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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004361
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/38 20071001AFI20250107BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20250107BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20250107BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20250107BHJP
   F16H 45/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B60K6/38 ZHV
B60K6/54
B60K6/48
B60K6/40
F16H45/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103998
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川尻 貴裕
【テーマコード(参考)】
3D202
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202EE16
3D202EE23
3D202FF01
3D202FF04
3D202FF12
(57)【要約】
【課題】トルクコンバータ及びロックアップクラッチの性能を向上させる。
【解決手段】車両は、エンジンと、モータジェネレータと、エンジン及びモータジェネレータに接続され、エンジン及びモータジェネレータの動力を変速機に伝達するトルクコンバータと、トルクコンバータとは別体に設けられ、エンジン及びモータジェネレータと前記変速機との締結及び開放を切り替えるロックアップクラッチと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
モータジェネレータと、
前記エンジン及び前記モータジェネレータに接続され、前記エンジン及び前記モータジェネレータの動力を変速機に伝達するトルクコンバータと、
前記トルクコンバータとは別体に設けられ、前記エンジン及び前記モータジェネレータと前記変速機との締結及び開放を切り替えるロックアップクラッチと、
を備える車両。
【請求項2】
前記ロックアップクラッチは、
前記モータジェネレータより前記変速機側に設けられる
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記エンジンに接続され、動力伝達経路に対する前記エンジンの締結及び開放を切り替える切り離しクラッチを備える
請求項1又は請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記モータジェネレータは、
前記切り離しクラッチを介して前記トルクコンバータに接続される
請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記ロックアップクラッチに設けられ、トルク変動を減衰するロックアップダンパを備える
請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、エンジンの動力がトルクコンバータ、変速機等を介して車輪に伝達される。トルクコンバータは、ロックアップクラッチが設けられており、ロックアップクラッチを締結することでトルクコンバータの入出力部材間を直接接続することが可能となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-1608836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両では、エンジンに加えてモータジェネレータが設けられ、エンジン及びモータジェネレータの動力で走行可能なハイブリッド自動車が開発されている。このようなハイブリッド自動車においては、エンジンとモータジェネレータとの間の狭い空間にトルクコンバータを配置するために、トルクコンバータやロックアップクラッチの性能を向上させることが困難であった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、トルクコンバータ及びロックアップクラッチの性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の形態に係る車両は、エンジンと、モータジェネレータと、前記エンジン及び前記モータジェネレータに接続され、前記エンジン及び前記モータジェネレータの動力を変速機に伝達するトルクコンバータと、前記トルクコンバータとは別体に設けられ、前記エンジン及び前記モータジェネレータと前記変速機との締結及び開放を切り替えるロックアップクラッチと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トルクコンバータ及びロックアップクラッチの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両の動力伝達経路を示した図である。
