(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025044453
(43)【公開日】2025-04-02
(54)【発明の名称】キッチンタオルロール
(51)【国際特許分類】
B31F 1/07 20060101AFI20250326BHJP
A47J 43/28 20060101ALI20250326BHJP
A47L 13/16 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
B31F1/07
A47J43/28
A47L13/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023152020
(22)【出願日】2023-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 遥絵
【テーマコード(参考)】
3B074
3E078
4B053
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA02
3B074AA08
3B074AB01
3B074AC03
3E078AA20
3E078BB51
3E078BC06
3E078DD09
4B053AA03
4B053CA30
(57)【要約】
【課題】ロール径の増大を抑制するとともに、キッチンタオルの吸水性(吸水量)を簡単かつ効果的に向上することのできるキッチンタオルロールの提供
【解決手段】
3プライのキッチンタオルロールであって、3枚のシートのうちの2枚のシートは、シングルエンボス結合シートを構成し、3枚のシートのうちの残りの1枚のシートは、エンボスシートであり、シングルエンボス結合シートのシングルエンボス凸部がエンボスシートの非エンボス凸部に対面し、エンボスシートのエンボス凸部がシングルエンボス結合シートの非シングルエンボス凸部に対面する、ネステッド形式の積層構造で積層されているとともに、シングルエンボス結合シートのシングルエンボス凸部とエンボスシートの非エンボス凸部との間に介在する接着糊を介して接着されており、キッチンタオルの巻密度が0.30m/cm
2以上0.90m/cm
2以下であるキッチンタオルロール。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3枚のシートが積層されてなるキッチンタオルがロール状に巻回されたキッチンタオルロールであって、
前記3枚のシートのうちの2枚のシートは、シングルエンボス形式の積層構造で積層されて、片面にシングルエンボス凹部を有するとともに、他の片面に前記シングルエンボス凹部に対応したシングルエンボス凸部と前記シングルエンボス凸部を取り囲む非シングルエンボス凸部とを有するシングルエンボス結合シートを構成し、
前記3枚のシートのうちの残りの1枚のシートは、片面にエンボス凹部を有するとともに、他の片面に前記エンボス凹部に対応したエンボス凸部と前記エンボス凸部を取り囲む非エンボス凸部とを有するエンボスシートであり、
前記シングルエンボス結合シートと前記エンボスシートとは、前記シングルエンボス結合シートの前記シングルエンボス凸部が前記エンボスシートの前記非エンボス凸部に対面し、前記エンボスシートの前記エンボス凸部が前記シングルエンボス結合シートの前記非シングルエンボス凸部に対面する、ネステッド形式の積層構造で積層されているとともに、前記シングルエンボス結合シートの前記シングルエンボス凸部と前記エンボスシートの前記非エンボス凸部との間に介在する接着糊を介して接着されており、
前記キッチンタオルの巻密度が0.30m/cm2以上0.90m/cm2以下であり、
前記巻密度は、次式
巻密度=(キッチンタオルの巻長×キッチンタオルのシート数)÷ロール断面積
によって求められることを特徴とするキッチンタオルロール。
【請求項2】
前記キッチンタオルの巻長が9.0m以上35.0m以下であり、前記3枚のシートの1枚あたりの坪量が14.0g/m2以上30.0g/m2以下であることを特徴とする請求項1に記載のキッチンタオルロール。
【請求項3】
前記キッチンタオルの紙厚が460μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキッチンタオルロール。
【請求項4】
前記シングルエンボス結合シートの前記シングルエンボス凹部のエンボスパターンと前記エンボスシートの前記エンボス凹部のエンボスパターンとは、同一パターンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキッチンタオルロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンタオルロールに関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンにおいては、野菜や肉などの食材の水切りや油切り、フライパンの油拭き、食卓の汚れ拭きなどの用途に、長尺のキッチンタオルがロール状に巻回された形態のキッチンタオルロールが、一般に広く用いられている。キッチンタオルロールのロールから引き出されたキッチンタオルは所定長毎に切り離されて使用される。
【0003】
特許文献1は、吸水効果(保水性)の向上を図りつつ、ロール径の増大を抑制し得る、キッチンタオルロールを提案している。特許文献1のキッチンタオルロールは、3枚のシートを積層してなるキッチンタオルがロール状に巻回された形態を有する。
【0004】
特許文献1において、キッチンタオルを構成する3枚のシートのうちの2枚については、エンボス加工時の2枚重ね同時プレスにより、一体的な形状のエンボス凹部およびエンボス凸部を有する。この2枚のシートと3枚のシートのうちの残りの1枚のシートとは、2枚のシートのエンボス凸部が残りの1枚のシートのエンボス凹部に空隙を残しつつ嵌め込まれるようにして重ね合わされて、2枚のシートのエンボス凸部と残りの1枚のシートのエンボス凹部との対面部分に設けられた糊により結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記構造のキッチンタオルは、吸水性(吸水量)の観点で改善の余地がある。また、キッチンタオルにおけるシートの積層構造を複雑化することなく、簡単かつ効果的に吸水性を向上させることが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、ロール径の増大を抑制するとともに、キッチンタオルの吸水性(吸水量)を簡単かつ効果的に向上することのできるキッチンタオルロールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行い、本発明者は、3枚のシートが積層されてなるキッチンタオルがロール状に巻回されたキッチンタオルロールであって、3枚のシートのうちの2枚のシートは、シングルエンボス形式の積層構造で積層されて、片面にシングルエンボス凹部を有するとともに、他の片面にシングルエンボス凹部に対応したシングルエンボス凸部とシングルエンボス凸部を取り囲む非シングルエンボス凸部とを有するシングルエンボス結合シートを構成し、3枚のシートのうちの残りの1枚のシートは、片面にエンボス凹部を有するとともに、他の片面にエンボス凹部に対応したエンボス凸部とエンボス凸部を取り囲む非エンボス凸部とを有するエンボスシートであり、シングルエンボス結合シートとエンボスシートとは、シングルエンボス結合シートのシングルエンボス凸部がエンボスシートの非エンボス凸部に対面し、エンボスシートのエンボス凸部がシングルエンボス結合シートの非シングルエンボス凸部に対面する、ネステッド形式の積層構造で積層されているとともに、シングルエンボス結合シートのシングルエンボス凸部とエンボスシートの非エンボス凸部との間に介在する接着糊を介して接着されており、キッチンタオルの巻密度が0.30m/cm2以上0.90m/cm2以下であり、巻密度は、次式「巻密度=(キッチンタオルの巻長×キッチンタオルのシート数)÷ロール断面積」によって求められることを特徴とするキッチンタオルロールにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
具体的には、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 3枚のシートが積層されてなるキッチンタオルがロール状に巻回されたキッチンタオルロールであって、
3枚のシートのうちの2枚のシートは、シングルエンボス形式の積層構造で積層されて、片面にシングルエンボス凹部を有するとともに、他の片面にシングルエンボス凹部に対応したシングルエンボス凸部とシングルエンボス凸部を取り囲む非シングルエンボス凸部とを有するシングルエンボス結合シートを構成し、
3枚のシートのうちの残りの1枚のシートは、片面にエンボス凹部を有するとともに、他の片面にエンボス凹部に対応したエンボス凸部とエンボス凸部を取り囲む非エンボス凸部とを有するエンボスシートであり、
シングルエンボス結合シートとエンボスシートとは、シングルエンボス結合シートのシングルエンボス凸部がエンボスシートの非エンボス凸部に対面し、エンボスシートのエンボス凸部がシングルエンボス結合シートの非シングルエンボス凸部に対面する、ネステッド形式の積層構造で積層されているとともに、シングルエンボス結合シートのシングルエンボス凸部とエンボスシートの非エンボス凸部との間に介在する接着糊を介して接着されており、
キッチンタオルの巻密度が0.30m/cm2以上0.90m/cm2以下であり、
巻密度は、次式
巻密度=(キッチンタオルの巻長×キッチンタオルのシート数)÷ロール断面積
