(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004428
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】インペラ
(51)【国際特許分類】
B29C 33/42 20060101AFI20250107BHJP
F04D 29/02 20060101ALI20250107BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20250107BHJP
B29C 45/27 20060101ALI20250107BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B29C33/42
F04D29/02
B29C45/26
B29C45/27
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104114
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 紘治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信也
(72)【発明者】
【氏名】高碕 達郎
【テーマコード(参考)】
3H130
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC19
3H130BA74C
3H130EB01C
3H130EC12D
3H130EC17C
4F202AD03
4F202AD15
4F202AG19
4F202AH04
4F202AM32
4F202AR12
4F202AR13
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK15
4F202CQ01
4F202CQ05
4F206AD03
4F206AD15
4F206AG19
4F206AH04
4F206AM32
4F206AR12
4F206AR13
4F206JA07
4F206JB12
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN14
4F206JQ81
(57)【要約】 (修正有)
【課題】重心が回転中心からずれることを抑制することができるインペラを提供する。
【解決手段】インペラ1は、金属製のシャフトSHが取り付けられ、樹脂部材REで形成される。前記樹脂部材は、前記ゲート痕GEを含む第1部分10と、前記ゲート痕を含まない第2部分20と、前記第1部分と前記第2部分との間を連結し、凹部31を形成する連結部30と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のシャフトが取り付けられ、樹脂部材で形成され、
前記樹脂部材は、
ゲート痕を含む第1部分と、
前記ゲート痕を含まない第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分との間を連結し、凹部が形成される連結部と、
を備える、
インペラ。
【請求項2】
前記第1部分は、前記シャフトの軸芯が延在する軸方向に対して直交する天面部であり、
前記第2部分は、複数の羽根が設けられ、前記軸方向に沿って延びる壁部であり、
前記第1部分に対して前記第2部分が折れ曲がるように繋がる位置に前記凹部が配置される、
請求項1に記載のインペラ。
【請求項3】
前記樹脂部材は、有底円筒状であり、
前記樹脂部材の内側面に前記凹部が形成される、
請求項2に記載のインペラ。
【請求項4】
前記凹部は、前記ゲート痕よりも径方向外側に設けられる、
請求項2または3に記載のインペラ。
【請求項5】
前記ゲート痕は、前記天面部の前記シャフトの取り付け位置の近傍に並んで配置される、
請求項4に記載のインペラ。
【請求項6】
前記樹脂部材は、
前記ゲート痕を有し、前記シャフトの軸芯が延在する軸方向に対して直交する底面部と、
前記底面部に繋がる壁部と、
前記壁部に繋がり、前記軸方向に対して直交する天面部と、
前記天面部に繋がり、前記軸方向に延在する複数の羽根と、
前記複数の羽根の先端部を周方向で繋げる環状部と、
を備え、
前記環状部は、径方向の内側に位置する内部環状部と、前記径方向の外側に位置する外部環状部と、前記内部環状部と前記外部環状部とを連結する連結部とを有し、
前記第1部分は、前記底面部、前記壁部、前記天面部、前記羽根、および、前記内部環状部であり、
