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特開2025-4382リハビリ支援システム、リハビリ支援方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004382
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】リハビリ支援システム、リハビリ支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/60 20180101AFI20250107BHJP
【FI】
G16H10/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104037
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】岩田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】過去の他の患者の実績データを利用して、新たな患者のリハビリの練習計画を作成することができる。
【解決手段】リハビリ支援システム1は、対象患者に関する患者情報であって、少なくとも1つの基準時の情報を含む患者情報を取得する患者情報取得部11と、前記患者情報と類似する他の患者の関連データであって、リハビリの練習実績データと、回復評価指標の推移と、前記対象患者の基準時に対応する基準時の情報と、を含む関連データを取得する関連データ取得部12と、前記患者情報の基準時と、前記他の患者の基準時と整合させることで、前記他の患者の前記関連データに基づいて、前記対象患者の練習計画を作成する練習計画作成部13と、前記練習計画を提示する提示部15と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象患者に関する患者情報であって、少なくとも1つの基準時の情報を含む患者情報を取得する患者情報取得部と、
前記患者情報と類似する他の患者の関連データであって、リハビリの練習実績データと、回復評価指標の推移と、前記対象患者の基準時に対応する基準時の情報と、を含む関連データを取得する関連データ取得部と、
前記患者情報の基準時と、前記他の患者の基準時と整合させることで、前記他の患者の前記関連データに基づいて、前記対象患者の練習計画を作成する練習計画作成部と、
前記練習計画を提示する提示部と、を備えるリハビリ支援システム。
【請求項2】
複数の前記基準時は、発症日と、急性期の入院日又は回復期の入院日と、を含む、請求項1に記載のリハビリ支援システム。
【請求項3】
前記提示部は、前記対象患者の練習計画を、前記他の患者の関連データと比較可能に提示する、請求項1に記載のリハビリ支援システム。
【請求項4】
発症日、急性期の入院日及び回復期の入院日からなる群から、データの基準時を選択する基準時選択部を更に備える、請求項1に記載のリハビリ支援システム。
【請求項5】
前記患者情報取得部は、前記対象患者に関する病名、練習実績、回復評価指標、発症日、及び入院日を取得する、請求項1に記載のリハビリ支援システム。
【請求項6】
前記関連データ取得部は、機械学習により、前記対象患者の回復評価指標の推移が類似する、他の患者の関連データを取得する、請求項1に記載のリハビリ支援システム。
【請求項7】
前記練習計画作成部は、前記対象患者の回復評価指標の推移が類似する他の患者の関連データに基づいて、前記対象患者の練習計画を作成する、
請求項1に記載のリハビリ支援システム。
【請求項8】
前記練習計画は、前記練習計画の終了予定日、短期目標日、長期目標日、練習終了までに完了すべき練習項目、および当該練習項目ごとの予測所要時間のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のリハビリ支援システム。
【請求項9】
対象患者に関する患者情報であって、少なくとも1つの基準時の情報を含む患者情報を取得し、
前記患者情報と類似する他の患者の関連データであって、リハビリの練習実績データと、回復評価指標の推移と、前記対象患者の基準時に対応する基準時の情報と、を含む関連データを取得し、
前記患者情報の基準時と、前記他の患者の基準時と整合させることで、前記他の患者の前記関連データに基づいて、前記対象患者の練習計画を作成し、
前記練習計画を提示する、リハビリ支援方法。
【請求項10】
