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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004360
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】薪割り具
(51)【国際特許分類】
   B26B 23/00 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
B26B23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103996
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】山木 貴博
【テーマコード(参考)】
3C061
【Fターム(参考)】
3C061AA02
3C061BA29
3C061EE09
(57)【要約】
【課題】薪割り作業に不慣れな人でも、大きな力を要することなく、簡単、安全かつ確実に、薪を適当な大きさに割ることが可能な薪割り具を提供する。
【解決手段】中央本体部10から放射状に延びる4つの刃体20を備える薪割り具1である。各刃体20は、扁平な底部27と、上端部に形成された、上方に向かって尖る断面三角形状の刃先21と、を備えている。刃先21の先端21aが、放射方向外側に行くほど湾曲しながら下方に傾斜する螺旋状をなすとともに、刃先21の断面角度θ1~θ3が、放射方向外側に行くほど大きくなるように構成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部から放射状に延びる複数の刃体を備える薪割り具であって、
上記各刃体は、少なくとも扁平な部分を有する底部と、上端部に形成された、上方に向かって尖る断面三角形状の刃先と、を備えており、
上記刃先の先端が、放射方向外側に行くほど湾曲しながら下方に傾斜する螺旋状をなすとともに、当該刃先の断面角度が、放射方向外側に行くほど大きくなるように構成されていることを特徴とする薪割り具。
【請求項2】
上記請求項1に記載の薪割り具において、
上記中央部に、上方に向かって尖った突起部が設けられていることを特徴とする薪割り具。
【請求項3】
上記請求項1に記載の薪割り具において、
上記刃先の先端にはR加工が施されており、
R加工の曲率半径Rが、放射方向内側に行くほど徐々に小さくなるように設定されていることを特徴とする薪割り具。
【請求項4】
上記請求項1に記載の薪割り具において、
4つの上記刃体を備えていることを特徴とする薪割り具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薪を適当な大きさに割るための薪割り具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、焚火やストーブ等の燃料として用いられる薪は、内部(芯)まで乾燥させて燃え易くするために、斧やそれに類する刃物(鉈等)を用いて、適当な大きさに割ってから使用するのが一般的である。
【0003】
なお、広辞苑によれば、「薪」とは、「雑木を適宜の大きさに切り割って乾燥させたもの。」と記載される一方、「薪割り」とは、「薪を割ること。」と記載されており、割る前の「木」と割った後の「木」とを共に「薪」と称しているが、以下では、便宜上、割る前を「薪」と称し、割った後を「細木」と称する。
【0004】
ところで、第二次キャンプブームと呼ばれている昨今、市販されている焚火用細木ではなく、自分の手で薪を割った細木を使用して焚火をすることで、本格的なアウトドアライフを楽しみたいと考える人が増えてきている。
【0005】
もっとも、斧等を用いて薪を適当な大きさに割るには、それなりの技術を必要とする上、斧等の刃物を振り回すことから、薪割り作業は、不慣れな人にとって、危険を伴う高いハードルとなっている。このため、キンドリングクラッカー(登録商標)とハンマーとを用いて、薪割り作業を簡単かつ安全に行うことも考えられるが、キンドリングクラッカー(登録商標)は比較的大型で重たいため、携帯性が悪く、簡易なキャンプ等には不向きであるという問題がある。
【0006】
そこで例えば特許文献1には、立設する長刃と、当該長刃の一端と連結するとともに、所定角度開いて立設する2枚以上の傾斜刃と、から成り、長刃に外側から所定長さの水平刃先を設けるとともに、当該水平刃先から中央に向って下がった傾斜刃先を設け、傾斜刃の刃先が中央に向って下がるように配置した、比較的小型・軽量の薪割り器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-305256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1のものでは、薪割り器の上部に乗せた薪の上面へハンマー等を振り下ろすと、薪の下部に刃先が切込まれて切溝が生じ、更にハンマー等で叩いて行くと、切溝が押し広げられて、薪が縦割りにされて複数本の細木になるとされている。
