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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004337
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   F01P 3/20 20060101AFI20250107BHJP
   B60W 50/023 20120101ALI20250107BHJP
   B60W 40/12 20120101ALI20250107BHJP
   F01P 7/04 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
F01P3/20 A
B60W50/023 300
B60W40/12
F01P7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103956
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小栗 春紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 健一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 光博
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA30
3D241BA50
3D241DB20Z
(57)【要約】
【課題】車両における自動運転キットの温度上昇を抑制して自動運転キットを安定動作しやすくする。
【解決手段】車両が、車両を制御する車両プラットフォームと、自動運転のための指令を車両プラットフォームへ送信するADK200とを備える。車両プラットフォームのベース車両は、ラジエータ装置150と、ボディECU126a(第1制御装置)とを備える。ラジエータ装置150は、ラジエータファン152を有し、ADK200を冷却するように構成される。ボディECU126aは、ADK200からの指令に従ってラジエータファン152を制御するように構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を制御する車両プラットフォームと、自動運転のための指令を前記車両プラットフォームへ送信する自動運転キットとを備える車両であって、
前記車両プラットフォームは、ラジエータ装置と、第1制御装置とを備え、
前記ラジエータ装置は、ラジエータファンを有し、前記自動運転キットを冷却するように構成され、
前記第1制御装置は、前記自動運転キットからの指令に従って前記ラジエータファンを制御するように構成される、車両。
【請求項2】
前記自動運転キットは、
前記ラジエータ装置によって冷却される熱源と、
前記熱源の温度と前記熱源と熱交換を行う媒体の温度との少なくとも一方を検出する温度センサと、
を備え、
前記自動運転キットは、前記温度センサによる検出結果を用いて、前記ラジエータファンの回転速度を決定し、決定された回転速度を示す指令を前記第1制御装置へ送信する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記自動運転キットは、走行風を取り込んで前記熱源へ導く開口部を有し、
前記自動運転キットは、前記温度センサによる検出結果と、自動運転中の前記車両の挙動とを用いて、前記熱源の温度変化を予測し、その予測結果に基づいて、前記ラジエータファンの回転速度を決定し、決定された回転速度を示す指令を前記第1制御装置へ送信する、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記車両プラットフォームは、前記第1制御装置を含むベース車両を備え、
前記自動運転キットは、前記ラジエータファンの制御に関する指令を決定する第2制御装置を備え、
前記車両プラットフォームは、前記第1制御装置および前記第2制御装置の両方と通信可能に構成される第3制御装置を含む車両制御インターフェースボックスをさらに備え、
前記第1制御装置は、前記ベース車両に関する車両情報を前記第3制御装置へ送信するように構成され、
前記第2制御装置と前記第3制御装置との間の通信には、API(Application Program Interface)で定義されたAPI信号が使用され、
前記API信号は、前記ベース車両に対する指令を示すAPIコマンドと、前記ベース車両の状態を示すAPIステータスとを含み、
前記第3制御装置は、前記第2制御装置からの前記APIコマンドを前記第1制御装置が実行可能な信号に変換して、変換後の前記信号を前記第1制御装置へ送信するように構成され、
