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特開2025-43408蒸気弁、蒸気タービン、及び火力発電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025043408
(43)【公開日】2025-04-01
(54)【発明の名称】蒸気弁、蒸気タービン、及び火力発電システム
(51)【国際特許分類】
   F01D 17/10 20060101AFI20250325BHJP
   F16K 1/32 20060101ALN20250325BHJP
【FI】
F01D17/10 H
F01D17/10 B
F01D17/10 C
F16K1/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150642
(22)【出願日】2023-09-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100118474
【弁理士】
【氏名又は名称】寺脇 秀▲徳▼
(74)【代理人】
【識別番号】100200148
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100234305
【弁理士】
【氏名又は名称】合瀬 恵
(72)【発明者】
【氏名】堀井 俊一
【テーマコード(参考)】
3G071
3H052
【Fターム(参考)】
3G071AB01
3G071BA22
3G071CA01
3G071DA02
3G071DA05
3H052AA01
3H052CD09
3H052EA05
(57)【要約】
【課題】油筒内部にドレンが流れ込まない蒸気弁を提供することである。
【解決手段】上記課題を達成するために、本実施形態の蒸気弁は、弁体が一端に連結された弁棒の、前記一端とは異なる側の端部に接続されるコネクタと、前記コネクタよりも前記弁棒の軸方向を中心とする径方向外側に設けられるドレンパンであって、前記コネクタの外側面と対向する隔壁を具備するドレンパンと、を備えたことを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体が一端に連結された弁棒の、前記一端とは異なる側の端部に接続されるコネクタと、
前記コネクタよりも前記弁棒の軸方向を中心とする径方向外側に設けられるドレンパンであって、前記コネクタの外側面と対向する隔壁を具備するドレンパンと、
を備えたことを特徴とする蒸気弁。
【請求項2】
前記コネクタは、
前記弁棒の前記異なる側の端部と接続する凹部を含む第一部位と、
前記第一部位のうち、前記軸方向の下側に設けられると共に、前記径方向の外径について、前記第一部位よりも小さい外径で構成される第二部位と、
を含み、
前記隔壁は、前記第二部位の外側面と対向するように設けられることを特徴とする請求項1記載の蒸気弁。
【請求項3】
前記第一部位と前記第二部位との境界のうち、前記第二部位と接続されていない前記第一部位の端部に設けられるドレン切りをさらに備えたことを特徴とする請求項2記載の蒸気弁。
【請求項4】
前記ドレン切りは、
前記径方向外側の先端において、水切り加工された先端部分と、
前記先端部分よりも径方向内側において、上側に加工された加工面と、
を含むことを特徴とする請求項3記載の蒸気弁。
【請求項5】
前記隔壁は、前記第一部位の外側面より前記径方向内側となる形状で設けられることを特徴とする請求項2または請求項3記載の蒸気弁。
【請求項6】
前記隔壁は、前記先端部分より前記径方向内側となる形状で設けられることを特徴とする請求項4記載の蒸気弁。
【請求項7】
請求項1記載の蒸気弁を備えたことを特徴とする蒸気タービン。
【請求項8】
請求項7記載の蒸気タービンを備えたことを特徴とする火力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蒸気弁、蒸気タービン、及び火力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電システムに用いられる蒸気タービンの回転数や出力の制御は、蒸気タービンに供給される蒸気の流量を調整する種々の蒸気弁の開度を、蒸気弁駆動装置で制御することで実現される。蒸気弁は、例えば、ボイラから高圧タービンに蒸気を供給する主蒸気系統には主蒸気止め弁と蒸気加減弁が設けられ、蒸気タービンに流入する蒸気の流量や流速を調整する。