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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004357
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】リーク検査方法及びリーク検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/38 20060101AFI20250107BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
G01M3/38 Z
G01N21/64 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103988
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(71)【出願人】
【識別番号】312003595
【氏名又は名称】タカハタプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162341
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬崎 幸典
(72)【発明者】
【氏名】安倍 悠朔
(72)【発明者】
【氏名】松田 佑
(72)【発明者】
【氏名】高橋 咲貴子
(72)【発明者】
【氏名】松江 朋彦
【テーマコード(参考)】
2G043
2G067
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA09
2G043CA07
2G043EA01
2G043FA03
2G043KA02
2G043KA08
2G043LA02
2G043NA01
2G067AA15
2G067BB03
2G067BB13
2G067BB17
2G067CC01
2G067DD11
2G067EE12
2G067EE13
(57)【要約】
【課題】被検査体のエアリークを精度よく短時間で検査できるリーク検査方法及びリーク検査装置を提供する。
【解決手段】所定の真空度に減圧され気密に封止された内部空間を有する被検査体のエアリークを検査するリーク検査方法であって、内部空間内の酸素濃度の変化で発光強度が変化する感圧塗料に前記内部空間外から励起用の光を投射する光投射ステップと、発光強度の減衰速度を測定する測定ステップと、減衰速度が所定の閾値を超えた場合にエアリーク有りと判定する判定ステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の真空度に減圧され気密に封止された内部空間を有する被検査体のエアリークを検査するリーク検査方法であって、
前記内部空間内の酸素濃度の変化で発光強度が変化する感圧塗料に前記内部空間の外から励起用の光を投射する光投射ステップと、
前記発光強度の減衰速度を測定する測定ステップと、
前記減衰速度が所定の閾値を超えた場合にエアリーク有りと判定しその旨を報知する報知ステップと、を含む、
ことを特徴とするリーク検査方法。
【請求項2】
前記減衰速度において(1)式で表される前記発光強度が最大値の37%にまで減少する時間を測定したとき、前記エアリークの有無を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のリーク検査方法。
I(t)=I×exp(-t/τ) (1)
ここで、I(t)は時刻tにおける発光強度、Iは励起光が消えた際の発光強度、τは発光寿命である。
【請求項3】
前記励起用の光はパルス状で前記感圧塗料の励起波長が400nm以上700nm以下の波長域を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のリーク検査方法。
【請求項4】
前記感圧塗料がルテニウム錯体を含む、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のリーク検査方法。
【請求項5】
所定の真空度に減圧され気密に封止された内部空間を有する被検査体のエアリークを検査するリーク検査装置であって、
前記内部空間内の酸素濃度の変化で発光強度が変化する感圧塗料に前記内部空間の外から励起用の光を投射する励起光源と、
前記感圧塗料からの発光を受光する受光手段と、
受光した光の前記発光強度の減衰速度を測定する測定手段と、
前記減衰速度が所定の閾値を超えた場合にその旨を報知する報知手段と、を備えた、
ことを特徴とするリーク検査装置。
【請求項6】
前記感圧塗料は白色板上に塗布されている、
ことを特徴とする請求項5に記載のリーク検査装置。
【請求項7】
前記感圧塗料がルテニウム錯体を含む、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のリーク検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーク検査方法及びリーク検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