前記第3制御装置は、前記第1制御装置からの前記車両情報を用いて前記APIステータスを取得し、取得された前記APIステータスを前記第2制御装置へ送信するように構成される、請求項1に記載の車両。
【請求項5】
前記APIコマンドは、前記ラジエータファンの制御に関するラジエータファンコマンドを含み、
前記ラジエータファンコマンドは、
前記ラジエータファンの停止を要求する第1の値と、
前記ラジエータファンの回転速度を低速にすることを要求する第2の値と、
前記ラジエータファンの回転速度を前記低速よりも速い中速にすることを要求する第3の値と、
前記ラジエータファンの回転速度を前記中速よりも速い高速にすることを要求する第4の値と、
のいずれかを示す、請求項4に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動運転可能な車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-177807号公報(特許文献1)には、ルーフトップに自動運転キットが取り付けられた車両が開示されている。自動運転キットは、自動運転制御ソフトウェアがインストールされたコンピュータと、カメラと、センサとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-177807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動運転を長時間継続する場合に、自動運転キットは発熱しやすくなる。特に、自動運転中の車両が走行せずに停車を続けると、自動運転キットは走行風によって冷却されないため高温になりやすい。そこで、自動運転キットを安定動作させるために、自動運転キットを冷却するための冷却装置を自動運転キットに設けることが考えられる。ただし、例えば特許文献1に記載されるような自動運転キットは車両本体と比べて小さいため、ラジエータ装置のような大型の冷却装置を自動運転キットに搭載することは難しい。そのため、冷却性能が低い小型の冷却装置が自動運転キットに搭載されるかもしれない。しかしながら、こうした自動運転キットを備える車両では、自動運転キットを冷却する能力が不足した場合に、自動運転キットの温度が高くなり過ぎないように自動運転キットを動作させることが要求され、自動運転キットの能力を十分に発揮できない可能性がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車両における自動運転キットの温度上昇を抑制して自動運転キットを安定動作しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る車両は、車両を制御する車両プラットフォームと、自動運転のための指令を車両プラットフォームへ送信する自動運転キットとを備える。車両プラットフォームは、ラジエータ装置と、第1制御装置とを備える。ラジエータ装置は、ラジエータファンを有し、自動運転キットを冷却するように構成される。第1制御装置は、自動運転キットからの指令に従ってラジエータファンを制御するように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車両における自動運転キットの温度上昇が抑制され、自動運転キットが安定動作しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施の形態に係る車両の概略構成を示す図である。
図2図1に示した車両の制御システムの詳細を示す図である。
図3】本開示の実施の形態に係る車両制御を示すフローチャートである。
図4】本開示の実施の形態に係るラジエータ装置およびその制御方法について説明するための図である。
図5図3に示した構成の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0010】
図1は、本開示の実施の形態に係る車両の概略構成を示す図である。図1を参照して、車両1は、VP(車両プラットフォーム)100と、ADK(自動運転キット)200とを備える。VP100は、VCIB(車両制御インターフェースボックス)110と、ベース車両120とを含む。ベース車両120にVCIB110を追加することによって、ADK200が着脱可能なVP100が形成される。VCIB110は、通信バスを介して、ベース車両120およびADK200の両方と通信するように構成される。そして、VP100に対してADK200を取り付けることによって車両1が完成する。この実施の形態では、ベース車両120のルーフトップにADK200が取り付けられる。ただし、ADK200の取り付け位置は適宜変更可能である。