前記第2部分は、前記外部環状部であり、
前記環状部は、前記内部環状部と前記外部環状部と前記連結部により前記凹部を形成する、
請求項1に記載のインペラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インペラに関する。
【背景技術】
【0002】
シャフトを埋込金具とし、溶融した樹脂をキャビティに流してインペラを製造することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の製造法では、キャビティに樹脂を均一に充填できない場合があり、重心が回転中心からずれる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、重心が回転中心からずれることを抑制することができるインペラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るインペラは、金属製のシャフトが取り付けられ、樹脂部材で形成され、前記樹脂部材は、前記ゲート痕を含む第1部分と、前記ゲート痕を含まない第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間を連結し、凹部を形成する連結部と、を備える。
【0007】
本発明に係るインペラの一態様によれば、重心が回転中心からずれることを抑制することができるインペラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るインペラの斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すインペラ1を正面側から視た斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すインペラが有する樹脂部材を製造する際に使用する金型の断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すインペラが有する樹脂部材を製造する際に使用する複数のノズルの斜視図である。
【
図6】
図6は、比較例のインペラを、モールド成型によって製造した際において、溶融した樹脂が到達した時間を示す正面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示すインペラを、モールド成型によって製造した際において、溶融した樹脂が到達した時間を示す正面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係るインペラの斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8に示すインペラの一部における部分断面図である。
【
図12】
図12は、比較例のインペラを、モールド成型によって製造する際において、溶融した樹脂が到達した時間を示す正面図である。
【
図13】
図13は、
図8に示すインペラを、モールド成型によって製造する際において、溶融した樹脂が到達した時間を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施形態に係るインペラを図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るインペラ1の斜視図である。
図2は、
図1に示すインペラ1の断面図である。
図3は、
図1に示すインペラ1を正面側から視た斜視図である。
【0011】
第1実施形態に係る
図1に示すインペラ1の説明において、方向の理解を容易にするため、後述するシャフトSHが延びる方向を軸方向Aと呼び、後述するシャフトSHが回動する方向を周方向Cと呼び、軸方向Aに対して直交する平面に含まれ、かつ、シャフトSHの軸芯SHXを通過し、周方向Cに対して直交する方向を径方向Rと呼ぶ。
【0012】
図1~
図3に示すインペラ1は、例えば、電子機器に内蔵され、機器の内部に設けられた部品の冷却等に用いられるファンに使用される。このようなインペラ1は、例えば、モータの出力軸にシャフトSHが連結され、モータの駆動に伴って出力軸と共にシャフトSHが周方向Cへ回転することによって、風が部品に送風される。
【0013】
インペラ1は、シャフトSHと、樹脂部材REと、を備える。シャフトSHは、いわゆる回転軸であって、金属製であり、軸方向Aに沿って延びる円柱状に形成される。シャフトSHは、軸方向Aに沿って延在する軸芯SHXを有し、かつ、軸芯SHXを中心に回転可能に設けられる。
【0014】