励起光を受けて発光する発光層、及び酸素濃度に応じて変化する酸素分子との結合程度によって光吸収スペクトルが変化する吸収色素層を組み合わせて用い、発光層を発光させるための入射光又は前記発光層からの発光光が吸収色素層を通過するときに一部吸収されることに基づいて変化する出力光の光強度を検出することにより、酸素濃度を測定することから成る光学的酸素濃度測定方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
流体に接する物体表面の圧力分布を感圧塗料によって光学的に測定する圧力場測定工程と、流体内に可視性の粒子を散布して流体の空間挙動を光学的に測定する速度場測定工程とを同時に行い、同一事象に対する圧力場と速度場の情報を時間方向で相関した情報とし
て取得する流体測定方法も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-28650号公報
【特許文献2】特開2013-79878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、被検査体のエアリークを精度よく短時間で検査できるリーク検査方法及びリーク検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載のリーク検査方法は、
所定の真空度に減圧され気密に封止された内部空間を有する被検査体のエアリークを検査するリーク検査方法であって、
前記内部空間内の酸素濃度の変化で発光強度が変化する感圧塗料に前記内部空間の外から励起用の光を投射する光投射ステップと、
前記発光強度の減衰速度を測定する測定ステップと、
前記減衰速度が所定の閾値を超えた場合にエアリーク有りと判定しその旨を報知する報知ステップと、を含む、
ことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のリーク検査方法において、
前記減衰速度において(1)式で表される前記発光強度が最大値の37%にまで減少する時間を測定したとき、前記エアリークの有無を判定する、
ことを特徴とする。
I(t)=I×exp(-t/τ) (1)
ここで、I(t)は時刻tにおける発光強度、Iは励起光が消えた際の発光強度、τは発光寿命である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のリーク検査方法において、
前記励起用の光はパルス状で前記感圧塗料の励起波長が400nm以上700nm以下 の波長域を含む、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずか1項に記載のリーク検査方法において、
前記感圧塗料がルテニウム錯体を含む、
ことを特徴とする。
【0010】
前記課題を解決するために、請求項5に記載のリーク検査装置は、
所定の真空度に減圧され気密に封止された内部空間を有する被検査体のエアリークを検査するリーク検査装置であって、
前記内部空間内の酸素濃度の変化で発光強度が変化する感圧塗料に前記内部空間の外から励起用の光を投射する励起光源と、
前記感圧塗料からの発光を受光する受光手段と、
受光した光の前記発光強度の減衰速度を測定する測定手段と、
前記減衰速度が所定の閾値を超えた場合にその旨を報知する報知手段と、を備えた、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のリーク検査装置において、
前記感圧塗料は白色板上に塗布されている、
ことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載のリーク検査装置において、
前記感圧塗料がルテニウム錯体を含む、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、被検査体のエアリークを精度よく短時間で検査することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、感圧塗料の発光寿命でエアリークを検知することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、励起用光源の光強度や周囲の明るさによらずエアリークを検知することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、白金錯体に比べて、低コストでエアリークを検知することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、被検査体のエアリークを精度よく短時間で検査することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、励起光源の反射をよくすることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、白金錯体に比べて、低コストでエアリークを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係るリーク検査装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係るリーク検査装置の一例を模式的に示す概略図である。
図3】本実施形態に係るリーク検査の流れを模式的に示すフローチャート図である。