図2】エンジン始動時の動力の伝達を示した図である。
図3】トルクコンバータを介したエンジン駆動時の動力の伝達を示した図である。
図4】ロックアップクラッチを介したエンジン駆動時の動力の伝達を示した図である。
図5】トルクコンバータを介したモータジェネレータ駆動時の動力の伝達を示した図である。
図6】ロックアップクラッチを介したモータジェネレータ駆動時の動力の伝達を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<1.車両1の動力伝達経路>
図1は、車両1の動力伝達経路を示した図である。図1に示すように、車両1は、エンジン2及びモータジェネレータ3を備えるハイブリッド自動車である。エンジン2及びモータジェネレータ3は、車両1を走行させる動力源である。
【0010】
エンジン2は、例えば、一対のシリンダ群がクランクシャフトを挟んで左右方向に水平に対向配置された水平対向エンジンである。エンジン2は、ガソリンと空気の混合気をシリンダ内で燃焼させることにより得られる燃焼圧によってピストンを往復動させる。そして、エンジン2は、ピストンにコネクティングロッドを介して接続されたクランクシャフトを回転させることで動力を得る。なお、エンジン2は、直列エンジン、V型エンジン等であってもよい。また、エンジン2は、ディーゼルエンジンであってもよい。
【0011】
モータジェネレータ3は、例えば三相交流モータである。モータジェネレータ3は、不図示のバッテリから供給される電力によって動力を発生させる。
また、モータジェネレータ3は、回生運転を行うことによって電気(電力)を生成する。モータジェネレータ3の回生運転によって生成された電気はバッテリに供給される。
【0012】
エンジン2のクランクシャフトにはエンジン出力軸4が接続されている。エンジン出力軸4は、一端がエンジン2のクランクシャフトに接続され、他端が切り離しクラッチ5のインナー5aに接続される。
【0013】
切り離しクラッチ5は、インナー5a及びアウター5bを備え、油圧により締結状態及び開放状態が切り替えられる。切り離しクラッチ5は、油圧が加えられることにより締結状態となりインナー5aとアウター5bとが締結(係合)される。
また、切り離しクラッチ5は、油圧が除かれることにより開放状態になりインナー5aとアウター5bとが互いに開放(切断)される。これにより、切り離しクラッチ5は、エンジン2を動力伝達経路から切り離すことが可能となる。
【0014】
切り離しクラッチ5のアウター5bには、第1ギヤ機構6の第1ギヤ6aに接続されるとともに、トルクコンバータ7のフロントカバー7aに接続される。
【0015】
第1ギヤ機構6は、第1ギヤ6a及び第2ギヤ6bを備える。第1ギヤ機構6では、第1ギヤ6aと第2ギヤ6bとが噛合されている。第2ギヤ6bには、モータジェネレータ3のモータ軸3aが接続される。
【0016】
従って、トルクコンバータ7は、切り離しクラッチ5を介してエンジン2に接続されるとともに、第1ギヤ機構6及び切り離しクラッチ5のアウター5bを介してモータジェネレータ3に接続される。
【0017】
トルクコンバータ7は、フロントカバー7a、ポンプインペラ7b、タービンランナ7c、タービンシャフト7d及びステータ7eを備える。
【0018】
トルクコンバータ7は、フロントカバー7a内において、ポンプインペラ7bにタービンランナ7cが対向配置されており、タービンランナ7cにタービンシャフト7dが接続される。また、トルクコンバータ7は、ポンプインペラ7b及びタービンランナ7cの間の内周側にステータ7eが配置され、内部に作動流体(オイル)が供給される。
【0019】
ポンプインペラ7b及びタービンランナ7cは、多数のブレードが設けられており、ポンプインペラ7bが回転することで作動流体が外周側に送出される。送出された作動流体はタービンランナ7cに送られることでタービンランナ7cを回転させる。これにより、エンジン2及びモータジェネレータ3からの動力がタービンランナ7cに伝達される。
【0020】
ステータ7eは、タービンランナ7cから送り出された作動流体の流動方向を変化させてポンプインペラ7bに還流させ、ポンプインペラ7bの回転を促進させる。そのため、トルクコンバータ7は伝達トルクを増幅することができる。
