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特開2025-4347歩行訓練システム、制御方法、及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004347
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】歩行訓練システム、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/00 20060101AFI20250107BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20250107BHJP
   G06N 3/0464 20230101ALI20250107BHJP
   A61H 1/02 20060101ALN20250107BHJP
【FI】
A61H3/00 Z
G01L5/00 101Z
G06N3/0464
A61H1/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103971
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】松本 大河
【テーマコード(参考)】
2F051
4C046
【Fターム(参考)】
2F051AA17
2F051BA07
4C046AA09
4C046AA25
4C046AA42
4C046BB07
4C046BB08
4C046CC01
4C046DD02
4C046DD13
4C046DD14
4C046DD21
4C046DD38
4C046DD39
4C046DD41
4C046EE03
4C046EE04
4C046EE05
4C046EE09
4C046EE13
4C046FF03
4C046FF04
4C046FF09
4C046FF12
4C046FF26
4C046FF30
(57)【要約】
【課題】適切に荷重値を求めることができる歩行訓練システム、制御方法、及び制御プログラムを提供すること。
【解決手段】本実施の形態にかかる歩行訓練システム1は、ユーザが着地するベルト132を有するトレッドミル131と、2次元アレイ状に配列された複数のセンサ155を有し、ベルト132を介して加わる荷重を検出する荷重分布センサ152と、荷重分布センサのセンサからのセンサ出力を取得するセンサ出力取得部171と、ベルト132の移動速度に基づいて、それぞれのセンサ155からのセンサ出力を補正する補正部172と、補正部172で補正された補正値に基づいて、ユーザから受ける荷重値を算出する荷重値算出部174と、を備えている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが着地するベルトを有するトレッドミルと、
2次元アレイ状に配列された複数のセンサを有し、前記ベルトを介して加わる荷重を検出する荷重分布センサと、
前記荷重分布センサのセンサからのセンサ出力を取得するセンサ出力取得部と、
前記ベルトの移動速度に基づいて、それぞれの前記センサからのセンサ出力を補正する補正部と、
前記補正部で補正された補正値に基づいて、前記ユーザから受ける荷重値を算出する荷重値算出部と、を備えた歩行訓練システム。
【請求項2】
前記補正部が、前記ユーザが着地した領域の前端のセンサをライン毎に求め、
前記前端のセンサのセンサアドレスを基準として、前後方向のセンサアドレスに応じて前記センサ出力を補正する請求項1に記載の歩行訓練システム。
【請求項3】
前記補正部が、前後方向のセンサアドレスに応じた補正係数を用いて、前後方向に沿った一列分の前記センサの前記センサ出力を補正する請求項1、又は2に記載の歩行訓練システム。
【請求項4】
前記荷重分布センサが、前後方向に配列された1列のセンサの出力を順次読み出していく請求項1、又は2に記載の歩行訓練システム。
【請求項5】
前記ユーザの脚部に装着されたロボット脚と、
前記荷重値に基づいて前記ロボット脚を駆動する駆動制御部と、をさらに備えた請求項1、又は2に記載の歩行訓練システム。
【請求項6】
前記荷重値算出部が複数のセルの前記補正値を含む2次元データを入力として、畳み込み処理を行うCNNを有している請求項1、又は2に記載の歩行訓練システム。
【請求項7】
ユーザが着地するベルトを有するトレッドミルと、
2次元アレイ状に配列された複数のセンサを有し、前記ベルトを介して加わる荷重を検出する荷重分布センサと、を備えた歩行訓練システムの制御方法であって、
前記荷重分布センサのセンサからのセンサ出力を取得するステップと、
前記ベルトの移動速度に基づいて、それぞれの前記センサからのセンサ出力を補正することで、補正値を求めるステップと、
前記補正値に基づいて、前記ユーザから受ける荷重値を算出するステップと、を備えた歩行訓練システムの制御方法。
【請求項8】
前記補正するステップでは
前記ユーザが着地した領域の前端のセンサをライン毎に求め、
前記前端のセンサのセンサアドレスを基準として、前後方向のセンサアドレスに応じて前記センサ出力を補正する請求項7に記載の歩行訓練システムの制御方法。
【請求項9】
前後方向のセンサアドレスに応じた補正係数を用いて、前記前後方向に沿った一列分の前記センサの前記センサ出力を補正する請求項7、又は8に記載の歩行訓練システムの制御方法。
【請求項10】
前記荷重分布センサが、前後方向に配列された1列のセンサの出力を順次読み出していく請求項7、又は8に記載の歩行訓練システムの制御方法。
【請求項11】
前記ユーザの脚部に装着されたロボット脚と、
前記荷重値に基づいて前記ロボット脚を駆動する駆動制御部と、をさらに備えた請求項7、又は8に記載の歩行訓練システムの制御方法。
【請求項12】
前記荷重値を算出するステップでは、複数のセルの前記補正値を含む2次元データを入力として、畳み込み処理を行うCNNを有している請求項7、又は8に記載の歩行訓練システムの制御方法。
【請求項13】
ユーザが着地するベルトを有するトレッドミルと、
2次元アレイ状に配列された複数のセンサを有し、前記ベルトを介して加わる荷重を検出する荷重分布センサと、を備えた歩行訓練システムを制御する制御方法をコンピュータに実行させる制御プログラムであって、
前記制御方法は、
前記荷重分布センサのセンサからのセンサ出力を取得するステップと、
前記ベルトの移動速度に基づいて、それぞれの前記センサからのセンサ出力を補正することで、補正値を求めるステップと、