【0009】
しかしながら、特許文献1のものでは、薪に加えられる上下方向の打撃力にて、単純に薪を上下方向に剪断するため、力が弱い人の場合、例えば柔らかい針葉樹でも複数回叩く必要があり、効率が悪い上、節のある硬い広葉樹などを割ることが困難であるという問題がある。また、特許文献1のものでは、上下方向の打撃力にて、薪の下部に対し、単に刃先が切込まれるだけなので、薪の底部に刃先が噛んで(挟まって)しまい、最悪の場合には柔らかい針葉樹でも割ることが困難になるおそれがある。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、薪割り作業に不慣れな人でも、大きな力を要することなく、簡単、安全かつ確実に、薪を適当な大きさに割ることが可能な薪割り具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明に係る薪割り具では、刃先の形状を、薪を打ち込む力を利用して薪にひねり(回転)を加えながら、薪の割れ目を広げるような形状に形成するようにしている。
【0012】
具体的には、本発明は、中央部から放射状に延びる複数の刃体を備える薪割り具を対象としている。
【0013】
そして、この薪割り具は、上記各刃体は、少なくとも扁平な部分を有する底部と、上端部に形成された、上方に向かって尖る断面三角形状の刃先と、を備えており、上記刃先の先端が、放射方向外側に行くほど湾曲しながら下方に傾斜する螺旋状をなすとともに、当該刃先の断面角度が、放射方向外側に行くほど大きくなるように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、断面三角形状の刃先の断面角度が、放射方向外側(以下、単に「外側」ともいう。)に行くほど大きくなることから、換言すると、中央部に近いほど鋭角になることから、中央部に縦置きされた薪の頂部に対し、ハンマー等で打撃を加えることで、複数の刃体の刃先を薪の底部に簡単に食い込ませることができる。
【0015】
また、刃先の先端が外側に行くほど下方に傾斜しているとともに、刃先の断面角度が外側に行くほど大きくなることから、中央部近傍にて刃先が食い込むことで生じた薪の割れ目を、薪が押し下げられるのに応じて、断面角度が大きくなる刃先にて押し広げながら、薪の底部に刃先を深く食い込ませることができる。これにより、薪の底部に刃先が噛んで(挟まって)しまうのを抑えることが可能となる。
【0016】
さらに、刃先の先端が外側に行くほど湾曲しながら下方に傾斜する螺旋状をなすことから、打撃力により薪が押し下げられる過程で、湾曲する刃先の先端に沿って薪が案内されることによって、上下方向の打撃力の一部が、湾曲する刃先の先端に沿う回転力に変換されることになる。これにより、薪が打ち込まれた際に、複数の刃体が並ぶ周方向(中央部周り)に薪をひねる力が生じることになる。
【0017】
これらのように、断面角度が徐々に大きくなる刃先によって割れ目が押し広げられることと、薪にひねり(薪を周方向に広げようとする力)が加わることとが相俟って、破断力を増加させることができ、これにより、薪を確実に割ることができる。しかも、薪の割れ目面は略扁平であるのに対し、刃先は湾曲していることから、薪に刃先が食い込んでも、両者は面接触ではなく点接触するので、刃先が食い込む際の急激な抵抗の増大を抑えることができる。したがって、薪割り作業に不慣れな人や力が弱い人でも、大きな力を要することなく薪を確実に割ることができる。
【0018】
加えて、各刃体が少なくとも扁平な部分を有する底部を備えていることから、薪割り台や切株等に薪割り具を簡単に設置することができる。しかも、設置される側である薪割り具に刃体が備えられていることから、換言すると、斧等とは異なり刃物を振り回す訳ではないので、薪割り作業の安全性を高めることができる。
【0019】
以上のように、本発明に係る薪割り具によれば、薪割り作業に不慣れな人や力が弱い人でも、簡単、安全かつ確実に、薪を適当な大きさに割ることが可能となる。
【0020】
また、上記薪割り具では、上記中央部に、上方に向かって尖った突起部が設けられていてもよい。
【0021】
