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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004405
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/076 20060101AFI20250107BHJP
   F16K 11/087 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
F16K11/076 Z
F16K11/087 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104077
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000228741
【氏名又は名称】日本サーモスタット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】熊代 毅
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA24
3H067BB02
3H067BB12
3H067CC32
3H067CC54
3H067DD03
3H067DD12
3H067DD32
3H067EA05
3H067EB15
3H067FF11
3H067GG13
3H067GG21
(57)【要約】
【課題】ロータリ式の弁体を備える電動弁において、冷却液中の異物が弁体の外壁とハウジング内壁との間に入り込んだ場合でも、異物が弁体の回転を阻害することを抑制し、且つ大型化を抑制することのできる電動弁を提供する。
【解決手段】一端に開口を有し、外周に連通口を有するハウジング11と、前記ハウジング内に回転可能に挿入されて前記連通口を開閉する弁体12と、前記連通口に装着されて前記弁体の外周に摺接するシール部材14と、前記弁体を回転駆動する駆動装置と、を備え、前記弁体は、筒状の弁部を有し、前記弁部には、前記連通口を閉塞可能な外壁と、前記連通口と連通可能な弁孔と、前記弁部の一端に形成されて前記開口と連通する弁開口と、異物回収部12hと、が形成され、前記異物回収部は、前記弁部の外周であって、前記シール部材が摺接しない非シール領域に形成される溝又は孔である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口を有し、外周に連通口を有するハウジングと、
前記ハウジング内に回転可能に挿入されて前記連通口を開閉する弁体と、
前記連通口に装着されて前記弁体の外周に摺接するシール部材と、
前記弁体を回転駆動する駆動装置と、を備え、
前記弁体は、
筒状の弁部を有し、
前記弁部には、
前記連通口を閉塞可能な外壁と、前記連通口と連通可能な弁孔と、前記弁部の一端に形成されて前記開口と連通する弁開口と、異物回収部と、が形成され、
前記異物回収部は、前記弁部の外周であって、前記シール部材が摺接しない非シール領域に形成される溝又は孔であることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記異物回収部は、前記弁部の外壁において、前記弁体の回転中心となる軸線に沿った軸方向の一端から他端にわたって長尺に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記弁体は、2つ以上の前記弁部が、前記弁体の回転中心となる軸線に沿った軸方向に連結され、
隣り合う前記弁部の、少なくとも一方の弁外壁に形成された前記異物回収部は、前記軸方向において他方の弁部に形成された前記弁孔と重なる位置にある
ことを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用冷却装置に用いられるロータリ式の流量制御弁では、バルブハウジング内に外壁が球面、あるいは直胴に形成された円筒状の弁体を、外部から回転操作可能に収容配置したものがある。このロータリ式の流量制御弁では、球体状あるいは円筒状の弁体を用いるとともに、バルブハウジング内の弁室に接続させて設けられている通路に対し、弁体の回転動作により通路を適宜開閉することにより所望の動作が得られるように構成されている。
【0003】
前記バルブハウジング内の弁室の内壁は、弁体の外壁に沿って形成され、弁体の外壁とハウジングの内壁との距離は、周方向で同じに形成されている。
しかしながら、バルブハウジング内の冷却液中の異物が、弁体の外壁とハウジングの内壁との間に噛み込まれた場合や異物が留まり続けた場合、弁体の回転が阻害される虞がある。また、弁体の駆動に係る負荷トルクが増大したり、圧損抵抗が増大したりする虞がある。
【0004】
このような課題に対し、特許文献1に開示された発明にあっては、図4に示すように、弁体200を回転可能に収容するハウジング201の内壁201aの径方向断面形状を多角形状とした構造を開示している。