前記補正値に基づいて、前記ユーザから受ける荷重値を算出するステップと、を備えた制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行訓練システム、制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧力分布検出装置が開示されている。この圧力分布検出装置は、複数の駆動コイルと、複数の検出コイルとを備えている。さらに、駆動コイルと検出コイルと間の距離を一定に保つスペーサ手段とを備えている。駆動コイルはクッション材と電磁シールド体が設けられている。検出コイルには、クッション材と電磁結合可変体が設けられている。電磁結合可変体は、シート状の磁性体シートとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-218892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧力分布を検出する場合、粘弾性体の変形量(変形応力)により、圧力(荷重)を検出する。粘弾性体をシート状に形成した場合,実際に荷重が加わった箇所の周辺領域についても粘弾性体が変形してしまう。荷重が加わっていない周辺領域にも荷重が検出されるため、高い精度で荷重を検出することが困難である。
【0005】
また、トレッドミルなどを用いた歩行訓練装置では、荷重分布に応じて歩行周期におけるタイミングを推定している。そさいて、歩行周期におけるタイミングに応じて、駆動制御を行っている。したがって、荷重分布を高い精度で検出することで、より適切な駆動制御を行うことができる。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、適切に荷重値を算出することができる歩行訓練システム、制御方法、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態にかかる歩行訓練システムは、ユーザが着地するベルトを有するトレッドミルと、2次元アレイ状に配列された複数のセンサを有し、前記ベルトを介して加わる荷重を検出する荷重分布センサと、前記荷重分布センサのセンサからのセンサ出力を取得するセンサ出力取得部と、前記ベルトの移動速度に基づいて、それぞれの前記センサからのセンサ出力を補正する補正部と、前記補正部で補正された補正値に基づいて、前記ユーザから受ける荷重値を算出する荷重値算出部と、を備えている。
【0008】
上記の歩行訓練システムにおいて、前記補正部が、前記ユーザが着地した領域の前端のセンサをライン毎に求め、前記前端のセンサのセンサアドレスを基準として、前後方向のセンサアドレスに応じて前記センサ出力を補正するようにしてもよい。
【0009】
上記の歩行訓練システムにおいて、前記補正部が前後方向のセンサアドレスに応じた補正係数を用いて、前後方向に沿った一列分の前記センサの前記センサ出力を補正するようにしてもよい。
【0010】
上記の歩行訓練システムにおいて、前記荷重分布センサが、前後方向に配列された1列のセンサの出力を順次読み出していくようにしてもよい。
【0011】
上記の歩行訓練システムにおいて、前記ユーザの脚部に装着されたロボット脚と、前記荷重値に基づいて前記ロボット脚を駆動する駆動制御部と、をさらに備えていてもよい。
【0012】
上記の歩行訓練システムにおいて、前記荷重値算出部が複数のセルの前記補正値を含む2次元データを入力として、畳み込み処理を行うCNNを有していてもよい。
【0013】
本実施の形態にかかる歩行訓練システムの制御方法は、ユーザが着地するベルトを有するトレッドミルと、2次元アレイ状に配列された複数のセンサを有し、前記ベルトを介して加わる荷重を検出する荷重分布センサと、を備えた歩行訓練システムの制御方法であって、前記荷重分布センサのセンサからのセンサ出力を取得するステップと、前記ベルトの移動速度に基づいて、それぞれの前記センサからのセンサ出力を補正することで、補正値を求めるステップと、前記補正値に基づいて、前記ユーザから受ける荷重値を算出するステップと、を備えている。
【0014】
上記の歩行訓練システムの制御方法において、前記補正するステップでは、前記ユーザが着地した領域の前端のセンサをライン毎に求め、前記前端のセンサのセンサアドレスを基準として、前後方向のセンサアドレスに応じて前記センサ出力を補正するようにしてもよい。
【0015】
上記の歩行訓練システムにおいて、前後方向のセンサアドレスに応じた補正係数を用いて、前記前後方向に沿った一列分の前記センサの前記センサ出力を補正するようにしてもよい。
【0016】
上記の歩行訓練システムにおいて、前記荷重分布センサが、前後方向に配列された1列のセンサの出力を順次読み出していくようにしてもよい。
【0017】
上記の歩行訓練システムにおいて、前記ユーザの脚部に装着されたロボット脚と、前記荷重値に基づいて前記ロボット脚を駆動する駆動制御部と、をさらに備えていてもよい。
【0018】
上記の歩行訓練システムにおいて、前記荷重値を算出するステップでは、複数のセルの前記補正値を含む2次元データを入力として、畳み込み処理を行うCNNを有していてもよい。
【0019】
本実施の形態にかかる制御プログラムは、ユーザが着地するベルトを有するトレッドミルと、2次元アレイ状に配列された複数のセンサを有し、前記ベルトを介して加わる荷重を検出する荷重分布センサと、を備えた歩行訓練システムを制御する制御方法をコンピュータに実行させる制御プログラムであって、前記制御方法は、前記荷重分布センサのセンサからのセンサ出力を取得するステップと、前記ベルトの移動速度に基づいて、それぞれの前記センサからのセンサ出力を補正することで、補正値を求めるステップと、前記補正値に基づいて、前記ユーザから受ける荷重値を算出するステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、適切に荷重値を算出することができる歩行訓練システム、制御方法、及び制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】歩行訓練システムの概略斜視図である。
図2】トレッドミルの構成を示す側面断面図である。
図3】荷重分布センサとベルトの構成を模式的に示す上面図である。
図4】荷重分布センサにおける粘弾性シートの変形を模式的に示す断面図である。
図5】トレッドミル動作時の粘弾性シートの変形を模式的に示す断面図である。
図6】システムの制御系の主要構成を示す機能ブロック図である。
