(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004325
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】磁気共鳴数値シミュレーション装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
A61B5/055 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103933
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹島 秀則
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB26
4C096DB06
4C096DB20
(57)【要約】
【課題】磁気共鳴数値シミュレーションの計算効率を向上すること。
【解決手段】 実施形態に係る磁気共鳴数値シミュレーション装置は、入力部と数値計算部とを有する。入力部は、アイソクロマットについて、磁化の更新前の数値と磁化に対する空間方向及び/又は角周波数方向各々での偏微分の更新前の数値とを入力する。数値計算部は、磁化の更新前の数値と偏微分の更新前の数値とのうちの一部の数値を使用して、磁気共鳴の時間発展を表す更新式を演算し、アイソクロマットについて、磁化の更新後の数値と磁化に対する空間方向及び/又は角周波数方向のうちの算出対象方向での空間偏微分の更新後の数値とを算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイソクロマットについて、磁化の更新前の数値と前記磁化に対する空間方向及び/又は角周波数方向各々での偏微分の更新前の数値とを入力する入力部と、
前記磁化の更新前の数値と前記偏微分の更新前の数値とのうち一部の数値を使用して、磁気共鳴の時間発展を表す更新式を演算し、前記アイソクロマットについて、前記磁化の更新後の数値と前記磁化に対する前記空間方向及び/又は前記角周波数方向のうちの算出対象方向での前記偏微分の更新後の数値とを算出する数値計算部と、
を具備する磁気共鳴数値シミュレーション装置。
【請求項2】
前記数値計算部は、
前記偏微分の更新前の数値を使用せず、前記磁化の更新前の数値を使用して、前記更新式を演算し、前記磁化の更新後の数値を算出し、
前記空間方向及び/又は前記角周波数方向のうちの非算出対象方向での前記偏微分の更新前の数値を使用せず、前記算出対象方向での前記偏微分の更新前の数値を使用して、前記更新式を演算し、前記算出対象方向での前記偏微分の更新後の数値を算出する、
請求項1記載の磁気共鳴数値シミュレーション装置。
【請求項3】
前記更新式は、互いに分離された磁化更新式と空間偏微分更新式と角周波数偏微分更新式とを有し、
前記数値計算部は、
前記磁化の更新後の数値を算出するために、前記磁化の更新前の数値を参照して前記磁化更新式を演算し、
前記算出対象方向での前記空間方向の前記偏微分の更新後の数値を算出するために、前記磁化の更新前の数値及び前記算出対象方向での前記空間方向の前記偏微分の更新前の数値を参照して前記空間偏微分更新式を演算し、
前記角周波数方向の前記偏微分の更新後の数値を算出するために、前記磁化の更新前の数値及び前記角周波数方向の前記偏微分の更新前の数値を参照して前記角周波数偏微分更新式を演算する、
請求項2記載の磁気共鳴数値シミュレーション装置。
【請求項4】
前記数値計算部は、
前記磁化の更新前の数値を参照して前記磁化更新式のうちの回転項を演算して磁化回転項値を算出し、
前記磁化回転項値に前記磁化更新式のうちの緩和項を適用して前記磁化の更新後の数値を算出する、
請求項3記載の磁気共鳴数値シミュレーション装置。
【請求項5】
前記数値計算部は、
前記磁化の更新前の数値及び前記算出対象方向での前記偏微分の更新前の数値を参照して前記空間偏微分更新式及び/又は前記角周波数偏微分更新式のうちの回転項を演算して偏微分回転項値を算出し、
前記偏微分回転項値に前記空間偏微分更新式及び/又は前記角周波数偏微分更新式のうちの緩和項を適用して前記算出対象方向での前記偏微分の更新後の数値を算出する、
請求項4記載の磁気共鳴数値シミュレーション装置。
【請求項6】
前記空間偏微分更新式は、互いに分離された、スライス選択傾斜磁場方向に対する直交方向の有効磁場ベクトル成分に依存する第1項と、スライス選択傾斜磁場方向の有効磁場ベクトル成分に依存する第2項と、前記有効磁場ベクトル成分に依存しない第3項とを有する、請求項5記載の磁気共鳴数値シミュレーション装置。
【請求項7】
前記数値計算部は、
RFパルスの印加期間において、前記第1項、前記第2項及び前記第3項を演算し、
RFパルスの非印加期間において、前記第2項及び前記第3項を演算する、
請求項6記載の磁気共鳴数値シミュレーション装置。
【請求項8】
前記数値計算部は、RFパルスの印加期間及び非印加期間において、前記第1項、前記第2項及び前記第3項を演算する、請求項6記載の磁気共鳴数値シミュレーション装置。
【請求項9】
前記数値計算部は、
前記算出対象方向での空間偏微分の更新後の数値を算出するために、前記磁化の更新前の数値及び前記算出対象方向での前記空間偏微分の更新前の数値を参照して前記第1項のうちの回転項を演算して第1回転項値を算出し、前記磁化の更新前の数値及び前記算出対象方向での前記空間偏微分の更新前の数値を参照して前記第2項のうちの回転項を演算して第2回転項値を算出し、前記磁化の更新前の数値及び前記算出対象方向での前記空間偏微分の更新前の数値を参照して前記第3項のうちの回転項を演算して第3回転項値を算出し、
前記第1回転項値と前記第2回転項値と前記第3回転項値との加算値に、前記空間偏微分更新式のうちの緩和項を適用して前記算出対象方向での前記空間偏微分の更新後の数値を算出する、
請求項6記載の磁気共鳴数値シミュレーション装置。
【請求項10】
前記更新式は、複数の時間ステップ毎の前記磁化の時間発展と前記偏微分の時間発展とを記述する遷移行列を複数個組み合わせた結合遷移行列である、請求項2記載の磁気共鳴数値シミュレーション装置。
【請求項11】
前記結合遷移行列のうちの磁気共鳴の時間発展の演算に寄与する第1行列要素は、非ゼロ値を有し、
前記結合遷移行列のうちの磁気共鳴の時間発展の演算に寄与しない第2行列要素は、ゼロ値を有し、
前記数値計算部は、前記ゼロ値を有する前記第2行列要素の演算を実行しない、
請求項10記載の磁気共鳴数値シミュレーション装置。
【請求項12】
前記結合遷移行列を記憶する記憶部を更に備え、
前記記憶部は、前記第1行列要素を記憶し、前記第2行列要素を記憶しない、
請求項11記載の磁気共鳴数値シミュレーション装置。
【請求項13】
既定の磁化の数値と前記空間方向各々での磁化の空間偏微分の数値とを含む入力ベクトルを前記更新式に適用して得られた出力ベクトルに基づいて前記結合遷移行列の各行列要素を算出する行列算出部を更に備える、請求項10記載の磁気共鳴数値シミュレーション装置。
【請求項14】
パルスシーケンスのシーケンス断片毎に結合遷移行列を記憶する記憶部と、
演算対象のシーケンス断片に対応する結合遷移行列が前記記憶部に記憶されているか否かを判定する判定部と、を更に備え、
前記数値計算部は、
前記判定部により記憶されていると判定された場合、前記演算対象のシーケンス断片に対応する結合遷移行列を前記記憶部から読み出して使用し、
前記判定部により記憶されていないと判定された場合、前記演算対象のシーケンス断片に対応する結合遷移行列を算出し、前記算出された結合遷移行列を使用する、
請求項10記載の磁気共鳴数値シミュレーション装置。
【請求項15】
前記数値計算部は、A/D変換器の予測出力値を算出する場合、スライス選択傾斜磁場方向の磁化成分に対する前記算出対象方向での前記偏微分の更新後の数値を算出せず、前記スライス選択傾斜磁場方向以外の傾斜磁場方向の磁化成分に対する前記算出対象方向での前記偏微分の更新後の数値を算出する、請求項1記載の磁気共鳴数値シミュレーション装置。
【請求項16】
アイソクロマットについて、磁化の更新前の数値と前記磁化に対する空間方向及び/又は角周波数方向各々での偏微分の更新前の数値とを入力し、
前記磁化の更新前の数値と前記偏微分の更新前の数値とのうちの一部の数値を使用して、磁気共鳴の時間発展を表す更新式を演算し、前記アイソクロマットについて、前記磁化の更新後の数値と前記磁化に対する前記空間方向及び/又は前記角周波数方向のうちの算出対象方向での前記偏微分の更新後の数値とを算出する、
こと具備する磁気共鳴数値シミュレーション方法。
【請求項17】
コンピュータに、
アイソクロマットについて、磁化の更新前の数値と前記磁化に対する空間方向及び/又は角周波数方向各々での偏微分の更新前の数値とを入力させる機能と、
前記磁化の更新前の数値と前記偏微分の更新前の数値とのうちの一部の数値を使用して、磁気共鳴の時間発展を表す更新式を演算し、前記アイソクロマットについて、前記磁化の更新後の数値と前記磁化に対する前記空間方向及び/又は前記角周波数方向のうちの算出対象方向での前記偏微分の更新後の数値とを算出させる機能と、
を実現させる磁気共鳴数値シミュレーションプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、磁気共鳴数値シミュレーション装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴数値シミュレーションでは、ブロッホ方程式を用いて磁気共鳴数値イメージングをシミュレートする。ブロッホ方程式は磁場中の磁化の時間発展を記述する方程式であり、磁気共鳴イメージングの基礎方程式である。ブロッホ方程式の数値的解法としてMAGSI(Magnetic Gradient Simulation of Intra-voxel dephasing)がある。MAGSIは、ボクセルの中心に仮想分子を設定し、ボクセル内の磁場が線形であるとの仮定のもと、磁化の空間偏微分を用いてボクセル内の任意の位置の磁化を計算する。ただしMAGSIは、磁化の空間偏微分を愚直に計算しているため、計算効率に改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Hidenori Takeshima. “A Fast and Practical Computation Method for Magnetic Resonance Simulators” Magnetic Resonance in Medicine, DOI: 10.1002/mrm.29646
【非特許文献2】Thies H. Jochimsen, Andreas Schafer, Roland Bammer, Michael E. Moseley, “Efficient simulation of magnetic resonance imaging with Bloch-Torrey equations using intra-voxel magnetization gradients” Journal of Magnetic Resonance, 2006; 180:29-38.