この構成によれば、上方に向かって尖った突起部を薪の底部に突き刺すという簡単な作業で、薪を縦置き状態にて、薪割り具の中央部に仮固定することが可能となる。このように、薪を縦置き状態で仮固定することで、ハンマー等の打撃による力を真っすぐ下方に伝達することが可能となるので、例えば打撃による力が斜めに伝わるような場合と異なり、薪割り具が横滑りするのを抑えることができる。したがって、より一層簡単、安全かつ確実に薪を適当な大きさに割ることができる。
【0022】
さらに、上記薪割り具では、上記刃先の先端にはR加工が施されており、R加工の曲率半径Rが、放射方向内側に行くほど徐々に小さくなるように設定されていてもよい。
【0023】
この構成によれば、刃先の先端にR加工が施されていることから、安全性をより一層高めることができる。その一方で、R加工の曲率半径Rが、放射方向内側に行くほど、すなわち、中央部側に行くほど徐々に小さくなるように設定されていることから、刃先を薪の底部に食い込ませ易くすることができる。これらにより、安全性をより一層高めつつ、簡単かつ確実に薪を割ることができる。
【0024】
また、上記薪割り具では、一態様として、4つの上記刃体を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明に係る薪割り具によれば、薪割り作業に不慣れな人でも、大きな力を要することなく、簡単、安全かつ確実に、薪を適当な大きさに割ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る薪割り具を模式的に示す斜視図である。
図2】薪割り具を模式的に示す平面図である。
図3】薪割り具を模式的に示す分解斜視図である。
図4】薪割り具の使用態様を模式的に説明する斜視図である。
図5】薪割り具の形状を模式的に説明する図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は同図(a)におけるb-b線の矢視断面図である。
図6】刃先の断面形状を模式的に示す図であり、同図(a)は斜視図であり、同図(b)~(d)は刃先の先端部の拡大断面図である。
図7】薪にひねりが加わる様子を模式的に示す斜視図である。
図8】薪が割れる様子を段階的に示す模式図である。
図9】薪が割れる様子を模式的に示す斜視図である。
図10】薪に刃先が食い込む様子を模式的に説明する図である。
図11】実施形態の変形例1に係る薪割り具を模式的に示す図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は同図(a)におけるb-b線の矢視断面図である。
図12】実施形態の変形例2に係る薪割り具を模式的に示す図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は同図(a)におけるb-b線の矢視断面図である。
図13】その他の実施形態に係る薪割り具を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
(実施形態1)
-薪割り具の全体構成-
図1は、本実施形態に係る薪割り具1を模式的に示す斜視図であり、図2は平面図であり、図3は分解斜視図である。なお、本実施形態に係る薪割り具1は、図1および図2に示すように、曲線状の稜線を多数含む複雑な形状を有しているが、図3では、薪割り具1の構造を理解し易くするために、薪割り具1の形状をデフォルメして示すとともに、金属製の一体成形品である薪割り具1を敢えて分解斜視図で示している。
【0029】
薪割り具1は、図1図3に示すように、中央本体部10と、4つの刃体20と、突起部30と、を備えていて、これら中央本体部10、4つの刃体20および突起部30が一体に形成された金属製の製品である。
【0030】
薪割り具1の素材は、木材よりも硬い材質であれば、特に限定は無く、例えば、金属、セラミック、繊維強化プラスチック等を用いることができる。例えば金属の場合には、比較的硬い素材で言えば炭素工具鋼(SK)などの特殊鋼でもよいし、比較的柔らかい素材で言えば一般構造用圧延鋼材(例えばSS400)でもよい。また、薪割り具1には薪50(図4参照)を介して繰り返し打撃が加えられるため、耐久性という観点から、一般構造用圧延鋼材よりも硬い機械構造用炭素鋼鋼材(例えばS45CやS50C等)を用いてもよい。なお、金属製の薪割り具1の場合には、耐久性を考慮して、加熱によって表面から窒素原子を内部に拡散浸透させて表面硬化を図る窒化処理を施すのが好ましい。一方、繊維強化プラスチックの場合には、プラスチックにガラス繊維を加えたガラス繊維強化プラスチック(グラスファイバー)や、プラスチックに炭素繊維を加えた炭素繊維強化プラスチック等を用いることができる。
【0031】
