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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025043362
(43)【公開日】2025-03-31
(54)【発明の名称】リチウム電池負極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1395 20100101AFI20250324BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20250324BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20250324BHJP
【FI】
H01M4/1395
H01M4/134
H01M4/66 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023208589
(22)【出願日】2023-12-11
(31)【優先権主張番号】112135560
(32)【優先日】2023-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】王 俐▲ティン▼
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC01
5H017EE01
5H017HH01
5H017HH03
5H050AA07
5H050AA15
5H050BA16
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA07
5H050DA09
5H050EA15
5H050FA04
5H050GA24
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA07
5H050HA10
5H050HA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リチウム電池負極の製造方法を提供する。
【解決手段】製造方法は、以下を含む。銅箔を提供する。電気めっきプロセスを実行して、銅箔上にリチウム蒸着層を形成する。電気めっきプロセスで使用される電解液は、有機溶媒と、フッ素含有リチウム塩と、を含む。有機溶媒は、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、又はそれらの組み合わせを含み、フッ素含有リチウム塩は、LiPF、LiFSI、LiTF、LiDFOB、LiTFSI、又はそれらの組み合わせを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔を提供することと、
電気めっきプロセスを実行して、前記銅箔上にリチウム蒸着層を形成することであって、前記電気めっきプロセスで使用される電解液は、有機溶媒及びフッ素含有リチウム塩を含み、前記有機溶媒は、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、又はそれらの組み合わせを含み、前記フッ素含有リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、又はそれらの組み合わせを含むことと、
を含む、リチウム電池負極の製造方法。
【請求項2】
前記前記電解液は、少なくとも前記エステル系溶媒を含み、その体積比が50%以上を占める、請求項1に記載のリチウム電池負極の製造方法。
【請求項3】
前記電解液における前記フッ素含有リチウム塩の使用割合は、0.1mol/L~5mol/Lの間である、請求項1に記載のリチウム電池負極の製造方法。
【請求項4】
前記電気めっきプロセスにおける電流密度は、1mA/cm~5mA/cmの間である、請求項1に記載のリチウム電池負極の製造方法。
【請求項5】
前記リチウム蒸着層の厚さは、1ミクロン~20ミクロンの間である、請求項1に記載のリチウム電池負極の製造方法。
【請求項6】
前記電解液は、添加剤をさらに含み、前記添加剤は、硝酸リチウムを含む、請求項1に記載のリチウム電池負極の製造方法。
【請求項7】
前記電解液における前記添加剤の使用割合は、1重量%~10重量%の間である、請求項6に記載のリチウム電池負極の製造方法。
【請求項8】
前記有機溶媒は、前記エステル系溶媒と前記エーテル系溶媒の組み合わせから選択される、請求項1に記載のリチウム電池負極の製造方法。
【請求項9】
前記エステル系溶媒と前記エーテル系溶媒の体積比は、3:1~1:1の間である、請求項8に記載のリチウム電池負極の製造方法。
【請求項10】
前記リチウム蒸着層の表面は、フッ素含有化合物を含む、請求項1に記載のリチウム電池負極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池負極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池には、負極としてリチウム金属が使用されており、リチウム電池は、高い理論容量(2047mAh/cm~3860mAh/cmなど)や、低い還元電位(3.04Vなど)を有する。標準的な水素電極(SHE)と比較して、軽量でイオン半径が小さいなどの特徴があり、高エネルギー密度電池の開発に適していると考えられている。しかしながら、依然として克服しなければならない課題もある。
【0003】
