(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025043476
(43)【公開日】2025-04-01
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20250325BHJP
F16K 37/00 20060101ALI20250325BHJP
【FI】
F16K31/04 A
F16K37/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150780
(22)【出願日】2023-09-19
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【弁理士】
【氏名又は名称】増子 尚道
(72)【発明者】
【氏名】荒井 裕介
【テーマコード(参考)】
3H062
3H065
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062BB31
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062HH04
3H062HH09
3H062HH10
3H065AA01
3H065BA02
3H065BB18
(57)【要約】
【課題】ギア式電動弁の組立性を一層向上させると共に歯車装置全体としての試験を可能として電動弁の信頼性を更に高める。
【解決手段】弁室13を有する弁本体12と、弁室に連通する第1流路14と、弁室に連通する第2流路15と、第1流路と第2流路との間に設けたオリフィス16と、オリフィスに対し進退動してオリフィスの開度を変更する弁体18と、弁体を駆動する電動機51を構成するロータ24と、ロータの回転を減速する歯車装置22と、歯車装置により減速された回転を出力する出力軸36と、出力軸の回転を直線運動に変換して弁体に伝える伝達機構43と、歯車装置を収容する筒状のギアケース23と、出力軸を回転可能に支持するガイド部37とを備え、出力軸、ガイド部及び歯車装置がギアケースに支持されている電動弁11である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を内部に有する弁本体と、
前記弁室に連通する第1流路と、
前記弁室に連通する第2流路と、
前記第1流路と前記第2流路との間に形成したオリフィスと、
前記オリフィスに対して進退動して前記オリフィスの開度を変更する弁体と、
前記弁体を駆動する電動機を構成するロータと、
前記ロータの回転を減速する歯車装置と、
前記歯車装置により減速された回転を出力する出力軸と、
前記出力軸の回転を直線運動に変換して前記弁体に伝達する伝達機構と、
前記歯車装置を収容する筒状のギアケースと、
前記出力軸を回転可能に支持するガイド部と、
を備え、
前記出力軸、前記ガイド部および前記歯車装置は、前記ギアケースに支持されている
ことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記歯車装置と、前記ギアケースと、前記出力軸と、前記ガイド部と、前記ロータを、歯車装置組立体としてユニット化した
請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記ギアケースの内周面および前記ガイド部の外周面のうちの一方に係合凹部を備えるとともに、
前記ギアケースの内周面および前記ガイド部の外周面のうちの他方に前記係合凹部に嵌入して前記ガイド部の回転を阻止する係合凸部を備えた
請求項1または2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記ギアケース内にインサート成形により備えられている
請求項1または2に記載の電動弁。
【請求項5】
前記伝達機構は、
前記出力軸の回転を受けて回転し且つ前記出力軸に対して進退動可能に備えられ、外周面に雄ねじ部を有する、ねじ駆動部材と、
前記ねじ駆動部材の雄ねじ部と螺合する雌ねじ部を有する軸受部材と、
を含み、
前記電動弁は、
前記ギアケースの下部に収容されるとともに前記ねじ駆動部材に固定されて当該ねじ駆動部材と一緒に回転する駆動永久磁石と、
磁気カップリングにより前記駆動永久磁石に結合されて前記駆動永久磁石から回転力が伝達されるように前記ギアケースの下部外周面の外側に配置された従動永久磁石と、
前記従動永久磁石の回転を検出する磁気センサと、
をさらに備えている
