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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025043963
(43)【公開日】2025-04-01
(54)【発明の名称】回転機械の軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20250325BHJP
   F04D 23/00 20060101ALI20250325BHJP
【FI】
F04D29/44 Q
F04D23/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023151587
(22)【出願日】2023-09-19
(71)【出願人】
【識別番号】000152170
【氏名又は名称】株式会社酉島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】澤村 和宏
(72)【発明者】
【氏名】羽野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】米村 建哉
(72)【発明者】
【氏名】岡 佑亮
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB12
3H130AB26
3H130AB50
3H130AC01
3H130BA33A
3H130BA33E
3H130BA53E
3H130CA06
3H130CA26
3H130EA06A
3H130EA07A
(57)【要約】
【課題】回転機械を冷却する冷却ファンを備える軸受装置の油漏れを簡素な構造で抑制する。
【解決手段】軸受装置20は、回転軸10を軸支する軸受本体22と、回転機械1のケーシング2に取り付けられた支持カバー30と、回転軸10の外側部11に固着された冷却ファン33と、冷却ファン33による送風によって挿通孔30cの周囲の圧力を上げるための昇圧部材38とを備える。昇圧部材38は、筒状であり、冷却ファン33のボス34のうち最も支持カバー30側に位置する先端部34cよりも径方向の外側に位置し、冷却ファン33の翼部35のうち最も径方向の外側に位置する端35cよりも径方向の内側に位置している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械のケーシングの端部の取付孔に取り付けられ、回転軸を軸支する軸受本体と、
前記回転軸を挿通する挿通孔を有し、前記ケーシングの端部に取り付けられて前記軸受本体を支持する支持カバーと、
前記支持カバーから外部に突出した前記回転軸の外側部に固着され、前記回転軸の回転によって前記ケーシングに送風する冷却ファンと、
前記支持カバー又は前記ケーシングから前記冷却ファンに向けて突出し、前記冷却ファンによる送風によって前記挿通孔の周囲の圧力を上げるための昇圧部材と
を備え、
前記冷却ファンは、ボスから径方向の外側へ放射状に突出した複数の翼部を有し、
前記昇圧部材は、筒状であり、前記ボスのうち最も前記支持カバー側に位置する先端部よりも前記径方向の外側に位置し、前記翼部のうち前記径方向の最も外側に位置する端部よりも前記径方向の内側に位置している、回転機械の軸受装置。
【請求項2】
前記ボスは、前記回転軸に固着され、前記支持カバーに近づくに従って前記回転軸の軸線に対して交差する方向である径方向の外側に傾斜した錐状である、請求項1に記載の回転機械の軸受装置。
【請求項3】
前記昇圧部材の先端は、前記ボスの前記先端部よりも前記外側部の外端側に位置している、請求項1又は2に記載の回転機械の軸受装置。
【請求項4】
前記昇圧部材は、前記支持カバー又は前記ケーシングとは別体であり、締結部材によって前記支持カバー又は前記ケーシングに締結されている、請求項1又は2に記載の回転機械の軸受装置。
【請求項5】
