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特開2025-43267超音波トランスデューサー、超音波処置具、および、超音波トランスデューサーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025043267
(43)【公開日】2025-03-28
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサー、超音波処置具、および、超音波トランスデューサーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20250321BHJP
【FI】
A61B17/32 510
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024116061
(22)【出願日】2024-07-19
(31)【優先権主張番号】63/583,014
(32)【優先日】2023-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新山 翼
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 麻里奈
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160JJ13
4C160JJ23
4C160JJ43
4C160JJ46
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気接点部分における機械強度の低減を抑制することができる超音波トランスデューサー、超音波処置具、および、超音波トランスデューサーの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る超音波トランスデューサーは、長手軸方向に沿って配列され、超音波振動を発生する複数の圧電素子と、圧電素子を収容して保持するハウジングと、ハウジングに組み付けられ、圧電素子へ電気信号を伝達する接点受け部と、を備え、接点受け部は、絶縁性を有する本体部と、ハウジングに設けられるリードと電気的に接続する配線パターンと、を有し、配線パターンは、三次元めっきによって形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸方向に沿って配列され、超音波振動を発生する複数の圧電素子と、
前記圧電素子を収容して保持するハウジングと、
前記ハウジングに組み付けられ、前記圧電素子へ電気信号を伝達する接点受け部と、
を備え、
前記接点受け部は、
絶縁性を有する本体部と、
前記ハウジングに設けられるリードと電気的に接続する配線パターンと、
を有し、
前記配線パターンは、三次元めっきによって形成されている、
超音波トランスデューサー。
【請求項2】
前記本体部は、
筒状をなす第1部材と、
前記第1部材の外表面の一部を覆う第2部材と、
を有し、
前記配線パターンは、前記第1部材と前記第2部材との間に設けられる、
請求項1に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項3】
前記本体部の外表面には、リング状をなし、前記配線パターンと接続する導電性の接点部材が設けられる、
請求項2に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項4】
前記本体部の外表面には、前記配線パターンと一体的に形成される導電性の接点部材が設けられる、
請求項2に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項5】
前記本体部は、筒状をなし、
前記配線パターンは、前記本体部の内周面に設けられる、
請求項1に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項6】
前記本体部の外表面には、リング状をなし、前記配線パターンと接続する導電性の接点部材が設けられる、
請求項5に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項7】
前記本体部の外表面には、前記配線パターンと一体的に形成される導電性の接点部材が設けられる、
請求項5に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項8】
前記配線パターンには、前記リードと接続する側と反対側の端部において、前記長手軸方向と直交する方向に貫通するスルーホールが形成される、
請求項5に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項9】
前記スルーホールは、前記配線パターン前記長手軸方向の一端側に位置する、
