(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004390
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】X線画像診断システム、X線画像診断方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20250107BHJP
A61B 6/40 20240101ALI20250107BHJP
【FI】
A61B6/03 350Z
A61B6/03 320H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104052
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 祥大
(72)【発明者】
【氏名】山崎 敬之
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA01
4C093EB10
4C093EB22
4C093FE30
(57)【要約】
【課題】検出素子におけるX線の実際の被照射領域および正確な被照射位置を把握することで、X線画像の画質を向上させることである。
【解決手段】実施形態のX線画像診断システムは、入射するX線に応じた信号を出力する複数の検出素子と、複数の検出素子のX線が入射する第1の面側において少なくともチャネル方向に配列された複数の散乱線除去板とを、第1の面に対して略法線方向から撮像した画像を取得する取得部と、画像に基づいて、複数の検出素子の各々の被照射領域に関するデータを生成する生成部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射するX線に応じた信号を出力する複数の検出素子と、前記複数の検出素子の前記X線が入射する第1の面側において少なくともチャネル方向に配列された複数の散乱線除去板とを、前記第1の面に対して略法線方向から撮像した画像を取得する取得部と、
前記画像に基づいて、前記複数の検出素子の各々の被照射領域に関するデータを生成する生成部と、
を備えるX線画像診断システム。
【請求項2】
前記生成部は、前記画像に含まれる前記複数の検出素子の領域の内、前記複数の検出素子の各々の実際の被照射領域の重心位置を被照射位置とした前記データを生成する、
請求項1に記載のX線画像診断システム。
【請求項3】
前記複数の散乱線除去板は、前記チャネル方向に沿って、隣接する散乱線除去板の間に、前記複数の検出素子の内の2個以上が設けられるような間隔で並列される、
請求項1に記載のX線画像診断システム。
【請求項4】
前記複数の検出素子と、
前記複数の散乱線除去板と、
前記複数の検出素子の各々により出力される信号を収集する収集部と、
前記信号と前記データとに基づいて、再構成画像を生成する再構成部と、
を更に備える、
請求項1に記載のX線画像診断システム。
【請求項5】
前記再構成部は、前記データに含まれる前記複数の検出素子の各々の実際の被照射領域の重心位置を被照射位置として、前記再構成画像を生成する、
請求項4に記載のX線画像診断システム。
【請求項6】
前記取得部は、前記第1の面側に設けられた光源から照射され、前記複数の検出素子の各々と対応する電極および前記複数の散乱線除去板により反射された赤外光に応じた出力データに基づく赤外光画像を取得し、
前記生成部は、前記赤外光画像に基づいて、前記データを生成する、
請求項1に記載のX線画像診断システム。
【請求項7】
前記取得部は、前記第1の面側に設けられたX線管から照射され、前記複数の検出素子の隔壁を透過したX線に応じた出力データに基づく透過画像を取得し、
前記生成部は、前記透過画像に基づいて、前記データを生成する、
請求項1に記載のX線画像診断システム。
【請求項8】
前記生成部は、前記透過画像において影となっている領域の内、前記散乱線除去板に対応する領域を除外することで、前記データを生成する、
請求項7に記載のX線画像診断システム。
【請求項9】
コンピュータが、
入射するX線に応じた信号を出力する複数の検出素子と、前記複数の検出素子の前記X線が入射する第1の面側において少なくともチャネル方向に配列された複数の散乱線除去板とを、前記第1の面に対して略法線方向から撮像した画像を取得し、
前記画像に基づいて、前記複数の検出素子の各々の被照射領域に関するデータを生成する、
X線画像診断方法。
【請求項10】
コンピュータに、
入射するX線に応じた信号を出力する複数の検出素子と、前記複数の検出素子の前記X線が入射する第1の面側において少なくともチャネル方向に配列された複数の散乱線除去板とを、前記第1の面に対して略法線方向から撮像した画像を取得させ、
前記画像に基づいて、前記複数の検出素子の各々の被照射領域に関するデータを生成させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線画像診断システム、X線画像診断方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(Computed Tomography)装置では、X線検出器内に面状に配置された検出素子のうち、X線が照射された範囲の重心位置にX線束に依存する信号を逆投影することでX線画像が再構成される。フォトンカウンティングCT(Photon Counting Computed Tomography)装置等に利用される直接変換型のX線検出器においては、電極のエッチングパターンの微細化により、検出素子を従来の間接変換型のX線検出器よりも遥かに微細化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