前記支持カバー又は前記ケーシングに取り付けられ、前記冷却ファン及び前記昇圧部材を取り囲む筒状のガイドカバーを備える、請求項1又は2に記載の回転機械の軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械の軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された回転電機は、冷却対象物(ハウジング内のモータ機構)を冷却するために、回転軸に取り付けられた冷却ファンを備える。この回転電機の軸受構造では、冷却ファンによる送風によってハウジングにおける回転軸の挿通部分が低圧になり、油漏れが生じ得る。特許文献1では、この油漏れを防止するために、回転軸に油切り及びラビリンスシールが配置され、これらがカバーによって覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-145500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の軸受構造では、油切り、ラビリンスシール、及びカバーにより、冷却ファンの送風によって回転軸の挿通部分が低圧になることを防ぎ、油漏れを抑制し得る。しかし、特許文献1の軸受構造による油漏れ対策は複雑であるため、簡素化について改善の余地がある。
【0005】
本発明は、回転機械を冷却する冷却ファンを備える軸受装置の油漏れを簡素な構造で抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、回転機械のケーシングの端部の取付孔に取り付けられ、回転軸を軸支する軸受本体と、前記回転軸を挿通する挿通孔を有し、前記ケーシングの端部に取り付けられて前記軸受本体を支持する支持カバーと、前記支持カバーから外部に突出した前記回転軸の外側部に固着され、前記回転軸の回転によって前記ケーシングに送風する冷却ファンと、前記支持カバー又は前記ケーシングから前記冷却ファンに向けて突出し、前記冷却ファンによる送風によって前記挿通孔の周囲の圧力を上げるための昇圧部材とを備え、前記冷却ファンは、ボスから径方向の外側へ放射状に突出した複数の翼部を有し、前記昇圧部材は、筒状であり、前記ボスのうち最も前記支持カバー側に位置する先端部よりも前記径方向の外側に位置し、前記翼部のうち前記径方向の最も外側に位置する端部よりも前記径方向の内側に位置している、回転機械の軸受装置を提供する。
【0007】
本態様の軸受装置の構造は、支持カバー又はケーシングに、冷却ファンに向けて突出する昇圧部材を設けただけの構成であるため、簡素である。一方で、昇圧部材は、筒状であり、ボスの先端部よりも径方向外側に位置し、翼部の端部よりも径方向内側に位置している。そのため、冷却ファンの回転による送風の殆どは、ケーシングに沿って流れることによって回転機械を冷却するが、送風の一部は昇圧部材内に取り込まれる。これにより、昇圧部材内の圧力値をポンプケーシング内と同程度まで高めることができるため、挿通孔と回転軸の間を通して、支持カバーの内部から外部へ潤滑油が漏出することを抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、回転機械を冷却する冷却ファンを備える軸受装置の油漏れを簡素な構造で抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る軸受装置を用いた回転機械である片吸込ポンプを示す断面図。
図2図1のII部分の拡大断面図。
図3】冷却ファンによる送風と軸受装置及びポンプケーシングの周囲の圧力との関係を示す概略図。
図4】昇圧部材が無い比較例の送風と軸受装置及びポンプケーシングの周囲の圧力との関係を示す概略図。
図5】第2実施形態に係る軸受装置を用いた片吸込ポンプを示す図2と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1を参照すると、本発明の第1実施形態に係る軸受装置20は、回転機械の一例である片吸込ポンプ1に取り付けられている。但し、回転機械は、片吸込ポンプ1以外のポンプであってもよいし、耐水モータ等の駆動源であってもよいし、図示しない駆動源(電動モータ又は内燃機関)によって回転される回転軸10を備えるポンプ以外の機械であってもよい。
【0012】
まず、図1を参照して本実施形態の回転機械である片吸込ポンプ1の構成を説明する。
【0013】
片吸込ポンプ1は、ポンプケーシング2、回転軸10、羽根車15、及び駆動源(図示せず)を備え、吸込口3bから吸い込んだ液体(水)を吐出口3eから下流側へ排出する。以下の説明では、図1において左側を吸込側と言い、図1において右側を駆動側と言うことがある。
【0014】
ポンプケーシング2は、ケーシング本体3、カバー4、及びベアリングケース6を備える。ベアリングケース6の駆動側端部に、本実施形態の軸受装置20が取り付けられている。