種々の蒸気弁の多くは、弁ケーシングと、弁座と、弁棒と、弁体と、油筒と、駆動ピストンと、駆動機構とを備える。蒸気弁駆動装置による制御信号を駆動機構が受信すると、駆動機構を介して油筒内部の駆動ピストンが可動し、駆動ピストンと連動して弁棒も可動する。弁棒の他端には弁体が設けられており、弁棒が可動することで弁体と弁座との距離が変化し、弁ケーシング内部の流路が開閉される。弁体と弁座とが離れた開状態の場合には、蒸気系統から導かれた蒸気が弁ケーシング内部を通過し、蒸気タービンへ供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-144193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蒸気が弁ケーシング内部を通過する際に、弁ケーシングと弁棒の隙間から弁ケーシング外部に蒸気が漏れる可能性がある。火力発電システムの運転起動時等、弁ケーシング外部の温度が弁ケーシング内部の温度より低い場合には、弁ケーシング外部に漏出した蒸気の一部が凝結してドレン化してしまうことがある。この場合に、蒸気弁の中でも、弁体よりも下側に弁棒や油筒が設けられる下駆動型の蒸気弁においては、ドレンが弁棒の側面をつたって油筒内部に流れ込むと、油筒内部に腐食が生じてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、油筒内部にドレンが流れ込まない蒸気弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、本実施形態の蒸気弁は、弁体が一端に連結された弁棒の、前記一端とは異なる側の端部に接続されるコネクタと、前記コネクタよりも前記弁棒の軸方向を中心とする径方向外側に設けられるドレンパンであって、前記コネクタの外側面と対向する隔壁を具備するドレンパンと、を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態における火力発電システム1の一例を示す概略構成図。
図2】(a)は、蒸気弁100の一例を示す概略図であり、(b)は、(a)の領域Pにおけるカップリング機構105の断面図。
図3】(a)は、蒸気弁200の一例を示す概略図であり、(b)は、(a)の領域Qにおけるカップリング機構205の断面図であり、(c)は、(b)の領域Rにおけるカップリング機構205の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係る蒸気弁について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態を例示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、以降では本発明の実施形態と従来との差異をより明確にするため、はじめに比較例として従来の蒸気弁を説明し、その後、本実施形態の蒸気弁を説明する。この際に、同一部分又は同様の機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、図の寸法比率が実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図から省略される場合がある。
【0009】
まず、図1を用いて、本実施形態の火力発電システムについて説明する。図1は、本実施形態における火力発電システム1の一例を示す概略構成図である。図1の火力発電システム1は、ボイラ2と、主蒸気管3と、主蒸気止め弁4と、蒸気加減弁5と、高圧タービン6と、低温再熱管7と、逆止弁8と、高温再熱管9と、再蒸気止め弁10と、インターセプト弁11と、を備える。また、火力発電システム1は、中圧タービン12と、クロスオーバ管13と、低圧タービン14と、復水器15と、復水管16と、給水ポンプ17と、高圧タービンバイパス管18と、高圧タービンバイパス弁19と、低圧タービンバイパス管20と、低圧タービンバイパス弁21と、を備える。 ボイラ2は復水を加熱し、復水から蒸気を発生させる。主蒸気管3は、ボイラ2で発生させた蒸気を高圧タービン6に導く配管である。主蒸気管3には、主蒸気止め弁4及び蒸気加減弁5が設けられ、主蒸気管3から高圧タービン6へ供給される蒸気の流量を調整する。
【0010】
