(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025044296
(43)【公開日】2025-04-01
(54)【発明の名称】炭化ケイ素結晶の作製装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/36 20060101AFI20250325BHJP
【FI】
C30B29/36 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024162003
(22)【出願日】2024-09-19
(31)【優先権主張番号】63/583,591
(32)【優先日】2023-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】112151418
(32)【優先日】2023-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】521237963
【氏名又は名称】盛新材料科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TAISIC MATERIALS CORP.
【住所又は居所原語表記】NO.5,ZIQIANG 1ST RD.,ZHONGLI DIST.,TAOYUAN CITY 320,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬 代良
(72)【発明者】
【氏名】虞 邦英
(72)【発明者】
【氏名】林 柏丞
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB02
4G077AB09
4G077BE08
4G077DA02
4G077EG25
4G077HA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】大寸法の高品質インゴットを作製することができる炭化ケイ素結晶の作製装置及び作製方法を提供する。
【解決手段】炭化ケイ素結晶の作製装置であって、坩堝110及び結晶拡張案内アセンブリ120を備え、坩堝は、原材料を収容する内部空間116を有する坩堝本体112と、種結晶60を固定して坩堝本体を覆う坩堝蓋114と、を含み、結晶拡張案内アセンブリは、坩堝本体に固定され、且つ坩堝蓋と原材料50との間に位置し、直径が種結晶の結晶成長面の直径よりも大きな貫通孔126を有する外縁部材122と、可撓性を持って高純度のグラファイト材料であり、貫通孔の内壁に機械的に接続され、内径が種結晶の結晶成長面の直径以下であり、長さが底部と原材料との距離よりも小さい管状コア部材124と、を含む。結晶成長過程において管状コア部材が結晶の結晶成長前縁の接触により落ちて、外縁部材が結晶と反応しない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素結晶の作製装置であって、坩堝及び結晶拡張案内アセンブリを備え、
前記坩堝は、原材料を収容するための内部空間を有する坩堝本体と、種結晶を固定するためのものであって、前記坩堝本体を覆う坩堝蓋と、を含み、
前記結晶拡張案内アセンブリは、
前記坩堝本体又は前記坩堝本体と前記坩堝蓋との間に固定され、前記種結晶と前記原材料との間に位置し、且つ貫通孔を有し、前記貫通孔の直径が前記種結晶の結晶成長面の直径よりも大きい外縁部材と、
可撓性を持って純度が99.9%よりも大きなグラファイト材料であり、前記貫通孔の内壁に機械的に接続され、内径が前記種結晶の前記結晶成長面の前記直径以下であり、長さが前記原材料との距離よりも小さく、且つ結晶成長過程において前記外縁部材が結晶と反応せず、前記結晶の結晶成長前縁が接触すると前記原材料の表面に落ちる管状コア部材と、を含む、
炭化ケイ素結晶の作製装置。
【請求項2】
前記管状コア部材の外径が本質的に前記貫通孔の前記直径に等しく、前記管状コア部材が前記貫通孔の前記内壁に係合接続される、
請求項1に記載の炭化ケイ素結晶の作製装置。
【請求項3】
前記管状コア部材が可撓性を持つ単一のグラファイト材料層を管状に巻き取ってなり、前記グラファイト材料層が前記貫通孔の前記内壁に係合接続される、
請求項1に記載の炭化ケイ素結晶の作製装置。
【請求項4】
前記管状コア部材が可撓性を持つ複数のグラファイト材料層を管状に巻き取って積層して組み合わせてなり、これらのグラファイト材料層の前記種結晶に向かう頂端が前記管状コア部材の厚さ方向に沿って下り階段状に配置され、又は平行に配置され、これらのグラファイト材料層の厚さが同じであり、又は異なる、
請求項1に記載の炭化ケイ素結晶の作製装置。
【請求項5】
これらのグラファイト材料層の前記種結晶に向かう前記頂端が前記管状コア部材の前記厚さ方向に沿って下り階段状に配置される場合、前記結晶成長過程において、前記結晶の前記結晶成長前縁が順にこれらのグラファイト材料層と接触して、接触されたこれらのグラファイト材料層を順に前記原材料の表面に落ちさせる、
請求項4に記載の炭化ケイ素結晶の作製装置。
【請求項6】
前記グラファイト材料層がグラファイトペーパー、グラファイト箔又はグラファイトブランケットである、
請求項3又は4に記載の炭化ケイ素結晶の作製装置。
【請求項7】
前記外縁部材の材質がグラファイト材料、金属炭化物材料又は耐溶融化合物である、
請求項1に記載の炭化ケイ素結晶の作製装置。
【請求項8】
前記貫通孔の前記直径が本質的に最も大きな結晶成長直径に等しい、
請求項1に記載の炭化ケイ素結晶の作製装置。
【請求項9】
炭化ケイ素結晶の作製方法であって、
炭化ケイ素結晶の作製システムを提供し、前記炭化ケイ素結晶の作製システムは炭化ケイ素結晶の作製装置、種結晶及びヒータを備え、前記炭化ケイ素結晶の作製装置は坩堝及び結晶拡張案内アセンブリを備え、前記坩堝は坩堝本体及び坩堝蓋を含み、前記坩堝本体が原材料を収容するための内部空間を有し、前記ヒータが前記坩堝の周りに設置され、前記坩堝蓋が前記種結晶を固定するためのものであって、前記坩堝本体を覆い、前記結晶拡張案内アセンブリは外縁部材及び管状コア部材を含み、前記外縁部材は前記坩堝本体又は前記坩堝本体と前記坩堝蓋との間に固定され、前記種結晶と前記原材料との間に位置し、且つ貫通孔を有し、前記貫通孔の直径が前記種結晶の結晶成長面の直径よりも大きく、前記管状コア部材は可撓性を持って純度が99.9%よりも大きなグラファイト材料であり、前記貫通孔の内壁に機械的に接続され、内径が前記種結晶の前記結晶成長面の前記直径以下であり、長さが前記原材料との距離よりも小さいステップ(a)と、