【0015】
ケーシング本体3には、液体を吸い込んで吐出するための液体流路3aが形成されている。液体流路3aは、吸込口3b、配置空間部3c、ボリュート通路3d、及び吐出口3eを備える。吸込口3bは、図1において左端に位置する円形状の開口からなり、上流側の配管に接続され、液体流路3aの入口を構成する。配置空間部3cは、羽根車15を配置するための空間であり、吸込口3bの駆動側に隣接して設けられている。ボリュート通路3dは、配置空間部3cの外周に位置するように、回転軸10の軸線Aを中心して渦巻き状(螺旋状)に形成されている。吐出口3eは、図1において上端に位置する円形状の開口からなり、ボリュート通路3dの下流側端部に位置して液体流路3aの出口を構成する。ケーシング本体3のうち、配置空間部3cの駆動側に位置する部分は、羽根車15を配置するために開口され、カバー4によって塞がれている。
【0016】
カバー4は、ケーシング本体3の駆動側に液密に取り付けられ、配置空間部3cに連なる開口を塞いでいる。カバー4には、回転軸10を貫通させる貫通孔4aが設けられている。貫通孔4aと回転軸10との間は、メカニカルシール(軸封装置)5によって軸封されている。但し、軸封装置は、液漏れを抑制できる構成であれば、メカニカルシール5以外であってもよい。
【0017】
ベアリングケース6は、筒状であり、カバー4の駆動側に取り付けられている。ベアリングケース6の吸込側には、回転軸10を軸支する転がり軸受7が取り付けられている。ベアリングケース6の駆動側の端部には、軸受装置20を取り付けるための取付孔6aが形成されている。転がり軸受7と軸受装置20の間には、潤滑油(図示せず)を収容する収容部6bが形成されている。
【0018】
ベアリングケース6の外周には、表面積を拡大して冷却性を向上するために複数の冷却フィン6cが設けられている。これらの冷却フィン6cは、放射状をなすように、回転軸10の軸線Aに対して直交する方向である径方向外側へ突出し、回転軸10の軸線Aに沿って延びる板状である。
【0019】
回転軸10は、ポンプケーシング2に回転可能に取り付けられている。回転軸10は、ポンプケーシング2の外部に突出した第1端側である外側部11と、軸受装置20を含むベアリングケース6及びカバー4を貫通してケーシング本体3内に配置された第2端側である内側部12とを備える。但し、回転軸10の第2端側は、例えば両吸込ポンプ等の回転機械の場合、ポンプケーシングの外部に突出した状態に配置される。
【0020】
外側部11は、接続部11aと取付部11bを備える。接続部11aは、外側部11のうち駆動側端部(外端側)によって構成され、カップリング13(図3参照)を介して駆動源に機械的に接続される。取付部11bは、外側部11のうち接続部11aの吸込側に隣接した部分によって構成されている。この取付部11bには、軸受装置20が備える冷却ファン33を相対回転不可能に取り付けるためのキー孔が設けられている。
【0021】
内側部12は、取付部12a、被軸封部12b、中間部12c、一対の被支持部12d,12e、及び貫通部12fを備える。
【0022】
取付部12aは、ケーシング本体3の配置空間部3c内に配置されている。被軸封部12bは、取付部12aの駆動側に隣接してカバー4の貫通孔4a内に位置する部分によって構成され、メカニカルシール5によって軸封されている。中間部12cは、ベアリングケース6の収容部6b内に位置する部分によって構成され、転がり軸受7及び軸受装置20が備える転がり軸受23の間に位置決めされる大径の円柱状である。
【0023】
被支持部12d,12eは、中間部12cの両側に隣接して設けられている。中間部12cの吸込側に位置する被支持部12dは、転がり軸受7によって軸支され、カバー部材8に形成されたラビリンスシール8aによってシールされている。中間部12cの駆動側に位置する被支持部12eは、軸受装置20の転がり軸受23によって軸支されている。貫通部12fは、軸受装置20が備える支持カバー30内に位置し、被支持部12eの駆動側に隣接する部分によって構成され、支持カバー30に形成されたラビリンスシール30dによってシールされている。
【0024】