高圧タービン6は、回転軸に連結された動翼(図示省略)により、蒸気が通過する際に蒸気から受ける仕事を回転エネルギに変換し、回転軸を介してその回転エネルギを発電機(図示省略)に伝える。本実施形態においては、高圧タービン6の他、後述する中圧タービン12、低圧タービン14と発電機(図示省略)とが回転軸を介して、回転軸の軸方向に連結されている。すなわち、高圧タービン6、中圧タービン12、および低圧タービン14のそれぞれで生じる回転エネルギが回転軸を介して発電機(図示省略)に伝わる。低温再熱管7は、高圧タービン6で仕事をした後の蒸気をボイラ2の再熱器に導く配管である。低温再熱管7には、蒸気が逆流することを防ぐための逆止弁8が設けられる。高温再熱管9は、ボイラ2の再熱器で再加熱された蒸気(再熱蒸気)を中圧タービン12に導く配管である。高温再熱管9には、再蒸気止め弁10及びインターセプト弁11が設けられる。
【0011】
中圧タービン12は、高圧タービン6と同様、回転軸に連結された動翼(図示省略)により、蒸気が通過する際に蒸気から得た回転エネルギを、回転軸を介して発電機(図示省略)に伝える。クロスオーバ管13は、中圧タービン12で仕事をした後の蒸気を低圧タービン14に導く配管である。
【0012】
低圧タービン14は、高圧タービン6および中圧タービン12と同様、回転軸に連結された動翼(図示省略)により、蒸気が通過する際に蒸気から得たエネルギを、回転軸を介して発電機(図示省略)に伝える。復水器15は、低圧タービン14の下流側に設けられ、低圧タービン14で仕事をした後の蒸気を凝縮して復水に戻す。復水管16は、復水器15とボイラ2とを繋ぐ配管であり、復水をボイラ2に導く。復水管16には、給水ポンプ17が設けられ、給水ポンプ17で昇圧された後の復水はボイラ2へ導かれる。
【0013】
高圧タービンバイパス管18は、主蒸気止め弁4上流側の主蒸気管3と逆止弁8下流側の低温再熱管7とを繋ぐ配管である。ここでいう上流側/下流側とは、蒸気の流れ方向に対する上流側/下流側を指す。高圧タービンバイパス管18には、高圧タービンバイパス弁19が設けられる。通常運転時には高圧タービンバイパス弁19が閉じているが、火力発電システム1の起動・停止・緊急停止時においては、高圧タービンバイパス弁19を開いて、ボイラ2からの蒸気を主蒸気管3から低温再熱管7に導く。
【0014】
低圧タービンバイパス管20は、再蒸気止め弁10上流側の高温再熱管9と復水器15とを繋ぐ配管である。低圧タービンバイパス管20には、低圧タービンバイパス弁21が設けられる。通常運転時には低圧タービンバイパス弁21が閉じているが、火力発電システム1の起動・停止・緊急停止時においては、低圧タービンバイパス弁21を開いて、ボイラ2の再熱器からの蒸気を高温再熱管9から復水器15に導く。
【0015】
火力発電システム1の通常運転時の場合には、ボイラ2で復水を加熱して発生させた蒸気は、主蒸気管3を通り、主蒸気止め弁4と蒸気加減弁5を介して高圧タービン6に導かれ、高圧タービン6で動翼(図示省略)を回転させる。高圧タービン6で仕事をした後の蒸気は、低温再熱管7を通り、逆止弁8を介してボイラ2の再熱器に導かれ、再熱器で再加熱される。再加熱された蒸気(再熱蒸気)は、高温再熱管9を通り、再蒸気止め弁10とインターセプト弁11を介して中圧タービン12に導かれ、中圧タービン12で動翼(図示省略)を回転させる。中圧タービン12で仕事をした後の蒸気は、クロスオーバ管13を通り低圧タービン14に導かれ、低圧タービン14で動翼(図示省略)を回転させる。低圧タービン14で仕事をした後の蒸気は、復水器15で凝縮され復水に戻される。復水は、給水ポンプ17で昇圧された後に復水管16を通りボイラ2に導かれる。ボイラ2に導かれた復水は、ボイラ2で加熱され、再び高圧タービン6へ導かれる。
【0016】
一方、火力発電システム1の起動、停止、緊急停止時等の場合には、高圧タービンバイパス弁19、低圧タービンバイパス弁21を開く。すると、ボイラ2で復水を加熱して発生させた蒸気は、主蒸気管3から高圧タービンバイパス管18を通って低温再熱管7、ボイラ2の再熱器、高温再熱管9、低圧タービンバイパス管20を順次経て、復水器15に導かれる。復水器15に導かれた蒸気は、復水器15凝縮され復水に戻される。この復水は、給水ポンプ17で昇圧された後に、復水管16を通って再びボイラ2に導かれる。
【0017】
次に、本実施形態の蒸気弁と従来の蒸気弁との構成の違いをより明確にするため、従来の蒸気弁の構成を比較例として説明した後に、本実施形態に係る蒸気弁の構成を説明する。