図7】セル配置と、各ラインにおける先頭セルを説明するための図である。
図8】補正前のセンサ出力と、補正部で得られた補正値を示すグラフである。
図9】荷重値算出部に用いられる学習モデルを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0023】
(システム構成)
図1は、実施形態にかかるリハビリ支援システムの一構成例を示す全体概念図である。本実施形態にかかるリハビリ支援システム(歩行訓練システム1)は、主に、歩行訓練装置100と、脚装具120によって構成される。
【0024】
歩行訓練装置100は、訓練者(ユーザ)900のリハビリ(リハビリテーション)を支援するリハビリ支援装置の一具体例である。歩行訓練装置100は、一方の脚に麻痺を患う片麻痺患者である訓練者900が、訓練スタッフ901の指導に従って歩行訓練を行うための装置である。ここで、訓練スタッフ901は、療法士(理学療法士)又は医師とすることができ、訓練者の訓練を指導又は介助などにより補助することから、訓練指導者、訓練介助者、訓練補助者などと称することもできる。
【0025】
歩行訓練装置100は、主に、全体の骨格を成すフレーム130に取り付けられた制御盤133と、訓練者900が歩行するトレッドミル131と、を備える。さらに、脚装具120は、訓練者900の麻痺側の脚部である患脚に装着される。図1では、脚装具120は、訓練者900の右脚に装着されている。脚装具120は、アクチュエータなどを備えたロボット脚である。例えば、脚装具120は、訓練者900の膝関節動作をアシストする関節駆動機構を有している。
【0026】
フレーム130は、床面に設置されるトレッドミル131上に立設されている。トレッドミル131は、不図示のモータによりリング状のベルト132を回転させる。トレッドミル131は、訓練者900の歩行を促す装置であり、歩行訓練を行う訓練者900は、ベルト132に乗り、ベルト132の移動に合わせて歩行動作を試みる。なお、訓練スタッフ901は、例えば図1に示すように訓練者900の背後のベルト132上に立って一緒に歩行動作を行うこともできるが、通常、ベルト132を跨いだ状態で立つなど、訓練者900の介助を行い易い状態に居ることが好ましい。トレッドミル131は、後述するように、荷重分布センサを有している。
【0027】
フレーム130は、制御盤133や、訓練用モニタ138を支持している。制御盤133は、モータやセンサの制御を行う全体制御部210を収容する。訓練用モニタ138は、例えば、液晶パネルであり、訓練の進捗状況等を訓練者900へ提示する。また、フレーム130は、訓練者900の頭上部前方付近で前側引張部135を、頭上部付近でハーネス引張部112を、頭上部後方付近で後側引張部137を、それぞれ支持している。また、フレーム130は、訓練者900が掴むための手摺り130aを含む。
【0028】
手摺り130aは、訓練者900の左右両側に配置されている。それぞれの手摺り130aは、訓練者900の歩行方向と平行な方向に配置されている。手摺り130aは、上下位置、及び左右位置が調整可能となっている。つまり、手摺り130aは、その高さ及び幅を変更する機構を含むことができる。さらに、手摺り130aは、例えば歩行方向の前方側と後方側とで高さを異ならせるように調整することで、その傾斜角度を変更できるように構成することもできる。例えば、手摺り130aは、歩行方向に沿って徐々に高くなるような傾斜角度を付すことができる。
【0029】
また、手摺り130aには、訓練者900から受ける荷重を検出する手摺りセンサ218が設けられている。例えば、手摺りセンサ218は、電極がマトリックス状に配置された抵抗変化検出型の荷重検出シートとすることができる。また、手摺りセンサ218は、3軸の加速度センサ(x,y,z)と3軸のジャイロセンサ(roll,pitch,yaw)とを複合させた6軸センサとすることもできる。但し、手摺りセンサ218の種類や設置位置は問わない。
【0030】
カメラ140は、訓練者900の全身を観察するための撮像部としての機能を担う。カメラ140は、訓練用モニタ138の近傍に、訓練者と相対するように設置されている。カメラ140は、訓練中の訓練者900の静止画や動画を撮影する。カメラ140は、訓練者900の全身を捉えられる程度の画角となるような、レンズと撮像素子のセットを含む。撮像素子は、例えばCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサであり、結像面に結像した光学像を画像信号に変換する。
【0031】
前側引張部135と後側引張部137の連携した動作により、脚装具120の荷重が患脚の負担とならないように当該荷重を相殺し、更には、設定の程度に応じて患脚の振出し動作をアシストする。
【0032】
前側ワイヤ134は、一端が前側引張部135の巻取機構に連結されており、他端が脚装具120に連結されている。前側引張部135の巻取機構は、不図示のモータをオン/オフさせることにより、患脚の動きに応じて前側ワイヤ134を巻き取ったり繰り出したりする。同様に、後側ワイヤ136は、一端が後側引張部137の巻取機構に連結されており、他端が脚装具120に連結されている。後側引張部137の巻取機構は、不図示のモータをオン/オフさせることにより、患脚の動きに応じて後側ワイヤ136を巻き取ったり繰り出したりする。このような前側引張部135と後側引張部137の連携した動作により、脚装具120の荷重が患脚の負担とならないように当該荷重を相殺し、更には、設定の程度に応じて患脚の振出し動作をアシストする。
【0033】
前側ワイヤ134、及び前側引張部135は訓練者900の脚を上方かつ前方に引張する第1引張手段となる。後側ワイヤ136、及び後側引張部137は訓練者900の脚を上方かつ後方に引張する第2引張手段となる。前側引張部135、及び後側引張部137は後述するように歩行フェーズに応じた引張力で、前側ワイヤ134と後側ワイヤ136を引っ張る。また、歩行フェーズに応じて、引張力の動作パターンが設定されていてもよい。
【0034】
例えば、訓練スタッフ901は、オペレータとして、重度の麻痺を抱える訓練者に対しては、アシストするレベルを大きく設定する。アシストするレベルが大きく設定されると、前側引張部135は、患脚の振出しタイミングに合わせて、比較的大きな力で前側ワイヤ134を巻き取る。訓練が進み、アシストが必要でなくなったら、訓練スタッフ901は、アシストするレベルを最小に設定する。アシストするレベルが最小に設定されると、前側引張部135は、患脚の振出しタイミングに合わせて、脚装具120の自重をキャンセルするだけの力で前側ワイヤ134を巻き取る。