中央本体部(中央部)10は、図3に示すように、切頭四角錘状の4つの側面を上方に行くほど内側(中央側)に湾曲させた湾曲側面11と、湾曲側面11同士がなす角部をC面取りした面取り部13と、を有している。このように、面取り部13を形成することで、各湾曲側面11は三角形状をなすとともに、中央本体部10の上端には、4つの面取り部13の上端で区画される正方形状の頂部15が形成されている。なお、中央本体部10の底部17は扁平に形成されている。
【0032】
4つの刃体20は、中央本体部10における4つの湾曲側面11からそれぞれ外側に向かって放射状に延びている。各刃体20の底部27は扁平に形成されていて、各刃体20の底部27と中央本体部10の底部17とは面一になっている(図5(b)参照)。このように、中央本体部10および各刃体20が扁平な底部17,27を有していることから、薪割り台70(図4参照)や切株等に薪割り具1を簡単に設置することが可能となっている。
【0033】
各刃体20は、放射方向外側に行くほど、高さが低くなるとともに幅が狭くなるように形成されている。各刃体20は、その底部27が扁平である一方、放射方向外側に行くほど、高さが低くなることから、図1に示すように、水平方向に見て、放射方向外側に行くほど窄む(先細りする)ように形成されている。また、各刃体20は、放射方向外側に行くほど、幅が狭くなることから、図2に示すように、上方から見ても、放射方向外側に行くほど先細りするように形成されている。このように、各刃体20が放射方向外側に行くほど窄むように形成されているとともに、中央本体部10以外では4つの刃体20が繋がっていないことから、換言すると、極力体積が小さくなるようにしていることから、薪割り具1の軽量化を図ることが可能となっている。
【0034】
しかも、各刃体20は、上方から見て、放射方向外側に行くほど時計回りに湾曲するように形成されている。このように、薪割り具1は、中央本体部10から放射状に延びる4つの刃体20が、放射方向外側に行くほど、窄みながら湾曲するように形成されることで、図2に示すように、平面視であたかも卍手裏剣のような形状になっている。なお、各刃体20では、その上端部が刃先21を構成しているが、刃先21については後で詳細に説明する。
【0035】
突起部30は、四角錘状に形成されていて、上方に向かって尖るような姿勢で、中央本体部10の頂部15に設けられている。このように、上方に向かって尖った突起部30を、中央本体部10に設けることで、薪50の底部50b(図4参照)に突起部30を突き刺すという簡単な作業で、薪50を縦置き状態にて、薪割り具1の中央部(中央本体部10)に仮固定することが可能となる。
【0036】
図4は、薪割り具1の使用態様を模式的に説明する斜視図である。以上のように構成された薪割り具1を使用して薪50を割る場合には、先ず、図4に示すように、薪割り台70等に載置された薪割り具1の突起部30を薪50の底部50bに突き刺して、薪50を縦置き状態(上下に延びた状態)で薪割り具1に仮固定する。そうして、縦置き状態で仮固定された薪50の頂部50aに対して、ハンマー60等で打撃を加えることで、斧等の刃物を振り回すことなく、設置される側の4つの刃体20を用いて、薪50を適当な大きさに割る。このようにして、市販されている焚火用細木ではなく、自分の手で薪50を割った細木を使用して焚火等をすることが可能となる。
【0037】
-刃先の構成-
図5は、薪割り具1の形状を模式的に説明する図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は同図(a)におけるb-b線の矢視断面図である。また、図6は、刃先21の断面形状を模式的に示す図であり、同図(a)は斜視図であり、同図(b)~(d)は刃先21の先端部の拡大断面図である。なお、図6(a)におけるハッチングBで示す斜視断面図および図6(b)は、図5(a)におけるVIb-VIb線の矢視断面図の一部であり、また、図6(a)におけるハッチングCで示す斜視断面図および図6(c)は、図5(a)におけるVIc-VIc線の矢視断面図の一部であり、また、図6(a)におけるハッチングDで示す斜視断面図および図6(d)は、図5(a)におけるVId-VId線の矢視断面図の一部である。また、図6(b)~(d)は断面図であるが、図を見易くするために、ハッチングを省略している。
【0038】
各刃体20では、上述の如く、その上端部が刃先21を構成している。より詳しくは、刃先21は、図6(a)におけるハッチングB、ハッチングCおよびハッチングDで示すように、各刃体20の上端部に形成されていて、放射方向(刃体20の延びる方向)に見て、上方に向かって尖る断面三角形状をなしている。
【0039】
刃先21の先端21aは、図5(b)に示すように、放射方向外側に行くほど下方に傾斜している。また、刃先21の先端21aは、図5(a)に示すように、基準線RLからの離れL1,L2,L3,L4が、放射方向外側に行くほど、L4>L3>L2>L1といった具合に大きくなるように、平面視で時計回りに湾曲している。すなわち、刃先21の先端21aは、放射方向外側に行くほど湾曲しながら下方に傾斜する螺旋状をなしている。