【0018】
(比較例)
図2を用いて、従来の蒸気弁100について説明する。図2(a)は、蒸気弁100の一例を示す概略図であり、図2(b)は、図2(a)の領域Pにおけるカップリング機構105の断面図である。ここでいう蒸気弁100とは、上述した火力発電システム1の各種配管に設けられる主蒸気止め弁4、蒸気加減弁5、再蒸気止め弁10等のうち、下駆動型のものを指す。また、ここでいう下駆動型とは、後述する弁体104が油筒106よりも重力方向の上側(以降の説明では、単に上側という)に位置する蒸気弁を指す。
【0019】
まず、図2(a)を用いて、蒸気弁100の一例を示す概略図について説明する。図2(a)の蒸気弁100は、弁ケーシング101と、弁座102と、弁棒103と、弁体104と、カップリング機構105と、油筒106と、駆動機構107と、を備える。
【0020】
弁ケーシング101は、蒸気流路を区画するとともに、弁棒102の一部と弁体103を収容する。弁ケーシング101は、蒸気入口101aと、蒸気出口101bと、を有する。蒸気入口101aは、配管(主蒸気管3又は高温再熱管9)を介してボイラ2と接続されており、蒸気出口101bは、配管(主蒸気管3又は高温再熱管9)を介して蒸気タービン(高圧タービン6、中圧タービン12、又は低圧タービン14)に接続されている。
【0021】
弁座102は、弁ケーシング101内部の蒸気流路の途中で弁ケーシング101内壁に設けられる。具体的には、弁座102は、蒸気弁100が閉じている場合に弁体104と当接するように、弁ケーシング101の内壁に設けられる。ここでいう当接とは、弁座102と弁体104とが接触する箇所から蒸気が漏れ出ない程度に弁座102が弁体104と接する状態を指す。
【0022】
弁棒103は、弁ケーシング101に収容される蒸気弁100の弁軸である。弁棒103の一端(上側の端)は弁体104に、他端(下側の端)は後述するカップリング機構105のコネクタ108にそれぞれ接続される。
【0023】
弁体104は、弁ケーシング101内部の蒸気流路に位置する弁棒103の一端に設けられ、弁ケーシング101に収容される。弁体104は、弁棒103の摺動と連動して弁棒103の軸方向を動く。具体的には、蒸気弁100が閉じている場合には弁体104と弁座102とが当接し、この状態から弁棒103を上方向に摺動させると、弁棒103と連動して弁体104が弁座102から離れて蒸気弁100が開く。ここでいう蒸気弁100が閉じている場合(閉状態)と開いている状態(開状態)とを実現するために、弁棒103と弁体104とが弁棒103の軸方向で連動する。
【0024】
カップリング機構105は、弁棒102と油筒106との間に設けられる機構である。カップリング機構105の詳細は後述する。
【0025】
油筒106は、弁ケーシング101の重力方向の下側(以降の説明では、単に下側という)に設けられる。油筒106は、その内部に駆動ピストン(図示省略)を備える。油筒106では、油圧等により駆動ピストン(図示省略)が駆動すると、その駆動力がカップリング機構105を介して弁棒102に伝わり、弁棒102を摺動させる。
【0026】
駆動機構107は、油筒106に接続される。駆動機構107は、蒸気弁駆動装置(図示省略)による制御信号を受信すると、油筒106内部の駆動ピストン(図示省略)を駆動させる。例えば、駆動機構107は、電磁弁を用いた駆動機構である。
【0027】
蒸気弁駆動装置(図示省略)による制御信号を駆動機構107が受信すると、駆動機構を介して油筒106内部の駆動ピストン(図示省略)が駆動し、カップリング機構105を介して駆動ピストン(図示省略)と連動して弁棒103が摺動する。弁棒103と連動して弁体104が弁棒103の軸方向を摺動することで、弁座102と弁体104との距離が変化し、弁ケーシング101内部の蒸気流路が開閉される。開状態の場合には、蒸気入口101aから蒸気出口101bに蒸気が流れ、この蒸気が蒸気タービン(高圧タービン6、中圧タービン12、又は低圧タービン14)へ供給される。一方で、閉状態の場合には、弁体104が弁座102と当接し、蒸気入口101aと蒸気出口101bとの間を塞いでいるため、蒸気入口101aから蒸気出口101bには蒸気が流れない。
【0028】
次に、図2(b)を用いて、従来の蒸気弁100のカップリング機構105について説明する。図2(b)のカップリング機構105は、コネクタ108と、ドレンパン109と、カップリング110と、ピストンロッド111と、ヨーク112と、を備える。