によって求められることを特徴とするキッチンタオルロール。
[2] キッチンタオルの巻長が9.0m以上35.0m以下であり、3枚のシートの1枚あたりの坪量が14.0g/m2以上30.0g/m2以下であることを特徴とする[1]に記載のキッチンタオルロール。
[3] キッチンタオルの紙厚が460μm以上1000μm以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載のキッチンタオルロール。
[4] シングルエンボス結合シートのシングルエンボス凹部のエンボスパターンとエンボスシートのエンボス凹部のエンボスパターンとは、同一パターンであることを特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載のキッチンタオルロール。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロール径の増大を抑制するとともに、キッチンタオルの吸水性(吸水量)を簡単かつ効果的に向上することのできるキッチンタオルロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るキッチンタオルロールの概略図である。
【
図2】キッチンタオルの構成を説明する概略図である。
【
図3】エンボス凹部の面積および深さの測定方法を説明する図である。
【
図4】キッチンタオルロール製造設備の例の模式図である。
【
図5】キッチンタオルの吸水量の測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。図中、同一の符号は、同一または同様の構成を示すものとする。以下の実施形態および図面は例示の目的で記載したものであり、本発明を限定するものではない。
【0013】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係るキッチンタオルロールは、以下の(1)から(6)の構成を備える。
(1) 3枚のシートが積層されてなるキッチンタオルがロール状に巻回されたキッチンタオルロールである。
(2) 3枚のシートのうちの2枚のシートは、シングルエンボス形式の積層構造で積層されて、片面にシングルエンボス凹部を有するとともに、他の片面にシングルエンボス凹部に対応したシングルエンボス凸部とシングルエンボス凸部を取り囲む非シングルエンボス凸部とを有するシングルエンボス結合シートを構成する。
(3) 3枚のシートのうちの残りの1枚のシートは、片面にエンボス凹部を有するとともに、他の片面にエンボス凹部に対応したエンボス凸部とエンボス凸部を取り囲む非エンボス凸部とを有するエンボスシートである。
(4) シングルエンボス結合シートとエンボスシートとは、シングルエンボス結合シートのシングルエンボス凸部がエンボスシートの非エンボス凸部に対面し、エンボスシートのエンボス凸部がシングルエンボス結合シートの非シングルエンボス凸部に対面する、ネステッド形式の積層構造で積層されているとともに、シングルエンボス結合シートのシングルエンボス凸部とエンボスシートの非エンボス凸部との間に介在する接着糊を介して接着されている。
(5) キッチンタオルの巻密度が0.30m/cm2以上0.90m/cm2以下であり、巻密度は、次式
巻密度=(キッチンタオルの巻長×キッチンタオルのシート数)÷ロール断面積
によって求められる。
【0014】
(キッチンタオルロール)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るキッチンタオルロール100の概略図である。
図1の(a)は、キッチンタオルロール100の全体斜視図であり、
図1の(b)は、キッチンタオルロール100の端面を示す概略図である。
【0015】
キッチンタオルロール100は、紙管5の周りにキッチンタオル30がロール状に巻回されてなる。
【0016】
(紙管)
図1を参照して、紙管5は、円筒形状を有する。紙管5の外径であるコア径DCは、キッチンタオルロールを回転支持するためのキッチンタオルロール用ホルダの部材(コア芯やフック等)のサイズに応じて設定され、一般には、38mm~40mm程度である。
【0017】
(ミシン目)
図1の(a)を参照して、キッチンタオル30は、任意選択的に、キッチンタオルロール100から巻きほどかれたキッチンタオル30をロール部分から切り離すのを容易にするための、破断用ミシン目30mを有していてもよい。破断用ミシン目30mは、概して、キッチンタオル30の幅方向(CD方向)に延びる連続した小穴により形成され、また、キッチンタオル30の長手方向(MD方向)に沿って所定間隔L毎に設けられる。キッチンタオル30において、長手方向(MD)に隣接する2つのミシン目30m間に挟まれる区画を、以下、1カットともいう。
【0018】
(巻径)
図1の(b)を参照して、本発明の実施形態において、ロール状に巻回されたキッチンタオル30のロール径である巻径DRは、一般的なキッチンタオルロール用のホルダに収まって、回転自在に支持され得るサイズに設定される。キッチンタオルロール100の巻径DRは、例えば、100mm~125mmであり、110mm~120mmであってもよい。
【0019】
巻径DRは、以下の方法によって求めることができる。まず、キッチンタオルロール100における軸方向の両端部および中央部の3位置において、巻尺を用いてキッチンタオルロール100の周長を測定する。次に、各周長の測定値を円周率3.14で除して各3位置での巻径を算出し、3位置の巻径の平均値を算出する。算出した平均値をキッチンタオルロール100の巻径DRとする。
【0020】
(巻長)
本発明の実施形態において、紙管5に巻回されたキッチンタオル30の長さである巻長は、好ましくは、9m以上35m以下である。
【0021】
巻長は、例えば、キッチンタオルロール100からキッチンタオル30を巻きほどきながらその長さを実測することによって求めることができる。あるいはまた、巻長は、例えば、製造時の設備の設定条件等から、計算によって求めることもできる。巻長は、例えば、1カットの長さ方向(MD)の寸法Lと、キッチンタオルロール100に含まれるカット数との積によって算出してもよい。
【0022】
巻長が長すぎると、概して、巻径が大きくなり、キッチンタオルロール100は、一般的なキッチンタオルロールホルダーに収まり難くなる。そこで、キッチンタオル30の紙厚(エンボスを加味した厚さ)を低く設定して、キッチンタオルロール100の巻径を好適な範囲に収めることが考えられるが、この場合にはキッチンタオル30の紙厚(エンボスを加味した厚さ)の低下により、吸水性(吸水量)が低下し、所望の吸水性(吸水量)が得られなくなる。
【0023】
あるいはまた、巻長を変えずに巻径を好適な範囲に収めるためには、キッチンタオル30を構成するシート12、14、20の坪量等を制限するなどの設計変更の必要が生じる。
【0024】
巻長が短すぎると、一般的な市販品と比べて巻長が短く、キッチンタオルロール製品としての保管や輸送のコストパフォーマンスや市場競争力が劣ることとなる。
【0025】
したがって、本発明の実施形態において、キッチンタオル30の巻長は、上述の範囲であることが好ましい。
【0026】
(キッチンタオル)
図2は、キッチンタオル30の構成を説明する概略図である。
図2の(a)は、
図1の(a)のキッチンタオルロール100のロール状部分から巻きほどかれたキッチンタオル30の部分のうち、長手方向(MD)に隣接する2つのミシン目30m間に挟まれる区画(1カット)を取り出した概略的斜視図である。
図2の(a)では、キッチンタオル30の両面のうち、
図1のキッチンタオルロール100において半径方向外側となる面(以下、単に、キッチンタオルロール100の外面ともいう)が示されている。
図2の(b)は、
図2の(a)における符号IIbで示される部分の概略的拡大図である。
図2の(c)は、
図2の(b)における符号IIc-IIcで示される線に沿って取った概略的断面図である。
【0027】
図2の(c)を参照して、本発明の実施形態に係るキッチンタオル30は、3枚のシート12、14、20が積層されてなる3枚重ね(いわゆる3プライ)の積層シートである。以下、キッチンタオル30を積層シート30とも称する。
【0028】
(シート)
キッチンタオル30の構成要素であるシート12、14、20は、繊維原料であるパルプ成分を含むスラリーを抄紙することによって得られる。
【0029】
(パルプ成分)
パルプ成分としては、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプを挙げることができる。
【0030】
木材を原料として製造される木材パルプとしては、例えば、広葉樹パルプ(広葉樹クラフトパルプ(LKP))、針葉樹パルプ(針葉樹クラフトパルプ(NKP))、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプが挙げられるが、特に限定されない。
【0031】
木材以外の植物・動物を原料として製造される非木材パルプとしては、コットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。
【0032】
古紙パルプとは、古紙、すなわちいったん抄紙されたパルプを原料として製造されるパルプである。古紙パルプとしては、例えば、牛乳パックのような液体を充填包装するための紙パックを原料とする、いわゆるミルクカートンパルプ、新聞や雑誌等を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。
【0033】