請求項8に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項10】
前記ハウジングには、前記長手軸方向の基端側から先端側に超音波振動を伝達する超音波振動子が設けられる、
請求項1に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項11】
前記本体部は、スーパーエンジニアリングプラスチックを用いて形成される、
請求項1に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項12】
超音波トランスデューサーと、
前記超音波トランスデューサーが接続するハンドピースと、
を備え、
前記超音波トランスデューサーは、
長手軸方向に沿って配列され、超音波振動を発生する複数の圧電素子と、
前記圧電素子を収容して保持するハウジングと、
前記ハウジングに組み付けられ、前記ハンドピースから前記圧電素子へ電気信号を伝達する接点受け部と、
を有し、
前記接点受け部は、
絶縁性を有する本体部と、
前記ハウジングに設けられるリードと電気的に接続する配線パターンと、
を有し、
前記配線パターンは、三次元めっきによって形成されている、
超音波処置具。
【請求項13】
長手軸方向に沿って配列され、超音波振動を発生する複数の圧電素子と、
前記圧電素子を収容して保持するハウジングと、
前記ハウジングに組み付けられ、前記圧電素子へ電気信号を伝達する接点受け部と、
を備える超音波トランスデューサーの製造方法であって、
前記接点受け部は、
絶縁性を有する本体部を成形する工程と、
前記本体部に対する三次元めっき処理によって、配線パターンを形成する工程と、
前記配線パターンと、前記ハウジングに設けられるリードと電気的に接続する工程と、
を含む超音波トランスデューサーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサー、超音波処置具、および、超音波トランスデューサーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織の処置の対象となる部位に対し、超音波等のエネルギを付与することによって対象部位を処置する超音波処置具が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の超音波処置具は、超音波振動を発生させる超音波トランスデューサーが、ハンドピースに対して着脱可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2011/0121827号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、超音波トランスデューサーにおける、ハンドピースへの接続部には、電気接点が設けられる。この電気接点部分は、導電性の金属部材と、絶縁性の樹脂部材とによって構成される。電気接点部分は、例えば、金型に金属部材を配設した後、金属部材の周囲に樹脂を注入して固化させることによって形成するインサート成形によって作製される。この際、成形時の残留応力と、金属部材および樹脂部材の線膨張係数が異なることとによって、機械的な強度が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電気接点部分における機械強度の低減を抑制することができる超音波トランスデューサー、超音波処置具、および、超音波トランスデューサーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる超音波トランスデューサーは、長手軸方向に沿って配列され、超音波振動を発生する複数の圧電素子と、前記圧電素子を収容して保持するハウジングと、前記ハウジングに組み付けられ、前記圧電素子へ電気信号を伝達する接点受け部と、を備え、前記接点受け部は、絶縁性を有する本体部と、前記ハウジングに設けられるリードと電気的に接続する配線パターンと、を有し、前記配線パターンは、三次元めっきによって形成されている。
【0007】
また、本発明にかかる超音波処置具は、超音波トランスデューサーと、前記超音波トランスデューサーが接続するハンドピースと、を備え、前記超音波トランスデューサーは、長手軸方向に沿って配列され、超音波振動を発生する複数の圧電素子と、前記圧電素子を収容して保持するハウジングと、前記ハウジングに組み付けられ、前記ハンドピースから前記圧電素子へ電気信号を伝達する接点受け部と、を有し、前記接点受け部は、絶縁性を有する本体部と、前記ハウジングに設けられるリードと電気的に接続する配線パターンと、を有し、前記配線パターンは、三次元めっきによって形成されている。
【0008】