前記炭化ケイ素結晶の作製装置の成長圧力を設定し、且つ前記ヒータにより前記炭化ケイ素結晶の作製装置の成長温度を設定し、結晶を前記種結晶から成長させ、且つ結晶成長過程において前記外縁部材が前記結晶と反応せず、前記結晶の結晶成長前縁が前記管状コア部材と接触すると、前記管状コア部材が前記原材料の表面に落ちるステップ(b)と、を含む、
炭化ケイ素結晶の作製方法。
【請求項10】
前記管状コア部材は、可撓性を持つ単一のグラファイト材料層を管状に巻き取ってなり、且つ前記グラファイト材料層が前記貫通孔の前記内壁に係合接続され、又は、可撓性を持つ複数のグラファイト材料層を管状に巻き取ってなり、且つこれらのグラファイト材料層が平行に積層されて前記貫通孔の前記内壁に係合接続され、前記ステップ(b)は、前記結晶成長過程において、前記結晶の前記結晶成長前縁が前記グラファイト材料層/これらのグラファイト材料層と接触すると、前記グラファイト材料層/これらのグラファイト材料層が前記外縁部材から前記原材料の表面に落ちることを含む、
請求項9に記載の炭化ケイ素結晶の作製方法。
【請求項11】
前記管状コア部材が可撓性を持つ複数のグラファイト材料層を管状に巻き取ってなり、これらのグラファイト材料層の種結晶に向かう頂端が前記管状コア部材の厚さ方向に沿って下り階段状に配置され、且つ積層されて前記貫通孔の前記内壁に係合接続され、前記ステップ(b)は、前記結晶成長過程において、前記結晶の前記結晶成長前縁が順にこれらのグラファイト材料層と接触すると、接触されたこれらのグラファイト材料層が順に前記原材料の表面に落ちることを含む、
請求項9に記載の炭化ケイ素結晶の作製方法。
【請求項12】
前記ステップ(b)は、落ちていないグラファイト材料層は前記外縁部材が熱を受けて発生した遊離炭素が前記結晶に入ることを阻止することを更に含む、
請求項10又は11に記載の炭化ケイ素結晶の作製方法。
【請求項13】
前記ステップ(b)は、前記管状コア部材が前記原材料の表面に落ちた後、前記結晶の前記結晶成長前縁と前記外縁部材との間に形成された空間を結晶拡張領域とし、前記結晶を前記結晶拡張領域内に成長させることを更に、
含む請求項9に記載の炭化ケイ素結晶の作製方法。
【請求項14】
前記結晶は4H炭化ケイ素、6H炭化ケイ素及び15R炭化ケイ素からなる群から選ばれたものであり、前記結晶はp型炭化ケイ素、n型炭化ケイ素又は半絶縁性炭化ケイ素を含む、
請求項9に記載の炭化ケイ素結晶の作製方法。
【請求項15】
前記種結晶の直径が6インチ以上であり、結晶拡張成長後の前記結晶の直径が145~205ミリメートルである、
請求項9に記載の炭化ケイ素結晶の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は炭化ケイ素インゴットの製造技術に関し、特に低欠陥のエッジを有するインゴットを作製することができる炭化ケイ素結晶の作製装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炭化ケイ素結晶の作製装置は一般的に結晶拡張方式により徐々に寸法のより大きな結晶を得て、特に摂氏2300度を超える高温下(即ち、高温に耐える)で依然として一定の強度を持つグラファイト材料で製造された固定構造を有する案内部材(即ち、貫通孔を有する案内部材)を利用して、案内部材の内径により原材料の昇華する経路を計画し、物理気相輸送法(PVT、physical vapor transport)を用いる結晶成長過程において新たに生成した結晶が案内部材の形状に応じて成長する。
【0003】
炭化ケイ素結晶の結晶拡張プロセスにおいて、結晶エッジが案内部材の異質材料と接触ひいては反応することとなるため、結晶拡張プロセスを経た後の結晶エッジがグラファイト材料に接続され、冷却又は案内部材の除去過程において、炭化ケイ素結晶と案内部材の材料との間に熱膨張特性の違いがあるため、結晶に発生した引張応力又は圧縮応力が発生して、結晶が割れてしまう。
【0004】
また、結晶拡張プロセスにより成長した結晶が大きければ大きいほど、内部応力が大きくなり、元の等径の結晶の厚さ成長速度に応じて結晶成長を行えば、火入れ時に割れやすい。このため、一般的な炭化ケイ素結晶の結晶拡張プロセスは等径で成長する一般的な結晶製造プロセスよりも長い時間をかける必要があり、より遅い成長速度では、結晶拡張領域の結晶は結晶成長過程において最小活性化エネルギーを持つ結晶成長位置に配列調整するために必要な運動エネルギーが十分にあり、欠陥の発生を低減して良い結晶品質を得るようにする以外に、結晶の内部応力を調整して、冷却後の結晶にクラックが入る確率を低下させることもできる。
【0005】
ところが、固定構造を有する案内部材がグラファイト材料を用いる場合、結晶作製装置により作製された結晶はエッジに多結晶、高い炭素被覆物濃度、ポリタイプ(polytype)を有する結晶欠陥が発生しやすいが、結晶の多結晶、高い炭素被覆物濃度、ポリタイプなどの欠陥は常に応力集中領域であるため、後続の結晶又はチップの加工による割れを引き起こしてしまう。このため、固定構造を有する案内部材がグラファイト材料を用いる場合、利用可能な結晶又はウェハを得ることができず、又は利用比率が低いため、材料費及び時間コストが増加して、効果と利益が低くなってしまう。
【0006】