パルプ成分は上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。シート12とシート14とシート20とで、パルプ成分が同じであっても、パルプ成分が異なっていてもよい。これらパルプ成分はキッチンタオル30の品質に大きく影響するので、要求品質に合わせて所定の種類および配合割合で適宜配合される。例えば、パルプ成分として、木材パルプのみを(100質量%で)用いることができる。
【0034】
木材パルプとしては、針葉樹パルプおよび広葉樹パルプから選択される少なくとも1種を好ましく用いることができる。針葉樹パルプは、繊維が長く強度があり、抄造されるシートに強度を付与することができる。また、広葉樹パルプは、繊維が短く、しなやかであり、抄造されるシートに均一性、地合いのよさ、柔らかさなどを提供することができる。本発明の実施形態において、針葉樹パルプと広葉樹パルプを併用することが好ましく、針葉樹クラフトパルプ(NKP)と広葉樹クラフトパルプ(LKP)を併用することがより好ましい。
【0035】
(任意成分)
シート12、14、20には、要求品質および操業の安定のために、任意成分として様々な薬品が添加されていてもよい。任意成分としては、例えば、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、柔軟剤、嵩高剤、染料、香料、分散剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、歩留向上剤、サイズ剤等を挙げることができる。乾燥紙力剤としては、例えば、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を挙げることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミドエピクロロヒドリン、尿素、メラミン、熱架橋性ポリアクリルアミド等を挙げることができる。柔軟剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、および両性イオン界面活性剤等を挙げることができる。上記の任意成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。シート12とシート14とシート20とで、任意成分を異ならせてもよい。
【0036】
(シートの坪量)
本発明の実施形態において、キッチンタオル30を構成する3枚のシート12、14、20の坪量は、それぞれ(すなわち、1プライあたり)、10g/m2以上30g/m2以下であり、好ましくは13g/m2以上25g/m2以下であり、より好ましくは15g/m2以上20g/m2以下である。それぞれのシートの坪量が上記範囲内であればよく、それぞれのシートの坪量が同一である場合に限らず、それぞれのシートの坪量を変えるようにしてもよい。
【0037】
シート12、14、20を構成する主成分であるパルプ成分は、概して、良好な吸水性(吸収量)を有する。シートの坪量が低い場合、そのシートに含まれるパルプ成分の絶対量も少ないこととなり、結果として、そのシート自体、およびそのシートを含むキッチンタオル30の吸水性(吸収量)が低くなる。
【0038】
一方、シートの坪量が高くなると、それに応じてシートの紙厚も高くなる傾向がある。紙厚が高いシートを用いると、3プライのキッチンタオル30の紙厚(エンボスを加味した厚さ)が増して、キッチンタオルロール100とした際に、所望の巻径DRに収まらなくなる場合がある。
【0039】
このとき、所望の巻径DRに収めるための1つの方法として、キッチンタオル30の紙厚を低減させる方法が考えられる。しかしながら、この方法によると、キッチンタオル30の紙厚の低下によってキッチンタオル30の吸水性(吸収量)が低下する。また、所望の巻径DRに収めるための1つの方法として、巻長を低減させる方法もある。しかしながら、この方法の場合、キッチンタオルロール製品としての保管や輸送のコストパフォーマンスや市場競争力が劣ることとなる。
【0040】
したがって、本発明の実施形態において、各シート12、14、20のそれぞれの坪量(1プライあたりの坪量)は、上述の範囲であることが好ましい。
【0041】
シートの坪量(1プライあたりの坪量)は、日本工業規格JIS P8124の規定に準じて測定することができる。
【0042】
(エンボス)
図1の(a)ならびに
図2を参照して、キッチンタオル30には、その両面において、紙面の全域(全面)に亘ってエンボスが付されている。
【0043】
具体的には、
図1の(a)および
図2の(a)を参照して、キッチンタオル30の一方の面(キッチンタオルロール100の外面)には、多数のエンボス凹部10edによって構成され平面視において略六角形を成すエンボスパターンが、互いの間に平坦部を挟んで、反復形成されている。
図2の(b)を参照して、本例では、1つのエンボスパターンに含まれる各エンボス凹部10ed(図中、実線で示される)は、平面視において略三角形を示す点状の形状を有する。
図2の(c)を参照して、このエンボスパターンは、キッチンタオル30を構成する3枚のシートのうちの2枚のシート12、14に対して一体的に形成されている。
【0044】
(シングルエンボス結合シート)
図2の(c)を参照して、キッチンタオル30の3枚のシート12、14、20のうちの2枚のシート12、14は、いわゆるシングルエンボス形式の積層構造を有しており、一体的なシート(以下、シングルエンボス結合シートとも称する)10を構成する。
【0045】
シングルエンボス結合シート10は、片面(本実施形態では、シート12側の面)にエンボス凹部10edを有するとともに他の片面(本実施形態では、シート14側の面)に当該エンボス凹部10edに対応したエンボス凸部10epを有する。エンボス凹部10edを有する面においては、エンボス凹部10edは、非エンボス凹部10nedによって取り囲まれている。また、エンボス凸部10epを有する面においては、エンボス凸部10epは、非エンボス凸部10nepによって取り囲まれている。
【0046】
(シングルエンボス)
シングルエンボス形式の積層構造は、シートを所定の重ね枚数分(本実施形態では、シート12および14の2枚)だけ重ねた重ね合わせシートに対して、一方の面(本実施形態では、シート12側の面)からのみエンボスロールの凸部を押し当てて、エンボス加工の対象となるシートの両面のうちの一方の表面(本実施形態では、シート12側の面)にエンボス凹部(本実施形態では、エンボス凹部10ed)を、他方の表面(本実施形態では、シート14側の面)にエンボス凹部の裏側で構成されるエンボス凸部(本実施形態では、エンボス凸部10ep)を形成するエンボス加工によって得ることができる。この加工は、シングルエンボス加工とも称される。シングルエンボス加工によれば、重ね合わせシートを構成する複数のシート(本実施形態では、シート12および14の2枚)の全体に対して同じパターンのエンボス凹凸が付与される。
【0047】
(仮結合)
シングルエンボス結合シート10において、これを構成するシート12、14は、シングルエンボス加工に際して同時にプレスされることで一体化されており、結合した状態となっている。この結合は、構成シート12、14に対して互いに離れる方向に力を加えることで容易に解かれるものであり、以下、仮結合とも称される。
【0048】
図を参照して説明したシングルエンボス結合シート10のエンボスパターンの形状、およびエンボス凹部10edの形状は、例示であり、本発明を限定するものではない。シングルエンボス結合シート10のエンボスパターンとしては、シートに対してその紙面の実質的全域に亘って形成される点状、線状、またはこれらを組み合わせたエンボスパターンが適用可能である。エンボス凹部10edの形状としては、三角形の他、円形、正方形、長方形、菱形、五角形、その他の多角形、花形などの任意の形状、またはこれらの形状の任意の組合せを適用可能である。エンボスパターンに含まれる複数のエンボス凹部10edの寸法(例えば、深さ、面積など)および密度等は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0049】
(エンボスシート)
図1の(a)および
図2の(b)および(c)を参照して、キッチンタオル30の他方の面(キッチンタオルロール100の内面)には、多数のエンボス凹部20edによって構成され平面視において略六角形を成すエンボスパターンが、互いの間に平坦部を挟んで、反復形成されている。
【0050】
図2の(b)を参照して、本例では、1つのエンボスパターンに含まれる各エンボス凹部20edは、平面視において略三角形を示す点状の形状を有する。なお、エンボス凹部20edは、
図2の(b)においてキッチンタオル30の背面側に形成されている。そのため、エンボス凹部20edおよびそれに対応するエンボス凸部20epは、図中、点線によって透視的に示されている。
【0051】
図2の(c)を参照して、このエンボスパターンは、キッチンタオル30を構成する3枚のシートのうちの1枚のシート20に対して形成されている。
【0052】
以下、本明細書において、キッチンタオル(積層シート)30を構成する3枚のシートのうち、エンボスが付されて一体化された2枚のシート12、14をシングルエンボス結合シート10と称するのに対して、エンボスが付された1枚のシート20を、エンボスシート20とも称するものとする。
【0053】
また、以下、本明細書において、シングルエンボス結合シート10のエンボス凹部10ed、エンボス凸部10ep、非エンボス凹部10ned、非エンボス凸部10nepを、それぞれ、シングルエンボス凹部10ed、シングルエンボス凸部10ep、非シングルエンボス凹部10ned、非シングルエンボス凸部10nepとも称するものとする。