また、本発明にかかる超音波トランスデューサーの製造方法は、長手軸方向に沿って配列され、超音波振動を発生する複数の圧電素子と、前記圧電素子を収容して保持するハウジングと、前記ハウジングに組み付けられ、前記圧電素子へ電気信号を伝達する接点受け部と、を備える超音波トランスデューサーの製造方法であって、前記接点受け部は、絶縁性を有する本体部を成形する工程と、前記本体部に対する三次元めっき処理によって、配線パターンを形成する工程と、前記配線パターンと、前記ハウジングに設けられるリードと電気的に接続する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、超音波トランスデューサーにおいて電気接点部分における機械強度の低減を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態1にかかる超音波処置システムの全体構成を模式的に示す図である。
図2図2は、図1の超音波処置システムで使用する超音波トランスデューサーの断面図である。
図3図3は、超音波トランスデューサーと接点ユニットとの接続を説明する図である。
図4図4は、超音波トランスデューサーが備える接点受け部の構成を示す斜視図である。
図5図5は、超音波トランスデューサーが備える接点受け部の構成を示す断面図である。
図6図6は、本発明の実施の形態1におけるパターン形成の方法を説明するための図である。
図7図7は、本発明の実施の形態2にかかる超音波トランスデューサーが備える接点受け部の構成を示す断面図である。
図8図8は、本発明の実施の形態2における接点受け部の製造方法を説明するための図(その1)である。
図9図9は、本発明の実施の形態2における接点受け部の製造方法を説明するための図(その2)である。
図10図10は、本発明の実施の形態2における接点受け部の製造方法を説明するための図(その3)である。
図11図11は、本発明の実施の形態3にかかる超音波トランスデューサーが備える接点受け部の一部の構成を示す部分断面図である。
図12図12は、本発明の実施の形態4にかかる超音波トランスデューサーが備える接点受け部の一部の構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)として、超音波トランスデューサーを備えた超音波処置システムについて説明する。また、この実施の形態により、この発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。さらにまた、図面は、模式的なものであり、各部材の厚みと幅との関係、各部材の比率等は、現実と異なることに留意する必要がある。また、図面の相互間においても、互いの比率が異なる部分が含まれている。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる超音波処置システム1の全体構成を模式的に示す図である。以下では、説明の便宜上、シース10の中心軸Axに沿う一方側を先端側Ar1と記載し、他方側を基端側Ar2と記載する。超音波処置システム1は、生体組織における処置の対象となる部位(以下、対象部位と記載)に対して処置エネルギを付与することによって、当該対象部位を処置する。本実施の形態1では、処置エネルギとして、超音波エネルギに加えて、高周波エネルギを採用しているが、超音波エネルギのみを採用するシステムであってもよい。この超音波処置システム1は、図1に示すように、超音波処置具2と、制御装置3とを備える。
【0013】
超音波処置具2は、例えば、腹壁を通した状態で対象とする部位を処置する医療用処置具である。超音波処置具2は、ハンドピース4と、超音波トランスデューサー5と、を備える。
【0014】
ハンドピース4は、保持ケース6と、可動ハンドル7と、第1のスイッチ8aと、第2のスイッチ8bと、一対の第3のスイッチ8cと、回転ノブ9と、シース10と、ジョー11と、超音波プローブ12と、ケーブルCAとを備える。
保持ケース6は、超音波処置具2全体を支持する。保持ケース6は、中心軸Axと同軸となる略円筒形状の保持ケース本体6aと、保持ケース本体6aから下方側に延在し、術者等の操作者によって把持される固定ハンドル6bとを備える。
【0015】
可動ハンドル7は、術者等の操作者による閉操作および開操作をそれぞれ受け付ける。可動ハンドル7は、術者等の操作者による閉操作を受け付けた場合には、固定ハンドル6bに近接する方向に移動する。一方、可動ハンドル7に対する開操作を受け付けた場合には、当該可動ハンドル7は、固定ハンドル6bから離間する方向に移動する。
【0016】
第1、第2のスイッチ8a、8bは、固定ハンドル6bにおける先端側Ar1の側面から外部に露出した状態でそれぞれ設けられている。第1のスイッチ8aは、術者等の操作者による第1のエネルギ出力モードの操作を受け付ける。第2のスイッチ8bは、術者等の操作者による第2のエネルギ出力モードの設定操作を受け付ける。第2のエネルギ出力モードは、第1のエネルギ出力モードとは異なるエネルギ出力モードである。