X線検出器において利用されるASG(Anti-Scatter-Grid)等の散乱線除去板は、製造技術等が制約となり、エッチングにより生成される電極のパターンほどの微細化の実現には至っていない。このため、散乱線除去板と電極(検出素子)との位置関係にずれが生じてしまう可能性があり、再構成されるX線画像の画質に問題が生じてしまう場合があった。特に、散乱線除去板の1グリッドに複数の検出素子が配置される構成の場合には、この位置ずれによる影響が大きくなる。また、従来の手法では、被照射位置は散乱線除去板を基準として等間隔で一意的に定義されていたが、1グリッドに複数の検出素子が配置される場合、実際の被照射位置は等間隔になっておらず、再構成されるX線画像の画質に問題が生じてしまう場合があった。
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、検出素子におけるX線の実際の被照射領域および正確な被照射位置を把握することで、X線画像の画質を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のX線画像診断システムは、入射するX線に応じた信号を出力する複数の検出素子と、複数の検出素子のX線が入射する第1の面側において少なくともチャネル方向に配列された複数の散乱線除去板とを、第1の面に対して略法線方向から撮像した画像を取得する取得部と、画像に基づいて、複数の検出素子の各々の被照射領域に関するデータを生成する生成部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示す図。
【
図2A】従来技術に係るX線検出器におけるASGの1グリッドに対して1つの検出素子が配置される場合のX線の被照射領域の重心位置を説明する図。
【
図2B】第1の実施形態に係るX線検出器におけるASGの1グリッドに対して複数の検出素子が配置される場合のX線の被照射領域の重心位置を説明する図。
【
図3】第1の実施形態に係る赤外光(反射光)を用いて検出素子の被照射領域に関するデータが取得される構成を説明する図。
【
図4】第1の実施形態において赤外光(反射光)に基づいて生成された検出素子画像の一例を示す図。
【
図5】第1の実施形態に係るX線CT装置における検出素子の重心位置の算出処理の一例を示すフローチャート。
【
図6】第1の実施形態に係るX線CT装置におけるCT画像の再構成処理の一例を示すフローチャート。
【
図7】第1の実施形態において赤外光(反射光)に基づいて生成された検出素子画像の他の例を示す図。
【
図8】第2の実施形態に係るX線の透過光を用いて検出素子の被照射領域に関するデータが取得される構成を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態のX線画像診断システム、X線画像診断方法、およびプログラムについて説明する。
【0009】
<第1の実施形態>
第1の実施形態のX線画像診断システムは、被検体を通過したX線をX線検出器により検出して被検体内のX線画像を生成するX線診断装置を備える。X線画像診断システムでは、X線検出器に含まれる検出素子ごとに、X線が実際に照射される範囲(被照射領域)を正確に把握し、この範囲の重心位置に基づいて投影処理を行うことで、生成されるX線画像の画質を向上させることができる。X線診断装置には、例えば、X線CT装置、平面検出器(FPD:flat panel detector)を用いるX線診断装置等が含まれる。X線CT装置には、例えば、直接変換型のX線検出器を用いるフォトンカウンティングCT装置、間接変換型のX線検出器を用いるX線CT装置等が含まれる。以下においては、X線CT装置(フォトンカウンティングCT装置)を例に挙げて説明する。
【0010】
[X線CT装置の構成]
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置1(フォトンカウンティングCT装置)の構成の一例を示す図である。X線CT装置1は、例えば、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。
図1では、説明の都合上、架台装置10をZ軸方向から見た図とX軸方向から見た図の双方を掲載しているが、実際には、架台装置10は一つである。第1の実施形態では、非チルト状態での回転フレーム17の回転軸または寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して水平である軸をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して垂直である方向をY軸方向とそれぞれ定義する。
【0011】
架台装置10は、例えば、X線管11と、ウェッジ12と、コリメータ13と、X線高電圧装置14と、X線検出器15と、データ収集システム(以下、DAS:Data Acquisition System)16と、回転フレーム17と、制御装置18と、カメラ20とを有する。
【0012】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生させる。X線管11は、真空管を含む。例えば、X線管11は、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管である。
