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特開2025-43895同病家族レコメンドプログラム、同病家族レコメンド装置及び同病家族レコメンド方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025043895
(43)【公開日】2025-04-01
(54)【発明の名称】同病家族レコメンドプログラム、同病家族レコメンド装置及び同病家族レコメンド方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20250325BHJP
   G16H 80/00 20180101ALI20250325BHJP
【FI】
G16H10/00
G16H80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023151462
(22)【出願日】2023-09-19
(71)【出願人】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩行
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】患者の家族に、情報交換をするのに相応しい同様の境遇の家族をレコメンドする。
【解決手段】コンピュータを、患者およびその家族の少なくとも一方が端末を介して入力した、患者および家族の少なくとも一方に関する情報に基づいて、各々の家族の特徴を示す情報を生成する家族特徴生成手段と、各々の家族の特徴を示す情報を家族間で比較することにより、家族間の類似度を計算する類似度計算手段と、家族間の類似度に基づいて、家族に対して境遇が類似する他の家族を決定し、端末に当該他の家族の情報を表示する表示情報生成手段として機能させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
患者およびその家族の少なくとも一方が端末を介して入力した、患者および家族の少なくとも一方に関する情報に基づいて、各々の家族の特徴を示す情報を生成する家族特徴生成手段と、
各々の家族の特徴を示す情報を家族間で比較することにより、家族間の類似度を計算する類似度計算手段と、
前記家族間の類似度に基づいて、家族に対して境遇が類似する他の家族を決定し、前記端末に当該他の家族の情報を提示する表示情報生成手段として機能させる同病家族レコメンドプログラム。
【請求項2】
前記家族特徴生成手段は、
前記家族の特徴を示す情報として、患者が入力した情報と家族が入力した情報に基づいて、患者と家族の関係性を示す情報を生成する、請求項1に記載の同病家族レコメンドプログラム。
【請求項3】
前記家族特徴生成手段は、
前記患者と家族の関係性を示す情報として、治療において優先する項目の一致度を示す情報を生成する、請求項2に記載の同病家族レコメンドプログラム。
【請求項4】
前記表示情報生成手段は、
前記家族間の類似度が高い順に、他の家族の情報を提示する、請求項1から3のいずれか1項に記載の同病家族レコメンドプログラム。
【請求項5】
前記類似度計算手段は、
前記家族間の類似度を計算する際、家族の特徴を示す複数の項目に対して患者またはその家族が指定した重みづけを反映して前記家族間の類似度を計算する、請求項1に記載の同病家族レコメンドプログラム。
【請求項6】
患者およびその家族の少なくとも一方が端末を介して入力した、患者および家族の少なくとも一方に関する情報に基づいて、各々の家族の特徴を示す情報を生成する家族特徴生成手段と、
各々の家族の特徴を示す情報を家族間で比較することにより、家族間の類似度を計算する類似度計算手段と、
前記家族間の類似度に基づいて、家族に対して境遇が類似する他の家族を決定し、前記端末に当該他の家族の情報を表示する表示情報生成手段とを備えた同病家族レコメンド装置。
【請求項7】
コンピュータが、患者およびその家族の少なくとも一方が端末を介して入力した、患者および家族の少なくとも一方に関する情報に基づいて、各々の家族の特徴を示す情報を生成する工程と、
コンピュータが、各々の家族の特徴を示す情報を家族間で比較することにより、家族間の類似度を計算する工程と、