【0011】
ベース車両120は、例えば市販されるxEV(電動車)である。この実施の形態では、ベース車両120としてBEV(電気自動車)を採用する。ただしこれに限られず、ベース車両120は、BEV以外のxEVであってもよい。ベース車両120は、統合制御マネージャ130と、ベース車両120を制御するための各種システムおよび各種センサ(車輪速センサ127A,127B、舵角センサ127Cなど)と、アクティブセーフティシステム125が衝突リスクを検知するためのカメラ129Aおよびレーダセンサ129B,129Cとを備える。統合制御マネージャ130は制御装置として機能する。統合制御マネージャ130は、車載センサの検出結果に基づいてベース車両120の動作に関わる各種システムを統合して制御する。
【0012】
図2は、車両1の制御システムの詳細を示す図である。図1とともに図2を参照して、ADK200は、車両1の自動運転を行うための自動運転システム(以下、「ADS」と表記する)210を含む。ADS210は、コンピュータアセンブリ(以下、「ADSCOM」と表記する)211と、認識用センサ212と、姿勢用センサ213と、センサクリーナ216と、HMI(Human Machine Interface)218とを含む。
【0013】
ADSCOM211は、コンピュータモジュール(以下、「ADC」と表記する)211A,211Bを含む。ADC211A,211Bの各々は、プロセッサと、後述するAPIを利用した自動運転ソフトウェアを記憶する記憶装置とを備え、プロセッサによって自動運転ソフトウェアを実行可能に構成される。認識用センサ212は、車両1の外部環境を示す環境情報を取得する。認識用センサ212は、カメラ、ミリ波レーダ、およびライダーの少なくとも1つを含んでもよい。姿勢用センサ213は、車両1の姿勢に関する姿勢情報を取得する。姿勢用センサ213は、車両1の加速度、角速度、および位置を検出する各種センサを含んでもよい。ADC211A,211Bの各々は、環境情報に関して画像処理を行う画像処理回路と、姿勢情報に基づいて車両1の挙動を計算する挙動演算回路とをさらに備える。これらの回路は自動運転中に発熱する。HMI218は入力装置および報知装置を含む。
【0014】
ベース車両120は、ブレーキシステム121と、ステアリングシステム122と、パワートレーンシステム123と、アクティブセーフティシステム125と、ボディシステム126とを備える。この実施の形態では、各システムが電子制御装置(以下、「ECU」とも称する)を備える。
【0015】
車両1においては、車両1の挙動(走る・止まる・曲がる)に関する制御系が冗長性を有する。ADC211A、211Bがそれぞれメイン制御系、サブ制御系に指示を与える。VCIB110は、VCIB111A(メイン制御系の制御部)およびVCIB111B(サブ制御系の制御部)を含む。各制御部は、プロセッサおよび記憶装置を備えるコンピュータを含んでもよい。VCIB111Aおよび111Bは、各システムと直接的に通信してもよいし、図1に示した統合制御マネージャ130を介して通信してもよい。
【0016】
ブレーキシステム121は、制動機構と、ドライバからのブレーキ操作を受け付ける操作部と、ブレーキ制御部121A,121Bとを含む。ステアリングシステム122は、操舵機構と、ドライバからのステアリング操作を受け付ける操作部と、ステアリング制御部122A,122Bとを含む。パワートレーンシステム123は、シフト装置と、車両駆動装置と、EPB装置と、P-Lock装置と、EPB制御部123Aと、P-Lock制御部123Bと、推進制御部123Cとを含む。「EPB」は電動パーキングブレーキ、「P-Lock」はパーキングロックを意味する。シフト装置は、シフトレンジを決定し、決定されたシフトレンジに応じてベース車両120の推進方向および変速モードを切り替える。シフト装置は、変速機構に加えて、ドライバからのシフト操作を受け付ける操作部をさらに備える。車両駆動装置は、シフトレンジが示す推進方向に推進力を付与する。車両駆動装置は、バッテリと、バッテリから電力の供給を受ける走行用モータとを備える。車両駆動装置は、車両1を加速するためにドライバによって操作されるアクセルペダルをさらに備える。P-Lock装置は、パーキングロック機構およびアクチュエータに加えて、ドライバからの駐車操作を受け付ける操作部をさらに備える。
【0017】
この実施の形態では、ベース車両120が備える各種制御装置(後述するボディECU126aを含む)が、単独でまたは協働して、本開示に係る「第1制御装置」として機能する。ADC211A,211Bの各々が、本開示に係る「第2制御装置」として機能する。また、VCIB111A,111Bの各々が、本開示に係る「第3制御装置」として機能する。