【0013】
ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量を調節するためのフィルタである。ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量の分布が予め定められた分布になるように、自身を透過するX線を減衰させる。ウェッジ12は、ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。ウェッジ12は、例えば、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したものである。
【0014】
コリメータ13は、ウェッジ12を透過したX線の照射範囲を絞り込むための機構である。コリメータ13は、例えば、複数の鉛板の組み合わせによってスリットを形成することで、X線の照射範囲を絞り込む。コリメータ13は、X線絞りと呼ばれる場合もある。コリメータ13の絞り込み範囲は、機械的に駆動可能であってよい。
【0015】
X線高電圧装置14は、例えば、図示しない高電圧発生装置と、図示しないX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)および整流器等を含む電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生させる。X線制御装置は、X線管11に発生させるべきX線量に応じて高電圧発生装置の出力電圧を制御する。高電圧発生装置は、上述した変圧器によって昇圧を行うものであってもよいし、インバータによって昇圧を行うものであってもよい。X線高電圧装置14は、回転フレーム17に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(不図示)の側に設けられてもよい。
【0016】
X線検出器15は、X線管11が発生させ、被検体Pを通過して入射したX線の強度を検出する。X線検出器15は、検出したX線の強度に応じた電気信号(光信号等でもよい)をDAS16に出力する。X線検出器15は、例えば、複数の検出素子列を有する。複数の検出素子列のそれぞれは、X線管11の焦点を中心とした円弧に沿ってチャネル方向に複数の検出素子が配列されたものである。複数の検出素子列は、スライス方向(列方向、row方向)に配列される。
【0017】
X線検出器15は、例えば、直接検出型の検出器である。X線検出器15としては、例えば、半導体の両端に電極が取り付けられた半導体ダイオードが適用可能である。半導体に入射したX線光子は、電子・正孔対に変換される。1つのX線光子の入射により生成される電子・正孔対の数は、入射したX線光子のエネルギーに依存する。電子と正孔とは、半導体の両端に形成された一対の電極に各々引き寄せられる。一対の電極は、電子・正孔対の電荷に応じた波高値を有する電気パルスを発生する。一個の電気パルスは、入射したX線光子のエネルギーに応じた波高値を有する。
【0018】
図2Aは、従来技術に係るX線検出器におけるASGの1グリッドに対して1つの検出素子が配置される場合のX線の被照射領域(受光領域)の重心位置を説明する図である。X線CT装置1では、検出素子のうち、X線が照射する範囲の重心位置にX線束に依存する信号を逆投影することでCT画像が再構成される。
図2Aには、間接変換型のX線検出器15Aが示されている。このX線検出器15Aには、チャネル方向(
図2AのX軸方向)に複数の検出素子151が配列されており、ASG153の1グリッドに相当する隣接するASG153-1とASG153-2との間に、1つの検出素子151が配置される。このような1グリッド-1検出素子の構成では、隣接するASG153-1とASG153-2との間がX線の被照射領域となり、両者間の重心位置が被照射位置PP(投影位置)と定義される。この1グリッド-1検出素子の構成において、ASG153に対する検出素子151の位置ずれが発生した場合を想定する。この例では、実線が設計上の検出素子151の想定位置を示し、点線が位置ずれが生じた検出素子151の実際の位置を示し、位置ずれ量がmである。この場合、ASG153-1とASG153-2との間の重心位置が被照射位置PPと定義されているため、仮に位置ずれが生じた場合であっても、検出素子151間の隔壁がASG153の影に隠れる限りは(
図2AのY軸方向において、ASG153の下部に隔壁が位置する限りは)被照射位置には影響が生じない。
【0019】
一方、
図2Bは、第1の実施形態に係るX線検出器におけるASGの1グリッドに対して複数の検出素子が配置される場合のX線の被照射領域の重心位置を説明する図である。
図2Bには、直接変換型のX線検出器15Bが示されている。このX線検出器15Bには、チャネル方向(
図2BのX軸方向)に複数の検出素子151が配列されており、ASG153の1グリッドに相当する隣接するASG153-1とASG153-2との間に、複数の検出素子151(検出素子151-1~151-3)が配置される。このような1グリッド-複数検出素子の構成では、隣接するASG153-1とASG153-2との間がX線の被照射領域となる。尚、スライス方向(
図2BのZ軸方向)にも同様に複数の検出素子151が配列されている。すなわち、複数のASG153(散乱線除去板)は、チャネル方向に沿って、隣接するASG153(散乱線除去板)の間に、複数の検出素子151の内の2個以上が設けられるような間隔で並列される。
