(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004355
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】流量計測装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/00 20220101AFI20250107BHJP
【FI】
G01F1/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103984
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】濱田 茂
(72)【発明者】
【氏名】里見 拓人
【テーマコード(参考)】
2F030
【Fターム(参考)】
2F030CA01
2F030CC02
2F030CE22
2F030CG01
(57)【要約】
【課題】流体管内の洗浄に用いられた流体の流量を正確に把握し、流体使用量の管理運営を向上させることができる流量計測装置を提供すること。
【解決手段】流量計測装置1は、流路構成部材としての消火栓60の口金62(放出口)から放出される流体の流量を計測するものであって、口金62に接続される接続部11と、該接続部11に連通し略鉛直上方に向けて延設される延設管部12と、を少なくとも備え、延設管部12における内部流体が定常流を成す特定領域E1に、内部流体の流量を計測する計測部としての計測装置14が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路構成部材の放出口から放出される流体の流量を計測する流量計測装置であって、
前記放出口に接続される接続部と、該接続部に連通し略鉛直上方に向けて延設される延設管部と、を少なくとも備え、前記延設管部における内部流体が定常流を成す特定領域に、前記内部流体の流量を計測する計測部が設けられていることを特徴とする流量計測装置。
【請求項2】
前記延設管部は、前記特定領域よりも下方に、前記延設管部の管径の10倍以上の延長を有する上流領域を備えることを特徴とする請求項1に記載の流量計測装置。
【請求項3】
前記延設管部は、前記特定領域よりも上方に、前記延設管部の管径の5倍以上の延長を有する下流領域を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の流量計測装置。
【請求項4】
前記延設管部の上端に、側方に向けて延設されるベンド管部が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の流量計測装置。
【請求項5】
前記計測部は、前記延設管部の前記特定領域に固定された流速検知部と、該流速検知部に対し着脱可能に接続される表示部と、を少なくとも有することを特徴とする請求項1に記載の流量計測装置。
【請求項6】
前記表示部の表示画面を撮像可能な撮像部を有することを特徴とする請求項5に記載の流量計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路構成部材の放出口から放出される流体の流量を計測する流量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、水道管等の既設流体管の管路における所定適所で、流体管の新設または更新工事を行った場合や管路内面の塗装が劣化した場合等において、錆や砂、あるいは切断工事に伴い発生した鉄片などの夾雑物が流体に混入することがある。
【0003】
そこで、既設流体管の管路の所定箇所に設けられている消火栓の放出口に排水装置を接続し、この消火栓を利用して、流体管内の夾雑物を放出水とともに外部に放出して流体管内の洗浄を行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-286339号公報(第3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
尚、水道事業者では、管路の維持管理上、上記排水装置等を用いて流体管内の清浄を目的に放出した分量を利用者に請求することはできないため、正確な積算流量の把握が必要であるが、従来においては、時間を測定しながら容器などに排水を溜めて分量を測定していたため、積算流量が不明確になる虞があった。
【0006】