【非特許文献3】Graf C, Rund A, Aigner CS, Stollberger R. “Accuracy and Performance Analysis for Bloch and Bloch-McConnell Simulation Methods” Journal of Magnetic Resonance. 2021; 329: 107011.
【非特許文献4】Latta P, Gruwel MLH, Jellus V, Tomanek B. “Bloch simulations with intra-voxel spin dephasing” Journal of Magnetic Resonance. 2010; 203:44-51.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、磁気共鳴数値シミュレーションの計算効率を向上することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る磁気共鳴数値シミュレーション装置は、入力部と数値計算部とを有する。前記入力部は、アイソクロマットについて、磁化の更新前の数値と前記磁化に対する空間方向及び/又は角周波数方向各々での偏微分の更新前の数値とを入力する。前記数値計算部は、前記磁化の更新前の数値と前記偏微分の更新前の数値とのうちの一部の数値を使用して、磁気共鳴の時間発展を表す更新式を演算し、前記アイソクロマットについて、前記磁化の更新後の数値と前記磁化に対する前記空間方向及び/又は前記角周波数方向のうちの算出対象方向での前記偏微分の更新後の数値とを算出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る磁気共鳴数値シミュレーション装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、磁気共鳴数値シミュレーションの計算対象である磁化ベクトルM(t)を構成する成分を例示する図である。
【
図3】
図3は、比較例に係る磁化ベクトルM(t+Δt)の算出過程を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、磁化ベクトルM(t)に関する算出対象と寄与項とを示す図である。
【
図5】
図5は、磁化ベクトルの更新式の演算過程を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の実施例1に係る磁気共鳴数値シミュレーションの処理手順を例示する図である。
【
図7】
図7は、スピンエコー法によるパルスシーケンスの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の実施例2に係る磁気共鳴数値シミュレーションの処理手順を例示する図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る磁気共鳴数値シミュレーション装置の構成例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の実施例1に係る磁気共鳴数値シミュレーションの処理手順を例示する図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の実施例2に係る磁気共鳴数値シミュレーションの処理手順を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る磁気共鳴数値シミュレーション装置、方法及びプログラムについて詳細に説明する。
【0009】
本実施形態に係る磁気共鳴数値シミュレーション装置は、磁気共鳴数値シミュレーションを実行するコンピュータである。本実施形態に係る磁気共鳴数値シミュレーションは、検査対象モデルに設定された各ボクセル内のアイソクロマットに対する、所与のパルスシーケンスによる磁気共鳴の時間発展をシミュレーションする。具体的には、ボクセル内の磁場が線形であるとの仮定のもと、磁化の空間偏微分を用いてボクセル内の任意の位置の磁化を計算するMAGSIが使用される。本実施形態に係る磁気共鳴数値シミュレーション装置、方法及びプログラムは、磁化及び/又は偏微分の計算効率を高めて計算効率を高めることを目的としている。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る磁気共鳴数値シミュレーション装置1の構成例を示す図である。
図1に示すように、磁気共鳴数値シミュレーション装置1は、処理回路11、通信機器12、表示機器13、入力機器14及び記憶装置15を有するコンピュータである。処理回路11、通信機器12、表示機器13、入力機器14及び記憶装置15間のデータ通信は、バスを介して行われる。
【0011】
処理回路11は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する。当該プロセッサが記憶装置15等にインストールされた磁気共鳴数値シミュレーションプログラムを起動することにより、入力機能111、数値計算機能112及び出力制御機能113等を実現する。各機能111~113は単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが磁気共鳴数値シミュレーションプログラムを実行することにより各機能111~113を実現するものとしても構わない。また、各機能111~113は、磁気共鳴数値シミュレーションプログラムを構成するモジュールとして実装されてもよいし、個別のハードウェアとして実装されてもよい。
【0012】
入力機能111により、処理回路11は、磁気共鳴数値シミュレーションに用いられる種々の情報を入力する。一例として、処理回路11は、計算対象のパルスシーケンスのシーケンス断片を入力する。シーケンス断片各々について数値計算機能112により磁気共鳴数値計算が行われる。入力機能111により、処理回路11は、アイソクロマット(isochoromat)について、磁化の更新前の数値と当該磁化に対する空間方向及び角周波数方向各々での偏微分の更新前の数値とを入力する。アイソクロマットは、ボクセル内に設定された、同一周波数を有する核磁気モーメントの集合を意味する。更新前の数値としては、入力機器14により手動的に入力された数値、数値計算機能112により算出された更新後の数値、予め設定された任意値が入力されればよい。
【0013】
数値計算機能112により、処理回路11は、入力機能111により入力されたシーケンス断片各々について磁化ベクトルの更新演算を実行する。一例として、処理回路11は、入力機能111により入力された磁化の更新前の数値と偏微分の更新前の数値とのうちの一部の数値を使用して、磁気共鳴の時間発展を表す更新式(以下、単に更新式と呼ぶ)を演算し、アイソクロマットについて、磁化の更新後の数値と磁化に対する空間方向及び/又は角周波数方向のうちの算出対象方向での空間偏微分の更新後の数値とを算出する。具体的には、処理回路11は、偏微分の更新前の数値を使用せず、磁化の更新前の数値を使用して、更新式を演算し、磁化の更新後の数値を算出する。また、処理回路11は、空間方向及び/又は角周波数方向のうちの非算出対象方向での偏微分の更新前の数値を使用せず、算出対象方向での偏微分の更新前の数値を使用して、更新式を演算し、算出対象方向での偏微分の更新後の数値を算出する。以下、磁化ベクトルのうちの磁化の数値を磁化値、磁化の偏微分の数値を偏微分値と呼ぶ。更新式としては、ブロッホ方程式又はその発展形が使用される。本実施形態に係るブロッホ方程式は、オリジナルのブロッホ方程式だけでなく、Torreyによる拡散(diffusion)項やMcConnellによる磁化移動(magnetization transfer)項を追加した発展形も含む。
【0014】
数値計算機能112により、処理回路11は、更新後の磁化値と算出対象方向での更新後の偏微分値とに基づいて、磁気共鳴数値シミュレーションの目的に対応するデータ(以下、シミュレーションデータ)を生成してもよい。シミュレーションデータとしては、A/D変換器の予測出力値や当該予測出力値に基づくMR画像等が挙げられる。なお、磁化値と空間偏微分値とがシミュレーションデータに設定されてもよい。
【0015】
出力制御機能113により、処理回路11は、数値計算機能112により算出された更新後の磁化値や偏微分値等のシミュレーションデータを出力する。一例として、処理回路11は、シミュレーションデータを表示機器13に表示したり、記憶装置15に記憶したり、通信機器12を介してほかのコンピュータに送信する。
【0016】
通信機器12は、LAN(Local Area Network)等を介して磁気共鳴イメージング装置、ワークステーション、PACS(Picture Archiving and Communication System)、HIS(Hospital Information System)、RIS(Radiology Information System)等に接続するインタフェースである。通信機器12は、各種データを接続先との間で送受信する。
【0017】
