(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004381
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 25/06 20200101AFI20250107BHJP
【FI】
B62J25/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104036
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】小切間 仁人
(72)【発明者】
【氏名】川上 耕平
(57)【要約】
【課題】乗員の足を支持できて乗り心地をより良好にできる鞍乗型車両を提供する。
【解決手段】鞍乗型車両は、前輪および後輪と、前輪および後輪を回転可能に支持する車体フレームと、車体フレームに支持される左右一対のステップとを備える。ステップは、左右方向に延びる軸回りについての回転が不能な状態で前記車体フレームに取り付けられた基端部と、足置面を有するとともに前記基端部から左右方向の外側に延び、且つ、左右方向に延びる軸回りに回転可能な状態で前記基端部に連結されたステップ本体部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪および後輪と、
前記前輪および前記後輪を回転可能に支持する車体フレームと、
前記車体フレームに支持される左右一対のステップとを備え、
前記ステップは、左右方向に延びる軸回りについての回転が不能な状態で前記車体フレームに取り付けられた基端部と、足置面を有するとともに前記基端部から左右方向の外側に延び、且つ、左右方向に延びる軸回りに回転可能な状態で前記基端部に連結されたステップ本体部とを備える、鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両において、
前記基端部は、前記ステップ本体部を、前記車体フレームから左右方向の外側に延びる第1の姿勢と、前記車体フレームから上方に延びる第2の姿勢との間で、回動させる回動軸を含む、鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項2に記載の鞍乗型車両において、
前記第1の姿勢は、前後方向に沿ってみたときに、前記ステップ本体部の左右方向の外側端が、前記後輪の接地点と前記車体フレームの左右方向の外側端とを結ぶ仮想線よりも左右方向の外側に位置する姿勢であり、
前記第2の姿勢は、前後方向に沿ってみたときに、前記ステップ本体部の左右方向の外側端が、前記仮想線よりも左右方向の内側に位置する姿勢である、鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項3に記載の鞍乗型車両において、
前記ステップ本体部が前記第1の姿勢に向かって回動するように当該ステップ本体部を付勢する付勢部材を備える、鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項2に記載の鞍乗型車両において、
前記車体フレームは、前記前輪の上方から下方に傾斜しつつ後方に延びるメインフレームを備え、
前記回動軸は、前記メインフレームと平行な軸回りに前記ステップ本体部を回動させる、鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項1に記載の鞍乗型車両において、
前記車体フレームは、前記ステップを支持する中空のメインフレームと、前記メインフレームの内側に配置され、前記メインフレームの前記ステップを支持する部分を補強する補強部材とを備える、鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
クランク機構を有さず地面をキックしながらの走行が可能な鞍乗型車両が知られている。例えば、下記特許文献1には、子供がバランスをとりながら地面をキックすることで走行するように構成された子供用の鞍乗型車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0130150号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の鞍乗型車両では、乗員の足を支持するための部材が設けられていないので、乗員が足を地面から浮かさねばならない機会が多くなる。これより、特許文献1の鞍乗型車両では、乗り心地の点で改良の余地がある。
【0005】
本開示は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、乗員の足を支持できて乗り心地をより良好にできる鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面に係る鞍乗型車両は、前輪および後輪と、前記前輪および前記後輪を回転可能に支持する車体フレームと、前記車体フレームに支持される左右一対のステップとを備え、前記ステップは、左右方向に延びる軸回りについての回転が不能な状態で前記車体フレームに取り付けられた基端部と、足置面を有するとともに前記基端部から左右方向の外側に延び、且つ、左右方向に延びる軸回りに回転可能な状態で前記基端部に連結されたステップ本体部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の鞍乗型車両によれば、乗員の足を安定して支持できて乗り心地をより良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係る鞍乗型車両の概略側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す前記鞍乗型車両の概略後面図である。