樹脂部材REは、有底円筒状である。樹脂部材REは、ゲート痕GEを含む第1部分10と、ゲート痕GEを含まない第2部分20と、第1部分10と第2部分20との間を連結し、凹部31が形成される連結部30と、を備える。
【0015】
第1部分10は、シャフトSHの軸芯SHXが延在する軸方向Aに対して直交する天面部11である。より具体的に説明すると、天面部11は、例えば、軸方向Aから視た場合、円形の板状に形成される。本実施形態に係る天面部11は、複数のゲート痕GEを有する。より具体的に説明すると、天面部11は、7つのゲート痕GEを有する。ゲート痕GEは、天面部11のシャフトSHの取り付け位置の近傍に並んで配置される。さらに、ゲート痕GEは、軸芯SHXの周囲に配置され、かつ、周方向Cにおいて間隔をあけて配置される。
【0016】
第2部分20は、複数の羽根22が設けられ、軸方向Aに沿って延びる壁部21である。より具体的に説明すると、壁部21は、例えば、円筒状に形成される。また、本実施形態に係る壁部21には、7枚の羽根22が設けられる。
【0017】
連結部30において、第1部分10に対して第2部分20が折れ曲がるように繋がる位置に凹部31が配置される。凹部31は、周方向Cにおいて連続し、シャフトSHの周囲を一周する。また、凹部31は、樹脂部材REの内側面に形成される。さらに、本実施形態に係るインペラ1の凹部31は、天面部11よりも肉薄であり、かつ、壁部21よりも肉薄である。
【0018】
次に、樹脂部材REの製造方法について、
図4、
図5を用いて説明する。
図4は、
図1に示すインペラ1が備える樹脂部材REを製造する際に使用する金型MOの断面図である。
図5は、
図1に示すインペラ1が備える樹脂部材REを製造する際に使用する複数のノズルNOの斜視図である。金型MOの内部には、
図4に示すように、キャビティCAが設けられる。キャビティCAの形状は、樹脂部材REの形状に対応する。また、金型MOの内部には、シャフトSHと同形同大の柱状部材MO1が配置される。
【0019】
図4に示す複数のノズルNOは、金型MOに設けられた開口MO2から、溶融した樹脂をキャビティCAに注入する際に使用される。本実施形態に係る複数のノズルNOは、例えば、7本であり、3本の第1ノズルNO1と4本の第2ノズルNO2とが含まれる。
【0020】
そして、金型MOを用いたモールド成型によって樹脂部材REを製造する際、先ず、作業者は、ノズルNOの先端を金型MOの開口MO2に配置した後、それぞれのノズルNOから溶融した樹脂をキャビティCAに注入する。
【0021】
その際、溶融した樹脂は、ノズルNOを中心に、ノズルNOの周囲に広がり、キャビティCAにおける天面部11(第1部分10)に相当する部分CA11に広がる。そして、キャビティCAにおける凹部31に相当する部分CA31まで溶融した樹脂が流れると、凹部31に相当する部分CA31を溶融した樹脂が流れる際の抵抗が大きいため、
図4中、矢印F1で示す方向に溶融した樹脂はほとんど流れず、径方向Rに沿って溶融した樹脂が流れることとなる。つまり、流体抵抗が大きい部分CA31によって、溶融した樹脂が堰き止められる。また、言い方を変えると、キャビティCAにおける凹部31に相当する部分CA31は、溶融した樹脂の圧力が高くなるタイミングを待つ機能を有する。別言すると、キャビティCAにおける凹部31に相当する部分CA31は、当該部分CA31を超えて樹脂が流れ出すタイミングを調整する機能を有する。
【0022】
その後、キャビティCAにおける天面部11に相当する部分CA11のすべてに樹脂が流れ込むと、溶融した樹脂が流れる先は、凹部31を介した壁部21(第2部分20)に相当する部分CA21であるため、凹部31における径方向Rの全周において、溶融した樹脂が矢印F1で示す方向へ流れることになる。
【0023】
その後、作業者は、壁部21に相当する部分CA11のすべてに樹脂を流し込み、樹脂に保圧を加えた後、キャビティCAに、溶融した樹脂を注入することを停止する。その後、作業者は、溶融した樹脂を冷却して樹脂部材REを製造した後、金型MOから樹脂部材REを取り出す。最後に、樹脂部材REにシャフトSHを取り付けることで、インペラ1の製造を終了する。
【0024】
次に、
図6、
図7を用いて、比較例のインペラ1Yと、本実施形態に係るインペラ1について説明する。
図6は、比較例のインペラ1Yを、モールド成型によって製造した際において、溶融した樹脂が到達した時間を示す正面図である。
図7は、