【0018】
図3は、この実施の形態に係るラジエータ装置およびその制御方法について説明するための図である。
【0019】
図3を参照して、ADK200は筐体210aを有する。ベース車両120はラジエータ装置150を備える。ボディシステム126はボディECU126aを含む。ラジエータ装置150は、ラジエータ151とラジエータファン152とポンプ153とを有し、ADK200の筐体210a内の熱源HP1を冷却するように構成される。熱源HP1は自動運転中に発熱する。熱源HP1は、ADC211A,211B、認識用センサ212、姿勢用センサ213、画像処理回路、挙動演算回路の少なくとも1つを含んでもよい。
【0020】
ADK200の筐体210aは、走行風を取り込んで熱源HP1へ導く開口部210b(例えば、フロントグリル)を有する。車両1の走行中は、走行風によって熱源HP1が冷却される。ただし、自動運転中の車両1では、停車中も、センシング(自動運転システムの稼働)によってADK200(熱源HP1)が発熱する。自動運転中の車両1において停車または低速走行の頻度が高くなると、空冷式の冷却機構(開口部210b)だけでADK200を十分に冷却することが難しくなる。そこで、この実施の形態に係る車両1は、ラジエータ装置150によっても熱源HP1を冷却する。しかも、車両1では、ADK200を冷却するラジエータ装置150が、ベース車両120(ADK200の外側)に設けられている。ベース車両120はADK200よりも大きい。このため、ベース車両120ではラジエータ装置150の設置スペースを確保しやすい。こうしたラジエータ装置150により、ADK200を十分に冷却しやすくなる。
【0021】
ベース車両120のルーフトップはコネクタC1およびC2を含む。ラジエータ装置150は流路F1,F2,F4を含む。ADK200は流路F3を含む。ベース車両120のルーフトップにADK200が装着されると、ラジエータ装置150の流路F2およびF4がそれぞれコネクタC1およびC2を介してADK200の流路F3と接続される。コネクタC1,C2の各々は、ADK200の着脱に応じて流通/遮断を切り替える。コネクタC1,C2の各々は、逆止弁を有する流体継手(例えばカプラ)であってもよい。
【0022】
ベース車両120にADK200が装着された状態では、流路F1~F4を含む流体回路が形成され、流体回路内を熱媒体が流通する。流体回路には、図示しないリザーバタンクが接続されてもよい。熱媒体の例としては、フッ素系冷媒、二酸化炭素、プロパン、アンモニアが挙げられる。ラジエータ151は熱交換器として機能する。ラジエータ151により、流体回路を流れる熱媒体と外気とが熱交換する。ラジエータファン152は、ラジエータ151を冷却する送風機として機能する。
【0023】
ポンプ153は上記流体回路に熱媒体を循環させる。ラジエータ151で冷却された熱媒体は、流路F1、F2、F3、F4の順に流通する。流路F3を流れる熱媒体は、熱源HP1と熱交換を行う。この熱交換によって熱源HP1が冷却される。このように、熱源HP1はラジエータ装置150によって冷却される。流路F3の形状および経路は熱交換の効率を考慮して決定される。開口部210bからの走行風によって流路F3が冷却されてもよい。ラジエータ装置150は、ボディECU126aによって制御される。ポンプ153は、例えば電動ポンプである。ボディECU126aは、例えば常時または所定の期間においてポンプ153を駆動する。また、ボディECU126aは、ADK200からの指令に従ってラジエータファン152を制御する。なお、ボディECU126aは、ADK200からの指令に従ってポンプ153を駆動してもよい。
【0024】
この実施の形態では、ADK200とVCIB110との間の通信に、API(Application Program Interface)で定義された信号(API信号)が使用される。ADK200は、APIで定義された各種信号を処理するように構成される。ADK200は、APIに従って各種コマンドをVCIB110へ出力する。以下では、ADK200からVCIB110へ出力される上記各種コマンドの各々を、「APIコマンド」とも称する。また、ADK200は、ベース車両120の状態を示す各種信号を上記APIに従ってVCIB110から受信する。以下では、ADK200がVCIB110から受信する上記各種信号の各々を、「APIステータス」とも称する。APIコマンドおよびAPIステータスはどちらもAPI信号に相当する。
【0025】
この実施の形態では、ADK200が、以下に説明するAPIコマンドを使用する。
【0026】