【
図6】
図6は、
図4のVI-VI線断面の一部を示した図である。
【
図7】
図7は、
図4のVII-VII線断面の一部を示した図である。
【
図8】
図8は、メインフレームの後端部付近を左斜め後方から見た図である。
【
図9】
図9は、メインフレームの後端部付近を右斜め下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本開示の第1実施形態について説明する。
【0010】
(全体構成)
図1は、本開示の実施形態に係る鞍乗型車両100の概略側面図である。
図2は、鞍乗型車両100の概略平面図である。
図3は、鞍乗型車両100の概略後面図である。
【0011】
鞍乗型車両100は、車体フレーム1と、車体フレーム1に回転可能にそれぞれ支持された前輪2及び後輪3を備える。鞍乗型車両100は、車体フレーム1に支持された左右一対のステップ4を備える。つまり、鞍乗型車両100は、車体フレーム1の車幅方向の一方側と他方側とにそれぞれ設けられたステップ4を備える。また、鞍乗型車両100は、車体フレーム1にそれぞれ支持されたハンドル5およびシート6を備える。本実施形態の鞍乗型車両100は、モータ72による電動走行が可能な電動バイクであり、駆動源としてのモータ72と、モータ72に電力を供給する蓄電装置であるバッテリ74と、モータ72の回転を制御するコントローラ76とを備える。以下では、本実施形態の鞍乗型車両100を電動バイク100という。
【0012】
電動バイク100は、モータ72による電動走行と、モータ72を停止した状態での走行の双方が可能となっている。具体的に、電動バイク100は、足でペダルを漕ぐ(回転させる)ことで走行する自転車とは異なり、ユーザつまり運転者が地面をキックすることで推進力を得られるようになっている。例えば、ユーザが、シート6(サドル62)に着座した姿勢で地面を後方にキックすると、地面からの反力が前方への推進力として電動バイク100に作用して、電動バイク100は前方に走行する。また、電動バイク100は、モータ72の駆動時には、モータ72の回転力により推進力が得られることで、ユーザが地面をキックすることなく走行できるようになっている。ここで、電動バイク100は、一人乗りの車両であり、乗員は、電動バイク100の運転者のみである。
【0013】
上記のように、電動バイク100は、乗員(運転者)が地面をキックすることで推進力を得ることができることから、クランク機構を有しない。詳細には、足でペダルを漕ぐことで走行する自転車では、ペダルがクランク機構を介して車体フレームに対して左右方向に延びる軸回りに回転可能に取り付けられており、ペダルを回転させることで車輪が回転するようになっている。これに対して、電動バイク100は、車輪を回転させるためにペダルを回転させる必要がないことから、クランク機構を備えていない。
【0014】
前輪2は、車軸21と、ホイール本体22と、タイヤ23とを備える。ホイール本体22は、ベアリングを介して車軸21に取り付けられている。タイヤ23は、ゴム製部品であり、ホイール本体22の外周部に取り付けられている。同様に、後輪3は、車軸31と、ホイール本体32と、タイヤ33とを備える。ホイール本体32は、ベアリングを介して車軸31に取り付けられている。タイヤ33は、ゴム製部品であり、ホイール本体32の外周部に取り付けられている。
【0015】
モータ72は、後輪3に連結されている。モータ72は、上記のようにバッテリ74からの電力の供給を受けて回転する電動モータである。本実施形態の電動バイク100に搭載されているモータ72は、いわゆるインホイールモータであり、後輪3を直接回転させ得るように後輪3のホイール本体32の中心部(ハブ)に同軸に取り付けられている。詳細な図示は省略するが、モータ72は、車軸31に対し回転不能なステータと、通電されることでステータに対し回転するロータとを内蔵している。ロータの回転は、ホイール本体32と同軸の出力軸を介してホイール本体32に伝達され、これによって後輪3が回転駆動される。本実施形態の電動バイク100では、上記のようにモータ72としてインホイールモータが用いられることにより、駆動系の簡素化及び軽量化が図られている。
【0016】
車体フレーム1は、電動バイク100の車体を構成するフレームである。車体フレーム1は、メインフレーム11と、リアチューブ12と、トップチューブ13と、シートチューブ14と、ヘッドチューブ15と、フロントフォーク16とを備える。本実施形態の電動バイク100では、車体フレーム1のほとんどはアルミ製であり、これにより車体フレーム1の計量化が図られている。
【0017】
メインフレーム11は、前輪2の上方から下方に傾斜しつつ後方に延びる中空のフレーム部材である。メインフレーム11の中心軸X1は、前輪2の上方から下方且つ後方に向かって傾斜するラインに沿って延びている。メインフレーム11は、その中心軸X1に沿って延びて断面が略矩形状の本体部111と、本体部111の後端部を塞ぐ後壁112とを有する。具体的に、後述する
図7に示すように、メインフレーム11の本体部111は、その上面を構成する上壁113と、その下面を構成する下壁114と、上壁113と下壁114の各右側の縁どうしにわたって上下方向に延びる右壁115と、上壁113と下壁114の各左側の縁どうしにわたって上下方向に延びる左壁116とを有する。メインフレーム11の後壁112は、上記の上壁113、下壁114、右壁115、左壁116の後縁で囲まれた部分を塞いでいる。なお、上記の上壁113、下壁114、右壁115および左壁116は、互いに一体に形成されている。例えば、一枚の金属製の板が折り曲げられること等によって、上記の各壁113~116つまり本体部111は形成されている。