羽根車15は、ケーシング本体3の配置空間部3cに配置され、回転軸10の取付部12aに相対回転不可能に取り付けられている。羽根車15は、回転軸10の軸線Aが延びる方向から見て円形状であり、回転軸10を中心として放射状に延びる複数の羽根板15a、概ね円環状の前シュラウド15b、及び概ね円板状の後シュラウド15cを備えるクローズド型である。羽根車15は、駆動源により回転軸10と一体に回転する。これにより、前シュラウド15bの開口から液体を吸い込み、羽根板15a、前シュラウド15b、及び後シュラウド15cによって確定された流路からボリュート通路3dへ、径方向外側に液体を排出する。
【0025】
次に、図2を参照して、本実施形態の軸受装置20について具体的に説明する。
【0026】
軸受装置20は、軸受本体22、支持カバー30、冷却ファン33、昇圧部材38、及びガイドカバー45を備える。
【0027】
軸受本体22は、一対の転がり軸受23によって構成され、回転軸10を軸支する。個々の転がり軸受23は、内輪24、外輪25、及び複数の転動体26を備える。内輪24は、回転軸10の被支持部12eの外径と同一の内径を有する円環状で、被支持部12eに密着して配置されている。外輪25は、内輪24の外径よりも大きい内径を有し、ポンプケーシング2の取付孔6aの直径と同一の外径を有する円環状で、取付孔6aの孔壁に密着して配置されている。転動体26は、球状で、内輪24と外輪25の間に転動可能に配置されている。但し、転動体26は、回転軸10の軸線Aに沿って延びる円柱体であってもよい。吸込側に位置する転がり軸受23の外輪25は、ポンプケーシング2の取付孔6aの孔壁に配置された環状の位置決め部材27によって位置決めされ、吸込側への移動が規制されている。
【0028】
支持カバー30は、ポンプケーシング2の駆動側端部を覆うカバー本体30aと、ポンプケーシング2の取付孔6a内に嵌め込まれる嵌合部30bとを備える。カバー本体30aは、回転軸10の軸線Aが延びる方向から見て円形状であり、ポンプケーシング2に液密に取り付けられている。嵌合部30bは、カバー本体30aから吸込側へ円筒状に突出し、駆動側に位置する転がり軸受23の外輪25を位置決めする。つまり、支持カバー30は、位置決め部材27との間に一対の転がり軸受23を支持する。
【0029】
カバー本体30aには、回転軸10を挿通する挿通孔30cが設けられている。挿通孔30cの孔壁には、回転軸10との間からの油漏れを抑制するためのラビリンスシール30dが設けられている。ラビリンスシール30dの外側に位置するように、回転軸10にはディフレクタ31が取り付けられている。
【0030】
カバー本体30aには、2種でそれぞれ複数のボルト孔30e,30fが周方向に間隔をあけて設けられている。第1ボルト孔30eは、ポンプケーシング2の駆動側端面に既設のボルト穴6dと対応する位置に設けられている。第2ボルト孔30fは、第1ボルト孔30eよりも小径であり、第1ボルト孔30eに対して周方向に間隔をあけて設けられている。第2ボルト孔30fと対応するポンプケーシング2のボルト孔は設けられていない。ボルト孔30e,30fを用いたポンプケーシング2への支持カバー30の締結については後に詳述する。
【0031】
冷却ファン33は、支持カバー30から外部に突出した回転軸10の外側部11に固着され、回転軸10の回転によってポンプケーシング2に送風する。冷却ファン33は、回転軸10に固着するためのボス34と、送風するための複数の翼部35とを備える。
【0032】
ボス34は、回転軸10の取付部11bに取り付けられる円筒状のボス本体34aと、ボス本体34aから径方向外向きに突出した錐状基部34bとを備える。ボス本体34aは、取付部11bの外径と同一の内径を有し、キー36の差し込みによって取付部11bに相対回転不可能かつ軸方向に移動不可能に取り付けられている。錐状基部34bは、支持カバー30に近づくに従って径方向外側に傾斜した円錐筒状である。錐状基部34bのうち最も支持カバー30側に位置する最大径部分が、錐状基部34b(ボス34)の先端部34cである。但し、錐状基部34bの代わりに、ボス本体34aの外径よりも大径の筒状基部が用いられてもよい。
【0033】
