(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004359
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】電力貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
H02K 7/02 20060101AFI20250107BHJP
H02K 7/08 20060101ALI20250107BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
H02K7/02
H02K7/08 A
H02J15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103994
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】522196803
【氏名又は名称】満森 一成
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】満森 一成
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB02
5H607BB14
5H607CC05
5H607DD03
5H607EE42
5H607GG14
(57)【要約】
【課題】発熱による回転数の低下を抑制する。
【解決手段】電力貯蔵装置100は、筐体1と、筐体1に収納された、モータ側回転軸12と、モータ側端子14を有するモータ10と、筐体1に収納された、発電機側回転軸22と、発電機側端子24を有する発電機20と、筐体1に収納された、モータ側回転軸12と発電機側回転軸22とを連結するトルクコンバータ30とを備える。外部からモータ側端子14に供給された電力でモータ側回転軸12を回転させ、モータ側回転軸12の回転をトルクコンバータ30を介して発電機側回転軸22を回転させ、発電機側回転軸22の回転により発電機側端子24に生じた電力の内、一部を、外部出力可能とし、他の一部を、モータ側端子14に供給可能に構成している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された電力を回転運動エネルギーとして貯蔵する電力貯蔵装置であって、
筐体と、
前記筐体に収納された、モータ側回転軸と、モータ側端子を有するモータと、
前記筐体に収納された、発電機側回転軸と、発電機側端子を有する発電機と、
前記筐体に収納された、前記モータ側回転軸と発電機側回転軸とを連結するトルクコンバータと、
を備え、
外部から前記モータ側端子に供給された電力で前記モータ側回転軸を回転させ、前記モータ側回転軸の回転を前記トルクコンバータを介して前記発電機側回転軸を回転させ、
前記発電機側回転軸の回転により前記発電機側端子に生じた電力の内、一部を、外部出力可能とし、他の一部を、前記モータ側端子に供給可能に構成してなる電力貯蔵装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力貯蔵装置であって、
前記筐体が、非磁性材料で、耐熱性の材質で構成されてなる電力貯蔵装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力貯蔵装置であって、
前記筐体が、樹脂製である電力貯蔵装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力貯蔵装置であって、
前記筐体が、その一部に開口窓を一以上形成してなる電力貯蔵装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力貯蔵装置であって、
前記開口窓が、前記筐体の長手方向の中間に形成されてなる電力貯蔵装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力貯蔵装置であって、
前記モータ及び発電機が、ネオジム磁石を用いてなる電力貯蔵装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電力貯蔵装置であって、
前記発電機は、前記発電機側回転軸の周囲に巻かれた、
第一巻き線と、
前記第一巻き線よりも太い第二巻き線を有しており、
前記発電機側回転軸の回転により、
前記第一巻き線に生じた起電力の少なくとも一部を、前記モータのモータ側端子に印加可能とし、