表示機器13は、処理回路11の出力制御機能113に従い各種データを表示する。表示機器13としては、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイ又は他の任意のディスプレイが適宜使用可能である。また、表示機器13は、プロジェクタでもよい。
【0018】
入力機器14は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路11に出力する。具体的には、入力機器14は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の入力機器に接続されている。入力機器14は、当該入力機器14への入力操作に応じた電気信号を処理回路11へ出力する。また、入力機器14は、ネットワーク等を介して接続された他のコンピュータに設けられた入力機器でもよい。入力機器14は、マイクロフォンにより収集された音声信号を指示信号に変換する音声認識装置でもよい。
【0019】
記憶装置15は、各種データを記憶するROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。記憶装置15は、例えば、磁気共鳴数値シミュレーションプログラム等を記憶する。記憶装置15は、上記記憶装置以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬型記憶媒体や、半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。記憶装置15は、磁気共鳴数値シミュレーション装置1にネットワークを介して接続された他のコンピュータ内にあってもよい。
【0020】
上記の説明の通り、本実施形態に係る磁気共鳴数値シミュレーション1装置は、処理回路11を有する。処理回路11は、アイソクロマットについて、磁化の更新前の数値と磁化に対する空間方向及び/又は角周波数方向各々での偏微分の更新前の数値とを入力する。処理回路11は、磁化の更新前の数値と偏微分の更新前の数値とのうちの一部の数値を使用して、磁気共鳴の時間発展を表す更新式を演算し、アイソクロマットについて、磁化の更新後の数値と空間方向及び/又は角周波数方向のうちの算出対象方向での偏微分の更新後の数値とを算出する。
【0021】
具体的には、処理回路11は、更新前の磁化値を算出する場合、一部の数値として更新前の磁化値を使用する。換言すれば、処理回路11は、一部の数値として更新前の偏微分値を使用しなくてもよい。更新前の算出対象方向での偏微分値を算出する場合、処理回路11は、一部の数値として更新前の磁化値と当該算出対象方向での偏微分値を使用する。換言すれば、処理回路11は、一部の数値として更新前の非算出対象方向での偏微分値を使用しなくてもよい。なお、空間方向での偏微分値及び/又は角周波数方向での偏微分値各々は、1個又は複数個の成分が存在し得る。例えば、空間方向での偏微分値は、一例として、リードアウト傾斜磁場方向での偏微分値、位相エンコード傾斜磁場方向での偏微分値、スライス選択傾斜磁場方向での偏微分値等の複数個の成分が存在し得る。算出対象方向での偏微分値は、これら複数個の成分のうちの一部を指すものとする。角周波数方向の偏微分値も同様、1個又は複数個の成分が存在し得る。すなわち、更新前の算出対象方向での偏微分値を算出する場合、処理回路11は、空間方向及び/又は角周波数方向のうちの算出対象方向での偏微分の更新後の数値を算出するために、更新前の磁化値、算出対象方向の偏微分値及び非算出対象方向の偏微分値の全ての数値を使用する必要はなく、更新前の磁化値及び算出対象方向の偏微分値を使用すればよい。
【0022】
上記の構成によれば、本実施形態は、更新後の磁化値と偏微分値との全ての数値を使用する場合に比して、更新式の演算量を低減することができるので、結果的に、計算時間やメモリ消費量を低減することができ、ひいては、磁気共鳴数値シミュレーションの計算効率を向上することができる。
【0023】
ここで、本実施形態を非特許文献4に対して比較する。非特許文献4は、ブロッホ方程式におけるx、y、zの各方向に対し、10-6程度の微小なずれを与えたときの磁化を求めておき、各軸に対する磁化差分を微分とみなして位相を求めることでintra-voxel spin dephasingをシミュレートする。非特許文献4に比して、本実施形態は、微分を差分に置き換えることはせず、空間偏微分値を算出している。そのうえで本実施形態は、異なる偏微分方向での空間偏微分同士に相互作用がないことを利用し、更新後の数値の算出に寄与する成分にのみ更新式を適用する。これにより本実施形態は、結果の正確性を疎かにすることなく短時間で更新後の数値を算出することが可能になる。
【0024】
以下、第1実施形態に係る磁気共鳴数値シミュレーション装置1の一例について説明する。なお、以下に示す磁化ベクトルや更新式等は一例であり、本実施形態はこれに限定されるものではない。
【0025】
図2は、本実施形態に係る磁気共鳴数値シミュレーションの計算対象である磁化ベクトルM(t)を構成する成分を例示する図である。
図2に示す磁化ベクトルM(t)は、時刻tにおけるボクセル内のアイソクロマットの磁化モーメントのベクトル和を表す。具体的には、磁化ベクトルM(t)は、M
x、M
y、M
z、∂
xM
x、∂
xM
y、∂
xM
z、∂
yM
x、∂
yM
y、∂
yM
z、∂
zM
x、∂
zM
y、∂
zM
z、∂
ωM
x、∂
ωM
y、∂
ωM
z及びM
0等の成分に分解できる。M
x、M
y及びM
zは、磁化の空間方向の成分を表す。具体的には、M
x、M
y及びM
zは、それぞれx方向、y方向及びz方向の磁化成分を表す。∂
xM
x、∂
xM
y、∂
xM
z、∂
yM
x、∂
yM
y、∂
yM
z、∂
zM
x、∂
zM
y及び∂
zM
zは、磁化に対する複数の空間方向各々での空間偏微分を表す。具体的には、∂
xM
x、∂
xM
y及び∂
xM
zは、それぞれ磁化成分M
x、M
y及びM
zに対するx方向での偏微分成分を表す。∂
yM
x、∂
yM
y、∂
yM
zは、それぞれ磁化成分M
x、M
y及びM
zに対するy方向での偏微分成分を表す。∂
zM
x、∂
zM
y及び∂
zM
zは、それぞれ磁化成分M
x、M
y及びM
zに対するz方向での偏微分成分を表す。∂
ωM
x、∂
ωM
y、∂
ωM
zは、それぞれ磁化成分M
x、M
y及びM
zに対する角周波数方向での偏微分成分を表す。M
0は、熱平衡状態におけるアイソクロマットの磁化を表す。Tは転置を意味する。
【0026】
なお、本実施形態においてx軸、y軸及びz軸は、任意の方向に設定可能であるが、計算の便宜のため、x軸にリードアウト傾斜磁場方向を、y軸に位相エンコード傾斜磁場方向を、z軸にスライス選択傾斜磁場方向を設定するものとする。また、角周波数方向での偏微分成分は、考慮しても良いし、しなくても良い。
【0027】
処理回路11は、検査対象モデルに設定された複数のボクセル各々について、更新前の磁化ベクトルM(t)に更新式を適用して、所与の時間ステップΔt後の磁化ベクトルM(t+Δt)を更新後の磁化ベクトルとして算出する。この際、処理回路11は、各ボクセル内の磁場が線形であるとの仮定のもと、磁化の空間偏微分を用いてボクセル内の任意の位置の磁化を計算する。時間微分と空間偏微分とにより、ボクセル内の任意の位置における更新後の磁化を算出することができる。
【0028】
図3は、比較例に係る磁化ベクトルM(t+Δt)の算出過程を模式的に示す図である。
図3に示すように、比較例においては、磁化ベクトルM(t)のための1個の更新式F
ALLを演算する。更新式F
ALLは、磁化ベクトルM(t)に含まれる各成分M
x、M
y、M
z、∂
xM
x、∂
xM
y、∂
xM
z、∂
yM
x、∂
yM
y、∂
yM
z、∂
zM
x、∂
zM
y、∂
zM
z、∂
ωM
x、∂
ωM
y、∂
ωM
zを導く1個の計算式を意味する。この場合、これら全成分M
x、M
y、M
z、∂
xM
x、∂
xM
y、∂
xM
z、∂
yM
x、∂
yM
y、∂
yM
z、∂
zM
x、∂
zM
y、∂
zM
z、∂
ωM
x、∂
ωM
y、∂
ωM
z及びM
0を使用して、更新式F
ALLを演算し、更新後の磁化値M
x,y,z(t+Δt)と更新後の空間偏微分値∂
xM
x,y,z(t+Δt)、∂
yM
x,y,z(t+Δt)及び∂
zM
x,y,z(t+Δt)とが算出される。なおM
x,y,z(t+Δt)は、M
x(t+Δt)、M
y(t+Δt)、M
z(t+Δt)を縮約した表記である。
【0029】
図4は、磁化ベクトルM(t)に関する算出対象と寄与項とを示す図である。算出対象は、磁化ベクトルを構成する成分のうちの着目している成分を意味する。空間偏微分値に関して言えば、算出対象は、x方向、y方向及びz方向等の偏微分する空間方向(以下、偏微分方向)により決定付けられる。寄与項は、算出対象を計算するために使用する成分、換言すれば、更新式F
ALLのうちの算出対象の計算に使用される項において使用される成分を意味する。寄与項以外の項(以下、非寄与項)は、算出対象を計算するために使用しない成分、換言すれば、更新式F