【0020】
このような1グリッド-複数検出素子の構成において、ASG153-1に近い検出素子151-1については、ASG153-1の右端と、設計上の検出素子151-1の右端との間の重心位置が、設計上の被照射位置PP-1dと定義される。ASG153-1の右端および設計上の検出素子151-1の右端の各々から、被照射位置PP-1dまでのX軸に沿った距離はいずれも距離D-1dである。中央の検出素子151-2については、設計上の検出素子151-2の左端と右端との間の重心位置が設計上の被照射位置PP-2dと定義される。設計上の検出素子151-2の左端および右端の各々から、被照射位置PP-2dまでのX軸に沿った距離はいずれも距離D-2dである。ASG153-2に近い検出素子151-3については、設計上の検出素子151-3の左端と、ASG153-2の左端との間の重心位置が設計上の被照射位置PP-3dと定義される。設計上の検出素子151-3の左端およびASG153-2の左端の各々から、被照射位置PP-3dまでのX軸に沿った距離はいずれも距離D-3dである。
【0021】
このような1グリッド-複数検出素子の構成において、ASG153に対する検出素子151の位置ずれが発生した場合を想定する。この例では、実線は設計上の検出素子151の想定位置を示し、点線はチャネル方向(
図2BのX軸方向)に位置ずれが生じた検出素子151の実際の位置を示し、位置ずれ量はmである。この構成において位置ずれが発生した場合、被照射位置に影響が生じる。すなわち、検出素子151-1については、設計上の被照射位置PP-1dであるが、実際の被照射位置PP-1rは、ASG153-1の右端と、位置ずれが生じた実際の検出素子151-1の右端との間の重心位置となる。ASG153-1の右端および実際の検出素子151-1の右端の各々から、被照射位置PP-1rまでのX軸に沿った距離はいずれも距離D-1rである。また、検出素子151-2については、設計上の被照射位置PP-2dであるが、実際の被照射位置PP-2rは、位置ずれが生じた実際の検出素子151-2の左端と右端との間の重心位置となる。実際の検出素子151-2の左端および右端の各々から、被照射位置PP-2rまでのX軸に沿った距離はいずれも距離D-2rである。また、検出素子151-3については、設計上の被照射位置PP-3dであるが、実際の被照射位置PP-3rは、位置ずれが生じた実際の検出素子151-3の左端と、ASG153-2の左端との間の重心位置となる。実際の検出素子151-3の左端およびASG153-2の左端の各々から、被照射位置PP-3rまでのX軸に沿った距離はいずれも距離D-3rである。
【0022】
尚、上記において説明したような検出素子151の位置ずれは、スライス方向(
図2BのZ軸方向)に配置された検出素子151においても同様に発生し、被照射位置に影響が生じる。すなわち、設計上の被照射位置と、実際の被照射位置との間にずれが生じうる。
【0023】
本実施形態のX線画像診断システムでは、1グリッド-複数検出素子の構成において、検出素子151に上記のような位置ずれが生じてしまった場合であっても、X線を受光する領域の重心位置を正確に把握し、重心位置に基づいて投影処理を行うことで、生成されるCT画像の画質を向上させることができる。尚、本実施形態は、Sparse Channel Gridにも適用可能である。これにより、X線検出器の構造の簡素化やコストダウンを実現することができる。
【0024】
図1に戻り、DAS16は、例えば、制御装置18からの制御信号に従って、X線検出器15により検出されたX線光子のカウント数を示すカウントデータ(計数データ)を複数のエネルギービンについて収集する。複数のエネルギービンに関する計数データは、X線検出器15の応答特性に応じて変形された、X線検出器15への入射X線に関するエネルギースペクトラムに対応する。DAS16は、デジタル信号に基づく検出データをコンソール装置40に出力する。検出データは、生成元の検出素子のチャンネル番号、列番号、及び収集されたビューを示すビュー番号により識別された計数データのデジタル値である。ビュー番号は、回転フレーム17の回転に応じて変化する番号であり、例えば、回転フレーム17の回転に応じてインクリメントされる番号である。従って、ビュー番号は、X線管11の回転角度を示す情報である。ビュー期間とは、あるビュー番号に対応する回転角度から、次のビュー番号に対応する回転角度に到達するまでの間に収まる期間である。DAS16は、複数の検出素子151の各々により出力される信号を収集する。DAS16は、「収集部」の一例である。
【0025】
DAS16は、ビューの切り替わりを、制御装置18から入力されるタイミング信号によって検知してもよいし、内部のタイマーによって検知してもよいし、図示しないセンサから取得される信号によって検知してもよい。フルスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、全周囲分(360度分)の検出データ群を収集する。ハーフスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、半周囲分(180度分)の検出データを収集する。
【0026】
