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特開2025-43451道路施設の監視装置および道路施設の監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025043451
(43)【公開日】2025-04-01
(54)【発明の名称】道路施設の監視装置および道路施設の監視方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20250325BHJP
【FI】
G08G1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150730
(22)【出願日】2023-09-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】織田 穣
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB13
5H181CC03
5H181CC14
5H181EE02
5H181EE07
5H181EE11
(57)【要約】
【課題】道路施設に関し、長期間における緩やかな変化により発生する車両走行環境に関する不具合を検知することが可能な道路施設の監視装置を提供する。
【解決手段】道路施設の監視装置20は、正常時データ記憶部211と走行状態データ算出部221と判定部223とを備える。正常時データ記憶部211は、監視対象の道路施設Xの車両走行環境が正常な状態にある第1期間における、道路施設X内を走行する車両の走行動作に関する走行状態データを正常時データとして記憶する。走行状態データ算出部221は、監視対象である第2期間における、道路施設X内を走行する車両の走行動作に関する走行状態データを監視時データとして算出する。判定部223は、正常時データと監視時データとの差分値が所定の閾値以上のときに、道路施設Xの車両走行環境に不具合が発生したと判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の道路施設の車両走行環境が正常な状態にある第1期間における、前記道路施設内を走行する車両の走行動作に関する走行状態データを正常時データとして記憶する、正常時データ記憶部と、
監視対象である第2期間における、前記道路施設内を走行する車両の走行動作に関する走行状態データを監視時データとして取得する走行状態データ取得部と、
前記正常時データ記憶部に記憶された正常時データと、前記走行状態データ取得部が取得した監視時データとの差分値が所定の閾値以上のときに、前記道路施設の車両走行環境に不具合が発生したと判定する判定部と、を備えた道路施設の監視装置。
【請求項2】
前記正常時データは、前記第1期間内に取得された、前記道路施設内を走行する複数車両の走行状態データに基づく値である、請求項1に記載の道路施設の監視装置。
【請求項3】
前記監視時データは、前記第2期間内に取得された、前記道路施設内を走行する複数車両の走行状態データに基づく値である、請求項1に記載の道路施設の監視装置。
【請求項4】
前記正常時データおよび前記監視時データは、前記道路施設内を走行する車両の上下方向の移動量に関する標準偏差に基づく値であるかまたは、前記道路施設内で車両が走行する頻度が低い箇所の路面から走行する車両の上端までの外観高さに基づく値である、請求項1に記載の道路施設の監視装置。
【請求項5】
前記正常時データおよび前記監視時データは、前記道路施設内を走行する車両の車種ごとに取得される、請求項1に記載の道路施設の監視装置。
【請求項6】
前記正常時データおよび前記監視時データは、前記道路施設内で車両が走行する頻度が低い箇所の路面から走行する車両の上端までの高さに基づく値であり、前記走行状態データ取得部は、前記第1期間内に取得された、前記道路施設内を走行する複数車両の走行状態データのうち、予め保持した車種ごとの車両高さ情報との差分が所定値以内の走行状態データを用いて前記正常時データを算出する、請求項2に記載の道路施設の監視装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記差分値が所定の閾値以上の車種が所定割合以上あるときに、前記道路施設の車両走行環境に不具合が発生したと判定する、請求項5に記載の道路施設の監視装置。
【請求項8】
道路施設の監視装置が、
監視対象の道路施設の車両走行環境が正常な状態にある第1期間における、前記道路施設内を走行する車両の走行動作に関する走行状態データを正常時データとして記憶し、
監視対象である第2期間における、前記道路施設内を走行する車両の走行動作に関する走行状態データを監視時データとして取得し、