また、上記特許文献1に記載の排水装置にあっては、流量計により放出水の流量を測定しているが、流量計がスタンドパイプと消防用ホースとの接続位置より下方に配置された水平管に設置されていることで、管内での乱流の発生や空気の滞留が発生し、正確な積算流量を測定できないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、流体管内の洗浄に用いられた流体の流量を正確に把握し、流体使用量の管理運営を向上させることができる流量計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の流量計測装置は、
流路構成部材の放出口から放出される流体の流量を計測する流量計測装置であって、
前記放出口に接続される接続部と、該接続部に連通し略鉛直上方に向けて延設される延設管部と、を少なくとも備え、前記延設管部における内部流体が定常流を成す特定領域に、前記内部流体の流量を計測する計測部が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、放出口から放出された流体が略鉛直上方を向く延設管部において定常流をなす特定領域にて流量を計測することで、流体管内の洗浄に用いられた流体の流量を正確に把握できるようになるため、流体使用量の管理運営を向上させることができる。
【0009】
前記延設管部は、前記特定領域よりも下方に、前記延設管部の管径の10倍以上の延長を有する上流領域を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、延設管部における計測部よりも上流側にて非定常流があっても、その影響を受けることなく流量を安定して計測することができる。
【0010】
前記延設管部は、前記特定領域よりも上方に、前記延設管部の管径の5倍以上の延長を有する下流領域を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、延設管部における計測部よりも下流側にて非定常流があっても、その影響を受けることなく流量を安定して計測することができる。
【0011】
前記延設管部の上端に、側方に向けて延設されるベンド管部が接続されていることを特徴としている。
この特徴によれば、流体を側方に放出できるので、流体放出用のホース等を折曲げることなく容易に接続することができる。
【0012】
前記計測部は、前記延設管部の前記特定領域に固定された流速検知部と、該流速検知部に対し着脱可能に接続される表示部と、を少なくとも有することを特徴としている。
この特徴によれば、表示部を流体検知部に対し着脱できるので、放出口に接続部を接続する際などにおいて表示部が破損することを防止できる。
【0013】
前記表示部の表示画面を撮像可能な撮像部を有することを特徴としている。
この特徴によれば、表示部の表示画面に表示された内容を、撮像部にて撮像した映像等により確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】マンホール内の消火栓に流量計測装置を取付けた状態を示す正面図である。
【
図2】(a)は流量計測装置を示す一部破断正面図、(b)は計測装置の表示部を流速検知部から取外した状態を示す図である。
【
図3】(a)は流量計測装置及び消火栓の一部の管路内部を示す概略断面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図4】流量計測装置及び消火栓の一部の管路内部における流体の流動態様を示す概略断面図である。
【
図5】(a)は計測装置の配置位置を示す一部破断横断面図、(b)~(d)は計測装置の配置位置の変形例を示す一部破断横断面図である。
【
図6】表示部の表示画面を撮像部にて撮像する例を示す図である。
【
図7】(a)は変形例としての流量計測装置の上部を示す正面図、(b)は延設管部に形成された接続部を示す図、(c)は接続部に検出器を取付けた状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る流量計測装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0016】
本発明の実施例に係る流量計測装置について、
図1~
図5に基づいて説明する。尚、以下の説明において、
図1の手前側を流量計測装置の前方側(正面側)、奥側を後方側(背面側)として説明する。
【0017】