請求項1または2に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁に係り、特に、電動機の回転を減速するギア部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモータ等の電動機を使用して弁の開度を制御する電動弁が空気調和機や冷蔵装置、冷凍装置など冷媒回路を備えた冷凍サイクル装置に従来から使用されており、このような電動弁の一つとして、電動機の回転を減速する歯車装置を備えたギア式の電動弁がある。
【0003】
かかる電動弁は、弁体を駆動する電動機と、電動機の回転を減速する歯車装置と、歯車装置により減速された回転を出力する出力軸と、出力軸の回転を直線運動に変換して弁体に伝える伝達機構を備え、流路上に形成したオリフィスに対して弁体を進退動させることにより流体の流量を制御する。
【0004】
また、このようなギア式電動弁に関する発明を開示する文献として下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1記載の発明は、電動弁の組立性を向上させ、回転試験や評価を可能とすることで電動弁の信頼性を高めるものではあるものの、これらの点で更なる改良の余地を残している。
【0007】
具体的には、前記特許文献1記載の発明では、歯車装置を構成するギアをユニット化したギアアッセンブリ(ギアモジュール)を予め作製しておき、これを電動弁へ組み付けるようにすることで製造時の組立性を向上させている。
【0008】
ところが、当該ギアアッセンブリは、歯車装置を構成するすべてのギアが組み込まれているわけではなく、製造時には更なるギア(太陽ギア)の組み込み作業が必要となる。
【0009】
また、信頼性向上の点でも、特許文献1記載の電動弁は、上述のように歯車装置のすべての歯車を備えていないこと、ならびに、歯車装置により減速された回転を出力する出力軸を備えているがこの出力軸がガイド部によって支えられていないことから、ギアアッセンブリの状態では歯車装置全体としての動作確認や減速比の測定・確認などの試験を行うことが出来ない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、ギア式電動弁の組立性をより一層向上させるとともに、歯車装置全体としての試験を可能とすることにより電動弁の信頼性をさらに高めることを可能とする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る電動弁は、弁室を内部に有する弁本体と、弁室に連通する第1流路と、弁室に連通する第2流路と、第1流路と第2流路との間に形成したオリフィスと、オリフィスに対して進退動してオリフィスの開度を変更する弁体と、弁体を駆動する電動機を構成するロータと、ロータの回転を減速する歯車装置と、歯車装置により減速された回転を出力する出力軸と、出力軸の回転を直線運動に変換して弁体に伝達する伝達機構と、歯車装置を収容する筒状のギアケースと、出力軸を回転可能に支持するガイド部とを備え、出力軸、ガイド部および歯車装置がギアケースに支持されている。
【0012】
前述した特許文献1記載の発明に係る電動弁を含め従来のギア式電動弁では、ギアアッセンブリが、歯車装置により減速された回転を出力する出力軸を備えているものの、出力軸を支持するガイド部は伝達機構側に備えられている。具体的には、伝達機構は、軸線方向に移動可能に出力軸に接続される雄ねじ部材(ねじ軸/本願では「ねじ駆動部材」と言う)と、雄ねじ部材と螺合する雌ねじ部を有する軸受(本願では「軸受部材」と言う)とにより構成される送りねじ(ねじ機構)からなるが、軸受の上部に出力軸を回転可能に嵌入させることにより出力軸を支持している。このため従来の電動弁では、歯車装置単体で(伝達機構と組み合わせることなく/以下同様の意味)動作確認や減速比の測定等の検査を行うことが出来ない。
【0013】
これに対し本発明に係る電動弁では、出力軸のガイド部を従来のように軸受に設けるのではなく伝達機構(軸受)とは別に、ギアケースにガイド部を支持させる。これにより、歯車装置単体で動作試験などの各種の試験検査を行うことが可能となり、電動弁の信頼性をより一層向上させることが出来る。また、歯車装置(必要なすべての歯車)をギアケース内に備えておくことにより、電動弁の組立性を従来に比べ向上させることも出来る。
【0014】