ここで、第1のエネルギ出力モードの例としては、超音波エネルギと高周波エネルギを付与することで対象部位の凝固・切開を行うエネルギ出力モードである。また、第2のエネルギ出力モードの例としては、高周波エネルギを付与することで対象部位の凝固を行うエネルギ出力モードである。
【0017】
一対の第3のスイッチ8cは、固定ハンドル6bの外部に露出した状態で紙面手前側と後ろ側(不図示)に設けられている。一対の第3のスイッチ8cは、術者等の操作者による第3のエネルギ出力モードの操作を受け付ける。ここで、第3のエネルギ出力モードの例としては、超音波エネルギを付与することで対象部位の凝固・切開を行うエネルギ出力モード等である。
【0018】
回転ノブ9は、中心軸Axと同軸となる略円筒形状を有し、保持ケース本体6aの先端側Ar1に設けられている。そして、回転ノブ9は、術者等の操作者による回転操作を受け付ける。当該回転操作により、回転ノブ9は、保持ケース本体6aに対して、中心軸Axを中心として回転する。また、回転ノブ9の回転により、ジョー11および超音波プローブ12が中心軸Axを中心として回転する。
シース10は、全体略円筒形状を有する。そして、シース10は、基端側Ar2の端部が保持ケース本体6aに対して取り付けられている。
【0019】
ジョー11は、超音波プローブ12における先端側Ar1の端部との間で対象部位を把持する。なお、上述した保持ケース本体6aおよびシース10の内部には、術者による可動ハンドル7への開閉操作に応じて、超音波プローブ12における先端側Ar1の端部に対してジョー11を開閉させる開閉機構(図示略)が設けられている。
【0020】
超音波プローブ12は、導電性材料によって構成され、中心軸Axに沿って直線状に延在する長尺形状を有する。また、超音波プローブ12は、先端側Ar1の端部が外部に突出した状態でシース10の内部に挿通される。この際、超音波プローブ12の基端側Ar2の端部は、後述する超音波トランスデューサー5に機械的に接続する。すなわち、超音波トランスデューサー5は、術者等の操作者による回転ノブ9への回転操作に応じて、超音波プローブ12とともに、中心軸Axを中心として回転する。そして、超音波プローブ12は、超音波トランスデューサー5が発生させた超音波振動を基端側Ar2の端部から先端側Ar1の端部まで伝達する。本実施の形態では、当該超音波振動は、中心軸Axに沿う方向に振動する縦振動である。
【0021】
ケーブルCAは、制御装置3に対して着脱自在に接続する。すなわち、ケーブルCAは、制御装置3と電気的に接続する。
【0022】
図2は、図1の超音波処置システム1で使用する超音波トランスデューサー5の断面図である。図3は、超音波トランスデューサー5と接点ユニットとの接続を説明する図である。
【0023】
超音波トランスデューサー5は、超音波振動子51と、格納部52と、ホルダ部53と、接点受け部54と、ケーシング部55と、を備える。
【0024】
超音波振動子51は、制御装置3による制御のもと、超音波振動を発生させる。本実施の形態1では、超音波振動子51は、BLT(ボルト締めランジュバン型振動子)によって構成されている。この超音波振動子51は、振動子本体511と、フロントマス512と、バックマス513とを備える。
【0025】
振動子本体511は、複数の圧電素子514を備える。複数の圧電素子514は、中央に開口(図示略)を有する円板形状をそれぞれ有し、中心軸Axに沿って積層されている。そして、複数の圧電素子514は、電極板(図示略)に供給された制御信号に応じて、中心軸Axに沿う積層方向に電位差が生じることによって、当該積層方向に沿って膨張および収縮を交互に繰り返す。これによって、超音波振動子51は、当該積層方向を振動方向とする縦振動の超音波振動を発生させる。
【0026】
フロントマス512は、導電性材料によって構成され、中心軸Axに沿って直線状に延在する長尺形状を有する。このフロントマス512は、素子装着部515と、断面積変化部516と、フランジ部517と、プローブ装着部518を備える。
素子装着部515は、中心軸Axに沿って直線状に延在するボルトであり、図示しない複数の電極板の各開口、および複数の圧電素子514の各開口(図示略)にそれぞれ挿通される。そして、素子装着部515における基端側Ar2の端部には、導電性材料によって構成されたナットであるバックマス513が取り付けられる。
【0027】
断面積変化部516は、素子装着部515における先端側Ar1の端部に設けられ、超音波振動の振幅を増幅する部分である。また、断面積変化部516は、基端側Ar2の端部が素子装着部515よりも径寸法が大きく設定され、先端側Ar1の端部が先端側Ar1に向かうにしたがって断面積が減少する円錐台形状を有する。すなわち、複数の圧電素子514は、素子装着部515が中心軸Axに沿って貫通した状態で、断面積変化部516とバックマス513との間に挟持されることにより、略円柱形状を有した状態で一体に締結されている。