例えば、純粋なリチウム金属を負極として使用すると、充放電中にリチウムデンドライトが発生しやすくなる。電池の使用時間が長くなると、絶縁膜が破れて正極と接触し、短絡や熱暴走などの問題が発生し、これによりリチウム電池の安定性やサイクル寿命が低下する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、製造されたリチウム電池負極が実装されたリチウム電池の安定性及びサイクル寿命を効果的に向上させることができるリチウム電池負極の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のリチウム電池負極の製造方法は、以下を含む。銅箔を提供する。電気めっきプロセスを実行して、銅箔上にリチウム蒸着層を形成する。電気めっきプロセスで使用される電解液は、有機溶媒と、フッ素含有リチウム塩と、を含む。有機溶剤としては、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、又はそれらの組み合わせを含む。フッ素含有リチウム塩としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Lithium Bis(fluorosulfonyl)imide, LiFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(Lithium trifluoromethanesulfonate, LiTF)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(Lithium difluoro(oxalato)borate, LiDFOB)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide, LiTFSI)、又はそれらの組み合わせを含む。
【0006】
本発明の一実施形態において、電解液は、リチウム塩とエステル系溶媒又はエーテル系溶媒又はエステル系溶媒とエーテル系溶媒との混合物によって形成される。電解液は、少なくともエステル系溶媒を含み、その体積比率が50%を超えることが好ましい。
【0007】
本発明の一実施形態において、電解液におけるフッ素含有リチウム塩の使用割合は、0.1mol/L~5mol/Lの間である。
【0008】
本発明の一実施形態において、電気めっきプロセスにおける電流密度は、1mA/cm~5mA/cmの間である。
【0009】
本発明の一実施形態において、リチウム蒸着層の厚さは1ミクロン~20ミクロンの間である。
【0010】
本発明の一実施形態において、電解液は添加剤をさらに含み、添加剤は硝酸リチウム(LiNO)を含む。
【0011】
本発明の一実施形態において、電解液における添加剤の使用割合は、1重量%~10重量%の間である。
【0012】
本発明の一実施形態において、有機溶媒は、エステル系溶媒とエーテル系溶媒との組み合わせから選択される。
【0013】
本発明の一実施形態において、エステル系溶媒とエーテル系溶媒の体積比は、3:1~1:1の間である。
【0014】
本発明の一実施形態において、リチウム蒸着層の表面は、フッ素含有化合物を含む。
【発明の効果】
【0015】
上記に基づいて、本発明のリチウム電池負極の製造方法は、電気めっきプロセスを介して銅-リチウム複合構造を形成し、電気めっきプロセスの電解液の設計を通じて、その表面にフッ素含有保護膜を形成することができる。このようにして、リチウム電池の充放電時のリチウムデンドライトの生成を効果的に低減することができ、短絡や熱暴走などの問題が発生する可能性が低減される。つまり、本発明の製造方法により製造されたリチウム電池負極は、実装されたリチウム電池の安定性及びサイクル寿命を効果的に向上させることができる。
【0016】
本発明の前述の特徴及び利点をより理解しやすくするために、図面を伴う実施形態を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態によるリチウム電池負極の製造方法のフローチャートである。
図2】本発明の一実施形態によるリチウム電池負極の概略構造図である。
図3】本発明の実施例1によるSEMの概略図である。
図4】本発明の実施例2によるSEMの概略図である。
図5】本発明の実施例3によるSEMの概略図である。
図6】本発明の実施例4によるSEMの概略図である。
図7】本発明の実施例5によるSEMの概略図である。
図8】本発明の実施例6によるSEMの概略図である。
図9】本発明の比較例1によるSEMの概略図である。
図10】本発明の比較例2によるSEMの概略図である。
図11】本発明の実施例1による電流密度による面積容量の変化を示す概略図である。
図12】本発明の実施例2による電流密度による面積容量の変化を示す概略図である。
図13】本発明の実施例3による電流密度による面積容量の変化を示す概略図である。
図14】本発明の実施例4による電流密度による面積容量の変化を示す概略図である。
図15】本発明の実施例5による電流密度による面積容量の変化を示す概略図である。
図16】本発明の実施例6による電流密度による面積容量の変化を示す概略図である。
図17】本発明の比較例1による電流密度による面積容量の変化を示す概略図である。
図18】本発明の比較例2による電流密度による面積容量の変化を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の詳細な説明では、限定ではなく説明を目的として、本発明のさまざまな原理の完全な理解を提供するために、特定の詳細を開示する例示的な実施形態を説明する。しかしながら、本発明から利益を得た当業者には、本発明が、本明細書に開示される特定の詳細から逸脱する他の実施形態において実施され得ることは明らかである。さらに、本発明の様々な原理の説明から焦点を移さないように、一般に知られている装置、方法、及び材料の説明は省略される場合がある。
【0019】
なお、本明細書において「ある数値~他の数値」で表される範囲は、その範囲内の数値を全て明細書中に列挙することを避けるために概略的に示したものである。したがって、特定の数値範囲の記載は、明細書に明示的に記載されている任意の数値及びその数値範囲の場合と同様、その数値範囲内の任意の数値及びその数値範囲内の任意の数値によって定義されるより小さい数値範囲を包含する。
【0020】