図4】発光強度の減衰を概念的に示す図である。
図5】真空下及び大気圧下における発光寿命の測定結果の一例を示す図である。
図6】大気圧下における励起用光源の発光強度を変化させた発光寿命の測定結果の一例を示す図である。
図7】真空下における励起用光源の発光強度を変化させた発光寿命の測定結果の一例を示す図である。
図8】被検査体の一例としての水道メータの構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に図面を参照しながら、以下に実施形態及び具体例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態及び具体例に限定されるものではない。
また、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【0022】
本実施形態に係るリーク検査方法は、所定の真空度に減圧され気密に封止された内部空間を有する被検査体のエアリークを検査するリーク検査方法であって、内部空間内の酸素濃度の変化で発光強度が変化する感圧塗料Pに内部空間の外から励起用の光を投射する光投射ステップと、発光強度の減衰速度を測定する測定ステップと、減衰速度が所定の閾値を超えた場合にエアリーク有りと判定する判定ステップと、を含んでいる。
【0023】
本実施形態に係るリーク検査方法を実施するリーク検査装置1は、内部空間内の酸素濃度の変化で発光強度が変化する感圧塗料Pに内部空間の外から励起用の光を投射する発光部10と、感圧塗料Pからの発光を受光する受光手段としての受光部20と、受光した光の発光強度の減衰速度を測定する測定手段としての測定部30と、減衰速度が所定の閾値を超えた場合にその旨を報知する報知手段としての報知部40、を備えている。
【0024】
先ず、本実施形態に係るリーク検査方法を実施するリーク検査装置1および被検査体の一例としての水道メータ100について図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係るリーク検査装置1の機能構成を示すブロック図、図2は本実施形態に係るリーク検査装置1の一例を模式的に示す概略図、図8は被検査体の一例としての水道メータ100の構成を示す断面模式図である。
【0025】
(水道メータ)
被検査体の一例としての水道メータ100は、図8に示すように、両端に流入口111および流出口112が形成された下ケース110を有し、下ケース110内には、インナーケース120が収納されている。インナーケース120には、それぞれ複数の流入ノズル121と流出ノズル122が設けられ、インナーケース120の内底部の中心には羽根車支持部材123が立設されている。羽根車支持部材123には軸上部にマグネットM1を有する羽根車124が回転自在に支持されている。
【0026】
羽根車124の上方には、ガスケットG1を介して指示ユニット130が設けられている。指示ユニット130は、レジスタボックス131、下台板132、上台板133、マグネットM2が装着されたマグネット歯車134、歯車列135、指針(不図示)、数字車136、OリングS1を介して取り付けられたガラス板137から構成されている。
そして、レジスタボックス131の底壁を挟んでマグネット歯車134のマグネットM2と羽根車124のマグネットM1とが対向して、磁気的に結合されている。
このように構成される指示ユニット130は、所定の真空度に減圧され気密に封止されている。本実施形態に係るリーク検査装置1は、上台板133上に感圧塗料Pを塗布した状態で真空引きして封止した指示ユニット130をリーク検査の被検査体としている。
【0027】
(リーク検査装置の全体構成)
本実施形態に係るリーク検査方法を実施するリーク検査装置1は、図1に示すように、内部空間内の酸素濃度の変化で発光強度が変化する感圧塗料Pに内部空間の外から励起用の光を投射する発光部10と、感圧塗料Pからの発光を受光する受光手段としての受光部20と、受光した光の発光強度の減衰速度を測定する測定手段としての測定部30と、減衰速度が所定の閾値を超えた場合にその旨を報知する報知手段としての報知部40と、を備えている。リーク検査装置1において、発光部10、受光部20、測定部30、報知部40の処理は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)からなるプロセッサが所定のプログラムを実行する一般的なコンピュータで実現される。
【0028】
(発光部)
発光部10は、励起用光源11と、励起用光源11の発光を制御する駆動部12からなる。
励起用光源11は、発光波長が400nmから700nmであるLED(light-emitting diode)であり、駆動部12でパルス状に発光する。励起用光源11の発光強度は、圧力を受けた感圧塗料Pが発光する光強度であればよく、後述するように、感圧塗料Pの発光強度の減衰速度は励起用光源11の発光強度によらない。
【0029】
(受光部)
受光部20は、感圧塗料Pからの発光を受光するフォトダイオード21と、トランスインピーダンスアンプ(TIA:Trans-impedance Amplifier)22からなる。フォトダイオード21に光が照射されると、光電変換によりフォトダイオード21に電荷が発生する。発生する電荷量はフォトダイオード21に照射された光量に依存する。受光部20では、フォトダイオード21で発生した電荷をTIA22で電圧信号に変換する。