コンピュータが、前記家族間の類似度に基づいて、家族に対して境遇が類似する他の家族を決定し、前記端末に当該他の家族の情報を表示する工程とを有する同病家族レコメンド方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同病家族レコメンドプログラム、同病家族レコメンド装置及び同病家族レコメンド方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の対象者と複数のコミュニティとの類似度を算出することにより、対象者との親和性が高いコミュニティをレコメンドするシステムが知られている(例えば、特許文献1)。また、がん患者など同じ病気の患者同士が、お互いのプロフィールを検索したり閲覧したりすることができるSNSが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-107867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
がん患者の家族は、がんの診断を受けた患者に対する接し方への疑問や、今後の生活への不安、患者自身と家族との治療に対する考え方(価値観)の違い等、患者の家族特有の悩みを多く抱えている。このような患者の家族が抱える悩みや不安、ストレスを解消するためには、同じ病気の患者がいる家族同士で情報交換を行うことが有効である。しかし、患者の家族に、情報交換をするのに相応しい同じ境遇の家族をレコメンドするサービスは存在していなかった。このため、患者の家族は、任意団体に加入して同じ境遇の家族を探すなど、能動的に探す必要があったが、精神的負荷を軽減するための手間と時間も必要となり、同じ病気の患者を持つ家族を探すのはハードルが高かった。
【0005】
そこで、本発明は、患者の家族に、情報交換をするのに相応しい同様の境遇の家族をレコメンドすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る同病家族レコメンドプログラムは、コンピュータを、患者およびその家族の少なくとも一方が端末を介して入力した、患者および家族の少なくとも一方に関する情報に基づいて、各々の家族の特徴を示す情報を生成する家族特徴生成手段と、各々の家族の特徴を示す情報を家族間で比較することにより、家族間の類似度を計算する類似度計算手段と、前記家族間の類似度に基づいて、家族に対して境遇が類似する他の家族を決定し、前記端末に当該他の家族の情報を提示する表示情報生成手段として機能させるものである。
【0007】
本発明の他の一実施形態に係る同病家族レコメンド装置は、患者およびその家族の少なくとも一方が端末を介して入力した、患者および家族の少なくとも一方に関する情報に基づいて、各々の家族の特徴を示す情報を生成する家族特徴生成手段と、各々の家族の特徴を示す情報を家族間で比較することにより、家族間の類似度を計算する類似度計算手段と、前記家族間の類似度に基づいて、家族に対して境遇が類似する他の家族を決定し、前記端末に当該他の家族の情報を表示する表示情報生成手段とを備えたものである。
【0008】
本発明の他の一実施形態に係る同病家族レコメンド方法は、コンピュータが、患者およびその家族の少なくとも一方が端末を介して入力した、患者および家族の少なくとも一方に関する情報に基づいて、各々の家族の特徴を示す情報を生成する工程と、コンピュータが、各々の家族の特徴を示す情報を家族間で比較することにより、家族間の類似度を計算する工程と、コンピュータが、前記家族間の類似度に基づいて、家族に対して境遇が類似する他の家族を決定し、前記端末に当該他の家族の情報を表示する工程とを有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、患者の家族に、情報交換をするのに相応しい同様の境遇の家族をレコメンドすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態による、同病家族レコメンドシステム1の構成を示すブロック図。
図2】本発明の実施の形態による、同病家族レコメンドシステム1による同病家族レコメンドサービスの流れを示すフローチャート
図3】本発明の実施の形態による、家族特徴生成手段101によって生成される家族の特徴に関する情報の例を説明する図。