ALLのうちの算出対象の計算に使用される項に含まれない成分を意味する。空間偏微分値に関して言えば、非寄与項は、算出対象の偏微分方向以外の偏微分方向を意味する。
【0030】
図4の(1)に示すように、算出対象が磁化値M
x、M
y及びM
zである場合、その寄与項は、M
x、M
y、M
z、M
0であり、非寄与項は、全空間方向及び角周波数方向での偏微分値∂
xM
x、∂
xM
y、∂
xM
z、∂
yM
x、∂
yM
y、∂
yM
z、∂
zM
x、∂
zM
y、∂
zM
z、∂
ωM
x、∂
ωM
y、∂
ωM
zである。
図4の(2)に示すように、算出対象がx方向での空間偏微分値∂
xM
x、∂
xM
y、∂
xM
zである場合、その寄与項は、M
x、M
y、M
z、∂
xM
x、∂
xM
y、∂
xM
zであり、非寄与項は、y方向、z方向及びω方向での偏微分値∂
yM
x、∂
yM
y、∂
yM
z、∂
zM
x、∂
zM
y、∂
zM
z、∂
ωM
x、∂
ωM
y、∂
ωM
zとM
0とである。
図4の(3)に示すように、算出対象がy方向での空間偏微分値∂
yM
x、∂
yM
y、∂
yM
zである場合、その寄与項は、M
x、M
y、M
z、∂
yM
x、∂
yM
y、∂
yM
zであり、非寄与項は、x方向、z方向及びω方向での偏微分値∂
xM
x、∂
xM
y、∂
xM
z、∂
zM
x、∂
zM
y、∂
zM
z、∂
ωM
x、∂
ωM
y、∂
ωM
zとM
0とである。
図4の(4)に示すように、算出対象がz方向での空間偏微分値∂
zM
x、∂
zM
y及び∂
zM
zである場合、その寄与項は、M
x、M
y、M
z、∂
zM
x、∂
zM
y、∂
zM
zであり、非寄与項は、x方向、y方向及びω方向での偏微分値∂
yM
x、∂
yM
y、∂
yM
z、∂
zM
x、∂
zM
y、∂
zM
z、∂
ωM
x、∂
ωM
y、∂
ωM
zとM
0とである。また、
図4の(5)に示すように、算出対象がω方向での偏微分値∂
ωM
x、∂
ωM
y及び∂
ωM
zである場合、その寄与項は、M
x、M
y、M
z、∂
ωM
x、∂
ωM
y、∂
ωM
zであり、非寄与項は、全空間方向での空間偏微分値∂
xM
x、∂
xM
y、∂
xM
z、∂
yM
x、∂
yM
y、∂
yM
z、∂
zM
x、∂
zM
y、∂
zM
zとM
0とである。
【0031】
なお、例えばBloch方程式にTorreyのDiffusion項が含まれる場合は、寄与項として全空間方向での空間偏微分値∂xMx、∂xMy、∂xMz、∂yMx、∂yMy、∂yMz、∂zMx、∂zMy、∂zMzが(Bloch方程式では非寄与項であったとしても)すべての算出対象について加わる。
【0032】
図4の(1)~(5)に示すように、磁化ベクトルの磁化成分、x方向での偏微分成分、y方向での偏微分成分、z方向での偏微分成分及びω方向での偏微分成分の各々には寄与項と非寄与項とが存在することが分かる。例えば、磁化値を計算するために、全ての方向での偏微分値を使用しなくて良い。他の例では、ある方向での空間偏微分成分値を計算するために、他の空間方向での空間偏微分値を使用しなくて良い。この事は、異なる空間方向での偏微分成分同士は相互作用がないと表現することもできる。そこで、磁化値、x方向偏微分値、y方向偏微分値、z方向偏微分値及びω方向偏微分値を分けて計算する。
【0033】
図5は、第1実施形態に係る磁化ベクトルの更新式の演算過程を模式的に示す図である。
図5に示すように、第1実施形態においては、磁化ベクトルの更新式は、磁化成分の更新式(以下、磁化更新式)F
Mと空間偏微分成分の更新式(以下、空間偏微分更新式)F
∂pと角周波数偏微分成分の更新式(以下、角周波数偏微分更新式又はω方向偏微分更新式)F
∂ωとに分けられる。空間偏微分更新式F
∂pは、更にx方向での空間偏微分成分の更新式(以下、x方向偏微分更新式)F
∂x、y方向での空間偏微分成分の更新式(以下、y方向偏微分更新式)F
∂y、z方向での空間偏微分成分の更新式(以下、z方向偏微分更新式)F
∂zに分けられる。
【0034】
図5に示すように、処理回路11は、磁化値M
x、y、z(t+Δt)を算出する場合、寄与項M
x、M
y、M
z、M
0を使用し、非寄与項∂
xM
x、∂
xM
y、∂
xM
z、∂
yM
x、∂
yM
y、∂
yM
z、∂
zM
x、∂
zM
y、∂
zM
z、∂
ωM
x、∂
ωM
y、∂
ωM
zを使用せず、磁化更新式F
Mを演算する。処理回路11は、x方向偏微分値∂
xM
x、y、z(t+Δt)を算出する場合、寄与項M
x、M
y、M
z、∂
xM
x、∂
xM
y、∂
xM
z、M
0を使用し、非寄与項∂
yM
x、∂
yM
y、∂
yM
z、∂
zM
x、∂
zM
y、∂
zM
z、∂
ωM
x、∂
ωM
y、∂
ωM
zを使用せず、x方向偏微分更新式F
∂xを演算する。処理回路11は、y方向偏微分値∂
yM
x、y、z(t+Δt)を算出する場合、寄与項M
x、M
y、M
z、∂
yM
x、∂
yM
y、∂
yM
z、M
0を使用し、非寄与項∂
xM
x、∂
xM
y、∂
xM
z、∂
zM
x、∂
zM
y、∂
zM
z、∂
ωM
x、∂
ωM
y、∂
ωM
zを使用せず、y方向偏微分更新式F
∂yを演算する。処理回路11は、z方向偏微分値∂
zM
x、y、z(t+Δt)を算出する場合、寄与項M
x、M
y、M
z、∂
zM
x、∂
zM
y、∂
zM
z、M
0を使用し、非寄与項∂
xM
x、∂
xM
y、∂
xM
z、∂
yM
x、∂
yM
y、∂
yM
z、∂
ωM
x、∂
ωM
y、∂
ωM
zを使用せず、z方向偏微分更新式F
∂zを演算する。処理回路11は、ω方向偏微分値∂
ωM
x、y、z(t+Δt)を算出する場合、寄与項M
x、M
y、M
z、∂
ωM
x、∂
ωM
y、∂
ωM
z、M
0を使用し、非寄与項∂
xM
x、∂
xM
y、∂
xM
z、∂
yM
x、∂
yM
y、∂
yM
z、∂
zM
x、∂
zM
y、∂
zM
zを使用せず、ω方向偏微分更新式F
∂ωを演算する。
【0035】
上記の通り、第1実施形態に係る更新式FALLは、互いに分離された磁化更新式FMと空間偏微分更新式F∂と角周波数偏微分更新式F∂ωとを有する。処理回路11は、更新後の磁化値を算出するために、更新前の磁化値のみを参照して、磁化更新式FMを演算する。ここで、「参照する」とは、記憶装置15に記憶されている更新前の数値にアクセスして読み出すことを意味する。また、処理回路11は、算出対象方向での更新後の空間偏微分値を算出するために、更新前の磁化値及び算出対象方向での空間偏微分値のみを参照して、空間偏微分更新式F∂pを演算する。空間偏微分更新式F∂pは、互いに分離されたx方向偏微分更新式F∂x、y方向偏微分更新式F∂y及びz方向偏微分更新式F∂zを有する。処理回路11は、更新後のx方向偏微分値を算出するために、更新前の磁化値及びx方向偏微分値のみを参照して、x方向偏微分更新式F∂xを演算する。また、処理回路11は、更新後のy方向偏微分値を算出するために、更新前の磁化値及びy方向偏微分値のみを参照して、y方向偏微分更新式F∂yを演算する。また、処理回路11は、更新後のz方向偏微分値を算出するために、更新前の磁化値及びz方向偏微分値のみを参照して、z方向偏微分更新式F∂zを演算する。処理回路11は、更新後の角周波数方向偏微分値を算出するために、更新前の磁化値及び角周波数方向偏微分値のみを参照して、角周波数偏微分更新式F∂ωを演算する。
【0036】
このように互いに相互作用しない成分に係る更新式同士を分離することにより、算出対象成分に係る更新式を演算する際、非寄与項を参照する必要がなくなる。非寄与項を参照せず、寄与項を参照して、算出対象成分に係る更新式を演算することにより、
図3に示すような磁化ベクトルの更新式F
ALLを算出する場合に比して、更新式の計算時間や計算負荷を低減することが可能になる。
【0037】
次に、第1実施形態に係る磁気共鳴数値シミュレーションの処理手順について、実施例1と実施例2とに分けて説明する。
【0038】
[実施例1]
磁気共鳴の時間発展を表すブロッホ方程式は下記(1)式で表される。なお本実施形態において拡散(diffusion)項は考慮しないものとする。
【0039】
【0040】
Mは磁化ベクトル、Bは有効磁場ベクトル、γは磁気回転比である。T1は縦緩和時間、T2は横緩和時間である。上記ブロッホ方程式の各x、y、z成分を展開するとそれぞれ下記(2)、(3)及び(4)式で表される。(2)、(3)及び(4)式は、それぞれx方向、y方向及びz方向の磁化更新式に対応する。
【0041】
【0042】
上記の(2)、(3)及び(4)式のように、磁化値の計算式には、磁化に関する項とM0に関する項が含まれているが、空間偏微分に関する項が含まれていない。このように、磁化値を計算する際に空間偏微分値を用いる必要がないため、磁化更新式と空間偏微分更新式とを分離することができる。分離することにより、分離しない場合に比して、更新後の磁化値を計算する時間を低減することが可能である。
【0043】