図1に示すように、地表GLに穿設されたマンホール50内には、流路構成部材の一例である消火栓60が設置されている。消火栓60は、例えば、地中に埋設された上水道用の既設流体管2に補修弁3を介して接続されており、図示しないキーハンドルを用いて上方から回動操作可能な六角穴付きボルトからなる操作部61と、上方に開口する放出口としての口金62と、を備える。消火栓60は、操作部61を前記キーハンドル(図示略)により回動操作して内部の弁体(図示略)を開放することで、口金62から放出する流体(本実施例では、上水)の流量を制御できるようになっている。また、口金62には、該口金62から放出される流体の流量を計測する本発明の実施例としての流量計測装置1が接続されている。本発明の流量計測装置1は、流路構成部材の放出口から放出される流体の流速、単位時間当たりの瞬時流量、若しくは積算流量の少なくともいずれかを計測できるものであればよい。
【0018】
尚、本発明に係る流体管2はダクタイル鋳鉄製であるが、材質は任意であり、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等であってもよい。更に尚、流体管の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、本実施例の上水に限らず、例えば工業用水や農業用水等であっても構わない。
【0019】
図2(a)に示すように、流量計測装置1は、口金62に接続される接続部11と、該接続部11に連通し略鉛直上方に向けて延設される延設管部12と、延設管部12の上端に左側方に向けて延設されるベンド管部13と、延設管部12における後述する特定領域E1に設けられ、内部流体の流量を計測する計測装置14と、を主に有する。
【0020】
ベンド管部13は、正面視略L字状に形成され、左側方の開口には、可撓性を有するホース70(
図1参照)の継手部が押輪71を介して着脱可能に接続される。また、押輪71を手動で管軸方向に移動させることで、ホース70の継手部分の係合爪(図示略)が押し広げられてベンド管部13との係合が解除され、ホース70を取外すことができるようになっている。尚、ベンド管部13の屈曲部の外側となる外周面には正面視略コ字状の把持部72が形成されている。
【0021】
延設管部12の上方口の開口には、ベンド管部13の継手部が押輪73を介して着脱可能に接続されている。また、押輪73を手動で管軸方向に移動させることで、ベンド管部13の継手部分の係合爪(図示略)が押し広げられて延設管部12との係合が解除され、ベンド管部13を取外すことができるようになっている。
【0022】
また、延設管部12の上部には、左右方向に略水平に延設される固定ハンドル75,75,75が固定されているとともに、その下方には、同じく左右方向に略水平に延設される操作ハンドル76,76が上下方向に移動可能に設けられている。操作ハンドル76,76は、延設管部12の下端部に配設された接続部11の係合を解除可能なものであり、上方へ引上げることで解除操作となる。尚、操作ハンドル76,76は固定ハンドル75,75と略同一形状に形成されている。
【0023】
操作ハンドル76,76の基端部近傍には、接続部11の係合を解除させるための上下方向を向く連結棒77,77の上端が固定されている。連結棒77,77の下端は接続部11に連接されており、操作ハンドル76,76による連結棒77,77の上方への移動に伴って、図示しない係合爪が接続部11の外径方向に退避し、消火栓60の口金62に形成された係合部(図示略)との係合が解除され、口金62から取外すことができるようになっている。尚、消火栓60の口金62に接続部11を接続する際には、接続部11を口金62に上方から押し込むことで、接続部11の係合爪(図示略)が消火栓60の口金62の係合部(図示略)に係合し、接続部11と口金62とが密封状態で接続されて口金62と延設管部12とが連通する。
【0024】
図2(a),(b)に示すように、計測装置14は、延設管部12の特定領域E1(
図3参照)に固定された流速検知部15と、該流速検知部15に対し着脱可能に接続される表示部16と、から主に構成される。詳しくは、
図3(b)に示すように、流速検知部15は、延設管部12に固定されるベース15aと、延設管部12に連通し略同径の内径寸法を有するベース15a内部にて回転可能に設けられたパドルホイール部材15bと、ベース15aの管路に嵌入していない部分に設置される検知部材15cと、を有する。パドルホイール部材15bは、ベース15a内部にて内径方向に僅かに突出した位置に配設されている。
【0025】