このため、業界において炭化タンタル又は炭化タングステン塗膜(又は、めっき)層を備えるグラファイト材料で製造された固定構造を有する案内部材を提供し、低いエッチングピット密度(EPD、etching pits density)を有する結晶を作製することができるが、コストが高く、割れやすくて加工しにくく、抵抗率を調整しにくく、N型結晶を製造しにくく、膨張係数に適合せず、応力が集中し、且つ結晶の寸法が増加する場合に効果がより顕著になり、また、結晶に高温金属の不純物があることを検出して後続の応用に失効又は予期せぬ影響を与えてしまうという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願の実施例は炭化ケイ素結晶の作製装置及び方法を提供し、従来の炭化ケイ素結晶の作製装置がグラファイト材料で製造された固定構造を有する案内部材を用いることによる、利用可能なインゴット又はウェハを得ることができず、又は利用比率が低い問題、及び炭化タンタル又は炭化タングステン塗膜(又は、めっき)層を備えるグラファイト材料で製造された固定構造を有する案内部材を用いることによる、コストが高く、結晶に高温金属の不純物があることを検出して後続の応用に失効又は予期せぬ影響を与えてしまう問題を解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的問題を解決するために、本願は以下のように実現される。
【0009】
本願は炭化ケイ素結晶の作製装置を提供し、坩堝及び結晶拡張案内アセンブリを備え、坩堝は、原材料を収容するための内部空間を有する坩堝本体と、種結晶を固定するためのものであって、坩堝本体を覆う坩堝蓋と、を含み、結晶拡張案内アセンブリは、坩堝本体又は坩堝本体と坩堝蓋との間に固定され、且つ坩堝蓋と原材料との間に位置し(即ち、種結晶と原材料との間に位置する)、且つ貫通孔を有し、貫通孔の直径が種結晶の結晶成長面の直径よりも大きい外縁部材と、可撓性を持って純度が99.9%よりも大きなグラファイト材料であり、貫通孔の内壁に機械的に接続され、内径が種結晶の結晶成長面の直径以下であり、長さが底部と原材料との距離よりも小さい管状コア部材と、を含む。結晶成長過程において、管状コア部材が結晶の結晶成長前縁の接触により原材料の表面に落ちて、外縁部材が結晶と反応しない。
【0010】
本願は炭化ケイ素結晶の作製方法を更に提供し、炭化ケイ素結晶の作製システムを提供し、炭化ケイ素結晶の作製システムは炭化ケイ素結晶の作製装置、種結晶及びヒータを備え、炭化ケイ素結晶の作製装置は坩堝及び結晶拡張案内アセンブリを備え、該坩堝は坩堝本体及び坩堝蓋を含み、坩堝本体が原材料を収容するための内部空間を有し、ヒータが坩堝の周りに設置され、坩堝蓋が種結晶を固定するためのものであって、坩堝本体を覆い、結晶拡張案内アセンブリは外縁部材及び管状コア部材を含み、外縁部材は坩堝本体又は坩堝本体と坩堝蓋との間に固定され、且つ坩堝蓋と原材料との間に位置し(即ち、種結晶と原材料との間に位置する)、且つ貫通孔を有し、貫通孔の直径が種結晶の結晶成長面の直径よりも大きく、管状コア部材は可撓性を持って純度が99.9%よりも大きなグラファイト材料であり、貫通孔の内壁に機械的に接続され、内径が種結晶の結晶成長面の直径以下であり、長さが原材料との距離よりも小さいステップと、炭化ケイ素結晶の作製装置の成長圧力を設定し、且つヒータにより炭化ケイ素結晶の作製装置の成長温度を設定し、結晶を種結晶から成長させ、且つ結晶成長過程において外縁部材が結晶と反応せず、結晶の結晶成長前縁が管状コア部材と接触すると、管状コア部材が原材料の表面に落ちるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本願の実施例では、外縁部材及び管状コア部材の設計(即ち、外縁部材の貫通孔の直径は種結晶の結晶成長面の直径よりも大きく、管状コア部材は可撓性を持って純度が99.9%よりも大きなグラファイト材料であり、貫通孔の内壁に機械的に接続され、内径が種結晶の結晶成長面の直径以下であり、長さが種結晶から離れる底端と原材料との距離よりも小さい)によって、結晶成長過程において管状コア部材が結晶の結晶成長前縁に接触されると原材料を落ちさせ、結晶が外縁部材と反応しないように維持するようにし、それにより本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置により作製された結晶は低欠陥のエッジを有する。また、本願に係る外縁部材は構造部材とされるものに過ぎず、反応に参加せずに再利用可能であり、且つ高純度グラファイト材料の管状コア部材(結晶成長過程において管状コア部材が落ちることとなる)を用い、炭化タンタル又は炭化タングステン塗膜(又は、めっき)層を備えるグラファイト材料で製造された固定構造を有する案内部材を用いる場合に比べて、コストがより低く、後続に影響を与える不純物を生成することもない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
ここで説明される図面は本願の更なる理解を提供するためのものであり、本願の一部を構成し、本願の模式的な実施例及びその説明は本願を解釈するためのものであり、本願を不正に限定するものではない。図中、
【
図1】
図1は本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置の一実施例の構造模式図である。
【
図2】
図2は
図1における結晶拡張案内アセンブリの斜視模式図である。
【
図3】
図3は
図1における管状コア部材が落ちる模式図である。
【
図4】
図4は本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置の別の実施例の構造模式図である。
【
図5】
図5は
図4における結晶拡張案内アセンブリの斜視模式図である。
【
図6】
図6は
図5におけるグラファイト材料層が落ちる模式図である。
【
図7】
図7は本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置の更に別の実施例の構造模式図である。
【
図8】
図8は
図6における結晶拡張案内アセンブリの斜視模式図である。
【
図9】
図9は
図8におけるグラファイト材料層が落ちる模式図である。
【
図10】
図10は
図1における炭化ケイ素結晶の作製装置が応用される炭化ケイ素結晶の作製システムの構造模式図である。
【
図11】
図11は