前記正常時データと、前記監視時データとの差分値が所定の閾値以上のときに、前記道路施設の車両走行環境に不具合が発生したと判定する、道路施設の監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、道路施設の監視装置および道路施設の監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁などの道路施設は、車両が安全に走行できる状態を保つために、車両走行環境に関する不具合の有無を監視する必要がある。道路施設に関する不具合を監視する技術としては、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載の技術を用いて、例えば監視対象の道路内の複数箇所の交通量を比較することで、道路内で発生した事故等の異常を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-320686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1に記載の技術では、事故等の即時的な異常による不具合は検知することができるが、長期間における緩やかな変化により発生する不具合、例えば経年劣化による設備の振動増大、または轍掘れの増大などは検知することができないという問題があった。
【0005】
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、道路施設に関し、長期間における緩やかな変化により発生する車両走行環境に関する不具合を検知することが可能な道路施設の監視装置および道路施設の監視方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る道路施設の監視装置は、監視対象の道路施設の車両走行環境が正常な状態にある第1期間における、前記道路施設内を走行する車両の走行動作に関する走行状態データを正常時データとして記憶する、正常時データ記憶部と、監視対象である第2期間における、前記道路施設内を走行する車両の走行動作に関する走行状態データを監視時データとして取得する走行状態データ取得部と、前記正常時データ記憶部に記憶された正常時データと、前記走行状態データ取得部が取得した監視時データとの差分値が所定の閾値以上のときに、前記道路施設の車両走行環境に不具合が発生したと判定する判定部と、を備える。
【0007】
前記正常時データは、前記第1期間内に取得された、前記道路施設内を走行する複数車両の走行状態データに基づく値であってもよい。
【0008】
また、前記監視時データは、前記第2期間内に取得された、前記道路施設内を走行する複数車両の走行状態データに基づく値であってもよい。
【0009】
また、前記正常時データおよび前記監視時データは、前記道路施設内を走行する車両の上下方向の移動量に関する標準偏差に基づく値であるかまたは、前記道路施設内で車両が走行する頻度が低い箇所の路面から走行する車両の上端までの外観高さに基づく値であってもよい。
【0010】
また、前記正常時データおよび前記監視時データは、前記道路施設内を走行する車両の車種ごとに取得されてもよい。
【0011】
また、前記正常時データおよび前記監視時データは、前記道路施設内で車両が走行する頻度が低い箇所の路面から走行する車両の上端までの高さであり、前記走行状態データ算出部は、前記第1期間内に取得された、前記道路施設内を走行する複数車両の走行状態データのうち、予め保持した車種ごとの車両高さ情報との差分が所定値以内の走行状態データを用いて前記正常時データを算出してもよい。
【0012】
また、前記判定部は、前記差分値が所定の閾値以上の車種が所定割合以上あるときに、前記道路施設の車両走行環境に不具合が発生したと判定してもよい。
【0013】
また、本開示に係る道路施設の監視方法は、道路施設の監視装置が、監視対象の道路施設の車両走行環境が正常な状態にある第1期間における、前記道路施設内を走行する車両の走行動作に関する走行状態データを正常時データとして記憶し、監視対象である第2期間における、前記道路施設内を走行する車両の走行動作に関する走行状態データを監視時データとして取得し、前記正常時データと、前記監視時データとの差分値が所定の閾値以上のときに、前記道路施設の車両走行環境に不具合が発生したと判定する。
【発明の効果】
【0014】
本開示の道路施設の監視装置および道路施設の監視方法によれば、道路施設に関し、長期間における緩やかな変化により発生する車両走行環境に関する不具合を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る道路施設の監視装置を利用した監視システムの構成を示す全体図である。
図2】一実施形態に係る道路施設の監視装置による正常時データ設定処理の流れを示すフローチャートである。
図3】一実施形態に係る道路施設の監視装置による設備監視処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、監視対象の道路施設に関し、車両走行環境に関する不具合の有無を監視する道路施設の監視装置について、図面を参照して説明する。