即ち、ハウジング内壁201aは、回転軸205からの距離が周方向で異なるように形成されているため、冷却液中の異物Mが弁体200の外壁200aとハウジング内壁201aとの間に入り込んだ場合、弁体200が軸周りに回転することにより異物Mは大きな隙間206に移動する。これにより、弁体200の回転を阻害する可能性を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-211069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された発明の構造のようにハウジング201の内壁201aの径方向断面形状を多角形状とし、弁体200との間に異物Mを逃がす隙間206を設けた場合、電動弁が大型化するという課題があった。
【0007】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、ロータリ式の弁体を備える電動弁において、冷却液中の異物が弁体の外壁とハウジング内壁との間に入り込んだ場合でも、異物が弁体の回転を阻害することを抑制し、且つ大型化を抑制することのできる電動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するために、本発明に係る電動弁は、一端に開口を有し、外周に連通口を有するハウジングと、前記ハウジング内に回転可能に挿入されて前記連通口を開閉する弁体と、前記連通口に装着されて前記弁体の外周に摺接するシール部材と、前記弁体を回転駆動する駆動装置と、を備え、前記弁体は、筒状の弁部を有し、前記弁部には、前記連通口を閉塞可能な外壁と、前記連通口と連通可能な弁孔と、前記弁部の一端に形成されて前記開口と連通する弁開口と、異物回収部と、が形成され、前記異物回収部は、前記弁部の外周であって、前記シール部材が摺接しない非シール領域に形成される溝又は孔であることに特徴を有する。
【0009】
このような構成によれば、前記弁部の外周であって、シール部材が摺接しない非シール領域に異物回収部が形成される。
これによりハウジングの内壁と弁体の外壁との隙間に冷却液中の異物が侵入したとしても、弁体の回転にともない、異物回収部内に異物を収容することができる。それにより、弁体の回転に伴って、異物がハウジングの内壁と弁体の外壁とに同時に接触することを抑制し、異物が弁体の回転を阻害することを防止することができる。
また、異物を収容する異物回収部は、弁体の外壁に形成されるため、電動弁の大型化を抑制することができる。さらに、異物回収部が弁体に形成された溝又は孔からなるので、弁体の回転にともない異物回収部のエッジで異物をかき取ることができるため、異物回収効果が従来よりも高くなる。
【0010】
尚、前記異物回収部は、前記弁部の外壁において、前記弁体の回転中心となる軸線に沿った軸方向の一端から他端にわたって長尺に形成されていることが好ましい。
このように溝や孔からなる異物回収部が、弁部の回転軸方向の一端から他端にわたって長尺に形成されていることにより、異物をかき取る異物回収部のエッジを長くできる。このため、異物回収部のエッジで異物をかきとる効果をより高められる。
【0011】
また、前記弁体は、2つ以上の前記弁部が、前記弁体の回転中心となる軸線に沿った軸方向に連結され、隣り合う前記弁部の、少なくとも一方の弁外壁に形成された前記異物回収部は、前記軸方向において他方の弁部に形成された前記弁孔と重なる位置にあることが好ましい。
このように構成することにより、異物回収部内に収容した異物を前記弁孔へと流すことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電動弁によれば、ロータリ式の弁体を備える電動弁において、冷却液中の異物が弁体の外壁とハウジング内壁との間に入り込んだ場合でも、異物が弁体の回転を阻害することを抑制し、且つ大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態の電動弁の構成例を示す断面図である。
図2図2は、図1の電動弁が備える弁体の弁本体の斜視図である。
図3図3は、図2のA-A矢視断面図である。
図4図4は、従来の弁体ハウジングの径方向断面形状の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明にかかる電動弁の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、本願の明細書および図面において、同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する場合がある。
【0015】
図1は、一実施形態の電動弁の構成例を示す断面図である。なお、本実施形態においては、説明の便宜上、図1中の上下を単に「上」、「下」という。
【0016】
