前記金属板が前記直流端子と対向するように折り曲げる曲げ工程と、
半導体素子および、前記半導体素子に接続される導電部材と、を前記リードフレームに配置する配置工程と、
前記半導体素子と、前記導電部材と、前記直流端子の一部と、を封止樹脂で覆う被覆工程と、
前記タイバーを切断する切断工程と、を含み、
前記曲げ工程および前記配置工程の順番は入れ替え可能である、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置の製造方法において、
前記リードベースは、制御端子をさらに含み、
前記直流端子は、前記制御端子よりも短く、前記制御端子に挟まれて配置されており、
前記金属板は、前記直流端子と前記制御端子に囲われている、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールを含む半導体装置は様々な産業分野で利用されている。半導体装置は、小型、低発熱、低消費電力、低インダクタンスなど多くの要求がなされている。特許文献1には、一面上に配列された複数の入出力端子を有するパワー半導体モジュールと、前記入出力端子間に配置される絶縁性部材で形成された仕切り部を有する端子カバーと、前記パワー半導体モジュールを制御する回路基板と、前記回路基板を支持する基板支持部材と、を備え、前記端子カバーは、前記基板支持部材に一体的に設けられている、電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている発明では、インダクタンスの低減に改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様による半導体装置は、半導体素子を搭載するリードフレームと、前記リードフレームに接続され、一部が封止樹脂に覆われると共に、残部が前記封止樹脂から突出する直流端子と、前記直流端子と対向し、前記封止樹脂に覆われる金属板と、を備える。
本発明の第2の態様による半導体装置の製造方法は、リードフレームに接続される直流端子と金属板とが互いにタイバーで接続されたリードベースを準備する準備工程と、前記金属板が前記直流端子と対向するように折り曲げる曲げ工程と、半導体素子および、前記半導体素子に接続される導電部材と、を前記リードフレームに配置する配置工程と、前記半導体素子と、前記導電部材と、前記直流端子の一部と、を封止樹脂で覆う被覆工程と、前記タイバーを切断する切断工程と、を含み、前記曲げ工程および前記配置工程の順番は入れ替え可能である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、インダクタンスを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】
図3に示したパワーモジュールの側面図の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0008】
―実施の形態―
以下、
図1~
図9を参照して、半導体装置であるパワーモジュールの実施の形態を説明する。本実施の形態では、説明の便宜のために相互に直交するXYZ軸を図面に記載する。
【0009】
(構成)
図1はパワーモジュール100の外観斜視図である。パワーモジュール100は外周をケース400により覆われ、ケース400の一部が放熱用の放熱部300となっている。
図1ではケース400のY軸マイナス側の面に配された放熱部300しか表示されていないが、ケース400のY軸プラス側の面にも同様に放熱部300が配されている。
【0010】
パワーモジュール100は、直流端子210、交流端子220、第1制御端子230、および第2制御端子240を備える。直流端子210、交流端子220、第1制御端子230、および第2制御端子240は、X軸方向に並んでおりZ軸方向に延びる。第1制御端子230と第2制御端子240との間に、直流端子210が配置される。ケース400のZ軸プラス側の表面に封止樹脂500が配され、この封止樹脂500により直流端子210、交流端子220、第1制御端子230、および第2制御端子240のZ軸マイナス側が封止される。第1制御端子230および第2制御端子240は直流端子210に比べて、封止樹脂500からZ軸プラス側に多く突出する。
【0011】
図2は、パワーモジュール100の内部斜視図である。本図の視点は
図1と同様であり、放熱部300、ケース400、および封止樹脂500を取り除いている。直流端子210、第1制御端子230、および第2制御端子240はリードフレーム200の一部により構成される。リードフレーム上に第1半導体素子900-1、第2半導体素子900-2、第2導電部材600および第1導電部材700が配置される。なお第2導電部材600は「ACリード」とも呼ばれ、第1導電部材700は「Nリード」とも呼ばれる。また以下では第1半導体素子900-1と第2半導体素子900-2とをまとめて「半導体素子」900と呼ぶこともある。
【0012】