図7における炭化ケイ素結晶の作製システムに応用される炭化ケイ素結晶の作製方法の一実施例の方法フローチャートである。
【
図12】
図12は従来の炭化ケイ素結晶の作製装置がグラファイト材料で製造された固定構造を有する案内部材を応用して成長した6インチのウェハの一実施例の欠陥図である。
【
図13】
図13は本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置により成長した6インチのウェハの一実施例の欠陥図である。
【
図14】
図14は従来の炭化ケイ素結晶の作製装置がグラファイト材料で製造された固定構造を有する案内部材を応用して成長した8インチのウェハの一実施例のウェハの偏光グラフである。
【
図15】
図15は本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置により成長した8インチのウェハの一実施例のウェハの偏光グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、関連する図面と組み合わせて本発明の実施例を説明する。これらの図面において、同じ番号が同様又は類似の素子又は方法プロセスを示す。
【0014】
理解しなければならないことは、本明細書に使用される「備える」、「含む」などの用語は、特定の技術的特徴、数値、方法ステップ、作業処理及び/又は素子が存在することを示すためのものであるが、より多くの技術的特徴、数値、方法ステップ、作業処理、素子、又は以上の任意の組み合わせを追加してもよいことを排除しない。
【0015】
理解しなければならないことは、素子が別の素子に「接続」又は「結合」されると説明される場合、他の素子に直接連結又は結合してもよく、中間素子が存在する可能性がある。それとは逆に、素子が別の素子に「直接接続」又は「直接結合」されると説明される場合、いかなる中間素子が存在しない。
【0016】
図1~
図3を参照し、
図1は本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置の一実施例の構造模式図であり、
図2は
図1における結晶拡張案内アセンブリの斜視模式図であり、
図3は
図1における管状コア部材が落ちる模式図である。
図1~
図3に示すように、炭化ケイ素結晶の作製装置100は坩堝110及び結晶拡張案内アセンブリ120を備える。
【0017】
坩堝110は坩堝本体112及び坩堝蓋114を含み、坩堝本体112が内部空間116を有し、内部空間116が原材料50を収容するためのものであり、坩堝蓋114が種結晶60を固定するためのものであって、坩堝本体112を覆う。
【0018】
坩堝110は種結晶60を原材料50により結晶成長させるためのものであり、坩堝蓋114に固定保持装置(図示せず)が配置されてもよく、前記固定保持装置が種結晶60を固定するためのものであってもよく、且つ種結晶60の結晶成長面62の直径D2を限定する(即ち、結晶成長面62の露出する直径D2を限定する)ためのものであり、坩堝110はグラファイト坩堝であってもよいが、それに限らず、種結晶60は炭化ケイ素を用いてもよいが、それに限らず、種結晶60の直径は6インチ(150ミリメートル)以上であってもよいが、それに限らず、原材料50はケイ素及び/又は炭化ケイ素、並びに炭素を含んでもよいが、それらに限らず、原材料50の形態は粉末状、粒状又は塊状であってもよいが、それらに限らず、原材料50の純度は99.99%よりも大きくてもよく、原材料50の結晶相はα相又はβ相であってもよいが、それらに限らず、本実施例は本願を限定するためのものではない。
【0019】
結晶拡張案内アセンブリ120は外縁部材122及び管状コア部材124を含み、外縁部材122が坩堝本体112に固定され、坩堝蓋114と原材料50との間に位置する(即ち、種結晶60と原材料50との間に位置する)。外縁部材122が坩堝本体112に埋設されてもよい。別の実施例では、坩堝本体112及び坩堝蓋114に階段状エッジがそれぞれ設置されてもよく、それにより外縁部材122が坩堝本体112と坩堝蓋114の階段状エッジの底部との間に挟設され得るようにする(即ち、外縁部材122が坩堝本体112と坩堝蓋114との間に固定され、
図4に示され、
図4は本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置の別の実施例の構造模式図である)。
【0020】
外縁部材122は貫通孔126を有し、貫通孔126の直径D1が種結晶60の結晶成長面62の直径D2よりも大きく、従って、結晶成長過程において外縁部材122と反応しないように維持することができ、外縁部材122が構造部材とされるものに過ぎず、従って、再利用可能である。外縁部材122の材質はグラファイト材料、金属炭化物材料又は耐火性化合物であってもよいが、それらに限らず、グラファイト材料、高温金属炭化物材料又は耐火性化合物の純度が99.9%よりも大きくてもよく、高温金属炭化物材料は炭化タングステン、炭化タンタル、炭化ニオブ又は炭化チタンであってもよいが、それらに限らず、且つ耐高温(例えば、摂氏2500度以上)及び耐腐食の特性を備える。また、結晶成長過程において、外縁部材122は基本的に結晶と接触せず、構造部材とされるものに過ぎず、反応に参加せず、再利用可能である。
【0021】
管状コア部材124の内径D3が種結晶60の結晶成長面62の直径D2以下であり、それにより原材料50が熱を受けてから昇華・気化して気相分子の形式で管状コア部材124を通過して種結晶60の結晶成長面62に堆積する(即ち、管状コア部材124が結晶成長・結晶拡張の経路に位置する)ようにする。
【0022】
管状コア部材124は、可撓性を持って純度が99.9%よりも大きなグラファイト材料であり、貫通孔126の内壁に機械的に接続されることにより、結晶成長過程において結晶の結晶成長前縁の接触により落ちるようにし(