本実施形態の電動弁1は、たとえば、エンジン(シリンダヘッド側)から流出した冷却液がラジエータを経由してエンジン(シリンダブロック側)へ戻る冷却路と、エンジンから流出した冷却液がラジエータを経由せずに(迂回して)エンジンへ戻るバイパス路と、を備えた自動車の冷却回路(冷却液の循環システム)において使用される。そして、この電動弁1は、弁体に形成された弁孔を開閉制御することにより、エンジンを通り流入した冷却液を冷却路およびバイパス路へ向けてそれぞれ放出するとともに、その流量を制御する。
【0017】
<電動弁の基本構造>
本実施形態の電動弁1は、冷却液の流入口11aおよび複数の流出口11b(11b1,11b2)が形成されたハウジング11と、ハウジング11の内部空間に収容されかつ当該内部空間で軸(回転軸)を中心に回転可能な弁体12と、流出口11bに接続されるアダプタ13(131,132)と、弁体12に形成された弁孔12f(12f1、12f2)を通過してアダプタ13側に放出する冷却液の漏れを阻止するためのシール部材14(141,142)とを備える。この電動弁1は、車両に搭載された制御装置(図示せず)からの指示で弁体12の回転を制御することによって、冷却路およびバイパス路へ向けて冷却液を適切に放出する。
【0018】
以下、本実施形態の電動弁1の構造をさらに具体的に説明する。なお、本実施形態においては、弁体12の回転中心となる軸線に沿う方向を「軸方向」、軸線に直交する方向を「径方向」、軸線回りの方向を「周方向」と記述する。
【0019】
ハウジング11は、弁体12を収容する内部空間(弁体収容部20)を有する本体部11cと、本体部11cの上部面との間に減速機15を収容するための空間を形成する有底形状の蓋部11dと、を備え、本体部11cの上部面に蓋部11dの開口端部(周縁)を取り付け、蓋部11dの内部空間を閉塞する。また、蓋部11dの空間に収容された減速機15は、複数の歯車を備え、制御装置からの指令により動作するモータ(駆動装置:図示せず)の回転を減速して弁体12へ伝える機能を有する。
【0020】
また、ハウジング11において、本体部11cの上部には、弁体12の回転軸として機能するシャフト12aを挿通させた状態で回転自在に支持する円筒状の挿通筒部11eが設けられる。挿通筒部11eの内周には、シャフト12aの上部を回転自在に支持する軸受け11fが設けられている。
【0021】
また、ハウジング11において、本体部11cの外周(弁体収容部20の内壁20a)には、連通口である略円筒状の流出口11b(11b1,11b2)が、径方向外方へ突設されている。そして、図1に示す流出口11b1,11b2は、軸方向および周方向において、それぞれ異なる位置に設けられている。さらに、流出口11bには、上述した冷却路およびバイパス路と連通する円筒状のアダプタ13(131,132)がそれぞれ嵌挿され固定される。
【0022】
なお、図1(断面図)においては、本体部11cの2か所に流出口11bが設けられているが、これに限るものではなく、流出口11bについては、冷却液を放出する流路の数や方向に応じて、図1以外の位置にさらに形成されていてもよい。
【0023】
さらに、ハウジング11の下端には、シリンダヘッド側と連通して冷却液を弁体12側に取り込むための開口である流入口11aが形成されている。そして、この流入口11aには、中心部に形成された円筒部17aでシャフト12aの下端を支持するフレーム17が装着されている。具体的には、このフレーム17は、流入口11aの周縁に沿ってハウジング11に取り付けられた環状の枠部17bと、枠部17bの中心部に形成された上記円筒部17aと、枠部17bの複数か所(等間隔)と円筒部17aとをそれぞれ接続するフレーム強度補強用の複数の橋部17cと、を有する。冷却液は、このフレーム17を通過してハウジング11内へと流入できるようになっている。
【0024】
<弁体>
弁体12は、回転軸として機能するシャフト12a、および外部との連通状態を切り替え可能な外壁を有しかつシャフト12aと一体回転可能に接合する弁本体12b、を有する。このシャフト12aには、減速機15の構成部品としての歯車が一体的に取り付けられている。これにより、モータの駆動によって歯車が回転すると、これに連動して、弁体12(シャフト12a,弁本体12b)が一体的に回転する。
【0025】
また、弁体12において、弁本体12bには、中心部に、シャフト12aが貫通した状態でシャフト12aの外周部分と接合する接合部12cが設けられている。
また、弁本体12bは、筒状で上下に弁開口を有し、かつ外壁が球面形状を有する2つの弁部が上下に連設する構造とした。前記弁開口は、ハウジング11の流入口11a(開口)と連通する。本実施形態においては、下部に形成された一方の弁部を第1弁部12b1とし、その上に形成された他方の弁部を第2弁部12b2とする。
【0026】