さらに従来、伝達機構の軸受は耐久性を確保する点から一般に金属製で、これと一体となっている出力軸のガイド部も金属製にせざるを得なかった。これに対し本発明によれば、伝達機構(軸受部材)とは別に出力軸のガイド部を備えるから、軸受部材を金属製として耐久性を確保する一方で、ガイド部を例えば摺動性樹脂(摺動性の高い樹脂)により形成することができ、ガイド部の摺動抵抗を低減させることも可能となる。また、摺動性樹脂を採用すれば、出力軸の支持部をグリースレス構造とすることも出来る。なお、ガイド部は、例えばインサート成形によりギアケース内に備えることが出来る。
【0015】
また、本発明の典型的な一態様では、歯車装置、ギアケース、出力軸、ガイド部およびロータを、歯車装置組立体としてユニット化する。なお、「ユニット化」とは、複数の部品からなる、電動弁への組み込みが可能な1つの纏まりあるユニット(部品の集合体)として構成することを意味する。さらに当該歯車装置組立体には、後述する実施形態のように、ロータを回転可能に支持する中心シャフトや、中心シャフトをキャン内に支持する支持部材を含めても良い。
【0016】
上記歯車装置は、後に述べる実施形態のように不思議遊星歯車機構により構成することが出来る。ただし、本発明に言う歯車装置は不思議遊星歯車機構に限られるものではなく、他の遊星歯車機構や、遊星歯車機構以外の歯車機構によって本発明に言う歯車装置を構成することも可能である。
【0017】
上記本発明に係る電動弁では、ギアケースの内周面およびガイド部の外周面のうちの一方に係合凹部を備えるとともに、ギアケースの内周面およびガイド部の外周面のうちの他方に前記係合凹部に嵌入してガイド部の回転を阻止する係合凸部を備えることが好ましい。ガイド部がギアケースから脱落することを防ぐとともに、出力軸と一緒にガイド部が回転してしまうことを防ぐためである。つまり、係合凹部と係合凸部は協働して、ガイド部がギアケースの軸線方向へ移動(位置ずれ)すること、ならびに、回転することを防ぐ機能を果たす。
【0018】
なお、「係合凹部」は、相手方(ギアケース側に備える場合にはガイド部であり、ガイド部側に備える場合にはギアケース)に対して(言い換えれば相手方から見て)凹んだ部分である。一方、「係合凸部」は、相手方(ギアケース側に備える場合にはガイド部であり、ガイド部側に備える場合にはギアケース)に対して(言い換えれば相手方から見て)突出した部分である。
【0019】
また、伝達機構(軸受部材)とは別にガイド部を備える本発明によれば、歯車装置(ギアケースや出力軸)と伝達機構との間にスペース(空間)を設けることが出来る。したがって本発明の好ましい態様に係る電動弁では、当該スペースを利用してねじ駆動部材の回転を検出する回転検出手段を備える。
【0020】
具体的には、当該態様に係る電動弁では、伝達機構が、出力軸の回転を受けて回転し且つ出力軸に対して進退動可能に備えられ外周面に雄ねじ部を有するねじ駆動部材と、ねじ駆動部材の雄ねじ部と螺合する雌ねじ部を有する軸受部材とを含み、当該電動弁が、ギアケースの下部に収容されるとともにねじ駆動部材に固定されてねじ駆動部材と一緒に回転する駆動永久磁石と、磁気カップリングにより駆動永久磁石に結合されて駆動永久磁石から回転力が伝達されるようにギアケースの下部外周面の外側に配置された従動永久磁石と、従動永久磁石の回転を検出する磁気センサをさらに備える。
【0021】
伝達機構を構成するねじ駆動部材は、送りねじとしての機能(出力軸から受けた回転を直線運動に変換する機能)を果たすために軸線方向へ摺動可能に出力軸に接続される。このため、出力軸とねじ駆動部材との間には一定の隙間(相対移動できるようにするための間隙)が必要となる。したがって、弁体のより正確な位置(軸線方向の変位)を検出するには、ロータや出力軸の回転を検出するよりねじ駆動部材の回転を検出することが望ましい。しかしながら従来の弁構造では、前述のように出力軸を支持するガイド部を伝達機構(軸受)側に備えていたこともあって、軸受の内部に配置されたねじ駆動部材の回転を検出することはスペース的に困難であった。これに対し本発明の上記態様によれば、ねじ駆動部材の回転を検出することで、より正確な弁体の変位(弁の開度)を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ギア式電動弁の組立性と信頼性をより一層向上させることが可能となる。