【0017】
〈一実施形態による道路施設の監視装置を用いた監視システムの構成〉
図1は、本実施形態による道路施設の監視装置20(以下、単に「監視装置20」と記載する)を用いた監視システム1の構成を示すブロック図である。
【0018】
監視システム1は、車両位置計測装置10と、監視装置20とを備える。車両位置計測装置10は、例えばLiDARで構成され、監視対象の道路施設X内にある所定の走行エリアARを走行する車両ごとの位置を所定時間間隔で計測する。
【0019】
監視装置20は、記憶部21と、CPU22と、出力部23とを有する。記憶部21は、正常時データ記憶部211と、閾値記憶部212とを有する。正常時データ記憶部211は、後述するようにCPU22で算出される、監視対象の道路施設Xの車両走行環境が正常な状態にある第1期間における、道路施設Xを走行する車両の走行動作に関する走行状態データを、正常時データとして記憶する。
【0020】
閾値記憶部212は、監視対象である第2期間に、走行エリアARを走行する車両の走行状態データが正常であるか否かを判定するための走行状態データの閾値を記憶する。
【0021】
CPU22(制御部または処理部の一例)は、演算装置、メモリ、及び入出力部を備える汎用のコンピュータである。CPU22には、監視装置の一部として機能させるためのコンピュータプログラム(監視用プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、CPU22は、監視装置が備える複数の情報処理回路(221、222、223)として機能する。
【0022】
その他、監視用プログラムは、HDD、SSD、USBメモリ、CD、DVD等のコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶できる。コンピュータ読取り可能な記録媒体は、例えば、非一時的な記録媒体である。監視用プログラムは、通信ネットワークを介して配信することもできる。
【0023】
なお、以下では、ソフトウェアによって監視装置が備える複数の情報処理回路(221、222、223)を実現する例を示す。ただし、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(221、222、223)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(221、222、223)を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0024】
CPU22は、走行状態データ取得部としての走行状態データ算出部221と、比較部222と、判定部223とを有する。
【0025】
走行状態データ算出部221は、第1期間に車両位置計測装置10が計測した車両ごとの位置情報を取得し、取得した情報に基づいて、車両ごとの走行動作に関する走行状態データを算出する。走行状態データ算出部221は、第1期間内における複数車両の走行状態データの平均値を正常時データとして算出し、正常時データ記憶部211に記憶させる。複数車両の走行状態データの平均値を正常時データとすることで、精度の高い正常時データを算出することができる。
【0026】
また走行状態データ算出部221は、監視対象である第2期間に車両位置計測装置10が計測した車両ごとの位置情報を取得し、取得した情報に基づいて、車両ごとの走行動作に関する走行状態データを算出する。走行状態データ算出部221は、第2期間内における複数車両の走行状態データの平均値を、監視時データとして算出する。複数車両の走行状態データの平均値を監視時データとすることで、精度の高い監視時データを算出することができる。
【0027】
比較部222は、正常時データ記憶部211に記憶された正常時データと、走行状態データ算出部221が取得した監視時データとを比較し、その差分値を算出する。
【0028】
判定部223は、比較部222が算出した差分値が、閾値記憶部212に記憶した閾値以上のときに、監視対象の道路施設Xの車両走行環境に不具合が発生したと判定する。
【0029】
〈一実施形態による監視システムの動作〉
図2は、本実施形態による監視システム1内の監視装置20が設備監視処理の前処理として実行する、正常時データ設定処理の流れを示すフローチャートである。正常時データ設定処理は、監視対象の道路施設Xの車両走行環境が正常な状態にある所定の第1期間、例えば、監視対象の道路施設Xが設置された直後の1週間に実行される。
【0030】
監視装置20は、第1期間が開始すると(S1の「YES」)、車両位置計測装置10に、所定の走行エリアARを走行する車両の位置計測処理を要求する。
【0031】
車両位置計測装置10は、監視装置20からの要求に応じて、第1期間中に走行エリアAR内を走行する車両を検知する都度、該当する車両の位置を所定時間間隔で計測し、計測した車両の位置情報を監視装置20に送信する。この所定時間間隔は、例えば数ミリ秒~数秒程度である。