より具体的に説明すると、弁本体12bは、樹脂により略筒状に形成され、弁体収容部20内に収容されている。弁体12の中心軸上には、シャフト12aが位置する。図2に示すように、弁体12の弁本体12bは、上下に開口する第1弁部12b1と、同様に上下に開口し第1弁部12b1の一端(図において上端)から軸方向に連通して形成された第2弁部12b2とを有する。図1に示すように、弁本体12bは、内部に第1弁部12b1及び第2弁部12b2によって形成され、流入口11a(開口)と連通する冷却液の連通路Rを有する。
【0027】
第1弁部12b1及び第2弁部12b2の外壁12m、12n(弁外壁)は、図示するように軸方向中央が最も径の大きい球面状(所謂ボール弁)に形成されており、冷却液が通る連通路Rを形成する弁部内壁12i、12jは、軸方向に平行に形成されている。
また、弁体収容部20の内壁20aは、第1弁部12b1及び第2弁部12b2の外壁12m、12nの形状に沿って形成され、前記内壁20aと外壁12m、12nとの隙間距離は、周方向で略同じに形成されている。
【0028】
また、第2弁部12b2内には、例えば3つの補強部材45が周方向に均等配置され、弁体12を補強する。これら補強部材45は、挿通筒部11eと干渉しないようになっている。シャフト12aは、挿通筒部11eにガイドされ、弁本体12bと一体となって回転する。
【0029】
また、シャフト12aとハウジング11の挿通筒部11eとの間は、シールリング12dによって閉塞される。これにより、本体部11c内の冷却液が挿通筒部11eから蓋部11d内へ流入しない。また、第1弁部12b1の下端開口は、シリンダヘッド側からフレーム17(流入口11a)を介して流入する冷却液を弁体12の内部空間に取り込む導入口12eとして機能する。
【0030】
また、第1弁部12b1と第2弁部12b2には、それぞれ弁孔12f1と弁孔12f2が設けられている。弁孔12fは、第1弁部12b1および第2弁部12b2の肉厚を径方向に貫通する。弁体12が回転し、弁孔12fがシール部材14の開口と重なり合うと、この重なり合う部分から冷却液が流出する。このように、各弁孔12fは、シャフト12aの回転に連動して弁本体12bが回転することにより開閉し、この開閉動作によって流入口11aと流出口11b(11b1,11b2)との連通状態を切り換える。すなわち、弁体12に設けられた各弁孔12fは、回転に伴い、それぞれ対応する流出口11b(11b1,11b2)と弁体12の内部空間との連通状態が切り替わるように形成される。これにより、導入口12eを介して弁体12(第1弁部12b1,第2弁部12b2)の内部空間に取り込まれた冷却液は、各弁孔12fの開閉動作に応じて冷却路およびバイパス路へ向けて放出されるとともに、その流量が制御される。
【0031】
本実施の形態に係る弁体12は、図2図3に示すように、第1弁部12b1の外壁12mの弁孔12f1が形成されていない領域であって、流出口11bに対するシールに用いる領域外(シール部材14が摺接しない非シール領域)には、周方向に所定幅Wに形成され、軸方向に長尺に延設された異物回収部としての溝部12hを有する。本実施形態では、第1弁部12b1の外壁12mにおいて、第2弁部12b2に形成された弁孔12f2と回転軸方向において重なる位置に形成されている。
この溝部12hの軸方向長さ寸法Hは、軸方向に沿って第1弁部12b1の一端(上端)から他端(下端)にわたるよう形成されている。また、溝部12hの最深部は所定寸法Dに形成されている。
【0032】
前述したように、弁体収容部20の内壁20aは、第1弁部12b1及び第2弁部12b2の外壁12m、12nの形状に沿って形成され、前記内壁20aと外壁12m、12nとの隙間距離は、周方向で略同じに形成されている。そのため、前記内壁20aと外壁12mとの隙間に冷却液中の異物Mが侵入した場合、その異物Mが排出できない虞がある。そこで、図3に示すように前記溝部12hを有することにより、弁体12の回転にともない、前記溝部12h内に異物Mを収容することができる。
【0033】
また、溝部12hは、軸方向において第2弁部12b2に形成された弁孔12f2と重なる位置に形成されていてもよく、その場合、溝部12h内に収容した異物Mを前記弁孔12f2へと流すことができる。
なお、仮に異物Mが溝部12h内に収容されたままの状態であっても、弁体12の回転に伴って、異物Mが弁体収容部20の内壁20aと第1弁部12b1の外壁12mとに同時に接触することを抑制し、異物Mが弁体12の回転を阻害することを防止することができる。
【0034】
また、図示しないが、第2弁部12b2における外壁12gの弁孔12f2が形成されていない領域であって、流出口11bに対するシールに用いる領域外にも、前記溝部12hと同様の溝部を形成してよい。その場合、第2弁部12b2の外壁12nにおいて、第1弁部12b1に形成された弁孔12f1と軸方向において重なる位置に形成されていてもよい。
【0035】