前記第二巻き線に生じた起電力を、前記発電機側端子から出力可能に構成してなる電力貯蔵装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電力貯蔵装置であって、
前記第一巻き線を、前記発電機側回転軸の周囲に配置された第一巻き線幅よりも、
前記第二巻き線を、前記発電機側回転軸の周囲に配置された第二巻き線幅を、広くしてなる電力貯蔵装置。
【請求項9】
請求項7に記載の電力貯蔵装置であって、
前記第一巻き線を、前記発電機側回転軸の周囲に配置された第一巻き線領域を、
前記第二巻き線を、前記発電機側回転軸の周囲に配置された第二巻き線領域よりも、前記モータに近接させてなる電力貯蔵装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電力貯蔵装置であって、
前記発電機側端子が、前記発電機側回転軸の回転により前記発電機側端子に生じた電力を、
外部に出力するための外部出力端子と、
前記モータ側端子に供給するためのモータ用入力端子と
を備えており、
前記モータ側端子と前記外部出力端子との間に、前記モータ用入力端子を配置してなる電力貯蔵装置。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電力貯蔵装置であって、
前記筐体が据え置き型である電力貯蔵装置。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電力貯蔵装置であって、
前記発電機側回転軸の軸受に、エアベアリングを用いてなる電力貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外部から供給される電力を回転体の回転運動エネルギーに変換して貯蔵したり、回転体の回転運動エネルギーを電力に変換して外部へ出力する式電力貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フライホイール・バッテリー等の、電気が持つエネルギーを一時的に回転運動の物理的エネルギーに変換して保存し、電気が必要な時に回転運動から発電によって電気を得るフライホイール式電力貯蔵装置が知られている。このようなフライホイール式電力貯蔵装置の一例として、電気自動車等の移動体に搭載される電力貯蔵装置が知られている(特許文献1)。この電力貯蔵装置は、発電機として機能させることが可能なモータと、このモータの主軸(回転駆動軸)に取り付けられる回転体(フライホイール)とを備える。このモータは、永久磁石形同期電動機である。また、回転体は、主軸と直交する方向に広がる、慣性モーメントの大きな円板状の部材である。
【0003】
この電力貯蔵装置では、電力(電気エネルギー)が供給されたときには、モータが回転体の回転数を上げることによって供給された電力を回転体の回転運動エネルギーに変換した状態で貯蔵する。一方、貯蔵した電力を出力するときには、モータを発電機として機能させ、回転体の回転運動エネルギーを電気エネルギーに変換して出力する。このとき出力された電気エネルギーの量に応じて回転体の回転運動エネルギーが減少するため、その回転数が低下する。
【0004】
このような電力貯蔵装置では、慣性モーメントの大きな回転体を高速で回転させているため、例えば、当該電力貯蔵装置を搭載した移動体(例えば、電気自動車等)が急に移動方向を変えると、回転体の慣性モーメントによって生じる非常に大きな慣性力(歳差運動)が移動体に作用して移動体の挙動が不安定になる。
【0005】
そこで、特許文献2に記載の電力貯蔵装置が提案されている。この電力貯蔵装置は、
図8及び
図9に示されるように、発電機として機能させることが可能なモータ702、及びモータ702の主軸704に取り付けられた回転体706を有するフライホイール部708と、フライホイール部708を水平面上において互いに直交する二つの軸(
図8におけるX軸及びY軸)周りに回転自在に支持するジンバル構造の支持部材710とを備える。
【0006】
この電力貯蔵装置700では、ジンバル構造の支持部材710がフライホイール部708を支持することでフライホイール部708が移動体に対する姿勢を自由に変更できる。このため、当該電力貯蔵装置700を搭載した移動体がその移動方向を急に変更したときに、フライホイール部708(高速で回転する回転体706)が移動体に対する姿勢を変更し、これにより、フライホイール部708(高速で回転する回転体706)の慣性モーメントに基づく慣性力(歳差運動)が移動体に作用することを防ぐことができる。
【0007】