図4】本発明の実施の形態による、類似度計算手段102によって計算される家族間の類似度の例を説明する図。
図5】本発明の実施の形態による、家族端末30に表示される同病家族レコメンド画面を例示する図。
図6】本発明の実施の形態による、サーバ装置10をコンピュータにより実現する場合のハードウェア構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態による同病家族レコメンドシステム1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、同病家族レコメンドシステム1は、サーバ装置(同病家族レコメンド装置)10、患者端末20A,20B、家族端末30A,30Bを備えている。サーバ装置10は、患者端末20A,20B、および家族端末30A,30Bと通信ネットワークNを介して接続されている。通信ネットワークNは、例えば、インターネット、LAN、専用線、電話回線、企業内ネットワーク、移動体通信網、ブルートゥース(登録商標)、WiFi(Wireless Fidelity)、その他の通信回線、それらの組み合わせ等のいずれであってもよく、有線であるか無線であるかを問わない。
【0012】
同病家族レコメンドシステム1は、例えば乳がんの患者とその患者家族に対し、同じ病気の患者を持つ家族の中から、相談相手として相応しい家族を紹介(レコメンド)する同病家族レコメンドサービスを提供するシステムである。具体的には、サーバ装置10と患者および患者家族の端末に実装された専用アプリが連携することにより、各家族へのレコメンドサービスが実現される。患者は、自身の端末にて専用アプリの利用登録(ユーザ登録)を行うことにより、患者端末20を介してサービスを利用することができる。患者家族は、専用アプリへの利用登録を行っている患者の家族であり、患者からの招待/承認を経て利用登録を行うことができるようにしてもよい。患者および家族が患者端末20および家族端末30を介して利用する専用アプリは同じものであってよく、患者本人とその家族は、アプリを介して情報交換等のコミュニケーションを行うことができるが、患者と他の患者の家族とはアプリ上でコミュニケーションを行えないようにしてもよい。一方、患者の家族同士はアプリ上でコミュニケーションを行うことができる。
【0013】
図1の例では、患者端末20Aと家族端末30Aは、それぞれ家族Aの患者と家族が所持する端末であり、患者端末20Bと家族端末30Bは、それぞれ家族Bの患者と家族が所持する端末である。サーバ装置10は、患者端末20A,20B、および家族端末30A,30Bに実装された専用アプリを介して登録される患者情報および家族情報に基づいて、家族同士のマッチングを行い、類似度が高い家族の情報を、専用アプリを介してレコメンドする。なお、図1には家族A,Bの端末のみが図示されているが、実際にはユーザ登録している多くの家族(患者+家族)の端末がサーバ装置10と接続可能に構成されている。
【0014】
サーバ装置10は、同病家族レコメンドサービスを提供する企業等に設置され、制御部(プロセッサ)11、記憶部12、および通信インタフェース13を備えた汎用的なコンピュータである。サーバ装置10は、それぞれ1台のコンピュータで構成されていてもよいし、通信ネットワークN上に分散する複数のコンピュータから構成されてもよい。また、サーバ装置10はクラウド上に構築されていてもよい。
【0015】
患者端末20A,20Bおよび家族端末30A,30Bは、それぞれ患者と患者家族が利用する端末である。患者端末20A,20Bおよび家族端末30A,30Bは、パーソナルコンピュータ(PC)、ノートPC、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)など、通信ネットワークNを介してサーバ装置10とデータの授受が可能なあらゆる端末装置を利用することができる。患者端末20A,20Bおよび家族端末30A,30Bは、ハードウェアとしてプロセッサと記憶装置を備えている。
【0016】
図1において、サーバ装置10が備える家族特徴生成手段101、類似度計算手段102、および表示情報生成手段103は、記憶部12に格納されたプログラムが制御部11によって実行されることで実現される機能モジュールを示している。
【0017】