図1に示すインペラ1を、モールド成型によって製造した際において、溶融した樹脂が到達した時間を示す正面図である。なお、
図6および
図7において、図中、右側に示す時間は、ノズルNOから溶融した樹脂を注入した時から、溶融した樹脂が各部に到達するまでの時間[秒]を示してある。比較例のインペラ1Yは、凹部31を有していない点を除いて、本実施形態に係るインペラ1と同一形状である。
【0025】
図6に示す比較例のインペラ1Yでは、ノズルNOから溶融した樹脂を注入した時から、0.45[秒]経過した時点において、溶融した樹脂が、凹部31に相当する箇所を超えた箇所1YAと、凹部31に相当する箇所を超えていない箇所1YBとがあり、溶融した樹脂が存在する部分に偏りが発生していた。つまり、比較例のインペラ1Yでは、金型MOに充填する樹脂が不均一となっていた。
【0026】
この比較の際、本実施形態に係るインペラ1を製造するノズルNOにおいて、第1ノズルNO1のそれぞれのゲート径の直径は、例えば0.8mmである。一方、第2ノズルNO2のそれぞれのゲート径の直径は、例えば1.6mmである。つまり、キャビティCAに充填する樹脂が不均一となるおそれがある状態で、インペラ1を製造した。
【0027】
図7に示す本実施形態に係るインペラ1では、ノズルNOから溶融した樹脂を注入した時から、0.45[秒]経過した時点において、径方向Rの全周において、溶融した樹脂が、凹部31を超えており、樹脂が存在する部分に偏りが発生していない。つまり、本実施形態に係るインペラ1では、金型MOに充填する樹脂が均一となっていた。
【0028】
以上に説明したように、本実施形態に係るインペラ1は、金属製のシャフトSHが取り付けられ、樹脂部材REで形成される。樹脂部材REは、ゲート痕GEを含む第1部分10と、ゲート痕GEを含まない第2部分20と、第1部分10と第2部分20との間を連結し、凹部31が形成される連結部30と、を備える。そのため、本実施形態に係るインペラ1を製造する際、凹部31によって、溶融した樹脂が均一となるように、キャビティCAの各部に樹脂を充填することができる。そのため、本実施形態に係るインペラ1は、羽根22を周方向Cへ回転させた際、シャフトSHの軸芯SHXに対してインペラ1の重心が回転中心からずれることを抑制することができる。
【0029】
本実施形態に係るインペラ1は、第1部分10は、シャフトSHの軸芯SHXが延在する軸方向Aに対して直交する天面部11であり、第2部分20は、複数の羽根22が設けられ、軸方向Aに沿って延びる壁部21であり、第1部分10に対して第2部分20が折れ曲がるように繋がる位置に凹部31が配置される。
【0030】
本実施形態に係るインペラ1において、樹脂部材REは、有底円筒状であり、樹脂部材REの内側面に凹部31が形成される。
【0031】
本実施形態に係るインペラ1において、凹部31は、ゲート痕GEよりも径方向Rの外側に設けられる。
【0032】
本実施形態に係るインペラ1において、ゲート痕GEは、天面部11のシャフトSHの取り付け位置の近傍に並んで配置される。
【0033】
なお、上述した実施形態に係るインペラ1は、シャフトSHと、樹脂部材REと、を別々に製造した後、樹脂部材REにシャフトSHを取り付けるものを説明した。しかし、本実施形態に係るインペラ1は、それに限られない。例えば、本実施形態に係るインペラ1は、柱状部材MO1の代わりに、予め製造したシャフトSHを金型MOに固定した後、金型MOのキャビティCAに溶融した樹脂を注入することによりインサート成型で製造してもよい。
【0034】
また、上述した実施形態に係るインペラ1は、ゲート径が異なる複数のノズルNOを使用して形成するものを説明した。しかし、本実施形態に係るインペラ1は、それに限られない。例えば、インペラ1は、同一のゲート径の複数のノズルNOを使用して形成してもよい。
【0035】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るインペラ1Aに関して
図8、
図9を用いて説明する。
図8は、第2実施形態に係るインペラ1Aの斜視図である。
図9は、
図8に示すインペラ1Aの一部における部分断面図である。
図10は、
図8に示すインペラ1Aを製造する金型MOAの一部の断面図である。なお、第2実施形態に係るインペラ1Aの構成において、第1実施形態に係るインペラ1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