しかしながら、上記のようなジンバル構造の支持部材710を備えた電力貯蔵装置700では、複雑な支持構造の支持部材710が必要であり、また、この複雑な構造の支持部材710を設けることで電力貯蔵装置700が大型化する。
【0008】
これに対して、回転体を備えたフライホイール式電力貯蔵装置であって、簡素な構造でありながら当該電力貯蔵装置を搭載した移動体に作用する回転体の回転に基づく慣性力を抑制することが可能なフライホイール式電力貯蔵装置が提案されている(特許文献3)。このフライホイール式電力貯蔵装置は、
図10に示すように、供給された電力を回転運動エネルギーとして貯蔵するフライホイール式電力貯蔵装置810であって、特定の方向に延びる主軸812と、主軸812に取り付けられ且つ当該主軸812周りに回転可能な一対の回転体830、830と、各回転体830を互いに逆方向に回転させつつ主軸812周りの回転周期を同期させる駆動部840とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10-285834号公報
【特許文献2】特開2005-65411号公報
【特許文献3】特許第5856039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このようなフライホイール式電力貯蔵装置では効率の点で改善の余地があった。
【0011】
本開示は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、効率良くエネルギーを蓄積可能とした電力貯蔵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0012】
本開示の形態1に係る電力貯蔵装置は、供給された電力を回転運動エネルギーとして貯蔵する電力貯蔵装置であって、筐体と、前記筐体に収納された、モータ側回転軸と、モータ側端子を有するモータと、前記筐体に収納された、発電機側回転軸と、発電機側端子を有する発電機と、前記筐体に収納された、前記モータ側回転軸と発電機側回転軸とを連結するトルクコンバータと、を備え、外部から前記モータ側端子に供給された電力で前記モータ側回転軸を回転させ、前記モータ側回転軸の回転を前記トルクコンバータを介して前記発電機側回転軸を回転させ、前記発電機側回転軸の回転により前記発電機側端子に生じた電力の内、一部を、外部出力可能とし、他の一部を、前記モータ側端子に供給可能に構成している。上記構成により、モータの起動時には外部の電力を利用してモータ側回転軸をさせ、トルクコンバータを介して発電機側回転軸を回転させることでトルクを増幅させ、発電機側回転軸の回転が安定した状態で、発電機の発電の一部をモータ側に供給することで、モータの電力消費量を削減することが可能となる。
【0013】
また、形態2に係る電力貯蔵装置は、上記形態において、前記筐体が、非磁性材料で、耐熱性の材質で構成されている。上記構成により、筐体を金属製等の磁性材料でなく非磁性材料とすることで、モータの回転時に磁力が発生して、金属製の筐体との間で引力が働いて回転に対する抵抗となる事態を低減できる。
【0014】
さらに、形態3に係る電力貯蔵装置は、上記いずれかの形態において、前記筐体が、樹脂製である。上記構成により、筐体を金属製でなく樹脂製とすることで、モータの回転時に磁力が発生して、金属製の筐体との間で引力が働いて回転に対する抵抗となる事態を低減できる。
【0015】
さらにまた、形態4に係る電力貯蔵装置は、上記いずれかの形態において、前記筐体が、その一部に開口窓を一以上形成している。上記構成により、筐体に形成した開口窓を通じて冷却効果を高めることで、熱によって回転数が減少する事態を回避できる。
【0016】
さらにまた、形態5に係る電力貯蔵装置は、上記いずれかの形態において、前記開口窓が、前記筐体の長手方向の中間に形成されている。これにより、熱によって永久磁石の消磁が生じる事態を抑制できる。
【0017】
さらにまた、形態6に係る電力貯蔵装置は、上記いずれかの形態において、前記モータ及び発電機が、ネオジム磁石を用いている。上記構成により、ネオジム磁石が熱で磁力を低下させる事態を、筐体の冷却効果を高めることで回避できる。
【0018】
さらにまた、形態7に係る電力貯蔵装置は、上記いずれかの形態において、前記発電機は、前記発電機側回転軸の周囲に巻かれた、第一巻き線と、前記第一巻き線よりも太い第二巻き線を有しており、前記発電機側回転軸の回転により、前記第一巻き線に生じた起電力の少なくとも一部を、前記モータのモータ側端子に印加可能とし、前記第二巻き線に生じた起電力を、前記発電機側端子から出力可能に構成している。上記構成により、細い第一巻き線により、太い第二巻き線よりも早く起電力を生じさせることができ、モータ側への電力供給を速やかに開始することが可能となる。