図3に示される)、且つ長さL1(即ち、管状コア部材124の種結晶60に向かう頂端から種結晶60を離れる底端との距離)が原材料50との距離L2(即ち、管状コア部材124の種結晶60から離れる底端と原材料50の表面との距離)よりも小さいことにより、最終的に原材料50の表面に落ちることができるようにし、結晶の結晶拡張成長に影響を与えず、且つ結晶拡張案内アセンブリ120からより大きな結晶成長直径が露出し、結晶が結晶拡張成長して外縁部材122と接触することにより発生し得る欠陥及び応力を解消する。
【0023】
また、結晶拡張案内アセンブリ120の設置によって、結晶の内部応力を改善することができ、厚さが10ミリメートルよりも大きな球状結晶を成長させることができ、且つ球状結晶が火入れ時に割れることがない(炭化ケイ素の結晶成長過程において、結晶の内部応力が大きすぎれば、厚さが10ミリメートルよりも大きな球状結晶を成長させることができない)。説明すべきことは、本実施例における管状コア部材124の種結晶60から離れる底端と外縁部材122の種結晶60から離れる底端とが平行に設置されるため、管状コア部材124と原材料50との距離L2が外縁部材122と原材料50との距離に等しいが、この実施例は本発明を限定するためのものではない。
【0024】
一実施例では、管状コア部材124の外径が本質的に貫通孔126の直径D1に等しくてもよく、管状コア部材124が貫通孔126の内壁に係合接続されてもよい。例えば、管状コア部材124が可撓性を持つため、中間ばめ方式により貫通孔126の内壁に接続されることができ、これにより、結晶の結晶成長前縁が管状コア部材124と接触すると、管状コア部材124が接触推力により摺動して原材料50の表面に落ちるようにする。
【0025】
一実施例では、貫通孔126の直径D1が本質的に最も大きな結晶成長直径に等しい。具体的に、管状コア部材124が最終的に原材料50の表面に落ちることができるため、結晶の結晶成長前縁と外縁部材122との間に形成された空間を結晶成長のための結晶拡張領域とし、従って、貫通孔126の直径D1が本質的に最も大きな結晶成長直径に等しい。
【0026】
一実施例では、管状コア部材124が可撓性を持つ単一のグラファイト材料層70を管状に巻き取ってなるものであってもよく、グラファイト材料層70が貫通孔126の内壁に係合接続されてもよい(
図1~
図3に示される)。グラファイト材料層70はグラファイトペーパー、グラファイト箔又はグラファイトブランケットであってもよいが、それらに限らず、必要な形状に加工しやすい利点を有し、グラファイト材料層70の厚さは3ミリメートルであってもよいが、それに限らない。
【0027】
グラファイト材料層70が原材料50に落ちた後、原材料50の表面に坩堝110の内壁と結晶との間を隔てる炭素被覆物通路を形成することができるため、結晶中の炭素被覆物濃度を低減することもでき、それにより結晶欠陥(例えば、微小管及び転位)の形成原因を減少させる。
【0028】
一実施例では、管状コア部材124が可撓性を持つ複数のグラファイト材料層70を管状に巻き取って積層して組み合わせてなるものであってもよく、これらのグラファイト材料層70の種結晶60に向かう頂端が管状コア部材124の厚さ方向F(即ち、管状コア部材124の内口径から外口径に向かう方向)に沿って平行に配置され(即ち、各グラファイト材料層70の長さが一致し、
図4~
図6に示され、
図5は
図4における結晶拡張案内アセンブリの斜視模式図であり、
図6は
図5におけるグラファイト材料層が落ちる模式図である)、又は下り階段状に配置され(
図7~
図9に示すように、
図7は本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置の更に別の実施例の構造模式図であり、
図8は
図6における結晶拡張案内アセンブリの斜視模式図であり、
図9は
図8におけるグラファイト材料層が落ちる模式図である)、これらのグラファイト材料層70の厚さが同じであってもよく、又は異なってもよい。
【0029】
各グラファイト材料層70の厚さは1ミリメートルであってもよいが、それに限らず、グラファイト材料層70の層数は3層であってもよいが、それに限らず、必要に応じてグラファイト材料層70の層数を調整することができる。
【0030】
図4~
図6に示すように、これらのグラファイト材料層70の種結晶60に向かう頂端が管状コア部材124の厚さ方向Fに沿って平行に配置される場合、結晶成長過程において、結晶の結晶成長前縁がこれらのグラファイト材料層70と同時に接触してもよく、それによりこれらのグラファイト材料層70が原材料50の表面に同時に落ちることができるようにする。具体的に、これらのグラファイト材料層70が平行に積層して組み合わせられる設計によって、結晶の結晶成長前縁がこれらのグラファイト材料層70と同時に接触するとき、これらのグラファイト材料層70が原材料50の表面に同時に落ちることができるようにする。
【0031】
図7~
図9に示すように、これらのグラファイト材料層70の種結晶60に向かう頂端が管状コア部材124の厚さ方向Fに沿って下り階段状に配置される場合、結晶成長過程において、結晶の結晶成長前縁が順にこれらのグラファイト材料層70と接触して、接触されたこれらのグラファイト材料層70を順に原材料50の表面に落ちさせる。
【0032】
図9において、これらのグラファイト材料層70が下り階段状に配置される(即ち、これらのグラファイト材料層70の間に高度差がある)上で、第2層のグラファイト材料層70が最外層のグラファイト材料層70よりも優先的に結晶の結晶成長前縁に接触されて落ちるようにし、その後、最外層のグラファイト材料層70が結晶の結晶成長前縁に接触されて落ちることとなる。
【0033】
各グラファイト材料層70はグラファイトペーパー、グラファイト箔又はグラファイトブランケットであってもよいが、それらに限らず、必要な形状に加工しやすい利点を有し、3つのグラファイト材料層70の最大長さL3(即ち、最内層のグラファイト材料層70の長さL3)が管状コア部材124の種結晶60から離れる底端と原材料50の表面との距離L2よりも小さく、それにより管状コア部材124が最終的に原材料50の表面に落ちることができるようにし、結晶の結晶拡張成長に影響を与えない。
【0034】