複数の翼部35は、ボス34から径方向外側へ放射状に突出し、回転軸10の回転によって駆動側の空気を吸込側であるポンプケーシング2に向けて送出する。個々の翼部35の基端は、ボス本体34a及び錐状基部34bそれぞれに連なっている。個々の翼部35において錐状基部34bから最も離れた外縁35aは、上流側端35bから下流側端35cに向かうに従って、つまり支持カバー30に近づくに従って、径方向外側に傾斜している。また、外縁35aは、支持カバー30に近づくに従って錐状基部34bに近づく向きに傾斜している。外縁35aの大部分は、錐状基部34bの先端部34cよりも径方向外側へ突出している。
【0034】
このように構成された冷却ファン33による送風は、錐状基部34bに沿って送出される。この送風方向Dbに対して直交する方向である、翼部35によって送風可能な範囲(以下「送風範囲」と言う。)Rb1は、ボス34の錐状基部34bから翼部35の上流側端35bまでの領域である。
【0035】
昇圧部材38は、冷却ファン33による送風によって、回転軸10及び支持カバー30の挿通孔30cの周囲の圧力を上げるために設けられている。昇圧部材38は、支持カバー30及びポンプケーシング2とは別体であり、支持カバー30に固着されるベース部39と、ベース部39から冷却ファン33に向けて突出する囲い部40とを備える。
【0036】
ベース部39は、円環状の板体であり、支持カバー30の外面に配置されている。ベース部39には、支持カバー30の第1ボルト孔30e及び第2ボルト孔30fに対応する第1貫通孔39a及び第2貫通孔39bがそれぞれ設けられている。第1貫通孔39aを貫通させて、第1ボルト42を支持カバー30の第1ボルト孔30eとポンプケーシング2のボルト穴6dに締め付ける。また、第2貫通孔39bを貫通させて、第2ボルト43を支持カバー30の第2ボルト孔30fに締め付ける。これにより、ベース部39及び囲い部40を備える昇圧部材38が、支持カバー30を介してポンプケーシング2に締結される。
【0037】
囲い部40は、内部に冷却ファン33による送風の一部を取り込み、回転軸10まわりである挿通孔30cの周辺を昇圧させて油漏れを防ぐために設けられている。囲い部40は、円筒状の板体であり、支持カバー30から冷却ファン33に向けて突出している。但し、囲い部40は、冷却ファン33による送風を取込可能で、油漏れを抑制可能な昇圧が得られる範囲であれば、スリットや穴が設けられていてもよい。また、囲い部40は、円錐筒状であってもよく、その形状は、冷却ファン33による送風を取込可能であれば必要に応じて変更可能である。
【0038】
囲い部40は、ボス34の先端部34cよりも径方向外側に位置し、翼部35のうち最も径方向外側に位置する下流側端35cよりも径方向内側に位置している。囲い部40の先端は、回転軸10の軸線Aが延びる方向において、ボス34の先端部34cよりも駆動側、つまり回転軸10の外側部11の外端側に位置している。このように構成された囲い部40は、冷却ファン33による送風範囲Rb1の一部に重複している(重複範囲Ro)。より具体的には以下の通りである。
【0039】
送風範囲Rb1に対する囲い部40の重複範囲Roを過度に多くすると、ポンプケーシング2及びポンプケーシング2内の機構の冷却効率が低下し得る。一方で、送風範囲Rb1に対する囲い部40の重複範囲Roを過度に少なくすると、冷却ファン33による送風の取り込み量が不足し、回転軸10及び支持カバー30の挿通孔30cまわりの昇圧が不足し、油漏れを抑制できない可能性がある。そのため、本実施形態の送風範囲Rb1は、後に詳述するガイドカバー45によって、下流側に向かうに従って絞られている。また、ボス34の錐状基部34bから翼部35の下流側端35cまでの送風範囲Rb2に対し、囲い部40の重複範囲Roが占める割合は、5%以上25%以下の範囲に設定することが好ましく、本実施形態では18%に設定されている。
【0040】
ガイドカバー45は、全体として筒状で、冷却ファン33による送風をポンプケーシング2の外周面に案内するために設けられている。ガイドカバー45は、冷却ファン33及び昇圧部材38の外側に間隔をあけて位置するように、支持カバー30に取付ピン46を介して取り付けられている。
【0041】
より具体的には、ガイドカバー45は、円筒状の第1部分45aと円錐筒状の第2部分45bとを備える。第1部分45aは、回転軸10の軸線Aに沿って延び、昇圧部材38を取り囲んでいる。第2部分45bは、翼部35の外縁35aに沿って延び、冷却ファン33を取り囲んでいる。取付ピン46は、支持カバー30の周方向に間隔をあけて複数(例えば8本)配置されている。
【0042】