【0019】
さらにまた、形態8に係る電力貯蔵装置は、上記いずれかの形態において、前記第一巻き線を、前記発電機側回転軸の周囲に配置された第一巻き線幅よりも、前記第二巻き線を、前記発電機側回転軸の周囲に配置された第二巻き線幅を、広くしている。上記構成により、発電機により発電された電気エネルギーの内、外部に供給する電気エネルギーを大きくし、モータ側に供給する電気エネルギーを小さくして、発電機から取り出せる出力を向上できる。
【0020】
さらにまた、形態9に係る電力貯蔵装置は、上記いずれかの形態において、前記第一巻き線を、前記発電機側回転軸の周囲に配置された第一巻き線領域を、前記第二巻き線を、前記発電機側回転軸の周囲に配置された第二巻き線領域よりも、前記モータに近接させている。上記構成により、モータ側に電力を供給する起電力を生成する第一巻き線領域を、モータ側に近接させて、モータ側に電力を供給する経路の抵抗を低減させ、より効率のより電力伝達が可能となる。
【0021】
さらにまた、形態10に係る電力貯蔵装置は、上記いずれかの形態において、前記発電機側端子が、前記発電機側回転軸の回転により前記発電機側端子に生じた電力を、外部に出力するための外部出力端子と、前記モータ側端子に供給するためのモータ用入力端子とを備えており、前記モータ側端子と前記外部出力端子との間に、前記モータ用入力端子を配置している。上記構成により、モータ側に電力を供給するモータ用入力端子を、モータ側に近接させて、モータ側に効率よく電力を供給することが可能となる。
【0022】
さらにまた、形態11に係る電力貯蔵装置は、上記いずれかの形態において、前記筐体が据え置き型である。
【0023】
さらにまた、形態12に係る電力貯蔵装置は、上記いずれかの形態において、前記発電機側回転軸の軸受に、エアベアリングを用いている。これにより、発電機側回転軸の摩耗を回避して信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態1に係る電力貯蔵装置を示す概略図である。
【
図2】変形例に係る電力貯蔵装置を示す概略既ある。
【
図3】実施形態2に係る電力貯蔵装置を示す概略図である。
【
図4】実施形態3に係る電力貯蔵装置を示す概略図である。
【
図5】実施形態4に係る電力貯蔵装置を示す概略図である。
【
図6】発電機側回転軸に対する永久磁石の配置の一例を示す概略図である。
【
図7】発電機側回転軸に対する永久磁石の配置の他の例を示す概略図である。
【
図8】従来のフライホイール式電力貯蔵装置の概略構成を示す図である。
【
図9】
図8のY軸方向に沿ったフライホイール部の縦断面図である。
【
図10】従来の他のフライホイール式電力貯蔵装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本開示の技術思想を具体化するための例示であって、本開示は電力貯蔵装置を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本開示の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本開示を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
[実施形態1]
【0026】
本開示の実施形態1に係る電力貯蔵装置100を、
図1の概略図に示す。この図に示す電力貯蔵装置100は、筐体1と、モータ10と、発電機20と、トルクコンバータ30を備える。筐体1は、モータ10と、発電機20と、トルクコンバータ30を内部に収納する中空の部材である。筐体1の外形は、箱形としたり、円筒型とする等、任意の形状が利用できる。
【0027】
筐体1は、磁気を通さない非磁性材料で構成することが好ましい。このように筐体1を金属製等の磁性材料でなく非磁性材料とすることで、モータ10の回転時に磁力が発生して、金属製の筐体1との間で引力が働いて回転に対する抵抗となる事態を低減できる。いわば、非磁性材料の筐体1を用いることで磁気ブレーキを回避できる。
【0028】
また筐体1は、耐熱性の材質で構成することが望ましい。耐熱性の材質で筐体1を構成することで、熱によって永久磁石の消磁が発生する事態を回避できる。例えば、耐熱温度を500℃とする耐熱プラスチックで筐体1を構成する。