家族特徴生成手段101は、患者端末20A,20Bおよび家族端末30A,30Bから、それぞれ患者情報および家族情報を取得し、その家族の特徴(典型的には、患者と家族の関係性)に関する情報を生成する機能を有する。
【0018】
類似度計算手段102は、家族特徴生成手段101が生成した各々の家族の特徴を比較することにより、家族間の類似度を計算する機能を有する。
【0019】
表示情報生成手段103は、類似度計算手段102が計算した家族間の類似度に関する情報に基づいて、それぞれの家族に対してレコメンドする他の家族を決定し、患者端末20A,20Bおよび家族端末30A,30Bへの表示情報を生成する機能を有する。
【0020】
また、サーバ装置10は、記憶部12に実装された患者家族データベース104を備えている。なお、患者家族データベース104は、クラウド上など外部の記憶装置に実装されていてもよい。患者家族データベース104には、患者家族ごとに、以下の情報を含むレコードが記憶されている。
(1)患者家族背景情報
家族構成、家族の年齢、生活地域、就労状況等が含まれる。
(2)患者背景情報
患者のライフイベント(子供の卒業式等)の予定等
(3)心理的情報
患者本人と家族についての各々の性格、治療への希望、生活上の関心事項、悩み(治療面、金銭面、生活面、就労面等)、治療における各価値観の優先度等
(4)疾患背景情報
乳がんタイプ(HER2陽性、ホルモン受容体陽性、トリプルネガティブ、遺伝性)、診断時の状況(初発/再発)、ステージ(ステージ1,2,3,4)等
(5)治療背景情報
治療歴(手術、化学療法・ホルモン療法、食事療法、カウンセリング等)、補助治療歴(乳房再建、運動療法、食事療法、カウンセリング等)、乳がん治療スケジュール(受診、入退院、手術、検査、薬物治療等)等
【0021】
次に、同病家族レコメンドシステム1による、同病家族レコメンドサービスの流れについて図2のフローチャートを用いて説明する。家族特徴生成手段101は、患者端末20A,20B、および家族端末30A,30Bから「患者情報」および「家族情報」を取得する(ステップS101)。取得した「患者情報」および「家族情報」は、「登録情報」として患者家族データベース104に記憶されるようにしてよい。
【0022】
「患者情報」は患者本人に関する情報である。患者情報は主に患者本人が患者端末20を操作して入力する情報であるが、患者の家族によって入力されたものであってもよい。具体的には、患者に関する一般的な情報(年齢、職業、居住地、性別等)、治療における各価値観の優先順位(お金、早期の治療、副作用の重さ、予後、入院期間の長さ等の優先順位)、病状に関する情報(ステージ、治療履歴、投薬の状況、痛み等)が含まれる。
【0023】
「家族情報」は、患者の家族に関する情報である。家族情報は、主に患者の家族が家族端末30を操作して入力する情報であるが、患者本人によって入力されたものであってもよい。具体的には、家族に関する一般的な情報(年齢、職業、居住地、性別、患者に対する続柄等)、治療における各価値観の優先順位(お金、早期の治療、副作用の重さ、予後、入院期間の長さ等の優先順位)が含まれる。
【0024】
家族特徴生成手段101は、取得した患者情報および家族情報に基づいてその家族の特徴に関する情報を生成する(ステップS102)。図3は、家族特徴生成手段101によって生成される家族の特徴に関する情報の例を説明する図である。図3の例では、家族の特徴として、患者と家族との治療における価値観の相違度を算出する例を示している。図3は、患者本人と、2名の家族(家族1:妻、家族2:子)で構成される家族Aにおける、患者と家族との価値観の相違度を例示している。図3には、患者と家族それぞれの治療における4つの価値観の項目(お金、早期治療、副作用の重さ、入院期間)の優先順位(「4」が最も優先順位が高く「1」が最も低い)が示されている。例えば、患者本人は「お金」の優先順位が最も高く、家族1(妻)と家族2(子)は「入院期間」の優先順位が最も高くなっている。
【0025】
家族特徴生成手段101は、各項目について患者と家族の間の相違度を算出する。各項目の相違度は下記の式[1]によって算出することができる。
【0026】
項目Xの相違度(患者,家族1,…,家族n,項目Xの優先順位)
=f(患者の項目Xの優先順位)-(1/n){f(家族1の項目Xの優先順位)+…+f(家族nの項目Xの優先順位)} …[1]