【0018】
バッテリ74は、メインフレーム11の内側に収容されている。コントローラ76は、メインフレーム11の下部に、メインフレーム11に吊下げられた状態で固定されている。なお、コントローラ76は、樹脂等からなるカバー(不図示)に覆われた状態でメインフレーム11に固定されている。また、なお、メインフレーム11の下壁114には、バッテリ74を出し入れするための開口部114A(
図8)が形成されている。また、この下壁114には、上記の開口部114Aを塞ぐカバー117がビス等を介して着脱可能に取り付けられている。また、コントローラ76は、メインフレーム11の内側に収容されていてもよい。
【0019】
シートチューブ14は、メインフレーム11の後端部から上方に延びるパイプ材である。具体的に、シートチューブ14は、メインフレーム11のうち上記のトップチューブ13の接合部分よりも後側の部分から上方に延びている。シートチューブ14は、その下端部がメインフレーム11の内側に挿入されて残余の部分がメインフレーム11から上方に延びる状態で、メインフレーム11に溶接等により接合されている。
【0020】
リアチューブ12は、左右一対のアッパーパイプ121と、左右一対のロアパイプ122と、左右一対のエンドプレート123とを備える。アッパーパイプ121およびロアパイプ122は、それぞれパイプ材である。一対のアッパーパイプ121は、シートチューブ14からそれぞれ後方に延びている。アッパーパイプ121は、シートチューブ14の上下方向の略中央から後方に延びている。アッパーパイプ121は、その前端部においてシートチューブ14に溶接等により接合されている。ロアパイプ122は、メインフレーム11の後壁112から後方に延びている。ロアパイプ122は、その前端部においてメインフレーム11に溶接等により接合されている。エンドプレート123は、板状部材である。各エンドプレート123には、後輪3の車軸31の両端部がそれぞれ締結部材等を介して固定されている。また、各エンドプレート123の上部には各アッパーパイプ121の後端部が溶接等により接合されており、各エンドプレート123の下部にはロアパイプ122の後端部が溶接等により接合されている。
【0021】
トップチューブ13は、前後方向に延びるパイプ材である。トップチューブ13は、メインフレーム11の前後方向(および上下方向)の略中央の部分とシートチューブ14の上端部との間で前後方向に延びており、メインフレーム11の上面およびシートチューブ14の前面に溶接等により接合されている。
【0022】
ヘッドチューブ15は、メインフレーム11の前端部において上下方向に延びる略円筒状のパイプ材である。ヘッドチューブ15は、その上下方向の中間部分がメインフレーム11の内側に挿入された状態でメインフレーム11に溶接等により接合されている。
【0023】
フロントフォーク16は、ステアリングコラム161と、左右一対のレッグ部162とを備える。ステアリングコラム161は、上下方向に延びる略円筒状のパイプ材である。ステアリングコラム161は、その中間部がヘッドチューブ15の内側に挿入された状態でこれに固定されている。また、ステアリングコラム161は、その中心軸回りに回転可能な状態でヘッドチューブ15の内側にこれと同軸に挿入されている。一対のレッグ部162は、ステアリングコラム161の下端部から左右に分岐しつつ下方に延びるパイプ材である。前輪2は、その車軸21の両端部がレッグ部162の下端部に締結されることにより、フロントフォーク16に固定されている。
【0024】
シート6は、シートポスト61及びサドル62を備える。サドル62は、電動バイク100の乗員の臀部を支持する部品であり、シートポスト61の上端部に着脱可能に固定されている。シートポスト61は、上下方向に延びるパイプ材である。シートポスト61の少なくとも下部は、シートチューブ14に同軸に挿入されている。シートポスト61は、シートチューブ14に、上下方向にスライド可能に保持されている。シートチューブ14の上端には、シートポスト61のスライド移動を規制するためのクランプ63が取り付けられている。
【0025】
ハンドル5は、ハンドルバー51と、アクセルグリップ52と、ブレーキ側グリップ53と、ブレーキレバー54とを備える。ハンドルバー51は、左右方向に延びる棒材であり、フロントフォーク16(ステアリングコラム161)の上端部にステム部55を介して固定されている。ハンドルバー51が前後方向に転舵されると、フロントフォーク16が軸回りに回転して前輪2の向きが変更され、電動バイク100の進行方向が変更される。アクセルグリップ52は、電動バイク100を電動走行させる際に乗員が捻り操作するグリップであり、ハンドルバー51の右側部分を覆うように取り付けられている。アクセルグリップ52は、左右方向に延びる軸回りに回転可能な状態でハンドルバー51に取り付けられている。ブレーキ側グリップ53は、乗員が左手で握るグリップであり、ハンドルバー51の左側部分を覆うように取り付けられている。ブレーキレバー54は、電動バイク100を減速させる際に乗員が握り操作するレバーである。ブレーキレバー54は、ブレーキ側グリップ53の前方において左右方向に延びる状態でハンドルバー51に取り付けられている。
【0026】