説明すべきことは、本実施例における管状コア部材124の種結晶60から離れる底端と外縁部材122の種結晶60から離れる底端とが平行に設置されるため、管状コア部材124と原材料50との距離L2が外縁部材122と原材料50との距離に等しいが、この実施例は本発明を限定するためのものではない。また、各グラファイト材料層70が原材料50に落ちた後、原材料50の表面に坩堝110の内壁と結晶との間を隔てる炭素被覆物通路を形成することができ、結晶中の炭素被覆物濃度を低減することもでき、それにより結晶欠陥(例えば、微小管及び転位)の形成原因を減少させる。
【0035】
図10は
図1における炭化ケイ素結晶の作製装置が応用される炭化ケイ素結晶の作製システムの構造模式図である。炭化ケイ素結晶の作製システム200は炭化ケイ素結晶の作製装置100、種結晶60及びヒータ80を備え、ヒータ80が熱源を供給するためのものであり、ヒータ80が坩堝110の周りに設置され、図示のヒータ80が複数あり、システム配置に応じて1つ設置されてもよく、図示の数は模式的に説明するものであって、ヒータ80の実際の設置数を制限するものではない。
【0036】
ヒータ80は高周波ヒータ又は抵抗ヒータを用いてもよく、より具体的な実施例では、ヒータ80は加熱コイル又は加熱抵抗線(網)を用いてもよい。また、炭化ケイ素結晶の作製システム200は保温材料90を更に含んでもよく、保温材料90が坩堝本体112及び坩堝蓋114の外部に設置されてもよく、保温材料90は多孔質断熱炭素材料であってもよいが、それに限らず、それにより温度を保持する効果が実現される。また、炭化ケイ素結晶の作製システム200に
図4又は
図7における炭化ケイ素結晶の作製装置100が応用されてもよい。
【0037】
図11は
図7における炭化ケイ素結晶の作製システムに応用される炭化ケイ素結晶の作製方法の一実施例の方法フローチャートである。
図11に示すように、炭化ケイ素結晶の作製方法300は、炭化ケイ素結晶の作製システム200を提供するステップ(ステップ310)と、炭化ケイ素結晶の作製装置100の成長圧力を設定し、且つヒータ80により炭化ケイ素結晶の作製装置100の成長温度を設定し、結晶を種結晶60から成長させ、且つ結晶成長過程において外縁部材122が結晶と反応せず、結晶の結晶成長前縁が管状コア部材124と接触すると、管状コア部材124が原材料50の表面に落ちるステップ(ステップ320)と、を含む。
【0038】
成長圧力及び成長温度は実際のニーズに応じて調整されてもよく、例えば、成長圧力は200パスカル(pa、pascal)~500pa又は400pa~1100paであってもよいが、それらに限らず、成長温度は温度勾配を含んでもよく、温度勾配が坩堝110の上方温度及び坩堝110の下方温度を含んでもよく、温度勾配を形成するように坩堝110の下方温度が坩堝110の上方温度よりも高い必要があり、それにより結晶成長の駆動力を発生させるのであり、坩堝110の上方温度は1950℃~2150℃又は2100℃~2200℃であってもよいが、それらに限らず、坩堝110の下方温度は坩堝110の上方温度よりも高ければよく、実際のニーズに応じて坩堝110の上方温度及び坩堝110の下方温度を調整することができる。
【0039】
一実施例では、ステップ320は、管状コア部材124が原材料50の表面に落ちた後、結晶の結晶成長前縁と外縁部材122との間に形成された空間を結晶拡張領域とし、結晶を前記結晶拡張領域内に成長させることを更に含んでもよい。結晶が前記結晶拡張領域内に結晶拡張成長する際に外縁部材122により阻止されず、且つ外縁部材122と反応することがなく、従って、炭化ケイ素結晶の作製方法300を応用して成長した結晶に低欠陥・低応力のエッジが発生することができる。
【0040】
結晶エッジの応力により低角粒界(LAGB、low angle grain boundary)が発生し、LAGBの先端に応力集中点が存在するため、球状結晶の火入れ時の割れ問題及び結晶の加工時の割れ問題を引き起こしやすく、結晶エッジの応力を改善した後、結晶をインゴットひいてはウェハ(チップ)に加工する直行率を向上させて、生産コストを低減することができる。
【0041】
炭化ケイ素結晶の作製システム200が
図1における炭化ケイ素結晶の作製装置100を用いることができ(即ち、管状コア部材124が可撓性を持つ単一のグラファイト材料層70を管状に巻き取ってなるものであってもよく、且つグラファイト材料層70が貫通孔126の内壁に係合接続される)、又は
図4における炭化ケイ素結晶の作製装置100を用いることができる(即ち、管状コア部材124が可撓性を持つ複数のグラファイト材料層70を管状に巻き取ってなるものであってもよく、且つこれらのグラファイト材料層70が平行に積層されて貫通孔126の内壁に係合接続される)場合、ステップ320は、結晶成長過程において、結晶の結晶成長前縁が単層のグラファイト材料層70/多層のグラファイト材料層70と接触すると、単層のグラファイト材料層70/多層のグラファイト材料層70が外縁部材122から原材料50の表面に落ちることを含んでもよい。
【0042】
また、ステップ320は、落ちていないグラファイト材料層70は外縁部材122が熱を受けて発生した遊離炭素が結晶に入ることを阻止する(即ち、結晶成長初期に、管状コア部材124は外縁部材122が熱を受けて発生した遊離炭素が結晶に入ることを阻止する)ことを更に含んでもよい。具体的に、外縁部材122が熱を受けて発生した遊離炭素は炭化ケイ素の二次元種結晶の成長に影響を与えてしまうため、落ちていないグラファイト材料層70の設置によって、この状況の発生を回避することができる。
【0043】
また、従来のグラファイト材料で製造された固定構造を有する案内部材が熱を受けると不可避的に不純物(例えば、アルミニウム、窒素、ホウ素)を成長雰囲気に導入し、成長の初期段階に成長界面での不均質核形成をもたらし、それにより炭化ケイ素の二次元種結晶の成長を阻止してポリタイプ介在物を形成し、且つ成長界面の前縁の熱場及び流れ場の安定性を明らかに破壊し、このため、本願における反応に参加しない外縁部材122及び接触しなければ落ちない高純度のグラファイト材料層70の設置によって、上記状況の発生を回避することができる。