【0040】
図7は、薪50にひねりが加わる様子を模式的に示す斜視図である。縦置き状態で仮固定された薪50の頂部50aに対してハンマー60等で打撃を加えると、図7の白抜き矢印で示すように薪50が押し下げられるが、その際、先端21aが螺旋状をなすように刃先21を形成していることから、図7の太線矢印で示すように、薪50にひねりが加えられることになる。
【0041】
より詳しくは、刃先21の先端21aが放射方向外側に行くほど湾曲しながら下方に傾斜する螺旋状をなすことから、打撃力により薪50が押し下げられる過程で、湾曲する刃先21の先端21aに沿って薪50が案内されることによって、上下方向の打撃力の一部が、湾曲する刃先21の先端21aに沿う回転力に変換されることになる。これにより、薪50が打ち込まれた際に、4つの刃体20が並ぶ周方向(中央本体部10周り)に薪50をひねる力が生じることになる。
【0042】
また、断面三角形状の刃先21の断面角度θは、放射方向外側に行くほど大きくなるように構成されている。具体的には、刃先21の断面角度θは、図6(b)、図6(c)および図6(d)に示すように、ハッチングBに対応する断面角度θ1よりも、ハッチングBよりも放射方向外側のハッチングCに対応する断面角度θ2の方が大きく、また、ハッチングCに対応する断面角度θ2よりも、ハッチングCよりも放射方向外側のハッチングDに対応する断面角度θ3の方が大きくなるように構成されている。
【0043】
図8は、薪50が割れる様子を段階的に示す模式図である。上記のような構成により、断面三角形状の刃先21の断面角度θが、薪割り具1の中央部に近いほど鋭角になることから、図8(a)の白抜き矢印で示すように、ハンマー60で打撃を加えて薪50を押し下げることで、図8(b)に示すように、4つの刃体20の刃先21を薪50の底部50bに簡単に食い込ませることができる。
【0044】
また、刃先21の先端21aが放射方向外側に行くほど下方に傾斜しているとともに、刃先21の断面角度θが放射方向外側に行くほど大きくなることから、図8(b)に示すように、中央部近傍にて刃先21が食い込むことで生じた薪50の割れ目を、図8(c)に示すように、薪50が押し下げられるのに応じて、図8(d)の黒塗り部で示すように、断面角度θが大きくなる刃先21にて押し広げながら、薪50の底部50bに刃先21を深く食い込ませることができる。
【0045】
同様に、図8(d)に示すように、押し広げられた薪50の割れ目を、図8(e)に示すように、薪50が更に押し下げられるのに応じて、図8(f)の黒塗り部で示すように、断面角度θが更に大きくなる刃先21にて更に押し広げながら、薪50の底部50bに刃先21をより一層深く食い込ませることができる。これにより、薪50の底部50bに刃先21が噛んで(挟まって)しまうのを抑えることができる。
【0046】
これらのように、断面角度θが放射方向外側に向かって徐々に大きくなる刃先21によって割れ目が押し広げられることと、図8(b)、図8(d)および図8(f)の太線矢印で示すように、薪50にひねり(薪50を周方向に広げようとする力)が加わることとが相俟って、破断力を増加させることができ、これにより、図9に示すように、薪50を確実に割ることができる。
【0047】
図10は、薪50に刃先21が食い込む様子を模式的に説明する図である。本実施形態に係る薪割り具1では、上述の如く、薪50の底部50bに刃先21をより深く食い込ませることが可能であることから、刃先21が食い込む際に急激な抵抗の増大が生じるとも思われる。もっとも、図10に示すように、薪50の割れ目面51は略扁平であるのに対し、刃先21は湾曲していることから、薪50に刃先21が食い込んでも、両者51,21は面接触ではなく点接触するので、刃先21が食い込む際の急激な抵抗の増大を抑えることができる。したがって、薪割り具1を用いれば、大きな力を要することなく薪50を確実に割ることができる。
【0048】
しかも、本実施形態の薪割り具1では、突起部30を薪50の底部50bに突き刺して薪50を縦置き状態で仮固定することにより、ハンマー60の打撃による力を真っすぐ下方に伝達することが可能となるので、例えば打撃による力が斜めに伝わるような場合と異なり、薪割り具1が横滑りするのを抑えることができる。したがって、より一層簡単、安全かつ確実に薪50を適当な大きさに割ることができる。
【0049】