【0021】
タービンシャフト7dには第2ギヤ機構8の第1ギヤ8aが接続される。第2ギヤ機構8は、第1ギヤ8a及び第2ギヤ8bを備える。第2ギヤ機構8では、第1ギヤ8aと第2ギヤ8bとが噛合されている。第2ギヤ8bには、回転軸9の一端が接続される。
【0022】
回転軸9は、例えばモータジェネレータ3のモータ軸3aと同軸上に配置される。より具体的には、モータ軸3aが円筒形状に形成され、回転軸9がモータ軸3aの内部空間内に配置される。
回転軸9の他端には、第3ギヤ機構10の第1ギヤ10aが接続される。
【0023】
回転軸9におけるモータジェネレータ3と第3ギヤ機構10の第1ギヤ10aとの間には、ロックアップクラッチ11及びロックアップダンパ12が設けられる。
【0024】
ロックアップクラッチ11は、インナー11a及びアウター11bを備え、油圧により締結状態及び開放状態が切り替えられる。ロックアップクラッチ11は、油圧が加えられることにより締結状態になりインナー11aとアウター11bとが締結(係合)される。また、ロックアップクラッチ11は、油圧が除かれることにより開放状態になりインナー11aとアウター11bとが開放(切断)される。
【0025】
ロックアップクラッチ11のアウター11bには、モータジェネレータ3のモータ軸3aが接続される。また、ロックアップクラッチ11のインナー11aには、回転軸9が接続される。
従って、ロックアップクラッチ11を締結状態にすることで、モータジェネレータ3のモータ軸3aと回転軸9とが締結(係合)されて一体的に回転する。これにより、エンジン2及びモータジェネレータ3が第3ギヤ機構10(変速機15)に直接的に接続される。
また、ロックアップクラッチ11を開放状態にすることで、モータジェネレータ3のモータ軸3aと回転軸9とが開放され相対回転が可能となる。これにより、エンジン2及びモータジェネレータ3が第3ギヤ機構10(変速機15)に対してトルクコンバータ7を介して接続されることになる。
【0026】
ロックアップクラッチ11の内部には、ロックアップダンパ12が設けられる。ロックアップダンパ12は、例えばバネ等の弾性部材を含んで構成され、トルク変動を減衰する。
これにより、ロックアップダンパ12は、ロックアップクラッチ11が締結される際の衝撃や振動を緩衝することが可能となる。また、ロックアップダンパ12は、走行時に発生するエンジン2の回転変動が第3ギヤ機構10側に伝わり振動や騒音が発生してしまうことを低減することが可能となる。
【0027】
モータ軸3aには、モータジェネレータ3とロックアップクラッチ11との間にチェーン13を介してオイルポンプ14が接続される。オイルポンプ14は、モータ軸3aの回転に伴って駆動し各部にオイルを供給する。オイルポンプ14がオイルを供給する供給先は、切り離しクラッチ5、トルクコンバータ7、ロックアップクラッチ11、変速機15、トランスファクラッチ21等である。
なお、各部にオイルを供給する際には、制御部24による油圧制御が行われ、油圧制御に応じてオイルが各部に供給される。
【0028】
第3ギヤ機構10は、第1ギヤ10a及び第2ギヤ10bを備える。第3ギヤ機構10では、第1ギヤ10aと第2ギヤ10bとが噛合されている。第2ギヤ10bには、変速機15の入力軸15aが接続される。
【0029】
変速機15は、有段変速機や無段変速機でなり、入力軸15aから入力される動力を、トルクや回転数を変えて出力軸15bに伝達する。出力軸15bには、第4ギヤ機構16の第1ギヤ16aが接続される。
【0030】
第4ギヤ機構16は、第1ギヤ16a及び第2ギヤ16bを備える。第4ギヤ機構16では、第1ギヤ16aと第2ギヤ16bとが噛合されている。第2ギヤ16bには、フロントドライブピニオンシャフト17が接続される。フロントドライブピニオンシャフト17は、フロントディファレンシャル18を介してフロントアクスルシャフト19が接続される。フロントアクスルシャフト19には前輪20が接続される。
【0031】
これにより、変速機15から出力された動力は、第4ギヤ機構16、フロントドライブピニオンシャフト17、フロントディファレンシャル18及びフロントアクスルシャフト19を介して前輪20に伝達される。
【0032】
また、出力軸15bにはトランスファクラッチ21を介してプロペラシャフト22が接続される。トランスファクラッチ21は、油圧により締結状態及び開放状態が切り替えられる。トランスファクラッチ21は、油圧が加えられることで締結状態となり出力軸15bとプロペラシャフト22とを締結(係合)させる。また、トランスファクラッチ21は、油圧が除かれることにより開放状態になり出力軸15bとプロペラシャフト22とが開放(切断)される。
【0033】