インペラ1Aは、不図示のシャフトSHと、樹脂部材REAと、を備える。樹脂部材REAは、ゲート痕GEを含む第1部分10Aと、ゲート痕GEを含まない第2部分20Aと、第1部分10Aと第2部分20Aとの間を連結し、凹部31Aが形成される連結部30Aと、を備える。
【0037】
また、本実施形態に係るインペラ1Aにおいて、樹脂部材REAは、底面部11Aと、壁部12Aと、天面部13Aと、複数の羽根14Aと、環状部32Aと、を備える。
【0038】
底面部11Aは、複数のゲート痕GEを有し、シャフトSHの軸芯SHXが延在する軸方向Aに対して直交する。より具体的に説明すると、底面部11Aは、例えば軸方向Aから視た場合、円形の板状に形成され、軸方向Aと直交する。
【0039】
壁部12Aは、底面部11Aに繋がる。より具体的に説明すると、壁部12Aは、例えば軸方向Aに延在する円筒状に形成される。
【0040】
天面部13Aは、壁部12Aに繋がり、軸方向Aに対して直交する。より具体的に説明すると、天面部13Aは、例えば、軸方向Aから視た場合、円形の板状に形成される。
【0041】
複数の羽根14Aは、天面部13Aに繋がり、軸方向Aに延在する。本実施形態に係る樹脂部材REAは、例えば11枚の羽根14Aを有する。
【0042】
環状部32Aは、複数の羽根14Aの先端部を周方向Cで繋げる。本実施形態に係る環状部32Aは、周方向Cにおいて連続し、不図示のシャフトSHの周囲を一周する。
【0043】
環状部32Aは、径方向Rの内側に位置する内部環状部33Aと、径方向Rの外側に位置する外部環状部34Aと、内部環状部33Aと外部環状部34Aとを連結する連結部30Aとを有する。環状部32Aは、内部環状部33Aと外部環状部34Aと連結部30Aにより凹部31Aを形成する。
【0044】
内部環状部33Aの厚さt33は、例えば0.5mmであり、外部環状部34Aの厚さt34は、例えば0.5mmであり、連結部30Aの厚さt30は、例えば0.5mmである。
【0045】
第1部分10Aは、底面部11A、壁部12A、天面部13A、羽根14A、および、内部環状部33Aである。
【0046】
第2部分20Aは、外部環状部34Aである。そして、環状部32Aは、内部環状部33Aと外部環状部34Aと連結部30Aにより凹部31Aを形成する。凹部31Aは、周方向Cにおいて連続し、シャフトSHの周囲を一周する。また、凹部31Aは、樹脂部材REAの内側面に形成される。
【0047】
本実施形態に係る樹脂部材REAは、第1実施形態に係るインペラ1と同様、インペラ1Aの形状に対応するキャビティCAAを有する金型MOAに溶融した樹脂を注入することによって形成される。
【0048】
その際、溶融した樹脂は、ノズルNOを中心に、ノズルNOの周囲に広がり、キャビティCAAにおける底面部11Aに相当する部分、壁部12Aに相当する部分、天面部13Aに相当する部分、および、羽根14Aに相当する部分に、例えばこの順番で広がる。
【0049】
そして、キャビティCAAにおける内部環状部33Aに相当する部分33CAまで溶融した樹脂が流れると、凹部31Aにおける連結部30Aに相当する部分30CAを溶融した樹脂が流れる際の抵抗が大きいため、
図10中、矢印F1Aで示す方向に溶融した樹脂はほとんど流れず、部分33CAにおいて、径方向Rに沿って溶融した樹脂が流れることとなる。つまり、流体抵抗が大きい部分30CAによって、溶融した樹脂が堰き止められる。また、言い方を変えると、キャビティCAAにおける部分30CAは、溶融した樹脂の圧力が高くなるタイミングを待つ機能を有する。別言すると、キャビティCAAにおける連結部30Aに相当する部分30CAは、当該部分30CAを超えて樹脂が流れ出すタイミングを調整する機能を有する。
【0050】
その後、キャビティCAAにおける内部環状部33Aに相当する部分33CAのすべてに樹脂が流れ込むと、溶融した樹脂が流れる先は、キャビティCAAにおける連結部30Aに相当する部分30CA、および、キャビティCAAにおける外部環状部34Aに相当する部分34CAであるため、部分30CAにおける径方向Rの全周において、溶融した樹脂が矢印F1で示す方向へ流れた後、外部環状部34Aに相当する部分34CAに樹脂が流れることになる。
【0051】
その後、作業者は、外部環状部34Aに相当する部分34CAのすべてに樹脂を流し込み、樹脂に保圧を加えた後、キャビティCAAに、溶融した樹脂を注入することを停止する。その後、作業者は、溶融した樹脂を冷却して樹脂部材REAを製造した後、金型MOAから樹脂部材REAを取り出す。最後に、樹脂部材REAにシャフトSHを取り付けることで、インペラ1Aの製造を終了する。