【0054】
図を参照して説明したエンボスシート20のエンボスパターンの形状、およびエンボス凹部20edの形状は、例示であり、本発明を限定するものではない。エンボスパターンとしては、シートに対してその紙面の実質的全域に亘って形成される点状、線状、またはこれらを組み合わせたエンボスパターンが適用可能である。エンボス凹部20edの形状としては、三角形の他、円形、正方形、長方形、菱形、五角形、その他の多角形、花形などの任意の形状、またはこれらの形状の任意の組合せを適用可能である。エンボスパターンに含まれる複数のエンボス凹部20edの寸法(例えば、深さ、面積など)および密度等は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0055】
本発明の実施形態において、エンボスシート20のエンボスパターンおよびエンボス凹部20edの形状、寸法、密度等と、シングルエンボス結合シート10のエンボスパターンおよびシングルエンボス凹部10edの形状、寸法、密度等とは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0056】
(エンボス凹部の面積)
本発明の実施形態において、シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凹部10edの面積は、0.71mm2以上4.42mm2以下であり、好ましくは1.20mm2以上3.40mm2以下である。また、エンボスシート20のエンボス凹部20edの面積は、0.71mm2以上4.42mm2以下であり、好ましくは1.20mm2以上3.40mm2以下である。
【0057】
(エンボス凹部の深さ)
本発明の実施形態において、シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凹部10edの深さは、220μm以上700μm以下であり、好ましくは300μm以上650μm以下である。また、エンボスシート20のエンボス凹部20edの深さは、220μm以上700μm以下であり、好ましくは300μm以上650μm以下である。
【0058】
(エンボス凹部の面積および深さの測定方法)
シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凹部10edの面積および深さ、ならびにエンボスシート20のエンボス凹部20edの面積および深さは、形状測定レーザーマイクロスコープとともに形状測定レーザーマイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアを用いることによって測定することができる。
【0059】
形状測定レーザーマイクロスコープは、点光源であるレーザ光源を、対物レンズを介して、観察視野内のX-Y平面を複数に分割したピクセルにスキャンし、ピクセル毎の反射光を受光素子で検出する。そして、対物レンズを高さ(Z軸)方向に駆動し、最も反射光量の高いZ軸位置を焦点として、高さ情報と反射光量を検出する。このようにしてスキャンを繰り返すことにより、全体に焦点の合った光量超深度画像と高低画像(情報)が得られる。レーザ光源は、ピンホール共焦点光学系であるので、測定精度が高い。
【0060】
形状測定レーザーマイクロスコープとしては、ワンショット3D形状測定器VR-3200(KEYENCE社製)を用いることができる。また、観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、解析アプリケーションVR-H2A(KEYENCE社製)を用いることができる。
【0061】
ワンショット3D形状測定器VR-3200および解析アプリケーションVR-H2Aを用いたエンボス凹部10edの面積の測定は、公知の手法、例えば特許第6606147号に開示される手法に従って行うことができる。測定条件は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmを用いる。測定倍率と視野面積は、求めるエンボスの大きさによって、適宜変更してもよい。
【0062】
図3を参照して、測定方法の概要を説明する。
図3は、シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凹部10edを例にとって、シングルエンボス凹部10edの面積および深さの測定方法を説明する図である。
図3の(a)は、キッチンタオル30をシングルエンボス結合シート10側の面から見た概略図であり、
図3の(b)は、シングルエンボス結合シート10の断面概略図であり、
図3の(c)は、1つのシングルエンボス凹部10edを上面視した概略図であり、
図3の(d)は、形状測定レーザーマイクロスコープによるX-Y平面状の高さプロファイルの断面曲線の例を示す図である。
【0063】
この
図3を参照して説明するシングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凹部10edの面積および深さの測定方法は、エンボスシート20のエンボス凹部20edの面積および深さについても適用可能であるので、重複する記載は省略する。なお、この場合、測定はキッチンタオル30のエンボスシート20の側について行う。
【0064】
〔エンボス凹部の面積〕
シングルエンボス凹部10edの面積の測定は、キッチンタオル30の両面のうち、シングルエンボス凹部10edを有するシングルエンボス結合シート10側の面に対して行う。また、シングルエンボス凹部10edの面積の測定は、キッチンタオル30のCD方向(幅方向)の任意の10個のシングルエンボス凹部10edについて行い、得られた測定値から求めた平均値を、シングルエンボス凹部10edの1個当たりの面積とする。
【0065】
図3の(a)を参照して、任意の10個のシングルエンボス凹部10edの選定にあたっては、キッチンタオル30のCD方向に平行な直線Mによって示される位置上にあるシングルエンボス凹部10edの中から任意の10個を選ぶ。また、この直線Mの位置は、キッチンタオルロール100の最も外側から数えて20カット目のキッチンタオル30の区画の中央部分とする。
【0066】
形状測定レーザーマイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイル(不図示)によると、キッチンタオル30の表面の高さが濃淡で表される。X-Y平面画像(不図示)において、個々のシングルエンボス凹部10edは濃色部分として示される。色の濃淡で、シングルエンボス凹部10edと非シングルエンボス凹部10nedとが分かる。
【0067】
図3の(c)は、1つのシングルエンボス凹部10edを上面視した概略図である。図中、エンボス周縁Erimは、シングルエンボス凹部10edと非シングルエンボス凹部10nedとの境目を示す。エンボス周縁Erimの内側がシングルエンボス凹部10edである。本実施形態では、シングルエンボス凹部10edは、上面視において略三角形状を有する。
【0068】
次の手順に従って、シングルエンボス凹部10edの面積の測定を行う。
(1)X-Y平面におけるシングルエンボス凹部10edの周縁Erimの最も離れた2点間の線分の長さを、エンボスの周縁Erimの最長部aの長さと規定する。この長さは、
図3の(d)に示される形状測定レーザーマイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルの断面曲線において、変曲点Z
1とZ
2との間のX-Y平面上の距離として求めることができる。
(2)次に、同様に、最長部aに垂直な方向での、X-Y平面におけるエンボスの周縁Erimの最も離れた2点間の線分の長さを、エンボスの周縁Erimの最長部bと規定する。
(3)最長部aと最長部bの値から、シングルエンボス凹部10edの面積を求める。
図3の(c)を参照して、本実施形態では、シングルエンボス凹部10edはX-Y平面において略三角形状を有しており、最長部aを三角形の底辺とし、最長部bを三角形の高さとして見ることができる。三角形の面積の公式より、最長部aと最長部bの積(a×b)を2で割った値を、シングルエンボス凹部10edの面積として求める。
【0069】
面積の計算にあたっては、シングルエンボス凹部10edの形状に応じて適した計算式を用いる。例えば、シングルエンボス凹部10edのX-Y平面形状が略正円形であった場合は、最長部aと最長部bの値を平均した値を平均直径dとし、その二分の一を半径rとして、円の面積の公式より、πr2を計算することによって得られた値を、シングルエンボス凹部10edの面積として求める。
【0070】
同様に、例えば、シングルエンボス凹部10edのX-Y平面形状が略矩形であった場合は、最長部aと最長部bの積(a×b)を、シングルエンボス凹部10edの面積として求める。
【0071】
〔エンボス凹部の深さ〕
シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凹部10edの深さ(エンボス深さ)の測定は、シングルエンボス凹部10edの面積を測定する際に用いるものと同じ形状測定レーザーマイクロスコープおよび画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアを用いて、面積の測定の際に併せて行うことができる。
【0072】
図3の(b)および(d)を参照して、エンボス深さDは、形状測定レーザーマイクロスコープを用いてエンボスの高低差を測定して求める。
【0073】
次の手順に従って、エンボス深さの解析を行う。
(1)対象画像について面形状補正によって視野全体のうねりを除去する。