プロペラシャフト22には、不図示のリヤドライブピニオンシャフト、リヤディファレンシャル及びリヤアクスルシャフトを介して後輪23が接続される。従って、変速機15から出力された動力は、トランスファクラッチ21、プロペラシャフト22等を介して後輪23にも伝達される。
【0034】
制御部24は、ECU(Electronic Control Unit)等のコンピュータを備え、エンジン2及びモータジェネレータ3の駆動制御を行う。また、制御部24は、オイルポンプ14から各部へのオイルの供給を制御する油圧制御を行う。
【0035】
図2は、エンジン始動時の動力の伝達を示した図である。車両1では、エンジン2を始動させる際にモータジェネレータ3の動力を利用する。エンジン2を始動させる場合、制御部24は、モータジェネレータ3を駆動(回転)させる。
【0036】
モータジェネレータ3が駆動されることにより、モータ軸3a及びチェーン13を介してオイルポンプ14が駆動する。そして、オイルポンプ14が駆動すると、制御部24は、オイルポンプ14から切り離しクラッチ5にオイルを供給させ、切り離しクラッチ5を締結状態にさせる。
【0037】
これにより、図2において太い実線で示すように、エンジン2は、エンジン出力軸4、切り離しクラッチ5及び第1ギヤ機構6を介してモータジェネレータ3に接続される。そうすると、モータジェネレータ3の動力がエンジン2に伝達されエンジン2が始動される。
【0038】
このように、車両1では、エンジン2を始動させる際に切り離しクラッチ5を締結させるだけよく、車両1のスムースな発進が可能になるとともに、駆動力を向上することが可能となる。
なお、従来の車両ではトルクコンバータ内にロックアップクラッチが設けられている。その場合、モータジェネレータによりエンジンを始動させるためにはロックアップクラッチ及び切り離しクラッチの双方を締結させる必要があり、車両のスムースな発進が妨げられてしまうことになる。
【0039】
図3は、トルクコンバータ7を介したエンジン2駆動時の動力の伝達を示した図である。エンジン2の駆動を開始した初期段階において、車両1では、エンジン2の動力をトルクコンバータ7を介して第3ギヤ機構10側(変速機15)に伝達する。なお、以下では、エンジン2から前輪20及び後輪23までの動力を伝達する動力伝達経路において第3ギヤ機構10及び変速機15を含む前輪20及び後輪23側を動力伝達経路後段と表記する。
【0040】
この場合、制御部24は、オイルポンプ14からのオイルを切り離しクラッチ5に供給させる一方でロックアップクラッチ11には供給させないよう制御する。このようにすることで、切り離しクラッチ5は締結状態となり、ロックアップクラッチ11は開放状態となる。
【0041】
そうすると、図3において太い実線で示すように、エンジン2から出力された動力は切り離しクラッチ5に入力される。切り離しクラッチ5は締結状態であるため、エンジン2から出力された動力はインナー5a及びアウター5bに順に伝達された後にトルクコンバータ7に入力される。
【0042】
トルクコンバータ7では、上記したように、フロントカバー7a、ポンプインペラ7b及びタービンランナ7cを介して動力が第2ギヤ機構8の第1ギヤ8aに伝達される。その後、第2ギヤ機構8の第1ギヤ8aに伝達された動力は、第2ギヤ8b、回転軸9を介して動力伝達経路後段に伝達される。
【0043】
このようにエンジン2駆動時の初期段階においてはエンジン2から出力された動力がトルクコンバータ7を介して動力伝達経路後段に伝達されるため、スムースな発進及び駆動力の向上が可能となる。
【0044】
図4は、ロックアップクラッチ11を介したエンジン2駆動時の動力の伝達を示した図である。例えば車両1が所定の速度を超えると、車両1では、エンジン2の動力をロックアップクラッチ11を介して動力伝達経路後段に伝達する。
【0045】
この場合、制御部24は、オイルポンプ14からのオイルを切り離しクラッチ5に供給させるとともにロックアップクラッチ11にも供給させる。このようにすることで、切り離しクラッチ5及びロックアップクラッチ11がともに締結状態となる。
【0046】
そうすると、図4において太い実線で示すように、エンジン2から出力された動力は切り離しクラッチ5に入力される。切り離しクラッチ5は締結状態であるため、エンジン2から入力された動力はインナー5a及びアウター5bに順に伝達された後に第1ギヤ機構6、モータ軸3aを介してロックアップクラッチ11に入力される。ロックアップクラッチ11は締結状態であるため、モータ軸3aから出力された動力をインナー11a及びアウター11bを介して動力伝達経路後段に伝達する。
【0047】
このように、切り離しクラッチ5及びロックアップクラッチ11を締結状態にすることで、エンジン2から出力された動力は、トルクコンバータ7を介さずにロックアップクラッチ11を介して直接的に(直結で)動力伝達経路後段に伝達される。