【0023】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基いて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。また、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電動弁(閉弁状態)を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、前記第1実施形態に係る電動弁の歯車装置組立体を拡大して示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、前記歯車装置組立体の下部部分横断面図(
図2のB-B矢視断面)である。
【
図4】
図4は、前記第1実施形態に係る電動弁(開弁状態)を示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る電動弁(閉弁状態)を示す縦断面図である。
【
図6】
図6は、前記第2実施形態に係る電動弁の回転検出部(
図5のC部分)を拡大して示す図である。
【
図7】
図7は、前記第2実施形態に係る電動弁の回転検出部(駆動永久磁石、従動永久磁石及び磁気センサ)を示す平面図(上から見た図)である。
【
図8】
図8は、前記第2実施形態に係る電動弁(開弁状態)を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1実施形態〕
図1から
図4を参照して本発明の第1の実施形態に係る電動弁について説明する。なお、各図には上下左右を表す互いに直交する二次元座標軸を適宜表示し、以下の説明はこれらの方向に基いて行う。但し、本発明および本実施形態(後述の第2実施形態についても同様)の電動弁は様々な向きで使用することが可能であり、各方向は説明の便宜上のものであって本発明の各部構成はこれらの方向によって何ら限定されるものではない。
【0026】
図1から
図4に示すように本実施形態に係る電動弁11は、ヒートポンプ式冷暖房システムのような冷凍サイクル装置において冷媒の流量を調整するため使用するのに好適な電動弁で、内部に弁室13を有するとともに弁室13に冷媒を流入させる流入路(第1流路)14および弁室13から冷媒を流出させる流出路(第2流路)15を有する弁本体12と、流入路14と弁室13の間(流入路14の弁室13に対する開口部)に形成したオリフィス(弁口)16と、オリフィス16に対して進退動(上下動)することによりオリフィス16の開度を変更する弁体18と、弁室13の上面を閉塞するように備えられて弁体18を上下摺動可能に支持する弁体支持部材19と、弁体18を駆動する電動機51と、電動機51によって発生される回転を減速する歯車装置22と、歯車装置22により減速した回転を出力する出力軸36と、出力軸36を回転摺動可能に支持する出力軸ガイド部材(以下単に「ガイド部材」と言う)37と、送りねじ機構によって出力軸37の回転を直線運動に変換し弁体18に伝達する伝達機構43と、歯車装置22を収容する円筒状のギアケース23と、電動機51と弁本体12を接続する接続部材40と、無底有蓋の(底面が開放され天面が閉塞された)円筒状の形状を有して接続部材40とともに弁本体12の上面に密封空間を形成するキャン(密封容器)42とを備えている。
【0027】
なお、オリフィス16の弁室側端部には、弁体18が接離する(当接および離間する)弁座17を形成してある。また、流入路14の内部には、冷媒を通過させるが異物を捕捉することが可能なメッシュ(網目)状のストレーナ20を備えてある。
【0028】
電動機51は、キャン42の外側に配置したステータ52とキャン42の内側に回転自在に配置したロータ(マグネットロータ)24とを備えたステッピングモータである。
【0029】
キャン42の外側に配置したステータ52は、ヨーク(ステータヨーク)53と、ボビン54に巻線を施したコイル55と、樹脂製のモールドカバー56を含む。また、キャン42の内側に配置したロータ24は、磁性材料(永久磁石)で作製された円筒状のロータ部材25と、樹脂材料で作製した太陽ギア部材26とを一体に連結して構成する。
【0030】
太陽ギア部材26の中心部には中心シャフト27を挿入し、中心シャフト27の上部はキャン42の頂部内側に配置した支持部材28により支持する。
【0031】