(2)線粗さの測定によって、測定対象とする1つのエンボスを挟んだ2点間の粗さプロファイルを計測し、傾き補正を行う。
(3)エンボスの平面方向における位置X(μm)とエンボス深さZ(μm)のデータからエンボスの開始点X
1と終了点X
2のエンボス深さZ
1、Z
2を求める(
図3の(d)参照)。
(4)エンボス深さZ
1とZ
2の平均値をエンボス深さの極大値Z
maxとし、エンボスの開始点X
1と終了点X
2との間に位置するエンボス深さの極小値Z
minとの差をエンボス深さΔZとする(
図3の(d)参照)。
ΔZ=Zmax-Zmin
(5)上記(1)から(4)の測定を、キッチンタオル30の任意の10個のシングルエンボス凹部10edについて行い、ΔZの平均値をエンボス深さDとする。
【0074】
図2の(c)を参照して、シングルエンボス結合シート10およびエンボスシート20は、介在する接着糊Gによって一体化されて、エンボス積層構造を形成している。
【0075】
(ネステッドエンボス)
図2の(c)において、シングルエンボス結合シート10とエンボスシート20とは、シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凸部10epがエンボスシート20の非エンボス凸部20nepに対面し、エンボスシート20のエンボス凸部20epがシングルエンボス結合シート10の非シングルエンボス凸部10nepに対面するような形態で、エンボス積層構造を形成している。シングルエンボス結合シート10とエンボスシート20とは、シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凸部10epとエンボスシート20の非エンボス凸部20nepとの間に介在する接着糊Gを介して接着されている。このように、一方のシートのエンボス凸部が他方のシートの非エンボス凸部(他方のシートの非エンボス凸部は、当該他方のシートのエンボス凸部に対して相対的な凹部を成す)内に嵌まり込み、その嵌まり込み域において空隙を残して嵌まり込むようにエンボス凸部の頂部と非エンボス凸部の底部とが接着糊により接着されるようなエンボス積層構造は、「ネステッドエンボス」とも称される。
【0076】
(接着糊)
シングルエンボス結合シート10およびエンボスシート20を接着する接着糊Gには、積層構造をとるキッチンタオルに採用される公知の接着剤を使用することができる。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、デンプン、変性デンプン、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース系接着剤等を使用可能である。
【0077】
図2の(c)を参照して、本発明の実施形態において、接着糊Gは、シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凸部10epとエンボスシート20の非エンボス凸部20nepとの間に介在している。かかる構成は、
図4に例示するようなアプリケータロールを含むアプリケータなどの知られている装置により、シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凸部10epの頂部に対して接着糊Gを付与し、次いで、シングルエンボス結合シート10とエンボスシート20とを合わせることにより、達成可能である。
【0078】
(本結合)
接着糊Gの付与に際して、低粘度の接着糊Gを用いる場合、シートの表面に付与された接着糊Gが、シート内に滲み込み、シートの反対面側から滲み出してしまう、いわゆる糊抜け現象が生じ得る。この糊抜け現象を利用して、本発明の実施形態において、低粘度の接着糊Gを、シングルエンボス結合シート10のエンボス凸部10epに付与し、シート14側からシート12側に浸透させて、シングルエンボス結合シート10を構成するシート14とシート12との結合を強めることができる。本明細書において、この結合を、上述の仮結合に対して、本結合ともいう。
【0079】
仮結合によって一体化されたシングルエンボス結合シート10を構成するシート12、14は、構成シート12、14に対して互いに離れる方向に力を加えることで容易に解かれるものであったが、本結合により接着糊Gが使用されることによって、結合は強化され、両シートは離れにくくなる。
【0080】
ネステッドエンボス形式の積層構造を可能とするために、エンボスシート20の非エンボス凸部20nepは、概して、シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス部10epよりも大きい。これにより、シングルエンボス凸部10epと、これを受け入れるエンボスシート20の非エンボス凸部20nepとの間に、空隙が形成される。1つの非エンボス凸部20nepの中に、複数のシングルエンボス凸部10epが含まれる態様であってもよい。
【0081】
同様に、ネステッドエンボス形式の積層構造を可能とするために、シングルエンボス結合シート10の非シングルエンボス凸部10nepは、概して、エンボスシート20のエンボス凸部20epよりも大きい。これにより、エンボス凸部20epと、これを受け入れるシングルエンボス結合シート10の非シングルエンボス凸部10nepとの間に、空隙が形成される。1つの非シングルエンボス凸部10nepの中に、複数のエンボス凸部20epが含まれる態様であってもよい。
【0082】
キッチンタオル30をネステッドエンボス形式の積層構造とすることにより、シングルエンボス結合シート10とエンボスシート20との間には、空隙が保持されて、キッチンタオル30の嵩高さが得られる。
【0083】
上記構成を有する本発明の実施形態に係るキッチンタオル30では、キッチンタオル30を構成する3枚のシート12、14、20のそれぞれが内部に持つ微小な空隙だけでなく、シングルエンボス結合シート10とエンボスシート20との間の空隙に多くの水を吸収することができ、また、シングルエンボス結合シート10の2枚の構成シート12、14間の空隙にも水を吸収することができる。
【0084】
したがって、シングルエンボス結合シート10とエンボスシート20とのネステッドエンボス形式の積層構造を有する本発明の実施形態のキッチンタオル30は、良好な吸水効果(保水性)を奏し得る。
【0085】
(Tip tо Tip形式のエンボス積層構造)
ここで、一般に、キッチンタオルのエンボス積層構造として、ネステッドエンボス形式に対して、Tip tо Tip形式のエンボス積層構造が知られている。Tip tо Tip形式とは、重ね合わされる一方のシートのエンボス凸部ともう一方のシートのエンボス凸部とが対接するような形態で接着糊Gを介して接合されて一体化されてエンボス積層構造を形成している形式をいう。Tip tо Tip形式のエンボス積層構造の場合、重ね合わされる両シートの非エンボス凸部間の空隙が相対的に大きいため、キッチンタオルは良好な吸水効果(保水性)を奏する。しかしながら、その一方で、キッチンタオルの紙厚が高くなってしまい、キッチンタオルロール100の巻径が過度に大きくなってしまう傾向にある。
【0086】
これに対して、本発明の実施形態によるキッチンタオル30は、上述のように、シングルエンボス結合シート10とエンボスシート20とのネステッドエンボス形式のエンボス積層構造を有することにより、良好な吸水効果(保水性)を奏するのみならず、巻径の増大が抑制されている。本発明者は、さらに鋭意検討を行った結果、キッチンタオルロール100におけるキッチンタオル(積層シート)30の巻密度を好適な範囲に制御することにより、キッチンタオルロール100の形態に巻かれたキッチンタオル30の吸水性(吸水量)を簡単かつ効果的に向上し得ることを見出した。
【0087】
(巻密度)
本発明の実施形態に係るキッチンタオルロール100において、キッチンタオル(積層シート)30の巻密度は、0.30m/cm2以上0.90m/cm2以下であり、好ましくは0.31m/cm2以上0.75m/cm2以下であり、より好ましくは0.35m/cm2以上0.69m/cm2以下である。
【0088】
巻密度は、次式(I)によって計算される。
(巻密度)=(キッチンタオルの巻長×キッチンタオルのシート数)÷(ロール断面積) ・・・(I)
【0089】
ロール断面積、すなわちキッチンタオルロール100の断面積は、
図1の(b)に示されるキッチンタオルロール100の端面において、キッチンタオルにより構成されている部分の面積に相当する。つまり、ロール断面積は、巻径DRを直径とする円の面積から、紙管5の外径であるコア径DCを直径とする円の面積を引いた面積となる。ロール断面積は、次式(II)によって計算される。
(ロール断面積)=(巻径DR÷2)
2×円周率-(コア径DC÷2)
2×円周率 ・・・(II)
【0090】
例えば、巻長が11.5m、巻径DRが116mmであり、紙管5のコア径DCが40mmである場合、キッチンタオル30のシート数は3であるので、式Iおよび式IIより、巻密度は、(11.5m×3)÷{(116mm÷2)2×円周率-(40mm÷2)2×円周率}を計算して、約0.372m/cm2となる。
【0091】
本発明の実施形態では、巻密度を0.90m/cm2以下とすることで、キッチンタオル30の紙厚が過度に低くなることが防止される。これにより、キッチンタオルロール100から巻きほどかれたキッチンタオル30は、これよりも巻密度が高い場合と比べて、紙厚が高く保たれている。したがって、かかるキッチンタオルロール100のキッチンタオル30は、向上された吸水性(吸水量)を有する。
【0092】