対象患者に関する患者情報であって、少なくとも1つの基準時の情報を含む患者情報を取得し、
前記患者情報と類似する他の患者の関連データであって、リハビリの練習実績データと、回復評価指標の推移と、前記対象患者の基準時に対応する基準時の情報と、を含む関連データを取得し、
前記患者情報の基準時と、前記他の患者の基準時と整合させることで、前記他の患者の前記関連データに基づいて、前記対象患者の練習計画を作成し、
前記練習計画を提示することを、コンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リハビリ支援システム、リハビリ支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リハビリテーション運動の達成度に応じて画像表示装置に表示するパーツ画像を追加もしくは変更し、パーツ画像はリハビリテーション運動の達成度に応じて態様を変化させて画面を更新することが開示される。この画面を訓練者に見せることでモチベーション維持に繋げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-47253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な患者は、発症し(例えば、脳梗塞になり)、手術し、急性期に入院、その後、回復状況に応じてリハビリを開始する。また、一部の患者は、回復期に転院してからも、リハビリを開始する。このように、リハビリの開始時期は、患者の病状、年齢、基礎体力などによりバラバラであったり、急性期病院でのリハビリ結果と、回復期病院でのリハビリ結果による場合があり、入院患者のデータと過去の退院患者のデータとを一概に比較することができない。そのため、機械学習等により類似するデータを抽出し、入院患者の練習計画を作成する際に、過去の患者のデータを利用することが難しい。
【0005】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであり、他の患者の練習実績データを参考にして、患者の練習計画の作成を支援するリハビリ支援システム、方法、プログラム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様にかかるリハビリ支援システムは、
対象患者に関する患者情報であって、少なくとも1つの基準時の情報を含む患者情報を取得する患者情報取得部と、
前記患者情報と類似する他の患者の関連データであって、リハビリの練習実績データと、回復評価指標の推移と、前記対象患者の基準時に対応する基準時の情報と、を含む関連データを取得する関連データ取得部と、
前記患者情報の基準時と、前記他の患者の基準時と整合させることで、前記他の患者の前記関連データに基づいて、前記対象患者の練習計画を作成する練習計画作成部と、
前記練習計画を提示する提示部と、を備える。
【0007】
本開示の一態様にかかるリハビリ支援方法は、
対象患者に関する患者情報であって、少なくとも1つの基準時の情報を含む患者情報を取得し、
前記患者情報と類似する他の患者の関連データであって、リハビリの練習実績データと、回復評価指標の推移と、前記対象患者の基準時に対応する基準時の情報と、を含む関連データを取得し、
前記患者情報の基準時と、前記他の患者の基準時と整合させることで、前記他の患者の前記関連データに基づいて、前記対象患者の練習計画を作成し、
前記練習計画を提示する。
【0008】
本開示の一態様にかかるプログラムは、
対象患者に関する患者情報であって、少なくとも1つの基準時の情報を含む患者情報を取得し、
前記患者情報と類似する他の患者の関連データであって、リハビリの練習実績データと、回復評価指標の推移と、前記対象患者の基準時に対応する基準時の情報と、を含む関連データを取得し、
前記患者情報の基準時と、前記他の患者の基準時と整合させることで、前記他の患者の前記関連データに基づいて、前記対象患者の練習計画を作成し、
前記練習計画を提示することを、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、過去の他の患者の実績データを利用して、新たな患者のリハビリの練習計画を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】リハビリ支援システムにより表示されるユーザインターフェースの例を示す図である。
図2】実施形態にかかるリハビリ支援システムの構成を示すブロック図である。