さらに、本実施形態の薪割り具1では、刃先21の先端21aにR加工を施すとともに、R加工の曲率半径Rを、放射方向内側に行くほど徐々に小さくなるように設定している。具体的には、刃先21の先端21aのR加工の曲率半径Rは、図6(b)、図6(c)および図6(d)に示すように、ハッチングDに対応する曲率半径R3よりも、ハッチングDよりも放射方向内側のハッチングCに対応する曲率半径R2の方が小さく、また、ハッチングCに対応する曲率半径R2よりも、ハッチングCよりも放射方向内側のハッチングBに対応する曲率半径R1の方が小さくなるように設定されている。
【0050】
上述の如く、本実施形態では、設置される側である薪割り具1に刃体20が備えられていることから、換言すると、斧等とは異なり刃物を振り回す訳ではないので、薪割り作業の安全性を高めることができる。加えて、刃先21の先端21aにR加工が施されていることから、安全性をより一層高めることができる。その一方で、R加工の曲率半径Rが、放射方向内側に行くほど、すなわち、中央部側に行くほど徐々に小さくなるように設定されていることから、刃先21を薪50の底部50bに食い込ませ易くすることができる。これらにより、安全性をより一層高めつつ、簡単かつ確実に薪50を割ることが可能となる。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る薪割り具1によれば、薪割り作業に不慣れな人や力が弱い人でも、簡単、安全かつ確実に、薪50を適当な大きさに割ることができる。
【0052】
(変形例1)
本変形例は、薪割り具1に肉抜き穴を設けている点が、上記実施形態と異なるものである。以下、実施形態と異なる点について説明する。
【0053】
図11は、本変形例に係る薪割り具1を模式的に示す図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は同図(a)におけるb-b線の矢視断面図である。この薪割り具1では、図11に示すように、中央本体部10の底部17に、上方に窪む肉抜き穴19が形成されているとともに、各刃体20の底部27に、上方に窪む肉抜き穴29が形成されており、これにより、薪割り具1の軽量化を図ることが可能となっている。
【0054】
(変形例2)
本変形例は、薪割り具1の底部27にスパイクを設けている点が、上記実施形態と異なるものである。以下、実施形態と異なる点について説明する。
【0055】
図12は、本変形例に係る薪割り具1を模式的に示す図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は同図(a)におけるb-b線の矢視断面図である。この薪割り具1では、図12に示すように、各刃体20の底部27に、下方に突出するスパイク(突起)80が複数形成されている。これにより、例えば薪割り具1を切株等に載置した際に、切株等にスパイク80を食い込ませることで、薪割り具1が横滑りするのをより一層確実に抑えることができる。
【0056】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0057】
上記実施形態では、4つの刃体20を備えるようにしたが、これに限らず、例えば、3つの刃体20や、5つ以上の刃体20を備えるようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、刃体20の底部27を扁平に形成したが、底部27が少なくとも扁平な部分を有するのであれば、これに限らず、滑り止めのための溝(図示せず)を底部27に形成するようにしてもよい。
【0059】
さらに、上記実施形態では、水平方向から見ても、上方から見ても、放射方向外側に行くほど窄む(先細りする)ように刃体20を形成したが、これに限らず、例えば図13に示すように、上方から見て、刃体20’が先細りしないように薪割り具1’を形成してもよい。なお、この場合でも、刃先21’の先端21a’は、放射方向外側に行くほど湾曲しながら下方に傾斜する螺旋状をなすことから、水平方向から見れば、刃体20’が先細りすることになる。
【0060】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によると、薪割り作業に不慣れな人でも、大きな力を要することなく、簡単、安全かつ確実に、薪を適当な大きさに割ることができるので、ハンマー等で打撃を加えることで薪を割る薪割り具に適用して極めて有益である。
【符号の説明】
【0062】
1、1’ 薪割り具
10 中央本体部(中央部)
20、20’ 刃体
21、21’ 刃先
21a、21a’ 先端
27 底部
30 突起部
R1、R2、R3 曲率半径
θ1、θ2、θ3 断面角度

図1
図2
図3
図4
図5
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図12
図13