一方、巻密度が低すぎると、キッチンタオル30の紙厚が高くなり、キッチンタオル30の吸水性(吸水量)は向上するが、キッチンタオルロール100の巻径が太くなってしまう。キッチンタオルロール100の巻径が太すぎると、一般的なキッチンタオルロール用のホルダに収まって回転自在に支持され得るサイズであるよりも大きくなってしまい、好ましくない。
【0093】
(作用効果)
本発明の第1の実施形態では、キッチンタオル30のエンボス積層構造として、シングルエンボス結合シート10とエンボスシート20とのネステッドエンボス形式の積層構造を採用することで、吸水効果(保水性)の向上を図りつつ巻径の増大を抑制し、且つ、キッチンタオル30の巻密度を上記範囲内とすることで、吸水性(吸水量)を簡単かつ効果的に向上することができる。
【0094】
(本発明の実施形態に係るキッチンタオルの製造方法の例)
本発明の実施形態に係るロールの形態のキッチンタオル30(キッチンタオルロール100)を製造するための製造方法の例について説明する。
【0095】
(原反ロールの製造)
まず、キッチンタオル30の構成要素であるシート12、14、20がロール状に巻き取られた原反ロールをそれぞれ製造する。詳細には、不図示の抄紙機を用い、抄紙用スラリー(紙料)から、幅広(キッチンタオルロール100の幅の数倍から二十数倍程度の幅)で長尺なシート12、14、20を抄造しつつ巻き取って、シート12、14、20がそれぞれ巻き取られた単プライの原反ロールを製造する。
【0096】
抄紙機としては、例えば、ツインワイヤフォーマ方式、円網フォーマ方式、サクションプレストフォーマ方式、クレセントフォーマ方式等の知られている抄紙機を用いることができる。
【0097】
抄紙機は、クレープ加工を行うクレーピング部を備えていてもよい。クレーピング部では、原反ロール製造工程において、抄造されるシート(ウェブ)を乾燥させる間に、必要に応じて、シートに対し、クレーピングドクターによってクレープと呼ばれる非常に細かい波状の皺を付与することができる。クレープにより、シートに柔らかさ、嵩高さ(バルク感)、水分吸収性、美観(クレープの形状)、良好な手触り感などを付与することができる。
【0098】
また、抄紙機は、カレンダー部を備えていてもよい。カレンダー部では、乾燥されたシートに対して、必要に応じて、カレンダーロール対により上下からシートを挟み込み押圧する、カレンダー処理を施すことができる。これによって、シート12、14、20は圧縮されて、紙厚の調整および均一化、ならびに表面の平滑化などがなされる。なお、カレンダー加工部は抄紙機とは別に設けられていてもよく、カレンダー処理は、原反ロール製造工程以降の任意の製造工程において行われてもよい。カレンダー処理は、複数段階に分けて行われてもよい。
【0099】
(キッチンタオルの製造)
図4は、キッチンタオル30を製造するために使用可能な製造設備の例を示す図であり、特には、エンボス積層構造形成部の例を示す部分的模式図である。
【0100】
図4に示される製造装置において、エンボスロール44、45は、所望のエンボスパターンに対応する凹凸部分を外周面に有するロールである。エンボスロール44、45の外周面には、所望のエンボスパターンに対応した凹凸部が形成されている。エンボスロール44、45の少なくとも凹凸部分は金属にて形成されており、エンボスロール44、45は、雄(凸)のスチールロールであってもよい。エンボスロール44、45は、図示しない駆動手段により回転駆動されるようになっている。
【0101】
ニップロール43、46は、エンボスロール44、45に当接させて用いられる従動ロールであり、円筒状の外形を有する。ニップロール43、46の表面部分は、弾性変形可能な硬質合成ゴムなどの硬質なゴム状弾性体にて形成されている。
【0102】
上述のシート12、14のそれぞれの原反ロール(不図示)から繰り出されたシート12,14は、重ね合わせのための不図示ロールを介して積層されて、重ね合わせシート10として、
図4に示されるエンボス積層構造形成部に搬送される。
【0103】
図4を参照して、シート12,14からなる重ね合わせシート10は、ニップロール46に巻き掛けられ、ニップロール46とエンボスロール45との間のニップに通紙されて押圧されて、エンボスロール45の外周面の凹凸部分の形状に従うエンボスが付与されて、シングルエンボス結合シート10となる。このとき、
図2の(c)を参照して、重ね合わせシート10のうちのシート12側の面がエンボスロール45に、シート14側の面がニップロール46に接するように通紙される。
【0104】
一方、シート20の原反ロール(不図示)から繰り出されたシート20は、ニップロール43に巻き掛けられ、ニップロール43とエンボスロール44との間のニップに通紙されて押圧されて、エンボスロール44の外周面の凹凸部分の形状に従うエンボスが付与されて、エンボスシート20となる。
【0105】
次いで、グルーパン51、ファウンテンロール48、トランスファーロール49、およびアプリケータロール50を含むアプリケータにより、エンボスが付与された重ね合わせシート10のエンボス凸部の頂面(すなわち、
図2の(c)を参照して、シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凸部10epの頂面)に、接着糊Gが付与される。詳細には、グルーパン51に収容された液体状の接着糊Gは、回転するファウンテンロール48の表面に付着してピックアップされ、トランスファーロール49およびアプリケータロール50の順に転写され、次いで、アプリケータロール50とエンボスロール45との間に通紙された重ね合わせシート10の表面のうち、アプリケータロール50と接する領域であるエンボス凸部の頂面(シート14側の面)に転写される。
【0106】
次いで、エンボスが付与されたシート20(エンボスシート20)と、接着糊Gが付与された重ね合わせシート10(シングルエンボス結合シート10)とは、エンボスロール44、45間のニップに通紙され、次いで、マリッジロール47に巻き掛けられる。これにより、シングルエンボス結合シート10とエンボスシート20とは接着糊Gを介して接着されて一体化され、ダブルエンボス積層構造を有するキッチンタオル30が形成される。
【0107】
キッチンタオル30は、ダンサーロール52によって張力が調整されつつ、下流に送られ、任意選択的に、ミシン目形成部(不図示)によって破断用ミシン目が形成される。
【0108】
ミシン目形成部は、端的には、送り込まれてきたシートに対してミシン目を形成する、ミシン目形成を施すユニットである。ミシン目形成部は、キッチンタオル30を幅方向(CD方向)に横切る破断用ミシン目30mを、キッチンタオル30の長手方向(MD方向)に沿って、一定間隔L毎に形成可能に構成されている。破断用ミシン目30mの形成には、知られている任意のミシン目形成手段を用いることができる。
【0109】
キッチンタオル30は、次いで、巻取部(不図示)に送られて、紙管5の周りにロール状に巻き取られる。ロール状に巻き取られたキッチンタオル30は、幅寸法が製品サイズとなるように裁断されて、キッチンタオルロール100が得られる。
【0110】
以上に説明した製造装置および製造方法は、例示目的であり、本発明を制限するものではない。本発明に係るキッチンタオルおよびキッチンタオルロールの製造には、知られている任意の製造装置および製造方法を用いることができる。
【0111】
例えば、上述の例では、
図4に示す製造装置に対して、シート12、14、20それぞれについての原反ロールからシートを繰り出すものとして説明を行っている。これに対し、シート12、14については、それらの2本の原反ロールの代わりに、シート12、14を重ね合わせた重ね合わせシート10の1本の原反ロールを予め準備して、その1本の原反ロールから重ね合わせシート10を繰り出すものとしてもよい。
【0112】
また、上述の例では、キッチンタオル30の製造方法として、原反ロールの製造についても説明している。しかしながら、原反ロールは購入等により入手してもよく、原反ロールの製造工程は、本発明の実施形態に係るキッチンタオル30の製造方法の必須の工程ではない。
【0113】
また、上述の例では、巻取部において紙管5の周りにキッチンタオル30が巻き取られる際の、表裏面の向きについての記載がない。
図1の例では、シングルエンボス結合シート10がキッチンタオルロール100の外面側となり、エンボスシート20がキッチンタオルロール100の内面側となるように巻き取られているが、その表裏を逆にした構成も、本発明の範囲である。
【0114】
(達成手段)
(i)シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凹部10edの面積および深さ、(ii)エンボスシート20のエンボス凹部20edの面積および深さ、(iii)シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凸部10ep/シングルエンボス凹部10edの密度、(iv)シングルエンボス結合シート10のエンボス凸部10ep/エンボス凹部20edの密度等については、例えば、
図4に示される製造装置のエンボス積層構造形成部における、エンボス加工条件(エンボス部の形状、個数、配置、エンボス高さ、密度、エンボスロールの硬度、圧力、エンボスロールの外周面の凹凸形状の組み合わせ等)などによって調整することができる。
【0115】
また、キッチンタオル30の巻密度は、(i)キッチンタオルロール100の製造工程において、キッチンタオル30を紙管5の周りに巻き取るための張力を調整すること、(ii)キッチンタオルロール100の製造に用いるシート12、14、20の紙厚を調整すること、等によって、調整することができる。概して、製造工程における巻き取りのための張力を大きくすると巻密度は高くなり、張力を小さくすると巻密度は低くなる。また、概して、キッチンタオルロール100の製造に用いるシート12、14、20の紙厚を高くすると巻密度は高くなり、紙厚を低くすると巻密度は低くなる。