【0032】
監視装置20では、車両位置計測装置10から所定の車両の位置情報が送信されると、この車両の位置情報を走行状態データ算出部221が取得する(S2の「YES」)。走行状態データ算出部221は、取得した情報に基づいて、車両ごとの走行動作に関する走行状態データを算出する(S3)。第1期間が終了するまでの間(S4の「NO」)、走行状態データ算出部221は、車両位置計測装置10から所定の車両の位置情報を取得する都度、走行状態データを算出する(S2の「YES」→S3)。
【0033】
第1期間が終了すると(S4の「YES」)、走行状態データ算出部221は、第1期間内に走行エリアARを走行した複数車両の走行状態データの平均値を正常時データとして算出し、正常時データ記憶部211に記憶させる(S5)。
【0034】
図3は、監視装置20が実行する設備監視処理の流れを示すフローチャートである。設備監視処理は、監視対象の道路施設Xの設置後、所定期間ごとに到来する第2期間、例えば、半年ごとに到来する1週間に、実行される。
【0035】
監視装置20は、第2期間が開始すると(S11の「YES」)、車両位置計測装置10に、走行エリアARを走行する車両の位置計測処理を要求する。
【0036】
車両位置計測装置10は、監視装置20からの要求に応じて、正常時データ設定処理の場合と同様に、走行エリアARを走行する車両ごとの位置を所定時間間隔で計測し、計測した車両ごとの位置情報を監視装置20に送信する。
【0037】
監視装置20では、車両位置計測装置10から送信された車両ごとの位置情報を、走行状態データ算出部221が取得する(S12の「YES」)。走行状態データ算出部221は、取得した情報に基づいて、車両ごとの走行動作に関する走行状態データを算出する(S13)。第2期間が終了するまでの間(S14の「NO」)、走行状態データ算出部221は、車両位置計測装置10から所定の車両の位置情報を取得する都度、走行状態データを算出する(S12の「YES」→S13)。
【0038】
第2期間が終了すると(S14の「YES」)、走行状態データ算出部221は、第2期間における複数車両の走行状態データの平均値を、監視時データとして算出する(S15)。
【0039】
次に、比較部222が、正常時データ記憶部211に記憶された正常時データと、走行状態データ算出部221が算出した監視時データとを比較し、その差分値を算出する(S16)。
【0040】
判定部223は、比較部222が算出した差分値が、閾値記憶部212に記憶した閾値未満であると判定すると(S17の「NO」)、ステップS11に戻り、次の第2期間が到来するまで待機する。
【0041】
また、判定部223は、比較部222が算出した差分値が、閾値記憶部212に記憶した閾値以上であると判定すると(S17の「YES」)、監視対象の道路施設Xの車両走行環境に不具合が発生したと判定する。判定部223は、監視対象の道路施設Xの車両走行環境に不具合が発生したと判定すると、出力部23から不具合の発生を報知する情報を出力する(S18)。
【0042】
上述した正常時データ設定処理および設備監視処理を、道路施設Xの一例である橋梁X1の監視に用いる実施例(1)、および道路X2の監視に用いる実施例(2)について、説明する。
【0043】
[橋梁X1の監視に用いる実施例(1)]
本実施例において、橋梁X1の監視処理に関する正常時データ設定処理の実行対象期間である第1期間として、例えば橋梁X1の設置直後の1週間が予め設定されている。この第1期間が開始すると(S1の「YES」)、車両位置計測装置10が所定時間間隔で、橋梁X1内の走行エリアAR1を走行する車両ごとの位置情報を取得する。車両位置計測装置10は、検出した車両ごとの位置情報を監視装置20に送信する。
【0044】
監視装置20では、車両位置計測装置10から送信された車両ごとの位置情報を、走行状態データ算出部221が取得する(S2の「YES」)。走行状態データ算出部221は、取得した情報に基づいて車両ごとの走行状態データを算出する。本実施例では走行状態データ算出部221は、走行状態データとして、走行エリアAR1内を走行する車両の上下方向の移動量に関する標準偏差を算出する(S3)。
【0045】
第1期間が終了すると(S4の「YES」)、走行状態データ算出部221は、第1期間内に走行エリアAR1を走行した複数車両に関する走行状態データの平均値を正常時データとして算出し、正常時データ記憶部211に記憶させる(S5)。例えば、走行状態データ算出部221は、第1期間内に走行エリアAR1を走行した複数車両に関する標準偏差の平均値「5cm」を、正常時データとして正常時データ記憶部211に記憶させる。
【0046】
その後、所定の第2期間が開始すると(S11の「YES」)、車両位置計測装置10が所定時間間隔で、橋梁X1内の走行エリアAR1を走行する車両ごとの位置情報を取得する。車両位置計測装置10は、検出した車両ごとの位置情報を監視装置20に送信する。