【0029】
コネクタ108は、弁棒103と接続する側(上側)の一端に凹部108aを、他端(下側)の外側面に凹部108bを有する。つまり、コネクタ108は、凹部108aを上側、凹部108bを下側として、凹部108aで弁棒103に接続されると共に、凹部108bでカップリング110と嵌合する。これにより、コネクタ108が、弁棒103とカップリング110とを連結させる。
【0030】
ドレンパン109は、受け皿109aと、第一のドレン孔109bと、からなる。受け皿109aは、弁棒103の軸方向を中心とするコネクタ108の径方向外側(以降の説明では、単に径方向外側という)かつカップリング110の上側に設けられ、ボルト113を介してカップリング110に固定される。第一のドレン孔109bは、受け皿109aのうち径方向外側、具体的には、受け皿109aのうちカップリング110と接続される箇所よりも径方向外側に設けられる。さらに、第一のドレン孔109bは、受け皿109aのうち径方向外側から下側を長手方向に延びた形状、かつ、下端が後述するドレン溝112cの上側に位置するよう設けられ、受け皿109aが受けたドレンを下側に向けて通過させる。弁ケーシング101と弁棒103の隙間から弁ケーシング101外部に漏出した蒸気が凝結してドレン化した場合に、ドレンパン109は、受け皿109aで弁棒103及びコネクタ108をつたって落下したドレンを受け、そのドレンを第一のドレン孔109bから排出する。
【0031】
カップリング110は、ピストンロッド111の上側に設けられ、ボルト113を介してピストンロッド111に固定される。すなわち、ボルト113は、上側から順に、ドレンパン109の受け皿109a、カップリング110,およびピストンロッド111を固定する。また、カップリング110は、C字形状のカップリング部材から成る二つ割れ構造で形成され、コネクタ108の凹部108bと嵌合する。
【0032】
ピストンロッド111は、油筒106の上側に、油筒106内部の駆動ピストン(図示省略)と連結するように設けられる。ピストンロッド111は、油筒106内部の駆動ピストン(図示省略)の駆動と連動し、カップリング110及びコネクタ108を介して弁棒103を摺動させる。
【0033】
ヨーク112は、弁ケーシング101と油筒106とを連結すると共に、カップリング機構105を囲うように設けられる。ヨーク112は、接続片112aと、側壁112bと、を備える。接続片112aは、ピストンロッド111よりも径方向外側かつ油筒106の上側に設けられる。また、接続片112aは、第一のドレン孔109bの下側に位置して、第一のドレン孔109bから落下するドレンを受けるドレン溝112cと、ドレン溝112cから径方向外側に延びた第二のドレン孔112dと、を有する。側壁112bは、ドレンパン109よりも径方向外側かつ接続片112aの上側に設けられ、弁ケーシング101と油筒106とを連結させる。ヨーク112では、第一のドレン孔109bからドレン溝112cに落下したドレンを第二のドレン孔112dから外部に排出する。
【0034】
蒸気弁駆動装置(図示省略)による制御信号を駆動機構107が受信すると、駆動機構を介して油筒106内部の駆動ピストン(図示省略)が駆動する。すると、ピストンロッド111が、駆動ピストン(図示省略)の駆動に連動し、カップリング110及びコネクタ108を介して弁棒103を摺動させる。これにより、弁体104が弁棒103と連動して軸方向を動くことで、弁ケーシング101内部の蒸気流路が開閉される。
【0035】
ここで、比較例の課題をより明確にするために、弁ケーシング101と弁棒103との隙間から漏出したドレンの流れを説明する。まず、図2(b)における流れAを説明する。弁ケーシング101と弁棒103との隙間から漏出したドレンは、弁棒102及びコネクタ108の外側面をつたってカップリング110の上面に落下する。カップリング110の上面に落下したドレンは、カップリング110の二つ割れ構造の隙間を通ってカップリング110の内側に流れ込み、ピストンロッド111の上面に落下する。ピストンロッド111の上面に落下したドレンは、カップリング110の二つ割れ構造の隙間を径方向外側に向けて流れ、ピストンロッド111の外側面をつたって油筒106内部に落下する。油筒106内部に落下したドレンが滞留すると、油筒106内部に腐食が生じてしまう。