【0048】
図5は、トルクコンバータ7を介したモータジェネレータ駆動時の動力の伝達を示した図である。モータジェネレータ3の駆動を開始した初期段階において、車両1では、モータジェネレータ3の動力をトルクコンバータ7を介して動力伝達経路後段に伝達する。
【0049】
この場合、制御部24は、オイルポンプ14からのオイルを切り離しクラッチ5及びロックアップクラッチ11に供給させないよう制御する。これにより、切り離しクラッチ5及びロックアップクラッチ11はともに開放状態となる。
【0050】
そうすると、図5において太い実線で示すように、モータジェネレータ3から出力された動力は、モータ軸3a及び第1ギヤ機構6を介して切り離しクラッチ5のアウター5bに入力される。切り離しクラッチ5は開放状態であるため、モータジェネレータ3から入力された動力は、インナー5aやエンジン2に伝達されることなく、アウター5bを介してトルクコンバータ7に伝達される。
【0051】
トルクコンバータ7では、上記したように、フロントカバー7a、ポンプインペラ7b及びタービンランナ7cを介して動力が第2ギヤ機構8に伝達される。その後、第2ギヤ機構8に伝達された動力は、回転軸9を介して動力伝達経路後段に伝達される。
【0052】
このように、モータジェネレータ3による駆動時であっても、モータジェネレータ3から出力された動力がトルクコンバータ7を介して後段に伝達されるため、車両1のスムースな発進が可能になるとともに、駆動力を向上することが可能となる。
【0053】
図6は、ロックアップクラッチ11を介したモータジェネレータ駆動時の動力の伝達を示した図である。例えば車両1が所定の速度を超えると、車両1では、モータジェネレータ3の動力をロックアップクラッチ11を介して動力伝達経路後段に伝達する。
【0054】
この場合、制御部24は、オイルポンプ14からのオイルを切り離しクラッチ5に供給させないようにするとともにロックアップクラッチ11に供給させる。このようにすることで、切り離しクラッチ5が開放状態になる一方、ロックアップクラッチ11は締結状態になる。
【0055】
そうすると、図6において太い実線で示すように、モータジェネレータ3から出力された動力はモータ軸3aを介してロックアップクラッチ11のインナー11aに入力される。ロックアップクラッチ11は締結状態であるため、モータジェネレータ3から出力された動力はインナー11a及びアウター11bを介して動力伝達経路後段に伝達される。
【0056】
このように、ロックアップクラッチ11を締結状態にすることで、モータジェネレータ3から出力された動力は、トルクコンバータ7を介さずにロックアップクラッチ11を介して直接的に動力伝達経路後段に伝達される。
【0057】
なお、エンジン2及びモータジェネレータ3の双方を駆動させる場合にも、図4に示したように、オイルポンプ14からのオイルが切り離しクラッチ5に供給されるとともにロックアップクラッチ11にも供給される。
これにより、エンジン2から出力された動力は、切り離しクラッチ5、第1ギヤ機構6、モータ軸3a及びロックアップクラッチ11を介して動力伝達経路後段に伝達される。また、モータジェネレータ3から出力された動力は、モータ軸3a及びロックアップクラッチ11を介して動力伝達経路後段に伝達される。
【0058】
<2.変形例>
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記した具体例に限定されず多様な構成を採り得るものである。
例えば、上記の実施形態では、ロックアップクラッチ11がモータジェネレータ3と第1ギヤ10aとの間(モータジェネレータ3より後段側)に設けられるようにした。しかしながら、ロックアップクラッチ11は、例えば第2ギヤ6bとモータジェネレータ3との間に設けられるようにしてもよい。
【0059】
また、上記の実施形態では、オイルポンプ14がモータ軸3aの回転に伴って駆動されるようにした。しかしながら、オイルポンプ14は、モータジェネレータ3の駆動とは独立した例えば電動ポンプ等であってもよい。
【0060】
また、上記の実施形態では、エンジン2及びモータジェネレータ3から出力された動力を伝達する動力伝達経路の一例として図1から図6に示した構成とした。しかしながら、動力伝達経路はこれに限られない。例えば、第1ギヤ機構6、第2ギヤ機構8及び第3ギヤ機構10等のギヤ機構が設けられないようにしてもよい。
【0061】
また、上記の実施形態においては、エンジン2及びモータジェネレータ3から出力された動力が前輪20及び後輪23に伝達されるようにした。しかしながら、エンジン2及びモータジェネレータ3から出力された動力が前輪20及び後輪23の一方のみに伝達されるようにしてもよい。