【0030】
(測定部)
測定部30は、オシロスコープ31を備え、TIA22で変換した電圧信号を読み出して、フォトダイオード21で受光した光の発光強度の減衰速度を測定する。具体的には、オシロスコープ31は、TIA22で変換した電圧信号を読み出すことで、フォトダイオード21からの発光強度情報から発光強度の時間波形を取得する。測定部30は、オシロスコープ31からのデジタル信号化された発光強度の時間波形情報から信号処理を実施して、フォトダイオード21で受光した光の発光強度の減衰速度を算出する。
【0031】
報知部40は、測定部30で検知された減衰速度が所定の閾値Thを超えた場合にエアリーク有りと判定してアラートを発する。
ここで発光強度の時間波形情報から検知される発光強度の減衰速度は酸素との衝突回数に依存することが知られている。発光寿命τとある時刻tにおける発光強度I(t)との関係は式(1)
I(t)=I×exp(-t/τ) (1)
は励起光が消えた際の発光強度(最大値)
で表され、t=τのとき、発光強度I(τ)は、
I(τ)=(1/e)I~0.37Iとなり、発光強度が最大値(I)の37%にまで減少する時間(減衰速度)を測定して、エアリークの有無を判定している。
【0032】
報知部40は、例えば、音により情報を報知するスピーカ、振動により情報を報知する振動子、点灯又は点滅により情報を報知するランプ等により構成されてよい。あるいは、リーク検査装置1の処理を実行するコンピュータのディスプレイに情報を表示することにより報知を行ってもよい。
報知部40は、ここで示した例に限られず、情報を報知可能な他の機構により構成されていてもよく、複数の組合せによって構成されてもよい。また、これらの報知部40がリーク検査装置1を構成するコンピュータとは独立して設けられ、通信によって制御されていてもよい。
【0033】
(リーク検査方法)
本実施形態に係るリーク検査方法は、所定の真空度に減圧され気密に封止された内部空間内の酸素濃度の変化で発光強度が変化する感圧塗料Pに内部空間の外から励起用の光を投射する光投射ステップと、発光強度の減衰速度を測定する測定ステップと、減衰速度が所定の閾値Thを超えた場合にエアリーク有りと判定しその旨を報知する報知ステップと、を含んでいる。
【0034】
図3は本実施形態に係るリーク検査の流れを模式的に示すフローチャート図である。
本実施形態において、所定の真空度に減圧され気密に封止された内部空間の一例として水道メータ100の指示ユニット130をエアリーク検査の被検査体としている。
まず、被測定体となる指示ユニット130内に感圧塗料Pを挿入する(S101)。感圧塗料Pとしては、PtTFPP、PtOEPP等の白金-ポルフィリン錯体、PdTFPP等のパラジウム-ポルフィリン錯体、ルテニウム錯体、ピレン等の多環式芳香族炭化水素が挙げられる。
【0035】
本実施形態においては、感圧塗料Pとしては、白金-ポルフィリン錯体よりも安価なルテニウム錯体、例えばRu(dpp)等のルテニウム-ジフェニルホスフィン錯体を白色板上に塗布して用いた。感圧塗料Pを白色板上に塗布することで励起光源の反射をよくすることができる。
感圧塗料Pは、酸素分圧に応じて発光強度及び発光寿命が変化する塗料であり、消光する際に発光強度が緩やかに減衰する。発光強度の減衰速度は酸素との衝突回数に依存することが知られており、発光強度の減衰速度を評価することで酸素分圧の多寡、すなわち減圧状態を判定することが可能となる。
【0036】
次にユニット130を真空ポンプに接続して真空引きを行うことでユニット130内を所定の真空度に減圧する(S102)。このとき、ユニット130の減圧状態を確認するために、圧力計を接続しておくことが望ましい。
そして、励起用光源11を発光させて、所定の真空度に減圧されたユニット130内の感圧塗料Pに光照射を行う(S103)。本実施形態においては、励起用光源11は発光波長440nmのLED(light-emitting diode)であり、駆動電流20A(A:Ampere)でパルス状に発光する。
【0037】
励起用光源11を発光させて、感圧塗料Pに光照射を行いながら受光部20のフォトダイオード21で感圧塗料Pからの発光を受光する(S104)。フォトダイオード21は、受光した光量に比例して電荷を発生させる。受光部20では、フォトダイオード21で発生した電荷をTIA22で電圧信号に変換する(S105)。
TIA22は、フォトダイオード21が生成した電荷信号を増幅した上で、A/Dコンバータ(不図示)でデジタル信号に変換し、電圧信号として測定部30に出力する。
【0038】
測定部30では、TIA22で変換した電圧信号をオシロスコープ31で読み出して、フォトダイオード21で受光した光の発光強度の減衰速度を測定する(S106)。具体的には、オシロスコープ31は、TIA22で変換した電圧を読み出すことで、フォトダイオード21からの発光強度情報から発光強度の時間波形を取得する。測定部30は、オシロスコープ31からのデジタル信号化された発光強度の時間波形情報から信号処理を実施して、フォトダイオード21で受光した光の発光強度の減衰速度を算出する。