回転フレーム17は、X線管11、ウェッジ12、およびコリメータ13と、X線検出器15とを対向支持する円環状の部材である。回転フレーム17は、固定フレームによって、内部に導入された被検体Pを中心として回転自在に支持される。回転フレーム17は、更にDAS16を支持する。DAS16が出力する検出データは、回転フレーム17に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば固定フレーム)に設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、受信機によってコンソール装置40に転送される。尚、回転フレーム17から非回転部分への検出データの送信方法として、前述の光通信を用いた方法に限らず、非接触型の任意の送信方法を採用してよい。回転フレーム17は、X線管11等を支持して回転させることができるものであれば、円環状の部材に限らず、アームのような部材であってもよい。
【0027】
制御装置18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する処理回路を有する。制御装置18は、コンソール装置40または架台装置10に取り付けられた入力インターフェースからの入力信号を受け付けて、架台装置10、寝台装置30、DAS16、カメラ20の動作を制御する。例えば、制御装置18は、回転フレーム17を回転させたり、架台装置10をチルトさせたりする。架台装置10をチルトさせる場合、制御装置18は、入力インターフェースに入力された傾斜角度(チルト角度)に基づいて、Z軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム17を回転させる。制御装置18は、図示しないセンサの出力等によって回転フレーム17の回転角度を把握している。制御装置18は、架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0028】
X線CT装置1は、例えば、X線管11とX線検出器15の双方が回転フレーム17によって支持されて被検体Pの周囲を回転するRotate/Rotate-TypeのX線CT装置(第3世代CT)であるが、これに限らず、円環状に配列された複数の検出素子が固定フレームに固定され、X線管11が被検体Pの周囲を回転するStationary/Rotate-TypeのX線CT装置(第4世代CT)であってもよい。
【0029】
カメラ20は、X線検出器15に含まれる各検出素子を撮像する。カメラ20は、例えば、赤外カメラである。カメラ20は、検出素子に対して赤外光を照射し、その反射光(検出素子の下部に設けられた電極およびASG153によって反射された反射光)を検出して電気信号に変換する。カメラ20は、X線検出器15の内部等の検出素子を撮像可能な任意の位置に設けられる。例えば、カメラ20は、X線CT装置1による撮影が行われていないタイミングに、第1の面に対して略法線方向の位置からX線検出器15の内部等の検出素子を撮像する。尚、カメラ20は、X線CT装置1に対して脱着可能なものであってもよい。例えば、カメラ20の不使用時は、寝台装置30に取り付けて保管されるようにしてもよい。
【0030】
図3は、第1の実施形態に係る検出素子により反射された赤外光(反射光)が取得される様子を説明する図である。
図3に示すように、X線検出器15Cには、チャネル方向(
図3のX軸方向)に沿って複数の検出素子151が配列される。また、この検出素子151の列の第1の面側(X線照射側)に、同じくASG153が、チャネル方向(
図3のX軸方向)に沿って配列される。X線検出器15Cは、1グリッド-複数検出素子の構成を有する。各検出素子151の第1の面に対向する第2の面側には、陽極155が配置される。カメラ20は、この第1の面側に設けられて、検出素子151の第1の面に対して赤外光を照射する。一般的に、検出素子151に用いられるテルル化カドミウム(CdTe)、CZT(CdZnTe)、シリコン(Silicon)等の素材は、赤外光を透過する。一方、ASG153に用いられるタングステン(W)、モリブデン(Mo)等の素材、および陽極155に用いられる金(Au)、白金(Pt)等の素材は、赤外光を透過せず、反射する。このため、カメラ20により照射された赤外光の反射光では、陽極155およびASG153の像が撮像される。ASG153は赤外光に対して影になるため、陽極155による反射光を用いることで、各陽極155と対をなす検出素子151(X線の照射野と同じ領域)を撮像することができる。尚、検出素子151が体軸方向(列方向、
図3のZ軸方向)に延びて配列されている場合は、カメラ20(光源およびセンサ)を体軸方向に伸ばして赤外線カメラの画像を撮像する。
【0031】
図4は、第1の実施形態において赤外光(反射光)に基づいて生成された検出素子画像の一例を示す図である。
図4に示すように、検出素子画像には、チャネル方向(
図4のX軸方向)およびスライス方向(
図4のZ軸方向)に配置された複数の検出素子151(151-1~151-9)の各々の実際のX線の照射範囲が表される。この検出素子画像を用いて、検出素子151の各々の実際のX線照射範囲の重心Cを求めることが可能となる。
【0032】