ただし、f(4)=1,f(3)=1/2,f(2)=-1/2,f(1)=-1
【0027】
例えば、図3の例で「お金」に関しての相違度は、以下のように算出される。
お金の相違度(患者,家族1,家族2,お金の優先順位)
=f(患者のお金の優先順位)-(1/2){f(家族1のお金の優先順位)+f(家族2のお金の優先順位)}
=f(4)-(1/2){f(1)+f(2)}
=1-(1/2){-1-1/2}
=1+3/4
=1.75
【0028】
また、図3の例で「副作用の重さ」に関しての相違度は、以下のように算出される。
副作用の重さの相違度(患者,家族1,家族2,副作用の重さの優先順位)
=f(患者の副作用の重さの優先順位)-(1/2){f(家族1の副作用の重さの優先順位)+f(家族2の副作用の重さの優先順位)}
=f(2)-(1/2){f(3)+f(1)}
=-1/2-(1/2){1/2-1}
=-1/2+1/4
=-0.25
【0029】
上記のように、患者本人の優先順位が家族の優先順位の総意と比べて著しく高い項目(「お金」)については、相違度が比較的大きな正の値となる。一方、患者本人の優先順位が家族の優先順位の総意と比べてわずかに低い項目(「副作用の重さ」)については、相違度が比較的小さな負の値となる。
【0030】
次に、類似度計算手段102は、家族特徴生成手段101が生成した各々の家族の特徴に関する情報を比較し、家族間の類似度を計算する(ステップS103)。
【0031】
図4は、類似度計算手段102によって計算される家族間の類似度の例を説明する図である。図4の例では、各家族における患者と家族との治療における価値観の相違度を比較することにより、家族間の類似度を計算している。図4には、家族A,B,Cにおける患者と家族との治療における価値観の相違度の計算結果が示されている。
【0032】
類似度計算手段102は、下記の式[2]によって家族間の類似度を計算することができる。
家族間の類似度(家族1,家族2)
=(1/n){|家族1の第1項目の価値観の相違度-家族2の第1項目の価値観の相違度|+…+|家族1の第n項目の価値観の相違度-家族2の第n項目の価値観の相違度|} …[2]
【0033】
例えば、図4の例で、家族Aと家族Bの類似度は以下のように計算される。
家族間の類似度(家族A,家族B)
=(1/4){|家族Aのお金の価値観の相違度-家族Bのお金の価値観の相違度|
+|家族Aの早期治療の価値観の相違度-家族Bの早期治療の価値観の相違度|
+|家族Aの副作用の重さの価値観の相違度-家族Bの副作用の重さの価値観の相違度|
+|家族Aの入院期間の価値観の相違度-家族Bの入院期間の価値観の相違度|}
=(1/4){|1.75-0.25|+|0.50+1.00|+|-0.25-1.25|+|2.00-1.00|}
=1.375
【0034】
同様に家族Aと家族Cの類似度は以下のように計算される。
家族間の類似度(家族A,家族C)
=(1/4){|1.75-1.75|+|0.50-0.25|+|-0.25+0.25|+|2.00-1.75|}
=0.125
【0035】
類似度の値が「0」に近いほど家族間の類似度は高くなる。なお、ここでは、患者の病状(ステージ)、年齢層、性別については共通しているものとする。
【0036】
表示情報生成手段103は、類似度計算手段102が計算した家族間の類似度に基づいて、それぞれの家族に対してレコメンドする他の家族を決定する(ステップS104)。例えば、図4の例では、家族Aに対して、より類似度が高い(類似度の値が「0」に近い)家族Cをレコメンドする家族として決定する。
【0037】
表示情報生成手段103は、レコメンドする家族の情報を対象の家族の患者端末および家族端末に表示させる(ステップS105)。図5は、家族端末30に表示される同病家族レコメンド画面を例示する図である。図5に示すように、画面の領域P1には、レコメンドする家族(家族C)の情報が表示され、領域P2には、レコメンドを受ける家族(家族A)と患者本人の価値観の相違度の情報が表示される。具体的には、領域P1には、家族Cの患者の情報(ステージ、性別、年齢層)と、価値観の各項目(お金、早期治療、副作用の重さ、入院期間)における患者と家族の価値観の相違度が表示される。領域P2には、価値観の各項目(お金、早期治療、副作用の重さ、入院期間)についての患者本人と家族の優先度と、両者の相違度がグラフ上に示されており、項目毎の優先度の違いが分かりやすく表示されている。