特に明記しない限り、数値範囲を定義するために本明細書で使用される「間」という用語は、記載された端点に等しい範囲及び記載された端点の間の範囲を包含することを意図している。例えば、サイズ範囲が第1の値と第2の値との間にある場合、サイズ範囲は、第1の値、第2の値、及び第1の値と第2の値との間の任意の値を包含し得る。
【0021】
本明細書では、非限定的な用語(例えば、「~することができる」、「~しても良い」、又は他の同様の用語など) は、必須ではない、又は任意の実装、包含、追加、又は存在を指す。
【0022】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。また、用語(一般に使用される辞書で定義されている用語など)は、関連する技術的文脈における意味と一致する意味を有するように解釈されるべきであり、そのように明示的に定義されていない限り、理想化された意味又は過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことも理解される。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態によるリチウム電池負極の製造方法のフローチャートである。図2は、本発明の一実施形態によるリチウム電池負極の概略構造図である。図1及び図2を参照すると、本実施形態におけるリチウム電池負極100の製造方法は、少なくとも以下のステップを含んで良い。図3、4、5、6、7、8、9、10は、それぞれ本発明の実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6、比較例1、比較例2によるSEMの概略図である。図11、12、13、14、15、16、17、18は、それぞれ本発明の実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6、比較例1,比較例2による電流密度による面積容量の変化を示す概略図である。
【0024】
まず、銅箔110を提供する(ステップS100)。銅箔110の厚さ110Tは、例えば5μm~10μmの間であるが、本発明はこれに限定されるものではない。次に、電気めっきプロセスを実行して、銅箔110上にリチウム蒸着層120を形成する。電気めっきプロセスで使用される電解液は、有機溶媒と、フッ素含有リチウム塩と、を含む(ステップS200)。
【0025】
さらに、有機溶媒は、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、又はそれらの組み合わせを含み(いくつかの実施形態においてでは、電解液は、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、又はエステル系とエーテル系溶媒の混合物などの少なくとも1つ以上の有機溶媒を含んで良い。電解液は、少なくともエステル系溶媒を含むことが好ましい)、フッ素含有リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、又はそれらの組み合わせを含む。フッ素含有リチウム塩は、リチウム電池負極100を安定化するために電解質溶質として用いることができる。
【0026】
したがって、本実施形態におけるリチウム電池負極の製造方法は、電気めっきプロセス(図2の積層銅箔110とリチウム蒸着層120に示される通り)を介して銅-リチウム複合構造が形成され、電気めっき処理の電解液の設計を通じてその表面にフッ素含有保護膜が形成され得る。このようにして、リチウム電池の充放電時のリチウムデンドライトの生成を効果的に低減することができ、短絡や熱暴走などの問題が発生する可能性が低減される。すなわち、本実施形態の製造方法により製造されたリチウム電池負極100は、実装されたリチウム電池の安定性及びサイクル寿命を効果的に向上させることができる。ここで、リチウム電池は、リチウム二次電池、リチウム金属固体電池などであって良い。
【0027】
いくつかの実施形態において、フッ素含有保護膜とは、(電気めっきプロセスとともに生成される)フッ素含有化合物を含むリチウム蒸着層120の表面(図2では上面)を指す。
したがって、リチウム蒸着層120は純粋なリチウム金属層ではない。フッ素含有化合物の種類は、電解液に実際に使用されフッ素含有リチウム塩の種類により決定されて良い。
【0028】
いくつかの実施形態において、フッ素含有保護膜は、リチウム含有量が高い固体電解質界面(Solid Electrolyte Interface, SEI)とみなすことができ、本実施形態の電解液を用いて銅箔上にリチウム電着プロセスを行う際に設計及び形成される固体電解質界面は、均一性及び安定性などの特性を有する。したがって、リチウム電池に実装する際にリチウムデンドライトの形成を抑制することができ、高いクーロン効率(coulombic efficiency, CE)を示す。例えば、クーロン効率は90%を超える。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない.
【0029】
いくつかの実施形態において、本実施形態のリチウム電池負極の製造方法によって形成されるリチウム蒸着層120の厚さ120Tは、例えば、少なくとも30ミクロン未満であり、例えば、1ミクロン~20ミクロン(例えば1ミクロン、3ミクロン、5ミクロン、8ミクロン、12ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、又は1ミクロン~20ミクロンの間の任意の値)であれば、充放電サイクル中に良好に動作することができる。したがって、現在の技術(冷間圧延プロセスなど)によって形成されるリチウム金属層の厚さ(300ミクロンにさえ達することもある)と比較して、リチウム蒸着層120の厚さ120Tを大幅に低減することができるため、リチウム電池はコストとエネルギー密度の点でより多くの利点を有する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない.