【0036】
次に、図2(b)における流れBを説明する。弁ケーシング101と弁棒103との隙間から漏出したドレンは、ドレンパン109の受け皿109aに落下する。ドレンパン109の受け皿109aに落下したドレンは、第一のドレン孔109bを通ってドレン溝112cに落下する。ドレン溝112cに落下したドレンは、第二のドレン孔112dから外部に排出される。このため、油筒106内部に腐食が生じにくい。
【0037】
以上で説明したように、比較例のカップリング機構105では、図2(b)における流れAのようにドレンが流れる限り、油筒106内部に腐食が生じてしまう。
【0038】
(本実施形態に係る蒸気弁の構成)
図3を用いて、本実施形態に係る蒸気弁200のカップリング機構205について説明する。図3(a)は、蒸気弁200の一例を示す概略図であり、図3(b)は、図3(a)の領域Qにおけるカップリング機構205の断面図であり、図3(c)は、図3(b)の領域Rにおけるカップリング機構205の拡大図である。なお、以降では比較例と異なる箇所を中心に説明し、それ以外の箇所については、比較例と同様であるとして同じ図番を付し、その説明を省略する。
【0039】
図3(b)のカップリング機構205は、コネクタ208と、ドレンパン209と、カップリング110と、ピストンロッド111と、ヨーク112と、を備える。
【0040】
図3(c)に示すように、コネクタ208は、第一部位208aと、第二部位208bと、第三部位208cと、を備える。第一部位208、第二部位208b、および第三部位208は、いずれも弁棒103の軸方向が中心軸となるように設けられることが好ましい。
【0041】
第一部位208aは、コネクタ208の上側を構成する部位であり、弁棒103との接続箇所である凹部108aが設けられる。また、第一部位208aの下側の端には、後述するドレン切り208dが設けられる。
【0042】
第二部位208bは、第一部位208aの下側に位置する部位であり、第一部位208aの径方向の外径よりも小さい外径で形成される。
【0043】
第三部位208cは、第二部位208bの下側に位置する部位であり、カップリング110との嵌合箇所である凹部108bが設けられる。
【0044】
ドレン切り208dは、第一部位208aの下側の端に設けられる。具体的には、第一部位208aと第二部位208bとの境界のうち、第二部位208bと接続されていない第一部位208aの端部に、ドレン切り208dが設けられる。例えば、ドレン切り208dは中心軸に対して垂直、中心軸に向けて上側へ先細るなどの形状として設けられる。ドレン切り208dのうち径方向外側の先端においては、第一部位208aの側面をつたってきたドレンが水切りされるように先端部分208eが設けられる。例えば、先端部分208eは直角、鋭角などの角度を有する角部(本実施形態における、水切り加工された形状)として設けられる。また、ドレン切り208dのうち、水切り加工された先端部分208eよりも径方向内側の部分においては、先端部分208eで水切りされなかったドレンが、ドレン切り208dの径方向外側から内側に侵入することを防げるように加工面208fが設けられる。例えば、加工面208fは上側に湾曲、凹型などの形状として設けられる(本実施形態における、上側に加工された形状)。
【0045】
ドレンパン209は、受け皿109aと、第一のドレン孔109bと、隔壁209aを含む。受け皿109aは、コネクタ208の第二部位208bの径方向外側かつカップリング110の上側に設けられ、ボルト113を介してカップリング110に固定される。第一のドレン孔109bは、受け皿109aのうち径方向外側、具体的には、受け皿109aのうちカップリング110と接続される箇所よりも径方向外側に設けられる。さらに、第一のドレン孔109bは、受け皿109aのうち径方向外側から下側を長手方向に延びた形状、かつ、下端が後述するドレン溝112cの上側に位置するよう設けられ、受け皿109aが受けたドレンを下側に向けて通過させる。隔壁209aは、第二部位208bの外側面と対向する位置で、受け皿109aの径方向内側に連結される。ここでいう第二部位208bの外側面と対向する位置とは、コネクタ208の第二部位208bと隔壁209aとの隙間上部にドレンが落下しても、表面張力作用によるシール機能を発揮し、この隙間にドレンが流れ込むことが少ない程度に離間した位置を指す。また、隔壁209aは、ドレン切り208dの先端部分208eより径方向内側となる形状で設けられる。ここでいう先端部分208eより径方向内側となる形状とは、先端部分208eで水切りされたドレンが隔壁209a上部に落下しない程度に径方向内側となる形状を指す。例えば、隔壁209aは、受け皿109aから上側を長手方向として延びた壁面を構成する。