【0035】
歩行訓練装置100は、装具110、ハーネスワイヤ111、及びハーネス引張部112を主な構成要素とする、安全装置としての転倒防止ハーネス装置を備える。装具110は、訓練者900の腹部に巻き付けられるベルトであり、例えば面ファスナによって腰部に固定される。装具110は、吊具であるハーネスワイヤ111の一端を連結する連結フック110aを備え、ハンガーベルトと称することもできる。訓練者900は、連結フック110aが後背部に位置するように、装具110を装着する。
【0036】
ハーネスワイヤ111は、一端が装具110の連結フック110aに連結されており、他端がハーネス引張部112の巻取機構に連結されている。ハーネス引張部112の巻取機構は、不図示のモータをオン/オフさせることにより、ハーネスワイヤ111を巻き取ったり繰り出したりする。このような構成により、転倒防止ハーネス装置は、訓練者900が転倒しそうになった場合に、その動きを検知した全体制御部210の指示に従ってハーネスワイヤ111を巻き取り、装具110により訓練者900の上体を支えて、訓練者900の転倒を防ぐ。
【0037】
装具110は、訓練者900の姿勢を検出するための姿勢センサ217を備える。姿勢センサ217は、例えばジャイロセンサと加速度センサを組み合わせたものであり、装具110が装着された腹部の重力方向に対する傾斜角を出力する。
【0038】
管理用モニタ139は、フレーム130に取り付けられており、主に訓練スタッフ901が監視及び操作するための表示入力装置である。管理用モニタ139は、例えば液晶パネルであり、その表面にはタッチパネルが設けられている。管理用モニタ139は、訓練設定に関する各種メニュー項目や、訓練時における各種パラメータ値、訓練結果などを表示する。また、管理用モニタ139の近傍には、非常停止ボタン232が設けられている。訓練スタッフ901が非常停止ボタン232を押すことで、歩行訓練装置100が非常停止する。
【0039】
全体制御部210は、訓練設定に関する設定パラメータ、訓練結果として脚装具120から出力された運脚に関する各種データなどを含みうるリハビリデータを生成する。このリハビリデータには、訓練スタッフ901又はその経験年数や熟練度等を示すデータ、訓練者900の症状、歩行能力、回復度等を示すデータ、脚装具120の外部に設けられたセンサ等から出力された各種データなどを含むことができる。
【0040】
全体制御部210の少なくとも一部の制御は、コンピュータプログラムによって実行されてもよい。例えば、全体制御部210は、プログラムを格納するメモリと、プログラムを実行するプロセッサなどを備えている。
【0041】
全体制御部210は、荷重分布センサでの検出結果に基づいて、モータなどのアクチュエータを制御することができる。例えば、全体制御部210は、荷重分布センサで検出された荷重の変化に基づいて、歩行サイクルのフェーズ(タイミング)を判定する。全体制御部210は、判定結果に基づいて、アクチュエータを制御するための制御信号を生成する。脚装具120の関節駆動機構が制御信号に基づいて、膝関節のアシスト動作を行う。このようにすることで、適切なアシスト動作を行うことができるため、効果的な訓練が可能となる。また、全体制御部210は、歩行サイクルのフェーズに応じて,前側引張部135と後側引張部137とを制御してもよい。荷重分布センサの検出結果に基づく,制御については、後述する。
【0042】
次に、図2図3を用いて、トレッドミル131に設けられた荷重分布センサの構成について説明する。図2はトレッドミル131と荷重分布センサ152の構成を示す側面断面図である。図3は、トレッドミル131における荷重分布センサ152の配置を模式的に示す上面図である。
【0043】
トレッドミル131は、リング状のベルト(移動板)132、プーリー153、及び、図示しないモータを少なくとも備える。ベルト132は無端ベルトであり、側面視において、リング状に形成されている。リング状のベルト132の内側には、2つのプーリー153が配置されている。2つのプーリー153が前後方向に離れて配置されている。プーリー153の回転軸は左右方向と平行になっている。したがって、モータがプーリー153を回転させると、ベルト132が前後方向に駆動する。訓練者900又は訓練スタッフ901が移動速度を設定すると、ベルト132が移動速度で移動するように、モータがプーリー153を回転させる。
【0044】
また、リング状のベルト132の内側(訓練者900が搭乗する面のベルト132の下側)には、ベルト132に連動しないように荷重分布センサ152が配置されている。荷重分布センサ152は無端ベルトのリングの内側に配置される。荷重分布センサ152は、複数のセンサ155によって構成されている。複数のセンサ155は、歩行訓練中の訓練者900の足裏を支持するベルト132の下側にマトリックス状に配置されている。荷重分布センサ152は、複数のセンサ155を用いることにより、ベルト132に搭乗する訓練者900の足FTから受ける面圧の分布(荷重分布)を検出することができる。
【0045】
図3に示すように、荷重分布センサ152は、マトリックス状に配置された複数のセンサ155を有している。荷重分布センサ152は、水平面に平行なシート形状を有している。センサ155は、電磁誘導方式、電気抵抗式、静電容量式、又はロードセル式などのものを用いることができる。もちろん、センサ155のタイプは特に限定されるものではない。
【0046】
例えば、荷重分布センサ152は左右方向にm(mは2以上の整数)個、前後方向にn(nは2以上の整数)個のセンサ155が配置されているとする。図3において、左前方の角にあるセンサ155のXY座標を(1,1)とし、左後方の角にあるセンサ155のXY座標を(1,n)とする。右前方の角にあるセンサ155のXY座標を(m,1)とし、右後方の角にあるセンサ155のXY座標を(m,n)とする。各センサ155は同じ大きさを有している。このように、センサ155毎にXYアドレス(XY座標)が割り当てられている。
【0047】
複数のセンサ155は前後方向及び左右方向に等間隔に配置されている。したがって、荷重分布センサ152のセンシング領域は、矩形状になっている。よって、荷重分布センサ152からの出力は、m×n個の2次元マップデータとなる。
【0048】