図1に戻り、寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置して移動させ、架台装置10の回転フレーム17の内部に導入する装置である。寝台装置30は、例えば、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備える。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する筐体を含む。寝台駆動装置32は、モータやアクチュエータを含む。寝台駆動装置32は、天板33を、支持フレーム34に沿って天板33の長手方向(Z軸方向)に移動させる。また、寝台駆動装置32は、天板33を鉛直方向(Y軸方向)に移動させる。天板33は、被検体Pが載置される板状の部材である。
【0033】
寝台駆動装置32は、天板33だけでなく、支持フレーム34を天板33の長手方向に移動させてもよい。また、上記とは逆に、架台装置10がZ軸方向に移動可能であり、架台装置10の移動によって回転フレーム17が被検体Pの周囲に来るように制御されてもよい。また、架台装置10と天板33の双方が移動可能な構成であってもよい。また、X線CT装置1は、被検体Pが立位または座位でスキャンされる方式の装置であってもよい。この場合、X線CT装置1は、寝台装置30に代えて被検体支持機構を有し、架台装置10は、回転フレーム17を、床面に垂直な軸方向を中心に回転させる。
【0034】
コンソール装置40は、例えば、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、ネットワーク接続回路44と、処理回路50とを有する。本実施形態では、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40の各構成要素の一部または全部が含まれてもよい。
【0035】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、設計データDD、重心データCD(補正パラメータ)、検出データや投影データ、再構成画像データ、被検体Pに関する情報、撮影条件等を記憶する。これらのデータは、メモリ41ではなく(或いはメモリ41に加えて)、X線CT装置1が通信可能な外部メモリに記憶されてもよい。外部メモリは、例えば、外部メモリを管理するクラウドサーバが読み書きの要求を受け付けることで、クラウドサーバによって制御されるものである。
【0036】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路によって生成された医用画像(CT画像)や、医師、技師等である操作者による各種操作を受け付けるGUI(Graphical User Interface)画像等を表示する。ディスプレイ42は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)であってもよい。
【0037】
入力インターフェース43は、操作者による各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作の内容を示す電気信号を処理回路50に出力する。例えば、入力インターフェース43は、検出データまたは投影データを収集する際の収集条件、CT画像を再構成する際の再構成条件等の入力操作を受け付ける。例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、タッチパネル、ドラッグボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、カメラ、赤外線センサ、マイク等により実現される。
【0038】
入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)により実現されてもよい。尚、本明細書において入力インターフェースはマウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0039】
ネットワーク接続回路44は、例えば、プリント回路基板を有するネットワークカード、或いは無線通信モジュール等を含む。ネットワーク接続回路44は、接続する対象のネットワークの形態に応じた情報通信用プロトコルを実装する。
【0040】
処理回路50は、X線CT装置1の全体の動作や、架台装置10の動作、寝台装置30の動作、カメラ20の動作等を制御する。処理回路50は、例えば、システム制御機能51、前処理機能52、再構成機能53、画像処理機能54、取得機能55、スキャン制御機能56、生成機能57、表示制御機能58等を実行する。これらの構成要素は、例えば、ハードウェアプロセッサ(コンピュータ)がメモリ41に格納されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))等の回路(circuitry)を意味する。
【0041】
メモリ41にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0042】
コンソール装置40または処理回路50が有する各構成要素は、分散化されて複数のハードウェアにより実現されてもよい。処理回路50は、コンソール装置40が有する構成ではなく、コンソール装置40と通信可能な処理装置によって実現されてもよい。処理装置は、例えば、一つのX線CT装置と接続されたワークステーション、或いは、複数のX線CT装置に接続され、以下に説明する処理回路50と同等の処理を一括して実行する装置(例えばクラウドサーバ)である。
【0043】
システム制御機能51は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、処理回路50の各種機能を制御する。