【0030】
いくつかの実施形態において、より良い効果を得るために、銅箔110の厚さ110Tは6ミクロンであり、リチウム蒸着層120の厚さ120Tは5ミクロンである。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない.
【0031】
いくつかの実施形態において、電解液におけるフッ素含有リチウム塩の使用割合は、0.1mol/L(M)~5mol/L(M)の間である。このようにして、上記の電解液の比率の下では、電気めっきプロセスにおける電流密度は少なくとも1mA/cmより大きく、例えば1mA/cm~5mA/cmの間であって良い。現在の技術で一般的に使用されている小さな電流密度(0.1mA/cm~0.5mA/cmなど)と比較して、本発明では、電気めっき時間を短縮して歩留まりを向上させると同時に、リチウムデンドライトの生成を低減し、より高いクーロン効率を達成することができ、商業的な大量生産に有利である。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ジメトキシエタン(DME),1,1-ジエトキシエタン(DEE),1,3-ジオキソラン(DOL)、又はそれらの組み合わせを含む。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。有機溶媒は、他の適切なエステル系溶媒、エーテル系溶媒、又はアルコール系溶媒であっても良い。
【0033】
いくつかの実施形態において、電解液は添加剤をさらに含み、添加剤は、硝酸リチウム(LiNO)を含むため、その表面形態はより良好な状態となり、例えば核生成反応の電気めっきシステムにおける表面平坦性を改善することができる。したがって、不均一な核形成及び表面の不均一の可能性が減少し、それによってリチウムデンドライトが形成される可能性をさらに低減することができる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。添加剤は、任意に構成することができる。すなわち、電解液において添加剤の使用を省略しても良い。ここで、電解液における添加剤の使用割合は、例えば1重量%~10重量%の間である。
【0034】
いくつかの実施形態において、電解液は、有機溶媒、フッ素含有リチウム塩、及び添加剤により形成されるが、本発明はこれに限定されるものではない。実際の設計要件に従って、他の実施形態において、電解液は任意に他の成分を含んでも良い。
【0035】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、エステル系溶媒とエーテル系溶媒の組み合わせから選択され、電気めっきの品質をさらに向上させるために、前述のエステル系溶媒とエーテル系溶媒の体積比は3:1~1:1の間である。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、1,2‐ジメトキシエタン(DME)と混合した1,3‐ジオキソラン(DOL)、及び1,1‐ジエトキシエタン(DEE)によって形成されて良い。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
また、リチウム電池内の過剰な高活性リチウム金属と電解液との継続的かつ不可逆的な反応により、電解液とリチウム金属電極の界面に過剰なSEI層が形成され、有効な活性リチウムが継続的に消費されるため、クーロン効率が低下する。さらに、めっき(plating)/剥離(stripping)などのリチウム電池の長期使用中に、有効な活性リチウムが集電板から剥がれてSEI層で覆われるため、活性リチウムはデッドリチウム(deadLithium)現象と呼ばれる機能不全を引き起こしやすい。本発明における電解液の上述の設計の後、デッドリチウム現象の発生は減少され得る。例えば、デッドリチウムの含有量は25%未満になる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない.