1つのセンサ155をセルともいう。そして、荷重分布センサ152はセル毎に圧力(荷重)を検出する。荷重分布センサ152は、複数のセンサ155の出力を順次読み出していくことで、訓練者900から受ける荷重分布を検出する。それぞれのセンサ155は、足FTからベルト132を介して受ける圧力の2次元分布を検出する。m×n個の2次元データを1フレームのデータともいう。
【0049】
全体制御部210は、荷重分布センサ152の検出結果に基づいて、足FTからの荷重値を推定する。ここでの荷重値は、足FTの全体から受ける総荷重を示す。例えば、変換マップを用いて複数のセンサ155で検出された出力値を圧力に変換することができる。そして,圧力を積分することで荷重値に変換することができる。全体制御部210は、荷重値に基づいて、歩行フェーズに関する判定を行う。全体制御部210は、例えば、立脚から遊脚に移行するタイミングと判定する。
【0050】
荷重分布センサ152は、シート状のセンサであり、粘弾性体を有している。例えば、図4に示すように、荷重分布センサ152は基板1511と、粘弾性シート1512と導電シート1513とを有している。なお、図4は、荷重分布センサ152の断面構成を模式的に示す側面断面図である。ここでは、荷重分布センサ152は電磁誘導方式のセンサであるとして説明する。また、図4ではトレッドミル131,及びベルト132などを省略している。図4では、トレッドミル131が動作していないものとして説明する。
【0051】
荷重分布センサ152は基板1511と、粘弾性シート1512と導電シート1513とを備えている。下面側から、基板1511と、粘弾性シート1512と導電シート1513の順で配置されている。荷重分布センサ152の導電シート1513と基板1511との間に、粘弾性シート1512が設けられている。粘弾性シート1512は、例えば、発泡ウレタンなどの樹脂材料で形成されている。上下方向が、粘弾性シート1512の厚さ方向となっている。
【0052】
基板1511は、複数のコイルを有するコイルパターンを有している。コイルパターンはセル毎に設けられたコイルを有している。基板1511では、複数のコイルがアレイ状に配列されている。導電シート1513は、例えば、アルミシートで有り、複数のコイルを覆うように、荷重分布センサ152の全体に渡って形成されている。荷重に応じて、導電シート1513と基板1511との距離が変化する。つまり、荷重が大きいほど、粘弾性シート1512が押し潰されて、薄くなる。粘弾性シート1512が変形すると、基板1511の電気的特性が変化する。
【0053】
荷重分布センサ152は、電磁誘導などの電気的特性をセル毎に測定することで、変形量を求めることができる。荷重分布センサ152は、厚さ方向における粘弾性シート1512の変形量を荷重に変換する。セル毎に変形量を荷重に変換することができる。このように、粘弾性シート1512の変形量に応じて電気的特性が変化するため、各センサ155が荷重を検出することができる。もちろん、荷重分布センサ152として、電磁誘導方式に限らず、容量方式、電気抵抗方式などの荷重分布センサを用いても良い。
【0054】
図5は、トレッドミルが動作している状態での粘弾性シート1512の変形を示す。図5の左側が、歩行方向の前方で有り、ベルト132(不図示)は左から右に移動している。ベルト132が移動しているため、足FTが着地している状態で、荷重分布センサに検知位置が徐々に後方に移動する。
【0055】
例えば、足FTが着地したタイミングT1において、トレッドミル131における足FTの前端の前後位置が位置P1で、後端の前後位置が位置P2になっているとする。そして、タイミングT1から所定時間経過したタイミングT2では足FTが着地している状態でベルト132が移動している。よって、足の前端の前後位置が位置P3となり、後端の前後位置が位置P4となる。
【0056】
ここで、トレッドミル131において、位置P2と位置P3とは一致している。この場合、位置P3ではタイミングT1からタイミングT2の間、荷重分布センサ152に常時荷重が加えられている。つまり、タイミングT1からタイミングT2の間、粘弾性シート1512が常時変形している。
【0057】
一方、位置P4では、タイミングT2において新たに荷重分布センサ152に荷重が加わる。従って、タイミングT2になると、位置P4で粘弾性シート1512の変形が開始する。位置P4は、新たに粘弾性シート1512が潰れていく領域となる。このため,位置P4では、粘弾性シート1512が潰れきるまでに時間が掛かる。
【0058】
足FTの後端はベルト132の移動によって新たに荷重が加わる。一方、足FTの前端直下であった箇所がベルトの移動によって足FTの後端直下に位置する。このような場合、足FTの前端と後端とで、実際に印加している印加荷重と、センサ出力となる検出荷重との関係がずれてしまう。例えば、足FT全体から均一な荷重を受けている場合であっても、足の前端のセルのセンサ出力が後端のセルのセンサ出力よりも大きくなってしまうおそれがある。
【0059】
したがって、荷重値を精度よく検出できないおそれがある。荷重値の検出精度が低い場合、脚装具120の駆動タイミングが歩行周期のタイミングからずれてしまうおそれがある。そこで、本実施の形態では、荷重値を高い精度で推定するため、以下に示す処理を行っている。具体的には、全体制御部210が、ベルト132の移動速度に応じて、センサ出力を補正している。以下、本実施の形態にかかる処理について説明する。
【0060】
図6は、本実施形態にかかる制御を説明するための機能ブロック部である。全体制御部210は、センサ出力取得部171と、補正部172と、荷重値算出部174と、判定部175と、駆動制御部176とを備えている。関節駆動部221は、脚装具120に設けられている。具体的には、関節駆動部221は、訓練者900の膝関節動作をアシストするためのモータや回転機構を備えている。
【0061】
トレッドミル駆動部131aはトレッドミル131を駆動する。トレッドミル駆動部131aは、プーリー153を回転させるためのモータ等を有している。訓練スタッフ901等によって設定された移動速度でベルト132が移動するように、トレッドミル131が動作する。
【0062】
トレッドミル131には、荷重分布センサ152が設けられている。荷重分布センサ152は、全体制御部210に検出結果を示す検出信号(センサ出力)を出力する。センサ出力はデジタルデータでもよく、アナログデータでもよい。つまり、荷重分布センサ152はアナログの検出信号をデジタルデータに変換するA/Dコンバータを有していてもよい。あるいは、センサ出力取得部171がA/Dコンバータを有していてもよい。