次に、ブロッホ方程式の空間方向偏微分の式を求める。x、y、z方向、t方向の微分はいずれも微小時間内で連続とする。ただし、磁場を区分的定数とした結果tが不連続になった位置は無視する。また、1つのアイソクロマットに対応した微小ボクセルに対し、ケミカルシフトも含めて静磁場を一定と考える。p∈{x、y、z}としてMx(t)、My(t)及びMz(t)の空間偏微分はそれぞれ下記(5)、(6)及び(7)式で表される。
【0044】
【0045】
上記の(5)、(6)及び(7)式のように、算出対象方向pでの空間偏微分値の計算式には、当該方向pでの偏微分項が含まれているが、他の方向q(≠p)での偏微分項が含まれていない。例えば、(5)、(6)及び(7)式においてp=xとした場合、(5)、(6)及び(7)式において、算出対象方向xに関する項のみが存在し、非算出対象方向y及び/又はzを含む項は存在しない。すなわち、算出対象方向での空間偏微分値を計算する際に非算出対象方向での空間偏微分値を用いる必要がないため、算出対象方向毎に空間偏微分更新式を分離することができる。そのため、分離しない場合に比して、更新後の空間偏微分値を計算する時間を低減することが可能である。
【0046】
図6は、実施例1に係る磁気共鳴数値シミュレーションの処理手順を例示する図である。なお
図6の開始時点において計算対象のパルスシーケンスが既に設定されているものとする。本実施形態に使用するパルスシーケンスは、特に制限はなく、如何なる種類のパルスシーケンスにも適用可能である。以下、一例として、本実施形態に使用するパルスシーケンスは、スピンエコー法によるパルスシーケンスであるとする。なお、
図6に示す実施例では、角周波数方向偏微分については考慮しないものとする。
【0047】
図7は、スピンエコー法によるパルスシーケンスの一例を示す図である。
図7において、「RF」のタイムラインは、送信回路からの駆動信号に応じて駆動するRF送信コイルにより印加されるRFパルスのシーケンスを示す。「Gx」のタイムラインは、傾斜磁場電源からの駆動信号に応じて駆動するGxコイルにより印加されるリードアウト傾斜磁場パルスのシーケンスを示す。「Gy」のタイムラインは、傾斜磁場電源からの駆動信号に応じて駆動するGyコイルにより印加される位相エンコード傾斜磁場パルスのシーケンスを示す。「Gz」のタイムラインは傾斜磁場電源からの駆動信号に応じて駆動するGzコイルにより印加されるスライス選択傾斜磁場パルスのシーケンスを示している。
図7に示すように、パルスシーケンスは、RFパルスが印加されない期間である非印加期間41と印加される期間である印加期間42とに区分できる。
【0048】
図7に示すように、スピンエコー法では、90°パルスの印加と共に第1のスライス選択傾斜磁場パルスの印加が行われ、180°パルスの印加と共に第2のスライス選択傾斜磁場パルスの印加が行われ、所与の磁場勾配の位相エンコードパルスが印加される。90°パルスの印加からエコー時間の経過後に信号値のピークが来るように、図示しないエコー信号が発生する。エコー信号は、受信コイルにより受信され、受信されたアナログのエコー信号は、A/D変換器(ADC:Analog digital converter)によりデジタルのk空間データに変換される。k空間データは、A/D変換器の予測出力値の一例である。エコー信号の受信時において、リードアウト傾斜磁場パルスが印加される。90°パルスの印加からリードアウト傾斜磁場パルスの印加までの時間がTR(time of repetition)である。所与の位相エンコードステップ数に亘り上記パルスシーケンスが繰り返される。
【0049】
図6に示すように、処理回路11は、入力機能111の実現により、シーケンス断片を入力する(ステップS1)。シーケンス断片は、任意のルールで分割されたパルスシーケンスの一部分である。パルスシーケンスは、所定時間毎に分割されてもよいし、「RF」「Gx」「Gy」「Gz」等のパルス種毎に分割されてもよいし、これらの組合せ単位で分割されてもよい。
【0050】
ステップS1が行われると処理回路11は、数値計算機能112の実現により、磁化更新式及び空間偏微分更新式のパラメータ(以下、更新式パラメータ)を決定する(ステップS2)。ステップS2において処理回路11は、ステップS1において入力されたシーケンス断片を利用して更新式パラメータを決定する。更新式パラメータは、検査対象であるモデルに配置された全てのアイソクロマット毎に決定される。更新式パラメータとしては、更新式に含まれるT1値やT2値、B値等が挙げられる。
【0051】
ステップS2が行われると処理回路11は、入力機能111の実現により、更新前の磁化値M(t)、空間偏微分値∂pM(t)、熱平衡状態での磁化値M0を入力する(ステップS3)。初回の更新演算では、更新前のM(t)及び∂pM(t)は、任意の初期値が入力される。2回目以降の更新演算では、M(t)及び∂pM(t)については、前回の更新演算で得られたM(t+Δt)及び∂pM(t+Δt)が入力される。磁化値M0については任意の値が入力されればよい。更新前のM(t)及び∂pM(t)と磁化値M0とは、ステップS2以前に記憶装置15に記憶されているものとする。処理回路11は、記憶装置15から更新前のM(t)及び∂pM(t)と磁化値M0とを読み出して自身に入力することとなる。
【0052】
ステップS3が行われると処理回路11は、数値計算機能112の実現により、磁化値M(t)及びM0のみを参照して、磁化更新式(2)式、(3)式及び(4)式を演算し、更新後の磁化値M(t+Δt)を算出する(ステップS4)。この際、処理回路11は、空間偏微分値∂pM(t)を参照する必要はない。これにより磁化値M(t+Δt)の計算速度が向上する。算出された更新後の磁化値M(t+Δt)は記憶装置15に記憶される。磁化更新式はルンゲクッタ(Runge-kutta)法等を用いて演算することが可能である。
【0053】
ステップS4が行われると処理回路11は、数値計算機能112の実現により、磁化値M(t)及び∂pM(t)のみを参照して、空間偏微分更新式(5)式、(6)式及び(7)式を演算し、更新後の空間偏微分値∂pM(t+Δt)を算出する(ステップS5)。ステップS5において処理回路11は、算出対象方向pをx方向、y方向及びz方向で順番に切り替えつつ各方向pについて空間偏微分更新式(5)式、(6)式及び(7)式を演算して算出対象方向pの空間偏微分値∂pM(t+Δt)を算出する。この際、処理回路11は、非算出対象方向qの空間偏微分値∂qM(t)を参照する必要はない。これにより各空間偏微分値∂pM(t+Δt)の計算速度が向上する。算出された更新後の空間偏微分値∂pM(t+Δt)は記憶装置15に記憶される。空間偏微分更新式はルンゲクッタ法等を用いて演算することが可能である。
【0054】
ステップS3~S5は、検査対象モデルの全てのボクセルについて実行される。また処理回路11は、各ボクセルについて、ボクセル内の磁場が線形であるとの仮定のもと、空間偏微分値を用いてボクセル内の任意の位置の磁化値を計算する。
【0055】
ステップS5が行われると処理回路11は、数値計算機能112の実現により、更新演算を終了するか否かを判定する(ステップS6)。所定の更新終了条件を満たす場合に更新演算を終了すると判定される。更新終了条件は、例えば、更新回数が所定値に到達したこと等に設定されるとよい。更新演算を終了しないと判定された場合(ステップS6:NO)、処理回路11は、ステップS6において更新演算を終了すると判定されるまで、次のタイミングステップについてステップS3からS6までの処理を反復する。
【0056】
更新演算を終了すると判定された場合(ステップS6:YES)、処理回路11は、出力機能113の実現により、最終の反復回数における磁化値M(t+Δt)及び空間偏微分値∂pM(t+Δt)を出力する(ステップS7)。
【0057】
ステップS7が行われると処理回路11は、数値計算機能112の実現により、シミュレーション終了を終了するか否かを判定する(ステップS8)。所定のシミュレーション終了条件を満たす場合にシミュレーションを終了すると判定される。シミュレーション終了条件は、例えば、計算対象のパルスシーケンスに含まれる全てのシーケンス断片について処理が完了したこと等に設定されるとよい。シミュレーション終了条件を満たさないと判定された場合(ステップS8:NO)、処理回路11は、ステップS1に進み、入力機能111の実現により、次のシーケンス断片を入力する。そして処理回路11は、当該シーケンス断片についてステップS2~S8を実行し、シミュレーション終了条件を満たすと判定されるまで、ステップS1~S8を繰り返す。これにより所定時刻毎の、パルスシーケンスによる検査対象モデルに含まれるボクセル毎且つアイソクロマット毎の磁化ベクトルM(t)が得られることとなる。
【0058】
そしてシミュレーション終了条件を満たすと判定された場合(ステップS8:YES)、処理回路11は、数値計算機能112の実現により、シミュレーション目的に対応するシミュレーションデータを算出する(ステップS9)。シミュレーションデータとしては、磁化ベクトルM(t)やIQ信号、MR画像に設定されればよい。IQ信号は、ADCにより収集されるk空間データを意味する。IQ信号は、複数のアイソクロマットに対応する複数の磁化ベクトルM(T)の和ΣMのうちx成分ΣMXとy成分ΣMYとの組合せを意味する。MR画像は、IQ信号にフーリエ変換等の再構成演算を施すことにより生成される。