パドルホイール部材15bは磁石(図示略)を含み、検知部材15cは磁気検知素子や信号処理回路(図示略)を備える。また、パドルホイール部材15bは、管軸Cよりも周壁側に配設されている。そして、管路内の流体によりパドルホイール部材15bが回転すると磁石の磁場が変化し、磁気検知素子は磁場の変化によってパルス信号を発生させる。信号処理回路は、異なるパルス信号の周波数に対応する流量データが内蔵されているとともに磁気検知素子のパルス信号及び内蔵された流量データに基づいて、流体の瞬時流量及び積算流量を算出可能である。
【0026】
尚、本実施例では、計測装置14の一例として、パドルホイール式の計測装置を適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、流体の流量を計測可能な計測装置であれば、他の方式の計測装置を適用してもよい。
【0027】
表示部16は、
図2(b)に示すように、流速検知部15のベース15aに対し、図示しない係止手段等を介して着脱可能に取付けられている。また、表示部16は、ベース15aへの取付状態では延設管部12の側面から側方に突出するように設けられており、流量計測装置1を口金62に接続する際などにおいてベース15aから取外しておくことで、接続の際に表示部16がマンホール50の内周面などに接触したり、接続の衝撃により破損したりすることを回避できる。また、表示部16の表面には、計測された流体の瞬時流量及び積算流量等の計測値を表示可能な後述する表示画面16aが設けられているとともに、その周囲には種々の操作部(図示略)等が設けられている。
【0028】
次に、計測装置14の配置位置について説明する。
【0029】
図3(a)には、消火栓60に設けられたベンド管部63(
図1参照)と、ベンド管部63の上部の口金62に接続可能な接続部11を下端に有する延設管部12と、延設管部12の上端に接続されるベンド管部13と、からなる管路の内部構造の概略図が示されている。延設管部12はストレート管からなり、内部には直線状の管路が上下方向に延設されている。ベンド管部13は、上方から左側方に向けて屈曲する管路が内部に設けられている。また、ベンド管部63は、右側方から上方に向けて屈曲する管路が内部に設けられている。
【0030】
計測装置14は、延設管部12における所定高さ位置に設けられている。詳しくは、計測装置14は、その中央位置P(詳しくは、パドルホイール部材15bの配置位置)から延設管部12の下端までの離間寸法が第1寸法L2となるとともに、中央位置Pから延設管部12の上端までの離間寸法が第2寸法L3となる位置及びその近傍周辺を含む特定領域E1に配置されている。
【0031】
そして本実施例では、延設管部12の内径寸法L1が所定寸法「D」である場合(L1=D)、第1寸法L2は、内径寸法L1の10倍の長さ寸法とされ(L2=10×D)、第2寸法L3は、内径寸法L1の5倍の長さ寸法とされている(L3=5×D)。
【0032】
言い換えると、延設管部12は、特定領域E1よりも上流である下方に、延設管部12の内径寸法L1(管径)の10倍以上の延長を有する上流領域E2を備えるとともに、特定領域E1よりも下流である上方に、延設管部12の内径寸法L1(管径)の5倍以上の延長を有する下流領域E3を備える。尚、本実施例では、内径寸法L1は約50mm(D=50mm)、延設管部12の上下寸法が約750mmとされているが、寸法は任意であり、上記寸法に限定されるものではない。
【0033】
次に、流体管2の管路内部の洗浄作業工程について説明する。
【0034】
まず、
図1に示すように、マンホール50を開口した後、表示部16を取外した状態の流量計測装置1を地表GLから下降させて消火栓60の口金62に接続部11を接続する。次に、流速検知部15のベース15aに対し表示部16を取付けるとともに、ベンド管部13に対しホース70を接続し、各部の密封状態を確認する。次いで、地表GLからキーハンドル(図示略)を操作部61に接続し、操作部61を回動操作して内部の弁体(図示略)を開放させることで、流体管2の内部流体が、口金62、延設管部12、ベンド管部13を通過してホース70の端部(図示略)から放出される。
【0035】
放出が開始されて延設管部12内にて流体が上方に移動すると、計測装置14は、流速検知部15を通過する流体の流量を計測し、この計測値に基づいて瞬時流量及び積算流量とを算出するとともに、算出した瞬時流量及び積算流量等の計測値を表示部16の表示画面16aに表示する。よって、作業者は、表示画面16aに表示された計測値を目視にて確認しながら、消火栓60の操作部61を回動操作して放出させる流体の流量を調整する。ここで表示部16は、地表GLよりも上方位置に配置されていることで、作業者は表示部16を目視確認しやすく、また併せてホース70の端部(図示略)から放出される放出水の濁りの有無を目視確認することで、放出終了のタイミングを決めることができる。尚、表示画面16aに表示する計測値は種々に変更可能であり、瞬時流量及び積算流量のうちいずれか一方でもよいし、双方を表示してもよい。さらに、流速検知部15を通過する流体の流量から換算した流体管2内の流速など、他の値を表示可能としてもよい。