【0116】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。特段の記載のない限り、上記実施形態に適用可能な構成は、本実施形態に適用可能である。
【0117】
本発明の第2の実施形態は、上記実施形態の好ましい態様であり、積層シート(キッチンタオル)30の巻長が9.0m以上35.0m以下であり、積層シート30を構成する3枚のシート12、14、20の1枚あたりの坪量が14.0g/m2以上30.0g/m2以下であることを特徴とするキッチンタオルロール100である。
【0118】
(作用効果)
第1の実施形態で説明したように、本発明の実施形態に係るキッチンタオルロール100は、3プライの積層シート30がネステッドエンボス形式の積層構造を有するとともに、積層シート30の巻密度が0.30m/cm2以上0.90m/cm2以下であることを特徴とする。また、巻密度は、積層シート30の巻長、積層シートのシート数(プライ数)、キッチンタオルロール100のロール断面積によって決定される。
【0119】
本発明の実施形態において、積層シート30のシート数(プライ数)は3枚(3プライ)で一定であるところ、本発明者は、鋭意検討の結果、積層シート30の巻長と、積層シート30を構成する3枚のシート12、14、20の1枚あたりの坪量とを、上述の範囲に設定することで、積層シート30の巻密度を上記範囲内に、より簡単にコントロールできることを見出した。
【0120】
本実施形態において、積層シート30を構成する3枚のシート12、14、20の1枚あたりの坪量は、14.0g/m2以上30.0g/m2以下であり、好ましくは16.0g/m2以上25.0g/m2以下であり、より好ましくは18.0g/m2以上22.0g/m2以下である。それぞれのシート12、14、20の坪量が上記範囲内であればよい。それぞれのシート12、14、20の坪量は、互いに同一であってもよく、そのうちの1つまたはすべてのシートの坪量が異なっていてもよい。
【0121】
第2の実施形態のキッチンタオルロール100によれば、キッチンタオル30の吸水性(吸水量)をより簡単かつ効果的に向上することができる。
【0122】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。特段の記載のない限り、上記実施形態に適用可能な構成は、本実施形態に適用可能である。
【0123】
本発明の第3の実施形態は、上記実施形態の好ましい態様であり、積層シート(キッチンタオル)30の紙厚が460μm以上1000μm以下であることを特徴とするキッチンタオルロールである。
【0124】
(積層シートの紙厚[μm])
本明細書において、積層シート(キッチンタオル)30の紙厚とは、積層シート30を構成する3枚のシート12、14、20とそれらの間に介在する接着糊Gとを合わせた1組のキッチンタオル30の紙厚をいう。
【0125】
キッチンタオル30の紙厚は、キッチンタオルロール100からキッチンタオル30を巻きほどき、ISO 12625-3に準じて測定することができる。測定中、加圧面間に加える圧力は2kPa±0.2kPaとする。
【0126】
(作用効果)
第1の実施形態で説明したように、本発明の実施形態に係るキッチンタオルロール100は、3プライの積層シート30がシングルエンボス結合シート10とエンボスシート20とのネステッドエンボス形式の積層構造を有するとともに、積層シート30の巻密度が0.30m/cm2以上0.90m/cm2以下であることを特徴とする。また、巻密度は、積層シート30の巻長、積層シートのシート数(プライ数)、キッチンタオルロール100のロール断面積によって決定される。
【0127】
本発明の第3の実施形態において、積層シート30のシート数(プライ数)は3枚(3プライ)で一定であるところ、積層シート30の紙厚を上述の範囲に設定することで、積層シート30の巻密度を上記範囲内に簡単にコントロールできる。
【0128】
第3の実施形態のキッチンタオルロール100によれば、キッチンタオル30の吸水性(吸水量)をより簡単かつ効果的に向上することができる。
【0129】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。特段の記載のない限り、上記実施形態に適用可能な構成は、本実施形態に適用可能である。
【0130】
第1の実施形態において、本発明では、エンボスシート20のエンボスパターンおよびエンボス凹部20edの形状は、シングルエンボス結合シート10のエンボスパターンおよびエンボス凹部10edの形状と、同一であっても異なっていてもよいことを説明した。
【0131】
本発明の第4の実施形態は、上記実施形態の好ましい態様であり、シングルエンボス結合シート10のエンボス凹部10edのエンボスパターンとエンボスシート20のエンボス凹部20edのエンボスパターンとが、同一パターンであることを特徴とするキッチンタオルロールである。
【0132】
具体例として、
図1の(a)を参照して、本例では、シングルエンボス結合シート10およびエンボスシート20の両方に、略六角形を成す同一のエンボスパターンが適用されている。また、
図2の(b)を参照して、それぞれのエンボスパターンにおいて、エンボスパターンに含まれるエンボス凹部は、平面視において略三角形を示す点状の形状を有しており、両エンボスパターンのエンボス凹部は、略同一寸法の略同一形状をしている。すなわち、本例では、シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凹部10edによって構成されるエンボスパターンと、エンボスシート20のエンボス凹部20edによって構成されるエンボスパターンとに、同一パターンが用いられている。
【0133】
(作用効果)
キッチンタオル30の両面を構成するシングルエンボス結合シート10とエンボスシート20のエンボスパターンが同一パターンまたは略同一パターンである構成によれば、キッチンタオル30の表裏差を少なくすることができる。そのため、キッチンタオル30による吸水速度を、表裏差なく効果的に向上させることができる。
【0134】
(その他: エンボス凸部の密度(エンボス凹部の密度))
本発明の実施形態において、シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凸部10epの密度は、好ましくは、3個/cm2以上30個/cm2以下である。
【0135】
本明細書において、シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凸部10epの密度とは、シングルエンボス結合シート10の単位面積当たりに含まれるシングルエンボス凸部10epの個数を示す指標である(単位:個/cm2)。シングルエンボス凸部10epは、シングルエンボス凹部10edに対応して形成されるため、その数、ひいては密度は、1:1の関係にある。
【0136】
シングルエンボス結合シート10のエンボス凸部10epの密度は、次の手順によって求めることができる。
(1)キッチンタオルロール100から1m巻きほどいたキッチンタオル30について8cm×8cmの範囲を無作為に10箇所定める。
(2)上記10箇所について、上記範囲内のシングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凹部10edの個数をシングルエンボス凸部epの個数として擬制して、目視にてそれぞれカウントする。このとき、エンボス全体がその範囲内に含まれるもののみをカウントし、エンボスの一部のみがその範囲内に含まれるものについては、カウントしないものとする。
(3)上記10箇所について、カウントした当該個数を1cm×1cm当たりに換算して、シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凸部10epの密度をそれぞれ算出する。得られた10箇所のシングルエンボス凸部10epの密度から求めた平均値をシングルエンボス結合シート10のエンボス凸部10epの密度とする。
【0137】
上述のように、
図2の(c)を参照して、本発明の実施形態に係るキッチンタオル30において、シングルエンボス結合シート10とエンボスシート20とは、シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凸部10epとエンボスシート20との間に介在する接着糊Gを介して接着されている。
【0138】
シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凸部10epの密度が高くなると、シングルエンボス結合シート10とエンボスシート20との接着に寄与する単位面積当たりの接着接点の数が増える。単位面積当たりの接着接点の数が増えると、両シート10、20間の接着が強固になり、キッチンタオル30による汚れ等の拭き取り時にシングルエンボス結合シート10とエンボスシート20とが不用意に剥離するという不都合が生じにくくなる。
【0139】
ところで、シングルエンボス結合シート10とエンボスシート20との接着接点では、介在する接着糊Gによってシングルエンボス結合シート10およびエンボスシート20の表面(シングルエンボス凸部10epの頂面およびエンボス凸部20epの頂面など)が被覆されている。また、接着糊Gの一部はシート内部にも部分的に浸透している。このようにして接着糊Gが付着したシート10、20の領域では、接着糊Gの存在によって、吸水や水分の浸透が阻害され得る。