太陽ギア部材26の太陽ギア29は、出力ギア30の底面上に載置したキャリア31に設けたシャフト32に回転自在に支持させた複数の遊星ギア33に噛み合っている。遊星ギア33の上部は、接続部材40の上部に固定したギアケース23の上部に取り付けた環状のリングギア(内歯固定ギア)34に噛み合い、遊星ギア33の下部は、環状の出力ギア30の内歯ギア35に噛み合っている。リングギア34の歯数と出力ギア30の内歯ギア35の歯数とは僅かに異なる歯数としてあり、これにより太陽ギア29の回転数が大きな減速比で減速されて出力ギア30に伝達される。なお、これらの歯車機構(太陽ギア29、遊星ギア33、リングギア34および出力ギア30)は、不思議遊星歯車減速機構を形成し、前述した電動機51の回転を減速する歯車装置22を構成するものである。
【0032】
出力ギア30の底部中央には、段付き円筒状の出力軸36の上部を圧入し、出力ギア30と出力軸36を連結する。
【0033】
一方、ギアケース23の内側底部には、出力軸36を支持するガイド部材(本発明に言うガイド部)37を備える。このガイド部材37は中心部に貫通孔37aを有し、この貫通孔37a内に出力軸36の下部が摺動回転可能に保持される。また、上記出力ギア30は、ガイド部材37の上面に摺動可能に接触している。なお、出力ギア30や出力軸36の摺動抵抗を小さくするため、ガイド部材37は、摺動性樹脂(例えばPTFE/Polytetrafluoroethylene/ポリテトラフルオロエチレン)で形成する。また、出力軸36の上部には、中心シャフト27の下端部を、出力軸36の回転が妨げられないように嵌め込んである。
【0034】
また、ガイド部材37がギアケース23から脱落してしまうことを防ぐとともに、出力軸36の回転に伴ってガイド部材37が回転してしまうことを防ぐために、ギアケース23とガイド部材37とに嵌合構造を形成する。具体的には、当該嵌合構造は、ギアケース23の周壁を内側へ凹ませることによってギアケース23の中心に向け突出する凸部(係合凸部)38をギアケース23に形成するとともに、この凸部38が嵌入する凹部(係合凹部)39をガイド部材37の外周面に形成する(
図2及び
図3参照)。なお、当該嵌合構造(凸部38と凹部39の組)は、本実施形態では直径方向の対向位置にそれぞれ1組ずつで合計2組設けたが、当該嵌合構造の数は1組であっても3組以上備えても良い。
【0035】
また、ガイド部材37をギアケース23にインサート成形して固定しても良い。インサート成形では、金属製のギアケース23が内部に配置された金型に、ガイド部材37の素になる樹脂材料を導入し成形する。このため、凸部はギアケース23とガイド部材37の一方に形成し、凹部をギアケース23とガイド部材37の他方に形成すれば良い。また、凹部もしくは貫通孔をギアケース23に設け、ガイド部材37をインサート成形しても良く、この場合は凹部もしくは貫通孔にガイド部材37の一部が入り込んで固定される。
【0036】
さらに、本実施形態(後に述べる第2実施形態についても同様)に係る電動弁11の製造にあたっては、上記歯車装置22、ギアケース23、出力軸36、ガイド部材37、ロータ24、中心シャフト27および支持部材28を歯車装置組立体21としてユニット化する。
図2はこのユニット化した歯車装置組立体(本願では「アッセンブリ」とも言う)21を拡大して示すものであるが、このようにユニット化したアッセンブリ21を作製しておくことで、電動弁11の生産性を向上させることが出来る。例えば、ギア比の異なる複数種類のアッセンブリ21を作製し用意しておけば、これらのうちから選択することで、弁体側の負荷に対応した仕様変更に直ちに対応することが可能となる。また当該アッセンブリ21は、後述する送りねじ機構43のねじピッチや弁口径が異なる多機種の弁本体12への組み付けも可能となる。
【0037】
さらに、上記アッセンブリ21は、すべての歯車を含むうえ、出力軸36を支持するガイド部材37も備えているから、電動機51の回転を減速させるギア部の動作試験や性能検査などの試験検査を行うことが可能となり、電動弁11の信頼性をより一層向上させることが出来る。
【0038】
電動機51と弁本体12を接続する前記接続部材40は、互いに連通する貫通孔である大径孔40aと小径孔40bを有する筒状部材である。大径孔40aは、接続部材40の上部中心部を貫通し、後述する軸受部材44を上方から嵌挿できるように径が大きい。小径孔40bは、接続部材40の下部中心部を貫通して径が小さい。また、接続部材40の上端部外周面には、リング状のベースプレート41を介してキャン42を接合する。
【0039】