【0038】
家族Aの患者家族または患者本人は、図5に例示する画面に表示される情報を参考にして、家族Cと情報交換をしたり、相談したりしたいと思った場合には、ボタンBを選択することにより、家族Cと専用アプリを介して繋がることができる。なお、家族Aの者が家族Cを選択しない場合には、次に類似度が高い家族(例えば、家族B)をレコメンドし、図5と同様の画面で情報を提示するようにしてよい。このように、類似度の高い順に同病の患者がいる家族をレコメンドすることができる。
【0039】
以上のように本実施形態によれば、乳がん等の患者がいる家族に対し、患者と家族の背景情報や、患者と家族の関係性に基づいて、連絡を取ることができる同じ病気の患者がいる家族を、類似度の高い順にレコメンドすることができる。また、項目ごとの類似度を分かりやすく表示するようにしたので、レコメンドされた家族との親和性をより詳しく知ることができる。
【0040】
本発明による同病家族レコメンドシステム1を利用すれば、患者と家族との考え方の相違度の類似性が高い他の家族を紹介できるので、悩みを相談したり情報交換をしたりする際にも、互いに共感を得やすく、また有益な情報を得られる可能性が高くなる。
【0041】
また、色々と精神的な負荷が多い患者家族にとって、自分たちで他の家族を探さなくても、親和性の高い家族を効率的に見つけることができるので、患者家族に余計な負担をかけずに、早期に精神的負荷の軽減を図ることができる。
【0042】
なお、上記においては、特に、患者と家族との治療における価値観の優先順位の違いに基づいて家族間の類似性を判断する具体例を説明しているが、本発明は、「(I)患者と家族の社会的関係性」、「(II)患者と家族の心理的関係性」、および「(III)患者の疾患状況」の少なくとも1つに基づいて、家族間の類似性を判断するようにしてよい。
【0043】
「(I)患者と家族の社会的関係性」は、例えば、患者家族データベース104に記憶されている(1)患者家族背景情報と(2)患者背景情報に基づいて、所定のルールによる分類、または所定のルールで数値化した値を用いて判断する。これにより、例えば、家族構成が同じまたは似た家族、患者と家族との年齢差が似た家族、同様のライフイベントの予定がある家族などをレコメンドすることができる。
【0044】
「(II)患者と家族の心理的関係性」は、例えば、患者家族データベース104に記憶されている(3)心理的情報に基づいて、所定のルールによる分類、または所定のルールで数値化した値を用いて判断する。上記実施例の治療における価値観の優先順位に基づく判断はこれに含まれる。これにより、例えば、患者と家族の治療方針の一致度や、患者または家族が抱える悩みなどの点で共通する家族をレコメンドすることができる。
【0045】
「(III)患者の疾患状況」は、例えば、患者家族データベース104に記憶されている(4)疾患背景情報や(5)治療背景情報に基づいて、所定のルールによる分類、または所定のルールで数値化した値を用いて判断する。これにより、例えば、患者の治療状況や治療年数、病状の改善状況などが類似する家族をレコメンドすることができる。
【0046】
サーバ装置10は、同病の家族の探索を行う家族と、患者家族データベース104に登録されている他の家族との、(I)~(III)の項目の類似度をスコア化し、合計のスコアが高い家族から順にレコメンドするようにしてよい。また、同病家族の探索を行う家族は、探索において重視する項目を指定できるようにしてもよい。例えば、3つの項目それぞれの重みづけ(例えば、I:II:III=1:3:2)を指定できるようにしてもよい。この場合には、類似度計算手段102が類似度をスコア化する際に、各項目のスコアに指定された重みづけを掛けた上で合計スコアを算出するようにしてもよい。
【0047】
また、レコメンドされた家族との交流後、実際に類似性が高いと感じたかどうかのフィードバックを受け付けるようにしてもよい。例えば、「境遇が一致している、とても近い、ある程度近い、あまり近くない、全く近くない」等の段階評価を行えるようにしてもよい。フィードバックの結果は、患者家族データベース104に記録し、次回のレコメンドの際に参照するようにしてもよい。