アクセルグリップ52は、ケーブル(不図示)を介してコントローラ76に電気的に接続されている。コントローラ76は、ケーブル(不図示)を介してモータ72と電気的に接続されている。乗員がアクセルグリップ52を捻る操作を行うと、当該捻り操作の操作量等を示す信号がコントローラ76に入力される。コントローラ76は、入力された操作信号に基づく所望の回転数でモータ72が回転駆動されるように、バッテリ74からモータ72への給電を制御する。ブレーキレバー54は、リアチューブ12に取り付けられたブレーキ(不図示)とケーブル(不図示)を介して機械的に接続されている。乗員がブレーキレバー54を握る操作を行うと、当該ブレーキレバー54への操作力がケーブルを介してブレーキに伝達される。これにより、後輪3の回転を規制する制動力がブレーキから後輪3のホイール本体32に付与される。なお、上記の各ケーブルは、メインフレーム11の内側を通るように配索されている。また、ブレーキおよびモータ72に向かって延びるケーブルは、メインフレーム11の後壁112に形成された貫通孔を通じてメインフレーム11から後方に延びている。
【0027】
(ステップ)
ステップ4について説明する。
図4は、
図1の一部を拡大して示した図である。
図5は、
図4から後述するステップ本体部41を省略した図である。
図6は、
図4のVI-VI線断面の一部を示した図である。
図7は、
図4のVII-VII線断面の一部を示した図である。
図8は、メインフレーム11の後端部付近を左斜め後方から見た図である。なお、
図8では、メインフレーム11の後壁112は省略している。
図9は、メインフレーム11の後端部付近を右斜め下方から見た図である。なお、
図9は、後述する補強部材800の連結板85を示した図であり、ステップ4等の図示は省略している。
【0028】
まず、ステップ4自体の構造について説明する。2つのステップ4は、互いに同じ構造を有しており、左右対称な姿勢でメインフレーム11に支持されている。2つのステップ4は、それぞれステップ本体部41と基端部43とを備える。ステップ本体部41は、略直方体状の足置部410と、ステップシャフト420とを有する。以下では、
図1および
図2等に示すように、ステップ4が、メインフレーム11から左右方向の外側に延び、且つ、足置部410の外側面のうち面積の最も広い一対の外側面が上下方向と直交する状態にあるときの方向を用いてステップ4自体の説明を行う。
【0029】
ステップシャフト420は、左右方向に延びる部材である。足置部410は、左右方向に延びる略直方体状の部材である。具体的に、足置部410は、前後方向の寸法が高さ方向の寸法よりも大きく、左右方向の寸法が前後方向の寸法よりも大きい略直方体形状を有している。図例では、足置部410の前後方向の寸法は、高さ寸法のおよそ5倍の寸法に設定されており、足置部410の左右方向の寸法は、前後方向の寸法のおよそ2倍の寸法に設定されている。
【0030】
足置部410は、その左右方向に延びる中心軸X2回りに回転可能な状態でステップシャフト420に連結されている。足置部410は、右回りおよび左回りの双方について360度以上の回転が可能である。なお、
図4の鎖線は、足置部410が実線で示す状態から90度回転した状態を示している。
【0031】
具体的に、本実施形態の電動バイク100では、足置部410に、その中心軸X2に沿って延びて足置部410を左右方向に貫通するステップシャフト取付孔411が形成されている。ステップシャフト420の左右方向の外側の端部には、外周面にネジ山が形成されたネジ部421が設けられている。ステップシャフト420は、その中心軸が足置部410の中心軸X2と一致する状態で足置部410のステップシャフト取付孔411に挿通されている。この挿通状態でステップシャフト420の上記ネジ部421にナットが締結されている。これにより足置部410は、ステップシャフト420回りおよび足置部410の中心軸X2回りに回転可能な状態でステップシャフト420に連結されている。また、ステップシャフト取付孔411の左右方向の一方側の端部と他方側の端部とには、それぞれベアリング422が配設されている。これより、足置部410は、その中心軸X2回りに円滑に回転可能となっている。なお、図例では、ステップシャフト取付孔411の左右方向の外側の端部に、これを塞ぐキャップ423が取り付けられている。
【0032】
上記のように足置部410はその中心軸X2回りに360度以上回転可能であることから、足置部410の上面と下面とはともにサドル62側を向くことができる。つまり、シート6(サドル62)に着座した乗員は、足置部410の上面と下面の双方に足を載置することができる。これより、足置部410の上面と下面とはともに乗員が足を載置するための足置面412として機能する。換言すると、足置部410は、上下一対の足置面412を有する。ここで、足置部410の寸法が上記のように設定されていることに伴い、足置部410の足置面412は、前後方向に延び、且つ、左右方向に延びる形状を有する。
【0033】
基端部43は、ステップ本体部41が取り付けられるステップ本体取付部439と、シャフト18とを有する。シャフト18は、本開示における「回動軸」に相当する。
【0034】
ステップ本体取付部439は、前後方向に延びる略直方体状のブロック部430と、ブロック部430から左右方向の内側に延びる前後一対の腕部431とを有する。ブロック部430と2つの腕部431とは互いに一体に形成されている。一対の腕部431は、それぞれメインフレーム11の中心軸X1と直交する面に沿って延びる板状を有する。一対の腕部431は、前後方向について互いに離間した位置において互いに平行に延びている。一対の腕部431には、これらを前後方向に貫通するシャフト挿通孔432,432がそれぞれ形成されている。2つのシャフト挿通孔432,432の中心線はメインフレーム11の中心軸X1と平行に延びる同一のラインに沿っている。