【0044】
炭化ケイ素結晶の作製システム200が
図7における炭化ケイ素結晶の作製装置100を用いることができる(即ち、管状コア部材124が可撓性を持つ複数のグラファイト材料層70を管状に巻き取ってなり、これらのグラファイト材料層70の種結晶60に向かう頂端が管状コア部材124の厚さ方向Fに沿って下り階段状に配置されて積層されて貫通孔126の内壁に係合接続される)場合、ステップ320は、結晶成長過程において、結晶の結晶成長前縁が順にこれらのグラファイト材料層70と接触すると、接触されたこれらのグラファイト材料層70が順に原材料50の表面に落ちることを含んでもよい。また、ステップ320は、落ちていないグラファイト材料層70は外縁部材122が熱を受けて発生した遊離炭素が結晶に入ることを阻止することを更に含んでもよい。
【0045】
一実施例では、前記結晶は4H炭化ケイ素、6H炭化ケイ素及び15R炭化ケイ素からなる群から選ばれたものであってもよいが、この実施例は本願を限定するためのものではない。例えば、前記結晶は他のポリタイプ(polytype)炭化ケイ素であってもよい。
【0046】
一実施例では、前記結晶は半絶縁性炭化ケイ素を含んでもよい。
【0047】
一実施例では、前記結晶はn型炭化ケイ素を含んでもよい。
【0048】
一実施例では、前記結晶はp型炭化ケイ素を含んでもよい。
【0049】
一実施例では、種結晶60の直径は6インチ以上であってもよいが、それに限らず、炭化ケイ素結晶の作製方法300を応用して結晶拡張成長した後の結晶の直径は145~205ミリメートルであってもよいが、それらに限らない。説明すべきことは、前記固定保持装置が種結晶60を固定する際に結晶成長面62の露出する直径D2を限定することとなり(結晶成長面62の露出する直径D2が種結晶60の直径よりも小さい)、従って、結晶拡張成長後の結晶の直径は種結晶60の直径よりも小さい可能性があり、結晶拡張成長後の結晶の直径は外縁部材122の貫通孔126の直径D1に応じて決定されてもよい。
【0050】
一実施例では、結晶拡張成長後の結晶は表面が突出形状又は平坦形状を呈する炭化ケイ素単結晶インゴットであってもよい。
【0051】
表1を参照し、表1は異なる実施例における外縁部材の貫通孔の直径、管状コア部材のグラファイト材料層の層数、種結晶の結晶成長面の直径(即ち、前記固定保持装置が種結晶を固定する際の種結晶の露出する結晶成長面の直径)、結晶拡張直径、成長圧力及び成長温度の関係表であり、各グラファイト材料層の厚さが1ミリメートルであってもよく、最終的な結晶直径(即ち、最も大きな結晶成長直径)が本質的に外縁部材の貫通孔の直径に等しくてもよく、結晶拡張直径が最終的な結晶直径と種結晶の結晶成長面の直径との差分であり、前記成長温度が坩堝の上方温度及び坩堝の下方温度を含んでもよく、坩堝の下方温度が上方温度よりも高く、外縁部材の厚さ(即ち、外縁部材の種結晶に向かう頂端から種結晶を離れる底端までの距離)が30ミリメートルであってもよいが、それに限らない。
【0052】
【0053】
表1から分かるように、炭化ケイ素結晶の作製装置に適切な成長圧力及び成長温度を設定することにより、結晶を種結晶から成長させることができ、外縁部材の貫通孔の直径により最終的な結晶直径(即ち、最も大きな結晶成長直径)を限定することができ、実際のニーズ(例えば、異なる外縁部材の貫通孔の直径)に応じてグラファイト材料層の層数を調整することができる。
【0054】
図12及び
図13を参照し、
図12は従来の炭化ケイ素結晶の作製装置がグラファイト材料で製造された固定構造を有する案内部材を応用して成長した6インチのウェハの一実施例の欠陥図であり、
図13は本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置により成長した6インチのウェハの一実施例の欠陥図である。
【0055】
図12におけるウェハについては、種結晶の結晶成長面の直径が145ミリメートル、固定構造を有する案内部材の貫通孔の直径が152ミリメートル、成長圧力が400pa、及び坩堝の上方温度が2120℃であることを、従来の炭化ケイ素結晶の作製装置が利用して生成した最終的な結晶直径が153ミリメートルである結晶を、加工成形して150ミリメートルのインゴットに製造し、更に切断・研磨・バフ研磨などの加工ステップにより150ミリメートルのウェハシートに製造し、且つ表面洗浄プロセスを経てウェハの表面欠陥検出を行って
図12の欠陥図を取得する。
【0056】
図13におけるウェハについては、種結晶の結晶成長面の直径が145ミリメートル、外縁部材の貫通孔の直径が155ミリメートル、管状コア部材のグラファイト材料層の層数が5層(各グラファイト材料層の厚さが1ミリメートルであってもよい)、成長圧力が400pa、及び坩堝の上方温度が2115℃であることを、本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置が利用して生成した最終的な結晶直径が154.5ミリメートルである結晶を、加工成形して150ミリメートルのインゴットに製造し、更に切断・研磨・バフ研磨などの加工ステップにより150ミリメートルのウェハシートに製造し、且つ表面洗浄プロセスを経てウェハの表面欠陥検出を行って
図13の欠陥図を取得する。
【0057】
図12及び
図13における黒点がウェハの欠陥箇所である。
図12におけるウェハの総欠陥数が1279個、ウェハの総欠陥密度(TDD、total defect density)が約7.89/cm
2、微小管数が606個、微小管密度(MPD、Micro-pipe density)が約3.74/cm
2であり、且つほとんどの欠陥がウェハのエッジに分布し、
図13におけるウェハの総欠陥数が41個(一部の欠陥が大きなフラットエッジのレーザエッチング箇所に位置し、検出テーブルが欠陥であると誤判断する可能性があるため、実際の総欠陥数が一層少なくなる)、ウェハの総欠陥密度が約0.25/cm
2、微小管数が3つ、微小管密度が約0.02/cm
2であり、且つエッジがきれいで欠陥が少ない。
【0058】