【0059】
ステップS9が行われると処理回路11は、出力機能113の実現により、ステップS9において出力されたシミュレーションデータを出力する(ステップS10)。処理回路11は、シミュレーションデータを通信機器12や表示機器13、記憶装置15等の任意の出力先に出力可能である。
【0060】
以上により、実施例1に係る磁気共鳴数値シミュレーションが終了する。
【0061】
[実施例2]
次に実施例2に係る磁気共鳴数値シミュレーションについて説明する。
【0062】
実施例2に係る磁化更新式と空間偏微分更新式と角周波数偏微分更新式とは、回転項と緩和項とを含むものとする。実施例2に係る処理回路11は、数値計算機能112の実現により、更新前の磁化値を参照して、磁化更新式のうちの回転項を演算して磁化回転項値を算出し、当該磁化回転項値に磁化更新式のうちの緩和項を適用して更新後の磁化値を算出する。同様に、処理回路11は、数値計算機能112の実現により、更新前の磁化値及び算出対象方向での偏微分値を参照して空間偏微分更新式及び/又は角周波数偏微分更新式のうちの回転項を演算して偏微分回転項値を算出し、当該偏微分回転項値に空間偏微分更新式のうちの緩和項を適用して更新後の算出対象方向での偏微分値を算出する。
【0063】
空間偏微分更新式は、互いに分離された、スライス選択傾斜磁場方向に対する直交方向の有効磁場ベクトル成分に依存する第1項と、スライス選択傾斜磁場方向の有効磁場ベクトル成分に依存する第2項と、前記有効磁場ベクトル成分に依存しない第3項とを有する。実施例2に係る処理回路11は、数値計算機能112の実現により、算出対象方向での更新後の空間偏微分値を算出するために、更新前の磁化値及び算出対象方向での空間偏微分値を参照して第1項のうちの回転項を演算して第1回転項値を算出し、更新前の磁化値及び算出対象方向での空間偏微分値を参照して第2項のうちの回転項を演算して第2回転項値を算出し、更新前の磁化値及び算出対象方向での空間偏微分値を参照して第3項のうちの回転項を演算して第3回転項値を算出する。そして処理回路11は、第1回転項値と第2回転項値と第3回転項値との加算値に、空間偏微分更新式のうちの緩和項を適用して算出対象方向での更新後の空間偏微分値を算出する。
【0064】
まず、実施例2に係る更新方法の1例について具体的に説明する。なお、以下で示すすべての微分方程式の解は、例えばニュートン法やルンゲクッタ法を用い、微小時間を単位として繰り返し更新する形でも算出可能であり、微分方程式に基づく更新方法を示したすべての式は解法の1例である。
【0065】
上記(5)、(6)及び(7)式に示すブロッホ方程式の空間偏微分に対して、微小時間について、変数分離を用いて近似的に更新する。
【0066】
Bx(t)及びBy(t)に依存する項、Bz(t)に依存する項、それ以外の項に分けて順に更新すると考えると、例えば、微小時間内でのMx成分の空間偏微分を表す(5)式は下記(8)、(9)及び(10)式に分離できる。なお、My成分、Mz成分に対する式も同様に生成できる。
【0067】
【0068】
空間的なRFパルスのゆらぎ∂Bx(t)/∂p、∂By(t)/∂pをゼロとみなせば、下記(11)式で表される。この微分方程式は回転をあらわし、ロドリゲス回転公式を用いて更新できる。My成分及びMz成分についても同様である。(8)式又は(11)式に基づく空間偏微分更新式は、Bx(t)及びBy(t)に依存する項であり、上記「スライス選択傾斜磁場方向に対する直交方向の有効磁場ベクトル成分に依存する第1項」の一例である。以下、当該空間微分更新式をBxy依存の空間偏微分更新式と呼ぶ。
【0069】
【0070】
(11)式は(2)式に対し緩和を無視したロドリゲス回転公式に基づく非特許文献1記載の更新式と同様の式により、∂Mx、∂My、∂Mzをまとめたベクトルに対して、磁場Bx、By、Bzに対応する3x3の回転行列を求め、それを乗ずることにより更新できる。
【0071】
M
x成分及びM
y成分に関する(9)式及び(10)式に基づく空間偏微分更新式は、微小時間については、(12)式で表される。なお、(12)式のB
z(t)バーは、微小時間Δt内において変動するB
z(t)を特定の固定値とみなす場合の値を意味する。M
z成分に関する(9)式及び(10)式に基づく空間偏微分更新式は、微小時間については、(13)式で表される。
【数6】
【0072】
ここでMxy=Mx+iMyとする。ただし、(8)式がない場合には、Bz(t)がx、y、z、ωに対する一次式で与えられる場合には微小時間でなくてもMxyに対する更新式が適用できる。また、Mzに対する更新式は微小時間でなくても適用できる。
【0073】
(12)式により表される空間偏微分更新式は、Bz(t)に依存する項であり、上記「スライス選択傾斜磁場方向の有効磁場ベクトル成分に依存する第2項」の一例である。以下、当該空間微分更新式をBz依存の空間偏微分更新式と呼ぶ。(13)式により表される空間偏微分更新式は、Bx(t)、By(t)、Bz(t)に依存しない項であり、上記「有効磁場ベクトル成分に依存しない第3項」の一例である。以下、当該空間微分更新式をB非依存の空間偏微分更新式と呼ぶ。
【0074】
磁化ベクトルの更新式を、ロドリゲス回転公式を用いて表現すると、下記(14)式で表すことが可能である。(14)式は、非特許文献2の(5)式に相当する。
【0075】
【0076】
(14)式の右辺における磁化ベクトルM(t)は、磁気共鳴数値シミュレーションにおける検査対象となるモデルに配置された複数の水素原子のうち、時刻tにおいて位置rにある領域に含まれるアイソクロマットの磁化ベクトルを表す。(14)式の右辺におけるRRFは、時間間隔Δtにおいてフリップ角αを生じさせるRFパルスの印加によるz軸及びx軸についての回転項を示している。すなわち、回転項RRFは、磁化ベクトルM(t)に対する回転の影響を示している。(14)式の右辺におけるRrelaxは、時間間隔Δtにおける磁化ベクトルM(t)に対する磁気緩和の影響を示す緩和項である。(14)式の右辺におけるRotz(θ)は、角度θに関するz軸についての回転項を示している。ここで、θgは、時間間隔Δtに亘る傾斜磁場の積分値に関連する角度である。また、θiは、時間間隔Δtに亘る静磁場の不均一性に伴う角度を示している。
【0077】
(14)式をx方向、y方向及びz方向各々で空間偏微分することにより、(5)、(6)及び(7)式にそれぞれ対応するx方向、y方向及びz方向各々での空間偏微分更新式(ロドリゲス回転公式版の空間偏微分更新式)を得ることが可能である。ロドリゲス回転公式版のx方向偏微分更新式、y方向偏微分更新式及びz方向偏微分更新式各々に変数分離を適用することにより、(8)式又は(11)式に基づくBxy依存の空間偏微分更新式のロドリゲス回転公式版、(12)式により表されるBz依存の空間偏微分更新式のロドリゲス回転公式版、(13)式により表されるB非依存の空間偏微分更新式のロドリゲス回転公式版を得ることが可能である。
【0078】
図8は、第1実施形態の実施例2に係る磁気共鳴数値シミュレーションの処理手順を例示する図である。
図8は、
図6のステップS3からステップS6までの間の処理を示している。ステップSA1からSA6までの各処理は、数値計算機能112により行われる。なお、
図8に示す実施例では、角周波数方向偏微分については考慮しないものとする。
【0079】
ステップS3が行われると処理回路11は、M(t)及びM0のみを参照して、磁化更新式の回転項Rotz(θg)、Rotz(θg)及びRRFを演算し、磁化回転項値を算出する(ステップSA1)。M(t)及びM0のみを参照することにより、磁化更新式の回転項Rotz(θg)、Rotz(θg)及びRRFの演算を効率良く行うことができる。
【0080】
ステップSA1が行われると処理回路11は、ステップSA1において算出された磁化回転項値に磁化更新式の緩和項Rrelaxを適用して更新後の磁化値M(t+Δt)を算出する(ステップSA2)。更新後の磁化値M(t+Δt)は記憶装置15に記憶される。
【0081】
ステップSA2が行われると処理回路11は、M(t)及び∂pM(t)のみを参照してBxy依存の空間偏微分更新式の回転項Rotz(θg)、Rotz(θg)及びRRFを演算し、第1回転項値を算出する(ステップSA3)。M(t)及び∂pM(t)のみを参照することにより、Bxy依存の空間偏微分更新式の回転項Rotz(θg)、Rotz(θg)及びRRFの演算を効率良く行うことができる。
【0082】
ステップSA3が行われると処理回路11は、M(t)及び∂pM(t)のみを参照してBz依存の空間偏微分更新式の回転項Rotz(θg)、Rotz(θg)及びRRFを演算し、第2回転項値を算出する(ステップSA4)。M(t)及び∂pM(t)のみを参照することにより、Bz依存の空間偏微分更新式の回転項Rotz(θg)、Rotz(θg)及びRRFの演算を効率良く行うことができる。なお、Bz(t)バーが未算出である場合、上記方法に従いBz(t)バーを算出した後に回転項Rotz(θg)、Rotz(θg)及びRRFの演算を行うと良い。