車両モードコマンドは、自動モードまたは手動モードへの遷移を要求するAPIコマンドである。推進方向コマンドは、シフトレンジ(R/D)の切替えを要求するAPIコマンドである。加速コマンドは、車両の加速度を指示するAPIコマンドである。加速コマンドは、後述する推進方向ステータスが示す方向に対する加速度(+)および減速度(-)を要求する。不動化コマンドは、不動化の適用または解除を要求するAPIコマンドである。不動化の適用は、EPBをON状態(作動状態)にし、シフトレンジをP(パーキング)にすることを意味する。
【0027】
図3に示すラジエータファンコマンドは、ラジエータファン152の制御(駆動要求)に関するAPIコマンドである。ラジエータファンコマンドは、ラジエータファン152の停止(OFF)を要求する値「0」(第1の値)と、ラジエータファン152の回転速度を低速(例えば、速度V1以上かつ速度V2以下)にすることを要求する値「1」(第2の値)と、ラジエータファン152の回転速度を低速よりも速い中速(例えば、速度V2超かつ速度V3以下)にすることを要求する値「2」(第3の値)と、ラジエータファン152の回転速度を中速よりも速い高速(例えば、速度V3超かつ速度V4以下)にすることを要求する値「3」(第4の値)とのいずれかを示す。速度V1~V4は、回転速度が高い方から、速度V4、V3、V2、V1の順である。
【0028】
以上、車両1において使用される一部のAPIコマンドについて説明した。VCIB110はADK200から各種APIコマンドを受信する。VCIB110は、ADK200からAPIコマンドを受信すると、そのAPIコマンドを、ベース車両120の制御装置が実行可能な信号の形式に変換する。以下、ベース車両120の制御装置が実行可能な信号の形式に変換されたAPIコマンドを、「内部指令」とも称する。VCIB110は、ADK200からAPIコマンドを受信すると、そのAPIコマンドに対応する内部指令をベース車両120へ出力する。
【0029】
次に、APIステータスについて説明する。ADK200は、例えば以下に説明するAPIステータスを用いてベース車両120の状態を把握する。
【0030】
車両モードステータスは、車両モード状態を示すAPIステータスである。車両モードは、手動モードと自動モードとスタンバイモードとを含む。手動モードは、車両がドライバ(人間)のコントロール下にある車両モードである。自動モードは、車両プラットフォーム(ベース車両を含む)が自動運転キットのコントロール下にある車両モードである。スタンバイモードは、車両の移動が禁止された車両モードである。初期状態では、車両モードが手動モードになる。ドライバは、車載HMIを通じて所望の車両モードを選択できる。ベース車両120は、車両1の状況とドライバの選択とを考慮して車両モードを決定する。車両モードステータスは、現在の車両モードが手動モード、自動モード、スタンバイモードである場合に、それぞれ対応する値「0」、「1」、「2」を出力する。
【0031】
推進方向ステータスは、現在のシフトレンジを示すAPIステータスである。進行方向ステータスは、車両の進行方向を示すAPIステータスである。進行方向ステータスは、車両の前進時には値「0」、車両の後退時には値「1」、全ての車輪(4輪)が一定時間速度「0」を示す場合には値「2(Standstill)」を出力する。車速ステータスは、車両の縦方向の速度を示すAPIステータスである。車速ステータスは車速の絶対値を出力する。不動化ステータスは、不動化の状態(例えば、EPBおよびシフトPの状態)を示すAPIステータスである。
【0032】
ラジエータファンステータスは、ラジエータファン152の駆動状態に関するAPIステータスである。ラジエータファンステータスは、ラジエータファン152が停止中、低速回転中、中速回転中、高速回転中である場合に、それぞれ対応する値「0」、「1」、「2」、「3」を出力する。ラジエータファン152は、基本的にはADK200からのラジエータファンコマンドに従って制御される。しかし、車両1の状態によっては、ADK200からのラジエータファンコマンドに従ってラジエータファン152が制御されない場合がある。すなわち、ラジエータファンコマンドとラジエータファンステータスとが対応しない場合がある。
【0033】
以上、車両1において使用される一部のAPIステータスについて説明した。VCIB110は、ベース車両120から各種のセンサ検出値および状態判別結果を受信し、ベース車両120の状態を示す各種APIステータスをADK200へ出力する。VCIB110は、ベース車両120の状態を示す値が設定されたAPIステータスを取得し、得られたAPIステータスをADK200へ出力する。