接続部材40の上部の大径孔40aには、軸受部材44を嵌挿して固定する。この軸受部材44は上下方向に貫通する中心孔を有する円筒状の部材であり、当該中心孔の内周面に雌ねじ(雌ねじ部)44aを形成してある。また、軸受部材44の中心孔内には、ねじ駆動部材45を備える。ねじ駆動部材45の外周面には、軸受部材44の雌ねじ部44aに螺合する雄ねじ(雄ねじ部)45aを形成してあり、これら雄ねじ部45a(ねじ駆動部材45)と雌ねじ部44a(軸受部材44)は、前述した送りねじ機構、すなわち、歯車装置22を介してステッピングモータ51から供給される回転運動を上下方向への直線運動に変換して弁体18に伝達する伝達機構43を構成するものである。
【0040】
ここで、前記出力ギア30は上下方向の一定位置で上下動せずに回転運動しており、出力ギア30に連結された出力軸36の下端部に設けたスリット状の嵌合溝36aにねじ駆動部材45の上端部に設けた平ドライバ形状の板状部45bを挿入して出力ギア30の回転運動をねじ駆動部材45側に伝達する。ねじ駆動部材45に設けた板状部45bが出力軸36の嵌合溝36a内で上下方向に摺動することにより、出力ギア30(ロータ24)が回転すれば出力ギア30は上下方向に移動しないにも拘らず、ねじ駆動部材45は前記伝達機構(送りねじ機構)43によって上下方向に直線運動する。
【0041】
このねじ駆動部材45の直線運動は、ボール47およびボール受座48からなるボール状継手46と、ばね受け部材49とを介して弁体18に伝達される。弁体18は、弁座17に接離する弁体本体部18aと、弁体本体部18aの上面中心部から上方に立ち上がる段付き円柱状の弁軸部18bとからなり、ばね受け部材49の下面中心部に形成した嵌合穴(下面嵌合穴)49aに弁軸部18bの上端部を嵌挿させてばね受け部材49と弁体18(弁軸部18b)とを連結してある。また、ばね受け部材49の上面中心部にも嵌合穴(上面嵌合穴)49bを設け、この上面側嵌合穴49bにボール受座48を嵌め込んである。さらに、ばね受け部材49は、接続部材40の前記小径孔40b内に上下動自在に嵌挿してある。
【0042】
また、弁本体12の上面開口には、弁体支持部材19と接続部材40を順にねじ込むことにより固定し、これにより弁室上部の上面開口を閉塞している。弁室13の上部に固定された弁体支持部材19には、その中心部に弁軸部18bを上下摺動可能に貫通させるとともに圧縮コイルばね50を設置する段付き貫通孔を形成してある。そして当該貫通孔上部の段部と、前記ばね受け部材49との間に圧縮コイルばね50を備える。この圧縮コイルばね50は、ばね受け部材49を介して弁体18を上方(開弁方向)に常に付勢しており、これにより、ねじ駆動部材45が上方へ移動したときにも、ボール状継手46を介して接触させてあるねじ駆動部材45と弁体18とが離れることが無く、ねじ駆動部材45と弁体18とが上下方向について一体化される。また、開弁操作時に電動機51の駆動力に加えて当該圧縮コイルばね50の付勢力が弁体18に付与されることで、より確実に開弁動作を行わせることが可能となる。
【0043】
なお、駆動部側のねじ駆動部材45は、弁体18に対してボール47を介して中心軸A周りに回転摺動し、ねじ駆動部材45の回転は弁体18に伝達されない。また本実施形態において、弁体18、ばね受け部材49、ボール継手46(ボール47及びボール受座48)、ねじ駆動部材45、軸受部材44、出力軸36、中心シャフト27、ガイド部材37、オリフィス16(弁座17)、弁体支持部材19、接続部材40、ロータ24等の各部材は同軸状に配置されており、これらの中心軸Aは、ロータ24の回転軸(中心軸)Aと一致する。
【0044】
本実施形態に係る電動弁の動作について述べれば次のとおりである。
【0045】
図1に示す閉弁状態からロータ24が一方向に回転するようにステータ52(コイル55)に電流が供給されると、ロータ24の回転が伝達機構43によって直線運動に変換され、ねじ駆動部材45が上方へ引き上げられる。これに伴い、圧縮コイルばね50の付勢力によってボール状継手46を介しねじ駆動部材45の下面に押し付けられているばね受け部材49、並びにばね受け部材49に連結されている弁軸部18bが上方に引き上げられて弁体本体部18aが弁座17から離れることでオリフィス16が開放され、流入路14から流入した冷媒が弁室13を通って流出路15から流出する(
図4の矢印F参照)。なお、この開弁状態における冷媒の通過量(流量)は、ロータ24の回転量によって調整することが出来る。
【0046】
一方、この開弁状態から上記一方向とは逆方向にロータ24が回転するようにステータ52(コイル55)に電流が供給されると、ロータ24の回転が伝達機構43によって直線運動に変換され、ねじ駆動部材45が下方へ移動する。この下降動作に伴い、ボール状継手46、ばね受け部材49および弁体18は下方へ移動し、弁体本体部18aが弁座17に当接すると、オリフィス16が閉鎖されることで流入路14と流出路15と間の流路が遮断され、閉弁状態(