【0036】
このようにすることで、流体管2から放出される放出水とともに錆や砂等の夾雑物が消火栓60及び流量計測装置1を介して外部に放出されるため、流体管2の内部が洗浄される。尚、放出水とともに錆や砂等の夾雑物を効果的に外部に放出させるためには、流体管2の内部の流速が所定値(例えば、0.3m~1m/sec以上)となることが好ましい。
【0037】
流量計測装置1の延設管部12の内径寸法L1等は、流体管2の内径寸法とは異なるため、流体管2の内部の流速が所定値(例えば、0.3m~1m/sec以上)となるようにするために必要な設計上の瞬時流量を予め算出しておくことで、放出時において計測装置14により計測された瞬時流量が設計上の瞬時流量に近づくように、放出させる流体の流量を調整すればよい。
【0038】
そして、表示画面16aに表示された積算流量が所定の積算流量(例えば、40リットルなど)に達したことに基づいて、操作部61をキーハンドル(図示略)により回動操作して内部の弁体(図示略)を閉鎖して流体の放出を終了することで、流体管2の洗浄が完了する。
【0039】
ここで、
図4は、消火栓60のベンド管部63、流量計測装置1の延設管部12、ベンド管部13内における流体の流動態様を示す概略図を示している。尚、黒矢印(点線)は流速が管内の平均流速に近い安定した部分、図中黒矢印(実線)は流速が管内の平均流速に近い最も安定した部分、白矢印は黒矢印部分よりも流速が不安定な部分を示している。
【0040】
図4に示すように、基本的に、上下方向に向けて直線状に延びる延設管部12内において、流体は、内径側の管軸C付近では流速が管内の平均流速に近く最も安定しており、外径側の周壁付近では該周壁との接触により流れにやや乱れが生じるが流速は安定している。また、延設管部12は略鉛直上方に向けて直線状に延設されていることで、気泡や夾雑物等が管路内に滞留することなく、高い計測精度を得ることができる。
【0041】
一方、ベンド管部63やベンド管部13のような曲部においては、流下断面が大きく変化し且つ管内面も凸曲面や凹曲面に形成されることで、管内側及び管外側の流速は管内の平均流速に対し大きく変動するため、流速は不安定となる。具体的には、ベンド管部63の曲部の出口付近では、管外側の方が管中央や内側よりも流速が速い。また、ベンド管部13の曲部の入口付近では、管内側の方が管中央や外側よりも流速が速い。
【0042】
よって、延設管部12における計測装置14よりも上流領域E2におけるベンド管部63に近い領域では、流体が曲部を通過することでその出口付近は非定常流となるが、ベンド管部63から上方に離れるにつれて影響が及びにくくなり、流体の流れが安定するので、特定領域E1においては定常流となる。
【0043】
また、延設管部12における計測装置14よりも下流領域E3におけるベンド管部13に近い領域では、流体が曲部に進入することでその入口付近は非定常流となるが、ベンド管部13から下方に離れるにつれて影響が及びにくくなり、流体の流れが安定するので、特定領域E1においては定常流となる。このように計測装置14は、口金62から放出された流体が延設管部12において定常流をなす特定領域E1にて流量を計測することで、外部に放出される流体の流量(瞬時流量や積算流量)を正確に計測することができる。
【0044】
また、
図5(a)に示すように、計測装置14は、パドルホイール部材15bが延設管部12の管軸Cの正面側周壁寄りに配置されるため、管軸C付近を通過する安定した流体の流量を測定することができる。特に、
図4にて説明したように、ベンド管部63,13が左右側方に屈曲していることから、流速が安定するもののやや乱れが生じる部分が管路の左側または右側、すなわち管路の屈曲側に寄ることがあっても、パドルホイール部材15bがこのような管路の屈曲側(
図4の点線部分)を計測することなく、延設管部12の管軸Cの正面側(
図4の実線部分)にて計測できるため影響が及びにくい。
【0045】
また、計測装置14は、
図5(b)に示すように、パドルホイール部材15bが延設管部12の管軸Cの背面側周壁寄りに配置されてもよい。尚、計測装置14は、