【0083】
ステップSA4が行われると処理回路11は、M(t)及び∂pM(t)のみを参照してB非依存の空間偏微分更新式の回転項Rotz(θg)、Rotz(θg)及びRRFを演算し、第3回転項値を算出する(ステップSA5)。M(t)及び∂pM(t)のみを参照することにより、B非依存の空間偏微分更新式の回転項Rotz(θg)、Rotz(θg)及びRRFの演算を効率良く行うことができる。
【0084】
ステップSA5が行われると処理回路11は、ステップSA3において算出された第1回転項値とステップSA4において算出された第2回転項値とステップSA4において算出された第3回転項値とを加算する(ステップSA6)。ステップSA6により第1回転項値と第2回転項値と第3回転項値との加算値が算出される。
【0085】
ステップSA6が行われると処理回路11は、ステップSA6で得られた加算値に偏微分更新式の緩和項Rrelaxを適用して更新後の空間偏微分値∂pM(t+Δt)を算出する(ステップSA7)。更新後の空間偏微分値∂pM(t+Δt)は記憶装置15に記憶される。
【0086】
ステップSA6が行われると、
図6に示すステップS6が実行される。
【0087】
上記の通り、実施例2によれば、ロドリゲス回転公式を使用して記述した更新式においても、磁化更新式と空間偏微分更新式と各周波数偏微分更新式とを分離し、非寄与項を使用せず寄与項を使用して効率良く磁化値と空間偏微分値とを計算することが可能になる。また、空間偏微分更新式においても算出対象方向毎に空間偏微分更新式を分離することできるので、非寄与項を使用せず寄与項を使用して効率良く各算出対象方向での空間偏微分値を計算することが可能になる。
【0088】
なお、ステップSA3、SA4及びSA5の処理順序はこれに限定されず、如何なる順番に行われてもよい。また、必ずしもBxy依存の空間偏微分更新式(第1項)、Bz依存の空間偏微分更新式(第2項)及びB非依存の空間偏微分更新式(第3項)の全てを演算する必要はなく、必要に応じて演算対象が適宜選択されればよい。例えば、処理回路11は、RFパルスの印加期間において、第1項、第2項及び第3項を演算し、RFパルスの非印加期間において、第2項及び第3項を演算してもよい。他の例として、処理回路11は、RFパルスの印加期間及び非印加期間の双方において、第1項、第2項及び第3項を演算してもよい。
【0089】
また、得られたx、y、z方向の偏微分を用いてADCサンプリングをシミュレートする場合は、例えば非特許文献2記載の手法にしたがい、単位直方体内に分子が一様に置かれているモデルを用い、M(t)、∂xM(t)、∂yM(t)を用いて角度(∂/∂p)φを非特許文献2の(16)式によって算出し、そのsinc関数の積分値を乗ずることで磁場の空間変動をサンプリング値に反映できる。また、ω方向の偏微分を用いてT2スター減衰をシミュレートする場合は、非特許文献2記載の手法(特定の周波数領域に対してのみ一様に分子が置かれている)を用いても良いし、例えば別の手法として、T2スター減衰が周波数に対するローレンツ分布にしたがった確率で分子が置かれるモデルを用い、ω方向の偏微分に対してexp{(-1/T2´)・(∂/∂ω)φ)}を乗じても良い。T2´は磁場不均一に起因するT2スター減衰(T2
*)とT2減衰の違いをあらわし、1/T2´=(1/T2
*)-(1/T2)で与えられる。
【0090】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る処理回路11は、磁気共鳴の時間発展を記述する更新式として結合遷移行列(combined transition matrix)を使用する。結合遷移行列は、複数の時間ステップ毎の磁化の時間発展と偏微分の時間発展とを記述する遷移行列T(t+Δtk-1)をK(K≧2)個組み合わせた行列である。kは1以上の自然数である。K個の遷移行列T(t)、T(t+Δt1)、・・・、T(t+ΔtK-1)を結合した結合遷移行列Tcombinedは、下記(15)式で表現できる。Δtkは、ktから(k+1)tまでの時間間隔を表す。
【0091】
【0092】
結合遷移行列Tcombinedを使用した磁化ベクトルM(t)の更新式は、下記(16)で表現できる。
【0093】
【0094】
図4等に示すように、結合遷移行列T
combinedは、磁化ベクトルの成分数の2乗個の要素を含み、多くの要素を含む。結合遷移行列T
combinedの個々の要素をT
a,bで表すと、結合遷移行列T
combinedは下記(17)式で表現できる。なお、(17)式では、磁化ベクトルの成分数を「n」とおくことにする。
【0095】
【0096】
結合遷移行列を使用する場合、1ボクセル毎に磁化ベクトルの成分数の2乗個の要素を有する遷移行列のK回の乗算を繰り返すこととなる。検査対象モデルが3次元の場合、ボクセルの個数は100万を超えることも多く、計算に伴う計算量やメモリ使用量等の計算負荷が著しい。
【0097】
第2実施形態に係る磁気共鳴数値シミュレーション装置は、第1実施形態に係る、寄与項のみを参照する方法を結合遷移行列に応用して、磁気共鳴数値シミュレーションの高速化を図る。以下、第2実施形態に係る磁気共鳴数値シミュレーション装置について説明する。なお以下の説明において、第1実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0098】
図9は、第2実施形態に係る磁気共鳴数値シミュレーション装置1の構成例を示す図である。
図9に示すように、磁気共鳴数値シミュレーション装置1の処理回路11は、入力機能111、数値計算機能112及び出力制御機能113の他、判定機能114及び行列算出機能115を実現する。各機能111~115は単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが物理シミュレーションプログラムを実行することにより各機能111~115を実現するものとしても構わない。また、各機能111~115は、磁気共鳴数値シミュレーションプログラムを構成するモジュールとして実装されてもよいし、個別のハードウェアとして実装されてもよい。
【0099】
数値計算機能112の実現により、処理回路11は、更新前の磁化値及び空間偏微分値を結合遷移行列に適用して更新後の磁化値及び空間偏微分値を算出する。結合遷移行列は、予め行列算出機能115により算出され、記憶装置15に記憶されているものとする。結合遷移行列の各行列要素の更新式パラメータがシーケンス断片毎に異なるので、結合遷移行列は、シーケンス断片毎に算出され記憶される。一例として、結合遷移行列は、シーケンス断片を表す識別子に関連付けて記憶されるとよい。
【0100】
判定機能114の実現により、処理回路11は、演算対象のシーケンス断片に対応する結合遷移行列が記憶装置15に記憶されているか否かを判定する。処理回路11は、記憶されていると判定された場合、演算対象のシーケンス断片に対応する結合遷移行列を記憶装置15から読み出して使用する。
【0101】
行列算出機能115の実現により、処理回路11は、既定の磁化値と複数の空間方向各々での空間偏微分値とを含む入力ベクトルを更新式に適用して得られた出力ベクトルに基づいて結合遷移行列の各行列要素を算出する。結合遷移行列は、記憶装置15に記憶される。一例として、処理回路11は、判定機能114により演算対象のシーケンス断片に対応する結合遷移行列が記憶装置15に記憶されていないと判定された場合、当該シーケンス断片に対応する結合遷移行列を算出して使用してもよい。なお、予めシーケンスがわかっている場合は、シミュレーションより前に結合遷移行列を予め計算しても良い。また、結合遷移行列の算出対象とするシーケンス断片は、例えばRF照射の有無を基準として切り出すことができるが、この基準に限らずどのような基準で切り出したシーケンスであっても良い。また、すべてのシーケンス断片に対して結合遷移行列の算出を行う必要はなく、一部のシーケンス断片についてのみ結合遷移行列を計算しても良い。
【0102】
以下、第2実施形態に磁気共鳴数値シミュレーション装置1について詳細に説明する。
【0103】
まず、結合遷移行列に含まれる行列要素について説明する。
【0104】
結合遷移行列のうちの磁気共鳴の時間発展の演算に寄与する第1行列要素は、非ゼロ値を有し、前記結合遷移行列のうちの磁気共鳴の時間発展の演算に寄与しない第2行列要素は、ゼロ値を有する。具体的には、第1行列要素は、磁化ベクトルのある成分と当該成分に相互作用する成分との組合せに対応する行列要素であり、第2行列要素は、磁化ベクトルのある成分と当該成分に相互作用しない成分との組合せに対応する行列要素である。
【0105】
より詳細には、Mx、My、Mzは、Mx、My、Mz及びM0以外の成分に相互作用しない。したがってMx、My、Mz各々について、非ゼロ値の行列要素は、Mx、My、Mz及びM0の4個である。∂pMは、∂qM(p≠q)及びM0に相互作用しない。したがって∂pMx、∂pMy、∂pMz各々について、非ゼロ値の行列要素は、Mx、My、Mz、∂pMx、∂pMy、∂pMzの6個である。また、M0は定数であるから、M0に関する行は全て除外できる。