図1参照)となる。
【0047】
〔第2実施形態〕
図5から
図8を参照して本発明の第2の実施形態に係る電動弁について説明する。なお、本実施形態の説明では、前記第1実施形態と同一または相当する構成には同一の符号を付して重複する説明を省略し、相違点を中心に説明を行う。
【0048】
図5から
図8に示すように本実施形態に係る電動弁61は、前記第1実施形態と同様に歯車装置22を含むアッセンブリ(歯車装置組立体)21を備えているが、歯車装置22と伝達機構43との間の空間を利用して、ねじ駆動部材45の回転を検出する回転検出手段を備えたものである。なお、回転検出手段を備えるため、本実施形態では、前記第1実施形態と比べてギアケース23の上下方向の寸法が長く、周壁を下方へ延長した形状をギアケース23が有している。
【0049】
回転検出手段は、具体的には、ギアケース23の内部下端部に配置されるようにねじ駆動部材45に固定した円板状の駆動永久磁石62と、ギアケース23の下部外周面の外側に配置したリング状の従動永久磁石63と、従動永久磁石63の回転を検出する磁気センサ64とからなる。
【0050】
駆動永久磁石62は、ねじ駆動部材45の外周面から外方へフランジ状に水平に広がり、ねじ駆動部材45と一緒に回転する。また、駆動永久磁石62は、直径で区画された半円弧部分62a,62bを有する(
図7参照)。一方の半円弧部分62aには、径方向内側から外側に向けて1つのN極および1つのS極が順に配置され、他方の半円弧部分62bには、径方向内側から外側に向けて1つのS極および1つのN極が順に配置されている。なお、ねじ駆動部材45について、本実施形態では、雄ねじ部45aと板状部45bとの間に駆動永久磁石62を固定するための軸部45cを設けてあり、このため、本実施形態のねじ駆動部材45は第1実施形態のものより上下方向の全長が長い。
【0051】
従動永久磁石63は、永久磁石の吸引力を利用してトルク伝達を行う磁気カップリングにより駆動永久磁石62に結合させてあり、駆動永久磁石62から回転力を受けて駆動永久磁石62と一緒に回転する。このために従動永久磁石63は、次のような構造を有する。
【0052】
従動永久磁石63は、円環(リング)形状を有し、直径で区画された半円弧部分63a,63bを有する。一方の半円弧部分63aには、径方向内側から外側に向けて1つのN極および1つのS極が順に配置され、他方の半円弧部分63bには、径方向内側から外側に向けて1つのS極および1つのN極が順に配置されている。そして、駆動永久磁石62のN極と従動永久磁石63のS極がギアケース23の周壁を挟んで互いに対向するとともに、駆動永久磁石62のS極と従動永久磁石63のN極がギアケース23の周壁を挟んで互いに対向し、これにより駆動永久磁石62と従動永久磁石63との間に磁気カップリングが形成される。
【0053】
さらに、従動永久磁石63をギアケース23の外周面に回転摺動可能に支持するために、次のような支持構造を備える。
【0054】
ギアケース23の周壁の下端部に、当該周壁を外方へ突出させたリング状の突出部(当該突出部はギアケース23の周壁の全周に亘って延びている)65を形成する。また、当該突出部65を嵌入させることが可能な凹溝(当該凹溝は従動永久磁石63の内周面の全周に亘って延びている)66を従動永久磁石63の内周面に形成する。これらの突出部65および凹溝66により、従動永久磁石63がギアケース23から脱落(例えば下方へ落下)することなく摺動回転可能にギアケース23の外周面に支持することが出来る。
【0055】
なお、ねじ駆動部材45に固定されている駆動永久磁石62は、ねじ駆動部材45の上下動(弁の開閉動作)に伴ってねじ駆動部材45とともに回転しながら上下方向に移動するが、従動永久磁石63の上下方向の寸法を駆動永久磁石62よりも大きくすることにより、駆動永久磁石62が上下動しても駆動永久磁石62が従動永久磁石63の上下方向の範囲(従動永久磁石63に対向する状態)から外れることがなく、駆動永久磁石62と従動永久磁石63との間の磁気カップリングが解消されることはない。
【0056】