図5(c)に示すように、パドルホイール部材15bが延設管部12の管軸Cの左側方周壁寄りに配置されてもよいし、
図5(d)に示すように、パドルホイール部材15bが延設管部12の管軸Cの右側方周壁寄りに配置されてもよいが、この場合、流速が安定するもののやや乱れが生じる部分を計測することになるので、計測精度に影響が生じることを考慮すると、
図5(a),(b)のいずれかにした方が好ましい。
【0046】
また、本実施例では、上下のベンド管部63,13が左右に屈曲しており、ベンド管部63,13及び延設管部12が
図3及び
図4で示すように同一平面上に配置されているため、流速が安定するもののやや乱れが生じる部分が管路の屈曲側(左側または右側)に寄ることがあっても、延設管部12の管軸Cの正面側にて計測できるため影響が及びにくい。一方、例えば、上下のベンド管部63,13のうち一方が
図3及び
図4で示すように左右方向に屈曲し、他方が前後方向(
図3及び
図4の紙面手前側か奥側)に屈曲する場合、つまり、ベンド管部63,13及び延設管部12が同一平面上に配置されない場合、流速が安定するもののやや乱れが生じる部分が管路の左右側だけでなく、前後側に寄る場合が生じる。この場合、流体の流れが複合的に乱れて不安定になる虞があるため、ベンド管部63,13及び延設管部12は同一平面上に配置されることが好ましい。
【0047】
(作用・効果)
以上説明したように、本発明の実施例としての流量計測装置1にあっては、流路構成部材としての消火栓60の口金62(放出口)から放出される流体の流量を計測するものであって、口金62に接続される接続部11と、該接続部11に連通し略鉛直上方に向けて延設される延設管部12と、を少なくとも備え、延設管部12における内部流体が定常流を成す特定領域E1に、内部流体の流量を計測する計測部としての計測装置14が設けられている。
【0048】
これによれば、口金62から放出された流体が略鉛直上方を向く延設管部12において定常流をなす特定領域E1にて流量を計測することで、消火栓60を利用して流体管2内の洗浄に用いられた流体の積算流量を正確に把握することができるようになり、水道利用者の使用料から当該流体の積算流量分の使用料を差し引くことが可能となるため、流体使用量の管理運営を向上させることができる。
【0049】
また、延設管部12は、特定領域E1よりも下方に、延設管部12の内径寸法L1の10倍以上の延長を有する上流領域E2を備えることで、延設管部12における計測装置14よりも上流側にて非定常流があっても、その影響を受けることなく流量を安定して計測することができる。
【0050】
また、延設管部12は、特定領域E1よりも上方に、延設管部12の内径寸法L1の5倍以上の延長を有する下流領域E3を備えることで、延設管部における計測装置14よりも下流側にて非定常流があっても、その影響を受けることなく流量を安定して計測することができる。
【0051】
尚、本実施例では、特定領域E1よりも下方に、延設管部12の内径寸法L1の10倍以上の延長を有する上流領域E2を備えるとともに、特定領域E1よりも上方に、延設管部12の内径寸法L1の5倍以上の延長を有する下流領域E3を備えることで、流体がより安定する特定領域E1にて流体を計測することができる形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、延設管部12の内径寸法L1の10倍に限定されず、7~13倍の範囲内の延長を有する上流領域E2を備えていてもよいし、延設管部12の内径寸法L1の5倍に限定されず、3~7倍の範囲内の延長を有する下流領域E3を備えていてもよい。すなわち、特定領域E1を管軸方向に挟む上流領域E2及び下流領域E3の合計延長は、延設管部12の内径寸法L1の10倍~20倍の範囲内の延長を有していると好ましい。
【0052】
また、
図1に示すように、流量計測装置1において地表GLから上方に突出する突出寸法L10が所定値を超えると、ホース70において上方のベンド管部13から地表GLまでの垂下り部70aのホース及びホース内部の流体の重さが、接続部11と口金62との接続部等に加わるため、ウォーターハンマー等が発生した場合に接続部11の口金62からの離脱の危険性が高まる。よって、設置した計測装置14が地表GLよりも高くなりすぎることなく、かつ、流体がより安定した状態で流量を計測できるように、上流領域E2の第1寸法L2や下流領域E3の第2寸法L3を決定することが好ましい。
【0053】