(モータ10)
【0029】
モータ10は、モータ側端子14から外部の電力を供給を受けて、モータ側回転軸12を回転させる。モータ側回転軸12は、トルクコンバータ30を介して発電機20の発電機側回転軸22と連結される。モータ10には、回転子(界磁)に永久磁石を使用した永久磁石同期電動機(Permanent Magnet Synchronous Motor;PMSM)を利用できる。これにより構造を単純化してメンテナンスの手間を低減できる。永久磁石には、磁力の高い強磁性体、例えばネオジム磁石が利用できる。
(トルクコンバータ30)
【0030】
トルクコンバータ30は、流体の力学的作用を利用した変速機であり、入力側と出力側の回転差によりトルクの増幅作用を発生させる。粒体には油などが利用され、二軸間の速度比を無段階に変化させることができる。このようなトルクコンバータ30は、ターボ型ポンプ羽根車、タービン羽根車、案内羽根等で構成される。このトルクコンバータ30の入力側をモータ10のモータ側回転軸12に、出力側を発電機20の発電機側回転軸22に接続することで、モータ側回転軸12のトルクを向上させ、モータ10にかかる負荷を軽減して、モータ10の寿命を延ばすことができる。
(発電機20)
【0031】
発電機20は、トルクコンバータ30を介してモータ側回転軸12と接続される。この発電機20は、界磁に永久磁石を用いた永久磁石同期発電機が利用できる。この構成の電力貯蔵装置100は、外部からモータ側端子14に供給された電力でモータ10のモータ側回転軸12を回転させる。モータ側回転軸12の回転は、トルクコンバータ30を介して発電機20の発電機側回転軸22に伝達される。この状態で、モータ10に供給された電気ネルギーは、モータ側回転軸12からトルクコンバータ30を介して発電機側回転軸22に伝達されて、回転エネルギーとして維持される状態となる。
【0032】
モータ10への電力供給が継続されて、発電機側回転軸22の回転が安定してくると、当該回転によって起電力が生じる。この発電機側回転軸22の回転により発電機側端子24に生じた電力の内、一部は、外部出力可能としている。すなわち、発電機側端子24に接続された他の電気機器などの負荷に対し、駆動電極を供給可能となる。すなわち、電力貯蔵装置100に貯蔵された回転エネルギーの一部が、外部に電気エネルギーとして取り出される。
【0033】
その一方で、発電機側端子24に生じた電力の内、他の一部を、モータ側端子14に供給可能としている。これによってモータ10の駆動電力の少なくとも一部が補填されて、モータ10で消費される駆動電力を低減できる。いわば、少なくとも部分的なエネルギー循環が実現される。特にトルクコンバータ30を介在させたことで、モータ側回転軸12の回転トルクが増幅されて発電機側回転軸22に伝達されることで、電気エネルギーから運動エネルギーに変換する変換ロスを低減できる。トルクコンバータ30を用いることで、フライホイールを使用するよりも、より効率のよい電力の貯蔵と放出が可能となる。
(第一巻き線27、第二巻き線28)
【0034】
また発電機20は、発電機側回転軸22の周囲に巻かれた、第一巻き線27と、第二巻き線28を有している。第二巻き線28は、第一巻き線27よりも太くしている。換言すると、第一巻き線27は、細線としている。そして、発電機側回転軸22の回転により、第一巻き線27に生じた起電力(第一出力)を、モータ10のモータ側端子14に印加可能とし、第二巻き線28に生じた起電力(第二出力)を、発電機側端子24から出力可能としている。このような構成とすることで、細い第一巻き線27により、太い第二巻き線28よりも早く起電力を生じさせることができる。同じ回転数では、細線の巻き線のコイルの方が早く起電力を生じるからである。この結果、モータ10を外部電源で回転させた後、モータ10側への電力供給を速やかに開始することが可能となり、低消費電力での駆動に資する。
【0035】
さらに第一巻き線27を発電機側回転軸22の周囲に配置された第一巻き線幅27Wは、第二巻き線28を発電機側回転軸22の周囲に配置された第二巻き線幅28Wよりも狭くしている。換言すると、
図1に示すように第二巻き線幅28Wを第一巻き線幅27Wよりも広くしている。このように構成することで、発電機20により発電された電気エネルギーの内、外部に供給する電気エネルギーである第二出力を大きくできる。一方でモータ10側に供給する電気エネルギーである第一出力は、モータ10の回転維持に必要な最低限に抑制して、外部に取り出されない電力消費量を抑制し、効率を高めることができる。