磁気センサ64は、磁場の回転角度に対応した信号を出力する回転角度センサで、キャン42の周壁を挟んで従動永久磁石63の外周面と径方向に向かい合うようにキャン42の外側に配置してある。当該磁気センサ64は、従動永久磁石63の磁気を検出し、従動永久磁石63の回転角度に対応した信号を出力する。これにより、ねじ駆動部材45の回転変位を検出することができ、本実施形態によればより正確な弁の開度(弁体18と弁座17との距離)を検知することが可能となる。
【0057】
本実施形態に係る電動弁61の他の構成や動作は、前記第1実施形態の電動弁11と同様である。
【符号の説明】
【0058】
A 中心軸(ロータの回転軸)
F 冷媒の流れ
11,61 電動弁
12 弁本体
13 弁室
14 流入管(第1流路)
15 流出管(第2流路)
16 オリフィス
17 弁座
18 弁体
18a 弁体本体部
18b 弁軸部
19 弁体支持部材
20 ストレーナ
21 歯車装置組立体(アッセンブリ)
22 歯車装置(不思議遊星歯車減速機構)
23 ギアケース
24 ロータ
25 ロータ部材
26 太陽ギア部材
27 中心シャフト
28 支持部材
29 太陽ギア
30 出力ギア
31 キャリア
32 シャフト
33 遊星ギア
34 リングギア(内歯固定ギア)
35 内歯ギア
36 出力軸
36a 嵌合溝
37 出力軸ガイド部材(ガイド部)
37a 出力軸ガイド部材の貫通孔
38 凸部(係合凸部)
39 凹部(係合凹部)
40 接続部材
40a 大径孔
40b 小径孔
41 ベースプレート
42 キャン
43 伝達機構(送りねじ機構)
44 軸受部材
44a 雌ねじ部
45 ねじ駆動部材
45a 雄ねじ部
45b 板状部
45c 軸部(駆動永久磁石固定用軸部)
46 ボール状継手
47 ボール
48 ボール受座
49 ばね受け部材
49a 嵌合穴(下面嵌合穴)
49b 嵌合穴(上面嵌合穴)
50 圧縮コイルばね
51 電動機
52 ステータ
53 ヨーク
54 ボビン
55 コイル
56 モールドカバー
62 駆動永久磁石
62a,62b,63a,63b 半円弧部分
63 従動永久磁石
64 磁気センサ
65 突出部
66 凹溝
【手続補正書】
【提出日】2025-01-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を内部に有する弁本体と、
前記弁室に連通する第1流路と、
前記弁室に連通する第2流路と、
前記第1流路と前記第2流路との間に形成したオリフィスと、
前記オリフィスに対して進退動して前記オリフィスの開度を変更する弁体と、
前記弁体を駆動する電動機を構成するロータと、
前記ロータの回転を減速する歯車装置と、
前記歯車装置により減速された回転を出力する出力軸と、
前記出力軸の回転を直線運動に変換して前記弁体に伝達する伝達機構と、
前記歯車装置を収容する筒状のギアケースと、
前記出力軸を回転可能に支持するガイド部と、
前記電動機と前記弁本体を接続する接続部材と、
を備え、
前記伝達機構は、
前記出力軸の回転を受けて回転し且つ前記出力軸に対して進退動可能に備えられ、外周面に雄ねじ部を有する、ねじ駆動部材と、
前記ねじ駆動部材の雄ねじ部と螺合する雌ねじ部を有する軸受部材と、
を含み、
前記軸受部材は、前記ガイド部と別部材であり、前記接続部材に支持され、
前記出力軸、前記ガイド部および前記歯車装置は、前記ギアケースに支持されている
ことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記歯車装置と、前記ギアケースと、前記出力軸と、前記ガイド部と、前記ロータを、歯車装置組立体としてユニット化した
請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記ギアケースの内周面および前記ガイド部の外周面のうちの一方に係合凹部を備えるとともに、
前記ギアケースの内周面および前記ガイド部の外周面のうちの他方に前記係合凹部に嵌入して前記ガイド部の回転を阻止する係合凸部を備えた
請求項1または2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記ギアケース内にインサート成形により備えられている
請求項1または2に記載の電動弁。
【請求項5】
前記ギアケースの下部に収容されるとともに前記ねじ駆動部材に固定されて当該ねじ駆動部材と一緒に回転する駆動永久磁石と、
磁気カップリングにより前記駆動永久磁石に結合されて前記駆動永久磁石から回転力が伝達されるように前記ギアケースの下部外周面の外側に配置された従動永久磁石と、
前記従動永久磁石の回転を検出する磁気センサと、
をさらに備えている
請求項1または2に記載の電動弁。