【0140】
シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凸部10epの密度が過度に高くなると、接着糊Gの存在によって吸水や水分の浸透が阻害されるシート10、20の領域が増えることにより、キッチンタオル30の吸水速度が低下し得る。したがって、本発明の実施形態において、シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凸部10epの密度には、キッチンタオル30が優れた吸水効果を発揮するための上限がある。
【0141】
シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凸部10epの密度が低い場合には、シングルエンボス凸部10epが疎に存在することにより、シングルエンボス結合シート10とエンボスシート20との接着に寄与する単位面積当たりの接着接点の数が低減する。単位面積当たりの接着接点の数が過度に少なくなると、両シート10、20間の接着は弱くなり、キッチンタオル30による汚れ等の拭き取り時にシングルエンボス結合シート10とエンボスシート20とが不用意に剥離するという不都合が生じやすくなる。
【0142】
また、シングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凸部10epの密度が過度に低い場合には、シングルエンボス凸部10epが疎に存在することにより、シングルエンボス結合シート10とエンボスシート20との間の空隙が過度に大きくなり得る。その場合、キッチンタオル30は、吸水した水をシングルエンボス結合シート10とエンボスシート20との間の空隙に留めておくことができなくなって、優れた保水性を発揮できなことが生じ得る。
【0143】
したがって、本発明の実施形態においては、シングルエンボス結合シート10とエンボスシート20との接着に寄与するシングルエンボス結合シート10のシングルエンボス凸部10epの密度(シングルエンボス凹部10edの密度)には好適な範囲があり、好ましくは、3個/cm2以上30個/cm2以下である。
【実施例0144】
(実施例1~11)
上述した(本発明の実施形態に係るキッチンタオルロールの製造方法の例)に従って、第1表から第2表に示される本発明の実施形態に係る3プライのキッチンタオルロールを製造した。シングルエンボス結合シートとエンボスシートのエンボスパターンは同一パターンとした。このとき、シングルエンボス結合シートのエンボス密度、およびエンボスシートのエンボス密度を、それぞれ8個/cm2とした。
【0145】
(比較例1~3)
第2表に示される比較例1~3の3プライのキッチンタオルロールを準備した。
【0146】
なお、実施例1~11(全実施例)および比較例1~3(全比較例)はすべて、以下の要件(1)~(4)を満たすものとした。
(1) 3枚のシートが積層された積層シートがロール状に巻回されたキッチンタオルロールである。
(2) 3枚のシートのうちの2枚のシートは、シングルエンボス形式の積層構造で積層されて、片面にシングルエンボス凹部を有するとともに、他の片面に前記シングルエンボス凹部に対応したシングルエンボス凸部とシングルエンボス凸部を取り囲む非シングルエンボス凸部とを有するシングルエンボス結合シートを構成する。
(3) 3枚のシートのうちの残りの1枚のシートは、片面にエンボス凹部を有するとともに、他の片面にエンボス凹部に対応したエンボス凸部とエンボス凸部を取り囲む非エンボス凸部とを有するエンボスシートである。
(4) シングルエンボス結合シートとエンボスシートとは、シングルエンボス結合シートのシングルエンボス凸部がエンボスシートの非エンボス凸部に対面し、エンボスシートのエンボス凸部がシングルエンボス結合シートの非シングルエンボス凸部に対面する、ネステッド形式の積層構造で積層されているとともに、シングルエンボス結合シートのシングルエンボス凸部とエンボスシートの非エンボス凸部との間に介在する接着糊を介して接着されている。
【0147】
各実施例および各比較例のキッチンタオルロールについて、以下の測定および評価を行った。なお、測定は、日本工業規格JIS P8111に準じた環境下(温度23±1°、湿度50±2%RH)で試料を調湿して行った。
【0148】
<測定>
〔巻長[m]〕
破断用ミシン目間の距離である1カット寸法と、キッチンタオルロールに含まれるカット数との積を求め、小数点以下2位を四捨五入して、巻長とした。
【0149】
〔巻径[mm]〕
まず、キッチンタオルロールにおける軸方向の両端部および中央部の3位置において、巻尺を用いてキッチンタオルロールの周長を測定した。次に、各周長の測定値を円周率3.14で除して各3位置での巻径を算出し、3位置の巻径の平均値を算出した。算出した平均値をキッチンタオルロールの巻径とした。
【0150】
〔紙管のコア径[mm]〕
キッチンタオルロールの紙管の外径をノギスにより測定し、小数点以下を四捨五入した。
【0151】
〔キッチンタオルロールの巻密度〕
次式(I)に従って、キッチンタオルロールの巻密度を計算した。
(巻密度)=(キッチンタオルの巻長×キッチンタオルのシート数)÷(ロール断面積) ・・・(I)
【0152】
全試料において、プライ数は3であり、すなわちキッチンタオルのシート数は3であった。
【0153】
ロール断面積は、次式(II)によって計算される。
(ロール断面積)=(巻径DR÷2)2×円周率-(コア径DC÷2)2×円周率 ・・・(II)
【0154】
〔シート1枚あたりの坪量[g/m2]〕
キッチンタオルロールからキッチンタオル(積層シート)を巻きほどき、キッチンタオルを構成する3枚のシートとそれらの間に介在する接着糊とを合わせた1組のキッチンタオルの坪量を、日本工業規格JIS P8124の規定に準じて測定し、次いでこれを3で割り、シート1枚あたりの坪量とした。
【0155】
〔キッチンタオルの紙厚[μm]〕
キッチンタオルロールからキッチンタオルを巻きほどき、キッチンタオルを構成する3枚のシートとそれらの間に介在する接着糊とを合わせた1組のキッチンタオルの紙厚を、ISO 12625-3に準じて測定した。ただし、測定中、加圧面間に加える圧力は2kPa±0.2kPaとした。
【0156】
〔キッチンタオルの吸水量[g/m
2]〕
図5を参照して説明する浸漬法により、キッチンタオル(3プライの積層シート)1組あたりの吸水量[g/m
2]を測定した。具体的には、次の手順(i)~(v)に従って吸水量を求めた。
(i)キッチンタオル(積層シート)を、幅100mm、長さ100mmの大きさに切り取り、試験片TPとした。当該試験片TPを温度23℃、湿度50%の環境下で4時間調湿した後、その試験片TPの質量を浸漬前の質量として測定した。
(ii)バットVに純水PWを深さ1cm程度入れ、その外側にハンガーの吊り下げ台HSを設置した。
(iii)ハンガーHのクリップCで、試験片TPの端1mm程度を2箇所挟んだ状態とした。
(iv)そして、ハンガーHのクリップCに挟まれたままの試験片TPの全体をバットV内の純水PWに浸すと同時に、ストップウォッチで時間の計測を開始した。
(v)試験片TPを純水PWに浸してから1分間経過後に、ハンガーHを静かに持ち上げて試験片TPを純水PWから引き上げて、そのままハンガーHを吊り下げ台HSに下げて、1分間放置した。
(vi)1分間放置後、試験片TPをハンガーHから取り外して、湿潤状態の試験片TPの質量(以下、浸漬後の質量ともいう)を測定した。浸漬後の質量から浸漬前の質量を引いて、試験片TPの保持する純水PWの質量(以下、水の質量ともいう)を求めた。
(v)水の質量を試験片TPの面積で割って、吸水量[g/m
2]を求めた。
【0157】
<結果>
第1表および第2表に、測定結果を示した。
【0158】
【0159】
【0160】
比較例1は、キッチンタオル(3プライの積層シート)1組あたりの吸水量が434g/m2と最も多く、吸水性(吸水量)が良好であった。しかしながら、巻密度が0.285m/cm2と低く、巻径が130mmであり、一般的なキッチンタオルロール用のホルダに収まって回転自在に支持され得るサイズである100mm~125mm程度に対して大きくて、不適であった。
【0161】
これに対して、巻密度が比較例1よりも高くいずれも0.30m/cm2~0.90m/cm2の範囲内である実施例1~11は、巻径は113mm~120mmであり適切であり、また、吸水量は238g/m2~391g/m2と多く、吸水性(吸水量)が良好であった。
【0162】
巻密度が実施例1~11よりもさらに高くそれぞれ0.955m/cm2、1.031m/cm2である比較例2、3は、巻径は120mm、115mmであり適切であったが、吸水量は220g/m2以下であり、吸水性(吸水量)が低かった。
【0163】
なお、このとき、実施例1~11のキッチンタオル(3プライの積層シート)1組あたりの紙厚は480μm~993μmであり、比較例2、3のキッチンタオル1組あたりの紙厚である289μmおよび305μmと比べて高かった。
【0164】
実施例1~11では、比較例2、3と比べて巻密度が低いため、エンボスが潰れにくく、その結果、紙厚は高く、またエンボス空隙が大きく保たれていることによって、シート内およびシート間の空隙に水を保持する能力が高く、吸水量(保水性)も良好となったと推測される。
【0165】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組合せに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。