【0035】
シャフト18は略円柱状の部材である。シャフト18は、その軸方向の一方側の端部に他の部分よりも径の大きい頭部181を有している。シャフト18の軸方向の他方側の端部には溝(不図示)が形成されている。後述するように、シャフト18は、腕部431のシャフト挿通孔432,432に挿入されている。
【0036】
ブロック部430には、これを左右方向に貫通するボルト孔433が形成されている。ステップシャフト420の左右方向の内側端には、外周面にネジ山が形成されたネジ部424が設けられている。ステップシャフト420のネジ部424はブロック部430のボルト孔433に螺合されている。これにより、ステップ本体部41は、ステップ本体取付部439ひいては基端部43にこれらから左右方向の外側に延びる状態で連結されている。
【0037】
次に、ステップ4の支持構造について説明する。
【0038】
基端部43は、メインフレーム11に固定されたブラケット17に連結されており、ステップ4はブラケット17を介してメインフレーム11に支持されている。具体的に、右側のステップ4は、メインフレーム11の右壁115に固定されたブラケット17に連結されており、左側のステップ4は、メインフレーム11の左壁116に固定されたブラケット17に連結されている。右側のブラケット17と左側のブラケット17とは互いに同じ構造を有しており、左右対称となる姿勢でメインフレーム11に固定されている。つまり、車体フレーム1は、メインフレーム11に固定されて、メインフレーム11とステップ4とを連結する左右一対のブラケット17を有する。本実施形態の電動バイク100では、ブラケット17ひいてはステップ4は、メインフレーム11の後端部の下部に固定(支持)されている。また、メインフレーム11のブラケット17が固定される部分と、メインフレーム11のシートチューブ14が接合される部分の、前後方向の位置は略同じである。
【0039】
ステップ4は、ステップ本体部41が
図3および
図7の実線に示すようにメインフレーム11から左右方向の外側に延びる第1の姿勢と、ステップ本体部41が
図3および
図7の鎖線に示すようにメインフレーム11から上方に延びる第2の姿勢との間で上下方向に回動できるように、メインフレーム11に支持されている。本実施形態の電動バイク100では、ステップ本体部41は、メインフレーム11の中心軸X1と略平行な軸回りに回動して、第1の姿勢から第2の姿勢に向かって後ろ斜め上方に回動する。
【0040】
ステップ本体部41が第1の姿勢にあるとき、
図3の実線に示すように、つまり、前後方向に沿ってみたときに、ステップ本体部41は、その左右方向の外側端Q1が、後輪3の接地点P1と車体フレーム1の左右方向の外側端P2とを結ぶ仮想線L1よりも左右方向の外側に位置する状態にある。換言すると、第1の姿勢は、ステップ本体部41がメインフレーム11から左右方向の外側に延びており、且つ、前後方向に沿ってみたときにステップ本体部41の左右方向の外側端Q1が、上記の仮想線L1よりも左右方向の外側に位置する姿勢である。また、ステップ本体部41が第1の姿勢にあるとき、
図2等の実線に示すように、つまり、上下方向に沿ってみたときに、ステップ本体部41は、足置部410の中心軸X2とメインフレーム11の中心軸X1とがほぼ直交する状態にある。また、ステップ本体部41が第1の姿勢にあるとき、
図7等の実線に示すように、つまり、メインフレーム11の中心軸X1に沿ってみたときに、ステップ本体部41は、足置部410の中心軸X2が外斜め上方にわずかに傾斜する状態にある。
【0041】
一方、ステップ本体部41が第2の姿勢にあるとき、
図3の鎖線に示すように、つまり、前後方向に沿ってみたときに、ステップ本体部41は、その左右方向の外側端Q1が上記仮想線L1よりも左右方向の内側に位置する状態にある。換言すると、第2の姿勢は、ステップ本体部41が、メインフレーム11から上方に延びており、且つ、前後方向に沿ってみたときにステップ本体部41の左右方向の外側端Q1が上記仮想線L1よりも左右方向の内側に位置する姿勢である。また、ステップ本体部41が第2の姿勢にあるとき、
図2等の鎖線に示すように、つまり、上下方向に沿ってみたときに、ステップ本体部41は、足置部410の中心軸X2が外斜め後方に傾斜する状態にある。
【0042】
本実施形態の電動バイク100では、上記の支持構造は以下の構成により実現されている。
【0043】
ブラケット17は、略コ字状の断面を有している。ブラケット17は、メインフレーム11の左右方向の外側面(右側のブラケット17はメインフレーム11の右壁115の右側面、左側のブラケット17はメインフレーム11の左壁116の左側面)に沿って延びる縦壁171を有する。ブラケット17は、縦壁171の前縁と後縁からそれぞれ左右方向の外側に延びる前後一対の横壁172を有する。
【0044】
ブラケット17の縦壁171の上端部と下端部とにはボルト孔17B,17Bが設けられている。これらボルト孔17B,17Bに挿通されたボルト91Aとこれに螺合されるナット91Bとによって、ブラケット17はメインフレーム11に固定されている。
【0045】
横壁172はメインフレーム11の中心軸X1と直交する面に沿って延びる板状を有する。一対の横壁172には、これらを前後方向に貫通するシャフト挿通孔17A,17Aがそれぞれ形成されている。これらのシャフト挿通孔17A,17Aの中心線はメインフレーム11の中心軸X1と平行に延びる同一のラインに沿っている。
【0046】