【0044】
前処理機能52は、DAS16により出力された検出データに対してオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を行う。
【0045】
再構成機能53は、検出データ(信号)と被照射領域に関するデータとに基づいて、被検体Pに関する再構成画像(CT画像)を生成する。再構成機能53は、例えば、補正機能531を有する。補正機能531は、生成機能57により生成された検出素子の各々の被照射領域に関するデータに基づいて、検出データの被照射位置を補正する。再構成機能53は、「再構成部」の一例である。再構成機能53は、被照射領域に関するデータに含まれる複数の検出素子151の各々の実際の被照射領域の重心位置を被照射位置として、再構成画像を生成する。
【0046】
画像処理機能54は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、CT画像データを公知の方法により、三次元画像データや任意断面のCT画像データに変換する。三次元画像データへの変換は、前処理機能52によって行われてもよい。
【0047】
取得機能55は、入射するX線に応じた信号を出力する複数の検出素子151と、複数の検出素子151のX線が入射する第1の面側において少なくともチャネル方向に配列された複数のASG153(散乱線除去板)とを、第1の面に対して略法線方向から撮像した画像(検出素子画像)を取得する。取得機能55は、カメラ20から送信された反射光データに基づいて生成された検出素子画像を取得する。取得機能55は、例えば、画像生成機能551を備える。画像生成機能551は、反射光データに基づいて、検出素子画像を生成する。取得機能55は、「取得部」の一例である。
【0048】
スキャン制御機能56は、X線高電圧装置14、DAS16、制御装置18、および寝台駆動装置32に指示することで、架台装置10における検出データの収集処理を制御する。スキャン制御機能56は、モニタリングスキャンおよび本スキャンのための制御を行う。また、スキャン制御機能56は、位置決め画像を収集する撮影、および診断に用いる画像を撮影する際の各部の動作をそれぞれ制御する。
【0049】
生成機能57は、取得機能55により取得された検出素子画像に基づいて、複数の検出素子の各々の被照射領域に関するデータ(重心データ)を生成する。生成機能57は、検出素子画像に含まれる複数の検出素子の領域の内、複数の検出素子の各々の実際の被照射領域の重心位置の情報を被照射位置としたデータを生成する。生成機能57は、「生成部」の一例である。すなわち、取得機能55は、第1の面側に設けられた光源から照射され、複数の検出素子の各々と対応する電極および複数の散乱線除去板により反射された赤外光に応じた出力データに基づく赤外光画像を取得し、生成機能57は、赤外光画像に基づいて、被照射領域に関するデータを生成する。
【0050】
表示制御機能58は、処理回路によって生成されたCT画像や、医師、技師等である操作者による各種操作を受け付けるGUI画像、検出素子画像、被照射領域に関するデータを示す画像等を、ディスプレイ42に表示させる。
【0051】
上記構成により、X線CT装置1は、ヘリカルスキャン、コンベンショナルスキャン、ステップアンドシュート等のスキャン態様で被検体Pのスキャンを行う。ヘリカルスキャンとは、天板33を移動させながら回転フレーム17を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンする態様である。コンベンショナルスキャンとは、天板33を静止させた状態で回転フレーム17を回転させて被検体Pを円軌道でスキャンする態様である。ステップアンドシュートとは、天板33の位置を一定間隔で移動させて、コンベンショナルスキャンを複数のスキャンエリアで行う態様である。
【0052】
[処理フロー]
<重心データの算出処理>
次に、重心データの算出処理の一例を説明する。
図5は、第1の実施形態に係るX線CT装置における検出素子の重心データの算出処理の一例を示すフローチャートである。
図5に示す処理は、例えば、X線CT装置1の操作者が、装置メンテナンス時(X線検出器の組み立て時または交換時)等に、入力インターフェース43を介して、重心データの算出処理の開始の指示を行った場合に開始される。
【0053】
まず、取得機能55は、赤外光照射信号をカメラ20に送信し、カメラ20に赤外光を検出素子151に対して照射させる(ステップS101)。赤外光は、検出素子151を透過し、当該検出素子151と対をなす陽極155により反射されてカメラ20により検出される。
【0054】
次に、画像生成機能551は、カメラ20により検出された反射光データに基づいて、撮像処理を行う(ステップS103)。これにより、検出素子151の各々の実際の被照射領域を示す検出素子画像が生成される。
【0055】
次に、生成機能57は、生成された検出素子画像に対して画像解析を行うことで、検出素子151の各々の照射領域の重心位置(座標)を算出する(ステップS105)。次に、生成機能は、算出した検出素子151の各々の照射領域の重心位置のデータをまとめた重心データCDを生成し、メモリ41に保管する(ステップS107)。以上により、本フローチャートの処理が完了する。
【0056】
<再構成処理>
次に、再構成処理の一例を説明する。
図6は、第1の実施形態に係るX線CT装置におけるCT画像の再構成処理の一例を示すフローチャートである。