すなわち、Iを励起光が消えた際の発光強度(最大値)とした場合、発光強度Iが最大値(I)の37%にまで減少する時間を減衰速度として算出している。
【0039】
図4には発光強度の減衰を概念的に示している。図4に示すように、感圧塗料Pの発光は、励起用光源11の照射を受けて励起光が照射されている間(励起用光源ON)は発光し、励起光の照射が無くなると減衰していく。この減衰速度は、内部空間内の酸素分圧に応じて変化し、酸素分圧が高いほど減衰速度が速くなり、真空だと遅くなる。本実施形態においては、発光強度Iが最大値(I)の37%にまで減少する時間を減衰速度として算出し、予め定められた閾値Thよりも大きい場合、一定の酸素分圧がある、すなわち真空状態ではなくエアリークが発生していると判定する(S107;Yes)。
【0040】
ステップS107でエアリーク有りと判定された場合、報知部40は、その旨を報知する(S108)。ステップ107でエアリークが発生していないと判定された場合(S107;No)、ステップS101に戻り、次の被検査体に対してエアリーク検査を実施する。
【実施例0041】
図2に示すリーク検査装置1を用いて図8に示す水道メータ100の指示ユニット130のエアリーク検査を行った。
【0042】
「実施例1」
指示ユニット130の上台板133上に感圧塗料Pとしてルテニウム錯体を塗布して、真空引きした状態(真空下)及びバルブを開放した状態(大気圧下)における発光強度が最大値の37%にまで減少する時間を発光強度の減衰速度としてそれぞれ測定した。
図5に示すように、真空下と大気圧下では発光強度の減衰速度に差が有る結果となった。真空では発光強度の減衰速度が1.01μsであるのに対し、大気圧では発光強度の減衰速度が0.60μsであった。
このように、指示ユニット130の内部空間が大気圧状態では真空状態に比べて発光強度の減衰速度が大きくなり、酸素消光による発光寿命の変化を測定することで指示ユニット130におけるエアリークの有無を精度よく短時間で判定することが可能となる。
【0043】
「実施例2」
指示ユニット130の上台板133上に感圧塗料Pとしてルテニウム錯体を塗布して、真空引きした状態(真空下)及びバルブを開放した状態(大気圧下)における発光強度の減衰速度を暗室及び明るい部屋のそれぞれで測定した。
【0044】
図6には大気圧下における発光強度の減衰速度を暗室で励起用光源11の発光強度を20A、40A、80A(駆動部12の駆動電流)と変化させ、明るい部屋で励起用光源11の発光強度を40Aとして測定した結果を示している。図6に示すように、暗室において励起用光源11の発光強度を20A、40A、80Aと変化させても発光強度の減衰速度は、それぞれ0.68μs、0.60μs、0.60μsであり、励起用光源11の発光強度によらない結果となった。また、明るい部屋で励起用光源11の発光強度を40Aとした場合の発光強度の減衰速度は0.60μsであり、検査環境の明るさに依存しない結果となった。
【0045】
図7には真空下における発光強度の減衰速度を、同様に暗室で励起用光源11の発光強度を20A、40A、80A(駆動部12の駆動電流)と変化させ、明るい部屋で励起用光源11の発光強度を40Aとして測定した結果を示している。図7に示すように、暗室において励起用光源11の発光強度を20A、40A、80Aと変化させても発光強度の減衰速度は、それぞれ1.05μs、1.02μs、0.97μsであり、励起用光源11の発光強度によらない結果となった。また、明るい部屋で励起用光源11の発光強度を40Aとした場合の発光強度の減衰速度は0.92μsであり、検査環境の明るさに依存しない結果となった。
【0046】
このように、真空及び大気圧のいずれであって発光強度の減衰速度は、励起用光源11の発光強度によらず、また、検査環境の明るさに依存しない結果となった。
これにより、励起用光源11の発光強度や検査環境の明るさによらず、発光強度の減衰速度を測定することで指示ユニット130におけるエアリークの有無を判定することが可能となる。すなわち、明るい部屋で測定可能で、例えば水道メータ100の生産現場で指示ユニット130のエアリーク検査が可能となる。
【0047】
以上、本発明に係る実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で種々の変更を行うことが可能である。例えば、感圧塗料Pとしては、ルテニウム錯体に比べて酸素消光による発光寿命がより長いPtTFPP、PtOEPP等の白金-ポルフィリン錯体を用いても良い。励起用光源11としては、発光波長400nmから700nmのレーザダイオードで構成される励起用光源を用いても良い。
【符号の説明】
【0048】
1・・・リーク検査装置
10・・・発光部
11・・・励起用光源、12・・・駆動部
20・・・受光部
21・・・フォトダイオード、22・・・トランスインピーダンスアンプ(TIA)
30・・・測定部
31・・・オシロスコープ
40・・・報知部
100・・・水道メータ
130・・・指示ユニット
131・・・レジスタボックス、132・・・下台板、133・・・上台板

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8