【0047】
監視装置20では、車両位置計測装置10から送信された車両ごとの位置情報を、走行状態データ算出部221が取得する(S12の「YES」)。走行状態データ算出部221は、取得した情報に基づいて車両ごとの走行状態データとして、走行エリアAR1内を走行する車両の上下方向の移動量に関する標準偏差を算出する(S13)。
【0048】
第2期間が終了すると(S14の「YES」)、走行状態データ算出部221は、第2期間内に走行エリアAR1を走行した複数車両に関する走行状態データの平均値を監視時データとして算出する(S15)。例えば、走行状態データ算出部221は、第2期間内に走行エリアAR1を走行した複数車両に関する標準偏差の平均値「8cm」を、監視時データとして算出する。
【0049】
次に、比較部222が、正常時データ記憶部211に記憶された正常時データ「5cm」と、走行状態データ算出部221が算出した監視時データ「8cm」とを比較し、その差分値「3cm」を算出する(S16)。
【0050】
判定部223は、比較部222が算出した差分値「3cm」が、閾値記憶部212に記憶した閾値以上であるか否かを判定する。本実施例では、閾値記憶部212に閾値「2cm」が記憶されており、判定部223は、比較部222が算出した差分値「3cm」が、閾値記憶部212に記憶した閾値「2cm」以上であると判定する(S17の「YES」)。
【0051】
判定部223は、比較部222が算出した差分値が、閾値記憶部212に記憶した閾値以上であると判定すると、橋梁X1の老朽化が進んで上下方向に撓みが生じており、車両走行環境に不具合が発生したと判定する。判定部223は、橋梁X1の車両走行環境に不具合が発生したと判定すると、出力部23から不具合の発生、具体的には橋梁X1の老朽化を報知する情報を出力する(S18)。
【0052】
上述した実施例(1)によれば、監視装置20は、長期間における緩やかな変化により発生する車両走行環境に関する不具合、特に、経年劣化により上下方向に撓みが生じる設備の老朽化を精度良く検知することができる。
【0053】
[道路X2の監視に用いる実施例(2)]
本実施例において、道路X2の監視処理に関する正常時データ設定処理の実行対象期間である第1期間としては、例えば道路X2の施工直後の1週間が予め設定されている。この第1期間が開始すると(S1の「YES」)、車両位置計測装置10が所定時間間隔で、道路X2内の走行エリアAR2を走行する車両ごとの位置情報を取得する。車両位置計測装置10は、検出した車両ごと位置情報を監視装置20に送信する。
【0054】
監視装置20では、車両位置計測装置10から送信された車両ごとの位置情報を、走行状態データ算出部221が取得する(S2の「YES」)。走行状態データ算出部221は、取得した情報に基づいて車両ごとの走行状態データを算出する。
【0055】
本実施例では走行状態データ算出部221は、走行状態データとして、走行エリアAR2内で車両が走行する頻度が低い箇所の路面、例えば車道の幅方向の端部の路面から走行する車両の上端までの高さ(以下、「外観高さ」と記載する)を算出する。走行状態データ算出部221は、走行エリアAR2内で車両が走行する頻度が低い箇所の路面の高さの情報を、予め保持している。また、走行状態データ算出部221が算出する外観高さは、路面に対して垂直方向の高さである。
【0056】
また走行状態データ算出部221は、車両位置計測装置10が取得した情報から走行状態データ取得対象の車両の形状等を認識することで、該当する車両の車種を特定する。走行状態データ算出部221は、所定車両に関して算出した外観高さと、特定した車種の情報とを紐づけて保持する。
【0057】
第1期間が終了すると(S4の「YES」)、走行状態データ算出部221は、第1期間内に走行エリアAR2を走行した車両の車種ごとの外観高さの平均値を正常時データとして算出し、正常時データ記憶部211に記憶させる(S5)。
【0058】
例えば、走行状態データ算出部221は、第1期間内に走行エリアAR2を走行した複数のA車種の車両に関する外観高さの平均値「158cm」を、A車種の正常時データとして正常時データ記憶部211に記憶させる。また走行状態データ算出部221は、第1期間内に走行エリアAR2を走行した複数のB車種の車両に関する外観高さの平均値「248cm」を、B車種の正常時データとして正常時データ記憶部211に記憶させる。
【0059】
走行状態データ算出部221は、車両メーカから提供される車種ごとの車両高さ情報を車種ごとの基準高さ情報として予め保持し、保持した基準高さ情報を用いて、算出した正常時データを補正してもよい。例えば、第1期間内に取得した複数のA車種の車両の外観高さにばらつきがあり、標準偏差が所定値以上であった場合、車両メーカから提供されたA車種の基準高さ情報との差分が所定値以内の外観高さのみを用いて正常時データを算出して補正してもよい。このように補正を行うことで、道路表面の材料の硬度等によって、道路の状態が正常であるにもかかわらず積載荷物の重量等により外観高さにばらつきが出る場合にも、精度の高い正常時データを算出することができる。