【0034】
図3に示すように、ADK200は、熱源HP1の温度を直接的に検出する温度センサT1と、熱源HP1と熱交換を行う媒体(詳しくは、流路F3を流れる熱媒体)の温度を検出する温度センサT2とをさらに備える。ADK200は、S101およびS102の処理フローを周期的に実行する。この処理フローは、基本的には、図2に示したADC211Aによって実行される。ただし、ADC211Aに異常が生じた場合には、ADC211Aの代わりにADC211Bが実行してもよい。ADK200は、自動モードにおいてのみ処理フローを実行してもよいし、自動モードおよび手動モードの両方において処理フローを実行してもよい。フローチャート中の各ステップは、単に「S」と表記する。
【0035】
S101では、ADK200が温度センサT1およびT2による検出結果を取得する。S102では、ADK200が、温度センサT1およびT2による検出結果を用いて、ラジエータファンコマンドの値を決定する。例えば、ADK200は、熱源HP1の温度が流路F3を流れる熱媒体の温度よりも高い場合に、両者の温度差が小さくなるほどラジエータファン152の回転速度を高くしてもよい。また、ADK200は、流路F3を流れる熱媒体の温度が熱源HP1の温度よりも高い場合には、ラジエータファンコマンドの値として「3」(高速)を決定してもよい。ラジエータファン152の回転速度が高くなるほど、ラジエータ151(および熱媒体)が冷却されやすくなる。なお、ADK200は、温度センサT1による検出結果と温度センサT2による検出結果との一方のみを用いて、ラジエータファンコマンドの値を決定してもよい。ADK200は、熱源HP1の温度が高くなるほどラジエータファン152の回転速度を高くしてもよい。また、ADK200は、流路F3を流れる熱媒体の温度が高くなるほどラジエータファン152の回転速度を高くしてもよい。温度センサT1およびT2の一方が省かれてもよい。
【0036】
上記S102で決定された値は、ADK200がVP100(ベース車両120)に要求するラジエータファン152の回転速度を示す。ADK200は、S102で決定された値を示すラジエータファンコマンドをVCIB110へ送信する。そして、VCIB111Aは、受信したラジエータファンコマンドに対応する内部指令をボディECU126aへ出力する。ラジエータファンコマンドが示す回転速度(停止、低速、中速、高速のいずれか)は、ADC211Aから、VCIB111Aを経て、ボディECU126aに送られる。VCIB111Aに異常が生じた場合には、VCIB111Aの代わりにVCIB111Bが内部指令を生成してもよい。ボディECU126aは、ラジエータファン152の回転速度を検出しつつ、ラジエータファンコマンドが示す回転速度にラジエータファン152の回転速度を制御する。上記のように、ADK200は、S102で決定された回転速度を示す指令をボディECU126aへ送信する。これにより、ラジエータ装置150によってADK200における熱源HP1を適切に冷却しやすくなる。
【0037】
自動運転中の車両1においては、ADK200が、温度センサT1およびT2の少なくとも一方による検出結果だけでなく、車両1の挙動をさらに用いて、ラジエータファンコマンドの値を決定してもよい。
【0038】
図4は、この実施の形態に係る車両1の自動運転制御について説明するためのフローチャートである。図4を参照して、S11~S14の処理フローは、ベース車両120が備える複数の制御装置(例えば、図1図2に示した統合制御マネージャ130および各システムの制御装置)のいずれかによって繰り返し実行される。S11では、車両1の車両モードが自動モードであるか否かを、ベース車両120が判断する。車両モードが自動モードではない場合には(S11にてNO)、処理が進まず、S11の処理が繰り返される。車両モードが自動モードである場合には(S11にてYES)、処理がS12に進む。
【0039】
S12では、ベース車両120が、現在の車両情報を取得し、得られた車両情報をVCIB110へ送信する。現在の車両情報は、車両モードが自動モードであることを示す情報と、現在のベース車両120の状態(ラジエータファン152の回転速度を含む)を示す各種センサ検出値と、ユーザ操作またはセンサ検出値に基づく状態判別結果とを含む。ベース車両120は、現在の車両情報を取得時刻と紐付けて記憶装置に保存してもよい。
【0040】
ベース車両120は、上記車両情報を送信した後、S13において、ADK200からの指令(ADK指令)を受信したか否かを判断しつつ、ADK指令を待つ。ベース車両120がADK指令を受信しない間は(S13にてNO)、処理がS14に進まない。
【0041】