図3】発症日、急性期、回復期、及び生活期を示す図である。
図4】実施形態にかかるリハビリ支援システムの動作を示すフローチャートである。
図5】実施形態にかかる退院患者の練習実績データの例を示す図である。
図6】実施形態にかかる入院患者の練習実績データの例を示す図である。
図7】実施形態にかかる入院患者の練習計画を、退院患者のデータと比較可能に表示する例を示す図である。
図8】練習計画作成装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0012】
本開示のリハビリ支援システムは、リハビリを行う患者の各種データを表示し、より効率的なリハビリ支援を行うために使用され得る。
【0013】
病院において、療法士は、所定期間(例えば、5分)ごとに患者のリハビリ練習内容及び所要時間を記録する。リハビリ支援システムは、患者ごとに蓄積された記録データを活用して、リハビリ実績及び計画をディスプレイ等に表示する。
【0014】
図1は、リハビリ支援システムにより表示されるユーザインターフェースの例である。
画面の中央部には、横軸が日数とし、2つの縦軸を練習時間及び回復評価指標とするグラフが表示される。グラフの右側縦軸は練習時間を表し、グラフの左側縦軸は、回復評価指標を表す。回復評価指標は、FIM(Functional Independence Measure)を用いるが、これに限定されず、例えばBI(Barthel Index)、SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)等の当業者が理解しうる適切な指標を使用してもよい。このように、ユーザインターフェースでは、ユーザは、練習実績と回復評価指標を並べて確認することができる。また、当該ユーザインターフェースは、タッチ操作可能なタッチパネルに表示され得る。
【0015】
練習実績や歩行FIMなどの評価データは、横軸の0日目を発症日として設定することができる。発症日とは、症状が出現し始めた日をいう。ユーザは、ユーザインターフェースの各種ボタンを操作することで、横軸の0日目を、発症日だけでなく、急性期入院日や回復期入院日、リハビリ開始日などに変更することもできる。
【0016】
ユーザインターフェース上で患者の練習実績を、積み上げ棒グラフや折れ線グラフを用いて可視化することができる。リハビリを手伝う療法士が記録した患者の練習項目ごとの練習時間が練習実績として表示されている。図1において、横軸の練習日数が20日のところには、短期目標の一点鎖線101が表示される。また、横軸の練習日数が80日のところには、長期目標の一点鎖線102が表示される。横軸の練習日数が90日のところには、退院予定日を示す一点鎖線103も表示される。短期目標、長期目標、及び退院予定日の各線は、医師又は療法士が任意に設定されてもよいし、練習実績と過去の患者データに基づいて、自動的に設定されてもよい。練習項目としては、歩行練習(例えば、平地歩行、階段など)、食事練習、トイレ練習などが挙げられるが、これらに限定されない。また、短期目標及び長期目標の日は、これらに限定されず、任意に設定することができる。
【0017】
短期目標、長期目標、又は退院予定日は、入院患者と類似する他の退院患者のデータを参考にし、医師又は療法士が、入院患者の実績やモチベーション、体調などを考慮して、設定することができる。また、医師又は療法士は、短期目標や長期目標に対する入院患者の実績データをもとに、目標達成の進捗を把握し、患者に対して、リハビリへのモチベーションを高めるように適切なコミュニケーションを図ることができる。
【0018】
また、患者の実績データの(練習項目ごとの)各入力データは、担当した療法士の名前又はIDと関連付けられていてもよい。ユーザは、当該ユーザインターフェース上で、療法士の名前を選択することで、担当した療法士に関連付けられた練習実績データを選択的に表示させることができる。いくつかの実施形態では、担当した療法士に関連付けられた練習実績データを色分け等により区別可能に表示されてもよい。療法士の種類ごとに区別可能に表示することもできる。療法士の種類としては、理学療法士(PT)、作業療法士(OP)、言語聴覚療法士(ST)などが挙げられるが、これらに限定されない。また、いくつかの実施形態では、患者が一人で練習する個別練習や、複数人の患者が集まって練習する集団練習を区別可能に表示することもできる。なお、個別練習の場合は、療法士が、患者や看護師から練習項目ごとの時間を聴いて、実績データをリハビリ支援システムに入力する。いくつかの実施形態では、患者に取り付けたセンサ(例えば、ウェアラブルデバイス)から、練習項目ごとの実績データを自動的にリハビリ支援システムに入力してもよい。