【0060】
その後、所定の第2期間が開始すると(S11の「YES」)、車両位置計測装置10が所定時間間隔で、道路X2内の走行エリアAR2を走行する車両ごとの位置情報を取得する。車両位置計測装置10は、検出した車両ごとの位置情報を監視装置20に送信する。
【0061】
監視装置20では、車両位置計測装置10から送信された車両ごとの位置情報を、走行状態データ算出部221が取得する(S12の「YES」)。走行状態データ算出部221は、取得した情報に基づいて車両ごとの走行状態データとして、走行エリアAR2内を走行する車両に関して算出した外観高さと、特定した車種の情報とを紐づけて保持する(S13)。
【0062】
第2期間が終了すると(S14の「YES」)、走行状態データ算出部221は、第2期間内に走行エリアAR2を走行した車両に関する車種ごとの外観高さの平均値を監視時データとして算出する(S15)。
【0063】
例えば、走行状態データ算出部221は、第2期間内に走行エリアAR2を走行した複数のA車種の車両に関する外観高さの平均値「153cm」を、A車種の監視時データとして算出する。また走行状態データ算出部221は、第2期間内に走行エリアAR2を走行した複数のB車種の車両に関する外観高さの平均値「244cm」を、B車種の監視時データとして算出する。
【0064】
次に、比較部222が、正常時データ記憶部211に記憶されたA車種の正常時データ「158cm」と、走行状態データ算出部221が算出したA車種の監視時データ「153cm」とを比較し、その差分値「5cm」を算出する。また、比較部222は、正常時データ記憶部211に記憶されたB車種の正常時データ「248cm」と、走行状態データ算出部221が算出したA車種の監視時データ「244cm」とを比較し、その差分値「4cm」を算出する(S16)。このように車種ごとに正常時データと監視時データとの差分値を算出することで、道路状況の変化を精度良く検出することができる。
【0065】
判定部223は、比較部222が算出したA車種に関する差分値「5cm」およびB車種に関する差分値「4cm」が、閾値記憶部212に記憶した閾値以上であるか否かを判定する。本実施例では、閾値記憶部212に閾値「3cm」が記憶されており、判定部223は、比較部222が算出したA車種に関する差分値「5cm」およびB車種に関する差分値「4cm」が、閾値記憶部212に記憶した閾値「3cm」以上であると判定する(S17の「YES」)。
【0066】
判定部223は、比較部222が算出した差分値が、閾値記憶部212に記憶した閾値以上であると判定すると、道路X2の轍堀れが進み車両走行環境に不具合が発生したと判定する。
【0067】
ここで、比較部222が、多数の車種について差分値を算出した場合には、判定部223は、これらの多数の車種のうち所定割合以上の車種、例えば50%以上の車種の差分値が閾値以上であったときに、道路X2に不具合が発生したと判定してもよい。このように判定を行うことで、誤判定を防ぎつつ、なるべく早い段階で車両走行環境に発生した不具合を検出することができる。
【0068】
判定部223は、道路X2の車両走行環境に不具合が発生したと判定すると、出力部23から不具合の発生、具体的には道路X2の轍堀れの発生を報知する情報を出力する(S18)。
【0069】
上述した実施例(2)によれば、監視装置20は、長期間における緩やかな変化により発生する車両走行環境に関する不具合、特に、車両が走行する頻度が高い箇所の路面の轍掘れの発生を精度良く検知することができる。
【0070】
上述した実施形態では、第1期間および第2期間が1週間である場合について説明したが、これには限定されず、監視対象の設備または項目等により適宜変更可能である。また、上述した実施形態では、監視処理の実行間隔が半年である場合について説明したが、この期間も適宜変更可能である。
【0071】
また上述した実施形態では、第1期間内に取得された複数車両の走行状態データの平均値を正常時データとし、第2期間内に取得された複数車両の走行状態データの平均値を監視時データとする場合について説明した。しかし、これには限定されず、第1期間内に取得された複数車両の走行状態データの中央値または最頻値を正常時データとしてもよい。また、第2期間内に取得された複数車両の走行状態データの中央値または最頻値を監視時データとしてもよい。
【0072】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 監視システム
10 車両位置計測装置
20 監視装置
21 記憶部
22 CPU
23 出力部
211 正常時データ記憶部
212 閾値記憶部
221 走行状態データ算出部
222 比較部
223 判定部
図1
図2
図3