上記構成によれば、第2弁部12b2に溝部を設けることにより、第2弁部12b2側において、前記内壁20aと外壁12nとの隙間に冷却液中の異物Mが侵入したとしても、弁体12の回転にともない、前記溝部内に異物Mを収容することができる。
さらに、第2弁部12b2に溝部を設けた場合、この溝部が第1弁部12b1に形成された弁孔12f1と軸方向において重なる位置に形成されていれば、異物Mを前記弁孔12f1に流すこともできる。
また、仮に異物Mが前記溝部内に収容されたままの状態であっても、弁体12の回転に伴って、異物Mが弁体収容部20の内壁20aと第2弁部12b2の外壁12nとに同時に接触することを抑制し、異物Mが弁体12の回転を阻害することを抑制することができる。
【0036】
以上のように本実施の形態によれば、第1弁部12b1(第2弁部12b2)の外周であって、シール部材14が摺接しない非シール領域に、軸方向の一端から他端にわたって異物回収部である溝部12hが形成される。
これにより弁体収容部20の内壁20aと弁体12の外壁12m(12n)との隙間に冷却液中の異物Mが侵入したとしても、弁体12の回転にともない、溝部12h内に異物を収容することができる。それにより、弁体12の回転に伴って、異物Mが弁体収容部20の内壁20aと第1弁部12b1(第2弁部12b2)の外壁12m(外壁12n)とに同時に接触することを抑制し、異物Mが弁体12の回転を阻害することを防止することができる。
また、異物を収容する溝部12hは、弁体12の外壁に形成されるため、電動弁の大型化を抑制することができる。
また、溝部12hが、第1弁部12b1(第2弁部12b2)の軸方向の一端から他端にわたって長尺に形成されていることにより、弁体12の回転に伴い、長尺な溝部12hのエッジで異物をかきとることができるため、異物回収効果が高くなる。
さらに、より好ましくは、溝部12hを、軸方向において第2弁部12b2(第1弁部12b1)に形成された弁孔12f2(弁孔12f1)と重なる位置に形成することによって、溝部12h内に収容した異物Mを前記弁孔12f2(弁孔12f1)へと流すことができる。
このように本発明にかかる一実施の形態によれば、異物Mによる弁体12の回転の阻害がなく、制御性及び耐久性を向上することができる。
【0037】
なお、本実施の形態においては、溝部12hの底部は平らに形成したが、本発明にあっては、これに限定されず、外壁12mの表面形状に沿って湾曲した形状でもよい。その場合、溝部12hの深さを一定にすることができる。
また、本実施の形態において、溝部12hは、図2に示すように断面U字状としたが、本発明にあっては、溝部12hの断面形状は限定されるものではない。
また、本実施の形態において、異物回収部を溝部12hとして説明したが、本発明にあっては、それに限定されず、異物回収部を孔(有底孔あるいは貫通孔)として外壁12mに形成してもよい。
【0038】
また、本実施の形態においては、第1弁部12b1と第2弁部12b2とが軸方向に連結された弁体12を例に説明したが、本発明に係る弁体にあっては、その形態に限定されるものではない。例えば、弁部の数は1つでもよいし、3つ以上の弁部が回転軸方向に連結されていてもよい。
3つ以上の弁部が回転軸方向に連結されている場合には、隣り合う前記弁部の、少なくとも一方の弁外壁に形成された前記溝部12hは、回転軸方向において他方の弁部に形成された前記弁孔と重なる位置にあってもよい。
また、本実施の形態においては、外壁が球面状の弁体(所謂ボール弁)について説明したが、本発明にあっては、その形態に限定されず、直胴状の外壁面を有する弁体であってもよい。
【0039】
また、本実施形態においては、一例として、流入口11a(フレーム17側)から流入した冷却液を冷却路およびバイパス路へ向けて放出する電動弁1について説明したが、電動弁1と連通する流路の接続構成についてはこれに限るものではなく、自動車の冷却回路(冷却液の循環システム)の仕様(例えば、ハウジング11の本体部11cの外周(弁体収容部20の内壁20a)に形成された流入口(上流側)からフレーム17側の流出口(下流側)へ流れる流路など)に応じて適宜変更可能である。
【0040】
また、本実施形態において、シール部材14(141,142)は、図1に示すようにコイルスプリングの付勢力により弁体12の外壁に押し付けられるが、これに限るものではなく、弁体12の弁孔12fを通過してアダプタ13側に放出する冷却液の漏れを阻止できればよく、その他の構造により実現することとしてもよい。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 電動弁
11 ハウジング
11b 流出口(連通口)
12 弁体
12a シャフト
12b1 第1弁部(弁本体)
12b2 第2弁部(弁本体)
12f1 弁孔
12f2 弁孔
12m 外壁(弁外壁)
12h 溝部(異物回収部)
14 シール部材
20 弁体収容部
20a 内壁
R 連通路
図1
図2
図3
図4