【0048】
なお、上記の実施形態では、乳がんの患者とその家族を対象としたサービスとして説明しているが、乳がん以外のがん患者とその家族に対しても、有効である。例えば、肺がん、胃がん、大腸がん、膵臓がん、前立腺がん、肝臓がん、食道がん、子宮頸がんなどの他の種類のがんであってもよい。また、疾患の種類はがんに限定されず、治療期間が長い病気や、治療に関する情報が少ない病気など、重篤な疾患を有する患者とその家族にも同様のサービスを提供することができる。
【0049】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。例えば、上述した各処理ステップは処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更し、または並列に実行することができる。
【0050】
(ハードウェア構成)
図6を参照して、サーバ装置10をコンピュータ70により実現する場合のハードウェア構成の一例を説明する。なお、それぞれの装置の機能は、複数台の装置に分けて実現することもできる。
【0051】
図6に示すように、コンピュータ70は、プロセッサ700と、記憶装置702と、入力I/F704と、データI/F706と、通信I/F708、及び表示装置710を含む。
【0052】
プロセッサ700は、記憶装置702に記憶されているプログラムを実行することによりコンピュータ70における様々な処理を制御する。例えば、サーバ装置10、患者端末20A,20B、および家族端末30A,30Bが備える各機能部等は、記憶装置702に記憶されたプログラムを、プロセッサ700が実行することにより実現可能である。
【0053】
記憶装置702は、例えばRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。RAMは、プロセッサ700によって実行されるプログラムのプログラムコードや、プログラムの実行時に必要となるデータを一時的に記憶する。
【0054】
記憶装置702は、他にも、例えばハードディスクドライブ(HDD)やフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶媒体である。記憶装置702は、オペレーティングシステムや、上記各構成を実現するための各種プログラムを記憶する。当該各種プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。この他、記憶装置702は、各種情報を登録するテーブルと、当該テーブルを管理するDBを記憶することも可能である。このようなプログラムやデータは、必要に応じて記憶装置702にロードされることにより、プロセッサ700から参照される。
【0055】
入力I/F704は、ユーザからの入力を受け付けるためのデバイスである。入力I/F704の具体例としては、カメラ、ボタン、マイク、キーボード、マウス、タッチパネル、各種センサ、ウェアラブル・デバイスなどが挙げられる。入力I/F704は、例えばUSB(Universal Serial Bus)などのインタフェースを介してコンピュータ70に接続されてもよい。
【0056】
データI/F706は、コンピュータ70の外部からデータを入力するためのデバイスである。データI/F706の具体例としては、各種記憶媒体に記憶されているデータを読み取るためのドライブ装置などがある。データI/F706は、コンピュータ70の外部に設けられることも考えられる。その場合、データI/F706は、例えばUSBなどのインタフェースを介してコンピュータ70へと接続される。
【0057】
通信I/F708は、コンピュータ70の外部の装置と有線または無線により、通信ネットワーク5を介したデータ通信を行うためのデバイスである。通信I/F708は、コンピュータ70の外部に設けられることも考えられる。その場合、通信I/F708は、例えばUSBなどのインタフェースを介してコンピュータ70に接続される。
【0058】