【0052】
次に、
図11、
図12、
図13を用いて、比較例のインペラ1Zと、本実施形態に係るインペラ1Aについて説明する。
図11は、比較例のインペラ1Zの一部の断面図である。
図12は、比較例のインペラ1Zを、モールド成型によって製造する際において、溶融した樹脂が到達した時間を示す正面図である。
図13は、
図8に示すインペラ1Aを、モールド成型によって製造する際において、溶融した樹脂が到達した時間を示す正面図である。なお、
図12および
図13において、図中、右側に示す時間は、ノズルNOから溶融した樹脂を注入した時から、溶融した樹脂が各部に到達するまでの時間[秒]を示してある。
【0053】
比較例のインペラ1Zにおいて、内部環状部33Zの厚さt33Zは、例えば0.85mmであり、外部環状部34Zの厚さt34Zは、例えば0.85mmであり、連結部30Zの厚さt30Zは、例えば1.52mmである。つまり、比較例のインペラ1Zの凹部31Zの深さは、本実施形態に係るインペラ1Aの凹部31Aの深さよりも浅い点を除いて、本実施形態に係るインペラ1Aと同一形状である。
【0054】
図12に示す比較例のインペラ1Zでは、ノズルNOから溶融した樹脂を注入した時から、1.120[秒]経過した時点において、外部環状部34Aの一部に溶融した樹脂が注入されているものの、まだ溶融した樹脂が注入されていない箇所1ZAが存在していた。つまり、比較例のインペラ1Zでは、金型MOAに充填する樹脂が不均一となっていた。
【0055】
一方、
図13に示す本実施形態に係るインペラ1Aでは、ノズルNOから溶融した樹脂を注入した時から、1.12[秒]経過した時点において、径方向Rの全周において、溶融した樹脂が、外部環状部34Aの全ての部分に溶融した樹脂が注入された。つまり、本実施形態に係るインペラ1Aでは、金型MOAに充填する樹脂が均一となっていた。
【0056】
以上に説明したように、本実施形態に係るインペラ1Aは、金属製のシャフトSHが取り付けられ、樹脂部材REAで形成されるインペラ1Aであって、樹脂部材REAは、ゲート痕GEを含む第1部分10Aと、ゲート痕GEを含まない第2部分20Aと、第1部分10Aと第2部分20Aとの間を連結し、凹部31Aが形成される連結部30Aと、を備える。そのため、本実施形態に係るインペラ1Aを製造する際、凹部31Aによって、溶融した樹脂が均一となるように、キャビティCAAの各部に樹脂を充填することができる。そのため、本実施形態に係るインペラ1Aは、羽根14Aを周方向Cへ回転させた際、シャフトSHの軸芯SHXに対してインペラ1Aの重心が回転中心からずれることを抑制することができる。
【0057】
本実施形態に係るインペラ1Aにおいて、樹脂部材REAは、ゲート痕GEを有し、シャフトSHの軸芯SHXが延在する軸方向Aに対して直交する底面部11Aと、底面部11Aに繋がる壁部12Aと、壁部12Aに繋がり、軸方向Aに対して直交する天面部13Aと、天面部13Aに繋がり、軸方向Aに延在する複数の羽根14Aと、複数の羽根14Aの先端部を周方向Cで繋げる環状部32Aと、を備える。環状部32Aは、径方向Rの内側に位置する内部環状部33Aと、径方向Rの外側に位置する外部環状部34Aと、内部環状部33Aと外部環状部34Aとを連結する連結部30Aとを有する。第1部分10Aは、底面部11A、壁部12A、天面部13A、羽根14A、および、内部環状部33Aである。第2部分20Aは、外部環状部34Aである。環状部32Aは、内部環状部33Aと外部環状部34Aと連結部30Aにより凹部31Aを形成する。
【0058】
以上、本発明に係るインペラ1、1Aの実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能であることも言うまでもない。上述した各実施形態の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。そのような要旨を逸脱しない範囲での種々の変更を行ったものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0059】
1、1A インペラ、 10、10A 第1部分、 11、13A 天面部、 11A 底面部、 12A 壁部、 20、20A 第2部分、 21 壁部、 22 羽根、 30、30A 連結部、 31、31A 凹部、 32A 環状部、 33A 内部環状部、 34A 外部環状部、 C 周方向、 GE ゲート痕、 R 径方向、 RE、REA 樹脂部材、 SH シャフト、 SHX 軸芯