【0028】
フランジ部517は、断面積変化部516における先端側Ar1の端部に設けられ、断面積変化部516よりも径寸法が大きく設定されている。フランジ部517は、後述する格納部52の凸部521と、ホルダ部53に挟まれて固定されている。フランジ部517とホルダ部53との間にはシールリング56が配設されている。格納部52およびホルダ部53によるフランジ部517の固定により、超音波振動子51の軸方向の位置が固定される。
【0029】
プローブ装着部518は、フランジ部517における先端側Ar1の端部に設けられ、中心軸Axに沿って直線状に延在している。
【0030】
格納部52は、絶縁体である樹脂材料からなり、円筒状をなしており、超音波振動子51を格納する。
ケーシング部55は、絶縁体である樹脂材料からなり、筒状をなしており、格納部52の外側に外装されているハウジングである。ケーシング部55は、筒状の先端側Ar1に位置する第1ケーシング部551と、筒状かつ有底で基端側Ar2に位置する第2ケーシング部552とからなる。
格納部52の基端側Ar2の端部522は、ケーシング部55の第2ケーシング部552の内壁に当て付けられている。
【0031】
ホルダ部53は、絶縁体である樹脂材料からなり、筒状をなしており、ホルダ部53の基端側Ar2は、格納部52の先端側Ar1に内挿されている。また、ホルダ部53の先端側Ar1は、後述する接点受け部54の基端側Ar2に内挿されている。
【0032】
図4は、超音波トランスデューサーが備える接点受け部の構成を示す斜視図である。図5は、超音波トランスデューサーが備える接点受け部の構成を示す断面図である。接点受け部54は、円筒状をなしており、先端側Ar1から基端側Ar2に外径が階段状に大きくなる本体部541を有する。本体部541は、絶縁体であり、例えば樹脂材料からなる。
【0033】
接点受け部54は、ケーシング部55に組付けられている。具体的には、接点受け部54の基端側Ar2は、ケーシング部55に内挿されている。また、接点受け部54の基端側Ar2には、格納部52の先端側Ar1が内挿され、接点受け部54の内周の段差部546と、当て付けられる格納部52の先端側Ar1との間にはゴム部材57が配設されている。さらに、接点受け部54の基端側Ar2には、超音波振動子51に電力や制御信号を伝達するケーブル70が接続されている。
【0034】
本体部541の各階段部には、第1の接点部材542、第2の接点部材543、第3の接点部材544、および第4の接点部材545が形成されている。第1の接点部材542、第2の接点部材543、第3の接点部材544、および第4の接点部材545は、リング状をなし、それぞれ導電性材料から構成され、各階段部の周方向の全周にわたって設けられている。また、各接点部材は、基端側Ar2に延びるパターンが形成される。このパターンは、導電性材料によって形成される。具体的には、第1の接点部材542には、第1のパターン542aが接続される。第1のパターン542aは、当該第1のパターン542aの第1の接点部材542側と反対側の端部542bにおいて、ケーブル70から延出するリード71に接続する。また、第2の接点部材543には第2のパターン543aが接続され、第2のパターン543aは、当該第2のパターン543aの第2の接点部材543側と反対側の端部543bにおいてケーブル70(リード71)に接続する。第3の接点部材544には第3のパターン544aが接続され、第3のパターン544aは、当該第3のパターン544aの第3の接点部材544側と反対側の端部544bにおいてケーブル70(リード71)に接続する。第4の接点部材545には第4のパターン545aが接続され、第4のパターン545aは、当該第4のパターン545aの第4の接点部材545側と反対側の端部545bにおいてケーブル70(リード71)に接続する。各パターンは、配線パターンに相当する。
【0035】
本体部541は、第1部材541aと、第2部材541bとを有する。第1部材541aおよび第2部材541bは、それぞれ樹脂材料を用いて形成される。樹脂材料としては、例えば、PEEK(Poly Ether Ether Ketone)や、PEKK(Poly Ether Ketone Ketone)、PPSU(Poly Phenyl Sulfone)等のスーパーエンジニアリングプラスチックが用いられる。
【0036】
本体部541において、第2部材541bは、第1部材541aの外表面を覆うとともに、接点部材(第1の接点部材542、第2の接点部材543、第3の接点部材544、および第4の接点部材545)を露出させる。
【0037】