このように構成された軸受装置20では、回転軸10の回転によって冷却ファン33が一体に回転されると、冷却ファン33の駆動側(下流側)の空気が吸引され、ポンプケーシング2に向けて吸込側(上流側)へ送出される。送風の大部分は、昇圧部材38とガイドカバー45の間を通ってポンプケーシング2の外周に流れ、隣り合う冷却フィン6cの間を通って大気に放出される。一方で、送風の残りの一部は、昇圧部材38によって、回転軸10、支持カバー30、ボス34の錐状基部34b、及び昇圧部材38の囲い部40によって確定された空間48内に取り込まれる。
【0043】
これにより、軸受装置20を含む片吸込ポンプ1の周囲の圧力分布は図3に示すようになる。図3を参照すると、冷却ファン33の上流側は、冷却ファン33に近づくに従って低圧になり、翼部35が位置する部分が最も低圧(-400PaG)になる。また、冷却ファン33の下流側は、冷却ファン33から離れるに従って高圧になり、ポンプケーシング2の周囲で最も高圧(-20PaG)になる。一方で、回転軸10及び支持カバー30の挿通孔30cの周辺を含む空間48では、冷却ファン33による送風の一部が取り込まれ続けることによって、高圧(-20PaG)になる。
【0044】
因みに、昇圧部材38を用いていない軸受装置20を含む片吸込ポンプ1の周囲の圧力分布は図4に示すようになる。図4を参照すると、昇圧部材38が無い場合、回転軸10及び支持カバー30の挿通孔30cの周辺を含む空間48では、内部の空気が冷却ファン33による送風に誘引されるため、回転軸10に近づくに従って低圧(-320PaG)になる。
【0045】
図3及び図4を参照する明らかなように、支持カバー30の挿通孔30cの周辺の空間48内圧力値は、昇圧部材38を用いた本実施形態の軸封装置20の方が、昇圧部材38を用いていない従来の軸封装置20よりも高くなっている。ここで、ポンプケーシング2内の圧力値は、通常であれば大気圧と同程度である。従来の軸封装置20における空間48内の圧力値(-320PaG)は、ポンプケーシング2内の圧力値よりも遙かに低いため、ポンプケーシング2内の潤滑油は、回転軸10と挿通孔30cの孔壁との間から外部へ漏出する可能性が高い。一方で、本実施形態の軸封装置20における空間48内圧力値(-20PaG)は、従来の軸封装置20の圧力値(-320PaG)と比較して大幅に高くなっており、ポンプケーシング2内の圧力値と同等である。より具体的には、本実施形態では、空間48内の圧力値(-20PaG)とポンプケーシング2内の圧力値との差を、ラビリンスシール30cによってシール可能な数値まで高めることができる。よって、ポンプケーシング2内の潤滑油が、回転軸10と挿通孔30cの孔壁との間から外部へ漏出することを効果的に抑制できる。
【0046】
このように構成した軸受装置20は、以下の特徴を有する。
【0047】
軸受装置20の構造は、支持カバー30に対して冷却ファン33に向けて突出する昇圧部材38を設けただけの構成であるため、簡素である。一方で、昇圧部材38の囲い部40は、筒状であり、ボス34の先端部34cよりも径方向外側に位置し、翼部35の下流側端35cよりも径方向内側に位置している。そのため、冷却ファン33の回転による送風の殆どは、ポンプケーシング2に沿って流れることによって片吸込ポンプ1を冷却するが、送風の一部は昇圧部材38内に取り込まれる。これにより、昇圧部材38内の圧力値をポンプケーシング2内と同程度まで高めることができるため、挿通孔30cと回転軸10の間を通して、支持カバー30の内部から外部へ潤滑油が漏出することを抑制できる。つまり、片吸込ポンプ1を冷却する冷却ファン33を備える軸受装置20の油漏れを簡素な構造で抑制できる。
【0048】
冷却ファン33のボス34は、支持カバー30に近づくに従って回転軸10の軸線Aに対して交差する方向である径方向の外側に傾斜した錐状基部34bを備える。よって、冷却ファン33による送風を、冷却対象物であるポンプケーシング2へ確実に案内できる。
【0049】
昇圧部材38の先端は、ボス34の先端部34cよりも回転軸10の外側部11の外端側に位置している。これにより、冷却ファン33の回転による送風の一部を昇圧部材38内に確実に取り込み、昇圧部材38内を高圧状態することができる。よって、支持カバー30の内部から外部への潤滑油の漏出を効果的に抑制できる。
【0050】