【0036】
さらにまた、第一巻き線27を発電機側回転軸22の周囲に配置された第一巻き線領域27Rを、第二巻き線28を発電機側回転軸22の周囲に配置された第二巻き線領域28Rよりも、モータ10に近接させることが好ましい。
図1の例では、第一巻き線領域27Rが、モータ10側に面する姿勢となるように、図において右側に第一巻き線領域27Rを、左側に第二巻き線領域28Rを配置している。このような構成とすることで、モータ10側に電力を供給する起電力を生成する第一巻き線領域27Rを、モータ10側に近接させて、モータ10側に電力を供給する経路の抵抗を低減させ、より効率のより電力伝達が可能となる。
(発電機側端子24)
【0037】
発電機側端子24は、外部出力端子26と、モータ用入力端子25を備える。外部出力端子26は、発電機側回転軸22の回転により発電機側端子24に生じた電力を、外部に出力するための端子である。またモータ用入力端子25は、発電機側回転軸22の回転により発電機側端子24に生じた電力を、モータ側端子14に供給するための端子である。
図1の例では、モータ側端子14と外部出力端子26との間に、モータ用入力端子25を配置している。このよう配置することで、モータ側に電力を供給するモータ用入力端子25を、モータ10側に近接させて、モータ10側に効率よく電力を供給することが可能となる。
【0038】
モータ10や発電機20には、ネオジム磁石を用いることが好ましい。これにより磁力を向上させ、回転力を上げることができる。一方でネオジム磁石は温度特性が低く、加熱すると熱減磁が発生する。このため電力貯蔵装置100は、放熱機構を付加することが好ましい。
(放熱機構)
【0039】
放熱機構の具体例として、筐体1は、その一部に開口窓2を一以上形成することが好ましい。これにより、筐体1に形成した開口窓2を通じて冷却効果を高めることで、熱によって回転数が減少する事態を回避できる。
【0040】
開口窓2は複数箇所に設けることが好ましい。
図1の例では、筐体1の長手方向の中間に複数箇所、開口窓2を開口して、筐体1内部で発生した熱を外部に放出して、内部に熱が籠もる事態を回避している。特に筐体1が細長い場合は、中間部分に熱が籠もり易くなるため、開口窓2を複数箇所に開口することで、温度上昇に起因して永久磁石の消磁が発生して回転数が低下する事態を抑制できる。また、冷却風を強制的に送風する送風ファンを設けることもできる。好ましくは、筐体1の長手方向の端部に、開口を形成して送風ファンを設置し、長手方向に沿って内部に冷却風を通すようにする。
【0041】
筐体1は、移動体に設置することもできるが、好ましくは据え置き型とする。また電力貯蔵装置100を、停電時などの非常用電源や移動電源にも利用できる。電力貯蔵装置100は、好ましくは筐体1を、床面から数メートル上の高所に設置する。これにより、洪水や浸水時でも利用可能とできる。特に非常用電源や補助電源等の用途に用いる場合は、有効となる。例えば、送電線の鉄塔等の既存の構造物を利用して、中間や上部等の高所に設置することが可能となる。
【0042】
筐体1の周囲には、
図2に示すように、変形防止枠FRを設けてもよい。これにより、樹脂製の筐体1を用いつつ、剛性を高めることができる。モータ10をトルクコンバータ30を介して発電機20と直接直結する場合は、モータ10自体の総重量が発電機20に比べ軽いため、モータ10を確実に固定しないと回転してしまう可能性がある。これを避けるため、
図2の例では、コンクリート上にクッション材を配置し、その上に鉄板を乗せて、アンカーボルトで固定している。
[実施形態2]
【0043】
また発電機20を、両軸発電機としてもよい。発電機側回転軸を両軸からそれぞれモータで回転させることによって、さらに回転力を増して発電量や蓄電量を増やすことができる。このような例を実施形態2に係る電力貯蔵装置200として、
図3に示す。この図において、上述した実施例1等と同様の部材については、同じ符号を付して詳細説明を適宜省略する。
【0044】