接点受け部54は、本体部541の成形、および本体部541に対するパターン形成によって作製される。ここで、接点受け部54の作製では、本体部541を成形する工程と、本体部541に対する三次元めっき処理によって、パターンを形成する工程とを含む。そして、作製された接点受け部54のパターン(例えば端部542b)と、ケーシング部55に設けられるリード71とを電気的に接続する工程によって、接点受け部54とケーシング部55とが電気的に接続され、超音波トランスデューサー5が作製される。
【0038】
具体的には、接点受け部54は、第1部材541aを成形(一次成形)後、第1部材541aの表面にパターン形成を行って、その後、第2部材541bを成形(二次成形)し、接点部材を組み付けることによって作製される。
【0039】
図6は、本発明の実施の形態1におけるパターン形成の方法を説明するための図である。パターン形成では、例えば、樹脂部材100(図6の(a)参照)の側面に対し、パターン形成位置L101、L102にレーザーを照射する(図6の(b)参照)。その後、無電解めっきによって、レーザー照射位置にパターンL111、L112が形成される(図6の(c)参照)。このように、樹脂成形体に対して三次元的にパターンを形成する三次元めっき処理が実施される。このパターン形成方法を用いて、三次元めっきとして、第1のパターン542a~第4のパターン545aを形成することができる。パターンの厚さは、例えば数μm程度である。このパターン形成方法によって作製された形成物は、三次元形状の樹脂成型品の表面に電極回路が形成されたものとして、MID(Molded Interconnect Device)と言われている。
【0040】
パターン形成後、本体部541の表面に、第1の接点部材542、第2の接点部材543、第3の接点部材544および第4の接点部材545を組み付けることによって、第1の接点部材542、第2の接点部材543、第3の接点部材544および第4の接点部材545を本体部541に組み付ける。
【0041】
図2および図3に戻り、保持ケース本体6aの内部には、接点ユニット20が設けられ、超音波トランスデューサー5を保持ケース本体6aに接続した際には、超音波トランスデューサー5における接点受け部54が接点ユニット20の内部に挿通される。
接点ユニット20内に超音波トランスデューサー5が挿通されると、接点ユニット20の第1の接点部材21、第2の接点部材22、第3の接点部材23、および第4の接点部材24と、接点受け部54の第1の接点部材542、第2の接点部材543、第3の接点部材544、および第4の接点部材545とがそれぞれ接続される。そして、第1のスイッチ8a、第2のスイッチ8bまたは第3のスイッチ8cの操作により、超音波エネルギまたは高周波エネルギが出力される。
【0042】
接点受け部54の基端側Ar2にはホルダ部53の先端側Ar1が内挿されているが、接点受け部54とホルダ部53との間には、Oリング58が配設されている。
【0043】
以上説明した実施の形態1では、接点受け部54をMIDとして作製するようにしたので、従来のインサート成形と比して、成形時の残留応力を低減させることができる。本実施の形態1によれば、残留応力の低減によって冷却ひずみ、熱ひずみ、インサートひずみ等のひずみによる影響が低減され、超音波トランスデューサーにおいて電気接点部分における機械強度の低減を抑制することができる。
【0044】
また、本実施の形態1によれば、接点受け部54をMID化することによって、インサート成形と比して配線パターンの厚さを薄くすることができ、その結果、接点受け部54を小型化することができる。この小型化によって、設計の自由度を向上させることができる。
【0045】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について、図7図10を参照して説明する。図7は、本発明の実施の形態2にかかる超音波トランスデューサーが備える接点受け部の構成を示す断面図である。本実施の形態2にかかる超音波トランスデューサーは、各接点部材もMIDとする。以下、実施の形態1と同様の構成要素には、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0046】
本実施の形態2にかかる接点受け部54Aは、絶縁体である樹脂材料からなり、円筒状をなしており、先端側Ar1から基端側Ar2に外径が階段状に大きくなる本体部541を有する。
【0047】
本体部541の各階段部には、第1の接点部材542A、第2の接点部材543A、第3の接点部材544A、および第4の接点部材545Aが形成されている。第1の接点部材542A、第2の接点部材543A、第3の接点部材544A、および第4の接点部材545Aは、それぞれ導電性材料から構成され、各階段部の周方向の全周にわたって設けられている。また、各接点部材は、基端側Ar2に延びるパターン(第1のパターン542a~第4のパターン545a)がそれぞれ形成される。
【0048】