【0019】
また、図1に示すように、実績データに関連付けて、「しているFIM」111と、「できるFIM」112が表示されている。FIMは、回復評価指標を示し、最大値(例えば、7)は、患者が健常者並みに練習項目を実行できることを示し、数値が下がるごとに段階的に介護の必要性の度合いが高いことを示している。
【0020】
「しているFIM」は、患者が生活の中で行っていることを評価している。例えば、歩行練習の場合、患者がなんとか杖なしで歩くことも可能であるが、普段の生活では、杖をついて歩いているときは、「しているFIM」は、患者は杖をついて歩くことができることを示す。この場合、「できるFIM」は、杖なしで歩くことができることを示す。「しているFIM」は、定期的(例えば、1ヶ月に一回)に療法士が日々の患者の生活を観察して取得することができる。「できるFIM」は、療法士が日々のリハビリの様子を観察して、取得することができる。また、「しているFIM」は、入院時と退院時において、それぞれ取得し、その差を、リハビリの実績を評価するために使用され得る。
【0021】
以上は、リハビリ支援システムのユーザインターフェースに関する全般的な説明である。このように、様々な患者のデータを蓄積し、入院患者および退院患者データベースに記録している。しかし、リハビリテーションの開始時期は、病状、年齢、基礎体力などによりバラバラであるので、入院患者のデータと過去の退院患者のデータとを比較することができない場合もある。そのため、過去のデータを入院患者の練習計画を作成する際に利用することが難しい。そこで、以下の方法により、過去の蓄積データの基準時を選択可能に設定できるようにし、入院患者の練習計画を作成するのに利用することができる。
【0022】
例示的な実施形態
図2は、実施形態に係るリハビリ支援システムの構成を示すブロック図である。
リハビリ支援システム1は、練習計画提示装置10と退院患者データベース20を含む。練習計画提示装置10と退院患者データベース20はネットワークを介して接続されている。他の実施形態では、提示部15は、練習計画提示装置10とは別体として設けられてもよい。練習計画提示装置10と患者情報データベース20は一体として設けられてもよい。
【0023】
退院患者データベース20は、前述したように、入院してから退院するまでの様々な患者の練習実績データおよび回復評価指標、並びに患者の登録情報(例えば、氏名、性別、病状など)を記録する。
【0024】
練習計画提示装置10は、メモリ、プロセッサ、及びディスプレイ等を有するコンピュータにより実現される。練習計画提示装置10は、患者情報取得部11、関連データ取得部12、練習計画作成部13、基準時選択部14及び提示部15を備える。
【0025】
患者情報取得部11は、入院患者に関する患者情報を取得する。患者情報は、例えば、患者の個人情報(例えば、氏名、年齢、性別、身長、体重)、および患者の病気や症状に関する情報(例えば、脳梗塞)を含み得る。また、患者情報は、前述したように、操作部(例えば、キーボード、マウスなど)を介して療法士により入力されるリハビリの練習実績や回復評価指標(FIM)、発症日、入院日などを含み得る。
【0026】
関連データ取得部12は、入院患者と類似する他の患者(例えば、退院患者)に関する実績データを取得する。関連データ取得部12は、入院患者と類似する1人又は複数の他の退院患者に関する実績データを取得してもよい。類似する他の患者とは、年齢、性別、病状などのプロファイル(登録情報)が入院患者と類似する患者をいう。例えば、入院患者が脳梗塞で43歳の男性である場合、関連データ取得部12は、当該入院患者が類似する患者として、40代の脳梗塞の男性の1人以上の他の患者の実績データを患者情報データベース20から取得することができる。他の患者の実績データも、療法士により入力されるリハビリの練習実績や回復評価指標(FIM)、発症日、入院日、退院日に関する情報も含み得る。
【0027】