【0106】
第2実施形態に係る処理回路11は、ゼロ値を有する第2行列要素の演算を実行しない。すなわち、ゼロ値を有する第2行列要素は結合遷移行列の計算式に組み込まれず、当該計算式は非ゼロ値を有する第1行列要素により構成される。これにより、ゼロ値を有する多くの第2行列要素の演算を省略できるので、計算速度が向上する。
【0107】
結合遷移行列は記憶装置15に記憶されるが、記憶装置15は、非ゼロ値を有する第1行列要素を記憶し、ゼロ値を有する第2行列要素を記憶しない。これにより結合遷移行列を保持するメモリ容量を削減することができる。
【0108】
次に、行列算出機能115による結合遷移行列の算出について説明する。
【0109】
拡散項がない場合、各∂pMは∂qM(p≠q)に対して独立である。結合遷移行列は、入力ベクトルに対応する出力ベクトルに基づいて算出できる。入力ベクトルは、既定の磁化値と複数の空間方向各々での空間偏微分値とを含む。出力ベクトルは、入力ベクトルに複合遷移行列を適用することにより得られる磁化ベクトルである。なお、M0は各シミュレーションにおいて不変である。
【0110】
入力ベクトルは、すべての独立な単位ベクトルを用意し、第1実施形態で説明した演算を実行すれば結合遷移行列が容易に得られる。あるいは、結合遷移行列はゼロの要素が多いため、それらの計算の一部を省略できる。例えばω方向を考慮しない場合、下記の7個のみを計算しても結合遷移行列を得ることができる。なお、ω方向を考慮する場合、V4~V6に∂ωに対応した項を追加すればよい。
【0111】
V1.Mx=1、残り0
V2.My=1、残り0
V3.Mz=1、残り0
V4.∂xMx=∂yMx=∂zMx=1、残り0
V5.∂xMy=∂yMy=∂zMy=1、残り0
V6.∂xMz=∂yMz=∂zMz=1、残り0
V7.全て0
【0112】
V1~V7各々について、第1実施形態で説明した演算を実行する。M0の更新式に対応する結合遷移行列の要素は既知である。ゼロの要素を利用すれば、V1、V2、V3、V7からMx、My、Mz、M0の更新式に対応する結合遷移行列の要素が得られる。同様に、ゼロの要素を利用し、各∂pの相互干渉がないことを利用すれば、V1、V2、V3、V4~V6の∂pに対応する項から∂pに対応する結合遷移行列の要素が得られる。
【0113】
ロドリゲス回転行列を用いる場合は、第1実施形態の実施例2の
図8に示すステップSA1、SA3及びSA4各々の計算について中間計算の一部を共有することにより、結合遷移行列を算出することが可能である。あるいは、行列を陽に書き下して算出することが可能である。初期値を利用してソフトウェア実装する場合は、アイソクロマットごとに7個の初期ベクトルに対するシミュレーションを一括実行することにより、結合遷移行列の算出に要する時間を短縮することが可能である。遷移行列の行列積を利用して結合遷移行列を求める場合は、各部分行列で乗算を分けることにより、結合遷移行列の算出に要する時間を短縮することが可能である。いずれの場合も、sin、cos、expの値を可能な限り共有することにより、結合遷移行列の算出に要する時間を短縮することが可能である。
【0114】
[実施例1]
図10は、第2実施形態の実施例1に係る磁気共鳴数値シミュレーションの処理手順を例示する図である。
図10は、
図6のステップS3からステップS5までの間の処理を示している。ステップSB1からSB2までの各処理は、数値計算機能112により行われる。
【0115】
図10に示すように、ステップS3が行われると処理回路11は、ステップS1において入力されたシーケンス断片に対応する結合遷移行列T
combined(t)を記憶装置15から読み出す(ステップSB1)。
【0116】
ステップSB1が行われると処理回路11は、M(t)、∂pM(t)及びM0を、ステップSB1において読み出した結合遷移行列Tcombined(t)に適用して、更新後のM(t+Δt)、∂pM(t+Δt)を算出する(ステップSB2)。ステップSB2において処理回路11は、ゼロ値の第2行列要素の演算は実行せず、非ゼロ値の第1行列要素を実行する。これにより結合遷移行列の計算時間を短縮することが可能である。
【0117】
ステップSB2が行われると、
図6に示すステップS6が実行される。
【0118】
[実施例2]
図11は、第2実施形態の実施例2に係る磁気共鳴数値シミュレーションの処理手順を例示する図である。
図11は、
図6のステップS3からステップS5までの間の処理を示している。
【0119】
図11に示すように、ステップS3が行われると処理回路11は、判定機能114の実現により、ステップS1において入力されたシーケンス断片に対応する結合遷移行列T
combined(t)が記憶装置15に記憶されているか否かを判定する(ステップSC1)。
【0120】
ステップSC1において結合遷移行列Tcombined(t)が記憶されていないと判定された場合(ステップSC1:NO)、処理回路11は、行列算出機能115の実現により、ステップS1において入力されたシーケンス断片に対応する結合遷移行列Tcombined(t)を算出する(ステップSC2)。
【0121】
ステップSC2が行われると処理回路11は、出力制御機能113の実現により、ステップSC2において算出された結合遷移行列Tcombined(t)を記憶装置15にキャッシュする(ステップSC3)。結合遷移行列Tcombined(t)は、ステップS1において入力されたシーケンス断片の識別子に関連付けて記憶される。
【0122】
ステップSC3が行われた場合又はステップSC1において結合遷移行列Tcombined(t)が記憶されていると判定された場合(ステップSC1:YES)、処理回路11は、ステップS1において入力されたシーケンス断片に対応する結合遷移行列Tcombined(t)を記憶装置15から読み出す(ステップSC4)。
【0123】
ステップSC4が行われると処理回路11は、数値計算機能112の実現により、M(t)、∂pM(t)及びM0を、ステップSB1において読み出した結合遷移行列Tcombined(t)に適用して、更新後のM(t+Δt)、∂pM(t+Δt)を算出する(ステップSC5)。
【0124】
ステップSC5が行われると、
図6に示すステップS6が実行される。
【0125】
実施例2によれば、未知のシーケンス断片が検出される毎に結合遷移行列Tcombined(t)を計算し、その結果を動的にキャッシュしながら再利用することで、磁気共鳴数値シミュレーションの高速化が達成される。
【0126】
(変形例)
上記の磁気共鳴数値シミュレーション装置1による処理は一例であり、本実施形態の要旨を変更しない限り種々の追加、変更及び/又は削除が可能である。
【0127】
[変形例1]
上記実施形態に係る処理回路11は、磁化の更新前の数値と偏微分の更新前の数値とのうちの寄与項に属する全ての更新前の数値を使用して、算出対象に関する更新式を演算し、算出対象の更新後の数値とを算出するものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。処理回路11は、寄与項に属する全ての更新前の数値を使用する必要はなくてもよく、寄与項に属する全ての更新前の数値のうちの一部の数値のみを使用してもよい。一例として、変形例1に係る処理回路11は、寄与項に属する更新前の数値のうちのゼロ又は略ゼロと見做せる数値を使用しなくてもよい。
【0128】
[変形例2]
変形例2に係る処理回路11は、A/D変換器(ADC)の予測出力値を算出する場合、スライス選択傾斜磁場方向(z方向)の磁化成分に対する算出対象方向での更新後の偏微分値を算出せず、スライス選択傾斜磁場方向以外の傾斜磁場方向の磁化成分に対する算出対象方向での更新後の偏微分値を算出する。例えば、変形例2に係る処理回路11は、A/D変換器(ADC)の予測出力値を算出する場合、∂pMzを算出せず、IQ信号に対応する∂pMx及び∂pMyのみを算出すればよい。∂pMzを算出する計算時間を削減し、A/D変換器(ADC)の予測出力値の算出時間を短縮することが可能になる。
【0129】
なお、処理回路11は、空間偏微分を用いた連続系のADC計算を実行してもよい。これは拡散項を用いた非特許文献2と同様の計算により実行可能である。
【0130】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、磁気共鳴数値シミュレーションの計算効率を向上することができる。
【0131】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1及び
図9における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0132】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0133】
1 磁気共鳴数値シミュレーション装置
11 処理回路
12 通信機器
13 表示機器
14 入力機器
15 記憶装置
41 非印加期間
42 印加期間
111 入力機能
112 数値計算機能
113 出力制御機能
114 判定機能
115 行列算出機能