第1の接点部材542A、第2の接点部材543A、第3の接点部材544Aおよび第4の接点部材545A、ならびに、各パターンは、上述したパターン形成方法(図6参照)によって形成される。図8図10は、本発明の実施の形態2における接点受け部の製造方法を説明するための図である。まず、第1部材541aのパターン形成位置にレーザーを照射し、無電解めっきによって、レーザー照射位置にパターン(第1のパターン542a~第4のパターン545a)を形成する(図8参照)。
【0049】
その後、第1部材541aの表面に、第2部材541bを成形する(図9参照)。なお、図9の(b)とは、図9の(a)に示す成形体を反転させた図である。
この際、第2部材541bでは、第1の接点部材542A、第2の接点部材543A、第3の接点部材544A、および第4の接点部材545Aを形成する位置において、パターンが露出している。
【0050】
第2部材541b成形後、接点部材形成位置にレーザーを照射し、無電解めっきによって、レーザー照射位置に第1の接点部材542A、第2の接点部材543A、第3の接点部材544A、および第4の接点部材545Aを形成する(図10参照)。
【0051】
以上説明した実施の形態2では、接点受け部54AをMIDとして作製するようにしたので、実施の形態1と同様に、超音波トランスデューサーにおいて電気接点部分における機械強度の低減を抑制することができる。
【0052】
さらに、本実施の形態2では、接点受け部54Aにおいて、パターンのほか、接点部材もMIDとして作製するようにしたので、接点部材におけるひずみも低減され、電気接点部分における機械強度の低減を一層抑制することができる。
【0053】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について、図11を参照して説明する。図11は、本発明の実施の形態3にかかる超音波トランスデューサーが備える接点受け部の一部の構成を示す部分断面図である。本実施の形態3にかかる超音波トランスデューサーは、接点受け部におけるパターンの形成位置が実施の形態1と異なる。以下、実施の形態1、2と同様の構成要素には、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0054】
本実施の形態3にかかる接点受け部54Bは、絶縁体である樹脂材料からなり、円筒状をなしており、先端側Ar1から基端側Ar2に外径が階段状に大きくなる本体部541Aを有する。
【0055】
本体部541Aの各階段部には、第1の接点部材542A、第2の接点部材543A、第3の接点部材544A、および第4の接点部材545Aが形成されている。また、各接点部材は、基端側Ar2に延びるパターンがそれぞれ形成される。図11では、第1の接点部材542Aに接続するパターン542cのみ図示している。以下、パターン542cを例に説明するが、第2の接点部材543A、第3の接点部材544A、および第4の接点部材545Aに接続する各パターンも同様である。
【0056】
パターン542cは、第1の接点部材542Aから本体部541Aの径方向内周面側に延びた後、本体部541Aの内周面を経由して本体部541Aの基端側から延出する。
また、第1の接点部材542Aおよびパターン542cには、径方向に貫通するスルーホール542dが形成される。
なお、スルーホール542dの形成位置は、図11に図示する位置、具体的には、長手軸方向の基端側Ar2の位置に限らず、先端側Ar1の位置であってもよいし、パターン542cの端部(端面)における長手軸方向の中央部であってもよい。また、スルーホール542dが形成されない構成としてもよい。
【0057】
第1の接点部材542A、第2の接点部材543A、第3の接点部材544Aおよび第4の接点部材545A、ならびに、各パターンは、本体部541Aに対して、上述したパターン形成方法(図6参照)によって形成される。具体的には、本体部541Aの表面(孔を含む)において接点部材およびパターン形成位置にレーザーを照射し、無電解めっきによって、レーザー照射位置に第1の接点部材542A、第2の接点部材543A、第3の接点部材544Aおよび第4の接点部材545A、ならびに、パターンを形成する。このため、接点部材とパターンとは、一体的に形成される。
【0058】
以上説明した実施の形態3では、接点受け部54BをMIDとして作製するようにしたので、実施の形態1と同様に、超音波トランスデューサーにおいて電気接点部分における機械強度の低減を抑制することができる。
【0059】
また、本実施の形態3では、接点受け部54Bにおいて、パターンのほか、接点部材もMIDとして作製するようにしたので、接点部材におけるひずみも低減され、電気接点部分における機械強度の低減を一層抑制することができる。
【0060】
さらに、本実施の形態3では、本体部541Aを一つの部材として成形し、パターンを本体部541Aの内周面に沿わせるようにしたので、二つの部材によって本体部を構成する実施の形態1と比して、ひずみをさらに低減し、電気接点部分における機械強度の低減を一層抑制することができる。