また、いくつかの実施形態では、関連データ取得部12は、より具体的な入院患者の練習実績又は回復評価指標と類似する退院患者に関する実績データを取得する。例えば、入院患者が脳梗塞で43歳の男性である場合、40代の脳梗塞の男性の1人以上の実績データのうち、入院患者の練習実績又は回復評価指標と類似する退院患者に関する実績データを取得する。例えば、入院患者の回復評価指標の傾き又は推移が類似する退院患者の回復評価指標を取得することで、それに基づいて、後述する練習計画をより正確に行うことができる。類似データとして、入院患者の回復評価指標の傾き又は推移と閾値以内の退院患者の回復評価指標及び実績データを取得することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、機械学習を用いた類似特定技術により、入院患者のデータ(例えば、グラフのFIMの特徴)と類似する1人以上の他の患者のデータ(例えば、グラフのFIMの特徴)を抽出してもよい。他の実施形態では、両グラフの類似するFIMの傾き検出(画像処理)は、サポートベクターマシンやニューラルネットワークなどの機械学習を利用してもよい。
【0029】
練習計画作成部13は、前述のように、退院患者の実績データの基準時と、対象入院患者のデータの基準時とを整合させて、当該対象入院患者の練習計画を作成する。いくつかの実施形態では、退院患者及び入院患者の基準時は、それぞれの発症日でありうる。退院患者の実績データの発症日と、入院患者の同一の基準時である、入院患者の発症日を整合させることで、同じ基準時に基づき、入院患者の練習計画を作成することができる。
【0030】
他の実施形態では、退院患者及び入院患者の基準時は、回復期の入院日であってもよい。更に他の実施形態では、退院患者及び入院患者の基準時は、急性期の入院日であってもよい。例えば、別の病院から回復期に転院してきた患者の場合は、当該入院患者の入院日と、過去の患者の回復期の入院日と整合させて、当該入院患者の練習計画を作成することができる。この場合、関連データ取得部12は、過去の患者データとして、別の病院から急性期に転院してきた1人以上の他の患者のデータを取得してもよい。
【0031】
また、別の病院から急性期に転院してきた患者の場合は、当該入院患者の入院日と、過去の患者の急性期の入院日と整合させて、入院患者の練習計画を作成することができる。この場合、関連データ取得部12は、過去の患者データとして、別の病院から急性期に転院してきた1人以上の他の患者のデータを取得してもよい。
【0032】
練習計画作成部13は、上述したように、自動的に、退院患者及び入院患者のデータの基準時を整合させて、適切な練習計画を作成することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、複数の退院患者の練習実績データ又は回復評価指標を用いる場合、練習計画作成部13は、複数の退院患者の練習実績データ又は回復評価指標の平均値に基づいて、入院患者の練習計画を作成してもよい。本明細書では、練習計画は、練習計画の終了予定日又は退院予定日、短期目標日、長期目標日、短期目標のための目標練習時間や項目、長期目標のための目標練習時間や項目、練習終了までに完了すべき練習項目、および当該練習項目ごとの予測所要時間のうちの少なくとも1つ又は全部を含み得る。
【0034】
また、いくつかの実施形態では、練習計画作成部13は、入院後数日間の入院患者の練習実績及び回復評価指標を利用して、より正確な練習計画を作成することができる。例えば、練習計画作成部13は、入院患者の現在までの練習実績と類似する退院患者の実績データに基づき、定められた短期目標を達成可能な日(短期目標日)を予測することができる。練習計画作成部13は、入院患者の現在までの練習実績と類似する退院患者の実績データに基づき、定められた長期目標を達成可能な日(長期目標日)又は退院予定日を予測することができる。他の実施形態では、練習計画の作成にあたって、入院患者又は療法士の希望する休日数(例えば、週1日、又は週2日など)を考慮することもできる。
【0035】
他の実施形態では、練習計画作成部13は、入院患者の現在までの回復評価指標の推移と類似する入院患者の回復評価指標の推移に基づき、必要な練習項目及び練習時間などを含む練習計画を具体的に作成することができる。
【0036】
基準時選択部14は、退院患者の実績データ及び入院患者のデータに関し、入力装置(例えば、キーボード、タッチパネル、マウスなど)を介して療法士等の入力を受け付けて、複数の基準時のうち、一の基準時を選択する。この場合も、退院患者の実績データ及び入院患者のデータに関し、同じ基準時を選択する。例えば、基準時は、発症日、急性期の入院日及び回復期の入院日からなる群から選択され得る。これは、入院患者が別の病院へ転院した場合、新たな病院の療法士は、前の病院の練習実績や回復評価指標等を見ることができない場合に、有効であり得る。いくつかの実施形態では、基準時は、2つの基準時、すなわち、発症日と、急性期の入院日又は回復期の入院日と、を含み得る。