【0038】
なお、後で実装されるリチウム電池の電解液は、広い電位窓、良好なリチウムイオン伝導性(10-4S/cm超など)、高いリチウムイオン伝導率、非伝導性電子(10-10S/cm)、などの特性を有し、化学的安定性とバッテリー互換性の両方を備えるように、本発明の電解液と同様に設計され得ても良い。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0039】
さらに、前述の電解液の設計を通じて、本発明のリチウム電池負極は、リチウム金属の高いエネルギー密度を効果的に保持し、アノード電池における過剰なリチウム及び負極銅集電板のリチウムめっき/剥離効率の低下の問題を改善することができる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
以下の実験データは、本発明の効果を説明するためにここに列挙される。ただし、本発明の特許請求の範囲は、実施形態の範囲に限定されるものではない。
【0041】
実施例1: 1MのLiTFSI(EC:DEE=1:1)、1重量%のLiNO、0.5重量%のFECにより形成される。1MのLiTFSI(EC:DEE=1:1)は、1リットルの電解液中に1モルのLiTFSIが存在することを示す。1リットルの電解液はECとDEEの比率が1:1で形成され、重量%は電解液の総重量と比較される。以下の同様の表現も同様の定義を有する。したがって、再度の説明は省略する。
【0042】
実施例2: 1MのLiTFSI(EC:DEE=1:1)、2重量%のLiNO、0.5重量%のFECにより形成される。
【0043】
実施例3: 1MのLiTFSI(EC:DEE=1:1)、1重量%のジメチルスルホキシド(DMSO)、3重量%のLiNO、0.5重量%のFECにより形成される。
【0044】
実施例4: 1MのLiTFSI(EC:DEE=1:1)、1重量%のLiNO、0.5重量%のFECにより形成される。
【0045】
実施例5: 1MのLiTFSI(EC:DEE=1:1)、2重量%のLiNO、0.5重量%のFECにより形成される。
【0046】
実施例6: 1MのLiTFSI(EC:DEE=1:1)、3重量%のLiNO、0.5重量%のFECにより形成される。
【0047】
比較例1: 1M(EC:DEC=1:1)のLiPFで形成される。
【0048】
比較例2: 1MのLiTFSI(DOL:DME=1:1)と1重量%のLiNOにより形成される。
【0049】
実施例1~6及び比較例1、2に示した配合を後述のリチウム銅半電池試験の電解液として使用した。リチウム銅半電池試験において、リチウム銅半電池の組み立てにはCR2032ボタン電池の構成要素が使用され、リチウムは、電気めっき用のリチウム源として使用された。ここで、リチウムの電気めっきは、銅基板上に1mA/cmで1時間電気めっきを行うと、リチウム蒸着層の厚さは約5ミクロン(μm)になり、リチウム銅半電池試験用めっきされたリチウム銅複合箔(リチウム電池負極)が得られた。
【0050】
表1のデータは、PP/PE/PPの3層絶縁フィルムを使用し、1MのLiTFSI (EC:DME=1:1)、5重量%のLiNO、及び0.5重量%のFECにより形成された電池電解液を使用して、上記のリチウム銅複合箔をリチウム銅半電池に実装した試験であり、異なる電流密度のクーロン効率を試験した。
【0051】
表1の実施例と比較例の結果を比較すると、次の結論が得られる。比較例の電解液と比較して、実施例の電解液でめっきされたリチウム銅複合箔は、異なる電流密度下でクーロン効率において有利であり、これは、本発明における電解液の最適化された配合(少なくともエーテル添加剤(FEC)を含む実施例1及び比較例2など)によってめっきされたリチウム層の品質が、比較例の電解液の配合よりも優れ、電流密度が2mA/cm以上の場合、非常に優れた性能を得ることができる。
【0052】
【表1】
【0053】
図3図18の電気的結果の比較によれば、めっきされたリチウム層の表面が滑らかであればあるほど、高電流密度下でのクーロン効率が向上する。比較例1のSEM画像は、明らかな粒状及び帯状のリチウムデンドライトが表面に現れていることを示し、比較例2も、粒状の凹凸のある表面が現れ始めていることを示す。したがって、電気的結果も劣る。
【0054】
さらに、リチウム層の品質を判定するために、リチウム銅半電池の電気的特性を試験する前後に、リチウム層の重量損失が測定される。リチウム層の品質が高ければ高いほど、リチウムの損失は少なくなる。ここでは、損失したリチウムをデッドリチウムという。電気めっき前のリチウムの重量を電気めっきリチウムの重量という。デッドリチウムの割合が高いほど、電気的性能結果との正の相関関係が高くなる。このような方法は、めっきされたリチウム層の品質を判断するために使用され得る。下記表2の結果によれば、比較例1、2と比較して、実施例1~6では、デッドリチウムの割合が大幅に改善されている。
【0055】
【表2】
【0056】
上記に基づいて、本発明のリチウム電池負極の製造方法は、電気めっきプロセスを介して銅-リチウム複合構造を形成し、電気めっきプロセスの電解液の設計を通じて、その表面にフッ素含有保護膜を形成することができる。このようにして、リチウム電池の充放電時のリチウムデンドライトの生成を効果的に低減することができ、短絡や熱暴走などの問題が発生する可能性が低減される。つまり、本発明の製造方法により製造されたリチウム電池負極は、実装されたリチウム電池の安定性及びサイクル寿命を効果的に向上させることができる。
【0057】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に修正を加えることができることは、当業者には明らかである。したがって、本発明の範囲は、上記の詳細な説明によってではなく、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義されるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のリチウム電池負極の製造方法は、リチウム電池に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
100: リチウム電池負極
110: 銅箔
110T、120T: 厚さ
120: リチウム蒸着層
S100、S200: ステップ
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【外国語明細書】