基端部43のステップ本体取付部439の2つの腕部431は、ブラケット17の前側の横壁172と後側の横壁172の間に配置されている。基端部43のシャフト18は、ステップ本体取付部439の腕部431の上記のシャフト挿通孔432,432とブラケット17の各シャフト挿通孔17A,17Aとに、共通して挿通された状態で、ブラケット17に固定されている。具体的に、シャフト18は、その軸方向の両端部がブラケット17の各横壁172から前後方向の外側にそれぞれ突出する状態で4つのシャフト挿通孔17A,17A,432,432に挿通されている。この挿通状態でシャフト18の端部に形成された溝にはクリップ182が嵌め込まれており、これによりシャフト18はブラケット17に固定されている。シャフト18は、その中心軸X3がメインフレーム11の中心軸X1と略平行に延びる状態で固定されている。また、各シャフト挿通孔17A、432の孔径と、シャフト18のこれらに挿通される部分の径とはほぼ同じに設定されている。なお、各腕部431と各ブラケット17の横壁172との間には、それぞれワッシャ500が配設されている。
【0047】
また、
図5に示すように、ステップ本体取付部439の腕部431は、全体として略長方形状を呈している。ただし、ステップ4が第1の姿勢にある状態で腕部431の下側且つ左右方向の内側に位置する部分はおおよそ直角の角部を構成する方、腕部431の上側且つ左右方向の内側に位置する部分は、左右方向の内側に膨出するような円弧状に形成されている。つまり、腕部431の左右方向の内側縁の下部は上下方向にまっすぐ延びるラインに沿う一方、上部は左右方向の外方且つ上方に向かって湾曲している。この構成より、腕部431の左右方向の内側縁とブラケット17との当接によって、第1の姿勢にあるステップ本体部41の下方への回動は不能とされる。一方で、第1の姿勢にあるステップ本体部41の上方への回動は可能とされる。
【0048】
上記の構成により、ステップ本体部41は、シャフト18回りに、つまり、メインフレーム11の中心軸X1と略平行なシャフト18の中心軸X3回りに回動可能な状態で、ステップ4がブラケット17に連結されるとともにブラケット17を介してメインフレーム11に支持される。また、ステップ本体部41は、第1の姿勢と、上方に回動した第2の姿勢との間でのみ回動可能である。
【0049】
ここで、本実施形態の電動バイク100では、ステップ本体部41を第1の姿勢に付勢する付勢部材が設けられており、ステップ本体部41は、所定以上の上向きの力が付与されない限り、第1の姿勢に維持される。具体的に、上記のシャフト18には、付勢部材としてコイルばね19が巻き付けられている。ブラケット17の縦壁171には、これを左右方向に貫通するばね係止孔17Cが設けられている。コイルばね19の一端はこのばね係止孔17Cに係止され、コイルばね19の他端はステップ本体取付部439のブロック部430の左右方向の内側面に押し当てられて当該内側面に係止されている。この構成により、ステップ本体部41が第1の姿勢から上方に回動すると、コイルばね19は収縮して、ステップ本体取付部439を介してステップ本体部41に対して第1の姿勢に向かう方向の弾発力つまり付勢力を付与する。
【0050】
また、本実施形態の電動バイク100では、車体フレーム10が、メインフレーム11のうちのステップ4を支持する部分、つまり、ブラケット17が固定される部分を補強するための補強部材800を有している。補強部材800は、左右一対の補強板80と、補強板80どうしを連結する連結板85とを有する。
【0051】
2つの補強板80は左右方向について対称な構造を有する。2つの補強板80は、それぞれ略L字状を有し、メインフレーム11の左右の側壁(右側の補強板80は右壁115、左側の補強板80は左壁116)に沿って上下方向に延びる縦壁81と、縦壁81の下縁から左右方向の内側に延びる横壁83とを有する。補強板80を構成するこれら縦壁81および横壁83は一体に形成されている。各補強板80および連結板85は、例えば鉄で形成されている。各補強板80の縦壁81は、それぞれブラケット17とともにボルト91Aおよびナット91Bによってメインフレーム11の左右の側壁に固定されている。
【0052】
連結板85は、メインフレーム11の下壁114の下面に沿って左右方向に延びる板状を有する。連結板85は、2つの補強板80の横壁83,83と対向する位置に配設されており、横壁83,83どうしを連結するように配設されている。連結板85は、ボルト91Aおよびナット91Bによって、2つの補強板80の横壁83,83とともにメインフレーム11の下壁114に固定されている。
【0053】
上記の補強板80はメインフレーム11のブラケット17が固定される部分の変形を抑制し、連結板85は、補強板80どうしを連結することでこれらの変形を抑制する。
【0054】
(作用効果)
以上説明したとおり、上記実施形態の電動バイク100は、上記のように、クランク機構を有しておらず、走行のために乗員が足を使ってペダルを漕ぐ必要がない。つまり、上記実施形態の電動バイク100では、走行用のペダルが不要である。しかしながら、ペダルが省略された鞍乗型車両では、乗員が足を自らの力で浮かせねばならない機会が多くなり良好な乗り心地を提供できない。これに対して、上記実施形態の電動バイク100では、足置面141をそれぞれ有する左右一対のステップ4がメインフレーム11に支持されている。そのため、乗員は、その左右の足をステップ4の足置面141に載置した状態で走行することができる。つまり、上記実施形態の電動バイク100によれば、乗員が足を自らの力で浮かせねばならない機会を少なくできる。従って、乗り心地が良好な電動バイク100が実現される。
【0055】