図3に示す電力貯蔵装置200は、発電機を両軸発電機20Bとし、図において両軸発電機20Bの右側に配置したモータ10Aと、左側に配置したモータ10Bを備える。両軸発電機20Bの発電機側回転軸22Bの右端に、モータ10Aのモータ側回転軸12Aを、トルクコンバータ30Aを介して接続する。また発電機側回転軸22Bの左側にも、モータ10Bのモータ側回転軸12Bを、トルクコンバータ30Bを介して接続する。さらに両軸発電機20Bは、太線である第二巻き線28Bの右端に細線である第一巻き線27Aを配置することに加えて、第二巻き線28Bの左端にも同じく細線である第一巻き線27Bを配置している。第一巻き線27Aにはモータ10Aに電力の一部を供給するモータ用入力端子25Aが、第一巻き線27Bにはモータ10Bに電力の一部を供給するモータ用入力端子25Bが、それぞれ設けられる。このような構成とすることで、2つのモータで発電機側回転軸を両端から回転させて回転力を増し、両軸発電機20Bの起動時には、2つのモータ10A、10Bを回転させる分、より多くの電力消費量が必要となるものの、両軸発電機20Bの回転が安定するとより発電量や蓄電量を高めることができる。
[実施形態3]
【0045】
さらに、モータ10を両軸モータとすることもできる。このような例を実施形態3に係る電力貯蔵装置300として、
図4に示す。この図においても、上述した実施形態1等と同様の部材については、同じ符号を付して詳細説明を適宜省略する。
図4に示す電力貯蔵装置300は、モータを両軸モータ10Cとし、両軸モータ10Cのモータ側回転軸12Cの左端には
図1等と同様、トルクコンバータ30を介して発電機20の発電機側回転軸22を接続している。一方、モータ側回転軸12Cの右端には、フライホイールFWを接続している。このように他端にフライホイールFWを接続することで、弾み車としてのフライホイール効果によってモータ側回転軸12Cの回転を安定させ、トルクコンバータ30を介して発電機側回転軸22に伝達される回転力を高めることができる。
[実施形態4]
【0046】
なお
図1等の例では、一の筐体1にこれらモータ10と発電機20とトルクコンバータ30を内部に収納する構成を説明した。ただ本開示はこのように共通の筐体にすべての部材を収納する構成に限られず、複数の筐体に分割して各部材を収納するよう構成してもよい。例えば
図5に示す実施形態4に係る電力貯蔵装置200は、モータ10を収納する第一筐体1aと、発電機20を収納する第二筐体1bで構成される。この例ではトルクコンバータ30は表出させているが、トルクコンバータを第一筐体、あるいは第二筐体に収納してもよいし、あるいは別途、第三筐体に収納するよう構成してもよい。
【0047】
発電機側回転軸22やモータ側回転軸12の軸受には、エアベアリングを用いてもよい。静圧空気軸受を用いることで非接触として機械的な摩擦や摩耗を発生させず、信頼性や効率に優れた回転が実現される。
【0048】
発電機20を永久磁石同期発電機とする場合の永久磁石29の配置例を
図6に示す。この図に示すように、発電機側回転軸22の軸方向に、複数の永久磁石29を離間して配置する。図において、発電機側回転軸22が回転してN極からS極に移動する際、1回転で自由電子が1つ飛び出す。電磁誘導による誘導電流でコイルに電子を移動させる。ここで電流の大きさは、コイルを構成する第一巻き線27、第二巻き線28の距離と太さで決まる。例えば、毎分3000回転~5000回転で電流を設定する。
【0049】
このように複数の永久磁石29を配置することで、発電効率を高めることができる。ただ、複数の永久磁石29の発電機側回転軸22の軸方向に沿って複数並べる関係上、発電機20のサイズが軸方向に長くなる。この結果、筐体1内で熱が籠もりやすくなる。そこで、上述の通り、中間などに開口窓2を開口して、放熱性を確保する。
【0050】
また本開示は、
図6の構成に限らず、
図7に示す発電機20’のように発電機側回転軸22に一の永久磁石29のみを配置してもよい。これによって発電機20のサイズを小型化して、筐体の内部に熱が籠もることを抑制できる。
【0051】
さらに、発電機を一のみとする構成に限らず、複数台としてもよい。例えば複数の発電機を多段に積層して、各発電機の発電機側回転軸にベルトを掛けて、モータのモータ側回転軸と連結する。
[実施例]
【0052】
実施例に係る電力貯蔵装置の使用を説明する。モータ10は安川電機社製ESR1を、発電機20には安川電機社製中速(型番)を、トルクコンバータ30はトヨタ自動車製クラウン(ガソリン車)用8速オートマチックトランスミッション(U880E)を、それぞれ用いる。モータ10の定格入力は30kW/h、発電機20の定格出力は250kW/hである。このように30kWのモータ10で、トルクコンバータ30を介して250kWの発電機20の発電機側回転軸22(鉄心)を回転させる。電力貯蔵装置の起動時の出力は定格電圧100~240W、周波数50~60Hz、三相又は単相で、いずれも変更可能とする。また電力貯蔵装置の起動時の入力、すなわちモータ10を起動させる際の電力は、10kW/h~30kW/hとする。熱回収温度は85℃とする。