S21~S25の処理フローは、VCIB110(VCIB111Aまたは111B)によって実行される。VCIB110は、ベース車両120から現在の車両情報を受信すると、処理フローを開始する。S21では、VCIB110が、現在の車両情報に基づいて現在のベース車両120の状態を示す各種APIステータス(ラジエータファンステータスを含む)を取得する。VCIB110は、各種センサ検出値に基づいて各種APIステータスの値を決定してもよい。VCIB110は、取得した各種APIステータスの値を取得時刻と紐付けて記憶装置に保存してもよい。続くS22では、VCIB110が、S21で取得した各種APIステータスをADK200へ送信する。その後、VCIB110は、S23において、ADK200からAPIコマンドを受信したか否かを判断しつつ、APIコマンドを待つ。VCIB110がAPIコマンドを受信しない間は(S23にてNO)、処理がS24に進まない。
【0042】
S31~S36の処理フローは、ADK200(ADC211Aまたは211B)によって実行される。ADK200は、VCIB110から上記APIステータスを受信すると、処理フローを開始する。S31では、受信した車両モードステータスが自動モードを示すか否かを、ADK200が判断する。車両モードステータスが自動モードを示さない場合には(S31にてNO)、ADK200は、S35において、ラジエータファン制御に係る処理(例えば、図3に示したS101およびS102)を実行する。ADK200は、図3のS102において、ラジエータファンステータスの値(ラジエータファン152の回転速度)と、温度センサT1およびT2の少なくとも一方による検出結果とを用いて、ラジエータファンコマンドの値を決定してもよい。そして、ADK200は、続くS36において、ラジエータファンコマンドをVCIB110へ送信する(図3参照)。
【0043】
他方、車両モードステータスが自動モードを示す場合には(S31にてYES)、ADK200は、S32において、各種センサの検出結果(例えば、環境情報および姿勢情報)と、VCIB110から取得したAPIステータスとに基づいて、走行計画を作成する。走行計画は、所定期間において目標とする車両1の挙動を示すデータである。ADK200は、車両1の挙動(車速、姿勢など)を計算し、車両1の状態および外部環境に適した走行計画を作成してもよい。続くS33では、ADK200が、S32で作成された走行計画から制御的な物理量(加速度、タイヤ切れ角など)を抽出する。続くS34では、ADK200が、S33で抽出された物理量をAPI周期ごとに分割する。そして、ADK200は、分割された物理量に基づいて、走行計画に従う物理量を実現するための自動運転指令(各種APIコマンドの値)を求める。続けて、ADK200は、S35において、ラジエータファン制御に係る処理(例えば、図3に示したS101およびS102)を実行する。ADK200は、図3のS102において、温度センサT1およびT2の少なくとも一方による検出結果と、S32で算出された自動運転中の車両1の挙動とを用いて、熱源HP1の温度変化を予測してもよい。そして、ADK200は、その予測結果と、ラジエータファンステータスの値とを用いて、ラジエータファンコマンドの値を決定してもよい。続けて、ADK200は、S36において、ラジエータファンコマンドを含む各種APIコマンドをVCIB110へ送信する(図3参照)。こうした構成によれば、熱源HP1の温度変化に応じてラジエータファン152の回転速度を適切に制御しやすくなる。ADK200は、自動運転制御において車両1の挙動を計算するため、車両1の挙動に基づいて、熱源HP1の温度に対する走行風(図3)の影響を予測しやすい。
【0044】
S36で送信されるAPIコマンドは、ベース車両120に対する指令を示す。自動モードでは、自動運転指令を示すAPIコマンドが、S32~S34で決定され、S36で送信される。ADK200は、得られたAPIコマンドを、VCIB110から受信した各APIステータスの値とともに、取得時刻に紐付けて記憶装置に保存してもよい。S36の処理が実行されると、S31~S36の処理フローが終了する。ただし、ADK200がAPIステータス(S22)を受信するたびに当該処理フローは開始される。
【0045】
VCIB110は、上記APIコマンドを受信すると(S23にてYES)、S24において、受信した各APIコマンドを内部指令に変換する。こうした信号変換により、APIコマンドに対応する内部指令が得られる。続くS25では、VCIB110が、得られた内部指令(ADK指令)をベース車両120へ送信する。S25の処理が実行されると、S21~S25の処理フローは終了する。ただし、VCIB110がベース車両120から最新の車両情報を受信するたびに当該処理フローは開始される。