【0062】
<3.実施形態のまとめ>
上記のように実施形態の車両1は、エンジン2と、モータジェネレータ3と、エンジン2及びモータジェネレータ3に接続され、エンジン2及びモータジェネレータ3の動力を変速機15に伝達するトルクコンバータ7と、トルクコンバータ7とは別体に設けられ、エンジン2及びモータジェネレータ3と変速機15との締結及び開放を切り替えるロックアップクラッチ11と、を備える。
これにより、車両1では、トルクコンバータ7とロックアップクラッチ11とを異なる空間に配置することが可能となる。
【0063】
比較例としてのトルクコンバータは、ロックアップクラッチがトルクコンバータの内部に一体的に設けられている。しかしながら、トルクコンバータは、エンジンルーム内の限られた空間に配置される。そのため、比較例のトルクコンバータでは、スペース的な制約により、トルクコンバータとしての性能とロックアップクラッチの性能とを向上させることが困難であった。
これに対して、車両1では、トルクコンバータ7とロックアップクラッチ11とが別体で設けられている。そのため、車両1では、スペース的に限られた空間(例えばエンジン2とフロントディファレンシャル18との間の空間)にトルクコンバータ7が設けられていたとしても、ロックアップクラッチ11が設けられていない分、トルクコンバータ7の性能を向上させるためのスペースを確保することができる。これにより、トルクコンバータ7は、例えばポンプインペラ7b及びタービンランナ7cの大型化により性能を向上させることができる。
また、トルクコンバータ7と別体に設けられたロックアップクラッチ11は、トルクコンバータ7とは独立したスペース的に余裕がある空間に配置することが可能である。そのため、ロックアップクラッチ11は、例えばロックアップダンパ12の大型化によりロックアップクラッチ11の性能を向上させることが可能となる。
かくして、車両1は、トルクコンバータ7及びロックアップクラッチ11の性能を向上させることができる。
さらに、車両1では、ロックアップクラッチ11にトルクコンバータ7とは独立してオイルを供給することができるため、ロックアップクラッチ11の制御をより精密に行うことが可能となる。
【0064】
また、車両1では、エンジン2から出力される動力だけでなく、モータジェネレータ3から出力される動力をトルクコンバータ7を介して変速機15に伝達することが可能である。そのため、車両1では、モータジェネレータ3の駆動時のスムースな発進が可能になるとともに、駆動力を向上することが可能となる。
【0065】
ロックアップクラッチ11は、モータジェネレータ3より変速機15側に設けられる。車両1では、エンジン2及びモータジェネレータ3間の空間が限られていることが多い一方で、モータジェネレータ3及び変速機15間の空間に余裕があることが多い。そのため、車両1では、ロックアップクラッチ11をモータジェネレータ3より変速機15側に設けることにより、ロックアップクラッチ11の性能を向上させることがより可能となる。
【0066】
車両1は、エンジン2に接続され動力伝達経路に対するエンジン2の締結及び開放を切り替える切り離しクラッチ5を備える。
これにより、車両1では、切り離しクラッチ5の締結状態及び開放状態を切り替えるだけで動力伝達経路に対するエンジン2の締結及び開放を切り替えられる。これにより、例えばエンジン2の始動時に切り離しクラッチ5を締結状態にするだけで、モータジェネレータ3を利用したエンジン2の始動を行うことができる。
これにより、車両1では、エンジン2の始動性を向上することができる。
【0067】
モータジェネレータ3は、切り離しクラッチ5を介してトルクコンバータ7に接続される。
これにより、車両1では、エンジン2を駆動させることなく、モータジェネレータ3から出力された動力をトルクコンバータ7を介して変速機15に伝達することができ、モータジェネレータ3でのスムースな発進を可能にすることができる。
【0068】
車両1は、ロックアップクラッチ11に設けられ、トルク変動を減衰するロックアップダンパ12を備える。
これにより、ロックアップクラッチ11が設けられた空間においてロックアップダンパ12を大型化することが可能となる。従って、ロックアップダンパ12は、ロックアップクラッチ11の締結時の衝撃をより緩衝することが可能となる。また、ロックアップダンパ12は、走行時に発生するエンジン2の回転変動が第3ギヤ機構10側に伝わり振動や騒音が発生してしまうことを低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1 車両
2 エンジン
3 モータジェネレータ
5 切り離しクラッチ
7 トルクコンバータ
11 ロックアップクラッチ
12 ロックアップダンパ
15 変速機
図1
図2
図3
図4
図5
図6