【0053】
効率は、総合効率90%、発電効率100~10万%、熱回収率45%とする。
【0054】
発電機20の第一巻き線27からの第一出力は35kW、第二巻き線28からの第二出力は215kWである。ここでは外部負荷として投光器6台(合計約1320W)を外部出力端子26に接続し、24時間30日間、点灯を継続させる。モータ10側の消費電力は、3200wである。
【0055】
また電気抵抗は0.28wΩであり、0,194Ωから0,206Ωに対して、配線抵抗全体で10%~15%を削減できる。また抵抗損失は電流の二乗×抵抗で計算できるところ、抵抗損失を最大で20%低減できる。
w2=35215k2w1k1=2.33
新しい抵抗値=現在の抵抗値-(0.2×現在の抵抗値)
[比較例]
【0056】
一方で比較例に係る電力貯蔵装置を作成し、駆動実験を行った。モータは安川電機社製(ESR1)を、発電機には安川電機社製中速(中型)を、それぞれ用いた。ここではトルクコンバータに代えて、クラウン (ガソリン車) 2500cc 直列4気筒ターボエンジン(U880E型番)のフライホイールでモータ側回転軸と発電機側回転軸を連結した。モータの定格入力は30kW、発電機の出力は100kJ/hであった。
【0057】
発電機の第一巻き線からの第一出力は35kW、第二巻き線からの第二出力は215kWであった。ここでは外部負荷として投光器6台(合計1320w)を外部出力端子に接続し、24時間30日間、点灯を継続させた。モータ側の消費電力は、3200wであった。
【0058】
また電気抵抗は0,28Ωであり、0,194Ωから0,206Ωに対して、配線抵抗全体で10%~15%を削減できた。また試算によれば最大抵抗損失を20%低減できる。(w2回=35215回k2回w1回k1回回=35215回×112×1回=2.33)
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示の電力貯蔵装置は、電気エネルギーを回転運動エネルギーとして貯蔵して、他の機器に電力供給可能なバックアップ電源等に好適に利用できる。
【0060】
またモータの駆動電力を抑制することで、エネルギー消費量を抑制できる。これにより、現在の発電に要している化石燃料の消費を抑制して、CO2排出量を抑制し環境負荷を低減できる結果、2015年9月の国連サミットで採択された国際目標SDGs(持続可能な開発目標)に掲げられた17のゴール及び169のターゲットの内、
・「8.働きがいも経済成長も」、「8.4 2030年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る。」
・「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」、「9.4 2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。」、
・「11.住み続けられるまちづくりを」、「11.6 2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。」、
・「12.つくる責任 つかう責任」、「12.4 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。」、「12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。」などに資する技術である。
【符号の説明】
【0061】
100、200、300、400…電力貯蔵装置
1…筐体;1a…第一筐体;1b…第二筐体
2…開口窓
10、10A、10B…モータ
12、12A、12C…モータ側回転軸
14…モータ側端子
20、20’…発電機
20B…両軸発電機
22、22B…発電機側回転軸
24…発電機側端子
25…モータ用入力端子
26…外部出力端子
27…第一巻き線;27W…第一巻き線幅;27R…第一巻き線領域
28…第二巻き線;28W…第二巻き線幅;28R…第二巻き線領域
29…永久磁石
30、30A、30B…トルクコンバータ
700…電力貯蔵装置
702…モータ
704…主軸
706…回転体
708…フライホイール部
710…支持部材
810…フライホイール式電力貯蔵装置
812…主軸
830…回転体
812…主軸
840…駆動部
FR…変形防止枠
FW…フライホイール