第1半導体素子900-1の交流端子に第2導電部材600が接続され、第2半導体素子900-2の負極端子に第1導電部材700が接続される。直流端子210は、正極端子210Pと負極端子210Nとに分類される。正極端子210Pおよび負極端子210Nの数および配置は特に限定されないが、たとえば正極端子210P、負極端子210N、正極端子210P、負極端子210N、の順に並ぶ。負極端子210Nの電位は第1導電部材700の電位と等しい。交流端子220の電位は第2導電部材600の電位と等しい。
【0013】
図3は
図2から視点を変更した正面図および側面図である。ただし本図では金属板800をハッチングで示している。直流端子210と金属板800はY軸方向に対向して配置される。Y軸プラス側が奥行き方向になる正面図では、直流端子210と金属板800とが重なっている。右方向がY軸プラス側となる側面図では、直流端子210と金属板800との間に隙間があることがわかる。
図4では記載を省略していたが、第1制御端子230および第2制御端子240と半導体素子900の信号端子との間は、たとえばワイヤボンディングで接続される。
【0014】
図4は、
図3において破線の丸で囲んだ領域の拡大図である。ただし本図では説明の都合により封止樹脂500と直流端子210との接合部を破線で強調表示している。なお
図4では作図の都合により第1制御端子230のZ軸プラス側の先端部分が記載されていない。封止樹脂500と直流端子210との接合部は、隣接する端子の沿面距離が長くなるように、封止樹脂500は凹凸を有する。なお、この凹凸と概一致するように、金属板800のZ軸プラス側の端部の一部に凹凸が設けられてもよい。
【0015】
図5は、金属板800の三面図である。金属板800は、Z軸プラス側の端部に、リードフレーム200から切り離されたときに発生するタイバーカットの切除の痕跡であるタイバー痕810を有する。
【0016】
図6は、
図3に示したパワーモジュール100の側面図の拡大図である。ただし
図6では放熱部300も記載している。金属板800は、リードフレーム200および放熱部300から、封止樹脂500により電気的に絶縁される。金属板800は、第2導電部材600および第1導電部材700と同様に、リードフレーム200に対してY軸マイナス側に配置される。
【0017】
仮に金属板800がリードフレーム200に対して第2導電部材600および第1導電部材700と逆側、すなわちY軸プラス側に配された場合には、Y軸プラス側の放熱部300は現状よりもY軸のプラス側に移動せざるを得ない。そのため
図6に示す構成では、金属板800、第2導電部材600、および第1導電部材700がリードフレーム200に対して同一の側に存在することでパワーモジュール100のY軸方向のサイズを小型化できている、とも言える。なお金属板800は、リードフレーム200と放熱部300との間の封止樹脂500に埋設される。
【0018】
(製造方法)
図7~
図8を参照してパワーモジュール100の製造方法を説明する。
図7は、加工前のリードフレーム200であるリードベース200Bを示す図である。リードベース200Bは、導電性を有する金属平板をプレス加工またはレーザ加工することで形成される。リードベース200Bには、直流端子210、交流端子220、第1制御端子230、第2制御端子240、および金属板800となる部分である、加工前直流端子210B、加工前交流端子220B、加工前第1制御端子230B、加工前第2制御端子240B、および加工前金属板800Bを含む。
【0019】
斜線のハッチングが加工前金属板800Bを示し、主にドットのハッチングを施した領域がパワーモジュール100として不要な領域である。加工前金属板800Bおよび加工前直流端子210Bと連なる領域がタイバー850である。
【0020】
図8は、パワーモジュール100の製造工程を示す図である。まず、準備工程として
図7に示したリードベース200Bを用意する。第1工程では、加工前金属板800Bが加工前直流端子210Bと重なるようにタイバー850が所定の方向、たとえば図示手前側に折り曲げられる。第1工程は、曲げ工程とも呼ぶ。
【0021】
第2工程では、リードベース200Bに対して半導体素子900、第2導電部材600および第1導電部材700が実装される。第2導電部材600および第1導電部材700は、リードベース200Bに対して、加工前金属板800Bと同一方向の面、たとえば図示手前側の面に実装される。これらの実装には、はんだ等の接合部材が用いられる。なお次の第3工程に進む前にリードベース200Bの不要な箇所、すなわちドットのハッチングで示す領域を除去する。この除去は第1工程に含めてもよいし、第2工程に含めてもよい。第2工程は、配置工程とも呼ぶ。
【0022】
第3工程では、封止樹脂500を充填し硬化させる。これにより、加工前金属板800Bと加工前直流端子210Bの相対位置が固定される。ただしこの段階ではタイバー850はまだ存在する。第3工程は、被覆工程とも呼ぶ。第4工程では、タイバー850をカットする。この第4工程により
図5に示したタイバー痕810が形成される。第4工程は、切断工程とも呼ぶ。第4工程の後に、放熱部300が配されたケース400で封止樹脂500を覆うことでパワーモジュール100が完成する。なお第1工程と第2工程、すなわち曲げ工程と配置工程は順番が逆でもよい。