【0063】
センサ出力は、セル毎の出力値を含んでいる。センサ出力取得部171は、荷重分布センサ152からのセンサ出力をセル毎に取得する。つまり、センサ出力を示すデータには、セルのアドレスと、出力値が対応付けられている。センサ出力取得部171は、荷重分布センサ152の読み出し順にセンサ出力のデータを取得してもよい。全セルからのセンサ出力が1フレームのデータとなる。荷重分布センサ152は、1ライン毎、又は1セル毎に、データを読み出す。
【0064】
補正部172は、トレッドミル131のベルト132の移動速度に基づいて、荷重分布センサ152のセル出力を補正する。補正部172は、荷重分布センサ152のセルアドレスに基づいた補正式を用いている。補正部172は、補正式を用いてセンサ出力を補正する。
【0065】
補正後のセンサ出力の値を補正値Cとする。補正前のセル出力をS、補正係数α(L,V)とすると、補正値Cは以下の式(1)で示される。
C=S×α(L,V) ・・・(1)
【0066】
なお、Lは基準となるセル(後述する先頭セル156)からの前後方向のセル数であり、Vはトレッドミル速度である。基準となるセルは、足FTが着地した領域の前端のセルとすることができる。補正係数αは、セル数L及びトレッドミル速度Vによって変化する係数である。具体的には、α(L,V)は以下の式(2)とすることができる。
α(L,V)=(1+L×β+V×γ) ・・・(2)
【0067】
βとγはゲイン設定部178に記録されている。βは予め設定された進行方向ゲインであり、一定値とすることができる。γは予め設定されたトレッドミル速度ゲインであり、一定値である。βとγはそれぞれ0より大きい数である。このようにすることで、ベルト132の移動速度が大きくなるほど、補正係数αが大きくなる。また、セル数Lが大きくなるほど補正係数αが大きくなる。補正部172は、ライン毎のセンサ出力を補正式(1)に基づいて補正する。よって、補正部172は、適切にセンサ出力を補正することができる。
【0068】
また、補正値Cを求めるための補正係数α(L,V)は以下の式(3)であってもよい。つまし、式(2)に示すαの代わりに、式(3)に示すαを用いることができる。
α(L,V)=(1+(V×γ)L) ・・・(3)
【0069】
図7を用いて,補正部172の補正処理について詳細に説明する。図7は、荷重分布センサ152のセル配置を模式的に示す上面図となっている。なお、図7は、荷重分布センサ152のセンサ155のうち、足FTが着地した領域とその周辺部分のセンサ155のみを示している。具体的には、図7では、左右8個×前後16個のセンサ155が示されており、その一部に足FTからの荷重が加わっている。つまり、足FTが着地した領域の外側のセンサ155には荷重が加わっていないため、センサ出力が0となる。
【0070】
図7において、最も左側の一列をラインL1とする。ラインL1は、前後方向に沿って配列された複数のセンサ(セル)155を有している。同様に、左側から2列目~8列目の列をそれぞれラインL2~ラインL8とする。荷重分布センサ152は左側の列から順にデータを読み出していく。例えば、荷重分布センサ152は、ラインL1のデータ読み出しが終わった後、ラインL2のデータ読み出しを行う。荷重分布センサ152は、L1,L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8の順でデータ読み出しを行う。
【0071】
荷重分布センサ152の8×16の個のセンサ155のセルアドレスをXYアドレスで示す。具体的には、Xアドレスは左右方向の位置を示し、Yアドレスは前後方向の位置を示す。最も左側のセンサ155のXアドレスを1とし、最も右側のセンサのXアドレスを8とする。最も前側のセンサ155のYアドレスを1とし、最も後側のセンサのYアドレスを16とする。よって、左上角のセンサ155のXYアドレス(1,1)となる。右上角のセンサ155のXYアドレス(8,1)となる。左下角のセンサ155のXYアドレス(1,16)となる。右下角のセンサ155のXYアドレス(8,16)となる。ラインL1には、(1,1)~(1,16)のセンサ155が含まれている。
【0072】
足FTが着地している範囲は,ラインL2~ラインL7となっている。ラインL1のセンサ155と、ラインL8のセンサ155は荷重を検知しない。ここで、ラインL2~L7において、荷重を検出するセル(センサ155)のうち、最も前方にあるセルを先頭セル156とする。
【0073】
例えば、ラインL2における先頭セル156は、前から4番目のセンサ155となり、ラインL3における先頭セル156は前から2番目のセンサ155となる。つまり、ラインL2の先頭セル156のXYアドレスは(2,4)であり、ラインL3の先頭セル156のXYアドレスは(3,3)となる。同様に、ラインL4~L7の先頭セル156のアドレスは、それぞれ(4,2)、(5,2)、(6,3)、(7,4)となる。先頭セル156が補正の基準となる。先頭セル156のYアドレスを先頭アドレスともいう。よって、Lは、先頭セル156を1として、後方に移動するほど増える。
【0074】
補正部172は、ライン毎に式(1)を適用することで、補正値Cを算出する。補正部172は、前後方向のセンサアドレスに応じてセンサ出力を補正する。具体的には、補正部172が、着地した領域の前端のセンサをライン毎に求めている。そして、補正部172は、ライン毎の前端のセンサ155を先頭セル156として基準とする。
【0075】
例えば、図7に示すように、先頭セル156のYアドレスがライン毎に異なっている。ラインに応じて、先頭アドレスが異なっている。補正部172は、ライン毎に先頭アドレスを決定する。例えば、補正部172は、1ラインにおいて、センサ出力がしきい値以上となったセルの中で最も前側にあるセルのYアドレスを先頭アドレスとすることができる。補正部172は、ライン毎に先頭アドレスを基準として、ライン毎にセンサ出力を補正する。補正部172は、先頭アドレスを基準として、前後方向のセンサアドレスに応じた補正係数αを用いて、1ライン分のセンサ155のセンサ出力を補正する。
【0076】
式(2)に示したように、補正係数αは、基準となる先頭セル156から後方に離れていくほど、大きくなる。よって、適切に補正することができる。図5を用いて説明したように、足FTの後端では、前端よりもセンサ出力が大きくなる傾向がある。よって、適切に補正を行うことができる。図8は、補正前のセンサ出力Sと補正後のセンサ出力(補正値C)を示すグラフである。横軸がセル数Lとなっており、縦軸がセンサ出力S又は補正値Cとなっている。また、図8では、均一な荷重が荷重分布センサ152に印加された場合の測定結果を示している。