【0037】
図3は、発症日、急性期、回復期、及び生活期を示す図である。
練習開始日は、患者ごとに(例えば、急性期であったり、回復期であったりなど)様々であるので、基準時とすることはできない。そのため、本実施形態では、過去の患者データと入院患者のデータの比較に際し、原則として発症日を基準とする。発症日から2週間が急性期と呼ばれる。急性期のリハビリは、身体機能の低下防止のため、基本的には発症日から48時間以内に開始することが望ましい。そのため、多くの患者は、急性期に入院し、リハビリを開始する。一部の患者は、例外的に、回復期に入ってから、リハビリを開始する場合もある。なお、症状及び障害の状態が安定した後、患者が在宅で生活する時期は生活期と呼ばれる。図3内の急性期又は回復期の日数は、単なる例示であり、病状ごとに異なり得る。
【0038】
入院患者のデータは、例えば、全く練習実績の記録のない、発症日のみを示したデータであってもよい。また、入院患者のデータは、発症日と入院から数日間若しくは数十日間の練習実績を示したデータであってもよい。いくつかの実施形態では、基準時選択部14は、退院患者の実績データと入院患者のデータの比較するための基準時を発症日に設定する。また、他の実施形態では、入院患者が、容態が安定する回復期になってから、リハビリを開始する場合は、基準時選択部14は、退院患者の実績データの基準時を回復期の入院日に設定してもよい。
【0039】
提示部15は、前述のように作成された練習計画を、表示装置に提示する。表示装置は、練習計画提示装置10のディスプレイであってもよいし、練習計画提示装置10の外部にあるディスプレイであってもよい。いくつかの実施形態では、提示部15は、対象患者の練習計画を、退院患者の実績データと比較可能に提示することができる。
【0040】
基本的には、過去の退院患者の練習実績データにおける発症日と、入院患者の練習実績データにおける発症日を一致させるように、2つのグラフを比較表示することで、入院患者の練習計画を作成することができる。いくつかの実施形態では、退院患者及び入院患者の2つのグラフを重ね合わせて表示してもよい。
【0041】
図4図7を参照して、実施形態にかかるリハビリ支援方法を説明する。
図4は、実施形態にかかるリハビリ支援システムの動作を示すフローチャートである。
患者情報取得部11は、入院患者に関する患者情報を取得する(ステップS11)。患者情報取得部11は、療法士からの入力操作を受け付けて、患者情報として、患者の病状・病名(例えば、脳梗塞)、発症日、入院日など、患者のプロファイル情報を取得する。図5は、ある入院患者の練習実績と回復評価指標を示す。また、患者情報取得部11は、図5に示すように、当該患者のリハビリの練習実績及び回復評価指標を含む患者情報を取得してもよい。図5の例では、患者の発症日は、8月31日である。当該患者は、9月1日に入院し、すぐに、リハビリを開始している。図5では、9月1日から9月8日までに記録された練習項目及び練習時間が示されている。
【0042】
関連データ取得部12は、入院患者と類似する他の患者(例えば、退院患者)に関する実績データを取得する(ステップS12)。例えば、入院患者と同じ病状(例えば、脳梗塞)の1人以上の他の退院患者の過去のデータを、患者情報データベース20から取得する。本例では、関連データ取得部12は、図5に示す入院患者の練習実績及び回復評価指標と、類似する他の患者のデータを更に取得する。具体的には、図5に示す入院患者の回復評価指標の傾きと、退院患者の回復評価指標の傾きとの差が、閾値より小さいものを、類似データとして抽出する。図6は、取得された他の患者の練習実績及び回復評価指標を示す例である。当該他の患者は、6月2日に脳梗塞を発症し、図6に示すように、6月3日に入院し、その後、リハビリを開始している。また、当該他の患者は、6月17には健常者と同じレベル(FIMは7を示す)まで回復し、6月18日に退院している。
【0043】