しかも、上記実施形態の電動バイク100では、基端部43が左右方向に延びる軸回りに回転不能にメインフレーム11に支持される一方で、足置面141を備えるステップ本体部41は左右方向に延びる軸X2回りに回転可能となっている。そのため、乗員の足裏の向きに合わせて足置面141の向きを変えることができ、乗員の足裏の向きに関わらず乗員の足を安定して支持することができる。
【0056】
ここで、上記のようにステップ4を設けると、メインフレーム11のステップ4を支持する部分に乗員の荷重がかかる。これに対して、上記実施形態の電動バイク100では、メインフレーム11のうち、ステップ4を支持する部分、具体的に、ステップ4が連結されるブラケット17が固定される部分が補強部材800によって補強されている。そのため、ステップ4の支持剛性を高めることができる。また、メインフレーム11の変形を抑制できる。特に、上記実施形態の電動バイク100では、補強部材800がメインフレーム11の内側に設けられている。そのため、メインフレーム11の外観を良好にしつつ、ステップ4の支持剛性を高めることができる。
【0057】
また、上記実施形態の電動バイク100では、ステップ本体部41が、
図3の実線に示す第1の姿勢であってメインフレーム11から左右方向の外側に延びる第1の姿勢と、
図3の鎖線に示す第2の姿勢であってメインフレーム11から上方に延びる第2の姿勢との間で回動可能である。
【0058】
そのため、ステップ本体部41の姿勢を第1の姿勢として乗員の足の安定した支持を可能としつつ、車体が傾いたときにステップ本体部41が地面に接触するのを防止できる。ここで、車体が傾いたときにステップ本体部41の左右方向の外側端つまり左右方向の外側の端部Q1が地面に接触すると、この外側端Q1を支点として車体が傾いて車輪2、3が地面から浮き上がるおそれがある。そのため、上記実施形態の電動バイク100によれば、車体が傾いたときも車輪2、3と地面との接触を維持できる。また、ステップ本体部41と地面との接触によってステップ本体部41が損傷するのも防止できる。
【0059】
特に、上記実施形態の電動バイク100では、ステップ本体部41が、その左右方向の外側端Q1が、後輪3の接地点P1と車体フレーム1の左右方向の外側端P2つまり左右方向の外側の端部P2とを結ぶ仮想線L1よりも左右方向の内側に位置する第2の姿勢まで回動できる。そのため、ステップ本体部41と地面との接触をより防止できる。
【0060】
また、上記実施形態の電動バイク100では、シャフト18がその中心軸X3が前輪2の上方から下方に傾斜しつつ後方に延びるメインフレーム11の中心軸X1と略平行に延びるように配設されて、このシャフト18の中心軸X3回りにステップ本体部41が回動する。つまり、上記のように延びるメインフレーム11の中心軸X1と平行な軸回りにステップ本体部41が回動する。これに伴い、ステップ本体部41は、第1の姿勢から第2の姿勢に向かって後ろ斜め上方に回動する。従って、ステップ本体部41が第2の姿勢に向かって回動する時にステップ本体部41と乗員の足とが干渉するのを防止できる。
【0061】
また、上記実施形態の電動バイク100では、コイルばね19によってステップ本体部41が第1の姿勢に向かう方向に付勢されている。そのため、ステップ本体部41が上向きの荷重を受けることで第1の姿勢に対して上方に回動しても、当該荷重がなくなった後は、ステップ本体部41を早期に第1の姿勢であって乗員の足を支持できる姿勢に戻すことができる。従って、乗員がステップ4を踏み外してしまいバランスを崩すのを防止できる。
【0062】
(変形例)
ステップ本体部41と基端部43とは、ステップ本体部41が基端部43に対して左右方向に延びる軸回りに相対的に回動可能な状態で連結されていればよく、これらの具体的な連結構造は上記に限られない。
【0063】
基端部43とメインフレーム11とは、ステップ本体部41がメインフレーム11から左右方向の外側に延びる第1の姿勢とメインフレーム11から上方に延びる第2の姿勢との間で回動可能に連結されていればよく、これらの具体的な連結構造は上記に限られない。
【0064】
例えば、上記実施形態では、ステップ本体部41が、シャフト18の中心軸X3であってメインフレーム11の中心軸X1と平行な軸X3回りに回動する場合を説明したが、ステップ本体部41の回動軸はメインフレーム11の中心軸X1と平行でなくてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、第2の姿勢が、ステップ本体部41の左右方向の外側端Q1が仮想線L1よりも左右方向の内側となる姿勢である場合を説明したが、第2の姿勢は、ステップ本体部41がメインフレーム11から上方に延びる姿勢であればよい。つまり、第2の姿勢は、ステップ本体部41の左右方向の外側端Q1が仮想線L1よりも左右方向の外側となる姿勢であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、基端部43がメインフレーム11にブラケット17を介して支持される場合を説明したが、基端部43ひいてはステップ4は、メインフレーム11に直接取り付けられてもよい。
【0067】
また、メインフレーム11のブラケット17が固定される部分を補強するための補強部材の具体的な構成は上記に限られない。例えば、上記実施形態では、左右一対の補強板80が設けられた場合を説明したが、2つの補強板80が一体化されて一つの部材で構成されてもよい。また、補強部材として、左右方向に延びて2つのステップ4の基端部43どうしをつなぐ部材を設けてもよい。また、補強部材は省略してもよい。
【0068】