【0046】
ここで、本実施形態における、弁ケーシング101と弁棒103との隙間から漏出したドレンの流れを説明する。まず、図3(b)における流れCについて説明する。
【0047】
弁ケーシング101と弁棒103との隙間から漏出したドレンは、弁棒103及びコネクタ208の外側面をつたってドレン切り208dに到達する。ドレン切り208dに到達したドレンは、ドレン切り208dにより水切りされ、ドレンパン209の受け皿109aに落下する。ドレンパン209の受け皿109aに落下したドレンは、第一のドレン孔109bを通ってドレン溝112cに落下する。ドレン溝112cに落下したドレンは、ドレン溝112cから第二のドレン孔112dを通って外部に排出される。このため、カップリング110内側及び油筒106内部にドレンが滞留することはなく、油筒106内部に腐食が生じることを抑制できる。
【0048】
次に、図3(b)における流れBについて説明する。弁ケーシング101と弁棒103との隙間から漏出したドレンは、ドレンパン209の受け皿109aに直接落下する。ドレンパン209の受け皿109aに落下したドレンは流れCと合流し、第一のドレン孔109bを通ってドレン溝112cに落下し、ドレン溝112cから第二のドレン孔112dを通って外部に排出される。このため、カップリング110内側及び油筒106内部にドレンが滞留することはなく、油筒106内部に腐食が生じることを抑制できる。
【0049】
以上、本実施形態における蒸気弁200によれば、弁ケーシング101と弁棒103との隙間から漏出したドレンが落下してきたとしても、コネクタ208の第二部位208bの外側面と対向する位置に隔壁209aが設けられることから、隔壁209a上部には落下せずにドレンパン209の受け皿109aに落下する。すなわち、ドレンが隔壁209aを超えてコネクタ208と隔壁209aとの隙間に侵入することを抑制できる。また、たとえドレンがコネクタ208と隔壁209aとの隙間上部に落下したとしても、その隙間は僅かなものであって、表面張力作用によるシール機能を発揮することから、ドレンがその隙間に侵入することをさらに抑制することもできる。結果として、油筒106内部に腐食が生じることを防ぐことができる。
【0050】
なお、本実施形態の蒸気弁200では、ドレン切り208dを有するコネクタ208と、隔壁209aを有するドレンパン209と、を備える場合を例示して説明しているが、蒸気弁200は少なくとも油筒106内部にドレンが流れ込まない構造を備えていれば良い。例えば、ドレン切り208dと同様な機能を備えた構成として、ドレン切り208dの代わりに、コップ形状又は円板形状のカバーを既設のコネクタ108に取り付けても良い。
【0051】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1…火力発電システム、2…ボイラ、3…主蒸気管、4…主蒸気止め弁、5…蒸気加減弁、6…高圧タービン、7…低温再熱管、8…逆止弁、9…高温再熱管、10…再蒸気止め弁、11…インターセプト弁、12…中圧タービン、13…クロスオーバ管、14…低圧タービン、15…復水器、16…復水管、17…給水ポンプ、18…高圧タービンバイパス管、19…高圧タービンバイパス弁、20…低圧タービンバイパス管、21…低圧タービンバイパス弁、100…蒸気弁、101…弁ケーシング、101a…蒸気入口、101b…蒸気出口、102…弁座、103…弁棒、104…弁体、105…カップリング機構、106…油筒、107…駆動機構、108…コネクタ、108a…凹部、108b…凹部、109…ドレンパン、109a…受け皿、109b…第一のドレン孔、110…カップリング、111…ピストンロッド、112…ヨーク、112a…接続片、112b…側壁、112c…ドレン溝、112d…第二のドレン孔、113…ボルト、200…蒸気弁、205…カップリング機構、208…コネクタ、208a…第一部位、208b…第二部位、208c…第三部位、208d…ドレン切り、208e…先端部分、208f…加工面、209…ドレンパン、209a…隔壁。
図1
図2
図3