表示装置710は、各種情報を表示するためのデバイスである。表示装置710の具体例としては、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、ウェアラブル・デバイスのディスプレイなどが挙げられる。表示装置710は、コンピュータ70の外部に設けられてもよい。その場合、表示装置710は、例えばディスプレイケーブルなどを介してコンピュータ70に接続される。また、入力I/F704としてタッチパネルが採用される場合には、表示装置710は、入力I/F704と一体化して構成することが可能である。
【0059】
また、上記実施形態で記載されたサーバ装置10、患者端末20A,20B、および家族端末30A,30Bが備える構成要素は、記憶装置702に格納されたプログラムがプロセッサ700によって実行されることで、定められた処理が他のハードウェアと協働して実現されるものとする。また、言い換えれば、これらの構成要素は、ソフトウェアまたはファームウェアとしても、それと対応するハードウェアとしても想定され、その双方の概念において、「機能」、「手段」、「部」、「処理回路」、「ユニット」、または「モジュール」などとも記載され、またそれぞれに読み替えることができる。
【0060】
なお、本発明の実施形態は、以下の付記のようにも記載することができる。
(付記1)
コンピュータを、
患者およびその家族の少なくとも一方が端末を介して入力した、患者および家族の少なくとも一方に関する情報に基づいて、各々の家族の特徴を示す情報を生成する家族特徴生成手段と、
各々の家族の特徴を示す情報を家族間で比較することにより、家族間の類似度を計算する類似度計算手段と、
前記家族間の類似度に基づいて、家族に対して境遇が類似する他の家族を決定し、前記端末に当該他の家族の情報を提示する表示情報生成手段として機能させる同病家族レコメンドプログラム。
【0061】
(付記2)
前記家族特徴生成手段は、
前記家族の特徴を示す情報として、患者が入力した情報と家族が入力した情報に基づいて、患者と家族の関係性を示す情報を生成する、付記1に記載の同病家族レコメンドプログラム。
【0062】
(付記3)
前記家族特徴生成手段は、
前記患者と家族の関係性を示す情報として、治療において優先する項目の一致度を示す情報を生成する、付記2に記載の同病家族レコメンドプログラム。
【0063】
(付記4)
前記表示情報生成手段は、
前記家族間の類似度が高い順に、他の家族の情報を提示する、付記1から3のいずれか1項に記載の同病家族レコメンドプログラム。
【0064】
(付記5)
前記類似度計算手段は、
前記家族間の類似度を計算する際、家族の特徴を示す複数の項目に対して患者またはその家族が指定した重みづけを反映して前記家族間の類似度を計算する、付記1から4のいずれか1項に記載の同病家族レコメンドプログラム。
【0065】
(付記6)
患者およびその家族の少なくとも一方が端末を介して入力した、患者および家族の少なくとも一方に関する情報に基づいて、各々の家族の特徴を示す情報を生成する家族特徴生成手段と、
各々の家族の特徴を示す情報を家族間で比較することにより、家族間の類似度を計算する類似度計算手段と、
前記家族間の類似度に基づいて、家族に対して境遇が類似する他の家族を決定し、前記端末に当該他の家族の情報を表示する表示情報生成手段とを備えた同病家族レコメンド装置。
【0066】
(付記7)
コンピュータが、患者およびその家族の少なくとも一方が端末を介して入力した、患者および家族の少なくとも一方に関する情報に基づいて、各々の家族の特徴を示す情報を生成する工程と、
コンピュータが、各々の家族の特徴を示す情報を家族間で比較することにより、家族間の類似度を計算する工程と、
コンピュータが、前記家族間の類似度に基づいて、家族に対して境遇が類似する他の家族を決定し、前記端末に当該他の家族の情報を表示する工程とを有する同病家族レコメンド方法。
【符号の説明】
【0067】
1…同病家族レコメンドシステム
10…サーバ装置
11…制御部
12…記憶部
13…通信インタフェース
20A,20B…患者端末
30A,30B…家族端末
70…コンピュータ
101…家族特徴生成手段
102…類似度計算手段
103…表示情報生成手段
104…患者家族データベース
700…プロセッサ
702…記憶装置
704…入力I/F
706…データI/F
708…通信I/F
710…表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6