上記実施形態では、電動走行用の駆動源として、後輪3を駆動するモータ72のみを設けたが、駆動源は前輪及び後輪の少なくとも一方を駆動するものであればよい。すなわち、駆動源は、前輪のみを駆動するモータであってもよいし、前輪及び後輪の両方を駆動するモータであってもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、電動走行用の駆動源として、車輪に同軸に取り付けられるインホイールモータからなるモータ72を設けたが、駆動源はインホイールモータでなくてもよい。例えば、ギヤ等を介して車軸と連動連結されたモータを車輪と非同軸に取り付けてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、鞍乗型車両が、モータ72による電動走行が可能な電動式の車両を例示したが、鞍乗型車両は電動式のものに限られない。すなわち、鞍乗型車両は、モータやバッテリ等を備えない車両、つまりキックによる自力走行のみが可能な車両であってもよい。
【0071】
(まとめ)
前記各実施形態及びその変形例をまとめると以下のとおりである。
【0072】
鞍乗型車両において、前輪および後輪と、前記前輪および前記後輪を回転可能に支持する車体フレームと、前記車体フレームに支持される左右一対のステップとを備え、前記ステップは、左右方向に延びる軸回りについての回転が不能な状態で前記車体フレームに取り付けられた基端部と、足置面を有するとともに前記基端部から左右方向の外側に延び、且つ、左右方向に延びる軸回りに回転可能な状態で前記基端部に連結されたステップ本体部とを備える。
【0073】
この構成では、足置面をそれぞれ有する左右一対のステップが車体フレームに支持されている。そのため、乗員の左右の足をステップにより支持することができる。従って、乗員が足を自らの力で浮かせねばならない機会を少なくでき、乗り心地を良好にできる。特に、ステップの基端部が車体フレームに対して左右方向に延びる軸回りに回転不能な状態で取り付けられており、ステップ全体としては左右方向に延びる軸回りに回転不能となっている。つまり、足置面を備えるステップ本体部がクランク機構を介さずに車体フレームに取り付けられている。これより、この構成によれば、クランク機構を有しない鞍乗型車両において、乗員の左右の足を支持することができ、当該鞍乗型車両において乗り心地を良好にできる。
【0074】
しかも、ステップ全体としては左右方向に延びる軸回りに回転不能である一方で、足置面を備えるステップ本体部は左右方向に延びる軸回りに回転可能である。そのため、乗員の足裏の向きに合わせて足置面の向きを変更させることができる。従って、乗員の足裏の向きに関わらず乗員の足を安定して支持できる。
【0075】
好ましくは、前記基端部は、前記ステップ本体部を、前記車体フレームから左右方向の外側に延びる第1の姿勢と、前記車体フレームから上方に延びる第2の姿勢との間で、回動させる回動軸を含む。
【0076】
この構成では、ステップ本体部の姿勢を、乗員の足を支持可能な第1の姿勢と、ステップ本体部の車体フレームから左右方向の外側への突出量が小さい第2の姿勢とに切り替えることができる。そのため、通常の走行時に乗員の乗り心地を良好にしつつ、車体が傾いたときにステップ本体部が地面に接触するのを防止できる。そして、ステップ本体部が地面に接触するのを防止できることで、ステップ本体部の損傷を抑制できるとともに、ステップ本体部を基点として車体が傾いて車輪が地面から浮き上がるのを防止できる。
【0077】
好ましくは、前記第1の姿勢は、前後方向に沿ってみたときに、前記ステップ本体部の左右方向の外側端が、前記後輪の接地点と前記車体フレームの左右方向の外側端とを結ぶ仮想線よりも左右方向の外側に位置する姿勢であり、前記第2の姿勢は、前後方向に沿ってみたときに、前記ステップ本体部の左右方向の外側端が、前記仮想線よりも左右方向の内側に位置する姿勢である。
【0078】
この構成によれば、車体が傾いたときにステップ本体部が地面に接触する機会をより低減でき、ステップ本体部の損傷をより抑制できるとともに、車輪が地面から浮き上がる機会をより低減できる。
【0079】
好ましくは、前記ステップ本体部が前記第1の姿勢に向かって回動するように当該ステップ本体部を付勢する付勢部材を備える。
【0080】
この構成によれば、ステップ本体部の基本的な姿勢を第1の姿勢とすることができ、乗員がステップを踏み外してしまうのを防止できる。
【0081】
好ましくは、前記車体フレームは、前記前輪の上方から下方に傾斜しつつ後方に延びるメインフレームを備え、前記回動軸は、前記メインフレームと平行な軸回りに前記ステップ本体部を回動させる。
【0082】
この構成によれば、ステップ本体部を第1の姿勢から第2の姿勢に向かって後ろ斜め上方に回動させることができる。そのため、ステップ本体部の回動時にステップ本体部と乗員の足とが干渉するのを防止できる。
【0083】
好ましくは、前記車体フレームは、前記ステップを支持する中空のメインフレームと、前記メインフレームの内側に配置され、前記メインフレームの前記ステップを支持する部分を補強する補強部材とを備える。
【0084】
この構成によれば、メインフレームに対するステップの支持剛性を高めることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 :車体フレーム
2 :前輪
3 :後輪
4 :ステップ
11 :メインフレーム
17 :ブラケット
18 :シャフト(回動軸)
19 :コイルばね(付勢部材)
41 :ステップ本体部
43 :基端部
80 :補強部材
142 :上面(足置面)
143 :下面(足置面)