昇圧部材38は、支持カバー30及びポンプケーシング2とは別体であり、ボルト42,43によって支持カバー30に締結されている。つまり、昇圧部材38は、ポンプケーシング2にボルト穴6dを設けるとともに、支持カバー30にボルト孔30e,30fを設ければ、後付けできるため、既存の片吸込ポンプ1でも容易に油漏れ対策を施すことができる。
【0051】
支持カバー30には、冷却ファン33及び昇圧部材38を取り囲む筒状のガイドカバー45が取り付けられている。これにより、冷却ファン33の回転による送風の殆どを、ポンプケーシング2に案内して片吸込ポンプ1を確実に冷却できる。
【0052】
以下、本発明の他の実施形態並びに種々の変形例を説明するが、これらの説明において、特に言及しない点は第1実施形態と同様である。以下で言及する図面において、第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付している。
【0053】
(第2実施形態)
図5を参照すると、第2実施形態の軸受装置20は、昇圧部材38の囲い部40に、空間48内での空気の流動(旋回)を抑制するための複数の固定羽根50を設けた点で、第1実施形態の軸受装置20と相違している。
【0054】
複数の固定羽根50は、昇圧部材38の囲い部40から回転軸10に向けて突出し、回転軸10の軸線に沿って延びる板状であり、放射状をなすように周方向に間隔をあけて設けられている。これらの固定羽根50は、空間48内での気流の抵抗になり、回転軸10まわりの旋回流を抑制する。言い換えれば、固定羽根50は、冷却ファン33からの送風の取り込みによる空間48内の動圧を静圧に変換する。但し、固定羽根50は、空間48内を動圧から静圧に変換できるのであれば、昇圧部材38のベース部39に設けられてもよいし、支持カバー30のカバー本体30aに設けられてもよい。
【0055】
この第2実施形態の軸受装置20では、第1実施形態と同様に、片吸込ポンプ1に冷却する冷却ファン33を備える軸受装置20の油漏れを簡素な構造で抑制できる。しかも、空間48内を静圧状態にすることができるため、油漏れをより効果的に抑制できる。
【0056】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0057】
例えば、第1ボルト42によって支持カバー30のみをポンプケーシング2に締結し、第2ボルト43によって昇圧部材38を支持カバー30のみに締結してもよい。また、昇圧部材38は、ポンプケーシング2に直接締結されてもよい。また、昇圧部材38は、囲い部40のみによって構成され、支持カバー30又はポンプケーシング2に一体に設けられてもよい。
【0058】
ガイドカバー45は、取付ピン46を介してポンプケーシング2に取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 片吸込ポンプ(回転機械)
2 ポンプケーシング(ケーシング)
3 ケーシング本体
3a 液体流路
3b 吸込口
3c 配置空間部
3d ボリュート通路
3e 吐出口
4 カバー
4a 貫通孔
5 メカニカルシール
6 ベアリングケース
6a 取付孔
6b 収容部
6c 冷却フィン
6d ボルト穴(締結穴)
7 転がり軸受
8 カバー部材
8a ラビリンスシール
10 回転軸
11 外側部
11a 接続部
11b 取付部
12 内側部
12a 取付部
12b 被軸封部
12c 中間部
12d 被支持部
12e 被支持部
12f 貫通部
15 羽根車
15a 羽根板
15b 前シュラウド
15c 後シュラウド
20 軸受装置
22 軸受本体
23 転がり軸受
24 内輪
25 外輪
26 転動体
27 位置決め部材
30 支持カバー
30a カバー本体
30b 嵌合部
30c 挿通孔
30d ラビリンスシール
30e 第1ボルト孔
30f 第2ボルト孔
31 ディフレクタ
33 冷却ファン
34 ボス
34a ボス本体
34b 錐状基部
34c 先端部
35 翼部
35a 外縁
35b 上流側端
35c 下流側端(端部)
36 キー
38 昇圧部材
39 ベース部
39a 第1貫通孔(締結孔)
39b 第2貫通孔(締結孔)
40 囲い部
42 第1ボルト(締結部材)
43 第2ボルト(締結部材)
45 ガイドカバー
45a 第1部分
45b 第2部分
46 取付ピン
48 挿通孔の周囲の空間
50 固定羽根
A 軸線
図1
図2
図3
図4
図5