また、延設管部12の上端に、左側方に向けて延設されるベンド管部13が接続されていることで、延設管部12の上端に、流体放出用のホース70等を大きく折曲げること等なく、容易に接続することができる。
【0054】
また、計測部としての計測装置14は、延設管部12の特定領域E1に固定された流速検知部15と、該流速検知部15に対し着脱可能に接続される表示部16と、を少なくとも有することで、表示部16を流速検知部15に対し着脱できるので、口金62に接続部11を接続する際などにおいて表示部16が破損することを防止できる。
【0055】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0056】
例えば、前記実施例では、表示部16の表示画面16aを目視しながら放出操作を行う形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
図6に示すように、表示画面16aを撮像可能な撮像部82を有する携帯端末81を備えることで、表示画面16aに表示された内容を、撮像部82にて撮像した映像等により容易に確認することができるようにしてもよい。この場合、
図6に示す保持具80を用いて携帯端末81を延設管部12に取付けできるようにしてもよい。具体的には、延設管部12に保持具80の取付部80aを取付け、取付部80aから延設された支持部80bに設けられたホルダー部80cに携帯端末81を載置して表示部16の手前側に配置することで、撮像部82にて表示画面16aに表示された計測値等を撮像可能となる。尚、保持具80の形態は種々に変更可能である。
【0057】
このように、表示された流体の瞬時流量や積算流量等の計測値を撮像することで、計測値を撮像データとして保存することができる。また、携帯端末81に別個に用意した表示装置(図示略)を有線接続または無線接続して、撮像データを前記表示装置にて表示可能としてもよい。これによれば、放出操作の際に表示部16が地表GLよりも下方に位置して目視にて確認しがたい状況でも、別個の表示装置を視認しながら操作を行うことができる。
【0058】
また、前記実施例では、延設管部12に計測装置14のみが設けられた形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
図7(a),(b)に示すように、延設管部12における計測装置14よりも下流側に、管路内に連通する接続部90を設け、通常時においては、接続部90の内面に形成された雌ネジ部90aに閉鎖部材91の外面に形成された雄ネジ部91aを螺入することにより、閉鎖部材91を接続部90の内部に取付けて開口を閉鎖するとともに、洗浄の際には、閉鎖部材91を取外し、
図7(c)に示すように、検出器92の外面に形成された雄ネジ部92aを接続部90の雌ネジ部90aに螺入することにより、検出器92を管路内の流体に接触可能に接続部90に取付け、例えば、流体の濁度等を検出可能としてもよい。これによれば、放出水の濁度を検出することで流体管2内部が正常に洗浄されたか否か等を確認することができる。
【0059】
また、延設管部12における少なくとも計測装置14よりも下流側の所定部位を透明なアクリルパイプにより構成したり、計測装置14よりも下流側の所定箇所に窓部(図示略)を設けることで、これら透過性を有する透視窓部を通して管路内を目視可能とすることで、管路内の流体の濁度等を目視により確認できるようにしてもよい。
【0060】
また、前記実施例では、流路構成部材の一例として消火栓60を適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、給水栓付き空気弁や補修弁等の別の流路構成部材を適用してもよい。
【0061】
また、前記実施例では、延設管部12の上端に側方に向けて延設されるベンド管部13が接続されている形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、延設管部12の上端に両側方に向けて延設されるT字形状のベンド管部であってもよい。また、流量計測装置1は少なくとも接続部11と延設管部12とを備えていれば、延設管部12の上端にベンド管部13がなくてもよい。
【0062】
また、前記実施例では、流体管2の内部の夾雑物を効果的に排出するとともに、洗浄に伴い放出された流体の積算流量を把握するために、計測装置14により流体の瞬時流量を及び積算流量を計測可能な形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも積算流量を計測可能であればよい。