練習計画作成部13は、前述のように、他の患者の実績データの基準時と、入院患者のデータの基準時とを整合させて、入院患者の練習計画を作成する(ステップS13)。本例では、他の患者の実績データの発症日(6月2日)と、入院患者のデータの発症日(8月31)を整合させて、入院患者の練習計画を作成する。具体的には、実績データの入力記録のない9月9日以降の入院患者の練習計画が作成され得る。当該練習計画は、入院患者のこれまでの練習実績及び回復評価指標と、過去の退院患者の練習実績及び回復評価指標を参考にして、作成され得る。当該練習計画は、9月16日が退院予定日であることを示し得る。
【0044】
提示部15は、前述のように作成された練習計画を提示する(ステップS14)。
図7は、練習計画の表示例を示す。提示部15は、対象患者の練習計画(図7の下図)を、退院患者の関連データ(図7の上図)と比較可能に提示することができる。練習計画は、練習計画の終了予定日又は退院予定日(図7の下図では、9月16日)を示す。また、図7では、練習計画は、空欄となっているが、他の実施形態では、練習計画に、入院患者が退院までの必要な練習項目及び練習時間などが具体的に示されてもよい。あるいは、他の実施形態は、練習計画に、短期目標又は長期目標が示されてもよい。練習計画は、このような比較可能なグラフではなく、単に、練習計画の終了予定日又は退院予定日、入院患者が退院までの必要な練習項目及び練習時間などを単に示すだけであってもよい。
【0045】
図8は、練習計画作成装置10の構成例を示すブロック図である。図8を参照すると、練習計画作成装置10は、ネットワーク・インターフェース1201、プロセッサ1202、及びメモリ1203を含む。ネットワーク・インターフェース1201は、通信システムを構成する他のネットワークノード装置と通信するために使用される。ネットワーク・インターフェース1201は、無線通信を行うために使用されてもよい。例えば、ネットワーク・インターフェース1201は、IEEE 802.11 seriesにおいて規定された無線LAN通信、もしくは3GPP(登録商標)(3rd Generation Partnership Project)において規定されたモバイル通信を行うために使用されてもよい。もしくは、ネットワーク・インターフェース1201は、例えば、IEEE 802.3 seriesに準拠したネットワークインターフェースカード(NIC)を含んでもよい。
【0046】
プロセッサ1202は、メモリ1203からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、上述の実施形態においてフローチャートもしくはシーケンスを用いて説明された練習計画作成装置10の処理を行う。プロセッサ1202は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processing Unit)、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)であってもよい。プロセッサ1202は、複数のプロセッサを含んでもよい。
【0047】
メモリ1203は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ1203は、プロセッサ1202から離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ1202は、図示されていないI/Oインタフェースを介してメモリ1203にアクセスしてもよい。
【0048】
図8の例では、メモリ1203は、ソフトウェアモジュール群を格納するために使用される。プロセッサ1202は、これらのソフトウェアモジュール群をメモリ1203から読み出して実行することで、上述の実施形態において説明された練習計画作成装置10の処理を行うことができる。
【0049】
図4を用いて説明したように、練習計画作成装置10等が有するプロセッサの各々は、図面を用いて説明されたアルゴリズムをコンピュータに行わせるための命令群を含む1又は複数のプログラムを実行する。
【0050】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0051】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 リハビリ支援システム
10 練習計画提示装置
11 患者情報取得部
12 関連データ取得部
13 練習計画作成部
14 基準時選択部
15 提示部
20 患者情報データベース
101 短期目標
102 長期目標
103 退院予定日
111 しているFIM
112 できるFIM
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8