【0077】
図8において、データD1が、トレッドミル131を動作していない時のデータを示している。つまり、データD1がベルト132の移動速度が時速0kmの時のデータを示している。データD2~D5は、ベルト132の移動速度が時速2kmの時のデータを示している。また、先頭セルのセルアドレスをセル番号「1」としている。
【0078】
補正前のデータD2~D5では、データD1に比べて、センサ出力Sが低くなる。特に補正前のデータD2~D5では、セル数が大きくなるほど、センサ出力Sが小さくなっていく。よって、上記のように、セル数Lが多くなるほど、補正係数αが大きくなるようにしている。このようにすることで、補正値Cは、セル数によらず均一になる。補正部172は、適切にセル出力を補正することができる。
【0079】
図6の説明に戻る。荷重値算出部174は、セル毎の補正値Cに基づいて、足から受ける荷重値を算出する。補正値Cは、セル毎に求められているため、2次元データとなっている。荷重値算出部174は、2次元データの補正値Cを積分することで、荷重値を求めることができる。荷重値算出部174は、2次元データの補正値の総和に基づいて,荷重値を算出する。荷重値算出部174は、足FTから受ける荷重を示す荷重値を算出し、判定部175に出力する。
【0080】
判定部175は、推定された荷重値に基づいて、歩行周期のフェーズに関する判定を行う。判定部175は、荷重値を、予め設定されたしきい値と比較する。そして、全体制御部210は、荷重値がしきい値を下回るタイミングを立脚から遊脚に移行する切替タイミングと判定する。判定部175は、患脚の抜重タイミングを検出するために、判定を行う。
【0081】
駆動制御部176は、判定部175での判定結果に応じて、関節駆動部221を制御する。例えば、駆動制御部176は、切替タイミングで関節駆動部221が動作するように、制御信号を関節駆動部221に出力する。そして、関節駆動部221のアクチュエータが、制御信号に応じて動作する。関節駆動部221は、切替タイミング、つまり、患脚の抜重タイミングで膝関節を屈曲させることができる。
【0082】
このようにすることで、関節駆動部221が、歩行フェーズに合わせてアシスト力を与えることができる。よって、訓練者900が効果的な歩行訓練を行うことができる。なお、判定結果に応じて制御される制御対象は、関節駆動部221に限定されるものではない。例えば、前側ワイヤ134と後側ワイヤ136の引張力が歩行フェーズに合わせて動作するように、駆動制御部176が前側引張部135及び後側引張部137を制御してもよい。これにより、前側引張部135及び後側引張部137が抜重タイミングで前方への振出しアシストを行うことができる。
【0083】
トレッドミルが動作している状態であっても、高い精度で荷重値を向上することができる。つまり、ベルト132を介して加わる荷重を検出する荷重分布センサ152を用いた場合であっても、適切の歩行動作を分析することができる。駆動制御部176が適切なタイミングで駆動制御を行うことができる。訓練者900が効果的な訓練を行うことができる。
【0084】
さらに、荷重値算出部174がセル毎の補正値Cを含む2次元データを入力として、畳み込み処理を行うCNNを有していてもよい。このようにすることで、より高い精度で荷重値を推定することができる。この点について説明する。
【0085】
図5などに示すように、足FTがある領域と足FTがない領域の境界部分においても、粘弾性シート1512が変形してしまう。つまり、足FTの直下になく、足FTから荷重が印加されていない箇所(例えば、位置P1の前方側で導電シート1513が斜めになっている箇所)において,粘弾性シートが変形してしまう。よって,境界部分においては、足FTの直下にないセンサ155が荷重を検出してしまう(以下、巻き込み現象とも言う)。
【0086】
このように、実際の足FTの接地サイズよりも広い領域で、センサ155が圧力を検出する。実際に足FTの直下にあるセルの数よりも多い数のセルで粘弾性シート1512が変形して、圧力(荷重)を検出する。換言すると、各センサ155の出力値のみでは、押し潰されているセルと押し潰されていないセルを区別することができない。
【0087】
荷重値算出部174は、CNNを有する機械学習モデルを用いている。複数のセルの補正値を2次元データが、CNNに入力される。CNNでは、二次元カーネルと言う重みを持っているため、隣接するセルの補正値を考慮した重み付けが可能となる。
【0088】
以下、荷重値算出部174が利用する学習モデルについて説明する。図9は、学習モデルの一例を説明するための概念図である。学習モデルは機械学習で生成された推論モデルである。
【0089】
学習モデルは、複数のレイヤを有するDL(Deep Learning)モデルである。上記のように、学習モデルの入力データは、2次元データとなる。したがって、入力データは2次元のグレースケール画像で示されている。
【0090】
学習モデルは2次元データに対して畳み込み処理を行う畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Networks)を備えている。CNNは、畳み込み層やプーリング層などを備えている。CNNの後段には、全結合層を含む全結合ネットワーク(FCN:Fully Connected Networks)が設けられている。もちろん、学習モデルは、他のネットワークを用いてもよい、
【0091】
CNNは、各セルの補正値を含む2次元データに対して畳み込み処理を行う。畳み込みニューラルネットワークCNNでは、二次元カーネルという重みを持っているため、隣接するセル同士を考慮した重み付け処理が可能となる。畳み込みニューラルネットワークでは二次元データに応じた特徴量が抽出される。これにより、荷重値の推定精度を向上することができる。そして、CNNの重み等を機械学習により算出することができる。
【0092】
このように、荷重分布センサ152は、2次元アレイ状に配列された複数のセンサ155を有しており、訓練者900から加わる荷重分布を検出する。荷重値算出部174は補正値に基づく2次元データを入力としている。荷重値算出部174は、畳み込み演算処理を行うCNNを有し、ユーザから受ける荷重値を推定する。各センサ155の出力値は、多ビットのデータとなるため、荷重値算出部174の入力データが画像データと同様の2次元データとなる。換言すると、センサ出力は、1つのセンサ155の補正値が1画素の画素データとなる画像データと同様になる。画像識別等の処理と同様に、CNNが畳み込み処理を行うことができる。画像処理用のCNNを用いることができるため、汎用性を向上することができる。