【0046】
ベース車両120は、APIコマンドに対応する内部指令(ADK指令)を受信すると(S13にてYES)、続くS14において、ADK指令に従う車両制御(ラジエータファン制御を含む)を実行する。自動モードでは、ベース車両120が、ADK200からの自動運転指令(ADK指令)に従う自動運転制御を実行する。その後、処理が最初のステップ(S11)に戻る。
【0047】
以上説明したように、この実施の形態に係る車両1は、車両1を制御するVP100(車両プラットフォーム)と、自動運転のための指令をVP100へ送信するADK200(自動運転キット)とを備える。VP100は、ラジエータ装置150と、ボディECU126a(第1制御装置)とを備える。ラジエータ装置150は、ラジエータファン152を有し、ADK200を冷却するように構成される。ボディECU126aは、ADK200からの指令に従ってラジエータファン152を制御するように構成される。こうした車両1では、自動運転キットが、自らの状態(温度)を自ら制御できるため、安定動作しやすくなる。上記構成によれば、車両1におけるADK200の温度上昇を抑制してADK200を安定動作しやすくすることが可能になる。
【0048】
図5は、図3に示した構成の変形例を示す図である。この変形例では、流体回路が、流路F1~F4に加えて、流路F2と流路F4とをつなぐバイパス流路B1と、バイパス流路B1に設けられた弁B2とをさらに備える。バイパス流路B1はベース車両120側(例えば、ルーフトップ付近)に形成される。この変形例に係るラジエータ装置150Aは、基本的には、図3に示したラジエータ装置150と同じ構成を有する。ただし、ラジエータ装置150Aは、ADK200の熱源HP1だけでなく、ベース車両120の熱源HP2も冷却するように構成される。流路F4を流れる熱媒体が熱源HP2と熱交換を行うように、流路F4が形成される。熱源HP2は、ベース車両120において発熱する部品であり、電力変換回路(例えば、電動走行のためのインバータ)を含んでもよい。ベース車両120は、熱源HP2の温度を直接的に検出する温度センサT3と、熱源HP2と熱交換を行う媒体(詳しくは、流路F4を流れる熱媒体)の温度を検出する温度センサT4とをさらに備える。
【0049】
ベース車両120(例えば、ボディECU126a)は、S201~S204の処理フローを周期的に実行する。S201では、ベース車両120(コネクタC1およびC2)にADK200が装着されているか否かを、ベース車両120が判断する。ベース車両120にADK200が装着されていると判断された場合には(S201にてYES)、S202において、ベース車両120が弁B2を閉じた状態(遮断状態)にする。ベース車両120にADK200が装着された状態では、前述したADK200によるラジエータファン制御(図3に示したS101およびS102)が実行される。これにより、熱源HP1およびHP2が冷却される。他方、ベース車両120にADK200が装着されていないと判断された場合には(S201にてNO)、S203において、ベース車両120が弁B2を開いた状態(流通状態)にする。ベース車両120にADK200が装着されていない状態では、コネクタC1およびC2で流路が遮断されるとともに、弁B2が開いてバイパス流路B1が流通状態になる。そして、ベース車両120は、S204において、温度センサT3およびT4による検出結果を用いて、熱源HP2が目標温度まで冷却されるようにラジエータファン152を制御する。ベース車両120は、前述したADK200によるラジエータファン制御(図3参照)に準ずる態様で、ラジエータファン152の回転速度を決定してもよい。
【0050】
上記変形例に係る構成によれば、ベース車両120にADK200が装着された状態においては、ラジエータ装置150Aによって熱源HP1,HP2の温度上昇を抑制することができるとともに、ベース車両120にADK200が装着されていない状態においては、ラジエータ装置150Aによって熱源HP2の温度上昇を抑制することができる。
【0051】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 車両、100 車両プラットフォーム、110 車両制御インターフェースボックス、120 ベース車両、126 ボディシステム、126a ボディECU、150,150A ラジエータ装置、151 ラジエータ、152 ラジエータファン、153 ポンプ、200 自動運転キット、C1,C2 コネクタ、HP1,HP2 熱源、T1,T2,T3,T4 温度センサ。
図1
図2
図3
図4
図5