図6に示す処理は、例えば、X線CT装置1の操作者が、被検体Pの撮像処理の開始の指示を行った場合に開始される。
【0057】
まず、再構成機能53は、被検体Pに対してX線を照射することによりDAS16により収集された検出データを取得する(ステップS201)。
【0058】
次に、補正機能531は、重心データCDに含まれる検出素子151の各々の重心位置のデータを用いて、設計データDDにおいて予め定義されていた重心位置を補正する(ステップS203)。
【0059】
次に、再構成機能53は、補正された重心位置のデータに基づいて、被検体PのCT画像の再構成を行う(ステップS205)。再構成されたCT画像は、例えば、ディスプレイ42に表示され、操作者はCT画像の確認を行うことができる。以上により、本フローチャートの処理が完了する。
【0060】
以上説明した第1の実施形態によれば、検出素子におけるX線の被照射領域(実際の照射範囲)および正確な被照射位置を把握することで、X線画像の画質を向上させることができる。被照射位置を正確に把握することができるため、X線診断装置の空間分解能を向上させることができる。また、X線画像のアーチファクトを低減させることもできる。
【0061】
尚、上記においては、1つのグリッドが4つのASG153により囲まれた構成を例に挙げて説明したが、本実施形態はこれに限られない。本実施形態は、
図7に示すような1次元方向(例えば、
図7のZ軸方向)のみにASG153が配列されるような構成にも適用可能である。
【0062】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と比較して、第2の実施形態は間接変換型のX線検出器を対象とし、X線の透過光を用いて検出素子の被照射領域に関するデータを取得する点が異なる。以下、第1の実施形態との相違点を中心として、第2の実施形態のX線CT装置1について説明する。
【0063】
図8は、第2の実施形態に係るX線の透過光を用いて検出素子の被照射領域に関するデータが取得される構成を説明する図である。
図8に示すように、X線検出器15Dには、チャネル方向(
図8のX軸方向)に沿って複数の検出素子151が配列される。また、この検出素子151の列の第1の面側(X線照射側)に、同じくASG153が、チャネル方向(
図8のX軸方向)に沿って配列される。X線検出器15Dは、1グリッド-複数検出素子の構成を有する。各検出素子151の間には、隔壁157が配置される。X線管11は、この第1の面側に設けられて、検出素子151の第1の面に対してX線を照射する。一般的に、間接変換型の検出素子151に用いられるシンチレータに含まれるGOS、LYSO、CWO,BGO等の素材は、X線に対して高吸収である。また、ASG153に用いられるタングステン(W)、モリブデン(Mo)等の素材もまた、X線に対して高吸収である。一方、隔壁157に用いられるエポキシ樹脂やアルミナ(Al
2O
3)等の素材はX線に対して低吸収である。
【0064】
X線管11により検出素子151の第1の面に対して照射されたX線は、検出素子151やASG153では吸収されるが、隔壁157では吸収されず透過する。このようなX線の透過光を透過X線検出器22により検出した検出データを用いて画像を生成すると、ASG153に隠れていない隔壁157の像が撮像される。この画像において、影となっている領域は、ASG153と、検出素子151の領域と対応する。そこで、画像生成機能551では、この画像における影となっている領域から、ASG153に相当する領域を除くことで、検出素子151の範囲、すなわち、各検出素子151のX線の被照射領域の検出素子画像を生成することができる。
【0065】
すなわち、取得機能55は、第1の面側に設けられたX線管11から照射され、複数の検出素子151の隔壁157を透過したX線に応じた出力データに基づく透過画像を取得し、生成機能57は、透過画像に基づいて、被照射領域に関するデータを生成する。生成機能57は、透過画像において影となっている領域の内、ASG153(散乱線除去板)に対応する領域を除外することで、被照射領域に関するデータを生成する。
【0066】
以上説明した第2の実施形態によれば、検出素子におけるX線の被照射領域(実際の被照射領域)および正確な被照射位置を把握することで、X線画像の画質を向上させることができる。被照射位置を正確に把握することができるため、X線診断装置の空間分解能を向上させることができる。また、X線画像のアーチファクトを低減させることもできる。
【0067】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1…X線CT装置,10…架台装置,11…X線管,12…ウェッジ,13…コリメータ,14…X線高電圧装置,15…X線検出器,16…データ収集システム(DAS),17…回転フレーム,18…制御装置,20…カメラ,22…透過X線検出器,30…寝台装置,31…基台,32…寝台駆動装置,33…天板,34…支持フレーム,40…コンソール装置,41…メモリ,42…ディスプレイ,43…入力インターフェース,44…ネットワーク接続回路,50…処理回路,51…システム制御機能,52…前処理機能,53…再構成機能,531…補正機能,54…画像処理機能,55…取得機能,551…画像生成機能,56…スキャン制御機能,57…生成機能,58…表示制御機能,151…検出素子,153…ASG(散乱線除去板),155…陽極,157…隔壁