従って、
図12及び
図13から分かるように、従来の炭化ケイ素結晶の作製装置により成長したウェハに比べて、本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置により成長したウェハは低欠陥・低応力のエッジを有し、且つ本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置を応用して得たウェハにおける結晶拡張案内アセンブリの不純物又はケイ素蒸気が坩堝壁を侵食したり、結晶拡張案内アセンブリに炭素被覆物が発生したりすることによる総欠陥密度は大幅に低減する。
【0059】
上記
図12及び
図13の実施例における前記加工により製造された150ミリメートル(即ち、6インチ)のインゴットはいずれも12枚の6インチの炭化ケイ素ウェハに製造される。
【0060】
図12の実施例において得られた12枚のウェハのうち、加工により割れたものが5枚、最終的な加工を完了したものが7枚あり、7枚のウェハのうちの1枚のみのウェハのMPDが1/cm
2よりも小さく、市販品グレードに合い、歩留まりが8.3%であり、
図13の実施例において得られた12枚のウェハのうち、加工を完了したものが12枚(加工による割れがない)あり、12枚のウェハのMPDがいずれも1/cm
2よりも小さく、製品グレードのウェハの歩留まりが100%である。従って、結晶エッジの応力を改善し、応力による結晶欠陥を改善し、結晶の総欠陥密度を低減することにより、製品グレードのウェハの収率を向上させることが分かる。
【0061】
図14及び
図15を参照し、
図14は従来の炭化ケイ素結晶の作製装置がグラファイト材料で製造された固定構造を有する案内部材を応用して成長した8インチのウェハの一実施例のウェハの偏光グラフであり、
図15は本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置により成長した8インチのウェハの一実施例のウェハの偏光グラフである。
【0062】
図14におけるウェハについては、種結晶の結晶成長面の直径が193ミリメートル、固定構造を有する案内部材の内径が200ミリメートル、成長圧力が200pa、及び坩堝の上方温度が1980℃であることを、従来の炭化ケイ素結晶の作製装置が利用して生成した最終的な結晶直径が203ミリメートルである結晶を、加工・スライス・研磨してから直径200ミリメートルの炭化ケイ素ウェハを得て、
図15におけるウェハについては、種結晶の結晶成長面の直径が195ミリメートル、外縁部材の貫通孔の直径が205ミリメートル、管状コア部材のグラファイト材料層の層数が5層(各グラファイト材料層の厚さが1ミリメートルであってもよい)、成長圧力が200pa、及び坩堝の上方温度が2000℃であることを、本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置が利用して生成した最終的な結晶直径が203~204ミリメートルである結晶を、加工・スライス・研磨してから直径200ミリメートルの炭化ケイ素ウェハを得る。
【0063】
図14及び
図15に示すように、従来の炭化ケイ素結晶の作製装置により成長したウェハに比べて、本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置により成長したウェハは低欠陥・低応力のエッジを有し、且つ本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置を応用して得たウェハにおける結晶拡張案内アセンブリの不純物又はケイ素蒸気が坩堝壁を侵食したり、結晶拡張案内アセンブリに炭素被覆物が発生したりすることによる多結晶状態の挿入物の欠陥は減少する。
【0064】
要するに、外縁部材及び管状コア部材の設計(即ち、外縁部材の貫通孔の直径は種結晶の結晶成長面の直径よりも大きく、管状コア部材は可撓性を持って純度が99.9%よりも大きなグラファイト材料であり、貫通孔の内壁に機械的に接続され、内径が種結晶の結晶成長面の直径以下であり、長さが種結晶から離れる底端と原材料との距離よりも小さい)によって、結晶成長過程において管状コア部材が結晶の結晶成長前縁に接触されると原材料を落ちさせ、結晶が外縁部材と反応しないように維持するようにし、それにより本願に係る炭化ケイ素結晶の作製装置により作製された結晶は低欠陥のエッジを有する。
【0065】
また、本願に係る外縁部材は構造部材とされるものに過ぎず、反応に参加せずに再利用可能であり、且つ高純度グラファイト材料の管状コア部材(結晶成長過程において管状コア部材が落ちることとなる)を用い、炭化タンタル又は炭化タングステン塗膜(又は、めっき)層を備えるグラファイト材料で製造された固定構造を有する案内部材を用いる場合に比べて、コストがより低く、後続に影響を与える不純物を生成することもない。
【0066】
また、結晶の内部応力及びエッジ応力を改善することにより、球状結晶の成長厚さやインゴットの製品厚さを増加させ、エッジ応力による低角粒界や微小管を改善することにより、ウェハの加工又はプロセス過程における割れ確率を減少させ、同じ炉内投入数及び炉内投入材料や人件費で、製品グレードのウェハの全体生産量を増加させることができる。
【0067】
本発明は以上の実施例により説明したが、注意すべきことは、これらの説明は本発明を限定するためのものではない。それとは逆に、この発明は当業者にとって明らかな修正及び類似の設定を含む。従って、出願の特許範囲は最も広い方式で解釈されてすべての明らかな修正及び類似の設定を含む必要がある。
【符号の説明】
【0068】
50 原材料
60 種結晶
62 結晶成長面
70 グラファイト材料層
80 ヒータ
90 保温材料
100 炭化ケイ素結晶の作製装置
110 坩堝
112 坩堝本体
114 坩堝蓋
116 内部空間
120 結晶拡張案内アセンブリ
122 外縁部材
124 管状コア部材
126 貫通孔
200 炭化ケイ素結晶の作製システム
300 炭化ケイ素結晶の作製方法
310、320 ステップ
D1、D2、D3 直径
F 厚さ方向
L1、L3 長さ
L2 距離