【0023】
(効果)
図9は、パワーモジュール100の効果を示す図である。直流端子210には正極および負極が含まれるので、直流端子210に対向して配される金属板800には渦電流Eが生じる。そのためパワーモジュール100は、金属板800により直流端子210のインダクタンスが低減され、サージ電圧および損失が低減される効果を有する。
【0024】
ところで、金属板800を加工する前の加工前金属板800Bは、
図7に示したように加工前第1制御端子230Bと加工前第2制御端子240Bとに挟まれた領域であった。矩形の板材からリードフレーム200および各端子を形成するためには、加工前金属板800Bの領域も切り出さざるを得ない。したがって、本願発明者による鋭意検討がなければ加工前金属板800Bは廃棄される領域であったとも言える。したがってパワーモジュール100は、従来は廃棄されていた領域を用いてインダクタンスの低減を実現している。
【0025】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)パワーモジュール100は、第1半導体素子900-1を搭載するリードフレーム200と、リードフレーム200に接続され、一部が封止樹脂500に覆われると共に、残部が封止樹脂500から突出する直流端子210と、直流端子210と対向し封止樹脂500に覆われる金属板800と、を備える。そのため、
図9に示すように渦電流Eが発生し、インダクタンスを低減できる。
【0026】
(2)金属板800は、リードフレーム200のタイバー850を切除した痕跡であるタイバー痕810を有する。そのため、従来は廃棄されていた領域を用いてパワーモジュール100のインダクタンス低減を実現できる。
【0027】
(3)第1半導体素子900-1には板状の導電部材が接続される。リードフレームに対して、第1導電部材700、第2導電部材600および金属板800が同じ側、すなわちY軸マイナス側に配される。そのため、
図6を参照して説明したようにパワーモジュール100のY軸方向のサイズを小型化できる。
【0028】
(4)半導体素子900は、上アームを構成する第1半導体素子900-1、および下アームを構成する第2半導体素子900-2である。導電部材は、第1半導体素子900-1の交流端子に接続される第2導電部材600、および第2半導体素子900-2の負極端子に接続される第1導電部材700である。
図6に示すように、リードフレーム200に対して、第1導電部材700、第2導電部材600、および金属板800が同じ側に配される。
【0029】
(5)パワーモジュール100の製造方法は、準備工程と、曲げ工程と、配置工程と、被覆工程と、切断工程と、を含む。準備工程では、リードフレーム200に接続される直流端子210と金属板800とが互いにタイバー850で接続されたリードベース200Bを準備する。曲げ工程では、金属板800が直流端子210と対向するように折り曲げる。配置工程では、半導体素子900、第1導電部材700、および第2導電部材600、をリードフレーム200に配置する。被覆工程では、半導体素子900と、第1導電部材700と、第2導電部材600と、直流端子210の一部と、を封止樹脂500で覆う。切断工程では、タイバー850を切断する。なお、曲げ工程および配置工程の順番は入れ替え可能である。そのため、インダクタンスが低減されたパワーモジュール100を製造できる。
【0030】
(6)リードベース200Bは、第1制御端子230および第2制御端子240を含む。直流端子210は、第1制御端子230および第2制御端子240よりも短く、第1制御端子230および第2制御端子240に挟まれて配置される。金属板800は、直流端子210と第1制御端子230および第2制御端子240に囲われている。そのため、従来は廃棄されていた領域を用いてパワーモジュール100のインダクタンス低減を実現できる。
【0031】
(変形例1)
上述した実施の形態では、
図6に示したように、金属板800、第1導電部材700、および第2導電部材600の全てがリードフレーム200に対して同一の側、すなわちY軸のマイナス側に配された。しかし、この3つが同一の側に存在することは必須の構成要件ではなく、バラバラに配されてもよい。たとえば金属板800はリードフレーム200よりもY軸のマイナス側に配され、第1導電部材700および第2導電部材600はリードフレーム200よりもY軸のプラス側に配されてもよい。
【0032】
本発明は上述した実施の形態および変形例に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
100 :パワーモジュール
200 :リードフレーム
200B :リードベース
210 :直流端子
220 :交流端子
220B :加工前交流端子
230 :第1制御端子
240 :第2制御端子
500 :封止樹脂
600 :第2導電部材
700 :第1導電部材
800 :金属板
800B :加工前金属板
810 :タイバー痕
850 :タイバー