【0061】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について、図12を参照して説明する。図12は、本発明の実施の形態4にかかる超音波トランスデューサーが備える接点受け部の一部の構成を示す部分断面図である。本実施の形態4にかかる超音波トランスデューサーは、接点受け部におけるパターンの形成位置が実施の形態1と異なる。以下、実施の形態1~3と同様の構成要素には、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0062】
本実施の形態4にかかる接点受け部54Cは、絶縁体である樹脂材料からなり、円筒状をなしており、先端側Ar1から基端側Ar2に外径が階段状に大きくなる本体部541Aを有する。
【0063】
本体部541Aの各階段部には、第1の接点部材542、第2の接点部材543、第3の接点部材544、および第4の接点部材545が形成されている。また、各接点部材は、基端側Ar2に延びるパターンがそれぞれ形成される。図12では、第1の接点部材542に接続するパターン542cのみ図示している。以下、パターン542cを例に説明するが、第2の接点部材543、第3の接点部材544、および第4の接点部材545に接続する各パターンも同様である。
【0064】
パターン542cは、第1の接点部材542から本体部541Aの径方向内周面側に延びた後、本体部541Aの内周面を経由して本体部541Aの基端側から延出する。
また、パターン542cには、径方向に貫通するスルーホール542eが形成される。
なお、スルーホール542eの形成位置は、図12に図示する位置に限らない。また、スルーホール542eが形成されない構成としてもよい。
【0065】
各パターンは、本体部541Aに対して、上述したパターン形成方法(図6参照)によって形成される。具体的には、本体部541Aの表面(孔を含む)においてパターン形成位置にレーザーを照射し、無電解めっきによって、レーザー照射位置に各パターンを形成する。
【0066】
その後、本体部541Aの表面に、第1の接点部材542、第2の接点部材543、第3の接点部材544および第4の接点部材545を組み付けることによって、第1の接点部材542、第2の接点部材543、第3の接点部材544および第4の接点部材545を本体部541Aに組み付ける。
【0067】
以上説明した実施の形態4では、接点受け部54CをMIDとして作製するようにしたので、実施の形態1と同様に、超音波トランスデューサーにおいて電気接点部分における機械強度の低減を抑制することができる。
【0068】
また、本実施の形態4では、本体部541Aを一つの部材として成形し、パターンを本体部541Aの内周面に沿わせるようにしたので、二つの部材によって本体部を構成する実施の形態1と比して、ひずみをさらに低減し、電気接点部分における機械強度の低減を一層抑制することができる。
【0069】
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。実施の形態1~4におけるパターン形成方法(MID)は一例であり、樹脂成形体に対して三次元的にパターンを形成することができれば、他の公知の方法を採用することができる。
【0070】
以上のように、本発明にかかる超音波トランスデューサー、超音波処置具、および、超音波トランスデューサーの製造方法は、電気接点部分における機械強度の低減を抑制するのに有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 超音波処置システム
2 超音波処置具
3 制御装置
4 ハンドピース
5 超音波トランスデューサー
6 保持ケース
7 可動ハンドル
8a 第1のスイッチ
8b 第2のスイッチ
8c 第3のスイッチ
9 回転ノブ
10 シース
11 ジョー
12 超音波プローブ
51 超音波振動子
52 格納部
53 ホルダ部
54、54A~54C 接点受け部
55 ケーシング部
56 シールリング
57 ゴム部材
58 Oリング
70 ケーブル
71 リード
511 振動子本体
512 フロントマス
513 バックマス
517 フランジ部
541、541A 本体部
541a 第1部材
541b 第2部材
542、542A 第1の接点部材
542a 第1のパターン
542c パターン
542d、542e スルーホール
543、543A 第2の接点部材
543a 第2のパターン
544、544A 第3の接点部材
544a 第3のパターン
545、545A 第4の接点部材
545a 第4のパターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12