【0093】
これにより、荷重値算出部174が、高い精度で荷重値を求めることができる。荷重値算出部174が、実際に押し潰されている領域と、巻き込み現状により変形している領域とを区別して処理する必要がなくなる。よって、歩行フェーズを適切に分析することができ、効果的な訓練が可能となる。
【0094】
本実施の形態では、荷重分布センサ152がベルト132の下側に配置されている。センサ155がベルト132を介して加わる荷重(圧力)を検出している。このような場合であっても、荷重値算出部174は、精度よく荷重値を推定することができる。つまり、CNNの重み等の各パラメータが、ベルト132が移動する場合を想定して学習されている。つまり、ベルト132が移動している状態で、重み付けのパラメータが最適化されている。これにより、荷重値の推定精度を向上することができる。荷重値算出部174がCNNを有する機械学習モデルを用いることで、より高い推定精度で荷重値を算出することができる。よって、全体制御部210が歩行フェーズを適切に分析することができ、訓練者900が効果的な訓練を行うことができる。
【0095】
さらに、荷重値算出部174で推定された荷重値に基づいて、駆動制御部176がロボット脚である脚装具120を制御する。例えば、駆動制御部176は膝関節などの関節駆動部221を制御するための制御信号を出力する。駆動制御部176は、脚装具120を歩行フェーズに合わせて、駆動させることができる。脚装具120が、適切なアシスト力で歩行動作をアシストことができるため、訓練者900が効果的な訓練を行うことができる。
【0096】
ベルト132の移動速度によって、巻き込み現象の度合いが変化することがある。したがって、ベルト132の移動速度を荷重値算出部174に入力としてもよい。つまり、2次元データと移動速度が学習モデルの入力データとなる。例えば、ベルト132の移動速度に応じて、学習モデルが異なるパラメータを用いてもよい。具体的には、活性化関数、フィルタ、重み等を切り替えるようにしてもよい。あるいは、荷重値算出部174は、高速用の学習モデルと、低速用の学習モデルとを切り替えて使用することができる。学習モデルを機械学習により生成する際において、学習器が、ベルト132の移動速度毎に、機械学習を行えばよい。換言すると、学習装置は、移動速度のデータをセンサ出力の2次元データと対応付けて学習データとして用いる
【0097】
センサ出力取得部171は、荷重分布センサ152に含まれる全センサ155からのセンサ出力をトリミングしてもよい。そして、センサ出力取得部171は、トリミングされた2次元データを荷重値算出部174に入力してもよい。例えば、センサ出力取得部171には、予めトリミングサイズが設定されていてもよい。ここで、トリミングサイズを(k×l)個の矩形領域とすることができる。kは1より大きくm未満であり、lは1より大きくn未満である。センサ出力取得部171は、荷重分布センサ152の荷重分布の重心を中心として、k×lの2次元データを切り出す。つまり、センサ出力が(k×l)個の2次元マップデータとなる。このようにすることで、データ処理量を削減することができるため、処理を高速がすることができる。荷重値算出部174がフレーム毎に荷重値を算出することができる。
【0098】
センサ出力取得部171、又は補正部172はセンサ出力又は補正値を圧力値に変換する圧力変換部として機能してもよい。この場合、荷重値算出部174が、圧力値で構成された2次元マップデータを入力データと用いる。具体的には、荷重分布センサ152は、各センサ155からの出力される出力値(電圧値)をデジタルデータにA/D変換する。そして、センサ出力取得部171が変換式や変換テーブルを用いて、デジタルデータであるセンサ出力を圧力値に変換する。荷重分布センサ152が、電気的特性の測定値を、圧力値に変換する変換式や変換テーブルを有している。
【0099】
変換テーブルや変換式は、線形の変換結果を示してもよく、線形以外の変換結果を示してもよい。例えば、変換式は二次以上の多項式となっていてもよい。センサ出力値を圧力値に変換する変換式や変換テーブルは、センサ155毎に異なっていてもよく、複数のセンサ155で共通であってもよい。例えば、センサ出力取得部171は、センサ155毎に校正された変換式を用いることができる。これにより、推定精度を向上することができる。
【0100】
なお、全体制御部210は、物理的に単一な装置に限られるものない。つまり、センサ出力取得部171、荷重値算出部174,判定部175、ゲイン設定部178、駆動制御部176とは複数の装置に分散して配置されていても良い。この場合、ネットワークを介して、データが装置間で送受信されていればよい。例えば、ゲイン設定部178は、複数の歩行訓練装置100が利用できるように、サーバなどに搭載されていてもよい。
【0101】
また、上述した制御方法の一部又は全部はコンピュータプログラムによって実現できる。プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体は、例えば、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリを含む。磁気記録媒体は、例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブなどである。光磁気記録媒体は、例えば光磁気ディスクなどである。半導体メモリは、例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory)などである。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0102】
1 歩行訓練システム
100 歩行訓練装置
120 脚装具
131 トレッドミル
132 ベルト
152 荷重分布センサ
153 プーリー
155 センサ
171 センサ出力取得部
172 補正部
174 荷重値算出部
175 判定部
176 駆動制御部
178 ゲイン設定部
210 全体制御部
221 関節駆動部
900 訓練者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9